[1.検体分析装置の全体構成]
図1に示す検体分析装置10は、尿検体などの検体を分析する。検体分析装置10は、測定ユニット20と、搬送装置30と、を備える。測定ユニット20は、検体の測定に関する処理を行う。検体の測定に関する処理には、検体の分注、検体からの試料調製、及び検体の成分の検出などを含む。測定ユニット20は、検体を吸引する第1ノズル111及び第2ノズル121を有する分注部210と、保持チャンバ220と、複数の処理チャンバ231,232と、検出部260と、を有している。第1ノズル111は、図1においてY方向として示される前後方向に移動可能に設けられている。搬送装置30及び測定ユニット20は、第1ノズル111の移動方向である前後方向に並設されている。搬送装置30は、第1検体容器61を搬送する。第1検体容器61は、ラック60に保持された状態で搬送される。ラック60は、複数の第1検体容器61を保持することができる。
検体分析装置10は、制御部40を備えている。制御部40は、測定ユニット20及び搬送装置30を制御する。制御部40は、コンピュータによって構成され、CPU41及び記憶装置42を有する。記憶装置42に記憶されたコンピュータプログラムがCPU41によって実行されることで、処理を行う。制御部40は、測定ユニット20内に設けられていても良いし、搬送装置30内に設けられていても良い。検体分析装置10は、処理装置50を備えている。処理装置50は、検出部260の出力の分析処理を含む処理を行う。処理装置50は、コンピュータによって構成され、CPU51、表示部52、入力部53、記憶装置54などを含む。処理部51は、記憶装置54に記憶されたコンピュータプログラムがCPU51によって実行されることで、処理を行う。表示部52は、例えば、スクリーンディスプレイであり、例えば、分析結果を表示する。表示部52は、入力を受け付けるための画面表示も行う。入力部53は、例えば、キーボード又はマウスである。
[2.検体の分注と検体成分検出]
分注部210は、第1検体吸引位置71又は第2検体吸引位置72にある検体容器61,62から検体を吸引し、検体を処理チャンバ231,232へ分注する。分注部210は、検体を吸引及び吐出する第1ノズル111を移動させる第1ユニット110と、検体を吸引及び吐出する第2ノズル121を移動させる第2ユニット120と、を有している。
図2(a)に示すように、第1ユニット110は、第1ノズル111と、第1ノズル111を移動させる第1駆動部112と、を備えている。第1ノズル111は、下端に形成された吸引口111aから検体を吸引し、吸引した検体を吸引口111aから吐出する。第1ノズル111による検体の吸引・吐出及び第1駆動部112は、制御部40によって制御される。第1ノズル111は、第1駆動部112によって、初期位置73から、検体を吸引するための第1検体吸引位置71又は第2検体吸引位置72へ移動する。検体吸引位置71,72は、検体吸引の際に、第1ノズル111の先端111aが位置すべき位置である。検体吸引位置71,72については後述する。
第1ノズル111は、第1検体吸引位置71に位置する第1検体容器61、又は第2検体吸引位置72に位置する第2検体容器62から、検体を吸引する。本実施形態において、吸引される検体は、尿検体である。検体を吸引した第1ノズル111は、第1駆動部112によって、保持チャンバ220が設けられた位置である吐出位置74へ移動する。吐出位置74は、検体吐出の際に、第1ノズル111の先端111aが位置すべき位置である。第1ノズル111は、吐出位置74に設けられた保持チャンバ220へ、検体を吐出する。検体を吐出した第1ノズル111は、第1駆動部112によって、初期位置73に戻る。初期位置73は、次の検体の吸引までの間の待機位置でもある。
図1にも示すように、第1検体吸引位置71は、第2検体吸引位置72と、吐出位置74との間に設けられている。第1ノズル111は、第2検体吸引位置72にある第2検体容器72から検体を吸引した後、第1検体吸引位置71の上方を経由して、保持チャンバ220へ移動する。
図2(a)に示すように、第1駆動部112は、第1ノズル111を水平方向に移動させる第1水平移動機構113と、第1ノズル111を垂直方向に移動させる第1垂直移動機構114と、を備えている。第1水平移動機構113は、対のプーリ113aに巻き掛けられた無端ベルト113bを有している。無端ベルト113bには、取付具115を介して、第1垂直移動機構114が取り付けられている。第1垂直移動機構114には、第1ノズル111が設けられている。プーリ113aは、モータ113cによって回転駆動される。モータ113cは、制御部40によって制御される。プーリ113aが回転駆動されると、無端ベルト113bが回転し、第1垂直移動機構114及び第1ノズル111が、第1の水平方向であるY1方向又はY2方向へ移動する。
第1垂直移動機構114は、対のプーリ114aに巻き掛けられた無端ベルト114bを有している。無端ベルト114bには、取付部116を介して、第1ノズル111を保持する第1ノズル保持部117が取り付けられている。プーリ114aは、モータ114cによって回転駆動される。モータ114cは、制御部40によって制御される。プーリ114aが回転駆動されると、無端ベルト114bが回転し、第1ノズル保持部117に保持された第1ノズル111が、垂直方向であるZ1方向又はZ2方向へ移動する。
図1に示すように、初期位置73、吐出位置74、第1検体吸引位置71、及び第2検体吸引位置72は、平面視において、前後方向であるY方向に一直線上に配置されている。図2(a)に示すように、第1ノズル111は、第1水平移動機構113によって、初期位置73、吐出位置74の上方、第1検体吸引位置71の上方、及び第2検体吸引位置72の上方を結ぶ直線状の移動経路75に沿って、水平移動する。第1ノズル111の水平移動経路75から、吸引・吐出位置71,72,74へまでの垂直移動は、第1垂直移動機構114によって行われる。
図2(b)に示すように、第2ユニット120は、第2ノズル121と、第2ノズル121を移動させる第2駆動部122と、を備えている。第2ノズル121は、下端に形成された吸引口121aから検体を吸引し、吸引した検体を吸引口121aから吐出する。第2ノズル121による検体の吸引・吐出及び第2駆動部122は、制御部40によって制御される。第2ノズル111は、保持チャンバ220から検体を吸引し、処理チャンバ231,232へ、検体を吐出する。より詳細には、第1ノズル111が検体を保持チャンバ220へ吐出した後、第2ノズル121は、第2駆動部122によって、保持チャンバ220へ移動し、保持チャンバ220の検体を吸引する。そして、第2ノズル121は、処理チャンバ231,231へ移動し、吸引した検体を吐出する。
第2駆動部122は、第2ノズル121を水平方向に移動させる第2水平移動機構123と、第2ノズル121を垂直方向に移動させる第2垂直移動機構124と、を備えている。第2水平移動機構123は、対のプーリ123aに巻き掛けられた無端ベルト123bを有している。無端ベルト123bには、取付具125を介して、第2垂直移動機構124が取り付けられている。第2垂直移動機構124には第2ノズル121が設けられている。プーリ123aは、モータ123cによって回転駆動される。モータ123cは、制御部40によって制御される。プーリ123aが回転駆動されると、無端ベルト123bが回転し、第2垂直移動機構124及び第2ノズル121が、第2の水平方向であるX1方向又はX2方向へ移動する。
第2垂直移動機構124は、対のプーリ124aに巻き掛けられた無端ベルト124bを有している。無端ベルト124bには、取付部126を介して、第2ノズル121を保持する第2ノズル保持部127が取り付けられている。プーリ124aは、モータ124cによって回転駆動される。モータ124cは、制御部40によって制御される。プーリ124aが回転駆動されると、無端ベルト124bが回転し、第2ノズル保持部127に保持された第2ノズル121が、垂直方向であるZ1方向又はZ2方向へ移動する。
図1に示すように、吐出位置74に設けられた保持チャンバ220、及び処理チャンバ231,232は、平面視において、左右方向であるX方向に一直線上に配置されている。第2ノズル121は、第2水平移動機構123によって、保持チャンバ220の上方、及び処理チャンバ231,232の上方を結ぶ直線状の移動経路76に沿って、水平移動する。第2ノズル121の水平移動経路76から、各チャンバ220,231,232までの垂直移動は、第2垂直移動機構124によって行われる。
図示した第1駆動部112及び第2駆動部122は、ベルト駆動方式によってノズル111,112を移動させるものであるが、他の駆動方式によってノズル111,112を移動させるものであってもよい。他の駆動方式は、例えば、ねじ軸の回転によって移動する機構を有するもの、又は、回転駆動されるローラがガイドレールに沿って走行する機構を有するものを採用できる。第1水平移動機構113及び第2水平移動機構123による水平移動経路75,76は、曲線経路でもよい。
図3に示すように、分注部210は、第1ノズル111によって検体を吸引するための検体吸引回路150と、第2ノズル121によって検体を処理チャンバ231,232へ分注するための分注回路180と、を更に備えている。検体吸引回路150及び分注回路180は、空圧回路を有して構成されている。
検体吸引回路150は、第1圧力源151と、第1ノズル111から第1圧力源151に至る流路161と、を備えている。第1圧力源151は、例えば、シリンジポンプである。第1ノズル111は、吸引ノズル111bと撹拌ノズル111cとを一体的に有して構成されている。吸引ノズル111b及び撹拌ノズル111cは、それぞれ下端に吸引口111a,111dを有しており、これらの吸引口111a,111dから、それぞれ検体を吸引及び吐出可能である。前述の第1流路161は、吸引ノズル111bに接続されている。検体吸引回路150は、第2圧力源152と、撹拌ノズル111cから第2圧力源152に至る流路164と、を更に備えている。第2圧力源152は、例えば、ダイヤフラムポンプである。
撹拌ノズル111cは、検体容器61,62からの検体の吸引に先立って、検体容器61,62内の検体を撹拌する。これにより、尿検体中の有形成分を均一に分散させ、有形成分の分析結果を精度良く取得することができる。第2圧力源152によって発生させた吸引圧力によって、撹拌ノズル111cを介して検体容器61,62から検体を吸引して、撹拌ノズル111cから流路164へ検体を流入させ、その後、第2圧力源152によって発生させた吐出圧力によって、流路164中の検体を、再び、撹拌ノズル111cから検体容器15へ吐出する。撹拌ノズル111cによる吸引・吐出を繰り返すことで、検体を十分に撹拌することができる。撹拌された検体は、第1圧力源151によって発生させた吸引圧力によって、吸引ノズル111bから吸引される。吸引ノズル111bによって吸引された検体が、保持チャンバ220へ吐出される。
分注回路180は、圧力源153と、第2ノズル121から圧力源153に至る流路163と、を備えている。圧力源153は、例えば、シリンジポンプである。分注回路180は、保持チャンバ220内の検体を、第2ノズル121によって吸引し、吸引した検体を処理チャンバ231,232へ分注する。圧力源153によって発生させた吸引圧力によって検体が吸引され、圧力源153によって発生させた吐出圧力によって、検体が処理チャンバ231,232へ吐出される。
なお、検体吸引回路150及び分注回路180は、流路切替のための図示しないバルブを含む。
処理チャンバ231,232へ分注された検体は、各処理チャンバ231,232において、測定試料として調製される。測定試料の調製は、処理チャンバ231,232へ供給された試薬と、検体と、を混合することで行われる。第1処理チャンバ231では、第1測定試料が調製され、第2処理チャンバ232では、第2測定試料が調製される。
第1測定試料は、第1処理チャンバ231内で、尿検体と第1試薬とを混合することによって得られる。第1試薬は、例えば、希釈液及び染色液である。第1試薬としての染色液は、核酸を有していない有形成分を染色する蛍光色素を含む。第1測定試料では、尿検体中の有形成分が染色液によって染色されている。第1測定試料は、尿検体中の赤血球及び円柱など、核酸を有さない粒子を検出するために用いられる。
第2測定試料は、第2処理チャンバ232内で、尿検体と第2試薬とを混合することによって得られる。第2試薬は、例えば、希釈液及び染色液である。第2試薬としての染色液は、核酸を染色する色素を含む。第2測定試料では、尿検体中の有形成分が染色液によって染色されている。第2測定試料は、尿中の白血球、表皮細胞、真菌、細菌、異型細胞などの、核酸を有する細胞を検出するために用いられる。
処理チャンバ231,232にて調製された測定試料は、検出部260に供給される。検出部260は、測定試料として調製された検体の成分を検出する。検出部260は、例えば、検体に対する光学的検出を行う光学検出器によって構成される。光学検出器は、フローセルを有する。フローセルには、処理チャンバ231,232から試料導入路291によって第1測定試料又は第2測定試料が供給される。光学検出器は、フローセル中の測定試料の流れに対して、レーザ光などの光を照射し、照射した光に基づき測定試料中の成分から発せられた光を検出する。光学検出器が検出する光は、例えば、前方散乱光、側方散乱光、蛍光を含む。
検出部260は、検知した光を電気信号に変換する。検出部260は、電気信号に対して、増幅・AD変換などの処理を行う。検出部260が有する信号処理回路によって、AD変換後の信号から特徴パラメータが抽出される。特徴パラメータは、検体の分析処理に用いられるパラメータである。特徴パラメータは、例えば、前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅、側方散乱光強度、蛍光強度、蛍光パルス幅、及び蛍光パルス面積を含む。特徴パラメータは、制御部40を介して、検体中の成分の分析処理を行う処理装置50へ送信される。処理装置50は、受信した特徴パラメータに基づき、検体の成分を分析する。
[3.搬送装置]
図1に示すように、搬送装置30は、第1検体容器61が保持されたラック60を搬送可能に構成されている。搬送装置30は、第1載置領域31と、第2載置領域32と、搬送部33と、を備えている。第1載置領域31は、ラック60が載置され、搬送部33のラック受入位置33aにラック60を供給する。第2載置領域32は、搬送部33のラック排出位置33bから排出されたラック60が載置される。搬送部33は、ラック受入位置33aとラック排出位置33bと間を結ぶ搬送経路を有している。ラック60は、搬送経路上に載置され、搬送部33は、搬送経路に沿ってラック60を搬送する。搬送部33は、ラック60を、搬送経路の任意の位置に移動させることができる。
第1載置領域31は、複数のラック60を前後方向であるY方向に並べて載置できるよう形成されている。第1載置領域31は、図示しない送り機構を有しており、送り機構は、ラック60を、後方であるY2方向に搬送する。第1載置領域31の送り機構は、ラック60をラック受入位置33aへ供給する。
搬送部33は、ラック受入位置33aへ供給されたラック60を搬送経路に沿って移動させる搬送機構300を有している。搬送機構300については後述する。実施形態において、搬送部33による搬送経路の長さは、ラック60の長さの約3倍程度に設定されている。したがって、搬送部33の搬送経路上には、同時に、少なくとも1又は2個のラック60を載置可能である。
第2載置領域32は、複数のラック60を前後方向であるY方向に並べて載置できるように形成されている。第2載置領域32は、図示しない送り機構を有しており、送り機構は、ラック60を、前方であるY1方向に搬送する。第2載置領域32の送り機構は、搬送部33のラック排出位置33bにあるラック60を、第2載置領域32へ排出させる。
図1に示すように、搬送部33の搬送経路上には、第1ノズル111による第1検体吸引位置71が設定されている。第1検体吸引位置71は、ラック受入位置33aとラック排出位置33bとの間に設定されている。搬送部33は、ラック受入位置33aに載置されたラック60に保持された複数の第1検体容器61が、順次、第1検体吸引位置71に来るように、ラック60を搬送する。したがって、ラック60に保持された第1検体容器61は、第1検体吸引位置71に順次搬送される。搬送部33によって第1検体吸引位置71に搬送された第1検体容器61の検体は、第1検体吸引位置71に移動してきた第1ノズル111によって吸引される。
検体分析装置10は、第1検体吸引位置71に搬送されてきた第1検体容器61が有する検体情報を読み取る読取部90を備えている。図8に示すように、検体情報は、例えば、第1検体容器61に付されたバーコード67に記録された検体番号である。検体情報がバーコードによって示される場合、読取部90は、バーコードリーダである。本実施形態において、第1検体吸引位置71は、読取部90によって検体情報が読み取られる情報読取位置でもある。読取部90による検体情報の読み取りは、検体吸引に先立って行われる。なお、情報読取位置は、第1検体吸引位置71とは異なる位置であってもよい。
前述のように、第1検体吸引位置71の前方には、第2検体吸引位置72が設定されている。第2検体吸引位置72は、搬送部33の搬送経路外に設置されている。第2検体吸引位置72は、緊急(STAT)検体を吸引するための位置である。緊急検体は、ラック60に保持された第1検体容器に収容された検体に優先して測定される検体である。緊急検体が収容された第2検体容器62は、第2検体吸引位置72に設置される。
図4に示すように、搬送装置30は、第2検体容器62が設置される設置部350を有している。設置部350は、上部が開口した有底筒状に形成されており、上部開口から差し込まれた一つの第2検体容器62を保持する。設置部350は、第1載置領域31及び第2載置領域32の間であって、搬送部33よりも前方に配置されている。
図5に示すように、設置部350は、前後方向であるY方向に移動可能である。設置部350は、通常は、第1載置領域31及び第2載置領域32の間に設けられた収納部360の中に収納されている。収納部360は、搬送部33の前側に配置されている。
収納部360は、前側に形成された開口361と、開口361を開閉する開閉カバー362と、を有している。開閉カバー362が開くと、設置部350は、前方へ移動し、収納部360の外に出る。第2検体容器62は、収納部360の外に出た設置部350に設置することができる。
収納部360内には、設置部350を前後へ移動させる駆動部351が設けられている。駆動部351は、例えば、ロッドシリンダによって構成される。駆動部351は、先端が設置部35に取り付けられたロッド352を有し、ロッド352を前後へ移動させることができる。駆動部351がロッド352を前後に移動させることで、設置部350が前後に移動する。駆動部351は、制御部40によって制御される。
開閉カバー362は、収納部360の内部に設けられた支持軸364回りに揺動自在に設けられている。支持軸364は、軸方向がX方向に向いている。開閉カバー362は、開閉カバー362の後部から支持軸364の間を連結する連結片365を有している。連結片365の後端が、支持軸364に対して揺動自在に取り付けられている。図5において、開閉カバー362は、支持軸364を中心として、反時計回りに揺動することで開き、時計回りに揺動することで閉じる。
開閉カバー362の開閉動作と設置部350の前後移動とは、連動する。設置部350は、その上下方向中途に、ローラ355を有している。ローラ355は、連結片365に形成された長孔366内に、回転摺動自在に挿入されている。設置部350が、駆動部351によって前方移動すると、ローラ355が、連結片365を前方に押し出す。これにより、開閉カバー362が、反時計回りに揺動し、開く。
設置部350が、駆動部351によって後方移動すると、設置部350が収納部360内に収納され、それに連動して、開閉カバー362が閉じられる。設置部350の後方移動により、設置部350に設置された第2検体容器62が、第2検体吸引位置72に位置する。なお、開閉カバー362の閉動作は、オペレータの手動操作によって行うこともできる。すなわち、オペレータが開閉カバー362を後方に押すと、開閉カバー362が閉じられる。開閉カバー362が閉じられると、それに連動して、設置部350は、後方へ移動し、収納部360内に収納される。
図4及び図6に示すように、収納部360の上部に、開口367を有している。開口367は、第1ノズル11が、上方から収納部360内に進入するためのものである。図6に示すように、第2検体容器62が第2検体吸引位置72にセットされると、第1ノズル111が、第2検体吸引位置72の上方の位置へ水平移動してくる。そして、第1ノズル111は、下方へ移動し、開口367から収納部360内へ進入し、第2検体容器62から検体を吸引する。
図7及び図8は、ラック60を搬送する搬送機構300を示している。搬送機構300は、搬送部33の搬送経路を形成する載置板370の下方に配置されている。搬送機構300は、第1機構310と、第2機構320と、を備えている。第1機構310及び第2機構320は、それぞれラック60を搬送可能である。すなわち、実施形態の搬送部33は、2つのラック60を搬送することができる。
第1機構310及び第2機構320それぞれは、ラック60に対して係合する係合ユニット331と、係合ユニット331を左右方向であるX方向に移動させる移動機構332と、を備えている。
各移動機構332は、対のプーリ341と、対のプーリ341に巻き掛けられた無端ベルト342と、一方のプーリ341を回転させるモータ343と、モータ343の回転数を検出するロータリーエンコーダ344と、を備えている。モータ343は、例えば、ステッピングモータである。
係合ユニット331は、無端ベルト342に連結され、モータ343の回転によって、X1方向およびX2方向に移動する。ラック60に係合した係合ユニット331の移動によって、ラック60が搬送部33の搬送経路に沿って移動する。係合ユニット331の移動量、すなわち、ラック60の移動量は、制御部40からモータ343に与えられる駆動パルス数によって算出される。モータ343の回転数は、モータ343に設けられたロータリーエンコーダ344によって検出されてもよい。ラック60の搬送部33における位置は、ラック受入位置33aをラック初期位置として、そのラック初期位置とラック移動量とに基づいて、算出される。ラック受入位置33aにラック60が受け入れられたことは、搬送部33に設けられたラック検出部91(図1参照)によって検出される。ラック検出部91は、例えば、フォトインタラプタである。ラック検出部91によってラック60が検出されると、制御部40は、ラック60が、ラック受入位置33a、すなわち、ラック初期位置に位置しているものと認識する。
係合ユニット331は、無端ベルト342に取り付けられた基体335と、基体335に設けられた係合爪336と、を備えている。係合爪336が、ラック60の底部に形成された凹状壁65に係合する。係合爪336が凹状壁65に係合することで、係合ユニット331がラック60に固定される。係合爪336は、搬送部333の載置板370に形成された溝370aを通って、載置板370上のラック60の底部に係合する。溝370aは、搬送部33の搬送経路方向であるX方向に沿って長く形成されている。溝370aは、前後方向に2本並設されており、第1機構310の係合爪336は、一方の溝370aから上方に突出可能であり、第2機構310の係合爪336は、他方の溝370aから上方に突出可能である。
搬送機構300は、第1機構310及び第2機構320を備えているため、図8に示すように、搬送部33に載置されている2つのラック60A,60Bを移動させることができる。
[4.制御]
制御部40による検体測定には、2つの測定モードがある。図9に示すように、第1測定モードは、ラック検体測定モード81であり、第2測定モードは、緊急検体測定モード82である。ラック検体測定モード81では、ラック60に保持された複数の第1検体容器61内の検体の連続測定が行われる。複数の第1検体容器61は、連続測定のため、第1検体吸引位置71へ順次搬送される。緊急検体測定モード82では、設置部350に設置された第2検体容器62内の検体が測定される。
各モード81,82は、表示部52の表示画面55に表示された選択ボタン52a,52bを選択することで、実行される。第1選択ボタン52aは、ラック検体測定モード81の選択用である。第2選択ボタン52bは、緊急検体測定モード82の選択用である。第1選択ボタン52aは、第1検体容器61の検体の測定指示を受け付ける第1指示部であり、第2選択ボタン52bは、第2検体容器62の検体の測定指示を受け付ける第2指示部である。選択ボタン52a,52bが、入力部53の操作によって選択されると、各モード81,82が実行される。
第1選択ボタン52aが選択されると、制御部40は、図10に示すラック検体測定モードのための処理を実行する。まず、ステップS10において、第1載置領域31に載置されたラック60が、Y2方向に移動し、搬送部33のラック受入位置33aに供給される。ラック受入位置33aにラック60が受け入れられたことは、搬送部33に設けられたラック検出部91によって検出される。ステップS10によって、制御部40は、ラック60が、搬送部33による搬送経路上に位置することを認識する。なお、第1載置領域31に複数のラック60が載置されていた場合には2つのラック60が搬送部33に供給される。ステップS11において、ラック60に保持された複数の第1検体容器61のうち、ラック60の左端、すなわち第2載置領域32側端、の第1検体容器61が、搬送部33によって第1検体吸引位置71に搬送される。ステップS12において、読取部90は、情報読取位置でもある第1検体吸引位置71に搬送された第1検体容器61が有するバーコード67を読み取る。バーコード67の読み取りによって、検体番号などの検体情報が読み取られる。
続いて、ステップS13において、第1ノズル111が、第1駆動部112によって、初期位置73から第1検体吸引位置71へ移動する。ステップS14において、第1検体吸引位置71に位置した第1ノズル111は、第1検体容器61内の検体を撹拌する。検体の撹拌は、第1ノズル111の撹拌ノズル111cが、第1検体容器61から検体を吸引し、吸引した検体を再び吐出することによって行われる。撹拌ノズル111cによる検体の吸引・吐出は複数回行われる。
検体撹拌後のステップS15において、第1ノズル111の吸引ノズル111bは、第1検体容器61から、撹拌された検体を吸引する。ステップS16において、検体を吸引した第1ノズル111は、吐出位置74へ移動する。ステップS17において、第1ノズル111は、吸引した検体を、吐出位置74に設けられた保持チャンバ220へ吐出する。ステップ18において、第1ノズル111は、次の検体の吸引に備えて洗浄され、待機位置である初期位置73へ移動する。
ステップS19において、搬送部33上のラック60に保持されている全ての第1検体容器61の検体測定が完了したかが判定される。ラック60に保持されている全ての第1検体容器61の検体測定が完了していなければ、検体の連続測定のため、再びステップS11からステップS18が行われる。すなわち、搬送部33によって、次に検体が吸引される第1検体容器61が、第1検体吸引位置71へ搬送され、その後、検体撹拌、検体吸引、検体吐出などが行われる。ラック60に保持されている全ての第1検体容器61の検体測定が完了していれば、ステップS20において、ラック60は、搬送部33によって、ラック排出位置33bに搬送され、第2載置領域32へ排出される。ステップS20により、制御部40は、搬送部33の搬送経路上にラック60が位置しなくなったことを認識する。ラック60を第2載置領域32へ排出した後、第1載置領域32にラック60が載置されていれば、ステップS10に戻り、第1載置領域32のラック60が搬送部33へ供給される。
保持チャンバ220へ吐出された検体は、第2ユニット120によって、処理チャンバ231,232へ分注される。処理チャンバ231,232では、測定試料が調製され、測定試料は、検出部260に送られる。検出部260は、測定試料として調製された検体の成分を検出する。本実施形態では、第1検体容器61から処理チャンバ231,232への検体の分注が、第1ユニット110と第2ユニット120によって分けて行われるため、第1ユニット110の動作と、第2ユニット120の動作及びそれ以降の動作とを、並行して行うことができる。例えば、ある検体の処理チャンバ231,232への分注、測定試料の調製、及び成分検出を行っている間に、次の検体を第1ノズル111によって吸引することができる。換言すると、第1ノズル111は、処理チャンバ231,232での測定試料の調製が完了する前に、次の検体を吸引することができる。
第2選択ボタン52bの選択は、ラック検体測定モード81が実行中でない場合はもちろん、ラック検体測定モード81が実行中である場合も行える。すなわち、第2選択ボタン52bの選択は、図10に示す測定手順の任意の時点において行うことができる。ラック検体測定モード81の実行に割り込んで、緊急検体測定モード82が実行される場合、搬送部33によるラック60の搬送が中断され、設置部350に設置された第2検体容器の緊急検体の測定が行われる。第2選択ボタン52bの選択によって、緊急検体の測定指示がなされると、緊急検体を吸引する必要性が生じる。なお、緊急検体の測定指示を受け付ける指示部は、画面表示された第2選択ボタン52bに代えて、物理的に押し操作が行える機械的なボタンであってもよい。また、設置部350に第2検体容器62が設置されたことを検知した場合に、緊急検体の測定指示を受け付けるように構成してもよい。また、開閉カバー362が閉じられたことを検知した場合に、設置部350に第2検体容器62が設置されたことを検知する構成としてもよい。
第2選択ボタン52bが選択されると、図11に示す緊急(STAT)測定ダイアログ500が表示され、図9に示す測定準備処理83が実行される。緊急測定ダイアログ500は、検体番号入力領域501、連続測定設定領域502、プログレスバー504、測定開始ボタン505などを含む。検体番号入力領域501は、緊急検体の検体番号をオペレータが入力するための領域である。連続測定設定領域502は、緊急検体の連続測定を行うか否かの設定を行うための領域である。オペレータが、連続測定設定領域502に含まれるチェックボックス503にチェックを入れると、緊急検体の測定終了後に、他の緊急検体の測定が連続して行われる。プログレスバー504は、測定準備処理83が完了するまでの時間を示す。測定開始ボタン505は、緊急検体の測定開始を指示するボタンである。
測定準備処理83は、第2選択ボタン52bが選択されて、第1ノズル111によって緊急検体を吸引する必要性が生じた場合に、実行される。測定準備処理83は、緊急検体測定モード82の開始に先立って実行される。図12のステップS21からステップS28が測定準備処理を示す。測定準備処理83では、まず、ステップS21において、緊急測定ダイアログ500が表示される。ステップS22において、制御部40は、第1検体容器61を第1検体吸引位置71へ搬送中であるか否か判定する。すなわち、ステップ22では、第2選択ボタン52bが選択されて緊急検体の吸引の必要性が生じたのが、ステップS11の途中であるかが判定される。
ステップS22において、ステップS11の途中ではなくラック60が停止状態にあると判定された場合、すなわち、ラック60がラック受入位置33aで停止している場合、又は、ラック60が第1検体吸引位置71上で停止している場合、ステップS24では、ラック60の現在位置が、制御部40の記憶装置42に記憶される。ラック60の現在位置は、ラック60の搬送が中断された時点における、搬送部33におけるラック60の位置である。
ステップS22において、ステップS11の途中でありラック60が移動状態にあると判定された場合、ステップ23が行われる。ステップS23では、ラック60の移動を途中で中断するのではなく、次に検体吸引がされる第1検体容器61が第1検体吸引位置71へ到達してから、ラック検体測定モード81におけるラック60の搬送を中断させる。つまり、ステップS11の途中で、第2選択ボタン52bが選択された場合、ステップS11が完了してから、ラック検体測定モード18を中断する。
次に検体吸引がされる第1検体容器61が第1検体吸引位置71へ到達すると、ステップS24に示すように、ラック現在位置が記憶される。ステップS24で記憶されたラック現在位置は、緊急検体測定モード82からラック検体測定モード81に復帰したときに、ラック60を復帰させるために用いられる。ラック60の移動中に、緊急検体測定モード82が選択された場合であっても、次に検体吸引がされる第1検体容器61が第1検体吸引位置71へ到達するまでラック60の移動を継続することで、ラック60の復帰が容易となる。
ステップS25において、制御部40は、第1吸引位置71にある第1検体容器61の検体処理中であるか否かを判定する。本実施形態において、第1検体容器61の検体処理とは、図10のステップS13からステップS18までの処理をいう。すなわち、検体処理は、第1ノズル111が初期位置73から移動開始して初期位置73に戻るまでの間に行われる。検体処理の途中に、第2選択ボタン52bが選択された場合に、直ちに、検体処理を中断するのではなく、現在行われている検体処理が完了してから、ラック検体測定モード81を中断する。これにより、現在行われている第1検体容器61の検体処理を最初からやり直す必要がなくなる。また、ステップS13以降の検体処理中に第2選択ボタン52bが選択された場合において、ステップ18までの処理を継続するのに代えて、検出部260による検体成分の検出までの処理が完了してから、ラック検体測定モード81を中断してもよい。
制御部40は、ステップS27において、ラック検体測定モードにおける処理進行状況を、記憶装置42に記憶する。記憶された処理進行状況は、緊急検体測定モード82からラック検体測定モード81に復帰したときに、ラック検体測定モード81における処理を継続するために用いられる。
記憶される処理進行状況の種類は、第1状態、第2状態、第3状態の3つの状態を含む。第1状態は、検体吸引がされる第1検体容器61が、第1検体吸引位置71に搬送されたが、その第1検体容器61のバーコード読取は行われていない状態であり、図10のステップS11とステップS12の間である。第2状態は、第1検体容器61のバーコード読取は行われたが、その第1検体容器61の検体処理(ステップS13からステップS18)が行われていない状態であり、図10のステップS12とステップS13の間である。第3状態は、検体処理が完了したが、次に検体吸引がされる第1検体容器61は未だ第1検体吸引位置71に到達していない状態であり、図10のステップS18とステップS18の次に行われるステップS11との間である。制御部40は、緊急検体測定モード82からラック検体測定モード81に復帰する場合、基本的に、記憶された処理進行状況が示す状態に復帰する。
本実施形態では、図10に示すラック検体測定モード81の実行中の任意の時点で、緊急検体測定モード82を選択することができるが、緊急検体測定モード82が選択されても直ちに、ラック検体測定モード81を中断するのではなく、第1状態から第3状態のように切のいいところまで実行してから、ラック検体測定モード81を中断するため、ラック検体測定モード81への復帰が容易となる。
ステップS22からステップS27までの処理の進行状況は、プログレスバー504によって示される。ステップS27までの処理が完了すると、緊急測定ダイアログ500からプログレスバー504が消える。また、緊急測定ダイアログ500の検体番号入力領域501に検体番号が入力されている場合には、ステップS28に示すように、測定開始ボタン505がアクティブになり、測定開始ボタン505を選択可能となる。また、ステップS28では、図4に示すように開閉カバー362が開き、設置部350に第2検体容器62を設置できるようになる。このように、開閉カバー362は、第2選択ボタン52bが選択されると、自動的に開く。
オペレータが、設置部350に第2検体容器62をセットし、測定開始ボタン505を選択することで測定開始指示がなされると、ステップS29で示されるラック退避処理84(図9参照)が行われ、ステップS30において緊急測定ダイアログ500が閉じられる。その後、設置部350に設置された第2検体容器62が第2検体吸引位置72へ移動し、開閉カバー362が閉じられ、緊急測定モード82が実行開始する。
ラック60の退避処理84の後、緊急検体測定モード82が実行される。緊急検体測定モード82の実行完了後、ラック50の復帰処理85が行われ、ラック検体測定モード81の実行が再開される。退避処理84及び復帰処理85については後述する。
緊急検体測定モード82において、制御部40は、図13に示す処理を実行する。まず、ステップS31において、第1ノズル111が、第1駆動部112によって、初期位置73から、第2検体吸引位置72へ移動する。ステップS32において、第2検体吸引位置72に位置した第1ノズル111は、第2検体容器62内の緊急検体を撹拌する。
検体撹拌後のステップS33において、第1ノズル111は、第2検体容器62から、撹拌された検体を吸引する。ステップS34において、検体を吸引した第1ノズル111は、吐出位置74へ移動する。ステップS35において、第1ノズル111は、吸引した検体を、吐出位置74に設けられた保持チャンバ220へ吐出する。ステップS36において、第1ノズル111は、次の検体の吸引に備えて洗浄され、待機位置である初期位置73へ移動する。
保持チャンバ220へ吐出された検体は、第2ユニット120によって、処理チャンバ231,232へ分注される。処理チャンバ231,232では、測定試料が調製され、測定試料は、検出部260に送られる。検出部260は、測定試料として調製された検体の成分を検出する。
第1ノズル111が、初期位置73へ戻ると、ステップS37において、開閉カバー362が開き、設置部350が前方へ移動する。これにより、検体吸引済みの第2検体容器62を設置部350から取り出すことができる。なお、本実施形態では、第2検体容器61から処理チャンバ231,232への検体の分注が、第1ユニット110と第2ユニット120によって分けて行われるため、第1ユニット110の動作と、第2ユニット120の動作及びそれ以降の動作とを、並行して行うことができる。なお、開閉カバー362が開くのは、検出部260による検体成分の検出までの処理が完了した後でもよい。
制御部40は、ステップS38において、緊急検体の連続測定が設定されているか否かを判定する。図11の緊急測定ダイアログ500において、緊急検体の連続測定のためのチェックボックス503にチェックが入っている場合、すなわち、緊急検体の連続測定が設定されている場合、ステップS39に移行して緊急測定ダイアログ500が表示される。オペレータが、次の第2検体容器62を設置部350にセットし、検体番号を入力し、測定開始ボタン505を選択することで、緊急測定ダイアログ500が閉じられ、再びステップS31以降の処理が繰り返される。
緊急検体の連続測定が設定されていない場合は、緊急測定モード82が完了し、図14に示すラック復帰処理85を経て、ラック検体測定モード81に復帰する。復帰したラック検体測定モード81では、記憶された処理進行状況に基づき、緊急測定モード82による割り込み前の動作を引き続いて行う。ラック復帰処理85については後述する。
[5.ラックの退避と復帰]
図15〜図18は、ラック60の退避と復帰による第1検体容器61の移動の様子を示している。図15(a)では、搬送部33上に一つのラック60が載置されており、ラック60の右から2番目の第1検体容器61Aが、第1検体吸引位置71に位置している。図15(a)の状態で、第2選択ボタン52bが選択され、第1ノズル111によって緊急検体を吸引する必要性が生じたものとする。また、第2選択ボタン52bの選択は、図10のステップ13からステップS18の途中で行われるものとする。第2選択ボタン52bが選択されると、ステップS18までの処理が完了してから、緊急検体測定モード82へ移行する。この場合、制御部40は、ラック60の現在位置として、図15(a)に示す位置を記憶する。また、制御部40は、処理進行状況として、第1検体吸引位置71にある第1検体容器61Aの検体処理は完了したが、次に検体吸引がされる第1検体容器61Bは未だ第1検体吸引位置71に到達していない状態であることを記憶する。この状態は、前述の第3状態である。
この場合において、ラック退避処理84が行われると、ラック60は、退避のため、搬送部33による搬送経路に沿って移動し、図15(b)(c)に示す位置へ退避する。図15(b)(c)において実線で示すラック60は、退避のため、ラック受入位置33aへ向けてX1方向へ移動した場合の退避位置を示す。なお、図15(b)(c)において、2点鎖線で示すラック60は、退避のため、ラック排出位置33bへ向けてX方向へ移動した場合の退避位置を示す。このように、退避位置は、ラック受入位置33a側でもよいし、ラック排出位置33b側でもよい。
図15(b)(c)では、ラック60全体が、第1検体吸引位置71から離れる。緊急検体測定モード82では、図15(b)(c)の状態で、第2検体吸引位置72にある第2検体容器62から緊急検体を吸引した第1ノズル111は、第1検体吸引位置71の上方を移動して、保持チャンバ220へ向かう。第1ノズル111の移動経路75の下方には第1検体容器61が存在しない。つまり、第1検体容器61は、第1ノズル111の移動経路75の直下から離れて位置する。したがって、仮に、第1ノズル111から検体が落下しても、その検体が第1検体容器61に混入することが防止される。本実施形態では、緊急検体の吸引前に、第1ノズル111によって緊急検体の撹拌が行われるため、第1ノズル111の外周にも検体が付着しやすく、第1ノズル111の外周からも検体が落下する可能性が高まるが、検体落下が生じても、第1検体容器61への混入が確実に防止される。
ラック60の退避位置は、ラック受入位置33a又はラック排出位置33bと一致する位置であってもよいが、本実施形態では、ラック60の退避位置は、ラック受入位置33a又はラック排出位置33bよりも、第1検体吸引位置71よりの位置に設定されている。ラック受入位置33a又はラック排出位置33bまでラック60を退避させると、ラック60を搬送部33から取り出すことが容易となり、オペレータが、退避したラック60を誤って取り出すおそれがある。
これに対し、本実施形態では、オペレータが、退避したラック60を誤って取り出すおそれが少ない。つまり、図4に示すように、搬送部33には、規制部371が設けられている。規制部371は、ラック受入位置33aとラック排出位置33bとの間において、ラック60が、前方へ移動するのを規制する。規制部371は、載置面370の前側において立設された壁として構成されている。したがって、図15(b)に示すように、ラック60の長手方向の少なくとも一部が、規制部371が設けられている範囲に位置することで、オペレータがラック60を誤って取り出すおそれが低くなる。また、ラック受入位置33aとラック排出位置33bとの間には、収納部360が立設されているため、かかる観点からも、オペレータがラック60を誤って取り出すおそれが低くなる。
緊急検体測定モード82が終了すると、すなわち、緊急検体の連続測定が設定されていない状態で、第1ノズル111が初期位置73へ戻ったことが検知されると、図15(d)に示すように、制御部40は、ラック復帰処理85により、ラック60を復帰させる。なお、緊急検体を吸引した第1ノズル111が第1検体吸引位置71の上方を通過したことを検知した場合に、ラック復帰処理85を開始してもよいし、緊急検体を吸引した第1ノズル111が保持チャンバ220に到達したことを検知した場合に、ラック復帰処理85を開始してもよい。図14に示すように、ラック復帰処理85では、ステップS41において、緊急検体測定モード82の実行前のラック位置が読み出される。読み出されるラック位置は、図12のステップS24において制御部40が記憶したラック60の現在位置である。ステップS42において、読み出されたラック位置に基づいて、ラック60の復帰位置が算出される。ステップS43において、ラック60が復帰位置へ移動する。図15(d)では、復帰位置は、ラック検体測定モード81への割り込みが発生した時点で第1検体吸引位置71にあった第1検体容器61Aの次に検体が吸引される第1検体容器61Bが、第1検体吸引位置71へ位置することができるラック60の位置である。具体的には、ラック60内で第1検体容器61A及び第1検体容器61Bを保持する2つの隣り合った容器保持穴のそれぞれの中心点間の距離が記憶装置42に予め記憶されており、制御部40は、ステップS41で読み出されたラック位置と、上記中心点間の距離に基づいて、復帰位置を算出する。
ラック60の復帰は、図12のステップS24において制御部40が記憶した現在位置に基づき、単に、図15(b)に示す退避位置のラック60を、図15(a)に示すラック60の位置に復帰させてもよい。ただし、その場合、退避していた第1検体容器61Aを、第1検体吸引位置71へ復帰させた後、さらに、図10のステップS11を実行し、次に検体吸引がされる第1検体容器61Bを第1検体吸引位置71へ搬送させる必要がある。
これに対し、本実施形態では、ラック復帰の際に、図15(d)に示すように、複数の第1検体容器のうち、次に検体吸引がされる第1検体容器61Bを第1検体吸引位置71に位置させるため、ラック検体測定モード81に復帰した直後において、図10のステップS11を省略することができる。また、本実施形態では、第1検体吸引位置71は、検体情報の情報読取位置でもあるため、図15(d)に示す位置へのラック60の復帰は、次に検体情報が読み取られる第1検体容器61Bが、情報読取位置へ位置することでもある。
図16は、ラック60の退避位置の変形例を示している。図15では、ラック60全体が、第1検体吸引位置71から離れた位置へ退避していたが、図16(a)(b)では、ラック60自体は、第1検体吸引位置71にあるものの、ラック60に保持された第1検体容器61が、第1検体吸引位置71から離れた位置にある。すなわち、図16(a)(b)では、ラック60に保持された隣り合う2つの第1検体容器61の間に第1検体吸引位置71が位置するように、第1検体容器61が退避する。この場合において、第2検体容器62から緊急検体を吸引した第1ノズル111が、第1検体吸引位置71の上方を移動しても、第1ノズル111の移動経路75の下方には第1検体容器61が存在しないため、第1検体容器61への検体混入が防止される。図16のようにラック60を退避させる場合、退避のためのラック60の移動量を少なくできる。
図17は、搬送部33に2つのラック60が載置されている場合における、ラック60の退避の仕方を示している。図17(a)では、第1ラック60A及び第2ラック60Bが、搬送部33に載置されている。第1ラック60Aに保持された第1検体容器61が、第1検体吸引位置71にある。この場合において、ラック退避処理84が行われると、ラック排出位置33b側にある第1ラック60Aは、ラック排出位置33b側への退避位置へ移動し、ラック受入位置33a側にある第2ラック60Bは、ラック受入位置33a側の退避位置へ移動する。つまり、二つのラック60A,60Bが、第1検体吸引位置71を挟んで互いに離れるように移動する。これにより、第2検体容器62から緊急検体を吸引した第1ノズル111が、第1検体吸引位置71の上方を移動しても、第1ノズル11の移動経路75の下方には、2つのラック60A,60Bのいずれもが存在しなくなる。
搬送部33に2つのラック60が載置されている場合において、特に説明しない点については、図15に示す場合と同様である。
図18(a)(b)は、搬送部33上に一つのラック60が載置されているが、ラック60に保持された第1検体容器61が、いずれも第1検体吸引位置71に位置していない場合のラック60の退避を示している。図18(a)において、第1検体容器61は、第1検体吸引位置71に位置していない。図18(a)に示す状態は、例えば、ラック60に保持された第1検体容器61のいずれもが、未だ第1検体吸引位置71へ搬送されておらず、ラック受入位置33aに停止している状態である。
図18(a)の状態で、第2選択ボタン52bが選択されたものとする。この場合、第1検体容器61は第1検体吸引位置71にはないが、この場合も制御部40は、図18(b)に示すように、ラック60を退避させる。この場合、ラック60はラック排出位置33b側に移動される。このように、本実施形態では、制御部40は、ラック60が第1検体吸引位置71になくても搬送部33の搬送経路上にあれば、予め設定された退避位置へラック60を退避させる。
なお、図18(b)に示す位置へ退避したラック60が復帰する場合には、図18(a)に示す位置へ復帰してもよいし、ラック60に保持された複数の第1検体容器61のうち、次に検体吸引がされる第1検体容器61が第1検体吸引位置71に位置するようにしてもよい。
なお、上述の実施形態では、第2選択ボタン52bが選択された場合、第1検体容器61が第1検体吸引位置71に位置していても、位置していなくても、制御部40は、第1検体容器61を保持したラック60を第1検体吸引位置71から離れた位置に移動させているが、本発明はこれに限らない。たとえば、第2選択ボタン52bが選択された場合、制御部40が、第1検体吸引位置71に第1検体容器61が位置しているか否かを判定し、第1検体吸引位置71に第1検体容器61が位置していると判定した場合には、第1検体容器61を保持したラック60を第1検体吸引位置71から離れた位置に移動させ、第1検体吸引位置71に第1検体容器61が位置していないと判定した場合は、第1検体容器61を保持したラック60を移動させず現在の位置に停止させておいてもよい。
また、上述の実施形態では、搬送部33が複数の第1検体容器61を保持したラック60を搬送するように構成されているが、搬送部33はラック60を搬送するように構成されなくてもよく、たとえば、搬送部33は、1つの第1検体容器61を保持可能な容器保持部を複数連続して搬送するように構成されてもよい。
また、上述の実施形態では、第1ノズル111は、搬送部33によって搬送されるラック60の上端又はラック60によって保持される第1検体容器61よりも高い位置を移動するが、第1ノズル111は、搬送部33によって搬送されるラック60の上端又はラック60によって保持される第1検体容器61よりも低い位置を移動するよう構成されていてもよい。第1ノズル111が低い位置を移動することで、第1ノズル111から落下した検体が、第1検体容器61に進入するのを防止できる。しかも、第2検体容器62から検体を吸引した第1ノズル111が移動する際には、ラック退避処理84によってラック60が第1ノズル111の移動経路75から退避しているため、第1ノズル111がラック60又は第1検体容器61と接触することを防止できる。
また、上述の実施形態では、1つの測定ユニット20および1つの搬送装置30から構成される検体分析装置10に本発明を適用した例を示したが、特開2011−52982号公報に開示されているような、複数の測定ユニット及びこれらの測定ユニットに対応して設けられた複数の搬送装置から構成される検体分析システムに本発明を適用してもよい。