JP2019109146A - 質量分析計のためのイメージング用試料を作製する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温下でも凍結切片を粘着支持でき、硬組織や大きな生物試料から、質量分析計を用いたイメージングによる生命化学の研究に利用できる、物理的又は化学的な影響を排除した薄い凍結切片を効率良く作製する。【解決手段】生物試料を水溶性包埋剤で凍結包埋して包埋生物試料4を作製する包埋工程;包埋生物試料4に導電性粘着フィルム10を貼付ける貼付工程;及び導電性粘着フィルム10とともに刃物5で所定の厚さに包埋生物試料4を切断してイメージング用試料20を作製する切断工程;を含む、質量分析計のためのイメージング用試料の作製方法。【選択図】図3
Description
本発明は、凍結した生物試料(例えば、実験動物試料、植物試料)から質量分析計を用いたイメージングによる生命科学の研究(例えば、組織学的研究、組織化学的研究、酵素組織化学的研究、免疫組織化学的研究、遺伝子組織化学的研究、水溶性物質の体内分布研究)に利用できる薄切片(例えば、厚さ5〜30μm)を得るのに好適な試料作製方法に関するものである。
質量分析計を用いたイメージングによる生命科学の研究では、化学薬品により固定処理、脱灰処理されていない(以後、未固定非脱灰と呼ぶ)硬組織や大きな生物試料から作製される薄い凍結切片(厚さ5〜30μm)が必要とされている。しかし、従来の生物組織凍結切片方法では、非導電性粘着プラスチックフィルムを用いたり、非導電性粘着プラスチックフィルムを用いて切片を作製したのちに、物理的又は化学的処理を行い質量分析計を用いたイメージング用試料としていたため、感度の低下や物理的又は化学的な汚染の影響を排除することができなかった(非特許文献1)。
日本組織細胞化学会編 組織細胞化学2005 pp.95−107(2005)
従来の生物組織凍結薄切方法では、体内物質等の保存状態に影響を与えないように、例えば、−20℃の冷凍庫内で、凍結薄切を実施するが、その際、凍結切片を支持する為に、上述のとおり、非導電性であるプラスチックフィルムを用いていた。そのため、質量分析計を用いたイメージングでは、試料に電荷の蓄積が起こり著しく感度を低下させる問題が生じていた。そこで、質量分析計を用いたイメージングで感度を低下させないために、非導電性であるプラスチックフィルム上の凍結切片に電荷が蓄積することを防止する目的で、導電性基材上に物理的又は化学的手法を用いて試料を転写することも検討されている。しかしこの方法でも、体内物質等の保存状態への物理的又は化学的な影響を排除することができないという問題が残る。
そのため、従来の質量分析計を用いたイメージング用試料作製方法では、未固定非脱灰の硬組織や大きな生物試料(例えば、薄切面が4cm×5cmの大きさ)から、質量分析計を用いたイメージングによる生命科学の研究に利用できる、体内物質等の保存状態への物理的又は化学的な影響を排除した薄い凍結切片(例えば、厚さが5〜30μm)試料を作製することはできなかった。
そこで、本発明は、上記の問題点を解決し、低温下でも凍結切片を粘着支持でき、硬組織や大きな生物試料から、質量分析計を用いたイメージングによる生命化学の研究に利用できる、物理的又は化学的な影響を排除した薄い凍結切片を効率良く作製することを目的とする。なお本開示で、「低温」とは、特記がない限り、−10℃から−30℃を意味する。低温は、より典型的には−15℃から−25℃である。
本発明は、水溶性包埋剤中に凍結包埋した生物試料(例えば、未固定非脱灰の硬組織、実験動物の全身等)を凍結薄切装置に固定し、その固定した試料の所定面に低温でも粘着性を有する導電性粘着剤を塗布した薄いフィルム(以後、導電性粘着フィルムと呼ぶ)を貼り付け、導電性粘着フィルムが貼り付いた状態の試料を、質量分析計を用いたイメージングのための試料として、刃物により所定の厚さに薄切する方法に関する。
本発明は、以下の具体的態様を含む。
[1] 以下の工程:
生物試料を水溶性包埋剤で凍結包埋して包埋生物試料を作製する包埋工程;
前記包埋生物試料に導電性粘着フィルムを貼付ける貼付工程;及び
前記導電性粘着フィルムとともに所定の厚さに前記包埋生物試料を切断してイメージング用試料を作製する切断工程;
を含む、質量分析計のためのイメージング用試料の作製方法。
[2] 前記導電性粘着フィルムが、導電性ゴムを含む第1の粘着剤を有する、上記態様1に記載の方法。
[3] 前記導電性粘着フィルムが、導電性アクリル、導電性シリコーン、及び導電性ウレタンからなる群から選択される1種以上の導電性ポリマーを含む第1の粘着剤を有する、上記態様1に記載の方法。
[4] 前記導電性粘着フィルムが、基材と、前記基材の第1の表面上に配置された前記第1の粘着剤と、前記基材の第2の表面上に配置された導電性又は非導電性の第2の粘着剤とを含み、
前記基材が、金属箔、プラスチック、及び繊維からなる群から選択され、
前記第2の粘着剤が、導電性又は非導電性のゴムを含む、上記態様2又は3に記載の方法。
[5] 前記導電性粘着フィルムが、基材と、前記基材の第1の表面上に配置された前記第1の粘着剤と、前記基材の第2の表面上に配置された導電性又は非導電性の第2の粘着剤とを含み、
前記基材が、金属箔、プラスチック、及び繊維からなる群から選択され、
前記第2の粘着剤が、アクリル、シリコーン、及びウレタンからなる群から選択される1種以上の導電性又は非導電性のポリマーを含む、上記態様2又は3に記載の方法。
[6] 前記第1の粘着剤及び前記第2の粘着剤が導電性シリコーンを含有する、上記態様5に記載の方法。
[7] 前記貼付工程において、包埋生物試料を生物組織凍結薄切装置の試料台に固定した状態で、前記包埋生物試料に前記導電性粘着フィルムを貼付ける、上記態様1〜6のいずれかに記載の方法。
[8] 以下の工程:
上記態様1〜7のいずれかに記載の方法でイメージング用試料を作製する工程;及び
前記イメージング用試料を導電性又は非導電性の基板に貼付して基板付イメージング用試料を作製する工程;
を含む、質量分析計のための基板付イメージング用試料の作製方法。
[1] 以下の工程:
生物試料を水溶性包埋剤で凍結包埋して包埋生物試料を作製する包埋工程;
前記包埋生物試料に導電性粘着フィルムを貼付ける貼付工程;及び
前記導電性粘着フィルムとともに所定の厚さに前記包埋生物試料を切断してイメージング用試料を作製する切断工程;
を含む、質量分析計のためのイメージング用試料の作製方法。
[2] 前記導電性粘着フィルムが、導電性ゴムを含む第1の粘着剤を有する、上記態様1に記載の方法。
[3] 前記導電性粘着フィルムが、導電性アクリル、導電性シリコーン、及び導電性ウレタンからなる群から選択される1種以上の導電性ポリマーを含む第1の粘着剤を有する、上記態様1に記載の方法。
[4] 前記導電性粘着フィルムが、基材と、前記基材の第1の表面上に配置された前記第1の粘着剤と、前記基材の第2の表面上に配置された導電性又は非導電性の第2の粘着剤とを含み、
前記基材が、金属箔、プラスチック、及び繊維からなる群から選択され、
前記第2の粘着剤が、導電性又は非導電性のゴムを含む、上記態様2又は3に記載の方法。
[5] 前記導電性粘着フィルムが、基材と、前記基材の第1の表面上に配置された前記第1の粘着剤と、前記基材の第2の表面上に配置された導電性又は非導電性の第2の粘着剤とを含み、
前記基材が、金属箔、プラスチック、及び繊維からなる群から選択され、
前記第2の粘着剤が、アクリル、シリコーン、及びウレタンからなる群から選択される1種以上の導電性又は非導電性のポリマーを含む、上記態様2又は3に記載の方法。
[6] 前記第1の粘着剤及び前記第2の粘着剤が導電性シリコーンを含有する、上記態様5に記載の方法。
[7] 前記貼付工程において、包埋生物試料を生物組織凍結薄切装置の試料台に固定した状態で、前記包埋生物試料に前記導電性粘着フィルムを貼付ける、上記態様1〜6のいずれかに記載の方法。
[8] 以下の工程:
上記態様1〜7のいずれかに記載の方法でイメージング用試料を作製する工程;及び
前記イメージング用試料を導電性又は非導電性の基板に貼付して基板付イメージング用試料を作製する工程;
を含む、質量分析計のための基板付イメージング用試料の作製方法。
本発明によれば、化学薬品により脱灰処理、固定処理等がされてない、硬組織、大きな生物試料(例えば、薄切面が4cm×5cmの大きさの試料)等から、体内物質等の保存状態への物理的又は化学的な影響を排除した厚さ5〜30μm程度の凍結切片を、簡単に、しかも確実に作製できる。
以下、本発明の実施形態の例について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本開示で、図面に付された同一の符号は、同様の構造及び/又は機能を有する要素を意図する。
<イメージング用試料を作製する方法>
本発明の一実施形態は、以下の工程:
生物試料を水溶性包埋剤で凍結包埋して包埋生物試料を作製する包埋工程;
該包埋生物試料に導電性粘着フィルムを貼付ける貼付工程;及び
該導電性粘着フィルムとともに所定の厚さに該包埋生物試料を切断してイメージング用試料を作製する切断工程;
を含む、質量分析計のためのイメージング用試料の作製方法を提供する。
本発明の一実施形態は、以下の工程:
生物試料を水溶性包埋剤で凍結包埋して包埋生物試料を作製する包埋工程;
該包埋生物試料に導電性粘着フィルムを貼付ける貼付工程;及び
該導電性粘着フィルムとともに所定の厚さに該包埋生物試料を切断してイメージング用試料を作製する切断工程;
を含む、質量分析計のためのイメージング用試料の作製方法を提供する。
質量分析計においては、試料の帯電防止のために、通常、導電性物質を介して薄切試料を試料台上に固定する。本開示の方法によれば、薄切試料が導電性粘着フィルム上に保持された状態のイメージング用試料が得られるため、薄切試料の切削面を露出させたまま当該薄切試料を導電性粘着フィルムで質量分析計の試料台に固定できる。すなわち、本開示の方法によれば、物理的又は化学的な影響が排除された、質量分析計用の凍結切片試料を簡便に作製できる。
導電性粘着フィルムは、試料の帯電防止の観点から、少なくとも包埋生物試料と接する側の面において導電性を有していればよい。しかし、好ましい態様においては、導電性粘着フィルムが全体に亘って(すなわち、例えば導電性粘着フィルムが粘着剤と基材とを含む場合には粘着剤及び基材が共に)導電性を有する。この場合、導電性基板を用いた場合に導電性基板側への導電という利点が得られる。
包埋生物試料の切断は通常凍結下、具体的には−10℃〜−30℃という低温で行われる。本開示の方法では、導電性粘着フィルムが包埋生物試料とともに上記の低温条件下に置かれることになる。加えて、通常、イメージング用試料が質量分析に供される際に、包埋生物試料は皺にならないよう引き伸ばされながら試料台に固定される。したがって、本開示の方法で用いる導電性粘着フィルムには、貼付け時、切削時、引き伸ばし時等にかかる応力に耐え得る良好な物性と、良好な粘着力とを、上記低温条件下においても保持できることが望まれる。
(包埋工程)
本開示の方法で用いられる生物試料としては、硬組織、実験動物の全身、肝臓、腎臓、皮膚、植物、果実等が例示される。また、水溶性包埋剤としては、従来公知の包埋剤を使用でき、例えば、3〜5質量%カルボキシメチルセルロース水溶液、OCTコンパウンド等を例示できる。包埋生物試料は、典型的には包埋ブロックであり、従来公知の方法(例えば、常温の水溶性包埋剤中に生物試料を配置した後、温度−40℃以下で、10〜20秒間程度凍結処理する方法)で作製できる。
本開示の方法で用いられる生物試料としては、硬組織、実験動物の全身、肝臓、腎臓、皮膚、植物、果実等が例示される。また、水溶性包埋剤としては、従来公知の包埋剤を使用でき、例えば、3〜5質量%カルボキシメチルセルロース水溶液、OCTコンパウンド等を例示できる。包埋生物試料は、典型的には包埋ブロックであり、従来公知の方法(例えば、常温の水溶性包埋剤中に生物試料を配置した後、温度−40℃以下で、10〜20秒間程度凍結処理する方法)で作製できる。
(貼付工程)
次いで、得られた包埋生物試料に導電性粘着フィルムを貼付ける。図1は、導電性粘着フィルムの例を示す図である。図1を参照し、好ましい態様において、導電性粘着フィルム10は、第1の粘着剤1を含み、又は第1の粘着剤1のみからなってもよく、基材2と、基材2の第1の表面上に配置された導電性の第1の粘着剤1とを含み、又はこれらからなってもよく、導電性の第1の粘着剤1と、導電性又は非導電性の第2の粘着剤3とを含み、又はこれらからなってもよく、基材2と、基材2の第1の表面上に配置された導電性の第1の粘着剤1と、基材2の第2の表面上に配置された導電性又は非導電性の第2の粘着剤3とを含み、又はこれらからなってもよい。
次いで、得られた包埋生物試料に導電性粘着フィルムを貼付ける。図1は、導電性粘着フィルムの例を示す図である。図1を参照し、好ましい態様において、導電性粘着フィルム10は、第1の粘着剤1を含み、又は第1の粘着剤1のみからなってもよく、基材2と、基材2の第1の表面上に配置された導電性の第1の粘着剤1とを含み、又はこれらからなってもよく、導電性の第1の粘着剤1と、導電性又は非導電性の第2の粘着剤3とを含み、又はこれらからなってもよく、基材2と、基材2の第1の表面上に配置された導電性の第1の粘着剤1と、基材2の第2の表面上に配置された導電性又は非導電性の第2の粘着剤3とを含み、又はこれらからなってもよい。
基材は、導電性材料、非導電材料のいずれであってもよい。好ましい態様において、基材は、金属箔、プラスチック(導電性プラスチック、及び非導電性プラスチック)、並びに繊維(導電性繊維、及び非導電性繊維)からなる群から選択される。金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔等が例示される。プラスチックとしては、ポリエステル、PET等が例示される。繊維としては、不織布等が例示される。基材の厚みは、薄切試料の支持体としての良好な機械強度及び可撓性を得る観点から、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは5〜150μm、更に好ましくは25〜75μmである。
第1の粘着剤は、試料の帯電防止の観点から、導電性である。本開示で、導電性であるとは、表面電気抵抗値が107Ω/sq以下であることを意味する。第1の粘着剤の表面電気抵抗値は、好ましくは102Ω/sq以下である。好ましい態様において、第1の粘着剤は、導電性物質と粘着性ポリマーとを含む。この態様の粘着性ポリマーは導電性でも非導電性でもよい。導電性物質としては、金属(例えば、ニッケル等)の粉末等が例示される。導電性の粘着性ポリマーとしては、良好な粘着力及び可撓性を低温下でも得る観点から、一態様において、各種導電性ゴムが挙げられ、また別の態様において、導電性アクリル、導電性シリコーン及び導電性ウレタンからなる群から選択される導電性ポリマー(これら導電性ポリマーは室温にてゴム弾性を有するものと有さないものとを包含する。)が挙げられる。一方、非導電性の粘着性ポリマーとしては、良好な粘着力及び可撓性を低温下でも得る観点から、一態様において、各種ゴムが挙げられ、また別の態様において、アクリル、シリコーン及びウレタンからなる群から選択されるポリマー(これらポリマーは室温にてゴム弾性を有するものと有さないものとを包含する。)が挙げられる。
別の好ましい態様において、第1の粘着剤は、上記の導電性の粘着性ポリマー(すなわち、ポリマー分子自体が導電性を有するポリマー)で構成されていてよい。
第1の粘着剤のガラス転移温度は、低温下での良好な可撓性及び粘着性を得る観点から、好ましくは−30℃以下、より好ましくは−40℃以下、更に好ましくは−50℃以下である。
第2の粘着剤としては、常温下の優れた粘着力及び可撓性を得る観点から、一態様において、導電性又は非導電性の各種ゴムが挙げられ、また別の態様において、導電性又は非導電性の、アクリル、シリコーン、及びウレタンからなる群から選択される1種以上のポリマー(これらポリマーは室温にてゴム弾性を有するものと有さないものとを包含する。)が挙げられる。各種ゴム、アクリル、シリコーン、及びウレタンの好適例は、第1の粘着剤において粘着性ポリマーの好適例として挙げたのと同様である。第2の粘着剤が導電性である場合の第2の粘着剤としては、第1の粘着剤として例示したのと同様のものが挙げられる。第1の粘着剤と第2の粘着剤とが同種であってもよい。
第1の粘着剤及び第2の粘着剤の両者が前述の導電性シリコーンを含有する場合、試料作製の作業性の点で有利である。
図2は、本発明の一実施形態における、包埋生物試料としての凍結包埋ブロックの所定面に導電性粘着フィルムを貼り付けた状態を示す断面図である。導電性粘着フィルム10は、第1の粘着剤1によって包埋生物試料4に貼り付けられる。
(切断工程)
次いで、生物試料を薄切する。図3は、本発明の一実施形態における、薄切中の凍結切片と導電性粘着フィルムとの関係を示す断面図である。図2及び3を参照し、導電性粘着フィルム10とともに、凍結状態の包埋生物試料4を所定の厚さ(例えば、質量分析計を用いたイメージングによる生命科学研究に適した厚さである5〜30μm)に刃物5(例えば、タングステンカーバイド製刃等)で切削して、導電性粘着フィルム10と、該導電性粘着フィルム10に貼り付いた薄切試料6とを含むイメージング用試料20を作製する。
次いで、生物試料を薄切する。図3は、本発明の一実施形態における、薄切中の凍結切片と導電性粘着フィルムとの関係を示す断面図である。図2及び3を参照し、導電性粘着フィルム10とともに、凍結状態の包埋生物試料4を所定の厚さ(例えば、質量分析計を用いたイメージングによる生命科学研究に適した厚さである5〜30μm)に刃物5(例えば、タングステンカーバイド製刃等)で切削して、導電性粘着フィルム10と、該導電性粘着フィルム10に貼り付いた薄切試料6とを含むイメージング用試料20を作製する。
包埋生物試料を薄切する際に、導電性粘着フィルムは得られた薄切試料の支持体として機能する。好ましい態様においては、包埋生物試料を生物組織凍結薄切装置の試料台に固定した状態で、包埋生物試料に導電性粘着フィルムを貼付ける。生物組織凍結薄切装置の設定庫内温度は、典型的には−10℃〜−30℃程度である。
導電性粘着フィルム10が基材2の第2の表面上の第2の粘着剤3を有する場合、第2の粘着剤は、質量分析計の試料台(基板)に試料を固定する機能を有する。このとき試料は、通常、皺にならないよう引き伸ばされながら固定される。したがって、第2の粘着剤は、常温下で強い粘着力、並びに良好な可撓性及び柔軟性を有するように選択されることが好ましい。なお、基板と試料とを固定するための粘着剤を別途使用する場合には、導電性粘着フィルムが第2の粘着剤を備えることは要しない。
<基板付イメージング用試料を作製する方法>
本開示はまた、以下の工程:
上記態様の方法でイメージング用試料を作製する工程;及び
該イメージング用試料を導電性又は非導電性の基板に貼付して基板付イメージング用試料を作製する工程;
を含む、質量分析計のための基板付イメージング用試料の作製方法を提供する。
本開示はまた、以下の工程:
上記態様の方法でイメージング用試料を作製する工程;及び
該イメージング用試料を導電性又は非導電性の基板に貼付して基板付イメージング用試料を作製する工程;
を含む、質量分析計のための基板付イメージング用試料の作製方法を提供する。
図4は、本発明の一実施形態における、導電性粘着フィルムに貼り付いた切片を基板に貼り付けた状態を示す断面図である。図4を参照し、導電性粘着フィルム10とその上に保持された状態の薄切試料6とを有するイメージング用試料20を、第2の粘着剤3を介して基板7に貼り付ける。なお、導電性粘着フィルム10が第2の粘着剤3を有さない場合は、基板7の表面にアクリル系粘着剤等の粘着剤を塗布した後、この粘着剤上に、導電性粘着フィルム10の第2の表面を貼り付けてもよい。
基板としては、導電性基板(例えば、導電性ガラス、ITO、金属等)及び非導電性基板(例えば、通常のガラス、プラスチック、フィルム等)のいずれも使用できる。しかし、本開示の方法によれば導電性粘着フィルムが有する導電性によって所望の帯電防止効果が得られるため、一般に高価である導電性基板の使用は必須ではない。非導電性基板はコスト低減の点で有利である。
上記の手順により、凍結した試料(例えば、未固定非脱灰の硬組織、実験動物の全身等)から、組織構造が良好に保たれ、かつ体内物質等の保存状態への物理的又は化学的な影響を排除した厚さ5〜30μmの凍結切片を、簡単に、しかも確実に作製することができ、その切片を、質量分析計を用いたイメージングによる生命科学の研究に用いることができる。
以下、本発明の具体的な態様を実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<導電性粘着フィルムを用いたマウス全身切片の作製例>
[実施例1]
マウス全身切片の作製方法
(1)マウス全身試料を凍結用の型に入れ、4質量%カルボキシメチルセルロース水溶液にて包埋し、ドライアイス・アセトンで凍結して、凍結包埋ブロックを作製した。
(2)凍結包埋ブロックを、−20℃に設定したクライオミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製)に固定した。
(3)ミクロトームにタングステンカーバイド製替刃を取り付けた。
(4)凍結包埋ブロックの表面を削り出した。
(5)導電性粘着フィルムとして、導電性シリコーン系両面粘着フィルム(金属箔基材の両面に、導電性フィラーとシリコーン系粘着性ポリマーとからなる第1及び第2の粘着剤が積層されてなる両面粘着フィルム)を−20℃に冷却し、片面(第1の粘着剤側)の剥離紙を剥がした。
(6)皺にならないように導電性粘着フィルムの第1の粘着剤を(4)で露出させた凍結包埋ブロック表面に貼り付けた。この時、良好な粘着のために、冷却した小手等の密着用具で導電性粘着フィルムを凍結包埋ブロックに押し付けた。
(7)クライオミクロトームを薄切厚み20μmに設定し、導電性粘着フィルムを貼り付けたまま、凍結包埋ブロックからマウス全身切片を削り取った。
(8)マウス全身切片の露出面を上方に向け、適当な板に導電性粘着フィルムの第2の粘着剤側を、剥離紙付のまま固定し、デシケーターに入れ乾燥させ、イメージング用試料を得た。図5は、実施例1で得られたイメージング用試料の画像を示す図である。
[実施例1]
マウス全身切片の作製方法
(1)マウス全身試料を凍結用の型に入れ、4質量%カルボキシメチルセルロース水溶液にて包埋し、ドライアイス・アセトンで凍結して、凍結包埋ブロックを作製した。
(2)凍結包埋ブロックを、−20℃に設定したクライオミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製)に固定した。
(3)ミクロトームにタングステンカーバイド製替刃を取り付けた。
(4)凍結包埋ブロックの表面を削り出した。
(5)導電性粘着フィルムとして、導電性シリコーン系両面粘着フィルム(金属箔基材の両面に、導電性フィラーとシリコーン系粘着性ポリマーとからなる第1及び第2の粘着剤が積層されてなる両面粘着フィルム)を−20℃に冷却し、片面(第1の粘着剤側)の剥離紙を剥がした。
(6)皺にならないように導電性粘着フィルムの第1の粘着剤を(4)で露出させた凍結包埋ブロック表面に貼り付けた。この時、良好な粘着のために、冷却した小手等の密着用具で導電性粘着フィルムを凍結包埋ブロックに押し付けた。
(7)クライオミクロトームを薄切厚み20μmに設定し、導電性粘着フィルムを貼り付けたまま、凍結包埋ブロックからマウス全身切片を削り取った。
(8)マウス全身切片の露出面を上方に向け、適当な板に導電性粘着フィルムの第2の粘着剤側を、剥離紙付のまま固定し、デシケーターに入れ乾燥させ、イメージング用試料を得た。図5は、実施例1で得られたイメージング用試料の画像を示す図である。
<質量分析計のためのイメージング用試料への加工方法>
[実施例2]
(1)実施例1で得たイメージング用試料から、導電性粘着フィルムの第2の粘着剤側の剥離紙を剥がし、導電性粘着フィルムの両端を伸張しながらプラスチック板(基板として)に貼り付けた。この時、プラスチック板上にマウス全身切片が保持されるように注意した。
(2)プラスチック板よりはみ出た導電性粘着フィルムを切断し、基板付イメージング用試料を得た。
図6は、実施例2で得られた、基板としてのプラスチック板に貼り付けたイメージング用試料の画像を示す図である。
[実施例2]
(1)実施例1で得たイメージング用試料から、導電性粘着フィルムの第2の粘着剤側の剥離紙を剥がし、導電性粘着フィルムの両端を伸張しながらプラスチック板(基板として)に貼り付けた。この時、プラスチック板上にマウス全身切片が保持されるように注意した。
(2)プラスチック板よりはみ出た導電性粘着フィルムを切断し、基板付イメージング用試料を得た。
図6は、実施例2で得られた、基板としてのプラスチック板に貼り付けたイメージング用試料の画像を示す図である。
本開示の方法で作製されたイメージング用試料又は基板付イメージング用試料によれば、生物試料の切り出し面をそのまま測定に用いることが可能となり、画像の鮮明度が増す。また、生物試料断片を連続して例えば一匹につき、30枚以上の切片を作製することも可能であり、試料作製効率が格段に向上する。
本発明に係る生物試料凍結薄切方法で作製した切片は、多くの生命科学の研究(例えば、組織学的研究、組織化学的研究、酵素組織化学的研究、免疫組織化学的研究、遺伝子組織化学的研究、水溶性物質の体内分布研究、微小領域の生化学的分析等)に利用することができる。
10 導電性粘着フィルム
20 イメージング用試料
1 第1の粘着剤
2 基材
3 第2の粘着剤
4 包埋生物試料
5 刃物
6 薄切試料
7 基板
20 イメージング用試料
1 第1の粘着剤
2 基材
3 第2の粘着剤
4 包埋生物試料
5 刃物
6 薄切試料
7 基板
Claims (8)
- 以下の工程:
生物試料を水溶性包埋剤で凍結包埋して包埋生物試料を作製する包埋工程;
前記包埋生物試料に導電性粘着フィルムを貼付ける貼付工程;及び
前記導電性粘着フィルムとともに所定の厚さに前記包埋生物試料を切断してイメージング用試料を作製する切断工程;
を含む、質量分析計のためのイメージング用試料の作製方法。 - 前記導電性粘着フィルムが、導電性ゴムを含む第1の粘着剤を有する、請求項1に記載の方法。
- 前記導電性粘着フィルムが、導電性アクリル、導電性シリコーン、及び導電性ウレタンからなる群から選択される1種以上の導電性ポリマーを含む第1の粘着剤を有する、請求項1に記載の方法。
- 前記導電性粘着フィルムが、基材と、前記基材の第1の表面上に配置された前記第1の粘着剤と、前記基材の第2の表面上に配置された導電性又は非導電性の第2の粘着剤とを含み、
前記基材が、金属箔、プラスチック、及び繊維からなる群から選択され、
前記第2の粘着剤が、導電性又は非導電性のゴムを含む、請求項2又は3に記載の方法。 - 前記導電性粘着フィルムが、基材と、前記基材の第1の表面上に配置された前記第1の粘着剤と、前記基材の第2の表面上に配置された導電性又は非導電性の第2の粘着剤とを含み、
前記基材が、金属箔、プラスチック、及び繊維からなる群から選択され、
前記第2の粘着剤が、アクリル、シリコーン、及びウレタンからなる群から選択される1種以上の導電性又は非導電性のポリマーを含む、請求項2又は3に記載の方法。 - 前記第1の粘着剤及び前記第2の粘着剤が導電性シリコーンを含有する、請求項5に記載の方法。
- 前記貼付工程において、包埋生物試料を生物組織凍結薄切装置の試料台に固定した状態で、前記包埋生物試料に前記導電性粘着フィルムを貼付ける、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 以下の工程:
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法でイメージング用試料を作製する工程;及び
前記イメージング用試料を導電性又は非導電性の基板に貼付して基板付イメージング用試料を作製する工程;
を含む、質量分析計のための基板付イメージング用試料の作製方法。
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---|---|---|---|
JP2017242515A JP2019109146A (ja) | 2017-12-19 | 2017-12-19 | 質量分析計のためのイメージング用試料を作製する方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019158887A (ja) * | 2018-03-06 | 2019-09-19 | 株式会社Section−Lab | イメージング質量分析に好適な試料作製法及び導電性粘着フィルム |
US11366045B2 (en) | 2019-10-15 | 2022-06-21 | Lg Chem, Ltd. | Apparatus and method for analysis of multi-layer adhesive film |
WO2023206595A1 (zh) * | 2022-04-26 | 2023-11-02 | 广东一方制药有限公司 | 黄连中生物碱的检测方法 |
-
2017
- 2017-12-19 JP JP2017242515A patent/JP2019109146A/ja active Pending
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