JP2019108508A - 潜熱蓄熱材およびその製造方法 - Google Patents

潜熱蓄熱材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基材に潜熱蓄熱材料を含有した構成を備える潜熱蓄熱材であって、相転移温度を挟んで加熱−冷却を繰り返しても、相転移材料(潜熱材料)が漏出することを防止することができる潜熱蓄熱材およびその製造方法の提供。【解決手段】相転移材料がゲル化され、粒状に分散した形態で基材に含有されてなる潜熱蓄熱材であって、基材は、前記相転移材料の相転移温度を挟む温度域において非流動体であり、相転移材料は三次元ゲルネットワークに保持されて保形されている。基材の例としてシリコーンゴムを、転移材料として有機系の相転移材料を使用できる。【選択図】図1

Description

本発明は潜熱蓄熱材およびその製造方法に関し、より詳細には基材中に相転移材料を含有させてなる潜熱蓄熱材およびその製造方法に関する。
潜熱蓄熱材は物質の相変化に伴う潜熱を利用して蓄熱する蓄熱材である。潜熱蓄熱材は、顕熱を利用する蓄熱材と比較して大きな熱エネルギーを蓄えることができ、また、相転移が一定の温度で生じるという特長があり、定温での保冷、保温用の蓄熱材として利用されている。
一般に、物質は相変化により固相(非流動状態)と液相(流動状態)との間を転移する。本発明者は、相変化しても非流動状態を保持することができるもの、または、相変化しても流動状態を保持することができるもの、すなわち固−液相転移に依存しない相状態を保持することができる潜熱蓄熱材について研究してきた。
潜熱蓄熱材が全温度域で非流動性を保持することができれば、例えばブロックや壁材に含有させて利用するといったことが容易に可能となり、潜熱蓄熱材の用途を格段に拡大することができる。
潜熱蓄熱材を全温度域において非流動性を保持するようにする場合に問題となるのが、相転移を繰り返したときに相転移材料(潜熱材料)が漏出して非流動性が損なわれてしまうという問題である。相転移により潜熱材料が漏出することを防止する方法には、潜熱材料を密封容器に収納する、多孔質体に浸み込ませる、マイクロカプセルを使用して漏洩を防止するといった方法がある。
潜熱蓄熱材で非流動性状態を案的的に保持する方法として、密封容器やマイクロカプセルといった漏洩防止手段を使用しない方法として、有機潜熱蓄熱材と熱硬化性ポリウレタン樹脂を含有する潜熱蓄熱材組成物(特許文献1)、潜熱蓄熱材料と担持材料とゲル化剤とを含む潜熱蓄熱材組成物(特許文献2)を構成した例がある。
なお、本発明者は、相転移温度を挟んで加熱−冷却したときに非流動性を確実に保持することができる潜熱蓄熱材料として、ゲル化剤により三次元ゲルネットワークを構築してゲル化した有機相転移材料を提案している(特許文献3)。
特開2015−81297号公報 特開2017−31327号公報 特開2017−43755号公報
相転移温度を挟んで加熱−冷却したときに非流動性を確保するために多孔質体やマイクロカプセル、密封容器を使用するといった方法は、コストがかかるという問題がある一方、支持体や密封容器を使用しない場合は、相転移を繰り返したときに蓄熱材料が漏出することが完全には避けられないという問題がある。
本発明は、基材に潜熱蓄熱材料を含有した構成を備える潜熱蓄熱材であって、相転移温度を挟んで加熱−冷却を繰り返しても、相転移材料(潜熱材料)が漏出することを防止することができる潜熱蓄熱材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る潜熱蓄熱材は、相転移材料がゲル化され、粒状に分散した形態で基材に含有されてなる潜熱蓄熱材であって、前記基材は、前記相転移材料の相転移温度を挟む温度域において非流動体であり、前記相転移材料は三次元ゲルネットワークに保持されて保形されていることを特徴とする。
潜熱蓄熱材は相転移材料の相転移温度を挟む温度域で使用する。前記基材が相転移材料の相転移温度を挟む温度域において非流動体であるとは、この潜熱蓄熱材を使用する温度範囲において、潜熱蓄熱材を構成する基材が非流動体であるという意味である。
基材には潜熱蓄熱材の用途に応じて、適宜材料を使用することができる。たとえば、シリコーンゴムは常温範囲で非流動体であり、常温範囲で使用する潜熱蓄熱材の基材として好適に使用することができる。
相転移材料は、三次元ゲルネットワークに保持されてゲル化され、その形態が保持される(保形される)ことにより、相転移温度を挟んで加熱−冷却されたときに相転移材料が漏出することが抑制される。また、ゲル化された相転移材料が基材中で分散して保持されることにより、加熱−冷却されたとに潜熱蓄熱材から相転移材料が漏出することがさらに確実に抑制される。
また、相転移材料は潜熱蓄熱材の用途に応じて、適当な相転移温度である材料を選択して使用することができる。たとえばミリスチン酸メチル、パラフィン等は相転移温度が18℃の相転移材料の一つであるが、これらの相転移材料とは異なる相転移温度を有する種々の相転移材料が提供されている。
相転移材料には、有機系の相転移材料として、たとえば炭化水素系の相転移材料であるパラフィン系または脂肪酸エステル系の油がある。また、炭化水素系の相転移材料に限らず、水に不溶な炭化水素、アルコール、脂肪酸、エステル、エーテル、炭化フッ素、およびこれらの混合物がある。
また、本発明に係る潜熱蓄熱材の製造方法は、液状の相転移材料と、ゲル化剤と、液状の基材とを攪拌し、ゲル化した前記相転移材料と基材との混合体を調製する工程と、前記混合体に前記基材を固化する架橋剤を添加して攪拌し、非流動体として形成された基材に、前記相転移材料がゲル化され、粒状に分散した形態で含有された潜熱蓄熱材を調製する工程、とを備えることを特徴とする。
また、前記相転移材料として、有機系の相転移材料を使用することができ、また、前記基材の一例として、シリコーンゴムを使用することができる。
ゲル化剤は、相転移材料中で三次元のゲルネットワークを構成して相転移材料をゲル化するものである。使用する基材に応じて、適宜ゲル化剤を選択して使用することができる。ゲル化剤には、たとえば、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-α-、γ-ジブチルアミド(LGBA)、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド(EGBA)、12ーヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール、アミノ酸系油ゲル化剤(N−アシルアミノ酸のアミド、エステル、アミン塩などの誘導体)等がある。
本発明に係る潜熱蓄熱材は、相転移温度を挟んで加熱−冷却を繰り返しても相転移材料が漏出することを防止することができ、安定的に非流動状態を保持する潜熱蓄熱材として提供される。また、本発明に係る潜熱蓄熱材の製造方法によれば、容易に潜熱蓄熱材を製造することができる。
ゲル化した相転移材料と基材とを複合化することにより、ゲル化した相転移材料が基材中に分散した状態で含まれる潜熱蓄熱材を構成することを示す説明図である。 シリコーンゴムを基材として潜熱蓄熱材を調製する方法を示す説明図である。 実験例1で使用したサンプル群を表形式で示す図である。 図3の1段目に示したサンプルについて実験した結果を示す図である。 図3の2段目に示したサンプルについて実験した結果を示す図である。 図3の3段目に示したサンプルについて実験した結果を示す図である。 図3の4段目に示したサンプルについて実験した結果を示す図である。 実験例2で使用したサンプル群を表形式で示す図である。 図8の1段目に示したサンプルについて実験した結果を示す図である。 図8の2段目に示したサンプルについて実験した結果を示す図である。 図8の3段目に示したサンプルについて実験した結果を示す図である。 図8の4段目に示したサンプルについて実験した結果を示す図である。 サンプルを40℃まで昇温させた後、容器から取り出したサンプルの外観写真およびサンプルの外面の光学顕微鏡像である。 サンプルを40℃まで昇温させた後、容器から取り出したサンプルの外観写真およびサンプルの外面の光学顕微鏡像である。 -20℃から40℃までサンプルの温度を上昇させたときの、サンプルの外観写真である。 サンプルを相転移温度を超える温度まで昇温させたときに、サンプルから漏出する油の量を測定した結果を示すグラフである。
本発明に係る潜熱蓄熱材は、ゲル化された相転移材料を基材(マトリックス)中に分散させることにより、相転移温度を挟んで加熱−冷却を繰り返しても潜熱蓄熱材から相転移材料が漏出しないように構成したものである。
図1に、ゲル化した相転移材料10と基材12とを複合化し、ゲル化した相転移材料が基材中に分散してなる潜熱蓄熱材14を構成することを説明的に示す。ゲル化した相転移材料は三次元ゲルネットワークに保持されて形態が保持されている。潜熱蓄熱材を構成する基材は、相転移材料の相転移温度を挟む温度域においては非流動体となるものである。
<潜熱蓄熱材の製造方法>
ゲル化された相転移材料が基材中に粒状に分散して含有されてなる潜熱蓄熱材は、液状の相転移材料(油)と、ゲル化剤と、基材となるマトリックス材(液状)とを攪拌して、相転移材料とゲル化剤とマトリックス材との混合体を調製し(混合体を調製する工程)、次いで、混合体にマトリックス材を固化する架橋剤を添加して攪拌し冷却することにより、マトリックス材を非流動体化するとともに、相転移材料をゲル化し粒状にマトリックス材中で分散させることで(潜熱蓄熱材を調製する工程)製造することができる。
潜熱蓄熱材に用いられる相転移材料(油)には有機系相転移材料等の適宜材料を使用することができる。有機系相転移材料としては、たとえば炭化水素系の相転移材料として、パラフィン系または脂肪酸エステル系の油が挙げられる。この他に、水に不溶な炭化水素、アルコール、脂肪酸、エステル、エーテル、シリコーンオイル、炭化フッ素、及びこれらの混合物を使用することができる。
後述する潜熱蓄熱材を調製する実験では、有機系相転移材料(PCM)として、ミリスチン酸メチル(MM)とパラフィン(P)を使用した。ミリスチン酸メチルの融点は18℃、分子量は242.40、パラフィンの融点は18℃である。
ゲル化剤は、相転移材料(PCM)中で三次元ネットワークを形成してゲル化するものである。ゲル化剤としては、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-α-、γ-ジブチルアミド(LGBA)、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド(EGBA)等が利用できる。
本発明に係る潜熱蓄熱材は、蓄熱体として使用する温度域において保形性を保つ(自立する)ものであり、したがって潜熱蓄熱材の基材は使用温度域において非流動性を備えるものであれば適宜材料を選択して使用することができる。たとえば、基材にシリコーンゴムを使用する場合は、液状のシリコーンゴムの前駆体と、相転移材料(油)とゲル化剤とを混合した後、混合体にシリコーンゴムの架橋剤を加えてシリコーンゴムをエラストマー化することにより非流動性の潜熱蓄熱材を得ることができる。エラストマー化したシリコーンゴムは常温で保形性を備える。なお、シリコーンゴムの安全使用温度は-50℃〜200℃である。
<潜熱蓄熱材の製造例>
図2に潜熱蓄熱材を製造した例として、シリコーンゴムを基材として潜熱蓄熱材を製造する例を示す。
まず、容器に油と、ゲル化剤と、液状のシリコーンゴムを収納し、ホットスターラーを用いて120℃で30分加熱攪拌し、油とゲル化剤とシリコーンゴムを混合体を調製する。次いで、この混合体にシリコーンゴムの架橋剤を投入し、攪拌しながら室温まで冷却し、20℃で12時間攪拌する。この操作により、シリコーンゴムはエラストマー化(固化)し、ゲル化した油が粒状に固化体(エラストマー)分散してなる潜熱蓄熱材が得られる。
なお、油とゲル化剤と液状のシリコーンゴムは加熱した状態で混合するから、加熱した混合体の状態では油はゲル化していない。油のゲル化は混合体を調製した後、混合体を攪拌しながら冷却して固化(エラストマー化)させる工程で生じ、粒状にゲル化した油がシリコーンゴム中で分散した状態になる。シリコーンゴムがエラストマー化するときに油がゲル化して基材中に分散した状態になる理由は、油がゲル化する作用がシリコーンゴムがエラストマー化する作用よりも優先してなされるからであると考えられる。
油とゲル化剤とシリコーンゴムとが混合した状態で、油とシリコーンゴムは相溶した状態にある。架橋剤を添加すると、シリコーンゴムは徐々に架橋しはじめてエラストマー化していくが、ゲル化剤のゲルネットワークに油が捉えられて油ゲルが構築される作用がシリコーンゴムがエラストマー化する作用よりも先んじて生じることで、シリコーンゴムに油ゲルが分散されて含有された潜熱蓄熱材が得られると考えられる。このように、油がゲル化する作用が、基材が固化する作用よりも優先して起きることは、基材中で油ゲルが分散した状態の潜熱蓄熱材を製造する(調製する)ためにキーとなる条件と考えられる。
<熱物性の評価方法>
上記調製方法によって調製した潜熱蓄熱材の熱物性については、潜熱蓄熱材を、-20℃もしくは-12℃に温度設定した冷凍庫の中で12時間静置させた後、40℃に保持した恒温槽にサンプルを移し、非接触型温度計を用いてサンプルの表面温度の経時変化を測定する方法で行った。また、サンプルからの油の漏出は、容器を傾けて油の漏出量を目視する方法で行った。
(実験例1)
図3は、油とゲル化剤と基材とから構成した潜熱蓄熱材の熱物性を評価するために実験で調製したサンプル群を示す。
実験では、潜熱蓄熱材の特性を客観的に評価するため、油とゲル化剤と基材とから構成した潜熱蓄熱材のサンプルの他に、油のみからなるサンプル、油にゲル化剤を添加したサンプル、油と基材とを混合して構成したサンプルをそれぞれ調製し、これらのサンプルについて熱物性評価試験を行った。
実際に作製したサンプルは、油としてミリスチン酸メチル(MM)を使用し、油の量を4.35g、8.70g、13.10g、17.40gと変えたものを用意した。
図3で1段目に示すサンプルは油のみを容器に入れたもので油の量を変えたサンプルを示す。
2段目に示すサンプルは油にゲル化剤としてN-ラウロイル-L-グルタミン酸-α-、γ-ジブチルアミド(LGBA:味の素株式会社製)を加えたものである。これらのサンプルは、いずれも油(MM)96wt%に対してLGBAを4wt%の割合で添加したものである。
図3の3段目に示したサンプルは、油と基材のシリコーンゲルとからなるもの、4段目に示したサンプルは、油とゲル化剤とシリコーンゲルとからなるものである。3段目と4段目のサンプルは、いずれも総量が17.4gとなるように油の量とシリコーンゴムの量を調整した。表中に油(MM)とシリコーンゴムとのwt%、油ゲルとシリコーンゴムのwt%を示した。
なお、油にゲル化剤を添加したサンプルは、容器に所定量のミリスチン酸メチル(MM)とゲル化剤(LGBA)を添加し、120℃で30分加熱攪拌し、室温まで冷却して調製した。
油とシリコーンゴムとからなるサンプルは、容器に油とシリコーンゴムの前駆体を供給し、120℃で30分加熱攪拌した後、架橋剤を投入し、攪拌しながら室温まで冷却し、20℃で12時間攪拌して調製した。
図4は、図3の1段目に示したサンプル、すなわち、油としてミリスチン酸メチル(MM)のみを、それぞれ4.35g、8.70g、13.10g、17.40gずつ容器に供給したサンプルについて熱物性評価試験を行った結果を示す。
サンプルの外観写真から、-20℃では固化して白色であったサンプルが、40℃まで温度が上昇したことにより融解して透明な液体(流動体)となった。
サンプル温度の経時変化を測定したグラフを見ると。いずれのサンプルについても、18℃付近に温度の停滞が見られる。この温度の停滞が油(MM)の固−液相転移に相当する。油(MM)の質量が増加するに伴い、温度停滞時間が長くなっている。
図5は、図3の2段目に示したサンプル、すなわち、油(MM)にゲル化剤を加えたサンプルについての実験結果を示す。
サンプル温度の経時変化を示すグラフから、いずれのサンプルについても、18℃付近の停滞温度と停滞時間がみられ、油(MM)に温度の停滞域がみられ油(MM)が相転移していることが分かる。
また、油にゲル化剤を供給したことにより油がゲル化され、サンプルの温度を40℃まで上昇させた状態でも、ゲル化状態が維持されている。ただし、40℃の状態で容器を傾けると油が漏出し、油の漏出が完全には防止されていない。
図6は、図3の3段目に示したサンプル、すなわち、油(MM)とシリコーンゴムとで総量を17.4gにしたサンプルについての実験結果を示す。なお、シリコーンゴム17.4gのサンプル(最右欄)は、油を含まないシリコーンゴムのみからなるサンプルである。
油(MM)にシリコーンゴムを加えた3種のサンプルについて、サンプル温度の経時変化を測定したグラフを見ると、いずれのサンプルについても温度が停滞する温度域が見られない。温度停滞域が見られない理由としては、油とシリコーンゴムとが相溶し、油(MM)固有の相転移作用が消失したためであると考えられる。また、これらのサンプルを40℃まで温度上昇させたとき、油の分量が高濃度になるにしたがって油の漏出量が増え、油の分量が75wt%のサンプルは40℃で固化しなくなった。
なお、シリコーンゴムのみからなるサンプルは、-20℃の状態で固化して外観色が白色であり、40℃まで温度を上昇させたときも白色のままで固化状態を維持した。
図7は、図3の4段目に示したサンプル、すなわち、油(MM)とゲル化剤(LGBA)とシリコーンゴムとを混合して調製したサンプルについての実験結果を示す。なお、図7の最右欄は油ゲルを含まないシリコーンゴムのみからなるサンプルである。
油とゲル化剤とシリコーンゴムとを混合した3種のサンプルについて、サンプル温度の経時変化を測定したグラフを見ると、ミリスチン酸メチル(MM)による場合と同様な停滞温度と停滞時間がみられ、油(MM)に起因する固−液相転移作用が生じていることが分かる。このサンプルの場合は、油(MM)がゲル化され、基材と相溶せずに油として基材中に存在することにより、油固有の固−液相転移作用が維持されていると考えられる。なお、シリコーンゴムのみのサンプルについては当然ながら、固−液相転移は生じない。
また、サンプルの温度を40℃まで上昇させたときの油の漏出を見ると、油ゲルの分量を75wt%としたものであっても、油ゲルのみの場合の油の漏出量と比較してさらに漏出量が少なくなった。この実験結果は、油とゲル化剤と基材のシリコーンゲルとを組み合わせることにより、相転移温度を超えて潜熱蓄熱材の温度を上昇させたときの油の漏出量を、油ゲル単独の場合と比較して抑制することができることを示す。
(実験例2)
実験例2は、実験例1で使用した油(ミリスチン酸メチル)とは異なるパラフィン(P)を油として潜熱蓄熱材の熱物性評価試験を行ったものである。
図8に実験例2で使用したサンプル群を示す。図8に示すサンプルは図3に示したサンプルと同様に構成したもので、油としてパラフィン(P)を使用したことのみが異なる。
図8の1段目に示したサンプルは、容器にパラフィン(P)を3.94g(5mL)、7.87g(10mL)、11.81g(15mL)、15.74g(20mL)をそれぞれ供給したもの、2段目のサンプルは、パラフィンの分量3.94gに対してゲル化剤(LGBA)を0.23gの割合で添加したものである。
3段目、4段目のサンプルは、1段目と2段目の油と油ゲルの分量にシリコーンゴムを加えて総量を100wt%となるように調製したサンプルである。これらのサンプルの調製方法は図3に示したサンプルの調製方法と同様である。
なお、サンプル温度の測定については、実験例2では、サンプルをまず-12℃の冷凍庫に12時間静置した後、40℃に保持した恒温槽の中にサンプルを移し、サンプルの表面温度を測定する方法で行った。
図9は、図8の1段目に示したサンプル、すなわち、パラフィン(P)のみを、それぞれ3.945g、7.87g、11.81g、15.74g供給したサンプルについて、熱物性評価試験を行った結果を示す。
サンプル温度の経時変化を測定したグラフを見ると。いずれのサンプルについても、15℃〜25℃の温度帯に温度が停滞する領域が見られる。また、-12℃では固化して白色であったサンプルが、40℃では透明な液体状になった。
図10は、図8の2段目に示したサンプル、すなわち、パラフィン(P)にゲル化剤を加えたサンプルについて熱物性評価試験を行った結果を示す。サンプル温度の経時変化を示すグラフから、いずれのサンプルについても、15℃〜25℃の温度範囲に温度が停滞する領域が見られ、相転移が生じている。
また、パラフィンにゲル化剤を加えてゲル化したことにより、40℃の状態でも固化状態(非流動状態)が維持されている。なお、40℃でゲル化した状態でわずかに油の漏洩が見られた。
図11は、図8の3段目に示したサンプル、すなわち、パラフィン(P)とシリコーンゴムとからなるサンプルについての実験結果を示す。サンプル温度の経時変化を測定した結果からは、パラフィンの分量を15mLとしたサンプルでは、温度停滞域が見られたが、他の2つのサンプルでは温度停滞域が見られなかった。また、油の分量を15mLとしたサンプルでは、40℃まで温度上昇させると固化しなくなった。この実験結果は実験例1と同様で、油の分量がある程度以上の濃度になると、シリコーンゴムでは固化しないようになると考えられる。
図12は、図8の4段目に示したサンプル、すなわち、パラフィン(P)とゲル化剤(LGBA)とシリコーンゴムとを混合して調製したサンプルについての実験結果を示す。
油とゲル化剤とシリコーンゴムとを混合してなる3種のサンプルは、サンプル温度の経時変化のグラフから、いずれも温度停滞域を備え、パラフィン固有の相転移が生じていることを示す。また、いずれもサンプルも40℃まで温度上昇させた状態で固化状態(非流動状態)を維持している。また、このときのサンプルからの油の漏出は、油ゲルのみのサンプルと比較して油の漏出量が抑制されていた。
この実験例2の実験結果も、実験例1で得られた実験結果と同様に、油とゲル化剤とシリコーンゴムとから構成したサンプルは、相転移温度を挟んで加熱−冷却することにより相転移作用を生じること、すなわち、潜熱蓄熱材料として使用することが可能であること、また、相転移温度を超えて加熱したときに、蓄熱材料(油)が漏洩することを効果的に抑制することができることを示している。
(実験例3)
実験例3は、油とシリコーンゴム、油ゲルとシリコーンゴムとを複合化したサンプルの形態安定性を比較するため、相転移点温度以上までサンプル温度を上昇させた状態におけるサンプルの形態変化と、サンプルに含有されている油あるいは油ゲルの態様を確認するため光学顕微鏡像を取得する測定を行ったものである。
図13は、、図3に示したミリスチン酸メチル(MM)とシリコーンゴムとを複合化してなるたサンプル(図3の3段目のサンプル)についての実験結果を示す。図13では、サンプルの温度を40℃まで上昇させた後、サンプルを容器から取り出した状態の外観写真と、サンプルの外面の光学顕微鏡像を示す。油(MM)の含有量を75wt%としたものは、40℃の状態で液状化し、自立していないため、測定対象から外している。
図13に示すように、シリコーンゴム100wt%のもの、油(MM)の分量が25wt%、50wt%のものは、図のように40℃まで加温した状態で自立し、保形性を維持している。すなわち、油の分量が50wt%程度までであれば、油と複合化したシリコーンゴムは自立できることが分かる。
また、油(MM)を含有したシリコーンゴムの外面の光学顕微鏡像で、黒く見える部分が油分であり、油の含有量が増えることにより、油部分の孔径が増大する様子が見える。
図14は、油とゲル化剤とシリコーンゴムとを複合化したサンプルについて、図13と同様に、サンプルの温度を40℃まで上昇させた後、サンプルを容器から取り出した状態の外観写真とサンプルの外面の光学顕微鏡像を示す。
この例では、油ゲルの分量を75wt%としたサンプルについても自立し、保形性を維持している。また、サンプルの外面の光学顕微鏡像で黒く見える部分が油分(油ゲル)であり、油ゲルの含有量が増えると油分の孔径が増大する様子が見える。なお、油ゲルの分量が75wt%のサンプルについては、サンプルの外面からは油ゲルの形態が不明である。
図15は、油のみ、油ゲルのみのサンプルと、油とシリコーンゴム、油ゲルとシリコーンゴムとを複合化したサンプルについて、-20℃から40℃までサンプルの温度を上昇させながら、サンプルの形態変化を観察した実験結果を示す。
油(MM)のみを容器に入れたサンプルは、固体から液体への相変化にともない、サンプルの形態が大きく崩れ、40℃では液状になった(固−液相転移)。
油と、油のゲル化剤とからなるサンプルについては、サンプルの相転移温度を超えて温度を上昇させてもサンプルの保形性が維持されている。このサンプルは油固有の相転移機能を保持しつつ、温度を上昇させた状態で当初の固体状態(非流動状態)を維持することができる。ただし、温度を上昇させた状態で若干、油が漏出する。
また、油(MM)とシリコーンゴムとを複合化したサンプルは、サンプルの温度を上昇させていっても保形性が維持され、サンプルは自立した形態を保持する。ただし、このサンプルは油(MM)固有の相転移作用を起こさない。なお、サンプルの温度を上昇させたときに、油が漏出するが、油の漏出量は油ゲルと比較すると抑制される。
油ゲルとシリコーンゴムとを複合化したサンプルも、油とシリコーンゴムとを複合化したサンプルと同様に、油の相転移温度を超えてサンプルの温度を上昇させても自立した形態を保持する。このサンプルで特徴的な作用は、油固有の相転作用を起こすことにある。サンプルの温度を上昇させたときに漏出する油の量は油とシリコーンゴムとを複合化した場合よりもさらに抑制される。
図16は、サンプルの温度を上昇させたときに形態の安定性を備える3種のサンプル、すなわち、油(MM)ゲル、油(MM)とシリコーンゴム、油(MM)ゲルとシリコーンゴムについて、油の漏出量を測定した結果を示すグラフである。縦軸が油の漏出量を示す。
図16は、油ゲルのサンプルと比較すると、油とシリコーンゴムとを複合化したサンプルの方が油の漏出量を抑えることができ、油とシリコーンゴムとを複合化したサンプルと比較して油ゲルとシリコーンゴムとを複合化したサンプルはさらに油の漏出を抑制することができることを示す。
上述した実験結果は、油ゲルとシリコーンゴムとを複合化したサンプル(潜熱蓄熱材)は、他のサンプルと比較して形態安定性に優れるとともに、相転移温度を超えて温度を上昇させたときの油の漏出を抑えることができるという特徴を備えることを意味する。このように、優れた形態安定性を備えるとともに、油の漏出を抑制した潜熱蓄熱材は、種々の用途に好適に利用することができる蓄熱材として提供される。

Claims (6)

  1. 相転移材料がゲル化され、粒状に分散した形態で基材に含有されてなる潜熱蓄熱材であって、
    前記基材は、前記相転移材料の相転移温度を挟む温度域において非流動体であり、
    前記相転移材料は三次元ゲルネットワークに保持されて保形されていることを特徴とする潜熱蓄熱材。
  2. 前記基材がシリコーンゴムであることを特徴とする請求項1記載の潜熱蓄熱材。
  3. 前記相転移材料が有機系の相転移材料であることを特徴とする請求項1または2記載の潜熱蓄熱材。
  4. 液状の相転移材料と、ゲル化剤と、液状の基材とを攪拌し、ゲル化した前記相転移材料と基材との混合体を調製する工程と、
    前記混合体に前記基材を固化する架橋剤を添加して攪拌し、非流動体として形成された基材に、前記相転移材料がゲル化され、粒状に分散した形態で含有された潜熱蓄熱材を調製する工程、
    とを備えることを特徴とする潜熱蓄熱材の製造方法。
  5. 前記相転移材料として、有機系の相転移材料を使用することを特徴とする請求項4記載の潜熱蓄熱材の製造方法。
  6. 前記基材として、シリコーンゴムを使用することを特徴とする請求項4または5記載の潜熱蓄熱材の製造方法。





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