JP2019108423A - インクセット及び印刷方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷層の滲みの発生を抑えると共に、光沢を低下させずに付着性に優れる印刷層を形成させることが可能なインクセットを提供する。【解決手段】水系着色インクと水系コーティング液とを含むインクセットであって、前記水系着色インクが、水、自己分散性顔料、水溶性溶剤及び自己分散性樹脂を含み、該自己分散性樹脂がポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂を含み、前記水系コーティング液が、水、水溶性溶剤及び樹脂を含み、該水系コーティング液中に含まれる樹脂が、カチオンを有する水溶性ポリマーを含むことを特徴とするインクセットである。【選択図】なし

Description

本発明は、インクセット及び該インクセットを用いた印刷方法に関し、特には、印刷層の滲みの発生を抑えると共に、光沢を低下させずに付着性に優れる印刷層を形成させることが可能なインクセットに関するものである。
インクジェットプリンタによる印刷に用いるインクとしては、様々なインクが開発されているが、環境負荷を低減する観点から、水系インクが広く使用されている。しかしながら、水系インクは溶媒として水を含むため、印刷の際に滲みを発生させる傾向がある。印刷により形成される印刷層の滲みを改善する方法としては、例えば、着色インク中の顔料を凝集させる作用を有する処理液を併用する手法が知られている。このような処理液と着色インクを組み合わせた水系インクセットは、2液反応型水系インクセットと称される。
特開平6−57192号公報(特許文献1)は、複数の着色インクからなるインクセットであって、アニオン染料を含むブラックインクと、カチオン染料を含むイエローインクとを含むインクセットを記載しており、これら染料の使用により、カラーとブラックとの間のブリードが軽減されることを記載しているが、更に、多価沈殿剤をイエローインクに配合することでブリードを軽減できることも記載している。特許文献1では、このイエローインクが処理液としても作用していると認められる。
特開2009−190379号公報(特許文献2)は、架橋した水溶性ポリマーで被覆された顔料(水分散性顔料)を含む着色インクと、該顔料の凝集を促進する凝集促進剤を含む無色インクとを含むインクセットを記載しており、これにより、液安定性、吐出性が良好となり、また、インク付与後の被記録媒体のカール及び画像変形が抑制され得ると記載している。
特開平6−57192号公報 特開2009−190379号公報
また、耐水性等の塗膜性能を確保する観点から、水系インクのバインダーとしては、樹脂が広く利用されており、通常、エマルションの形態でインク中に分散している。しかしながら、この分散樹脂粒子が、2液反応型水系インクセットを構成する着色インクと処理液の両者に含まれていると、印刷層の基材への付着性が十分に得られないという問題がある。この問題を解決するため、水溶性ポリマーを処理液に配合させる手法が提案されているものの、依然として改善の余地がある。
なお、2液反応型水系インクセットにおいては、凝集のタイミングを制御することも重要である。例えば、処理液の凝集作用が強く、凝集の発生が早すぎると、印刷層の表面に凹凸が形成され、印刷層の光沢が低下する原因となる。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、印刷層の滲みの発生を抑えると共に、光沢を低下させずに付着性に優れる印刷層を形成させることが可能で、かつ、保存安定性にも優れるインクセットを提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるインクセットを用いた印刷方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、自己分散性顔料及びポリエステル基又はポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂を含む水系着色インクと、カチオンを有する水溶性ポリマーを含む水系コーティング液とを組み合わせることで、印刷層の滲みの発生を抑えると共に、光沢を低下させずに付着性に優れる印刷層を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のインクセットは、水系着色インクと水系コーティング液とを含むインクセットであって、前記水系着色インクが、水、自己分散性顔料、水溶性溶剤及び自己分散性樹脂を含み、該自己分散性樹脂がポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂を含み、前記水系コーティング液が、水、水溶性溶剤及び樹脂を含み、該水系コーティング液中に含まれる樹脂が、カチオンを有する水溶性ポリマーを含むことを特徴とする。
本発明のインクセットの好適例においては、前記自己分散性樹脂の50体積%粒子径(D50)が10nm〜90nmである。
本発明のインクセットの他の好適例においては、前記ポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂の重量平均分子量が100,000以上である。
本発明のインクセットの他の好適例においては、前記水系コーティング液のpHが7.01〜10.0の範囲内にある。
本発明のインクセットの他の好適例においては、前記水溶性ポリマーが第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーである。
本発明のインクセットの他の好適例においては、前記水溶性ポリマーが、主鎖に第四級アンモニウムカチオンを有する。
本発明のインクセットの他の好適例においては、前記自己分散性樹脂の酸価(A)と前記水溶性ポリマーのカチオン度(B)の比(A:B)が10:1〜1:1の範囲内である。
また、本発明の印刷方法は、上記のインクセットを用いたインクジェットプリンタによって印刷層を基材上に形成する印刷方法であって、前記水系コーティング液をプリントヘッドから吐出させて、コーティング液滴を基材上に着弾させる工程と、前記水系着色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を前記コーティング液上に着弾させることにより印刷層を形成させる工程とを含むことを特徴とする。
本発明のインクセットによれば、印刷層の滲みの発生を抑えると共に、光沢を低下させずに付着性に優れる印刷層を形成させることが可能で、かつ、保存安定性にも優れるインクセットを提供することができる。また、本発明の印刷方法によれば、かかるインクセットを用いた印刷方法を提供することができる。
以下に、本発明のインクセットを詳細に説明する。本発明のインクセットは、水系着色インクと水系コーティング液とを含むインクセットであって、前記水系着色インクが、水、自己分散性顔料、水溶性溶剤及び自己分散性樹脂を含み、該自己分散性樹脂がポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂を含み、前記水系コーティング液が、水、水溶性溶剤及び樹脂を含み、該水系コーティング液中に含まれる樹脂が、カチオンを有する水溶性ポリマーを含むことを特徴とする。
本発明のインクセットは、水系着色インクと水系コーティング液とを含むインクセットである。水系着色インクは、単独で使用されてもよいが、二色以上の水系着色インクを組み合わせることもできる。ここで、「二色以上の水系着色インク」とは、異なる色を発する2種類以上の水系着色インクを意味する。
本発明のインクセットにおいて、水系着色インクは、水、自己分散性顔料、水溶性溶剤及び自己分散性樹脂を含むインクであり、インクジェットインクであることが好ましい。なお、インクジェットインクとは、インクジェットプリンタ用のインク組成物である。また、本発明のインクセットにおいて、水系コーティング液は、基材を被覆し、着色インクを凝集させるための液であり、水、水溶性溶剤及び樹脂を含むものであり、インクジェットプリンタに使用可能なコーティング液であることが好ましい。なお、本発明においては、着色剤を0.1質量%を超える量で含む組成物を「インク」とし、着色剤を含まない又は着色剤を0.1質量%以下含む組成物を単に「液」として表現している。
本発明のインクセットにおいて、水系コーティング液は、pHが7.01〜10.0の範囲内にあることが好ましい。水溶性ポリマーを含む水系コーティング液は一般的に酸性のものが多いため、腐食を発生させる恐れがあり、また、腐食防止剤やその他中和剤等の添加によりコーティング液を中性や塩基性にすることも考えられるが、この場合、コーティング液に期待される凝集効果が十分に発揮されず、滲みを発生させる恐れもある。このような塩基性領域に水系コーティング液のpHを設定することで、プリンタ等の印刷機器の金属部分(特にプリントヘッド)における腐食の発生を抑えることができる。本発明のインクセットにおいては、水系コーティング液の樹脂としてカチオンを有する水溶性ポリマーを用いているため、水系コーティング液のpHが塩基性領域であっても、所望の凝集効果を発揮することができる。
一方、水系着色インクは、選択される顔料の種類等に応じてpHが変わるものの、同様の理由から、塩基性であることが好ましく、pHが7.01〜10.0の範囲内にあることが好ましい。
なお、pHの調整には、pH調整剤を使用できるが、アミン化合物の使用が好ましく、沸点が70〜270℃であるアミン化合物の使用が更に好ましい。アミン化合物は、水系コーティング液や水系着色インク中のpHを適切に調整し、更には樹脂の凝集を防ぐ効果もある。またアミン化合物をインク又はコーティング液に配合することで、より一層腐食を起こり難くすることが可能である。更に、アミン化合物の沸点が70〜270℃の範囲であれば、蒸発し難く、アミン化合物が水系着色インク又は水系コーティング液中に長期にわたって留まることになり、水系着色インク又は水系コーティング液の吐出安定性が長期に亘って優れ、更に印刷層の光沢が高くなる傾向もある。沸点70〜270℃のアミン化合物の具体例としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。これらアミン化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記水系着色インク及び水系コーティング液中において、アミン化合物の含有量は、それぞれ独立して、0.1〜2.0質量%が好ましい。
上記水系コーティング液に用いる樹脂は、カチオンを有する水溶性ポリマーを含む。上記水溶性ポリマーは、カチオンを有するため、pHが塩基性領域にある水系コーティング液中に存在していても、顔料を凝集する能力を発揮することができる。但し、上記水溶性ポリマーは、顔料を凝集させる能力が高いため、顔料の凝集の発生が著しく早く起こり、印刷層の光沢が低下する問題があるため、後述する自己分散性顔料との組み合わせが重要になる。これにより、印刷機器の腐食の発生を抑えつつ、印刷層の滲みの発生も抑えて、基材への付着性に優れる印刷層を形成できると共に、該印刷層の光沢の低下も防ぐことができる。また、カチオンを有する水溶性ポリマーを用いて調製した水系コーティング液は、長期保存をした際にも粘度やpHが保たれ、優れた保存安定性が得られる。
なお、本発明において、水溶性ポリマーとは、水、又は水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解するポリマーを意味する。
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、第四級アンモニウムカチオン(カチオン化された窒素原子)を有する水溶性ポリマーであることが好ましい。第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーを用いることで、印刷層の滲みの発生がより一層抑えられるとともに、印刷層の耐擦過性、水系コーティング液の保存安定性が向上する。
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましく、2,500〜45,000であることがより好ましく、5,000〜40,000であることが更に好ましい。上記水溶性ポリマーの重量平均分子量を1,000以上とすることで、カチオンを有する水溶性ポリマーが顔料を凝集させる力が高くなり、滲みが発生しにくくなる。また、重量平均分子量を50,000以下とすることで、顔料凝集の速度が抑えられ、光沢の高い印刷物が得られる。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、主鎖に第四級アンモニウムカチオンを有することが好ましい。このような構造を有する水溶性ポリマーを用いると、水系着色インクが水系コーティング液に着弾した際に、水系着色インクの界面のみが瞬時に凝集し、水系着色インク同士が混合することなく着弾した位置で定着するため、滲みが無く、かつ、光沢の高い印刷層を形成することができる。
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、カチオン度の異なる2種類以上の水溶性ポリマーであることが好ましい。カチオン度が異なる複数の水溶性ポリマーを用いることで、ドット径の大きさ、滲みの調整が容易となる。
具体的に、上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、pH7.1でのカチオン度が5.5〜7.5meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.0〜5.0meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが好ましく、pH7.1でのカチオン度が6.0〜7.0meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.5〜4.5meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが更に好ましい。2種類のカチオン樹脂の割合は、カチオン度が高い水溶性ポリマー:カチオン度が低い水溶性ポリマーの質量比が1:1〜20:1の範囲内であることが好ましく、7:3〜10:1の範囲内であることがより好ましい。
なお、本明細書において、カチオン度は、ポリビニル硫酸カリウム試薬を用いたコロイド滴定により求めることができる。詳しい手順は以下のとおりである。
コニカルビーカーに脱イオン水90mLを取り、試料(乾燥品換算)の500ppm水溶液を10mL加えてアミン水溶液でpH7.1とし、約1分間攪拌する。次にトルイジンブルー指示薬を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム試薬(N/400PVSK)で滴定する。滴定速度は2mL/分とし、検水が青から赤紫色に変色して10秒間以上保持する時点を終点とする。カチオン度(meq/g)の計算式は次のとおりである。
カチオン度=(N/400PVSK滴定量)×(N/400PVSKの力価)/2
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは市販品を使用することができる。なかでも、第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーが好ましいが、塩基性でも安定に存在できる観点から、例えば、DK6810、DK6851、DK6864、WS4030、WS4027、WS4052、CA6018(以上星光PMC社製)、ハーサイズCP−300、CP−800(以上ハリマ化成社製)、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−2401、PAS−A−1(以上ニットボーメディカル社製)、カチオマスターPDT−2、PD−7、PD−30(以上四日市合成社製)という名で市販されているエピクロロヒドリンとアルキルアミンの反応物、ポリアミン樹脂、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂等が挙げられる。なお、上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記水系コーティング液中に含まれる樹脂に占める上記カチオンを有する水溶性ポリマーの割合は、凝集作用を適切に制御する点から、50質量%以上であることが好ましい。
なお、上記水系コーティング液に使用できる他の樹脂としては、上記カチオンを有する水溶性ポリマー以外の、インク業界において通常使用されている樹脂を用いることができる。例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記水系着色インクは、自己分散性樹脂を含む。自己分散性樹脂とは、界面活性剤や乳化剤を使用しなくても、インク中で分散状態を保つことができる樹脂であり、通常、スルホン酸又はその塩やカルボン酸又はその塩等の親水性基を末端又は側鎖に有するポリマーや、ポリカーボネート基、ポリエステル基、ポリエーテル基等の親水性基を主鎖に有するポリマー等が好適に使用される。この自己分散性樹脂の親水性基が自己分散性顔料の親水性基と互いに反発することで分散状態が保たれた状態となり、結果として保存安定性に優れるインクを調製することができる。これら自己分散性樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、自己分散性樹脂は、市販品を使用してもよい。
本発明のインクセットにおいて、上記自己分散性樹脂は、ポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂を含む。上記ポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン(特には二軸延伸ポリプロピレンや無延伸ポリプロピレン等)等のプラスチック基材への付着性にも優れるため、各種基材への付着性に優れる印刷層を形成することができる。また、上記ポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂であることから、耐擦過性、耐水性等の印刷層の性能を向上させる観点からも好ましい。
上記ポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂は、重量平均分子量が100,000以上であることが好ましく、100,000〜1,000,000であることがより好ましく、150,000〜750,000であることが更に好ましく、200,000〜500,000であることが特に好ましい。上記ポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂の重量平均分子量が上記特定した範囲内にあれば、耐擦過性をより向上でき、強固な印刷層を形成することができる。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
上記ポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、任意に鎖伸長剤とを反応させて得ることができる。
ポリエステルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサク2シネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクタムジオール及びポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエステルポリオールを用いることで、ポリエステル基含有ウレタン樹脂を得ることができる。
ポリエーテルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール及びポリオキシエチレン・プロピレングリコール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを用いることで、ポリエーテル基含有ウレタン樹脂を得ることができる。
ポリオール成分としては、ポリカーボネートポリオールやアクリルポリオール等を用いてもよい。なお、ポリカーボネートポリオールは、特に制限はなく、例えば、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール、1,4−ブタンジオールポリカーボネートポリオール及びポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等を挙げることができる。
これらのポリオール成分は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ポリイソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等からなるポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート成分中、好ましくは、キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)又はノルボルナンジイソシアネートである。これらのポリイソシアネート成分は、1種を単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
鎖伸長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコール及び低分子量のポリアミンを挙げることができる。低分子量の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジメチロールブタン酸及びジメチロールプロピオン酸等のジメチロールアルカン酸類等が挙げられる。低分子量のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記自己分散性樹脂は、インク中で分散しており、粒子の形態にある。ここで、上記自己分散性樹脂は、50体積%粒子径(D50)が10nm〜90nmであることが好ましく、20nm〜70nmであることがより好ましく、30nm〜60nmであることが更に好ましい。上記特定した範囲内の50体積%粒子径であれば、自己分散性樹脂の分散状態が良く保存安定性に優れるインクを調製できる。本発明において、50体積%粒子径(D50)は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばSALD−7000:株式会社島津製作所社製)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
上記自己分散性樹脂は、その酸価が5.0〜60.0であることが好ましい。上記特定した範囲内の酸価であれば、分散性を向上させることができる。本明細書において、樹脂の酸価とは、樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を意味する。
本発明のインクセットにおいては、水系着色インクに含まれる自己分散性樹脂の酸価と、水系コーティング液に含まれるカチオンを有する水溶性ポリマーのカチオン度を調整することで、水系着色インクのドット径を大きくし、かつ、滲みが発生しない、光沢に優れた印刷層を形成させることができる。ここで、上記自己分散性樹脂の酸価(A)と上記水溶性ポリマーのpH7.1でのカチオン度(meq/g)(B)の比(A:B)は、10:1〜1:1の範囲内であることが好ましく、6:1〜1.5:1の範囲内であることがより好ましく、3:1〜2:1の範囲内であることが更に好ましい。
上記水系着色インク中に含まれる樹脂に占める上記自己分散性樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましい。また、自己分散性樹脂中における上記ポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂の割合は30質量%以上であることが好ましい。
上記水系着色インクに使用できる他の樹脂には、上記自己分散性樹脂以外の、インク業界において通常使用されている樹脂を用いることができる。例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記水系着色インク中において、樹脂の含有量は、1〜10質量%であることが好ましい。また、上記水系コーティング液中において、樹脂の含有量は、0.01〜15質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。
上記水系着色インクは、自己分散性顔料を含む。自己分散性顔料とは、顔料分散剤を使用しなくても、インク中で分散状態を保つことができる顔料であり、通常、親水性に優れた官能基を表面に付与することで得られる。本発明者は、上述のカチオンを有する水溶性ポリマーと自己分散性顔料の組み合わせであれば、凝集の発生が早すぎることで印刷層の表面に凹凸が形成されることを防ぐことができ、それにより印刷層の光沢の低下を防ぐことができることを見出した。
本発明において、上記自己分散性顔料としては、カルボキシルイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、水酸化物イオン等のアニオンが表面に直接結合している顔料が好ましい。このようなアニオン型の自己分散性顔料を用いることにより分散剤を添加せずに顔料をインク中で安定に分散させることができ、より鮮明な画像を印刷することができる。これらアニオン型の自己分散性顔料は市販品を好適に使用できる。
上記自己分散性顔料に使用できる顔料は、特に限定されず、インク業界において着色剤として通常使用されている有機顔料、無機顔料等の顔料を用いることができる。顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、120、122、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、213;ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71;ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254;ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50;ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、27、28、29、30、60、64、80;ピグメントグリーン7、36;ピグメントブラウン23、25、26;及びピグメントブラック1、7、26、27、28、ピグメントホワイト6等が挙げられる。なお、これら顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記水系着色インク中において、自己分散性顔料の含有量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できるが、水系着色インク中0.5〜10質量%であることが好ましい。
上記水系着色インク及び水系コーティング液に用いる水溶性溶剤は、特に限定されるものではなく、インク業界において通常使用されている水溶性溶剤を用いることができる。なお、上記水系着色インク及び水系コーティング液中において、上記水溶性溶剤の含有量は、それぞれ独立して、60質量%以下であることが好ましい。上記水溶性溶剤の含有量の下限は特に制限されないものの、通常、5質量%以上であることが好ましい。
上記水溶性溶剤は、インク及びコーティング液の吐出安定性、濡れ性及び保存安定性をより良好にする観点から、グリコールエーテル、三〜五員環のラクトン化合物、アミド化合物及びアルカンジオールよりなる群から選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。
グリコールエーテルの具体例としては、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールペンチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、エチレングリコールターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールペンチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールペンチルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、トリエチレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールベンジルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類、並びにプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールペンチルエーテル、プロピレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールペンチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールペンチルエーテル、トリプロピレングリコールヘキシルエーテル及びトリプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、エチレングリコールターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
三〜五員環のラクトン化合物は、−C(=O)−O−を一部に含むラクトン環を有する化合物のうち、環を構成する原子数が3である三員環、原子数が4である四員環又は原子数が5である五員環の化合物である。具体例としては、α−アセトラクトン、β−プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、γ−ブチロラクトンが好ましい。
アミド化合物は、非環状のアミド化合物が好ましく、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、スルファニルアミド、トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−2−エチルヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−オクトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−オクトキシプロピオンアミド等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミドが好ましい。
アルカンジオールは、2つの水素原子が2つの水酸基で置換されているアルカン化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオールが好ましい。
上記水系着色インク及び水系コーティング液は、当然ながら水が含まれており、使用される水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等が挙げられる。また、インクやコーティング液を長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。更に、インクジェットプリンタによる印刷条件に合わせてインクやコーティング液を水で希釈することも可能である。上記水系着色インク及び水系コーティング液中において、水の含有量は、例えば20〜80質量%の範囲であることが好ましい。
上記水系着色インク及び水系コーティング液には、更に必要に応じて、表面調整剤、消泡剤、保湿剤、湿潤分散剤、防腐剤・防かび剤、溶解助剤、酸化防止剤、金属トラップ剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
本発明のインクセットにおいて、上記水系着色インク及び水系コーティング液は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することにより調製できる。
本発明のインクセットにおいて、上記水系コーティング液は、基材への濡れ性を向上させる観点から、その25℃における表面張力が18.0〜30.0mN/mであることが好ましく、19.0〜27.5mN/mであることがより好ましく、20.0〜25.0mN/mであることが更に好ましい。一方、上記水系着色インクは、上記水系コーティング液と接触した際に滲みを発生させず、良好な印刷層を形成させる観点から、その25℃における表面張力が20.0〜50.0mN/mであることが好ましく、23.0〜45.0mN/mであることがより好ましく、26.0〜40.0mN/mであることが更に好ましい。なお、コーティング液やインクの表面張力は、プレート法により測定できる。
本発明のインクセットにおいて、上記水系コーティング液及び水系着色インクは、その25℃における粘度が、3.0〜10.0mPa・sであることが好ましく、4.0〜8.5mPa・sであることがより好ましく、5.0〜7.0mPa・sであることが更に好ましい。25℃における粘度が上記特定した範囲内にあれば、良好な吐出安定性が得られる。なお、コーティング液やインクの粘度は、B型粘度計を用いて測定できる。
本発明のインクセットは、種々のインクジェットプリンタに使用できる。このようなインクジェットプリンタは、プリントヘッドを備えており、該プリントヘッドのノズルから、インクセットを構成するインク及びコーティング液を液滴状で吐出させる。
次に、本発明の印刷方法を詳細に説明する。また、本発明の印刷方法は、上記のインクセットを用いたインクジェットプリンタによって印刷層を基材上に形成する印刷方法であって、前記水系コーティング液をプリントヘッドから吐出させて、コーティング液滴を基材上に着弾させる工程と、前記水系着色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を前記コーティング液上に着弾させることにより印刷層を形成させる工程とを含むことを特徴とする。本発明の印刷方法によれば、水系着色インク滴がコーティング液に接触する部分で該インク中の顔料の凝集が起こり、着色インクの滲みの発生を抑えて、基材への付着性が良好な印刷層を、光沢を低下させることなく、形成させることができる。
上記印刷方法において、基材は、特に限定されるものではなく、本発明の印刷方法は、例えば、鉄鋼、亜鉛めっき鋼(例えばトタン板)、錫めっき鋼(例えばブリキ板)、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属基材や、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン等のプラスチック基材のような、インク吸収性のない基材(非吸収性基材)への印刷にも適している。なお、他の基材としては、例えば、アート紙、コート紙、キャスト紙、上質紙、合成紙、インクジェット用紙等の紙基材、木材、石膏、珪酸カルシウム、ガラス、セラミック、コンクリート、セメント、モルタル、スレート等の無機系基材等が挙げられる。なお、基材は、印刷層との付着性を向上させるため、プライマー処理やコロナ処理等の一般的な表面処理が施されていてもよい。
上記印刷方法においては、コーティング液の乾燥を待たずに(即ち、コーティング液の乾燥を行わずに)水系着色インク滴を該コーティング液中に着弾させることができる。なお、上記印刷方法において、印刷直後(即ち、水や水溶性溶剤が蒸発する前)のコーティング液及び着色インクの総吐出液の厚みは、合計して、1〜20μmの範囲内にあることが好ましい。本発明の印刷方法において最終的に形成される印刷層は、インク滴をコーティング液滴上に着弾させた後、硬化・乾燥を経て形成される印刷層を意味する。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<水系コーティング液>
表1に示す配合処方に従い、樹脂、アミン化合物、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、水系コーティング液1〜8を調製した。なお、各水系コーティング液のpH、表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表1に示す。
下記表1に記載される配合剤は、下記の通りである。
*1 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Aとしては以下を用いた。
カチオマスター PE−30(四日市合成製、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロロヒドリン系ポリマー樹脂、樹脂含有量50質量%、重量平均分子量(Mw):9000、pH7.1でのカチオン度6.5meq/g)
*2 カチオンを有する樹脂の分散液Bとしては以下を用いた。
スーパーフレックス650(第一工業製薬製、カチオン性ポリカーボネートウレタン樹脂分散体、樹脂含有量28質量%、pH7.1でのカチオン度0.8meq/g)
*3 第一級カチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Cとしては以下を用いた。
PAA−SA(ニットボーメディカル製、アリルアミンアミド硫酸塩重合体樹脂、樹脂含有量20質量%、Mw:12,000、pH7.1でのカチオン度5.8meq/g)
*4 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Dとしては以下を用いた。
EPA−SK01(四日市合成製、ポリアミドポリアミン・エピクロロヒドリン系ポリマー樹脂、樹脂含有量12.5質量%、Mw:>200,000、pH7.1でのカチオン度2.7meq/g)
*5 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Eとしては以下を用いた。
DK6810(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量55.0質量%、pH7.1でのカチオン度7.1meq/g)
*6 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Fとしては以下を用いた。
DK6851(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量70.0質量%、pH7.1でのカチオン度6.8meq/g)
*7 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Gとしては以下を用いた。
DK6864(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量50.0質量%、pH7.1でのカチオン度6.5meq/g)
*8 TSF4446(モメンティブ社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、該シリコーンオイル含有量100質量%、表面調整剤)
Figure 2019108423
<自己分散性顔料を含む水系着色インクの調製>
表2に示す配合処方に従い、自己分散性顔料、樹脂、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、水系着色インクであるシアンインク1〜9を調製した。なお、各水系着色インクの表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表2に示す。
Figure 2019108423
上記表2に記載される配合剤は、下記の通りである。
*9 自己分散性顔料分散液としては、以下を用いた。
CAB−O―JET 250C(キャボット社製、シアン色の自己分散性顔料水分散液、顔料含有量10質量%)
*10 樹脂分散液Hとしては以下を用いた。
NEOREZ R−9621(DSM Coating Resins製、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン樹脂、粒子径50nm、酸価18、樹脂含有量38質量%)
*11 樹脂分散液Iとしては以下を用いた。
U−205(Alberdingk社製、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン樹脂、粒子径70nm、酸価18、樹脂含有量40質量%)
*12 樹脂水溶液Jとしては以下を用いた。
ハイロスX AW−36H(星光PMC社製、水溶性アクリル樹脂、粒子径なし、酸価60、樹脂含有量25質量%)
*13 樹脂分散液Kとしては以下を用いた。
AE373D(イーテック社製、自己分散性アクリル樹脂、粒子径150nm、酸価1、樹脂含有量50質量%)
*14 樹脂分散液Lとしては以下を用いた。
ネオステッカー HA−560(日華化学製、ポリカーボネート基含有自己分散性ウレタン樹脂、粒子径30nm、酸価14、樹脂含有量35質量%)
*15 樹脂分散液Mとしては以下を用いた。
AE986B(イーテック社製、自己分散性アクリル樹脂、粒子径60nm、酸価15、樹脂含有量35質量%)
*16 樹脂分散液Nとしては以下を用いた。
NEOREZ R−967(DSM Coating Resins製、ポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂、粒子径60nm、酸価15、樹脂含有量40質量%)
*17 樹脂分散液Oとしては以下を用いた。
Joncryl 631(BASF社製、非自己分散性アクリルスチレンエマルジョン、粒子径110nm、酸価25、樹脂含有量50質量%)
*18 樹脂分散液Pとしては以下を用いた。
ハイドラン AP−20(DIC社製、自己分散性ポリエステルウレタン樹脂、粒子径140nm、酸価14、樹脂含有量30質量%)
<非自己分散型顔料を含む水系着色インクの調製>
表3に示す配合処方に従い、非自己分散型顔料、消泡剤、水溶性溶剤、湿潤分散剤、イオン交換水を公知の方法により分散した水系着色分散液に、樹脂ならびに表面調整剤を加え、非自己分散型顔料を含む水系着色インクであるシアンインク10、11を得た。なお、各水系着色インクの表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表3に示す。
Figure 2019108423
上記表3に記載される配合剤は、下記の通りである。
*19 非自己分散型顔料としては、以下を用いた。
フタロシアニンブルー(FASTOGEN Blue FA5380(DIC製)、シアン)
*20 SNデフォーマー1312(サンノプコ(株)社製)
*21 湿潤分散剤(ノイゲンEA−157、第一工業製薬製)
水系着色インクと水系コーティング液を組み合わせてなるインクセットを用意し、各種評価を行った。なお、水系着色インクと水系コーティング液の組み合わせ、および評価結果を表4〜表14に示す。自己分散性樹脂の酸価と水溶性ポリマーのpH7.1でのカチオン度(meq/g)の比(樹脂酸価:カチオン度)についても表4〜表14に示す。
<着色インクとコーティング液の混合時における顔料の凝集の有無>
水系着色インクと水系コーティング液を質量比1:1で混合して混合液を調製した。粒度計(日機装社製microtrac upa)を用い、混合液中の顔料の平均粒子径を測定した。得られた値を水系着色インク中の顔料の平均粒子径と比較して凝集の有無について評価した。評価基準は以下の通りである。
○:着色インクの顔料平均粒子径と比較して、混合液の顔料平均粒子径の増加率が500%以上。
×:着色インクの顔料平均粒子径と比較して、混合液の顔料平均粒子径の増加率が500%未満。
<印刷時画像の精細さ>
武藤工業社製ラミレスPJ−1304NXを用いて、まず、コーティング液滴を吐出し、コーティング液滴を塩化ビニルシート表面に着弾させ、その後、コーティング液を乾燥させずに、該コーティング液上に水系着色インク滴を着弾させ、JIS X9201 2001 N3Aで規定される画像を印刷し、印刷後の滲みの程度を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
○:画像に滲みがみられず
△:色間が滲むが画像全体の滲みは小さい
×:明らかに滲む
<塩化ビニル基材への付着性>
武藤工業社製ラミレスPJ−1304NXを用いて、まず、塩化ビニルシートの各表面にコーティング液滴を着弾させ、ベタ印刷を行った。次いで、コーティング液を乾燥させずに、該コーティング液上に水系着色インク滴を着弾させ、ベタ印刷を行った。印刷部分に幅24mmのセロテープ(登録商標、NICHIBAN社製)を密着させ、その後、テープを剥がし、剥離部分の状態を目視により下記の評価基準で評価した。
○:剥離しなかった
△:テープを貼った箇所の50%未満が剥離した。
×:テープを貼った箇所の50%以上、あるいは全面が剥離した。
<PET基材への付着性>
武藤工業社製ラミレスPJ−1304NXを用いて、まず、ポリエチレンテレフタレートシート(以下PETシート)の各表面にコーティング液滴を着弾させ、ベタ印刷を行った。次いで、コーティング液を乾燥させずに、該コーティング液上に水系着色インク滴を着弾させ、ベタ印刷を行った。印刷部分に幅24mmのセロテープ(登録商標、NICHIBAN社製)を密着させ、その後、テープを剥がし、剥離部分の状態を目視により下記の評価基準で評価した。
○:剥離しなかった
△:テープを貼った箇所の50%未満が剥離した。
×:テープを貼った箇所の50%以上、あるいは全面が剥離した。
<PP基材への付着性>
武藤工業社製ラミレスPJ−1304NXを用いて、まず、ポリプロピレンシート(以下PPシート)の各表面にコーティング液滴を着弾させ、ベタ印刷を行った。次いで、コーティング液を乾燥させずに、該コーティング液上に水系着色インク滴を着弾させ、ベタ印刷を行った。印刷部分に幅24mmのセロテープ(登録商標、NICHIBAN社製)を密着させ、その後、テープを剥がし、剥離部分の状態を目視により下記の評価基準で評価した。
○:剥離しなかった
△:テープを貼った箇所の50%未満が剥離した。
×:テープを貼った箇所の50%以上、あるいは全面が剥離した。
<光沢>
武藤工業社製ラミレスPJ−1304NXを用いて、まず、白色ビニルシート表面にコーティング液滴を着弾させ、ベタ印刷を行った。次いで、コーティング液を乾燥させずに、該コーティング液上に水系着色インク滴を着弾させ、ベタ印刷を行った。印刷部分の光沢値をBYK社製光沢計 micro−TRI−grossを用いて20°光沢値を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:光沢値が40以上である。
○:光沢値が20以上40未満である。
△:光沢値が10以上20未満である
×:光沢値が10未満である。
<保存安定性(着色インク)>
水系着色インクを110ccのガラス瓶に100gとり、60℃で4週間保存を行い、保存前と保存後の粘度や粒径、表面張力、比重、pHの測定を行った。その結果について比較を行い、以下の基準で評価をした。
○:すべての項目に対し変化率が5.0%以内
△:いずれか1つの項目で5.0%を超え7.5%未満
×:いずれか1つの項目で変化率7.5%以上
<保存安定性(コーティング液)>
水系コーティング液を110ccのガラス瓶に100gとり、60℃で4週間保存を行い、保存前と保存後の粘度や表面張力、比重、pHの測定を行った。その結果について比較を行い、以下の基準で評価をした。
○:すべての項目に対し変化率10%以内
△:いずれか1つの項目で変化率が10%を超え20%未満
×:いずれか1つの項目で変化率20%以上
Figure 2019108423
Figure 2019108423
Figure 2019108423
Figure 2019108423
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Figure 2019108423
Figure 2019108423
Figure 2019108423
Figure 2019108423
Figure 2019108423
Figure 2019108423

Claims (8)

  1. 水系着色インクと水系コーティング液とを含むインクセットであって、
    前記水系着色インクが、水、自己分散性顔料、水溶性溶剤及び自己分散性樹脂を含み、該自己分散性樹脂がポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂を含み、前記水系コーティング液が、水、水溶性溶剤及び樹脂を含み、該水系コーティング液中に含まれる樹脂が、カチオンを有する水溶性ポリマーを含むことを特徴とするインクセット。
  2. 前記自己分散性樹脂の50体積%粒子径(D50)が10nm〜90nmであることを特徴とする、請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記ポリエステル基又はポリエーテル基含有ウレタン樹脂の重量平均分子量が100,000以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のインクセット。
  4. 前記水系コーティング液のpHが7.01〜10.0の範囲内にあることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のインクセット。
  5. 前記水溶性ポリマーが第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクセット。
  6. 前記水溶性ポリマーが、主鎖に第四級アンモニウムカチオンを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のインクセット。
  7. 前記自己分散性樹脂の酸価(A)と前記水溶性ポリマーのカチオン度(B)の比(A:B)が10:1〜1:1の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のインクセット。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクセットを用いたインクジェットプリンタによって印刷層を基材上に形成する印刷方法であって、
    前記水系コーティング液をプリントヘッドから吐出させて、コーティング液滴を基材上に着弾させる工程と、前記水系着色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を前記コーティング液上に着弾させることにより印刷層を形成させる工程とを含む、印刷方法。
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