JP2023016505A - 水系コーティング液、インクセット、及び印刷方法 - Google Patents

水系コーティング液、インクセット、及び印刷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吸収性基材に対しても濡れ性に優れる水系コーティング液を提供する。【解決手段】少なくとも水、樹脂、水溶性有機溶剤、グリセリン又はジグリセリンにアルキレンオキサイドを付加してなるグリセリン誘導体、及びノニオン系表面調整剤を含む水系コーティング液であって、前記グリセリン誘導体の重量平均分子量が500以上3,000以下であり、前記水系コーティング液中の前記グリセリン誘導体の含有量が0.1~10.0質量%であり、前記樹脂が重量平均分子量1,000以上100,000以下のカチオンを有する水溶性ポリマーを含み、前記水溶性有機溶剤が少なくとも1種類のグリコールエーテル系溶剤及び少なくとも1種類のアルカンジオール系溶剤を含み、前記ノニオン系表面調整剤が少なくとも1種類のシリコーン系表面調整剤を含むことを特徴とする水系コーティング液である。【選択図】なし

Description

本発明は、水系コーティング液、該水系コーティング液を備えるインクセット、及び該水系コーティング液又は該インクセットを用いた印刷方法に関し、特には、吸収性基材に対しても濡れ性に優れる水系コーティング液に関するものである。
インクジェットプリンタによる印刷に用いるインクとしては、様々なインクが開発されているが、環境負荷を低減する観点から、水系インクが広く使用されている。しかしながら、水系インクは溶媒として水を含むため、印刷の際に滲みを発生させる傾向がある。印刷により形成される印刷層の滲みを改善する方法としては、例えば、着色インクを凝集させる作用を有する処理液を併用する手法が知られている(例えば、特開平6-57192号公報及び特開2009-190379号公報)。
着色インクと処理液とを含む水系インクセットに関して、特開2017-222793号公報は、水系着色インクと水系コーティング液とを含むインクセットであって、前記水系着色インクが、水、自己分散性顔料、水溶性溶剤及び樹脂を含み、前記水系コーティング液が、水、水溶性溶剤及び樹脂を含み、該水系コーティング液中に含まれる樹脂が第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーを含み、該水系コーティング液のpHが7.1~10.0の範囲内にあることを特徴とするインクセットを記載する。
従来の水系インクセットでは、コート紙、上質紙、アート紙等の吸収性基材に対しては、コーティング液が浸透してしまうことで、コーティング液の凝集作用が十分に発揮されず、印刷物にスジや滲みの発生が起こる場合もあった。このため、出願人は、コート紙、上質紙、アート紙等の吸収性基材に対しても良好な印刷を行うことを可能にする印刷方法を提案している。
特開2021-53815号公報では、水系コーティング液と水系コーティング液とを含むインクセットを用いた印刷方法において、吸収性基材の表面をコーティング液で処理する際に、吸収性基材上のコーティング液を一度乾燥させてから、該吸収性基材の表面を再度コーティング液で処理すると、コーティング液は十分に濡れ広がり、吸収性基材の表面を均一に処理できることが記載されている。
特開平6-57192号公報 特開2009-190379号公報 特開2017-222793号公報 特開2021-53815号公報
特許文献4に記載される印刷方法によれば、コーティング液での2度の処理により、コーティング液は吸収性基材上でも十分に濡れ広がることが可能になり、これによってカラーインクを所定の位置に固定することができるため、良好な印刷を行える。一方で、吸収性基材上でのコーティング液自体の濡れ性を改善し、例えば特許文献4に記載される印刷方法を採用しなくても、あらゆる吸収性基材に対してコーティング液が十分に濡れ広がることを可能にすることが望まれる。
そこで、本発明の目的は、吸収性基材に対しても濡れ性に優れる水系コーティング液を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる水系コーティング液を用いたインクセット及び印刷方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討したところ、少なくとも、水と、樹脂として重量平均分子量1,000以上100,000以下のカチオンを有する水溶性ポリマーと、水溶性有機溶剤としてグリコールエーテル系溶剤及びアルカンジオール系溶剤と、特定量の、グリセリン又はジグリセリンにアルキレンオキサイドを付加してなる重量平均分子量が500以上3,000以下のグリセリン誘導体と、ノニオン系表面調整剤としてシリコーン系表面調整剤を含む水系コーティング液を調製することで、保存安定性及び吐出安定性を確保しつつ、吸収性基材に対して水系コーティング液を濡れ広がらせることができ、これによってその後に適用されるカラーインクの着弾位置を固定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
したがって、本発明の第1の態様は、少なくとも水、樹脂、水溶性有機溶剤、グリセリン又はジグリセリンにアルキレンオキサイドを付加してなるグリセリン誘導体、及びノニオン系表面調整剤を含む水系コーティング液であって、前記グリセリン誘導体の重量平均分子量が500以上3,000以下であり、前記水系コーティング液中の前記グリセリン誘導体の含有量が0.1~10.0質量%であり、前記樹脂が重量平均分子量1,000以上100,000以下のカチオンを有する水溶性ポリマーを含み、前記水溶性有機溶剤が少なくとも1種類のグリコールエーテル系溶剤及び少なくとも1種類のアルカンジオール系溶剤を含み、前記ノニオン系表面調整剤が少なくとも1種類のシリコーン系表面調整剤を含むことを特徴とする水系コーティング液である。
本発明の水系コーティング液の好適例においては、前記水系コーティング液中における前記カチオンを有する水溶性ポリマーの含有量が0.5~5.0質量%である。
本発明の水系コーティング液の他の好適例においては、前記カチオンを有する水溶性ポリマーが第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーを含む。
本発明の水系コーティング液の他の好適例において、前記水系コーティング液は、25℃での表面張力値が20.0mN/m以上30.0mN/m以下である。
本発明の水系コーティング液の他の好適例において、前記グリコールエーテル系溶剤は、沸点が180℃以上220℃以下のジエチレングリコール骨格又はトリエチレングリコール骨格を有するグリコールエーテル系溶剤を含む。
本発明の水系コーティング液の他の好適例においては、前記ノニオン系表面調整剤が、少なくとも1種類のアセチレングリコール系表面調整剤を含む。
本発明の第2の態様は、上記の水系コーティング液と、水系カラーインクとを含むことを特徴とするインクセットである。
本発明の第3の態様は、上記の水系コーティング液、又は上記のインクセットを用いた印刷方法であって、前記水系コーティング液をプリントヘッドから吐出させて、該水系コーティング液を基材上に着弾させることにより第一の印刷層を形成させる工程と、水系カラーインクをプリントヘッドから吐出させることにより第二の印刷層を形成させる工程とを含むことを特徴とする印刷方法である。
本発明の第1の態様によれば、吸収性基材に対しても濡れ性に優れる水系コーティング液を提供することができる。また、本発明の第2及び第3の態様によれば、かかる水系コーティング液を用いたインクセット及び印刷方法を提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の1つの態様は、少なくとも水、樹脂、水溶性有機溶剤、グリセリン又はジグリセリンにアルキレンオキサイドを付加してなるグリセリン誘導体、及びノニオン系表面調整剤を含む水系コーティング液である。本明細書においては、この水系コーティング液を「本発明の水系コーティング液」とも称する。
本明細書において「コーティング液」とは、基材表面の処理に使用され、その後に印刷されるカラーインクを凝集させるための液であり、「水系コーティング液」とは、主溶媒として水を含有するコーティング液である。
本発明の水系コーティング液は、水を含む。本発明の水系コーティング液に使用できる水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等が好適に挙げられる。また、コーティング液を長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。ここで、水系コーティング液において、水の含有量は、例えば20~90質量%であり、好ましくは50~90質量%であり、更に好ましくは60~80質量%である。これによって、より環境への負荷の少ないコーティング液を提供することができる。
本発明の水系コーティング液は、樹脂を含み、該樹脂は、カチオンを有する水溶性ポリマーを含む。この水溶性ポリマーは、カチオンを有するため、カラーインクを凝集する能力を発揮することができる。これにより、印刷層の滲みの発生を抑えつつ、基材への印刷層の付着性を向上でき、高速印刷が可能になる。また、カチオンであれば、pHが塩基性領域にある水系コーティング液中に存在していても、カラーインクを凝集する能力を発揮することができる。但し、カチオンを有する水溶性ポリマーは、カラーインクを凝集させる能力が高く、カラーインクの凝集の発生を著しく早く起こし、印刷層の光沢が低下する場合もあるため、後述する自己分散性顔料との組み合わせが好ましい。また、カチオンを有する水溶性ポリマーを用いて調製した水系コーティング液は、長期保存をした際にも粘度やpHが保たれ、優れた保存安定性が得られる。
本明細書において、水溶性ポリマーとは、水、又は水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解するポリマーを意味する。
カチオンを有する水溶性ポリマーは、重量平均分子量が1,000以上であることが好ましく、2,500以上であることがより好ましく、5,000以上であることが更に好ましい。カチオンを有する水溶性ポリマーの重量平均分子量を1,000以上とすることで、吸収性基材の印刷において、乾燥時に基材上にポリマーが存在する状態を作ることができ、結果として水系コーティング液及び水系カラーインクの浸透及び色間の滲みを防止することができる。
カチオンを有する水溶性ポリマーは、重量平均分子量が100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、45,000以下であることが更に好ましく、40,000以下であることが特に好ましい。カチオンを有する水溶性ポリマーの重量平均分子量を100,000以下とすることで、印刷ヘッドから吐出性を安定化することができる。また、水系コーティング液の後に適用される水系カラーインクのドットが広がりやすくなり、結果として発色性を向上させることができる。
本明細書において、カチオンを有する水溶性ポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
カチオンを有する水溶性ポリマーは、第四級アンモニウムカチオン(カチオン化された窒素原子)を有する水溶性ポリマーを含むことが好ましい。第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーを用いることで、水系コーティング液の保存安定性を向上させることができる。また、水系コーティング液の後に適用される水系カラーインクのドットが広がりやすくなり、結果として発色性を向上させることができる。
カチオンを有する水溶性ポリマーは、主鎖にカチオンを有することが好ましい。このような構造を有する水溶性ポリマーを用いると、水系カラーインクが水系コーティング液層上に印刷された際に、水系カラーインクの界面のみが瞬時に凝集し、水系カラーインク同士が混合することなく印刷された位置で定着するため、高速印刷を行う場合において、より好ましい。
カチオンを有する水溶性ポリマーは、カチオン度の異なる2種類以上の水溶性ポリマーであることが好ましい。カチオン度が異なる複数の水溶性ポリマーを用いることで、ドット径の大きさ、滲みの調整が容易となる。
具体的に、カチオンを有する水溶性ポリマーは、pH7.1でのカチオン度が5.5~7.5meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.0~5.0meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが好ましく、pH7.1でのカチオン度が6.0~7.0meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.5~4.5meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが更に好ましい。上記した2種類のカチオン度の範囲を有する水溶性ポリマーの割合は、カチオン度の範囲が高い水溶性ポリマー:カチオン度の範囲が低い水溶性ポリマーの質量比が1:1~20:1の範囲内であることが好ましく、7:3~10:1の範囲内であることがより好ましい。
本明細書において、カチオン度は、ポリビニル硫酸カリウム試薬を用いたコロイド滴定により求めることができる。詳しい手順は以下のとおりである。
コニカルビーカーに脱イオン水90mLを取り、試料(乾燥品換算)の500ppm水溶液を10mL加えてアミン水溶液でpH7.1とし、約1分間攪拌する。次にトルイジンブルー指示薬を2~3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム試薬(N/400PVSK)で滴定する。滴定速度は2mL/分とし、検水が青から赤紫色に変色して10秒間以上保持する時点を終点とする。カチオン度(meq/g)の計算式は次のとおりである。
カチオン度=(N/400PVSK滴定量)×(N/400PVSKの力価)/2
カチオンを有する水溶性ポリマーは市販品を使用することができる。なかでも、第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーが好ましいが、塩基性でも安定に存在できる観点から、例えば、DK6810、DK6851、DK6864、WS4030、WS4027、WS4052、CA6018(以上星光PMC社製)、ハーサイズCP-300、CP-800(以上ハリマ化成社製)、PAS-H-1L、PAS-H-5L、PAS-2401、PAS-A-1(以上ニットボーメディカル社製)、カチオマスターPDT-2、PD-7、PD-30(以上四日市合成社製)という名で市販されているエピクロロヒドリンとアルキルアミンの反応物、ポリアミン樹脂、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂等が挙げられる。カチオンを有する水溶性ポリマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の水系コーティング液中において、カチオンを有する水溶性ポリマーの含有量は、0.5~5.0質量%であることが好ましく、1.0~4.0質量%であることが更に好ましい。水系コーティング液中に含まれるカチオンを有する水溶性ポリマーの含有量を0.5~5.0質量%とすることで、水系コーティング液は濡れ広がりやすくなると共に、カラーインクの持つ色味を阻害することを防止することができる。このため、水系カラーインクの着弾位置の固定化及びカラーインクの持つ色を生かした印刷仕上がりを両立することができる。
本発明の水系コーティング液に使用できる他の樹脂としては、カチオンを有する水溶性ポリマー以外の、インク業界において通常使用されている樹脂を用いることができる。例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の水系コーティング液において、樹脂中のカチオンを有する水溶性ポリマーの割合は、50質量%以上であることが好ましい。特に、凝集作用を適切に制御する点から、水系コーティング液においては、樹脂中の第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの割合が50質量%以上であることが好ましい。
本発明の水系コーティング液中の樹脂の含有量は、例えば0.005~15質量%であり、0.5~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましく、0.5~4.5質量%であることが更に好ましく、0.5~4.0質量%であることが特に好ましい。
本発明の水系コーティング液は、水溶性有機溶剤を含み、該水溶性有機溶剤は、少なくとも1種類のグリコールエーテル系溶剤及び/又は少なくとも1種類のアルカンジオール系溶剤を含むことが好ましく、少なくとも1種類のグリコールエーテル系溶剤及び少なくとも1種類のアルカンジオール系溶剤を含むことが更に好ましい。水系コーティング液に水溶性有機溶剤として少なくとも1種類のグリコールエーテル系溶剤を用いることで、インクジェットプリンタ等の印刷機器の吐出部分(特にプリントヘッド)の界面(ヘッド界面)でのコーティング液の乾燥を防ぐことができ、これに加えて、基材に対する濡れ性及び表面調整剤添加時の安定性を向上させることもできる。結果として、水系コーティング液の吐出安定性及び吐出性、濡れ性、保存安定性を向上させることができる。また、水系コーティング液に水溶性有機溶剤として少なくとも1種類のアルカンジオール系溶剤を用いることで、インクジェットプリンタ等の印刷機器の吐出部分(特にプリントヘッド)の界面(ヘッド界面)でのコーティング液の乾燥を防ぐことができ、結果として、水系コーティング液の吐出安定性及び吐出性を向上させることができる。
アルカンジオール系溶剤は、2つの水酸基を有する非環系飽和炭化水素であり、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオールが好ましい。
グリコールエーテル系溶剤は、ジエチレングリコール骨格又はトリエチレングリコール骨格を有するグリコールエーテル系溶剤を含むことが好ましい。ジエチレングリコール骨格とは、ジエチレングリコールに由来する-OCHCHOCHCHO-の構造を指し、トリエチレングリコール骨格とは、トリエチレングリコールに由来する-OCHCHOCHCHOCHCHO-の構造を指す。また、グリコールエーテル系溶剤は、沸点が180℃以上220℃以下のグリコールエーテル系溶剤を含むことが好ましく、沸点が180℃以上220℃以下のジエチレングリコール骨格又はトリエチレングリコール骨格を有するグリコールエーテル系溶剤を含むことが更に好ましい。本明細書において、沸点は1気圧での沸点を指す。
グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル及びトリエチレングリコールモノベンジルエーテル等のエチレングリコールエーテル類、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル及びトリプロピレングリコールモノシクロヘキシルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(沸点207℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点216℃)等が好ましい。
本発明の水系コーティング液中の水溶性有機溶剤の含有量は、例えば5~49質量%であり、好ましくは5~35質量%であり、更に好ましくは10~35質量%であり、特に好ましくは15~35質量%である。また、本発明の水系コーティング液がアルカンジオール系溶剤とグリコールエーテル系溶剤の両方を含む場合、アルカンジオール系溶剤(A)とグリコールエーテル系溶剤(B)の質量比(A:B)は、8:1~1:8の範囲内であることが好ましく、5:1~1:5の範囲内であることがより好ましい。
本発明の水系コーティング液に使用できる他の水溶性有機溶剤としては、インクの吐出安定性、濡れ性及び保存安定性をより良好にする観点から、三~五員環のラクトン系溶剤、及びアミド系溶剤が好適に挙げられる。これら水溶性有機溶剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
三~五員環のラクトン系溶剤は、-C(=O)-O-を一部に含むラクトン環を有する化合物のうち、環を構成する原子数が3である三員環、原子数が4である四員環又は原子数が5である五員環の化合物である。具体例としては、α-アセトラクトン、β-プロピオンラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、γ-ブチロラクトンが好ましい。
アミド系溶剤は、非環状のアミド化合物が好ましく、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、スルファニルアミド、トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N-ジメチル-β-メトキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-ペントキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-ヘキソキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-ヘプトキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-2-エチルヘキソキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-オクトキシプロピオンアミド、N,N-ジエチル-β-メトキシプロピオンアミド、N,N-ジエチル-β-ブトキシプロピオンアミド、N,N-ジエチル-β-ペントキシプロピオンアミド、N,N-ジエチル-β-ヘキソキシプロピオンアミド、N,N-ジエチル-β-ヘプトキシプロピオンアミド、N,N-ジエチル-β-オクトキシプロピオンアミド等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチル-β-メトキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド、N,N-ジエチル-β-メトキシプロピオンアミド、N,N-ジエチル-β-ブトキシプロピオンアミドが好ましい。
本発明の水系コーティング液は、グリセリン又はジグリセリンにアルキレンオキサイドを付加してなるグリセリン誘導体を含む。本発明者は、このようなグリセリン誘導体は、吸収性基材に対して水系コーティング液を濡れ広がらせる効果が高いことを見出した。本明細書において「グリセリン又はジグリセリンにアルキレンオキサイドを付加してなるグリセリン誘導体」を「グリセリン誘導体(a)」と称する場合がある。
グリセリンは、HOCHCH(OH)CHOHの構造を有する3価のアルコールであり、ポリグリセリンは、グリセリンの多量体であり、グリセリンの脱水縮合反応、グリシドール、エピクロルヒドリン、グリセリンハロヒドリン等のグリセリン類縁物質を用いての合成、あるいは合成グリセリンのグリセリン蒸留残分からの回収等によって得られるが、一般的にはアルカリ触媒を用いたグリセリンの重縮合によって得られる。ポリグリセリンについて、グリセリンの二量体、三量体、四量体などを「ジグリセリン」、「トリグリセリン」、「テトラグリセリン」などと称する場合もある。
グリセリン誘導体(a)を構成し得るポリグリセリンは、水酸基価から算出される平均重合度が2のジグリセリンが特に好ましい。ポリグリセリンの平均重合度が高いと、水系コーティング液の粘度上昇を招く恐れがある。
本明細書において、ポリグリセリンの平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出されるポリグリセリンの平均重合度(n)である。詳しくは、次式(式1)、及び(式2)から平均重合度が算出される。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
(式2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数をいう。水酸化カリウムのミリグラム数は、社団法人日本油化学会編集、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)、2003年度版に準じて算出される。
グリセリン誘導体(a)は、グリセリン又はジグリセリンにアルキレンオキサイドを付加してなるグリセリン誘導体であり、好ましくはアルキレンオキサイドを1から100モル付加したグリセリン誘導体であり、より好ましくはアルキレンオキサイドを10から80モル付加したグリセリン誘導体である。このようなグリセリン誘導体をポリオキシアルキレングリセリルエーテルまたはポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルと称することもできる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が好適に挙げられる。グリセリン誘導体に付加されるアルキレンオキシドは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
グリセリン誘導体(a)の重量平均分子量は、500以上3,000以下であり、好ましくは700以上1500以下である。グリセリン誘導体(a)の重量平均分子量が500以上であると、乾燥時に基材上に水溶性ポリマーが存在する状態を補助し、吸収性基材に対する水系コーティング液の浸透を防止し、結果としてスジの少ない印刷物を作製することができる。一方、グリセリン誘導体(a)の重量平均分子量が3,000以下であると、水系コーティング液の吐出安定性及び保存安定性を維持することができる。
本明細書において、グリセリン誘導体(a)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
本発明の水系コーティング液中のグリセリン誘導体(a)の含有量は、好ましくは0.1~10.0質量%であり、更に好ましくは0.5~5.0質量%である。グリセリン誘導体(a)の含有量が0.1質量%以上であると、グリセリン誘導体(a)による濡れ性の向上効果を十分に発揮することができ、水系コーティング液が吸収性基材に吸収されることを防ぎ、水系コーティング液は十分に濡れ広がることが可能となる。また、グリセリン誘導体(a)の含有量が10.0質量%以下であると、印刷後のコーティング液の乾燥性及びコーティング液の吐出安定性を維持することができ、また、カチオンを有する水溶性ポリマーによって奏される効果に悪い影響も与えない。
グリセリン誘導体(a)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。グリセリン誘導体(a)については、阪本薬品工業株式会社、日油株式会社等から市販されている商品が入手可能である。
グリセリン誘導体(a)とカチオンを有する水溶性ポリマーは、少なくとも後者がカチオンを有する点で区別される。また、グリセリン誘導体(a)と水溶性有機溶剤は、少なくとも前者が揮発せずに基材上に残る点で区別される。
本発明の水系コーティング液は、ノニオン系表面調整剤を含み、該ノニオン系表面調整剤は、少なくとも1種類のシリコーン系表面調整剤を含む。シリコーン系表面調整剤は、濡れ性の向上効果が高く、カラーインクが着弾する前にカチオンを有する水溶性ポリマーを基材に濡れ広がらせることが出来、結果として水系カラーインクが印刷された際の色同士の滲みを防ぐことができる。
シリコーン系表面調整剤の具体例としては、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリエスエル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性水酸基含有ポリシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリシロキサン等が挙げられ、BYK-Chemie社、信越化学工業社等から市販されている商品が入手可能である。
本発明の水系コーティング液中のシリコーン系表面調整剤の含有量は、好ましくは0.05~3.0質量%である。
本発明の水系コーティング液において、ノニオン系表面調整剤は、さらに、少なくとも1種類のアセチレングリコール系表面調整剤を含むことが好ましい。アセチレングリコール系表面調整剤を用いることで、シリコーン系表面調整剤によってもたらされる濡れ性を更に向上させることによりカラーインクが着弾する前にカチオンを有する水溶性ポリマーを基材により濡れ広がらせることが出来、結果として水系カラーインクが印刷された際の色同士の滲みを防ぐことができる。
アセチレングリコール系表面調整剤は、アセチレン基と2つの水酸基を有する界面活性剤であり、例えば、下記式(1)
Figure 2023016505000001
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立した炭化水素基を示す)で表されるような、アセチレン基を中心とした左右対称構造を有する非イオン性界面活性剤が好適である。また、本明細書においては、界面活性剤の水酸基にアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を付加してなるアルキレンオキシド付加物もアセチレングリコール系表面調整剤に含まれる。アセチレングリコール系表面調整剤は、日信化学工業株式会社等から市販されている商品が入手可能である。
本発明の水系コーティング液中のアセチレングリコール系表面調整剤の含有量は、好ましくは0.05~3.0質量%である。本発明の水系コーティング液がシリコーン系表面調整剤とアセチレングリコール系表面調整剤の両方を含む場合、シリコーン系表面調整剤(C)とアセチレングリコール系表面調整剤(D)の質量比(C:D)は、5:1~1:5であることが好ましく、3:1~1:3であることが更に好ましい。
本発明の水系コーティング液に使用できる他のノニオン系表面調整剤としては、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、及びフッ素系表面調整剤等が挙げられる。これらノニオン系表面調整剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル系表面調整剤としては、マクロマー変性アクリル系表面調整剤が好ましい。水系コーティング液にマクロマー変性アクリル系表面調整剤を用いることで、乾燥膜の表面自由エネルギーを向上させ、結果として水系カラーインクが印刷された際のはじきを防ぐことができる。マクロマー変性アクリル系表面調整剤とは、アクリル系添加剤に対して単末端の反応性シリコーン(マクロマー)を反応させて生成される材料である。マクロマー変性アクリル系表面調整剤は、ビッグケミー・ジャパン株式会社から市販されている商品が入手可能である。
水系コーティングは、所望の表面張力値となるように表面調整剤を用いることが好ましい。例えば、本発明の水系コーティング液中の表面調整剤の合計含有量は、0.1~6.0質量%である。
本発明の水系コーティング液には、更に必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、保湿剤、湿潤分散剤、防腐剤・防かび剤、溶解助剤、酸化防止剤、金属トラップ剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
本発明の水系コーティング液は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することにより調製できる。本発明の水系コーティング液は、水を50質量%~90質量%、有機溶剤を5質量%~35質量%、樹脂を0.005質量%~5質量%の範囲内で含むことが好ましい。このように樹脂量が少ない水系コーティング液は、乾燥が早いため、凝集後の印刷スジの発生を抑える観点から好ましい。
本発明の水系コーティング液は、インクジェットプリンタ等の印刷機器の金属部分(特にプリントヘッド)における腐食の発生を抑える観点から、塩基性であることが好ましく、pHが7.01~10.0の範囲内にあることが好ましい。pHの調整には、pH調整剤を使用することができ、pH調整剤としてアミン化合物の使用が好ましく、沸点が70~270℃であるアミン化合物の使用が更に好ましい。沸点70~270℃のアミン化合物の具体例としては、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。これらアミン化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の水系コーティング液中のアミン化合物の含有量は、0.1~2.0質量%が好ましい。
本発明の水系コーティング液は、25℃における粘度が3.0~10.0mPa・sの範囲内であることが好ましい。本明細書において、インク及びコーティング液の粘度は、レオメーター(例えばTAインスツルメンツ社製レオメーターARES)を用い、液温を25℃に調整した後に測定される。
本発明の水系コーティング液は、25℃での表面張力値が30.0mN/m以下であることが好ましく、28.0mN/m以下であることがより好ましく、27.0mN/m以下であることが更に好ましい。水系コーティング液の表面張力を30.0mN/m以下とすることで、基材に対して広がり易くなり、その後に適用される水系カラーインクのドットを捕捉し易くなり、結果として滲み及び印刷スジを発生しにくくすることができる。
また、本発明の水系コーティング液は、25℃での表面張力値が20.0mN/m以上であることが好ましく、21.0mN/m以上であることがより好ましく、24.0mN/m以上であることが更に好ましい。水系コーティング液の表面張力を20.0mN/m以上とすることで、コーティング液が基材に吸収されにくくなり、結果としてコーティング液による凝集効果の失活を防ぐことができる。
本明細書において、インク及びコーティング液の「表面張力値」とは、平衡状態に達している表面張力値(いわゆる静的表面張力値)を指し、プレート法に基づき測定される。
本発明の水系コーティング液は、水系であることから、表面張力値は一般に高い傾向にあるため、有機溶剤の種類や含有量、及び/又は表面調整剤(好ましくはシリコーン系表面調整剤、より好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン)を含む添加剤の種類や含有量を適宜調整することが有効である。
本発明の水系コーティング液によれば、吸収性基材に対しても濡れ性に優れる水系コーティング液を提供することができる。
吸収性基材とは、水系コーティング液や水系インクに対して吸収性を有する基材であり、本明細書においては、以下の簡易的な測定方法によって吸収性の有無を判断することができる。具体的には、基材に対して水10mgを落とし10秒経過した後にふき取りを行う。その際に、水が浸透した痕があるかどうかを確認し、水が浸透した痕が目視にて認識できれば、その基材を吸収性基材とする。
吸収性基材の具体例としては、コート紙(具体的には樹脂コート紙)、アート紙、キャスト紙、微塗工紙、上質紙、合成紙、インクジェット用紙等の紙基材等が挙げられる。
本発明の別の態様は、上述した本発明の水系コーティング液と、水系カラーインクとを含むことを特徴とするインクセットである。本明細書においては、このインクセットを「本発明のインクセット」とも称する。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、水系コーティング液で処理された基材表面に印刷され、基材に色付けを行い、文字や画像等を描くためのインクであり、通常、水、樹脂、有機溶剤及び着色剤を含む。
本明細書においては、着色剤を0.1質量%を超える量で含む組成物を「インク」とし、着色剤を含まない又は着色剤を0.1質量%以下含む組成物を単に「液」として表現している。また、「水系カラーインク」とは、主溶媒として水を含有するカラーインクである。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、異なる色を発する複数の水系カラーインクからなっていてもよく、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクの4種類のインクを少なくとも含む水系カラーインクを例示することができる。水系コーティング液は、水系カラーインクと異なり、単独で使用されることも多いが、組成の異なる複数の水系コーティング液を使用してもよい。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、水を含む。水系カラーインクに使用できる水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等が好適に挙げられる。また、インクを長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。ここで、水系カラーインク中の水の含有量は、例えば20~90質量%であり、好ましくは50~90質量%であり、更に好ましくは60~80質量%である。これによって、より環境への負荷の少ないカラーインクを提供することができる。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクには、インク業界において通常使用されている樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
水系カラーインクに使用できる樹脂は、自己分散性樹脂を含むことができる。自己分散性樹脂とは、界面活性剤や乳化剤を使用しなくても、インク中で分散状態を保つことができる樹脂であり、通常、スルホン酸又はその塩やカルボン酸又はその塩等の親水性基を末端又は側鎖に有するポリマーや、ポリカーボネート基、ポリエステル基、ポリエーテル基等の親水性基を主鎖に有するポリマー等が好適に使用される。これら自己分散性樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。自己分散性樹脂は、市販品を使用してもよい。
自己分散性樹脂は、耐擦過性、耐水性等の印刷層の性能を向上させる観点から、自己分散性ウレタン樹脂を含むことが好ましく、更に各種基材への高い付着性を付与する観点から、ポリエステル基又はポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂を含むことが更に好ましい。自己分散性樹脂中における自己分散性ウレタン樹脂の割合は、30~100質量%であることが好ましい。
自己分散性ウレタン樹脂は、重量平均分子量が100,000~1,000,000であることが好ましく、150,000~750,000であることがより好ましく、200,000~500,000であることが更に好ましい。自己分散性ウレタン樹脂の重量平均分子量が上記特定した範囲内にあれば、耐擦過性をより向上でき、強固な印刷層を形成することができる。
本明細書において、自己分散性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
自己分散性ウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、任意に鎖伸長剤とを反応させて得ることができる。
ポリエステルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ-ε-カプロラクタムジオール及びポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエステルポリオールを用いることで、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。このような樹脂は、インク中にて粒子の形態で分散していることから、本明細書においては、ポリエステルウレタン樹脂粒子とも称される。
ポリエーテルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール及びポリオキシエチレン・プロピレングリコール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを用いることで、ポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。このような樹脂は、インク中にて粒子の形態で分散していることから、本明細書においては、ポリエーテルウレタン樹脂粒子とも称される。
ポリカーボネートポリオールは、特に制限はなく、例えば、1,6-ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール、1,4-ブタンジオールポリカーボネートポリオール及びポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールを用いることで、ポリカーボネート基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。このような樹脂は、インク中にて粒子の形態で分散していることから、本明細書においては、ポリカーボネートウレタン樹脂粒子とも称される。
ポリオール成分としては、アクリルポリオール等を用いてもよい。
これらのポリオール成分は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ポリイソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート成分の中でも、好ましくは、キシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)又はノルボルナンジイソシアネートである。これらのポリイソシアネート成分は、1種を単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
鎖伸長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコール及び低分子量のポリアミンを挙げることができる。低分子量の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジメチロールブタン酸及びジメチロールプロピオン酸等のジメチロールアルカン酸類等が挙げられる。低分子量のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
水系カラーインクは、ポリエーテルウレタン樹脂粒子、ポリエステルウレタン樹脂粒子等のウレタン系樹脂粒子を含むことが好ましい。ウレタン系樹脂粒子を含むインクは、印刷層の耐擦過性を向上させることもできる。
自己分散性樹脂は、インク中で分散しており、粒子の形態にある。ここで、自己分散性樹脂は、平均粒子径(D50)が10nm~90nmであることが好ましく、20nm~70nmであることがより好ましく、30nm~60nmであることが更に好ましい。上記特定した範囲内の平均粒子径であれば、自己分散性樹脂の分散状態が良く保存安定性に優れるインクを調製できる。
本明細書において、平均粒子径(D50)は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばSALD-7000:株式会社島津製作所社製)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本明細書における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
自己分散性樹脂は、その酸価が5.0~60.0であることが好ましい。上記特定した範囲内の酸価であれば、分散性を向上させることができる。本明細書において、樹脂の酸価とは、樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を意味する。
本発明のインクセットにおいては、水系カラーインクに含まれる自己分散性樹脂の酸価と、水系コーティング液に含まれるカチオンを有する水溶性ポリマーのカチオン度を調整することで、水系カラーインクのドット径を大きくし、かつ、滲みが発生しない、光沢に優れた印刷層を形成させることができる。ここで、自己分散性樹脂の酸価(E)とカチオン性ポリマーのpH7.1でのカチオン度(meq/g)(F)の比(E:F)は、10:1~1:2の範囲内であることが好ましく、6:1~1.2:3の範囲内であることがより好ましく、3:1~1:1の範囲内であることが更に好ましい。
水系カラーインク中の樹脂の含有量は、1~10質量%であることが好ましい。また、水系カラーインクに含まれる樹脂中の自己分散性樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、特に限定されず、インク業界において着色剤として通常使用されている有機顔料、無機顔料等の顔料を用いることができるが、自己分散性顔料を含むことが好ましい。自己分散性顔料とは、顔料分散剤を使用しなくても、インク中で分散状態を保つことができる顔料であり、通常、親水性に優れた官能基を表面に付与することで得られる。本発明者は、上述のカチオンを有する水溶性ポリマー、特には第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーと自己分散性顔料を組み合わせることで、凝集の発生が早すぎることにより印刷層の表面に凹凸が形成されることを防ぐことができ、それにより印刷層の光沢の低下を防ぐことができることを見出した。
本発明において、自己分散性顔料としては、カルボキシルイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、水酸化物イオン等のアニオンが表面に直接結合している顔料が好ましい。このようなアニオン型の自己分散性顔料を用いることにより分散剤を添加せずに顔料をインク中で安定に分散させることができ、より鮮明な画像を印刷することができる。これらアニオン型の自己分散性顔料は市販品を好適に使用できる。
顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、120、122、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、213;ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71;ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254;ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50;ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、27、28、29、30、60、64、80;ピグメントグリーン7、36;ピグメントブラウン23、25、26;及びピグメントブラック1、7、26、27、28、ピグメントホワイト6等が挙げられる。これら顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、シアンインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、27、28、29、30、60、64、80等が挙げられ、
マゼンタインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254等が挙げられ、
イエローインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、120、122、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、213等が挙げられ、
ブラックインクに使用できる顔料としては、例えば、ピグメントブラック1、7、26、27、28等が挙げられる。
その他の顔料として、ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71;ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50;ピグメントグリーン7、36;ピグメントブラウン23、25、26;ピグメントホワイト6等の顔料も、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックといった基本色インクに用いることができるとともに、オレンジインク、バイオレットインク、グリーンインク、レッドインク等の特殊色インクとして用いることもできる。
水系カラーインク中の顔料の含有量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できるが、0.5~10質量%であることが好ましい。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクには、有機溶剤を使用することができる。水系カラーインクに使用できる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、インク業界において通常使用されている有機溶剤を用いることができる。水系カラーインク中の有機溶剤の含有量は、例えば5~49質量%であり、好ましくは5~35質量%であり、更に好ましくは10~35質量%であり、特に好ましくは15~35質量%である。これによって、より環境への負荷の少ない水系カラーインクを提供することができるとともに、形成される膜内に有機溶剤が残りにくくなることから、耐擦過性等の膜物性が向上しやすくなる。有機溶剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
水系カラーインクに使用できる有機溶剤は、水溶性有機溶剤であることが好ましく、少なくとも1種類のアルカンジオール系溶剤、特には少なくとも2種類のアルカンジオール系溶剤を含むことが更に好ましい。アルカンジオール系溶剤を用いることで、インクジェットプリンタ等の印刷機器の吐出部分(特にプリントヘッド)でのインクの乾燥を防ぎ、結果としてインクの保存安定性、濡れ性及び吐出安定性を向上させることができる。水系カラーインク中のアルカンジオール系溶剤の含有量は、5.0~40.0質量%であることが好ましい。
水系カラーインクに使用できる有機溶剤は、インクの吐出安定性、濡れ性及び保存安定性をより良好にする観点から、アルカンジオール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、三~五員環のラクトン系溶剤、及びアミド系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。アルカンジオール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、三~五員環のラクトン系溶剤、及びアミド系溶剤の具体例については、上述した本発明の水系コーティング液の説明において記載したとおりである。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、アルカンジオール系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種類(好ましくは少なくとも2種類)を含むことが好ましい。水系カラーインクがアルカンジオール系溶剤とグリコールエーテル系溶剤の両方を含む場合、アルカンジオール系溶剤(G)とグリコールエーテル系溶剤(H)の質量比(G:H)は8:1~1:8の範囲内であることが好ましく、5:1~1:5の範囲内であることが好ましい。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、表面張力値を調整する観点から、表面調整剤を含むことが好ましい。表面調整剤としては、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤及びアセチレングリコール系表面調整剤等が挙げられ、少なくとも1種類のシリコーン系表面調整剤を含むことが好ましく、シリコーン系表面調整剤及びアセチレングリコール系表面調整剤の両方を含むことが更に好ましい。シリコーン系表面調整剤、及びアセチレングリコール系表面調整剤の具体例については、上述した本発明の水系コーティング液の説明において記載したとおりである。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクがシリコーン系表面調整剤とアセチレングリコール系表面調整剤の両方を含む場合、シリコーン系表面調整剤(I)とアセチレングリコール系表面調整剤(J)の質量比(I:J)は、5:1~1:5であることが好ましく、3:1~1:3であることが更に好ましい。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、所望の表面張力値となるように表面調整剤を用いることが好ましい。例えば、水系カラーインク中の表面調整剤の含有量は、0.1~5.0質量%である。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクには、更に必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、保湿剤、湿潤分散剤、防腐剤・防かび剤、溶解助剤、酸化防止剤、金属トラップ剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することにより調製できる。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインク液は、インクジェットプリンタ等の印刷機器の金属部分(特にプリントヘッド)における腐食の発生を抑える観点から、塩基性であることが好ましく、pHが7.01~10.0の範囲内にあることが好ましい。pHの調整には、pH調整剤を使用することができ、pH調整剤としてアミン化合物の使用が好ましく、沸点が70~270℃であるアミン化合物の使用が更に好ましい。沸点70~270℃のアミン化合物の具体例としては、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。これらアミン化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。水系カラーインク中のアミン化合物の含有量は、0.1~2.0質量%が好ましい。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、25℃における粘度が3.0~10.0mPa・sの範囲内であることが好ましい。
本発明のインクセットにおいて、水系カラーインクは、通常、水系コーティング液層上で印刷が行われるため、25℃における表面張力値が20.0mN/m以上50.0mN/m以下であることが好ましい。
本発明のインクセットによれば、吸収性基材に対しても濡れ性に優れる水系コーティング液を用いることから、吸収性基材上でも水系カラーインクを所定の位置に固定することができるため、良好な印刷を行うことができる。
本発明の別の態様は、上述した本発明の水系コーティング液、又は上述した本発明のインクセットを用いた印刷方法である。本明細書においては、この印刷方法を「本発明の印刷方法」とも称する。なお、本発明の印刷方法が、本発明の水系コーティング液を用いた印刷方法であっても、通常、水系コーティング液を単独で使用することはなく、カラーインクと組み合わせて使用される。
本発明の印刷方法は、水系コーティング液をプリントヘッドから吐出させて、該水系コーティング液を基材上に着弾させることにより第一の印刷層を形成させる工程を含む。本明細書においては、この工程を「第1印刷工程」とも称する。
本発明の印刷方法は、水系カラーインクをプリントヘッドから吐出させることにより第二の印刷層を形成させる工程を含む。本明細書においては、この工程を「第2印刷工程」とも称する。
本発明の印刷方法は、第1印刷工程と第2印刷工程とをこの順番で行うことが好ましく、第2印刷工程において第一の印刷層上に水系カラーインクを吐出させ、該水系カラーインクを第一の印刷層上に着弾させることにより第二の印刷層を形成させることが好ましい。
本発明の印刷方法において、基材は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄鋼、亜鉛めっき鋼(例えばトタン板)、錫めっき鋼(例えばブリキ板)、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属基材、ガラス、セラミック等の無機系基材、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン等のプラスチック基材、コート紙(具体的には樹脂コート紙)、アート紙、キャスト紙、微塗工紙、上質紙、合成紙、インクジェット用紙等の紙基材、木材、石膏、珪酸カルシウム、コンクリート、セメント、モルタル、スレート等の無機系基材等が挙げられる。基材は、印刷層との付着性を向上させるため、プライマー処理やコロナ処理等の一般的な表面処理が施されていてもよい。
本発明の印刷方法の好ましい実施態様においては、基材が吸収性基材であり、例えば、コート紙(具体的には樹脂コート紙)、アート紙、キャスト紙、微塗工紙、上質紙、合成紙、インクジェット用紙等の紙基材等が挙げられる。
本発明の印刷方法の第1印刷工程及び第2印刷工程において、基材の温度は30~45℃であることが好ましい。これにより、インクやコーティング液が基材上に均一に濡れ広がることができる。基材の温度とは、インクやコーティング液の印刷が行われる基材表面の温度である。
本発明の印刷方法において、プリントヘッドからの水系コーティング液の吐出、及びプリントヘッドからの水系カラーインクの吐出は、インクやコーティング液を吐出させるためのプリントヘッドを備える印刷装置を用いることで行うことが可能である。
本発明の印刷方法は、インクジェット印刷方式にて行われることが好適であるものの、これに限定されず、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、フレキソ印刷方式、スクリーン印刷方式、コーター方式等の各種印刷方式によって行うことも可能である。
本発明の印刷方法において、第2印刷工程は、第1印刷工程で形成された第一の印刷層の乾燥を待たずに(即ち、コーティング液の乾燥を行わずに)水系カラーインクの印刷を行うことができる。本発明の印刷方法の完了直後(即ち、水や有機溶剤が蒸発する前)の総吐出液の厚みは、合計して、1~20μmの範囲内にあることが好ましい。
本発明の印刷方法において、水系カラーインクが複数の水系カラーインクからなる場合、第一の印刷層上に最初に着弾させる水系カラーインクは、複数の水系カラーインクの中で25℃での表面張力値が最も低いことが好ましい。第一の印刷層上に最初に印刷を行う水系カラーインクは、コーティング液によるカラーインクの凝集作用の影響を最も強く受ける。このため、表面張力値の最も低い水系カラーインクを第一の印刷層上に最初に印刷することで、水系コーティング液の凝集作用を受けてもドット径を大きい状態で保つことができ、結果として鮮明性の高い印刷物を作製することができる。
本発明の印刷方法は、第1印刷工程の前に、ホワイトインク、特に酸化チタンを含有するホワイトインクで基材表面を印刷する工程を含んでいてもよい。また、本発明の印刷方法は、第2印刷工程の後に、ホワイトインク、特に酸化チタンを含有するホワイトインクで第二の印刷層表面を印刷する工程を含んでいてもよい。これにより、基材上、または第二の印刷層上に、白色の印刷層を形成することができる。ここで、ホワイトインクは、上述した本発明のインクセットを構成する水系カラーインクとは異なるインクであり、公知のホワイトインクを使用することができる。また、その印刷方法は、特に制限されないが、本発明のインクセットと併用した、インクジェットプリンタによる印刷が好ましい。
本発明の印刷方法は、第1印刷工程及び/又は第2印刷工程で形成された第一の印刷層及び/又は第二の印刷層を熱風によって乾燥させる工程を含んでいてもよい。また、上述のようなホワイトインクによる印刷を行う場合には、本発明の印刷方法は、白色の印刷層を熱風によって乾燥させる工程を含んでいてもよい。熱風(通常、空気を利用)を印刷層に当てて乾燥を行うことで、印刷層中に含まれる樹脂を基材上に融着させ、強固な膜を形成することができ、結果として、堅牢性に優れる印刷物を提供することが可能である。印刷層中に含まれる樹脂を基材上に融着させる観点から、熱風の温度は70~130℃であることが好ましく、80~110℃であることが更に好ましい。また、乾燥時間は2秒以上20秒以内であることが好ましく、5秒以上60秒以内であることがより好ましく、5秒以上15秒以内であることが更に好ましい。乾燥手段は、特に限定されるものではないが、送風機能を備えた乾燥機が好ましい。風量は、1.0m/min以上であることが好ましく、1.5~5.0m/minであることが更に好ましい。
本発明の印刷方法の好ましい実施態様は、上述した本発明の水系コーティング液、又は上述した本発明のインクセットを用いた印刷方法であって、水系コーティング液をプリントヘッドから吐出させて、該水系コーティング液を基材上に着弾させることにより第一の印刷層を形成させる工程と、水系カラーインクをプリントヘッドから吐出させて、該水系カラーインクを第一の印刷層上に着弾させることにより第二の印刷層を形成させる工程とを含むことを特徴とする印刷方法である。
本発明の印刷方法によれば、吸収性基材に対しても濡れ性に優れる水系コーティング液を用いることから、吸収性基材上でもカラーインクを所定の位置に固定することができるため、良好な印刷を行うことができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<水系コーティング液>
表1~4に示す配合処方に従い、樹脂、pH調整剤、水溶性有機溶剤、グリセリン誘導体、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、水系コーティング液1~52を調製した。各水系コーティング液のpH、表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表1~4に示す。
Figure 2023016505000002
Figure 2023016505000003
Figure 2023016505000004
Figure 2023016505000005
表1~4に記載される配合剤は以下のとおりである。
(樹脂)
*1 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Aとしては以下を用いた。
カチオマスター PE-30(四日市合成製、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロロヒドリン系ポリマー樹脂、樹脂含有量50質量%、重量平均分子量(Mw):9,000、pH7.1でのカチオン度6.5meq/g)
*2 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Bとしては以下を用いた。
DK6810(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量55.0質量%、重量平均分子量(Mw):<1,000、pH7.1でのカチオン度6.9meq/g)
*3 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Cとしては以下を用いた。
DK6850(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量70.0質量%、重量平均分子量(Mw):1,000~2,000、pH7.1でのカチオン度6.6meq/g)
*4 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Dとしては以下を用いた。
DK6853(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量50.0質量%、重量平均分子量(Mw):>100,000、pH7.1でのカチオン度6.4meq/g)
*5 第一級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Eとしては以下を用いた。
PAA-SA(ニットボーメディカル製、アリルアミンアミド硫酸塩重合体樹脂、樹脂含有量20質量%、重量平均分子量(Mw):12,000、pH7.1でのカチオン度5.8meq/g)
*6 樹脂分散液Fとしては以下を用いた。
NEOREZ R-9621(DSM Coating Resins製、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン樹脂、粒子径50nm、酸価18、樹脂含有量38質量%)
*7 カチオン性を有する樹脂の分散液Gとしては以下を用いた。
スーパーフレックス650(第一工業製薬製、カチオン性ポリカーボネートウレタン樹脂分散体、樹脂含有量28質量%、pH7.1でのカチオン度0.8meq/g)
*8 樹脂水溶液Hとしては以下を用いた。
ハイロスX AW-36H(星光PMC社製、水溶性アクリル樹脂、粒子径なし、酸価60、樹脂含有量25質量%)
(水溶性有機溶剤)
・ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(日本乳化剤製、グリコールエーテル溶剤、沸点207℃)
・トリエチレングリコールジメチルエーテル(東邦化学工業社製、グリコールエーテル溶剤、沸点216℃)
・ジエチレングリコールジメチルエーテル(東邦化学工業社製、グリコールエーテル溶剤、沸点162℃)
・ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(東邦化学工業社製、グリコールエーテル溶剤、沸点174℃)
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル(日本乳化剤社製、グリコールエーテル溶剤、沸点271.2℃)
・エチレングリコールモノヘキシルエーテル(日本乳化剤社製、グリコールエーテル溶剤、沸点208℃)
・エチレングリコールモノブチルエーテル(日本乳化剤社製、グリコールエーテル溶剤、沸点171.2℃)
(グリセリン誘導体)
・SC-P750(阪本化学工業社製、グリセリンの平均重合度:2、アルキレンオキサイド種:プロピレンオキサイド、平均付加モル数:約9、重量平均分子量(Mw):750)
・SC-E750(阪本化学工業社製、グリセリンの平均重合度:2、アルキレンオキサイド種:エチレンオキサイド、平均付加モル数:約13、重量平均分子量(Mw):750)
・ユニオールTG-330(日油社製、グリセリンの平均重合度:1、アルキレンオキサイド種:プロピレンオキサイド、平均付加モル数:約4、重量平均分子量(Mw):330)
・ユニオールTG-1000G(日油社製、グリセリンの平均重合度:1、アルキレンオキサイド種:プロピレンオキサイド、平均付加モル数:、約16、重量平均分子量(Mw):1000)
・ユニオールTG-3000G(日油社製、グリセリンの平均重合度:1、アルキレンオキサイド種:プロピレンオキサイド、平均付加モル数:約50、重量平均分子量(Mw):3000)
・ユニオールTG-4000G(日油社製、グリセリンの平均重合度:1、アルキレンオキサイド種:プロピレンオキサイド、平均付加モル数:約67、重量平均分子量(Mw):4000)
(表面調整剤)
*9 Twin 4100(EVONIK社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル含有量100質量%)
*10 BYK 349(BYK社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シリコーンオイル含有量100質量%)
*11 オルフィンD-10PG(日信化学工業社製、アセチレングリコール系表面調整剤、表面調整剤含有量50質量%)
*12 SF440(EVONIK社製、アセチレングリコール系表面調整剤、表面調整剤含有量100質量%)
*13 サーフロンS-241(AGCセイミケミカル社製、フッ素系表面調整剤、表面調整剤含有量30質量%)
<自己分散性顔料を含む水系カラーインクの調製例>
表5に示す配合処方に従い、自己分散性顔料水分散液、樹脂、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、自己分散性顔料を含む水系カラーインクを調製した。各水系カラーインクの表面張力値(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表5に示す。
Figure 2023016505000006
表5に記載される配合剤は、下記の通りである。既に説明した配合剤については省略する。
*14 自己分散性顔料分散液としては、以下を用いた。
・CAB-O―JET 250C
(キャボット社製、シアンの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量10質量%)
・CAB-O―JET―465M
(キャボット社製、マゼンタの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量15質量%)
・CAB-O―JET 270Y
(キャボット社製、イエローの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量10質量%)
・CAB-O―JET 300K
(キャボット社製、ブラックの自己分散性顔料水分散液、顔料含有量15質量%)
*15 WET280(EVONIC社製、ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤、表面調整剤含有量100質量%)
<非自己分散型顔料を含む水系カラーインク>
表6に示す配合処方に従い、非自己分散型顔料、消泡剤、水溶性溶剤、湿潤分散剤、イオン交換水を公知の方法により分散した水系着色分散液に、樹脂ならびに表面調整剤を加え、非自己分散型顔料を含む水系カラーインクを調製した。各水系カラーインクの表面張力値(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表6に示す。
Figure 2023016505000007
表6に記載される配合剤は、下記の通りである。既に説明した配合剤については省略する。
*16 非自己分散型顔料としては、以下を用いた。
・FASTOGEN Blue FA5380(フタロシアニンブルー、DIC社製シアン色顔料)
・シンカシャマゼンタRT(ジクロロキナクリドン、BASF社製マゼンタ色顔料)
・Hostaperm Yellow H5G(キノキサリンジオン、クラリアント社製イエロー色顔料)
・Nerox-1000(カーボンブラック、オリオンエンジニアリドカーボン社製、ブラック色顔料)
*17 SNデフォーマー1312(サンノプコ社製、消泡剤、成分含有量100質量%)
*18 ノイゲン E-157(第一工業製薬社製、湿潤分散剤、成分含有量100質量%)
<高速印刷時の滲み>
表7~12に示されるインクセットを用意して印刷性の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系コーティング液滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下の搬送速度で50%のベタ画像をOKトップコートプラス(王子製紙社製、坪量127.9g/m)、Sword ijet 4.3 gross(三菱製紙社製、坪量127.9g/m)、及びポリエチレンテレフタレートシート(以下PETシート)のそれぞれの基材表面上に印刷し、その後、水系コーティング液を乾燥させずに、着弾した水系コーティング液上にシアンインク、マゼンタインクのインク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で表7~12のカラーインクセットの順番に従いシングルパス吐出し着弾させ、それぞれについて100%のベタ印刷を一部重なりあうように印刷を行い、100℃の温度で5分間乾燥を行った。その後、印刷部分を顕微鏡と目視により下記の評価基準で評価した。水系コーティング液、及び水系カラーインクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。使用したインクセットの構成と評価結果を表7~12に示す。
○:どちらの色にも浸色は起きていない状態
△:顕微鏡の観察では浸色は起きているが目視では判断が難しい程度の状態
×:目視確認で明らかに浸色が起きている状態
<高速印刷時の印刷スジ>
表7~12に示されるインクセットを用意して印刷性の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系コーティング液滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下の搬送速度で50%のベタ画像をOKトップコートプラス(王子製紙社製、坪量127.9g/m)、Sword ijet 4.3 gross(三菱製紙社製、坪量127.9g/m)、及びポリエチレンテレフタレートシート(以下PETシート)のそれぞれの基材表面上に印刷し、その後、水系コーティング液を乾燥させずに、着弾した水系コーティング液上にブラックインクを除いたシアンインク、マゼンタインク、イエローインクのインク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で表7~12のカラーインクセットの順番に従いシングルパス吐出し着弾させ、シアンインク・マゼンタインク・イエローインクの各インクの印刷濃度80%、合計印刷濃度240%の混色ベタ印刷を行うと共に、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのそれぞれについて80%のベタ印刷も行い、100℃の温度で5分間乾燥を行った。その後、印刷部分を目視により下記の評価基準で評価した。水系コーティング液、及び水系カラーインクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。使用したインクセットの構成と評価結果を表7~12に示す。
○:単色ベタ及び混色ベタのいずれもスジ感がない状態
△:単色ベタ又は混色ベタのいずれかにスジ感のある状態
×:単色ベタ及び混色ベタのどちらにもスジ感のある状態
<発色性>
表7~12に示されるインクセットを用意して発色性の評価を行った。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系コーティング液滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下の搬送速度で50%のベタ画像をOKトップコートプラス(王子製紙社製、坪量127.9g/m)、Sword ijet 4.3 gross(三菱製紙社製、坪量127.9g/m)、及びPETシートのそれぞれの基材表面上に印刷し、その後、水系コーティング液を乾燥させずに、着弾した水系コーティング液上にブラックインクを除いたシアンインク、マゼンタインク、イエローインクのインク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度で表7~12のカラーインクセットの順番に従いシングルパス吐出し着弾させ、シアンインク・マゼンタインク・イエローインクの各インクの印刷濃度80%、合計印刷濃度240%のベタ印刷を行った。その後、100℃の温度で5分間乾燥を行い、印刷画像を作製した。
また、水系コーティング液の印刷を行わないこと以外は上記した手順と同様に印刷を行い、その後、100℃の温度で5分間乾燥を行うことで比較用画像の作製を行った。
上記印刷画像及び比較用画像の印刷部分を目視により下記の評価基準で評価した。水系コーティング液、及び水系カラーインクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。使用したインクセットの構成と評価結果を表7~12に示す。
○:印刷画像が比較用画像に対して発色が鮮明な状態。
△:印刷画像が比較用画像に対して同等程度の発色状態。
×:印刷画像が比較用画像に対して発色が劣る、または異なる色が形成している状態。
<保存安定性>
水系コーティング液のそれぞれを110ccのガラス瓶に100gとり、-20℃及び60℃で6週間保存を行い、保存前と保存後の粘度や表面張力、比重、pH、の測定を行った。その結果について比較を行った。評価基準は以下の通りである。評価結果を表7~12に示す。
○:すべての項目に対し変化率10%以内
△:いずれか1つの項目で変化率が10%を超え20%未満
×:いずれか1つの項目で変化率20%以上
<吐出安定性>
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、水系コーティング液をプリンターに充填した後、透明OHPシート上に着弾させ、装置に読み込まれているチェックパターンを印刷した(工程A)。次いで、水系コーティング液を吐出し、25m/min相当の12pL100%ベタ印刷を行った。その後、水系コーティング液滴を透明OHPシート上に着弾させ、装置に読み込まれている工程Aと同一のチェックパターンを印刷した(工程B)。工程A及び工程Bにおいてチェックパターンが印刷されたそれぞれのOHPシートを目視で確認し、チェックパターンから抜けているピンの割合を評価した。評価基準は以下の通りである。評価結果を表7~12に示す。
○:工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が5%未満である。
△:工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が5%以上~30%未満である。
×:工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が30%以上である。
Figure 2023016505000008
Figure 2023016505000009
Figure 2023016505000010
Figure 2023016505000011
Figure 2023016505000012
Figure 2023016505000013

Claims (8)

  1. 少なくとも水、樹脂、水溶性有機溶剤、グリセリン又はジグリセリンにアルキレンオキサイドを付加してなるグリセリン誘導体、及びノニオン系表面調整剤を含む水系コーティング液であって、前記グリセリン誘導体の重量平均分子量が500以上3,000以下であり、前記水系コーティング液中の前記グリセリン誘導体の含有量が0.1~10.0質量%であり、前記樹脂が重量平均分子量1,000以上100,000以下のカチオンを有する水溶性ポリマーを含み、前記水溶性有機溶剤が少なくとも1種類のグリコールエーテル系溶剤及び少なくとも1種類のアルカンジオール系溶剤を含み、前記ノニオン系表面調整剤が少なくとも1種類のシリコーン系表面調整剤を含むことを特徴とする水系コーティング液。
  2. 前記水系コーティング液中における前記カチオンを有する水溶性ポリマーの含有量が0.5~5.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水系コーティング液。
  3. 前記カチオンを有する水溶性ポリマーが第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーを含むことを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載の水系コーティング液。
  4. 前記水系コーティング液は、25℃での表面張力値が20.0mN/m以上30.0mN/m以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の水系コーティング液。
  5. 前記グリコールエーテル系溶剤は、沸点が180℃以上220℃以下のジエチレングリコール骨格又はトリエチレングリコール骨格を有するグリコールエーテル系溶剤を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の水系コーティング液。
  6. 前記ノニオン系表面調整剤が、少なくとも1種類のアセチレングリコール系表面調整剤を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の水系コーティング液。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の水系コーティング液と、水系カラーインクとを含むことを特徴とするインクセット。
  8. 請求項1~6のいずれか一項に記載の水系コーティング液、又は請求項7に記載のインクセットを用いた印刷方法であって、前記水系コーティング液をプリントヘッドから吐出させて、該水系コーティング液を基材上に着弾させることにより第一の印刷層を形成させる工程と、水系カラーインクをプリントヘッドから吐出させることにより第二の印刷層を形成させる工程とを含むことを特徴とする印刷方法。
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