JP2019143058A - 水系プライマーインク、インクセット及び印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高速印刷が可能であると共に吐出安定性にも優れる水系プライマーインクを提供する。【解決手段】少なくとも水、樹脂、有機溶剤及び増粘剤を含むインクジェット印刷用の水系プライマーインクであって、前記樹脂がカチオンを有する水溶性ポリマーを含むことを特徴とする水系プライマーインクである。【選択図】なし
Description
本発明は、水系プライマーインク、該水系プライマーインクを備えるインクセット及び該インクセットを用いた印刷方法に関し、特には、高速印刷が可能であると共に吐出安定性にも優れる水系プライマーインクに関するものである。
インクジェットプリンタによる印刷に用いるインクとしては、様々なインクが開発されているが、環境負荷を低減する観点から、水系インクが広く使用されている。しかしながら、水系インクは溶媒として水を含むため、印刷の際に滲みを発生させたり、非吸収性基材、低吸収性基材への付着性に劣る課題がある。このような印刷層の滲みや付着性の課題を解決するために、例えば、以下に示すようなインクやインクセットが提案されている。
特開2015−67766号公報(特許文献1)は、顔料、カーボネート基を複数有するウレタン樹脂を含む樹脂の分散液、及び水溶性溶剤を含み、樹脂(A)に対する顔料(B)の質量比(B/A)が1.0〜5.0の範囲内にある一種以上の水系着色インク組成物と、着色剤を含まず、樹脂及び水溶性溶剤を含み、樹脂の含有量が1質量%以上で且つ6質量%未満である水系クリアインク組成物とを組み合わせてなるインクセットであり、前記水系クリアインク組成物中における樹脂の質量パーセント濃度(C)に対する前記水系着色インク組成物中における樹脂の質量パーセント濃度(D)の比(D/C)が0.1〜1.0であることを特徴とするインクセットを記載し、これにより、吐出安定性及び濡れ性が良好であり、且つ、基材に対する付着性及び耐擦過性が良好な画像を形成可能であるインクセットを提供できることを記載している。
特開2016−3287号公報(特許文献2)は、インク非吸収性材料からなる被記録媒体に対するインクジェット記録用プライマーインクであって、フッ素・アクリル系複合樹脂、シリコーン・アクリル系複合樹脂、塩化ビニル・アクリル系複合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合体樹脂及び塩素化ポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、水と、有機溶剤とを含むことを特徴とするインクジェット記録用プライマーインクを記載し、これにより、ポリオレフィンからなる被記録媒体にインクジェットインクで記録した画像の密着性及び耐久性を向上できるとしている。
特開2009−190232号公報(特許文献3)は、自己分散性ポリマー微粒子と色材と水とを含むインク組成物の少なくとも1種と、前記インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な反応液と、を含むインクジェット記録用インクセットを記載し、これにより、高速な凝集体形成と良好なインク定着性とが実現できるとしている。
特許文献1〜3において提案されるようなインクやインクセットを用いることで水系インクの滲みや付着性の問題は改善できるものの、水系インクにとって解決すべき課題は他にも存在している。例えば、インクジェットプリンタによる印刷に用いるインクは、プリントヘッドのノズルからの吐出に適した粘度を有することが求められ、粘度が適していないと吐出不良やシブキ等の不具合を生じる。水系インクは、主溶媒である水自体の粘度が低いことから、樹脂、顔料、有機溶剤等の他の構成成分によって吐出に適した粘度に調整することが必要となる。
しかしながら、顔料を含まないクリアインクやプライマーインクにおいては、顔料による粘度調整が望めない。また、例えば上記したような水系インクの滲みや付着性を考慮しながら、水系着色インクとのバランスに適した設計にする必要性もあることから、クリアインクやプライマーインクにおける樹脂の種類や量の制限も多く、インク粘度の調整が困難であった。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、高速印刷が可能であると共に吐出安定性にも優れる水系プライマーインクを提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる水系プライマーインクを備えるインクセット及び該インクセットを用いた印刷方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、インクジェット印刷用の水系プライマーインクに対して、樹脂としてカチオンを有する水溶性ポリマーを配合すると共に増粘剤を配合することで、高速印刷が可能であると共に吐出安定性にも優れる水系プライマーインクを提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の水系プライマーインクは、少なくとも水、樹脂、有機溶剤及び増粘剤を含むインクジェット印刷用の水系プライマーインクであって、前記樹脂がカチオンを有する水溶性ポリマーを含むことを特徴とする。
本発明の水系プライマーインクの好適例において、前記水溶性ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜50,000である。
本発明の水系プライマーインクの他の好適例においては、前記増粘剤が、非イオン性の水溶性増粘剤を含む。
本発明の水系プライマーインクの他の好適例においては、前記非イオン性の水溶性増粘剤がウレタンポリマーである。
本発明の水系プライマーインクの他の好適例においては、前記ウレタンポリマーがポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーである。
本発明の水系プライマーインクの他の好適例においては、前記水系プライマーインク中における水の含有量が50質量%〜90質量%の範囲内であり、有機溶剤の含有量が5質量%〜35質量%の範囲内であり、樹脂の含有量が0.005質量%〜5質量%の範囲内である。
本発明の水系プライマーインクの他の好適例においては、前記水系プライマーインク中における増粘剤の含有量が0.01質量%〜2質量%の範囲内である。
本発明の水系プライマーインクの他の好適例においては、ずり速度10(1/s)における粘度(A)とずり速度100(1/s)における粘度(B)の比(A:B)が1:1〜3:2の範囲内である。
本発明の水系プライマーインクの他の好適例においては、前記有機溶剤が、ジオール化合物及びグリコールエーテル化合物を含む。
また、本発明のインクセットは、上記の水系プライマーインクと水系着色インクとを含むインクセットであって、前記水系着色インクが、少なくとも水、樹脂、有機溶剤及び着色剤を含むことを特徴とする。
また、本発明の印刷方法は、上記のインクセットを用いたインクジェットプリンタによって印刷層を基材上に形成する印刷方法であって、前記水系プライマーインクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を基材上に着弾させる工程と、前記水系着色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を該水系プライマーインク上に着弾させることにより印刷層を形成させる工程とを含むことを特徴とする。
本発明の水系プライマーインクによれば、高速印刷が可能であると共に吐出安定性にも優れる水系プライマーインクを提供することができる。また、本発明のインクセットによれば、かかる水系プライマーインクを備えるインクセットを提供することができ、本発明の印刷方法によれば、かかるインクセットを用いた印刷方法を提供することができる。
以下に、本発明の水系プライマーインクを詳細に説明する。本発明の水系プライマーインクは、少なくとも水、樹脂、有機溶剤及び増粘剤を含むインクジェット印刷用の水系プライマーインクであって、前記樹脂がカチオンを有する水溶性ポリマーを含むことを特徴とする。
本明細書において「プライマーインク」とは、印刷を行う際に、何らかの改善効果を目的として予め基材上に適用されるインクである。本発明の水系プライマーインクによれば、樹脂としてカチオンを有する水溶性ポリマーが配合されているため、顔料の凝集効果が発揮できる。
本明細書において「水系インク」とは、主溶媒として水を含有するインクである。
本明細書において「インクジェット印刷用インク」とは、インクジェットプリンタによる印刷(インクジェット印刷)に用いるためのインクである。
本明細書において「水系インク」とは、主溶媒として水を含有するインクである。
本明細書において「インクジェット印刷用インク」とは、インクジェットプリンタによる印刷(インクジェット印刷)に用いるためのインクである。
本発明の水系プライマーインクに使用される水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等が好適に挙げられる。また、インクを長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。上記水系プライマーインク中において、水の含有量は、例えば20〜90質量%の範囲であることが好ましいが、後述するように、増粘剤の使用により有機溶剤の含有量を低減することが可能であることから、50〜90質量%、好ましくは60〜80質量%の高い範囲内で調整することも容易である。これによって、より環境への負荷の少ない水系プライマーインクを提供することができる。
本発明の水系プライマーインクに用いる樹脂は、カチオンを有する水溶性ポリマーを含む。上記水溶性ポリマーは、カチオンを有するため、顔料を凝集する能力を発揮することができる。これにより、印刷層の滲みの発生を抑えつつ、基材への印刷層の付着性を向上でき、高速印刷が可能になる。また、カチオンであれば、pHが塩基性領域にある水系プライマーインク中に存在していても、顔料を凝集する能力を発揮することができる。但し、上記水溶性ポリマーは、顔料を凝集させる能力が高く、顔料の凝集の発生を著しく早く起こし、印刷層の光沢が低下する場合もあるため、後述する自己分散性顔料との組み合わせが好ましい。また、カチオンを有する水溶性ポリマーを用いて調製した水系プライマーインクは、長期保存をした際にも粘度やpHが保たれ、優れた保存安定性が得られる。
なお、本発明において、水溶性ポリマーとは、水、又は水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解するポリマーを意味する。
なお、本発明において、水溶性ポリマーとは、水、又は水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解するポリマーを意味する。
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、第四級アンモニウムカチオン(カチオン化された窒素原子)を有する水溶性ポリマーであることが好ましい。第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーを用いることで、印刷層の滲みの発生がより一層抑えられるとともに、印刷層の耐擦過性、水系プライマーインクの保存安定性が向上する。
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましく、2,500〜45,000であることがより好ましく、5,000〜40,000であることが更に好ましい。上記水溶性ポリマーの重量平均分子量を1,000以上とすることで、カチオンを有する水溶性ポリマーが顔料を凝集させる力が高くなり、印刷層の滲みの抑制効果及び付着性の改善効果が向上できる。一方、重量平均分子量が50,000を超えると、吐出安定性を低下させる場合がある。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、主鎖にカチオンを有することが好ましい。このような構造を有する水溶性ポリマーを用いると、水系着色インクが水系プライマーインクに着弾した際に、水系着色インクの界面のみが瞬時に凝集し、水系着色インク同士が混合することなく着弾した位置で定着するため、高速印刷を行う場合において、より好ましい。
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、カチオン度の異なる2種類以上の水溶性ポリマーであることが好ましい。カチオン度が異なる複数の水溶性ポリマーを用いることで、ドット径の大きさ、滲みの調整が容易となる。
具体的に、上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、pH7.1でのカチオン度が5.5〜7.5meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.0〜5.0meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが好ましく、pH7.1でのカチオン度が6.0〜7.0meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.5〜4.5meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが更に好ましい。上記した2種類のカチオン度の範囲を有する水溶性ポリマーの割合は、カチオン度の範囲が高い水溶性ポリマー:カチオン度の範囲が低い水溶性ポリマーの質量比が1:1〜20:1の範囲内であることが好ましく、7:3〜10:1の範囲内であることがより好ましい。
なお、本明細書において、カチオン度は、ポリビニル硫酸カリウム試薬を用いたコロイド滴定により求めることができる。詳しい手順は以下のとおりである。
コニカルビーカーに脱イオン水90mLを取り、試料(乾燥品換算)の500ppm水溶液を10mL加えてアミン水溶液でpH7.1とし、約1分間攪拌する。次にトルイジンブルー指示薬を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム試薬(N/400PVSK)で滴定する。滴定速度は2mL/分とし、検水が青から赤紫色に変色して10秒間以上保持する時点を終点とする。カチオン度(meq/g)の計算式は次のとおりである。
カチオン度=(N/400PVSK滴定量)×(N/400PVSKの力価)/2
具体的に、上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、pH7.1でのカチオン度が5.5〜7.5meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.0〜5.0meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが好ましく、pH7.1でのカチオン度が6.0〜7.0meq/gである水溶性ポリマーと、pH7.1でのカチオン度が2.5〜4.5meq/gである水溶性ポリマーとを含むことが更に好ましい。上記した2種類のカチオン度の範囲を有する水溶性ポリマーの割合は、カチオン度の範囲が高い水溶性ポリマー:カチオン度の範囲が低い水溶性ポリマーの質量比が1:1〜20:1の範囲内であることが好ましく、7:3〜10:1の範囲内であることがより好ましい。
なお、本明細書において、カチオン度は、ポリビニル硫酸カリウム試薬を用いたコロイド滴定により求めることができる。詳しい手順は以下のとおりである。
コニカルビーカーに脱イオン水90mLを取り、試料(乾燥品換算)の500ppm水溶液を10mL加えてアミン水溶液でpH7.1とし、約1分間攪拌する。次にトルイジンブルー指示薬を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム試薬(N/400PVSK)で滴定する。滴定速度は2mL/分とし、検水が青から赤紫色に変色して10秒間以上保持する時点を終点とする。カチオン度(meq/g)の計算式は次のとおりである。
カチオン度=(N/400PVSK滴定量)×(N/400PVSKの力価)/2
上記カチオンを有する水溶性ポリマーは市販品を使用することができる。なかでも、第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーが好ましいが、塩基性でも安定に存在できる観点から、例えば、DK6810、DK6851、DK6864、WS4030、WS4027、WS4052、CA6018(以上星光PMC社製)、ハーサイズCP−300、CP−800(以上ハリマ化成社製)、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−2401、PAS−A−1(以上ニットボーメディカル社製)、カチオマスターPDT−2、PD−7、PD−30(以上四日市合成社製)という名で市販されているエピクロロヒドリンとアルキルアミンの反応物、ポリアミン樹脂、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂等が挙げられる。なお、上記カチオンを有する水溶性ポリマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記水系プライマーインク中に含まれる樹脂に占める上記カチオンを有する水溶性ポリマーの割合は、50質量%以上であることが好ましいが、特に、凝集作用を適切に制御する点から、上記水系プライマーインク中に含まれる樹脂に占める上記第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの割合が50質量%以上であることが好ましい。
なお、上記水系プライマーインクに使用できる他の樹脂としては、上記カチオンを有する水溶性ポリマー以外の、インク業界において通常使用されている樹脂を用いることができる。例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書において「樹脂」とは主としてバインダーに分類される樹脂であり、後述する増粘剤に分類されるポリマーは除外される。
上記水系プライマーインク中において、樹脂の含有量は、例えば0.005〜15質量%であることが好ましく、0.005〜10質量%であることが更に好ましいが、後述するように、増粘剤の使用により吐出安定性が向上できることから、0.005〜5質量%、好ましくは0.005〜3質量%の低い範囲内で調整することも容易である。
上記水系プライマーインクに用いる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、インク業界において通常使用されている有機溶剤を用いることができる。なお、上記水系プライマーインク中において、有機溶剤の含有量は、5〜49質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましく、15〜45質量%であることが更に好ましいが、後述するように、増粘剤の使用により吐出安定性が向上できることから、5〜35質量%、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは15〜35質量%の低い範囲内で調整することも容易である。これによって、より環境への負荷の少ない水系プライマーインクを提供することができるとともに、塗膜内に有機溶剤が残りにくくなることから、耐擦過性等の膜物性が向上しやすくなる。
上記水系プライマーインクに用いる有機溶剤は、水溶性溶剤が好ましく、該水溶性溶剤は、インクの吐出安定性、濡れ性及び保存安定性をより良好にする観点から、ジオール化合物、グリコールエーテル化合物、三〜五員環のラクトン化合物、及びアミド化合物よりなる群から選択される少なくとも1種類を含むことが好ましく、ジオール化合物及びグリコールエーテル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種類を含むことが更に好ましく、ジオール化合物及びグリコールエーテル化合物を含むことが特に好ましい。ここで、ジオール化合物とグリコールエーテル化合物の両方を含む場合は、基材に対するプライマーインクの接触角を低くすることができ、短時間にプライマーインクが基材上に濡れ拡がることから、その後に吐出される水系着色インクをプライマーインク上に確実に着弾させることができ、それによって高精細な画像の作成が可能になるため好ましい。この場合、ジオール化合物(D)とグリコールエーテル化合物(G)の質量比(D:G)は8:1〜1:8の範囲内であることが好ましく、5:1〜1:5の範囲内であることが好ましい。
ジオール化合物は、2つの水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオールが好ましい。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールペンチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、エチレングリコールターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールペンチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールペンチルエーテル、トリエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールシクロヘキシルエーテル、トリエチレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールベンジルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類、並びにプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールペンチルエーテル、プロピレングリコールヘキシルエーテル、プロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールペンチルエーテル、ジプロピレングリコールヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールペンチルエーテル、トリプロピレングリコールヘキシルエーテル及びトリプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、エチレングリコールターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
三〜五員環のラクトン化合物は、−C(=O)−O−を一部に含むラクトン環を有する化合物のうち、環を構成する原子数が3である三員環、原子数が4である四員環又は原子数が5である五員環の化合物である。具体例としては、α−アセトラクトン、β−プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、γ−ブチロラクトンが好ましい。
アミド化合物は、非環状のアミド化合物が好ましく、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、スルファニルアミド、トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−2−エチルヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−オクトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−オクトキシプロピオンアミド等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミドが好ましい。
本発明の水系プライマーインクは、吐出安定性を向上させる観点から、増粘剤を含む。増粘剤を用いることで、顔料の含有量が少ない若しくは顔料を含まないインクや樹脂の含有量が少ないインクであっても、吐出安定性に優れるインクが調製できることから、有機溶剤の配合量も削減することができるため、環境への負荷の少ない水系プライマーインクを提供することができる。上記水系プライマーインク中において、増粘剤の含有量は、0.01質量%〜2質量%であることが好ましく、0.10質量%〜1質量%であることが更に好ましく、0.20質量%〜0.80質量%であることが一層好ましい。
本発明の水系プライマーインクがインクジェット印刷用であることから、増粘剤は、チクソ性の付与効果が低いもの又はチクソ性の付与効果がないものが好ましく、このような観点から、本発明の水系プライマーインクに用いる増粘剤は、非イオン性の水溶性増粘剤を含むものが好ましく、該非イオン性の水溶性増粘剤としては、ウレタンポリマーが好ましく、ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーが更に好ましい。増粘剤に占める非イオン性の水溶性増粘剤の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
なお、本発明において、水溶性増粘剤とは、水、又は水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解する増粘剤を意味する。
増粘剤は市販品を使用することができるが、ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーとしては、例えば、アデカノール UH−530、UH−541VF、UH−438、UH−450VF(以上株式会社ADEKA製)、SNシックナー 612、619、612NC、621N、621TF、623N、625N(以上サンノプコ社製)等が挙げられる。なお、増粘剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、水溶性増粘剤とは、水、又は水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して溶解する増粘剤を意味する。
増粘剤は市販品を使用することができるが、ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーとしては、例えば、アデカノール UH−530、UH−541VF、UH−438、UH−450VF(以上株式会社ADEKA製)、SNシックナー 612、619、612NC、621N、621TF、623N、625N(以上サンノプコ社製)等が挙げられる。なお、増粘剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の水系プライマーインクは、その目的から、着色剤を含まない又は着色剤を0.1質量%以下含むインクであることが好ましい。
本発明の水系プライマーインクには、更に必要に応じて、pH調整剤、表面調整剤、消泡剤、保湿剤、湿潤分散剤、防腐剤・防かび剤、溶解助剤、酸化防止剤、金属トラップ剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
本発明の水系プライマーインクは、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することにより調製できる。
本発明の水系プライマーインクは、pHが7.01〜10.0の範囲内にあることが好ましい。このような塩基性領域に水系プライマーインクのpHを設定することで、プリンタ等の印刷機器の金属部分(特にプリントヘッド)における腐食の発生を抑えることができる。なお、pHの調整には、pH調整剤を使用できるが、アミン化合物の使用が好ましく、沸点が70〜270℃であるアミン化合物の使用が更に好ましい。アミン化合物は、水系プライマーインク中のpHを適切に調整し、更には樹脂の凝集を防ぐ効果もある。またアミン化合物をインクに配合することで、より一層腐食を起こり難くすることが可能である。更に、アミン化合物の沸点が70〜270℃の範囲であれば、蒸発し難く、アミン化合物が水系プライマーインク中に長期にわたって留まることになり、水系プライマーインクの吐出安定性が長期に亘って優れ、更に印刷層の光沢が高くなる傾向もある。沸点70〜270℃のアミン化合物の具体例としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。これらアミン化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記水系プライマーインク中において、アミン化合物の含有量は、0.1〜2.0質量%が好ましい。
本発明の水系プライマーインクは、ニュートニアン粘性であることが好ましく、このような観点から、ずり速度10(1/s)における粘度(A)とずり速度100(1/s)における粘度(B)の比(A:B)が1:1〜3:2の範囲内であることが好ましい。このような粘度にインクを調整するためには、上述した好ましい増粘剤(即ちチクソ性の付与効果が低い又はチクソ性の付与効果がない増粘剤)を使用することが好ましい。
本発明の水系プライマーインクは、ずり速度10(1/s)における粘度が3.5〜14.0(mPa・s、25℃)であることが好ましく、4.5〜12.0(mPa・s、25℃)であることが更に好ましい。また、本発明の水系プライマーインクは、ずり速度100(1/s)における粘度が3.0〜13.0(mPa・s、25℃)であることが好ましく、4.0〜11.0(mPa・s、25℃)であることが更に好ましい。
なお、本発明の水系プライマーインクにおいて、粘度は、TAインスツルメンツ社製レオメーターARESを用い、液温を25℃に調整した後に測定される。
本発明の水系プライマーインクは、ずり速度10(1/s)における粘度が3.5〜14.0(mPa・s、25℃)であることが好ましく、4.5〜12.0(mPa・s、25℃)であることが更に好ましい。また、本発明の水系プライマーインクは、ずり速度100(1/s)における粘度が3.0〜13.0(mPa・s、25℃)であることが好ましく、4.0〜11.0(mPa・s、25℃)であることが更に好ましい。
なお、本発明の水系プライマーインクにおいて、粘度は、TAインスツルメンツ社製レオメーターARESを用い、液温を25℃に調整した後に測定される。
本発明の水系プライマーインクは、基材への濡れ性を向上させる観点から、その25℃における表面張力が18.0〜30.0mN/mであることが好ましく、19.0〜27.5mN/mであることがより好ましく、20.0〜25.0mN/mであることが更に好ましい。なお、インクの表面張力は、プレート法により測定できる。
次に、本発明のインクセットを詳細に説明する。本発明のインクセットは、上述した本発明の水系プライマーインクと水系着色インクとを含むインクセットであって、前記水系着色インクが、少なくとも水、樹脂、有機溶剤及び着色剤を含むことを特徴とする。
本発明のインクセットにおいて、水系着色インクは、少なくとも水、樹脂、有機溶剤及び着色剤を含むインクであり、インクジェット印刷用インクであることが好ましい。本発明のインクセットにおいて、水系着色インクは、単独で使用されてもよいが、二色以上の水系着色インクを組み合わせることもできる。ここで、「二色以上の水系着色インク」とは、異なる色を発する2種類以上の水系着色インクを意味する。
上記水系着色インクに使用される水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水、超純水等が好適に挙げられる。また、インクを長期保存する場合には、カビやバクテリアの発生を防止するため、紫外線照射等により滅菌処理した水を用いてもよい。更に、インクジェットプリンタによる印刷条件に合わせてインクを水で希釈することも可能である。上記水系着色インク中において、水の含有量は、例えば20〜80質量%の範囲であることが好ましい。
上記水系着色インクに用いる樹脂は、特に限定されるものではなく、インク業界において通常使用されている樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記水系着色インクに用いる樹脂は、自己分散性樹脂を含むことができる。自己分散性樹脂とは、界面活性剤や乳化剤を使用しなくても、インク中で分散状態を保つことができる樹脂であり、通常、スルホン酸又はその塩やカルボン酸又はその塩等の親水性基を末端又は側鎖に有するポリマーや、ポリカーボネート基、ポリエステル基、ポリエーテル基等の親水性基を主鎖に有するポリマー等が好適に使用される。この自己分散性樹脂の親水性基が、後述する自己分散性顔料の親水性基と互いに反発することで分散状態が保たれた状態となり、結果として保存安定性に優れるインクを調製することができる。これら自己分散性樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、自己分散性樹脂は、市販品を使用してもよい。
上記自己分散性樹脂は、耐擦過性、耐水性等の印刷層の性能を向上させる観点から、自己分散性ウレタン樹脂を含むことが好ましく、更に各種基材への高い付着性を付与する観点から、ポリエステル基又はポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂を含むことが更に好ましい。自己分散性樹脂中における自己分散性ウレタン樹脂の割合は、30〜100質量%であることが好ましい。
上記自己分散性ウレタン樹脂は、重量平均分子量が100,000〜1,000,000であることが好ましく、150,000〜750,000であることがより好ましく、200,000〜500,000であることが更に好ましい。上記自己分散性ウレタン樹脂の重量平均分子量が上記特定した範囲内にあれば、耐擦過性をより向上でき、強固な印刷層を形成することができる。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用され、移動相にはテトラヒドロフランが使用される。
上記自己分散性ウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、任意に鎖伸長剤とを反応させて得ることができる。
ポリエステルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクタムジオール及びポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエステルポリオールを用いることで、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。
ポリエーテルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール及びポリオキシエチレン・プロピレングリコール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを用いることで、ポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。
ポリカーボネートポリオールは、特に制限はなく、例えば、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール、1,4−ブタンジオールポリカーボネートポリオール及びポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールを用いることで、ポリカーボネート基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。
ポリオール成分としては、アクリルポリオール等を用いてもよい。
これらのポリオール成分は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ポリエーテルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール及びポリオキシエチレン・プロピレングリコール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを用いることで、ポリエーテル基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。
ポリカーボネートポリオールは、特に制限はなく、例えば、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール、1,4−ブタンジオールポリカーボネートポリオール及びポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等を挙げることができる。ポリオール成分としてポリカーボネートポリオールを用いることで、ポリカーボネート基含有自己分散性ウレタン樹脂を得ることができる。
ポリオール成分としては、アクリルポリオール等を用いてもよい。
これらのポリオール成分は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ポリイソシアネート成分としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等からなるポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート成分中、好ましくは、キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)又はノルボルナンジイソシアネートである。これらのポリイソシアネート成分は、1種を単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
鎖伸長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコール及び低分子量のポリアミンを挙げることができる。低分子量の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジメチロールブタン酸及びジメチロールプロピオン酸等のジメチロールアルカン酸類等が挙げられる。低分子量のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記自己分散性樹脂は、インク中で分散しており、粒子の形態にある。ここで、上記自己分散性樹脂は、50体積%粒子径(D50)が10nm〜90nmであることが好ましく、20nm〜70nmであることがより好ましく、30nm〜60nmであることが更に好ましい。上記特定した範囲内の50体積%粒子径であれば、自己分散性樹脂の分散状態が良く保存安定性に優れるインクを調製できる。本発明において、50体積%粒子径(D50)は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばSALD−7000:株式会社島津製作所社製)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
上記自己分散性樹脂は、その酸価が5.0〜60.0であることが好ましい。上記特定した範囲内の酸価であれば、分散性を向上させることができる。本明細書において、樹脂の酸価とは、樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を意味する。
本発明のインクセットにおいては、水系着色インクに含まれる自己分散性樹脂の酸価と、水系プライマーインクに含まれるカチオンを有する水溶性ポリマーのカチオン度を調整することで、水系着色インクのドット径を大きくし、かつ、滲みが発生しない、光沢に優れた印刷層を形成させることができる。ここで、上記自己分散性樹脂の酸価(A)と上記水溶性ポリマーのpH7.1でのカチオン度(meq/g)(B)の比(A:B)は、10:1〜1:1の範囲内であることが好ましく、6:1〜1.5:1の範囲内であることがより好ましく、3:1〜2:1の範囲内であることが更に好ましい。
上記水系着色インク中において、樹脂の含有量は、1〜10質量%であることが好ましい。また、上記樹脂に占める自己分散性樹脂の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
上記水系着色インクに用いる着色剤は、特に限定されず、インク業界において着色剤として通常使用されている有機顔料、無機顔料等の顔料を用いることができるが、自己分散性顔料を含むことが好ましい。自己分散性顔料とは、顔料分散剤を使用しなくても、インク中で分散状態を保つことができる顔料であり、通常、親水性に優れた官能基を表面に付与することで得られる。本発明者は、上述のカチオンを有する水溶性ポリマー、特には第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーと自己分散性顔料の組み合わせであれば、凝集の発生が早すぎることで印刷層の表面に凹凸が形成されることを防ぐことができ、それにより印刷層の光沢の低下を防ぐことができることを見出した。
本発明において、上記自己分散性顔料としては、カルボキシルイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、水酸化物イオン等のアニオンが表面に直接結合している顔料が好ましい。このようなアニオン型の自己分散性顔料を用いることにより分散剤を添加せずに顔料をインク中で安定に分散させることができ、より鮮明な画像を印刷することができる。これらアニオン型の自己分散性顔料は市販品を好適に使用できる。
上記顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、120、122、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、213;ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71;ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254;ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50;ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、27、28、29、30、60、64、80;ピグメントグリーン7、36;ピグメントブラウン23、25、26;及びピグメントブラック1、7、26、27、28、ピグメントホワイト6等が挙げられる。なお、これら顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記水系着色インク中において、顔料の含有量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できるが、0.5〜10質量%であることが好ましい。
上記水系着色インクに用いる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、インク業界において通常使用されている有機溶剤を用いることができる。なお、上記水系着色インク中において、有機溶剤の含有量は、60質量%以下であることが好ましい。上記有機溶剤の含有量の下限は特に制限されないものの、通常、5質量%以上であることが好ましい。
上記水系着色インクに用いる有機溶剤は、水溶性溶剤が好ましく、該水溶性溶剤は、インクの吐出安定性、濡れ性及び保存安定性をより良好にする観点から、ジオール化合物、グリコールエーテル化合物、三〜五員環のラクトン化合物、及びアミド化合物よりなる群から選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。なお、ジオール化合物、グリコールエーテル化合物、三〜五員環のラクトン化合物及びアミド化合物については、水系プライマーインクにおいて説明した通りである。
上記水系着色インクには、更に必要に応じて、pH調整剤、表面調整剤、消泡剤、保湿剤、湿潤分散剤、防腐剤・防かび剤、溶解助剤、酸化防止剤、金属トラップ剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
上記水系着色インクは、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することにより調製できる。
本発明のインクセットにおいて、上記水系着色インクは、選択される顔料の種類等に応じてpHが変わるものの、プリンタ等の印刷機器の金属部分(特にプリントヘッド)における腐食の発生を抑える観点から、塩基性であることが好ましく、pHが7.01〜10.0、より好ましくはpHが7.1〜10.0の範囲内にあることが好ましい。なお、pHの調整には、pH調整剤を使用できるが、アミン化合物の使用が好ましい。なお、アミン化合物については、水系プライマーインクにおいて説明した通りである。上記水系着色インク中において、アミン化合物の含有量は0.1〜2.0質量%が好ましい。
上記水系着色インクは、水系プライマーインクと接触した際に滲みを発生させず、良好な印刷層を形成させる観点から、その25℃における表面張力が20.0〜50.0mN/mであることが好ましく、23.0〜45.0mN/mであることがより好ましく、26.0〜40.0mN/mであることが更に好ましい。なお、インクの表面張力は、プレート法により測定できる。
上記水系着色インクは、その25℃における粘度が、3.0〜10.0mPa・sであることが好ましく、4.0〜8.5mPa・sであることがより好ましく、5.0〜7.0mPa・sであることが更に好ましい。25℃における粘度が上記特定した範囲内にあれば、良好な吐出安定性が得られる。なお、インクの粘度は、TAインスツルメンツ社製レオメーターARESを用い、液温を25℃に調整した後に測定される。
本発明のインクセットは、種々のインクジェットプリンタに使用できる。このようなインクジェットプリンタは、プリントヘッドを備えており、該プリントヘッドのノズルから、インクセットを構成するインクを液滴状で吐出させる。
次に、本発明の印刷方法を詳細に説明する。本発明の印刷方法は、上述した本発明のインクセットを用いたインクジェットプリンタによって印刷層を基材上に形成する印刷方法であって、前記水系プライマーインクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を基材上に着弾させる工程と、前記水系着色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を該水系プライマーインク上に着弾させることにより印刷層を形成させる工程とを含むことを特徴とする。本発明の印刷方法によれば、水系着色インク滴が基材上の水系プライマーインクに接触する部分で該インク中の顔料の凝集が起こるため、印刷層の滲みの発生を抑えつつ、基材への印刷層の付着性を向上でき、高速印刷が可能となる。
上記印刷方法において、基材は、特に限定されるものではなく、本発明の印刷方法は、例えば、鉄鋼、亜鉛めっき鋼(例えばトタン板)、錫めっき鋼(例えばブリキ板)、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属基材や、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン等のプラスチック基材のような、インク吸収性のない基材(非吸収性基材)への印刷にも適している。なお、他の基材としては、例えば、アート紙、コート紙、キャスト紙、上質紙、合成紙、インクジェット用紙等の紙基材、木材、石膏、珪酸カルシウム、ガラス、セラミック、コンクリート、セメント、モルタル、スレート等の無機系基材等が挙げられる。なお、基材は、印刷層との付着性を向上させるため、プライマー処理やコロナ処理等の一般的な表面処理が施されていてもよい。
上記印刷方法においては、水系プライマーインクの乾燥を待たずに(即ち、水系プライマーインクの乾燥を行わずに)水系着色インク滴を該水系プライマーインク中に着弾させることができる。なお、上記印刷方法において、印刷直後(即ち、水や有機溶剤が蒸発する前)の水系プライマーインク及び水系着色インクの総吐出液の厚みは、合計して、1〜20μmの範囲内にあることが好ましい。本発明の印刷方法において最終的に形成される印刷層は、基材上の水系プライマーインク上に水系着色インクのインク滴を着弾させた後、硬化・乾燥を経て形成される印刷層を意味する。
本発明の印刷方法においては、上記水系プライマーインクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を基材上に着弾させる工程の前に、上記基材が、酸化チタンを含有するホワイトインクで印刷されていてもよい。また、本発明の印刷方法においては、上記水系着色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を水系プライマーインク上に着弾させることにより印刷層を形成させる工程の後に、該印刷層を覆うように、酸化チタンを含有するホワイトインクによる印刷を行う工程を更に含んでもよい。ホワイトインクの印刷によりホワイト印刷層を形成することができる。
ここで、上記ホワイトインクとしては、公知のホワイトインクを使用することができ、また、その印刷方法は、特に制限されないが、本発明のインクセットと併用した、インクジェットプリンタによる印刷が好ましい。
ここで、上記ホワイトインクとしては、公知のホワイトインクを使用することができ、また、その印刷方法は、特に制限されないが、本発明のインクセットと併用した、インクジェットプリンタによる印刷が好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<水系プライマーインク>
表1〜3に示す配合処方に従い、樹脂、アミン化合物、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、水系プライマーインク1〜32を調製した。なお、各水系プライマーインクのpH、表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表1〜3に示す。なお、水系プライマーインクの粘度については、ずり速度10(1/s)における25℃での粘度(A)、ずり速度100(1/s)における25℃での粘度(B)、及び該粘度(A)と該粘度(B)の比(A:B)を示す。
表1〜3に示す配合処方に従い、樹脂、アミン化合物、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、水系プライマーインク1〜32を調製した。なお、各水系プライマーインクのpH、表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表1〜3に示す。なお、水系プライマーインクの粘度については、ずり速度10(1/s)における25℃での粘度(A)、ずり速度100(1/s)における25℃での粘度(B)、及び該粘度(A)と該粘度(B)の比(A:B)を示す。
下記表1〜3に記載される配合剤は、下記の通りである。
*1 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Aとしては以下を用いた。
カチオマスター PE−30(四日市合成製、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロロヒドリン系ポリマー樹脂、樹脂含有量50質量%、重量平均分子量(Mw):9000、pH7.1でのカチオン度6.5meq/g)
*2 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Bとしては以下を用いた。
DK6851(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量70.0質量%、pH7.1でのカチオン度6.8meq/g)
*3 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Cとしては以下を用いた。
DK6864(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量50.0質量%、pH7.1でのカチオン度6.5meq/g)
*4 第一級カチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Dとしては以下を用いた。
PAA−SA(ニットボーメディカル製、アリルアミンアミド硫酸塩重合体樹脂、樹脂含有量20質量%、Mw:12,000、pH7.1でのカチオン度5.8meq/g)
*5 カチオンを有する樹脂の分散液Eとしては以下を用いた。
スーパーフレックス650(第一工業製薬製、カチオン性ポリカーボネートウレタン樹脂分散体、樹脂含有量28質量%、pH7.1でのカチオン度0.8meq/g)
*6 樹脂分散液Fとしては以下を用いた。
NEOREZ R−9621(DSM Coating Resins製、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン樹脂、粒子径50nm、酸価18、樹脂含有量38質量%)
*7 樹脂水溶液Gとしては以下を用いた。
ハイロスX AW−36H(星光PMC社製、水溶性アクリル樹脂、粒子径なし、酸価60、樹脂含有量25質量%)
*8 非イオン性の水溶性ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーである増粘剤Hとしては以下を用いた。
アデカノール UH−530(ADEKA社製、水溶性ポリエーテルウレタン会合型増粘剤、含有量30質量%)
*9 非イオン性の水溶性ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーである増粘剤Iとしては以下を用いた。
アデカノール UH−541VF(ADEKA社製、水溶性ポリエーテルウレタン会合型増粘剤、含有量30質量%)
*10 非イオン性の水溶性ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーである増粘剤Jとしては以下を用いた。
SNシックナー 612(サンノプコ社製、水溶性ポリエーテルウレタン会合型増粘剤、含有量40質量%)
*11 非イオン性の水溶性ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーである増粘剤Kとしては以下を用いた。
SNシックナー 621TF(サンノプコ社製、水溶性ポリエーテルウレタン会合型増粘剤、含有量30質量%)
*12 非イオン性高分子エマルジョン型の増粘剤Lとしては以下を用いた。
センカアクトゲルNS100(センカ社製、高分子エマルジョン型増粘剤、含有量35質量%)
*13 第四級アンモニウム塩を有する高分子エマルジョン型の増粘剤Mとしては以下を用いた。
センカアクトゲルCD100(センカ社製、高分子エマルジョン型増粘剤、含有量40質量%)
*14 高分子多糖類系増粘剤Nとしては以下を用いた。
KELZAN(三晶社製、多糖類型増粘剤、粉末状結晶)
*15 TSF4446(モメンティブ社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、該シリコーンオイル含有量100質量%、表面調整剤)
*1 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Aとしては以下を用いた。
カチオマスター PE−30(四日市合成製、ジメチルアミン・エチレンジアミン・エピクロロヒドリン系ポリマー樹脂、樹脂含有量50質量%、重量平均分子量(Mw):9000、pH7.1でのカチオン度6.5meq/g)
*2 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Bとしては以下を用いた。
DK6851(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量70.0質量%、pH7.1でのカチオン度6.8meq/g)
*3 第四級アンモニウムカチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Cとしては以下を用いた。
DK6864(星光PMC社製、ポリアミン樹脂、樹脂含有量50.0質量%、pH7.1でのカチオン度6.5meq/g)
*4 第一級カチオンを有する水溶性ポリマーの水溶液Dとしては以下を用いた。
PAA−SA(ニットボーメディカル製、アリルアミンアミド硫酸塩重合体樹脂、樹脂含有量20質量%、Mw:12,000、pH7.1でのカチオン度5.8meq/g)
*5 カチオンを有する樹脂の分散液Eとしては以下を用いた。
スーパーフレックス650(第一工業製薬製、カチオン性ポリカーボネートウレタン樹脂分散体、樹脂含有量28質量%、pH7.1でのカチオン度0.8meq/g)
*6 樹脂分散液Fとしては以下を用いた。
NEOREZ R−9621(DSM Coating Resins製、ポリエステル基含有自己分散性ウレタン樹脂、粒子径50nm、酸価18、樹脂含有量38質量%)
*7 樹脂水溶液Gとしては以下を用いた。
ハイロスX AW−36H(星光PMC社製、水溶性アクリル樹脂、粒子径なし、酸価60、樹脂含有量25質量%)
*8 非イオン性の水溶性ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーである増粘剤Hとしては以下を用いた。
アデカノール UH−530(ADEKA社製、水溶性ポリエーテルウレタン会合型増粘剤、含有量30質量%)
*9 非イオン性の水溶性ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーである増粘剤Iとしては以下を用いた。
アデカノール UH−541VF(ADEKA社製、水溶性ポリエーテルウレタン会合型増粘剤、含有量30質量%)
*10 非イオン性の水溶性ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーである増粘剤Jとしては以下を用いた。
SNシックナー 612(サンノプコ社製、水溶性ポリエーテルウレタン会合型増粘剤、含有量40質量%)
*11 非イオン性の水溶性ポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーである増粘剤Kとしては以下を用いた。
SNシックナー 621TF(サンノプコ社製、水溶性ポリエーテルウレタン会合型増粘剤、含有量30質量%)
*12 非イオン性高分子エマルジョン型の増粘剤Lとしては以下を用いた。
センカアクトゲルNS100(センカ社製、高分子エマルジョン型増粘剤、含有量35質量%)
*13 第四級アンモニウム塩を有する高分子エマルジョン型の増粘剤Mとしては以下を用いた。
センカアクトゲルCD100(センカ社製、高分子エマルジョン型増粘剤、含有量40質量%)
*14 高分子多糖類系増粘剤Nとしては以下を用いた。
KELZAN(三晶社製、多糖類型増粘剤、粉末状結晶)
*15 TSF4446(モメンティブ社製、ポリエーテル変性シリコーンオイル、該シリコーンオイル含有量100質量%、表面調整剤)
<自己分散性顔料を含む水系着色インクの調製>
表4に示す配合処方に従い、自己分散性顔料、樹脂、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、水系着色インクであるシアンインク1を調製した。なお、各水系着色インクの表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表4に示す。
表4に示す配合処方に従い、自己分散性顔料、樹脂、水溶性溶剤、表面調整剤及びイオン交換水を公知の方法により混合し、水系着色インクであるシアンインク1を調製した。なお、各水系着色インクの表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表4に示す。
上記表4に記載される配合剤は、下記の通りである。
*16 自己分散性顔料分散液としては、以下を用いた。
CAB−O―JET 250C(キャボット社製、シアン色の自己分散性顔料水分散液、顔料含有量10質量%)
*16 自己分散性顔料分散液としては、以下を用いた。
CAB−O―JET 250C(キャボット社製、シアン色の自己分散性顔料水分散液、顔料含有量10質量%)
<非自己分散型顔料を含む水系着色インクの調製>
表5に示す配合処方に従い、非自己分散型顔料、消泡剤、水溶性溶剤、湿潤分散剤、イオン交換水を公知の方法により分散した水系着色分散液に、樹脂ならびに表面調整剤を加え、非自己分散型顔料を含む水系着色インクであるシアンインク2を得た。なお、各水系着色インクの表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表5に示す。
表5に示す配合処方に従い、非自己分散型顔料、消泡剤、水溶性溶剤、湿潤分散剤、イオン交換水を公知の方法により分散した水系着色分散液に、樹脂ならびに表面調整剤を加え、非自己分散型顔料を含む水系着色インクであるシアンインク2を得た。なお、各水系着色インクの表面張力(25℃)、粘度(25℃)を測定し、得られた結果を表5に示す。
上記表5に記載される配合剤は、下記の通りである。
*17 非自己分散型顔料としては、以下を用いた。
フタロシアニンブルー(FASTOGEN Blue FA5380(DIC製)、シアン)
*18 SNデフォーマー1312(サンノプコ(株)社製)
*19 湿潤分散剤(ノイゲンEA−157、第一工業製薬製)
*17 非自己分散型顔料としては、以下を用いた。
フタロシアニンブルー(FASTOGEN Blue FA5380(DIC製)、シアン)
*18 SNデフォーマー1312(サンノプコ(株)社製)
*19 湿潤分散剤(ノイゲンEA−157、第一工業製薬製)
水系プライマーインクと水系着色インクを組み合わせてなるインクセットを用意し、各種評価を行った。なお、水系プライマーインクと水系着色インクの組み合わせ、および評価結果を表6〜13に示す。
<着色インクとプライマーインクの混合時における顔料の凝集の有無>
水系着色インクと水系プライマーインクを質量比1:1で混合して混合液を調製した。粒度計(日機装社製microtrac upa)を用い、混合液中の顔料の平均粒子径を測定した。得られた値を水系着色インク中の顔料の平均粒子径と比較して凝集の有無について評価した。評価基準は以下の通りである。
○:着色インクの顔料平均粒子径と比較して、混合液の顔料平均粒子径の増加率が500%以上。
×:着色インクの顔料平均粒子径と比較して、混合液の顔料平均粒子径の増加率が500%未満。
水系着色インクと水系プライマーインクを質量比1:1で混合して混合液を調製した。粒度計(日機装社製microtrac upa)を用い、混合液中の顔料の平均粒子径を測定した。得られた値を水系着色インク中の顔料の平均粒子径と比較して凝集の有無について評価した。評価基準は以下の通りである。
○:着色インクの顔料平均粒子径と比較して、混合液の顔料平均粒子径の増加率が500%以上。
×:着色インクの顔料平均粒子径と比較して、混合液の顔料平均粒子径の増加率が500%未満。
<印刷時の吐出安定性−1.吐出率>
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、プライマーインクをプリンターに充填した後、プライマーインク滴を透明OHPシート上に着弾させ、装置に読み込まれているチェックパターンを印刷した(工程A)。次いで、プライマーインク滴を吐出し、25m2相当の12pL100%ベタ印刷を行った。その後、プライマーインク滴を透明OHPシート上に着弾させ、装置に読み込まれている工程Aと同一のチェックパターンを印刷した(工程B)。工程A及び工程Bにおいてチェックパターンが印刷されたそれぞれのOHPシートを蛍光灯に透かし目視で確認し、チェックパターンから抜けているピンの割合を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が5%未満である。
○・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が5%以上〜10%未満である。
△・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が10%以上〜30%未満である。
×・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が30%以上である。
××・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が発生している。
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、プライマーインクをプリンターに充填した後、プライマーインク滴を透明OHPシート上に着弾させ、装置に読み込まれているチェックパターンを印刷した(工程A)。次いで、プライマーインク滴を吐出し、25m2相当の12pL100%ベタ印刷を行った。その後、プライマーインク滴を透明OHPシート上に着弾させ、装置に読み込まれている工程Aと同一のチェックパターンを印刷した(工程B)。工程A及び工程Bにおいてチェックパターンが印刷されたそれぞれのOHPシートを蛍光灯に透かし目視で確認し、チェックパターンから抜けているピンの割合を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が5%未満である。
○・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が5%以上〜10%未満である。
△・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が10%以上〜30%未満である。
×・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が無く、工程Bで印刷したチェックパターンから抜けているピンの割合が30%以上である。
××・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に不吐出が発生している。
<印刷時の吐出安定性−2.シブキ>
上記<印刷時の吐出安定性−1.吐出率>の工程A及び工程Bにおいてチェックパターンが印刷されたそれぞれのOHPシートを顕微鏡で確認し、全ドット数のうち、着弾位置にずれが生じたドット数の割合を求め、吐出時のシブキを評価した。評価基準は以下の通りである。
◎・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に着弾位置ずれが無く、工程Bで印刷したチェックパターンに着弾位置ずれが5%未満発生している。
○・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に着弾位置ずれが無く、工程Bで印刷したチェックパターンに着弾位置ずれが5%以上〜10%未満本発生している。
△・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に着弾位置ずれが無く、(工程Bで印刷したチェックパターンに着弾位置ずれが10%以上〜30%未満発生している。
×・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に着弾位置ずれが無く、(工程Bで印刷したチェックパターンに着弾位置ずれが30%以上発生している。
××・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に着弾位置ずれが発生している。
上記<印刷時の吐出安定性−1.吐出率>の工程A及び工程Bにおいてチェックパターンが印刷されたそれぞれのOHPシートを顕微鏡で確認し、全ドット数のうち、着弾位置にずれが生じたドット数の割合を求め、吐出時のシブキを評価した。評価基準は以下の通りである。
◎・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に着弾位置ずれが無く、工程Bで印刷したチェックパターンに着弾位置ずれが5%未満発生している。
○・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に着弾位置ずれが無く、工程Bで印刷したチェックパターンに着弾位置ずれが5%以上〜10%未満本発生している。
△・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に着弾位置ずれが無く、(工程Bで印刷したチェックパターンに着弾位置ずれが10%以上〜30%未満発生している。
×・・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に着弾位置ずれが無く、(工程Bで印刷したチェックパターンに着弾位置ずれが30%以上発生している。
××・・・・工程Aで印刷したチェックパターン中に着弾位置ずれが発生している。
<耐擦過性>
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、プライマーインク滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬搬送速度でシングルパス吐出し、プライマーインク滴を塩化ビニルシート表面に着弾させ、その後、プライマーインクを乾燥させずに、着弾した該プライマーインク上に水系着色インク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し着弾させ、100%ベタ印刷を行った。印刷後、80℃にて5分間乾燥させた後、印刷部分に綿棒(商標登録、白十字社製)で5往復擦過を行い、目視により下記の評価基準で評価した。
○:綿棒にインクが付かない
△:綿棒にインクが付くが、基材からインクが剥れない
×:綿棒にインクが付き、かつ基材からインクが剥れる
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、プライマーインク滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬搬送速度でシングルパス吐出し、プライマーインク滴を塩化ビニルシート表面に着弾させ、その後、プライマーインクを乾燥させずに、着弾した該プライマーインク上に水系着色インク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し着弾させ、100%ベタ印刷を行った。印刷後、80℃にて5分間乾燥させた後、印刷部分に綿棒(商標登録、白十字社製)で5往復擦過を行い、目視により下記の評価基準で評価した。
○:綿棒にインクが付かない
△:綿棒にインクが付くが、基材からインクが剥れない
×:綿棒にインクが付き、かつ基材からインクが剥れる
<高速印刷時の画像精細さ>
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、プライマーインク滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、プライマーインク滴を塩化ビニルシート表面に着弾させ、その後、プライマーインクを乾燥させずに、着弾した該プライマーインク上に水系着色インク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し着弾させ、JIS X9201 2001 N3Aで規定される画像を印刷し、印刷後のドットを顕微鏡で評価した。ここでプライマーインク及び着色インクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。評価基準は以下の通りである。
○:画像内のドット同士が独立して存在
△:画像内のドット同士が部分的に混合しているがドット形状はとどめている状態
×:画像内のドット同士が全体的に混合しドット形状をとどめていない状態
トライテック社製Stage JETを用いて、まず、プライマーインク滴を12pL、25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し、プライマーインク滴を塩化ビニルシート表面に着弾させ、その後、プライマーインクを乾燥させずに、着弾した該プライマーインク上に水系着色インク滴を12pLの25m/minの高速印刷条件下での搬送速度でシングルパス吐出し着弾させ、JIS X9201 2001 N3Aで規定される画像を印刷し、印刷後のドットを顕微鏡で評価した。ここでプライマーインク及び着色インクの解像度は縦×横=600×600dpiと設定した。評価基準は以下の通りである。
○:画像内のドット同士が独立して存在
△:画像内のドット同士が部分的に混合しているがドット形状はとどめている状態
×:画像内のドット同士が全体的に混合しドット形状をとどめていない状態
<保存安定性>
プライマーインクを110ccのガラス瓶に100gとり、60℃で4週間保存を行い、保存前と保存後の粘度や表面張力、比重、pHの測定を行った。その結果について比較を行い、以下の基準で評価をした。
○:すべての項目に対し変化率10%以内
△:いずれか1つの項目で変化率が10%を超え20%未満
×:いずれか1つの項目で変化率20%以上
プライマーインクを110ccのガラス瓶に100gとり、60℃で4週間保存を行い、保存前と保存後の粘度や表面張力、比重、pHの測定を行った。その結果について比較を行い、以下の基準で評価をした。
○:すべての項目に対し変化率10%以内
△:いずれか1つの項目で変化率が10%を超え20%未満
×:いずれか1つの項目で変化率20%以上
Claims (11)
- 少なくとも水、樹脂、有機溶剤及び増粘剤を含むインクジェット印刷用の水系プライマーインクであって、前記樹脂がカチオンを有する水溶性ポリマーを含むことを特徴とする水系プライマーインク。
- 前記水溶性ポリマーは、重量平均分子量が1,000〜50,000であることを特徴とする、請求項1に記載の水系プライマーインク。
- 前記増粘剤が、非イオン性の水溶性増粘剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の水系プライマーインク。
- 前記非イオン性の水溶性増粘剤がウレタンポリマーであることを特徴とする、請求項3に記載の水系プライマーインク。
- 前記ウレタンポリマーがポリエーテルポリオール系ウレタンポリマーであることを特徴とする、請求項4に記載の水系プライマーインク。
- 前記水系プライマーインク中における水の含有量が50質量%〜90質量%の範囲内であり、有機溶剤の含有量が5質量%〜35質量%の範囲内であり、樹脂の含有量が0.005質量%〜5質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水系プライマーインク。
- 前記水系プライマーインク中における増粘剤の含有量が0.01質量%〜2質量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水系プライマーインク。
- ずり速度10(1/s)における粘度(A)とずり速度100(1/s)における粘度(B)の比(A:B)が1:1〜3:2の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水系プライマーインク。
- 前記有機溶剤が、ジオール化合物及びグリコールエーテル化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水系プライマーインク。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の水系プライマーインクと水系着色インクとを含むインクセットであって、前記水系着色インクが、少なくとも水、樹脂、有機溶剤及び着色剤を含むことを特徴とする、インクセット。
- 請求項10に記載のインクセットを用いたインクジェットプリンタによって印刷層を基材上に形成する印刷方法であって、
前記水系プライマーインクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を基材上に着弾させる工程と、前記水系着色インクをプリントヘッドから吐出させて、インク滴を該水系プライマーインク上に着弾させることにより印刷層を形成させる工程とを含むことを特徴とする、印刷方法。
Priority Applications (1)
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JP2018029348A JP2019143058A (ja) | 2018-02-22 | 2018-02-22 | 水系プライマーインク、インクセット及び印刷方法 |
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
JP2021088408A (ja) * | 2019-11-25 | 2021-06-10 | 東洋インキScホールディングス株式会社 | 包装材、包装容器及びリサイクル基材製造方法 |
JP2021091476A (ja) * | 2019-12-06 | 2021-06-17 | 東洋インキScホールディングス株式会社 | 包装材、及びリサイクル基材製造方法 |
-
2018
- 2018-02-22 JP JP2018029348A patent/JP2019143058A/ja active Pending
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