JP2019108313A - キトサンとアンペロプシンを含有する血中尿酸値低減用組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
また、近年の疫学研究により、高尿酸血症は、心・脳血管障害の独立した危険因子であることが示唆されてきており、メタボリックシンドロームのバイオマーカーとしての重要性が指摘されてきている。以上のことから、血中尿酸値を適正にコントロールすることは、前記の疾患を予防する観点から重要となり、高尿酸血症を改善する医薬品や食品が強く望まれている。
また、特許文献1には、血清尿酸値を低減させて高尿酸血症または痛風の予防改善にキトサンが有用であることが記載されている。特許文献1に記載のキトサンの血清尿酸値低減作用は、極めて緩やかな作用であって、その後行なわれた臨床試験によって、人に対して血清尿酸値低下効果を発揮するためには、1日当たり1.22〜1.83gという高用量投与する必要があることが明らかになっている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
特許文献2にはケルセチンを含む食品が、キサンチンオキシダーゼ阻害によって高尿酸血症を改善することが記載されている。
特許文献3には、ハマメリスがキサンチンオキシダーゼを阻害し、高尿酸血症を改善することが記載されている。
特許文献4には、エラグ酸を含む組成物が、高尿酸血症のラットにおいて尿酸排泄を促
進することが記載されている。
特許文献5には、わさびの水性溶媒抽出物が高尿酸血症のラットにおいて尿酸排泄を促進することが記載されている。
本発明者らは天然物や天然抽出物を尿酸排泄剤として利用するために探索を行っていたところ、藤茶に血中尿酸値低減作用、プリン体吸収抑制作用、キサンチンオキシダーゼ阻害作用、尿酸排泄促進作用及びABCG2遺伝子活性化作用が存在することを発見している。
(1)キトサンとアンペロプシンを含有する血中尿酸値低減用組成物。
(2)キトサンとアンペロプシンを含有する尿酸排泄促進用組成物。
(3)キトサンとアンペロプシンを含有するプリン体吸収抑制用組成物。
(4)キトサン1質量部当たりアンペロプシンを0.5〜3質量部の比率で含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)一日当たりの摂取量としてキトサンを50〜150mg、アンペロプシンを100〜300mg含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
本発明でいうキトサンとは、β−1,4−ポリグルコサミン構造を主とする物質である。キチンを脱アセチル化して得ることができる。なおキチンは、1,4−ポリ−N−アセチルグルコサミン構造を主とする物質である。
本発明におけるキトサンは、いずれの原料から得られたキトサンをも用いることができるが、食品として摂取した場合の安全性が明らかであり、経済的にも優れていると考えられる点で、カニ、エビ等の甲殻類の甲皮を原料としたキトサンが好ましい。更に、本発明の組成物に使用するキトサンは、ヒトが経口摂取した場合の安全性が明らかにされており、食品添加物等として実績があるものが好ましい。
本発明に用いるキトサンは、市販の食品添加物用として市販されているものであれば使用可能である。このような製品としては、日本化薬フードテクノ株式会社製の食品用キトサン(製品名:キトサミン 登録商標)を例示する。
藤茶は、ブドウ科ノブドウ属の植物であり、中国名を顕歯蛇葡萄という。学名は、Ampelopsis grossedentataである。主には中国の広西、広東、雲南、貴州、湖南、湖北、江西、福建などの省並びに自治区に分布している。中国の広西、湖南などの省や自治区の壮族や瑶族の人々がこの茎および葉から作った飲料を常用しており、風邪、のどの痛みの予防や治療などにも利用されている。アンペロプシンは、藤茶の示す肝臓疾患の治療作用や抗菌作用の活性本体として特定されている。
すなわち、乾燥させた藤茶の枝葉部を含水エタノールで抽出した抽出物を濃縮し、例えば多孔性樹脂(DIAION HP−20)を用いたカラムクロマトグラフィーにかけ、80容量%含水メタノールで溶出される分画にアンペロプシンが得られる。これを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーや再結晶により、更に精製することができる。
精製されたアンペロプシンは、試薬としても販売されており、これを用いることもできる。
乾燥した藤茶の葉または茎の粉砕物または粉末を抽出原料とし、水又は親水性有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒に投入し、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で任意の装置を用いて抽出することにより得ることができる。
これらの中でもエタノールが好ましい。
なお、水と親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する場合には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して30〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して10〜40質量部、多価アルコールの場合は水10質量部に対して10〜90質量部添加することが好ましい。
これらは、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂、液―液向流分配などの方法により精製してから用いても構わない。
したがって、上記の藤茶抽出物からさらに再抽出やクロマトグラフィーにより再分画し、アンペロプシンの濃度を高めた抽出物も本発明の組成物として使用可能である。
・試料溶液の調製
試料(抽出物)約20mgを精秤し、蒸留水を加えて超音波にて溶解し、正確に50mLとする。この溶液2mLを50mLに正確に希釈し、試料溶液とする。
・標準溶液の調製と検量線作成
標準品(Dihydromyricetin SIGMA−ALDRICH社製)2.00mgを精秤し、100%アセトニトリルを適量加えて超音波処理して溶解し、さらにアセトニトリルを加えて正確に25mLとした、アンペロプシン標準原液80μg/mLを調製する。この標準原液を蒸留水にて正確に5倍希釈して、16μg/mLアンペロプシン標準溶液を調製する。HPLCへの注入量を10、20、40μLとし、アンペロプシンのピークに基づいて検量線を作成する。
・HPLC条件
下記表1の条件に設定する。
また組成物をそのまま、あるいは製剤化したものを飲食品に添加して用いることもできる。
なお製剤化に当たっては、本発明の組成物の目的を阻害しない範囲で使用することができる。具体的には、シクロデキストリン、へミセルロース、リグニン、グアガム、コンニャクマンナン、イサゴール、アルギン酸、寒天、カラギーナン、キチン、カルボキシメチルセルロース、ポリデキストロースなどの食物繊維や増粘剤、食用油、カルシウム、鉄、ナトリウム、亜鉛、銅、カリウム、リン、マグネシウム、ヨウ素、マンガン、セレンなどのミネラル;ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、葉酸、パントテン酸などの脂溶性または水溶性のビタミン群、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン脂質、アラビアガム、キサンタンガム、トラガカントガム、ローカストビーンガムなどの乳化剤や分散剤、増量剤、賦形剤、保存料・酸化防止剤、風味調整剤や香料、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、コハク酸、乳酸ナトリウムなどの呈味料、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、アジピン酸、フマル酸、リンゴ酸などの酸味料、マルチトール、アスパルテームなどの低カロリー甘味料、着色剤などである。
本発明の組成物にあっては、ヒトにおける血中尿酸値低減効果、尿酸排泄促進効果、プリン体吸収抑制効果を発揮する有効量として、一日当たりの投与量は、キトサンを50〜150mg、アンペロプシンを100〜300mg、好ましくはキトサンを100〜150mg、アンペロプシンを150〜200mg、特に好ましくはキトサン100mg、アンペロプシン150mgを含有する。
<藤茶抽出物の製造例1>
乾燥藤茶1重量部(200g)に対して水を15倍量加え90℃に加熱し、1時間抽出しろ過を行い、1番抽出液を得た。次いでこの残渣に水を12倍量加え、90℃に加熱し、30分間抽出し、ろ過を行い、2番抽出液を得た。両抽出液を合算し、減圧濃縮し、濃縮液約300mlを−40℃で凍結させ、さらに凍結乾燥装置で乾燥させ、乾燥物を得た。これを粉砕し、60メッシュの篩で篩い分けし、通過物85gを本発明に用いる抽出物とした。この抽出物中のアンペロプシン含有量は、68質量%であった。
乾燥藤茶1重量部(200g)に対して50%エタノール水溶液を15倍量加え、還流冷却機を付して加熱し、1時間抽出しろ過を行い、1番抽出液を得た。次いでこの残渣に同様に50%エタノール水溶液を12倍量加え、90℃に加熱し、30分間抽出し、ろ過を行い、2番抽出液を得た。両抽出液を合算し、減圧濃縮し、濃縮液約300mlを−40℃で凍結させ、さらに凍結乾燥装置で乾燥させ、乾燥物を得た。これを粉砕し、60メッシュの篩で篩い分けし、通過物78.1gを本発明に用いる抽出物とした。この抽出物中のアンペロプシン含有量は、52.9質量%であった。
製造例1と同様に、乾燥藤茶1重量部(200g)に対して水を15倍量加え90℃に加熱し、1時間抽出しろ過を行い、1番抽出液を得た。次いでこの残渣に水を12倍量加え、90℃に加熱し、30分間抽出し、ろ過を行い、2番抽出液を得た。両抽出液を合算し、減圧濃縮し、濃縮液約300mlを得た。さらにグアガム分解物を、濃縮液あたり78g添加し、−40℃で凍結させ、さらに凍結乾燥装置で乾燥させ、乾燥物を得た。これを粉砕し、60メッシュの篩で篩い分けし、通過物163.1gを本発明に用いる抽出物とした。この抽出物中のアンペロプシン含有量は、24.7質量%であった。
製造例1と同様に、乾燥藤茶1重量部(200g)に対して水を15倍量加え90℃に加熱し、1時間抽出しろ過を行い、1番抽出液を得た。次いでこの残渣に水を12倍量加え、90℃に加熱し、30分間抽出し、ろ過を行い、2番抽出液を得た。両抽出液を合算し、減圧濃縮し、濃縮液約300mlを得た。さらにγシクロデキストリンを、濃縮液中に78g添加し、−40℃で凍結させ、さらに凍結乾燥装置で乾燥させ、乾燥物を得た。これを粉砕し、60メッシュの篩で篩い分けし、通過物151.4gを本発明に用いる抽出物とした。この抽出物中のアンペロプシン含有量は、26.4質量%であった。
<1.プリン体負荷試験>
プリン体を経口投与しながら本発明品を摂取した場合の血中尿酸値及び尿中尿酸値に及ぼす効果を試験した。
(1)試験試料
70%含水エタノールで抽出した藤茶抽出物を試験試料とした。この抽出物中にはHPLC法で測定したとき、固形物重量あたりアンペロプシンが31.9質量%含有されていた。
1)ヒト試験用試料
表2の組成で、70%含水エタノール藤茶抽出物(アンペロプシン)を充填したカプセル剤、甲殻類由来のキトサン(日本化薬フードテクノ社製)及びアンペロプシン含有カプセル剤、プラセボ(デンプン)を充填したカプセル剤をヒト試験用試料として調製した(アンペロプシン150mg及びキトサン100mgは、一日摂取量としての数値を示す)。なおキトサン100mgは、血清尿酸の低下効果が認められる有効量の約10分の1の一日摂取量である。
日本人男性(20歳〜65歳)を対象にスクリーニング検査を行い、男性6名を被験者として選抜した。
なおスクリーニング、本試験を含め、試験スケジュールは表3、検査項目は表4のとおりである。また試験は、すべて専門の臨床検査施設においてヘルシンキ宣言に則って実施した。なお試験全体のフローを図1に示す。なお被験者の1名は制限事項の不遵守のため解析から除外され、最終解析は5名のデータで行った。
被験者6名をA、B、Cの3群に割付け、試験を行った。
上記の試験用カプセル剤を用いて無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー法で試験した。なお被験者には、酵母エキスの摂取によってプリン体負荷を行い、さらにアンペロプシン(3粒)およびプラセボ2(4粒)、アンペロプシン+キトサン(4粒)およびプラセボ1(3粒)、プラセボ1(3粒)およびプラセボ2(4粒)を各摂取期で合計7粒摂取させた。
プリン体の負荷開始から、60分、120分、180分、240分経過後に血液を採取して、血清尿酸値を測定した。
1)プリン体負荷60分前(午前9時〜9時半の間)に来院させ、被験者に水300m
Lを摂取させた。
2)プリン体負荷前の採血を行った。
3)水摂取60分後、全排尿させた。
4)排尿後、プリン体(ビール酵母抽出RNA、株式会社エル・エス・ファクトリー
BF)4.65g(RNAとして4g)を200mLの水で摂取させた。
5)プリン体摂取直後に試験食品またはプラセボを100mLの水とともに摂取させ た。
6)プリン体負荷後、蓄尿を開始させ、60分ごとに240分まで尿を回収した。
7)プリン体負荷60分後、120分後、180分後、240分後に採血を行った。
8)プリン体負荷60分後、120分後、180分後に200mLの水を摂取させた。
・血清尿酸値経時変化
血清尿酸値の経時測定結果は、試験開始時の尿酸値からの変化量として図2に示した。
プリン体の投与によって血清尿酸値の増加量は、投与開始から経時的に上昇するが、アンペロプシン150mgを摂取した場合は、上昇が抑制されていた。アンペロプシン150mgとキトサン100mg摂取した場合、投与開始120分経過後緩やかな減少に転じた。プラセボ投与の場合は、血中尿酸の上昇が最も高かった。
プリン体の吸収性を評価するため、AUC(Area Under the blood concentration-time Curve)として図3に示した。アンペロプシン150mg摂取した場合、アンペロプシン150mgとキトサン100mg摂取した場合は、いずれもプラセボ摂取に対して低かった。これは、アンペロプシン及びキトサンがプリン体の吸収を抑制しているためと考えられた。
240分までの尿酸クリアランスを図4に示す。尿酸クリアランスは、アンペロプシン150mgとキトサン100mg摂取時に増加を認め、尿酸排泄量の増加が考えられた。
前記の試験で有効性が確認されたアンペロプシン150mgとキトサン100mgを含有するカプセル剤を用いて12週間の長期間投与による臨床試験を行い、血中尿酸値及び尿中尿酸値に及ぼす効果を試験した。
(1)試験方法
1)試験試料
一日摂取量として、アンペロプシン150mgとキトサン100mgを含有するカプセル剤及びプラセボを試験試料とした。
血清尿酸値が6.0mg/dL以上8.0mg/dL未満の日本人男性80名(20歳〜65歳)を被験者とした。
なお試験はすべて専門の臨床検査施設においてヘルシンキ宣言に則って実施した。
同意を取得した被験者候補414例に対して、事前検査を実施し、80例の被験者を選択し、この80例をそれぞれプラセボ群、被験食品群に割付けた。
なお、この被験者80例の内、被験食品群の1例はヘルニアのために摂取4週目検査後に同意を撤回し脱落した。また,プラセボ群の1例はクラミジア感染症を発症したため、試験責任医師は当該被験者の試験を中止した。
結果として、78例が所定の試験スケジュールを完了した。
試験を完了した被験者のうち、所定の日誌への虚偽記載および制限事項の不遵守が見られた被験食品群の1例、試験期間中に高眼圧の治療を開始した被験食品群の1例の合計2例が事前に設定していた解析対象除外基準に該当したため除外した。なお、割付表の開鍵は解析対象者を決定した後に行った。
その結果、プラセボ群39例、被験食品群37例の合計76例となった。
試験は無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験とした。
すなわち、試験に関与しない担当者が、乱数表を用いて無作為に被験者を被験食品群とプラセボ群の2群に割付け、摂取前検査を実施し、摂取前検査当日から、研究食品の摂取を開始させた。
摂取開始後、4週後、8週後および12週後に被験者を来院させ検査を実施した。なお、各検査日前日から、蓄尿容器としてユリンメート(登録商標)P(住友ベークライト株式会社)を使用して24時間蓄尿を実施し、尿酸排泄に関する各パラメータ評価に用いた。
試験期間中は、日誌に自覚症状、試験食品摂取有無および暴飲・暴食や医薬品・健康食品摂取などの指導内容逸脱の有無について記録させた。なお、検査来院日前3日間については、食事内容を記録させた。
血清尿酸値の変化量、尿中尿酸排泄量、尿酸クリアランス、クレアチニンクリアランス、尿酸クリアランス−クレアチニンクリアランス比(R)を測定した。各パラメータは高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版に記載の式で算出した。なお、計算に使用した体表面積はDu boisらの方法で算出した。
摂取12週目までの血清尿酸値の摂取前検査からの変化量の推移を下記の表6に示す。
なお、本試験条件下における安全性に問題はなかった。
本試験によりアンペロプシン150mgとキトサン100mgを含有するカプセル剤の摂取によって有意に血清尿酸値が低下することが確認された。
なお、試験に用いた組成物中のキトサン量の100mg/日の摂取量は、これまでに血清尿酸値低減効果が報告されている用量である1.22g/日および1.83g/日と比較して低用量であることから、キトサンとアンペロプシンを組み合わせたことによる効率的な血清尿酸値低減効果の発現が考えられた。アンペロプシンはABCG2といった尿酸排泄トランスポーターへ影響し、尿酸排泄を促進する可能性も考えられるため、キトサンとアンペロプシンの組み合わせによって、プリン体吸収阻害、尿酸合成阻害、尿酸排泄促進という3つの機能で尿酸値を低下させると考えられた。
Claims (5)
- キトサンとアンペロプシンを含有する血中尿酸値低減用組成物。
- キトサンとアンペロプシンを含有する尿酸排泄促進用組成物。
- キトサンとアンペロプシンを含有するプリン体吸収抑制用組成物。
- キトサン1質量部当たりアンペロプシンを0.5〜3質量部の比率で含有する請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
- 一日当たりの摂取量としてキトサンを50〜150mg、アンペロプシンを100〜300mg含有する請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
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