JP2018043985A - アンペロプシンを含有する血中尿酸値低減用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】血中尿酸値低減用組成物を提供する。【解決手段】藤茶抽出物由来のアンペロプシンを含有する血中尿酸値低減用組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、アンペロプシンを含有する血中尿酸値低減用組成物、プリン体吸収抑制用組成物、キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物、尿酸排泄促進用組成物、及びABCG2遺伝子活性化用組成物に関する。
尿酸は、ヒトにおいては、核酸・プリン体が代謝された結果、最終代謝産物として排泄される。この尿酸を排泄するための機能の低下や、プリン体の産生過剰によって、血中の尿酸値が7mg/dLを超えると、高尿酸血症と定義される。高尿酸血症発症者は増加しており、日本国内には潜在的な患者を含めて500万人程度以上いると言われている。
高尿酸血症状態が慢性化すると、関節炎、尿路結石、痛風腎等の病状を発症する危険性が高まる。特に体温が低い足部などにおいて、尿酸が溶解しきれずに尿酸塩として結晶化して関節包内などに付着すると、白血球群のうち、特に好中球が尿酸結晶を攻撃(捕食活動)を行うことが知られている。好中球による尿酸結晶捕食活動が激化すると、その活動による過大なエネルギーや、尿酸を抱え込んで死亡した好中球の遺骸そのものによる影響などから、血管壁がダメージを受けて大きな炎症を発生する。当然、当該部位周囲の神経組織をも相当に刺激し、患者は「内側からの激痛」を感じることとなる。これが痛風である。
また、近年の疫学研究により、高尿酸血症は、心・脳血管障害の独立した危険因子であることが示唆されてきており、メタボリックシンドロームのバイオマーカーとしての重要性が指摘されてきている。以上のことから、血中尿酸値を適正にコントロールすることは、前記の疾患を予防する観点から重要となり、高尿酸血症を改善する医薬品や食品が強く望まれている。
高尿酸血症の要因として、尿酸産生の過剰、尿酸排泄能の低下があげられる。痛風の症例における尿酸クリアランス試験の結果によると、85%が尿酸排泄能の低下を示すことが明らかとなっており、高尿酸血症のうち排泄低下型の高尿酸血症の占める割合が高いと考えられている。
これまでに、尿酸値低下用薬剤として、尿酸産生抑制剤のアロプリノールや尿酸排泄促進剤のベンズブロマロン等が提供されている。しかし、これらの薬剤は、効果がある半面、肝障害等の副作用を伴うことが多い。
また、特許文献1には、ケルセチンを含む食品が、キサンチンオキシダーゼ阻害によって高尿酸血症を改善することが記載されている。
特許文献2には、ハマメリスがキサンチンオキシダーゼを阻害し、高尿酸血症を改善することが記載されている。
特許文献3には、エラグ酸を含む組成物が、高尿酸血症のラットにおいて尿酸排泄を促
進することが記載されている。
特許文献4には、わさびの水性溶媒抽出物が高尿酸血症のラットにおいて尿酸排泄を促進することが記載されている。
これらの食品由来の成分は、尿酸産生抑制剤のアロプリノールや尿酸排泄促進剤のベンズブロマロンに比して安全性が高いことが予想されるが、具体的な製品は未だ提供されていない。
このような背景にあって、本発明者らも天然物や天然抽出物を尿酸排泄剤として利用するために探索を行っており、伝統的な食品である藤茶に血中尿酸値低減作用、プリン体吸収抑制作用、キサンチンオキシダーゼ阻害作用、尿酸排泄促進作用及びABCG2遺伝子活性化作用が存在することを発見した。一方、藤茶には様々な薬効が存在することが知られている。その作用は、急性肝炎などの肝臓疾患治療効果(特許文献5)、抗菌効果(特許文献6)、色素退色防止作用(特許文献7)など多岐に渡っている。しかし藤茶に血中尿酸値低減作用、プリン体吸収抑制作用、キサンチンオキシダーゼ阻害作用、尿酸排泄促進作用及びABCG2遺伝子活性化作用が存在することは、食経験の長い食品でありながらこれまでまったく知られていなかった。
特開2002−145875号公報 特開2003−174857号公報 特開2005−350375号公報 特開2007−217366号公報 特開2003−026584号公報 特開2002−159566号公報 特開2002−065201号公報
すなわち、本発明の課題はアンペロプシンを含有する血中尿酸値低減用組成物、プリン体吸収抑制用組成物、キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物、尿酸排泄促進用組成物、及びABCG2遺伝子活性化用組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記のような背景技術のもとに研究を行い、藤茶抽出物が血中尿酸値低減作用、プリン体吸収抑制作用、キサンチンオキシダーゼ阻害作用、尿酸排泄促進作用及びABCG2遺伝子活性化作用を有することを発見した。そして、さらに研究を進めたところ、これらの作用を示す物質が藤茶中に含まれるフラボノイドの一種であるアンペロプシンであることを発見し、本発明をなした。
本発明の主な構成は以下の通りである。
(1)アンペロプシンを含有する血中尿酸値低減用組成物。
(2)アンペロプシンを含有するプリン体吸収抑制用組成物。
(3)アンペロプシンを含有するキサンチンオキシダーゼ阻害用組成物。
(4)アンペロプシンを含有する尿酸排泄促進用組成物。
(5)アンペロプシンを含有するABCG2遺伝子活性化用組成物。
(6)アンペロプシンを一日投与量として10〜500mg含有する1〜5のいずれかに記載の組成物。
(7)アンペロプシンを10質量%以上含有する1〜6のいずれかに記載の組成物。
(8)アンペロプシンが藤茶由来である1〜7のいずれかに記載の組成物。
本発明により新たな血中尿酸値低減用組成物、プリン体吸収抑制用組成物、キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物、尿酸排泄促進用組成物、及びABCG2遺伝子活性化用組成物が提供される。本発明により得られた組成物は、高尿酸血症や痛風などの予防治療剤及びこれらの疾患の改善用飲食品組成物とすることができる。
本発明の組成物を投与した高尿酸血症モデルラットの尿中の一時間当たりの尿酸量を測定した結果を示すグラフである。 本発明の組成物を投与した高尿酸血症モデルラットの腎臓の尿酸トランスポーターABCG2遺伝子の活性化を示すグラフである。 ヒト臨床試験における藤茶抽出物投与の血中尿酸値低下効果を確認したグラフである。 プリン体負荷した後、藤茶抽出物を投与した臨床試験における血中尿酸値上昇が抑制されていることを示すグラフである。
本発明は、アンペロプシンを含有する血中尿酸値低減用組成物、プリン体吸収抑制用組成物、キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物、尿酸排泄促進用組成物、及びABCG2遺伝子活性化用組成物に係る発明である。
藤茶は、ブドウ科ノブドウ属の植物であり、中国名を顕歯蛇葡萄という。学名は、Ampelopsis grossedentataである。主には中国の広西、広東、雲南、貴州、湖南、湖北、江西、福建などの省並びに自治区に分布している。中国の広西、湖南などの省や自治区の壮族や瑶族の人々がこの茎および葉から作った飲料を常用しており、風邪、のどの痛みの予防や治療などにも利用されている。アンペロプシンは、藤茶の示す肝臓疾患の治療作用や抗菌作用の活性本体として特定されている。
アンペロプシンは、下記の式で表される。
アンペロプシンは、例えば、藤茶(学名:Ampelopsis grossedentata)、大叶蛇葡萄(学名:Ampelopsis megalophylla)、広東蛇葡萄(学名:Ampelopsis cantoniensis)、ケンポナシ(学名:Hovenia dulcis)、オノエヤナギ(学名:Salix sachalinensis)、ヨレハマツ(学名:Pinus contorta)及びカツラ(学名:Cercidiphyllum japonicum)から選ばれる植物の抽出物から単離精製することができる。これらの中でも藤茶が好ましい。
具体的には、Ampelopsis属植物である藤茶(学名:Ampelopsis grossedentata)から、下記のようにして得ることができる。
すなわち、乾燥させた藤茶の枝葉部を含水エタノールで抽出した抽出物を濃縮し、例えば多孔性樹脂(DIAION HP−20)を用いたカラムクロマトグラフィーにかけ、80容量%含水メタノールで溶出される分画にアンペロプシンが得られる。これを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーや再結晶により、更に精製することができる。
精製されたアンペロプシンは、試薬としても販売されており、これを用いることもできる。
本発明の組成物は、上記のアンペロプシンを10質量%以上含有するものであれば使用可能である。このような組成物を得るため、藤茶の抽出は、以下のような操作を行う。
乾燥した藤茶の葉又は茎の粉砕物又は粉末を抽出原料とし、水若しくは親水性有機溶媒又はこれらの混合溶媒に投入し、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で任意の装置を用いて抽出することにより得ることができる。
抽出に用いる有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられる。
これらの中でもエタノールが好ましい。
なお、水と親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する場合には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して30〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して10〜40質量部、多価アルコールの場合は水10質量部に対して10〜90質量部添加することが好ましい。
上記のとおり、抽出溶媒を満たした処理槽に、藤茶の乾燥・粉砕物を投入し、必要に応じて時々撹拌しながら、30分〜2時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物が得られる。抽出溶媒量は、抽出原料の通常5〜15倍量(質量比)であることが好ましく、抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50〜95℃で1〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いる場合には、通常40〜80℃で30分〜4時間程度である。
得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られる。更に乾燥すれば、固形の抽出物が得られる。本発明にあっては、アンペロプシンの含有量が10質量%、好ましくは20質量%以上であれば、上記抽出液又はその濃縮液の状態であっても良い。これらは、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂、液―液向流分配などの方法により精製してから用いても構わない。
したがって、上記の藤茶抽出物からさらに再抽出やクロマトグラフィーにより再分画し、アンペロプシンの濃度を高めた抽出物も本発明の組成物として使用可能である。
組成物中のアンペロプシンの含有量は、HPLCなど公知の分析方法で分析することができる。定量方法の概略は次のとおりである。
・試料溶液の調製
試料(抽出物)約20mgを精秤し、蒸留水を加えて超音波にて溶解し、正確に50mLとする。この溶液2mLを50mLに正確に希釈し、試料溶液とする。
・標準溶液の調製と検量線作成
標準品(Dihydromyricetin SIGMA−ALDRICH社製)2.00mgを精秤し、100%アセトニトリルを適量加えて超音波処理して溶解し、さらにアセトニトリルを加えて正確に25mLとした、アンペロプシン標準原液80μg/mLを調製する。この標準原液を蒸留水にて正確に5倍希釈して、16μg/mLアンペロプシン標準溶液を調製する。HPLCへの注入量を10、20、40μLとし、アンペロプシンのピークに基づいて検量線を作成する。
・HPLC条件
下記表1の条件に設定する。
本発明の組成物は、そのままあるいは各種賦形剤を添加して製剤化する。製剤としては顆粒剤、錠剤、カプセル剤を例示することができる。
また組成物をそのまま、あるいは製剤化したものを飲食品に添加して用いることもできる。
なお製剤化に当たっては、本発明の組成物の目的を阻害しない範囲で使用することができる。具体的には、シクロデキストリン、へミセルロース、リグニン、グァガム、コンニャクマンナン、イサゴール、アルギン酸、寒天、カラギーナン、キチン、カルボキシルメチルセルロース、ポリデキストロースなどの食物繊維や増粘剤、食用油、カルシウム、鉄、ナトリウム、亜鉛、銅、カリウム、リン、マグネシウム、ヨウ素、マンガン、セレンなどのミネラル;ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、葉酸、パントテン酸などの脂溶性又は水溶性のビタミン群、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン脂質、アラビアガム、キサンタンガム、トラガカントガム、ローカストビーンガムなどの乳化剤や分散剤、増量剤、賦形剤、保存料・酸化防止剤、風味調整剤や香料、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、コハク酸、乳酸ナトリウムなどの呈味料、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、アジピン酸、フマル酸、リンゴ酸などの酸味料、マルチトール、アスパルテームなどの低カロリー甘味料、着色剤などである。
また、本発明の組成物は、アンペロプシンを10質量%以上含有する。なお、成人1日当たりの投与量はアンペロプシンとして10〜500mg、好ましくは50〜300mg、特に好ましくは100〜200mgを含有するように配合する。
以下に本発明の組成物の製造例及びこの組成物を用いた試験例を示し、本発明を説明する。
<藤茶抽出物の製造例1>
乾燥藤茶1重量部(200g)に対して水を15倍量加え90℃に加熱し、1時間抽出しろ過を行い、1番抽出液を得た。次いでこの残渣に水を12倍量加え、90℃に加熱し、30分間抽出し、ろ過を行い、2番抽出液を得た。両抽出液を合算し、減圧濃縮し、濃縮液約300mlを−40℃で凍結させ、さらに凍結乾燥装置で乾燥させ、乾燥物を得た。これを粉砕し、60メッシュの篩で篩い分けし、通過物85gを本発明の組成物とした。この組成物中のアンペロプシン含有量は、68質量%であった。
<藤茶抽出物の製造例2>
乾燥藤茶1重量部(200g)に対して50%エタノール水溶液を15倍量加え、還流冷却機を付して加熱し、1時間抽出しろ過を行い、1番抽出液を得た。次いでこの残渣に同様に50%エタノール水溶液を12倍量加え、90℃に加熱し、30分間抽出し、ろ過を行い、2番抽出液を得た。両抽出液を合算し、減圧濃縮し、濃縮液約300mlを−40℃で凍結させ、さらに凍結乾燥装置で乾燥させ、乾燥物を得た。これを粉砕し、60メッシュの篩で篩い分けし、通過物78.1を本発明の組成物とした。この組成物中のアンペロプシン含有量は、52.9質量%であった。
<藤茶抽出物の製造例3>
製造例1と同様に、乾燥藤茶1重量部(200g)に対して水を15倍量加え90℃に加熱し、1時間抽出しろ過を行い、1番抽出液を得た。次いでこの残渣に水を12倍量加え、90℃に加熱し、30分間抽出し、ろ過を行い、2番抽出液を得た。両抽出液を合算し、減圧濃縮し、濃縮液約300mlを得た。さらにグァガム分解物を、濃縮液あたり78g添加し、−40℃で凍結させ、さらに凍結乾燥装置で乾燥させ、乾燥物を得た。これを粉砕し、60メッシュの篩で篩い分けし、通過物163.1gを本発明の組成物とした。この組成物中のアンペロプシン含有量は、24.7質量%であった。
<藤茶抽出物の製造例4>
製造例1と同様に、乾燥藤茶1重量部(200g)に対して水を15倍量加え90℃に加熱し、1時間抽出しろ過を行い、1番抽出液を得た。次いでこの残渣に水を12倍量加え、90℃に加熱し、30分間抽出し、ろ過を行い、2番抽出液を得た。両抽出液を合算し、減圧濃縮し、濃縮液約300mlを得た。さらにγシクロデキストリンを、濃縮液中に78g添加し、−40℃で凍結させ、さらに凍結乾燥装置で乾燥させ、乾燥物を得た。これを粉砕し、60メッシュの篩で篩い分けし、通過物151.4gを本発明の組成物とした。この組成物中のアンペロプシン含有量は、26.4質量%であった。
動物試験
<1.尿酸排泄促進試験>
(1)試験試料
製造例1の抽出物を試験試料とした。この抽出物中にはHPLC法で測定したとき、固形物重量あたりアンペロプシンが68質量%含有されていた。
(2)試験方法
1)動物試験投与用試料調製方法
試験試料441.18mgを秤量し、メノウ乳鉢と乳棒で粉砕した。これにカルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学株式会社製)0.5W/V%水溶液を加えて30mLにメスアップしたものを投与試料とした。
2)試験動物
7週齢の雄性ウィスター系ラット(SLC)を1群8匹として、試験群、無処置群、対照群の3群に群分けし、予備飼育を1週間行った。
3)飼育条件
温度22±3℃、湿度50±20%、換気回数13〜17回/時間(HEPAフィルターろ過オールフレッシュ方式)、照明時間8:00〜20:00(明/暗12時間)の飼育室内で飼育した。ラットはステンレス製2連ケージに個別収容し、無処置群には飼料(日本クレア株式会社製CE−2粉末)を自由に与え、試験群、対照群には高尿酸血症誘導飼料を自由に与えた。また飲料水も自由摂取させた。
なお高尿酸血症誘導飼料はCE−2粉末にリボ核酸(酵母由来)を2.5W/W%及びオキソ酸カリウム1W/W%を粉混合したものを用いた。この飼料はラットの高尿酸血症モデルのために汎用されている。
4)試験試料の投与方法
試験群には、1日1回、7日間連続で、1)で調製した投与試料を、経口ゾンデを用いて、胃内に体重当たり10mL/kg強制投与した。対照群には、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.5W/V%水溶液を同様に投与した。
5)採尿及び尿酸の測定
投与6日目に採尿ケージにラットを移し、7日目の24時間尿を採取した。採取した尿は尿酸値の測定まで−20℃で冷凍保存した。尿酸の測定はQuantichrom Uric Acid Assay Kit(フナコシ株式会社製)を用いて測定し、1時間当たりの尿酸排泄量を求めた。
6)試験の統計解析は、各群の平均値を求め、スチューデントのt検定で危険率0.05以下を有意と判定した。
(3)試験結果
尿中の1時間当たりの尿酸排泄量を下記表2及び図1に示す。
以上の試験の結果、アンペロプシン68質量%を含有する藤茶抽出組成物を1日1回1週間投与したところ、高尿酸血症のモデル動物において顕著に尿酸排泄量を増加させることがわかった。したがって、アンペロプシンを含む藤茶抽出物は、尿酸排泄促進作用を有するため、高尿酸血症の治療や予防に有用であるということができる。
<2.ABCG2遺伝子活性化試験>
上記の結果により、アンペロプシンに尿中尿酸排泄促進作用が認められたことから、尿酸排出トランスポーターのひとつであるABCG2の遺伝子発現量に対する影響を以下の試験により確認した。
(1)試験方法
上記の尿酸排泄促進試験の最終日にラットから腎臓を摘出した。この腎臓をRNAlater(Ambion社製)中に入れ使用まで−80℃保存した。RNAの抽出にはRNeasy Plus Universal Mini Kit(QIAGEN社製)を用いた。凍結していた腎臓を解凍し、30mg程度に切断しQIAzol Lysis Reagentを入れたマイクロチューブに移し入れた。ハンディマイクロホモジナイザー(マイクロテック株式会社製)を用いて腎臓をホモジナイズし、その後の操作は測定キットに添付のプロトコールに従った。
抽出したRNAの濃度をNanoDrop2000c(Thermo Scientific社製)を用いて測定し、RNase Free水で200ng/μLに調製した。0.2mLのPCRチューブにRNA溶液とPrimeScript RT reagent Kit(Takara Bio社製)を表3のように調製し、Thermal Cycler Dice(Takara Bio社製)を用いて反応させ、cDNAを得た。PCRの反応時間は37℃、15分間とし、反応停止は85℃、5秒とした。
ABCG2の発現量解析はLightCycler 480(Roche社製)を用いたリアルタイムPCRにより行った。96ウェルプレートにRNase Free水で10倍に希釈したcDNAとSYBR Premix Ex Taq II(Takara Bio社製)を表4のように調製し、反応させた。ABCG2の発現量はハウスキーピング遺伝子であるGAPDHにより補正し、ABCG2/GAPDH比として求めた。各遺伝子の発現量はEメソッドにより補正した値を用い、AGCG2とGAPDHのプライマーは次の配列のものを用いた。
[ABCG2]
Forward primer:CTGACCCTTCCATCCTCTTC
Reverse primer:CGAGGCTGGTGAATGGAGAA
[GAPDH]
Forward primer:ATGATTCTACCCACGGCAAG
Reverse primer:CTGGAAGATGGTGATGGGTT
試験の統計解析は、各群の平均値を求め、ダネットの検定法で危険率0.05以下を有意と判定した。
(2)結果
試験結果を図2に示す。
試験群(藤茶抽出物投与群)は、対照群に対してABCG2遺伝子発現量が有意に増加していることから、尿酸排泄能が亢進していることが確認された。
<3.キサンチンオキシダーゼ阻害効果試験>
尿酸代謝の律速段階であるキサンチンオキシダーゼに及ぼす藤茶の効果を試験した。
尿酸はプリン体の最終代謝産物であり、ヒトの体における尿酸の由来は大きく分けて、体内で合成されるものと、食事中から摂取するものの2つである。この尿酸の産生と排泄の制御により血液中の尿酸濃度は厳密に維持されている。しかしながら産生と排泄のバランスに異常が生じることにより、血液中の尿酸濃度が異常に高くなり、高尿酸血症を発症することがある。そのため、高尿酸血症の改善には、尿酸の合成阻害と排泄促進をターゲットとした医薬品が開発されている。特に体内で合成される尿酸は、食事由来の尿酸よりも数倍多いと言われており、体内における尿酸合成の制御は非常に重要である。藤茶抽出物及びアンペロプシンのキサンチンオキシダーゼ阻害能を測定した。
(1)試験方法
1)試験試料の調製
試験試料として、藤茶の含水エタノール抽出物(アンペロプシン30.8質量%含有)、精製アンペロプシン(シグマアルドリッチ社製)及びキサンチンオキシダーゼ阻害薬であるアロプリノール(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
藤茶抽出物は、1%DMSO溶液(リン酸緩衝液)に溶解した後、3000×gで5分間遠心分離処理し、上清を分取した。これを試験試料として、さらに1%DMSOで段階希釈し、試験用の濃度系列の藤茶液を調製した(0.005〜80mg/mL)。精製アンペロプシン及びアロプリノールは、試験用の濃度系列の1%DMSO溶液を調製した。精製アンペロプシンは、1.953〜32000μM/mL、アロプリノールは、0.006〜100μM/mLの濃度系列である。
2)キサンチンオキシダーゼ阻害活性の測定
各濃度の被験物質50μL、70mMリン酸緩衝液35μL、0.01units/mLのキサンチンオキシダーゼ(Xanthine Oxidase from cow milk:シグマアルドリッチ社製)30μLを混和し、37℃で10分間インキュベートした。さらに100μMキサンチンを60μL添加し、37℃で10分間反応させた。
次いで1N塩酸25μLを添加して、反応を停止させた。この時生成した尿酸を、超高速高分離液体クロマトグラフィー(ウォーターズ社製)を用いて測定した。なお測定の前処理として、以下の操作を行った。
上記の反応液40μLに0.3M過塩素酸60μLを混和し、氷上に30分以上静置し、その後1,800rpmで20分間遠心し、上清30μLを分取し、これに0.2Mリン酸水素二ナトリウム30μLを加え、混和した。
カラムにはODSカラム(YMC−Triart C18,150×2.0mm I.D.S−1.9μm,12nm)を使用し、溶離液としてメタノールを含むリン酸緩衝液(pH2.2)を用いた。検出は284nmの波長で行い、ピーク面積法で濃度を算出した。
3)解析
定量した反応液中の尿酸濃度を用いて、キサンチンオキシダーゼ阻害率(%inhibition)を以下計算式により求め、50%阻害率(IC50)に相当する濃度を得た。
阻害率(%)=100−(C/Cb×100)
C :評価サンプル添加時尿酸生成濃度
Cb:コントロール(サンプル非添加時)尿酸生成濃度
(2)結果
藤茶抽出物のIC50は150μg/mLであった。
またアンペロプシンは137μg/mL、アロプリノールは0.04μg/mLであった。
この結果から藤茶抽出物はキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有しており、その作用は藤茶抽出物のアンペロプシン含有量相当の精製アンペロプシンよりも強いキサンチンオキシダーゼ阻害活性を有していた。このことから、藤茶抽出物はアンペロプシン単独よりも強いキサンチンオキシダーゼ阻害活性を有していることを見出した。
<ヒト臨床試験1(血中尿酸値低減効果試験)>
(1)試験試料
製造例1に基づく抽出物を試験試料とした。この抽出物中にはHPLC法で測定したとき、固形物重量あたりアンペロプシンが68質量%含有されていた。また尿酸排泄に効果があることが知られているアンセリン(β−アラニル−N−メチルヒスチジン:β−alanyl−N−methylhistidine)を陽性対照として使用した。
(2)試験方法
1)ヒト試験用試料
製造例1で調製した藤茶抽出物を充填したカプセル剤(アンペロプシン150mg含有)、アンセリン200mg含有カプセル剤、プラセボ(デンプンのみ)を試験用試料(試験用カプセル剤)とした。
2)被験者
日本人男性119名(20歳〜65歳)を対照にスクリーニング検査を行い、血清尿酸値が6.0mg/dL以上8.0mg/dL未満の男性30名を被験者とし、事前にBMI、血清尿酸値、尿中尿酸値(クレアチニン補正値)を測定した。
なおスクリーニング本試験を含め、試験スケジュールは表5、検査項目は表6のとおりである。また試験はすべて専門の臨床検査施設においてヘルシンキ宣言に則って実施した。
被験者30名を無作為に各群10名ずつ割り付けた。各群間には、背景に統計的な有意差がないことを確認した。
なお、被験者の基礎情報は下記表7のとおりである。
3)試験方法
上記の試験用カプセル剤(藤茶、アンセリン、プラセボ)を無作為化二重盲検法で試験した。
投与期間は4週間、1日1回の投与とし、投与開始から2週間目及び4週間経過後に血液及び尿を採取して、血清尿酸値及び尿中尿酸排泄量を測定した。
各項目について、プラセボ群と各試験食品摂取群を対応のないt検定で比較した。プラセボと各試験食品との比較における多重性はBonferroni法で有意水準の調整を行った。なお、検査時点間の多重性は考慮しなかった。各項目について、各群において摂取前(スクリーニング)と摂取後各時点の比較を対応のあるt検定を使用し、比較した。
統計解析ソフトはJMP(登録商標)12.0(SAS社製)およびMicrosoft Excel2010(Microsoft社製)を使用した。
(3)試験結果
1)血清尿酸値
血清尿酸値は、試験開始時の尿酸値からの変化量として図3に示した。
藤茶抽出物の投与によって、血清尿酸値は、2週間経過後、4週間経過後それぞれ投与前と比較して有意に低下し、またプラセボ群と比較して低値であった。一方プラセボ投与では尿酸値は上昇傾向を示した。血清尿酸値低下及び尿酸排泄増加の陽性対照としたアンセリンは、血清尿酸値を低下させなかった。
2)尿中尿酸排泄値
尿中尿酸排泄値(尿酸値)は、クレアチニン補正値として測定した。尿酸排泄量には有意差は確認できなかったが、排泄増加の傾向が確認された。
以上のヒト臨床試験の結果から藤茶抽出物は、血中尿酸値を有意に低下させることが明らかとなった。また尿酸排泄量が増加する傾向が認められた。したがって藤茶抽出物は血清尿酸を低減させる効果を有するということができる。藤茶抽出物摂取による血中尿酸値低減作用は、食事中に含まれるプリン体の吸収阻害、体内での尿酸の合成阻害、尿中への尿酸の排泄促進効果によるものであると考えられる。
<ヒト臨床試験2(プリン体負荷試験)>
プリン体を経口投与しながら本発明品を摂取した場合の血中尿酸値に及ぼす効果を試験した。
(1)試験試料
製造例1に基づく抽出物を試験試料とした。この抽出物中にはHPLC法で測定したとき、固形物重量あたりアンペロプシンが68質量%含有されていた。
(2)試験方法
1)ヒト試験用試料
製造例1で調製した藤茶抽出物を充填したカプセル剤(アンペロプシン150mg含有)、プラセボの2剤を試験に用いた。試験用カプセル剤の組成の概略を下記表8に示す。
2)被験者
日本人男性(20歳〜65歳)を対照にスクリーニング検査を行い、男性6名を被験者として選抜した。
なおスクリーニング、本試験を含め、試験スケジュールは表9、検査項目は表10のとおりである。また試験は、すべて専門の臨床検査施設においてヘルシンキ宣言に則って実施した。
被験者6名は、2群に割り付けた。両群間には、背景に統計的な有意差がないことを確認した。
3)試験方法
上記の試験用カプセル剤(試験食品、プラセボ)を無作為化二重盲検クロスオーバー法で試験した。なお被験者には、上記表9のスケジュールのとおり試験を実施した。試験開始直前に酵母エキスの摂取によってプリン体負荷を行い、さらに試験食品又はプラセボのカプセルを3粒摂取した。
投与開始から、60分、120分、180分、240分経過後に血液を採取して、血清尿酸値を測定した。
試験操作手順は次のとおりである。
1)プリン体負荷60分前(午前9時〜9時半の間)に来所させ、被験者に水300m
Lを摂取させる。
2)プリン体負荷前の採血を行う。
3)水摂取60分後、全排尿させる。
4)排尿後、プリン体(ビール酵母抽出RNA、株式会社エル・エス・ファクトリー
BF)4.65g(RNAとして4g)を200mLの水で摂取する。
5)プリン体摂取直後に試験食品又はプラセボを100mLの水とともに摂取させる。
6)プリン体負荷後、蓄尿を開始させ、60分ごとに240分まで尿を回収する。
7)プリン体負荷60分後、120分後、180分後、240分後に採血を行う。
8)プリン体負荷60分後、120分後、180分後に200mLの水を摂取させる。
統計解析は、対応のあるt検定にて行った。統計解析ソフトはJMP(登録商標)12.0(SAS社製)及びMicrosoft Excel 2010(Microsoft社製)を使用した。
(3)試験結果
・血清尿酸値
血清尿酸値は、試験開始時の尿酸値からの変化量として図4に示した。
プリン体の投与によって血清尿酸値の増加量は、投与開始から経時的に上昇するが、藤茶抽出物を摂取した場合は、上昇が抑制されており180分経過後でピークに達し、240分経過後減少に転じた。一方プラセボ投与時は投与開始から240分経過まで上昇が続いた。
投与開始から240分経過後の血中尿酸量は、藤茶抽出物投与時とプラセボ投与時の間で有意な差が生じた。
以上のプリン体負荷ヒト臨床試験の結果から、藤茶抽出物は、プリン体摂取によって上昇した血中尿酸値を有意に抑制することが明らかとなった。
したがって藤茶抽出物は、プリン体摂取による血中尿酸値の上昇を抑制する効果を有するということができる。藤茶抽出物による、プリン体摂取による血中尿酸値上昇抑制効果は、藤茶に含まれるアンペロプシンなどが、経口摂取したプリン体の体内への吸収を抑制すること、および藤茶抽出物がキサンチンオキシダーゼを阻害するため、吸収されたプリン体に起因する尿酸の合成が抑制されることで生じているものと考えられた。

Claims (8)

  1. アンペロプシンを含有する血中尿酸値低減用組成物。
  2. アンペロプシンを含有するプリン体吸収抑制用組成物。
  3. アンペロプシンを含有するキサンチンオキシダーゼ阻害用組成物。
  4. アンペロプシンを含有する尿酸排泄促進用組成物。
  5. アンペロプシンを含有するABCG2遺伝子活性化用組成物。
  6. アンペロプシンを一日投与量として10〜500mg含有する請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
  7. アンペロプシンを10質量%以上含有する請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  8. アンペロプシンが藤茶由来である請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
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