以下の詳細な説明は例示的なものであり、本発明又は本発明の使用を制限することを目的としない。明細書全体を通して、特定の用語の例示は、限定されない例と考慮されるべきである。単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈上明らかに指示されている場合を除いて複数形への言及が含まれる。本明細書において明細書及び特許請求の範囲の全体を通して使用される近似を表す語は、その関連する基本機能を変えることなく許容範囲内で変化しうる任意の量的表現を修飾するために適用されてよい。従って、「約」などの用語によって修飾された値は、特定される正確な値に限定されない。別に指定されない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される構成成分の量、分子量などの性質、反応条件などを表す全ての数は、全ての例において「約」という用語で修飾されていると理解される。従って、他にそうでないことが示されていない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは本発明によって得ようとする望ましい性質によって変化する可能性のある近似値である。少なくとも、特許請求の範囲と同等物の学説の適用を制限する試みではなく、各々の数値パラメータは、少なくとも報告される有効数字の数を考慮し、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。必要な場合には、範囲が提供されており、それらの範囲はその間のあらゆる下位範囲を含む。特許請求される本発明の主題をより明白かつ簡潔に記載し示すために、以下の説明及び添付される特許請求の範囲で使用される特定の用語に対して以下の定義が与えられる。
本明細書において、用語「ヌクレオシド」とは、核酸塩基(ヌクレオベース)が糖部分に結合しているグリコシルアミン化合物をさす。「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドリン酸をさす。ヌクレオチドは、表1に記載されるようにそのヌクレオシドに対応するアルファベット文字(文字呼称)を用いて表すことができる。例えば、Aはアデノシン(ヌクレオベースを含有するヌクレオシド、アデニン)を意味し、Cはシチジンを意味し、Gはグアノシンを意味し、Uはウリジンを意味し、Tはチミジン(5−メチルウリジン)を意味する。WはAか又はT/Uのいずれかを意味し、SはGか又はCのいずれかを意味する。Nはランダムヌクレオシドを表し、dNTPは、デオキシリボヌクレオシド三リン酸をさす。Nは、A、C、G、又はT/Uのいずれであってもよい。
本明細書において、用語「ヌクレオチド類似体」とは、天然に存在するヌクレオチドに構造的に類似する化合物をさす。ヌクレオチド類似体は、変更されたリン酸主鎖、糖部分、ヌクレオベース、又はその組合せを有してよい。ヌクレオチド類似体は、天然ヌクレオチド、合成ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又は代替置換部分(例えば、イノシン)であってよい。一般に、変更されたヌクレオベースをもつヌクレオチド類似体は、とりわけ、異なる塩基対形成及び塩基スタッキング特性を付与する。本明細書において、用語「LNA(ロックド核酸)ヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの糖部分がリボ核酸(RNA)を模倣する糖コンホメーションにロックされた二環式フラノース単位を含有するヌクレオチド類似体をさす。デオキシリボヌクレオチド(又はリボヌクレオチド)からLNAヌクレオチドへの構造変化は、化学的見地から限られている、つまり、2’位と4’位の炭素原子間のさらなる結合の導入である(例えば、2’−C,4’−C−オキシメチレン結合、例えば、Singh,S.K.,et.al.,Chem.Comm.,4,455−456,1998、又はKoshkin,A.A.,et.al.,Tetrahedron,54,3607−3630,1998参照)。LNAヌクレオチドにおいてフラノース単位の2’位及び4’位は、O−メチレン(例えば、オキシ−LNA:2’−O、4’−C−メチレン−β−D−リボフラノシルヌクレオチド)、S−メチレン(チオ−LNA)、又はNH−メチレン部分(アミノ−LNA)、及び同類のものによって結合されてよい。そのような結合は、フラノース環のコンホメーションの自由度を制限する。LNAオリゴヌクレオチドは、相補的一本鎖RNA、及び相補的一本鎖もしくは二本鎖DNAに対するハイブリダイゼーション親和性の向上を示す。LNAオリゴヌクレオチドは、A型(RNA様)の二重鎖コンホメーションを誘導することができる。改変されたリン酸塩−糖骨格(例えば、PNA、LNA)を有するヌクレオチド類似体は、多くの場合、とりわけ、二次構造形成などの鎖の性質を修飾する。文字呼称の前の星(*)記号は、その文字で指定されるヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを示す。例えば、*Nは、ホスホロチオエート修飾ランダムヌクレオチドを表す。文字呼称の前のプラス(+)記号は、その文字で指定されるヌクレオチドがLNAヌクレオチドであることを示す。例えば、+Aは、アデノシンLNAヌクレオチドを表し、+Nは、ロックドランダムヌクレオチド(すなわちランダムLNAヌクレオチド)を表す。
本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのオリゴマーをさす。本明細書において用いられる用語「核酸」とは、ヌクレオチドのポリマーをさす。本明細書において用いられる用語「配列」とは、オリゴヌクレオチド又は核酸のヌクレオチド配列をさす。本明細書全体を通して、オリゴヌクレオチド又は核酸が一連の文字で表される場合はいつでも、ヌクレオチドは、左から右へ5’→3’の順序である。例えば、文字配列(W)x(N)y(S)z(式中、x=2、y=3及びz=1)で表されるオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド配列WWNNNSを表し、この際、Wは5’末端ヌクレオチドであり、Sは3’末端ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチド又は核酸は、DNA、RNA、又はそれらの類似体(例えば、ホスホロチオエート類似体)であってよい。オリゴヌクレオチド又は核酸には、修飾された塩基及び/又は骨格(例えば、修飾されたリン酸結合又は修飾された糖部分)を含むこともできる。安定性及び/又はその他の利点を核酸に与える合成骨格の限定されない例としては、ホスホロチオエート結合、ペプチド核酸、ロックド核酸、キシロース核酸、又はそれらの類似体を挙げることができる。
本明細書において、用語「プライマー」とは、標的核酸配列(例えば、増幅させるDNA鋳型)とハイブリダイズして核酸合成反応を開始させる短い線状のオリゴヌクレオチドをさす。プライマーは、RNAオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチド、又はキメラ配列であってよい。プライマーは、天然、合成、又は修飾ヌクレオチドを含んでよい。プライマーの長さの上限と下限は経験的に求められる。プライマー長の下限は、核酸増幅反応条件下での標的核酸とのハイブリダイゼーションによって安定した二重鎖を形成するために必要とされる最小の長さである。非常に短いプライマー(通常3ヌクレオチド長未満)は、そのようなハイブリダイゼーション条件下で標的核酸と熱力学的に安定した二重鎖を形成しない。上限は、多くの場合、標的核酸の予め決められた核酸配列以外の領域で二本鎖形成ができる可能性によって決まる。一般に、適したプライマー長は、約3ヌクレオチド長から約40ヌクレオチド長の範囲内である。
本明細書において、用語「ランダムプライマー」とは、オリゴヌクレオチド配列の任意の所与位置で、該所与位置が可能性のあるヌクレオチド又はそれらの類似体のいずれからも構成されうるような方法(完全ランダム化)でヌクレオチドをランダム化することによって生成されたプライマー配列の混合物をさす。従ってランダムプライマーは、配列内のヌクレオチドのあらゆる可能性のある組合せからなる、オリゴヌクレオチド配列のランダムな混合物である。例えば、六量体のランダムプライマーは、配列NNNNNN又は(N)6で表すことができる。六量体ランダムDNAプライマーは、4つのDNAヌクレオチド、A、C、G及びTのあらゆる可能性のある六量体の組合せからなり、結果として46(4,096)の特有の六量体DNAオリゴヌクレオチド配列を含むランダム混合物となる。ランダムプライマーは、標的核酸の配列が不明である場合か、又は全ゲノム増幅反応のために、核酸合成反応を開始させるために効果的に使用することができる。
本明細書に記載されるように、用語「部分拘束プライマー」とは、オリゴヌクレオチド配列のヌクレオチドの一部を完全にランダム化すること(すなわち、ヌクレオチドは、A、T/U、C、G、又はそれらの類似体のいずれかであってよい)一方で、一部のその他のヌクレオチドの完全なランダム化を制限する(すなわち、特定の位置でのヌクレオチドのランダム化は、可能性のある組合せA、T/U、C、G、又はそれらの類似体よりも程度が低い)ことによって生成されたプライマー配列の混合物をさす。例えば、WNNNNNで表される部分拘束DNA六量体プライマーは、混合物中の全ての配列の5’末端ヌクレオチドがA又はTであるプライマー配列の混合物を表す。ここで、5’末端ヌクレオチドは、完全ランダムDNAプライマー(NNNNNN)の最大4の可能性のある組合せ(A、T、G又はC)とは対照的に、2つの可能性のある組合せ(A又はT)に拘束される。部分拘束プライマーの適したプライマー長は、約3ヌクレオチド長から約15ヌクレオチド長の範囲内であってよい。
本明細書に記載されるように、用語「末端ミスマッチプライマー−二量体構造を有する部分拘束プライマー」とは、部分拘束プライマー中の2つの個別のプライマー配列が、3以上のヌクレオチドの内部相同性で互いに分子間でハイブリダイズして、陥凹末端を持たないプライマー−二量体構造、又は単一ヌクレオチド塩基3’陥凹末端を有するプライマー−二量体構造、又は2つのヌクレオチド塩基3’陥凹末端を有するプライマー−二量体構造を形成する場合、プライマー−二量体構造の両方の3’末端ヌクレオチドにヌクレオチドミスマッチ(すなわちヌクレオチドが塩基対形成しない)が存在する、部分拘束プライマー配列をさす。例えば、WNNNSで表される部分拘束五量体プライマーは、分子間でハイブリダイズして陥凹末端を持たないプライマー−二量体構造を形成する場合に、両方の3’末端ヌクレオチドに末端ミスマッチをもたらす。プライマー−二量体構造には、3ヌクレオチドの内部相同性が存在する(すなわち、分子間ハイブリダイゼーションによって陥凹末端を持たないプライマー−二量体構造が形成される場合に、WNNNSの3つのランダムヌクレオチドは、互いに塩基対形成することがある)。しかし、このプライマー例は、分子間でハイブリダイズして単一ヌクレオチド塩基3’陥凹末端を含むプライマー−二量体構造を形成する場合に末端ミスマッチをもたらさない。同様に、WWNNNSで表される部分拘束六量体プライマーは、分子間でハイブリダイズして陥凹末端を持たないプライマー−二量体構造を形成する場合に、両方の3’末端ヌクレオチドに末端ミスマッチをもたらす。さらに、このプライマー例は、分子間でハイブリダイズして単一ヌクレオチド塩基3’陥凹末端を有するプライマー−二量体構造を形成する場合でさえ、両方の3’末端ヌクレオチドに末端ミスマッチをもたらす。WWWNNNSで表される部分拘束七量体プライマーは、分子間でハイブリダイズして陥凹末端を持たないプライマー−二量体構造を形成する場合に、両方の3’末端ヌクレオチドに末端ミスマッチをもたらす。さらに、このプライマー例は、分子間でハイブリダイズして、単一ヌクレオチド塩基3’陥凹末端を有するプライマー−二量体構造を形成するか、又は2−ヌクレオチド塩基3’陥凹末端を有するプライマー−二量体構造を形成する場合に、両方の3’末端ヌクレオチドに末端ミスマッチをもたらす。
本明細書において、用語「ローリングサークル増幅(RCA)」とは、ローリングサークル機構によって、環状の核酸鋳型(例えば、一本鎖DNA環)を増幅する核酸増幅反応をさす。ローリングサークル増幅反応は、プライマーと、環状の、多くの場合一本鎖の、核酸鋳型とのハイブリダイゼーションによって開始される。次に、核酸ポリメラーゼが、環状の核酸鋳型の周囲を連続的に前進して、核酸鋳型の配列を何度も繰り返して複製すること(ローリングサークル機構)によって、環状の核酸鋳型にハイブリダイズしたプライマーを伸長させる。ローリングサークル増幅は、一般に、環状の核酸鋳型配列のタンデム反復単位を含むコンカテマーを生成する。ローリングサークル増幅は、線状の増幅速度を示す線状RCA(LRCA)(例えば、単一の特異的プライマーを用いるRCA)であってもよいし、指数関数的な増幅速度を示す指数関数的RCA(ERCA)であってもよい。ローリングサークル増幅はまた、複数のプライマーを用いて実施して(多重プライミング(multiply primed)ローリングサークル増幅又はMPRCA)超分岐コンカテマーを導くこともできる。例えば、二重プライミングRCAにおいて、一方のプライマーは、線状RCAでのように、環状の核酸鋳型に対して相補的であってよいが、もう一方はRCA産物のタンデム反復単位核酸配列と相補的であってよい。その結果として、二重プライミングRCAは、両方のプライマーの関与する多重ハイブリダイゼーション、プライマー伸長、及び鎖置換事象の分枝カスケードを特徴とする指数関数的(幾何学的)増幅速度をもつ連鎖反応として進行することができる。これは、多くの場合、別のコンカテマー二本鎖核酸増幅産物のセットを生成する。ローリングサークル増幅は、Phi29DNAポリメラーゼなどの適した核酸ポリメラーゼを用いて等温条件下、インビトロで実施されてよい。
本明細書において、多置換増幅(MDA)とは、増幅がプライマーを変性核酸にアニーリングした後に鎖置換核酸合成する工程を含む核酸増幅法をさす。核酸が鎖置換によって合成されるにつれて、プライミング事象の数は次第に増加して、超分岐核酸構造のネットワークが形成される。MDAは、配列の偏りが制限された高分子量DNAを少量のゲノムDNA試料から生成するための全ゲノム増幅に非常に有用である。Phi29DNAポリメラーゼ又はBst DNAポリメラーゼの大きい断片などの、その核酸合成活性の他に鎖置換活性を有する鎖置換核酸ポリメラーゼは、MDAで使用することができる。MDAは、配列の偏りが制限された増幅を実現するために、ランダムプライマーを用いて、等温反応条件下で実施される場合が多い。
本明細書において、用語「プレ−アデニル化リガーゼ」とは、そのアデニル化形態のリガーゼをさす。リガーゼのアデニル化形態は、ATP又はdATPの不在下で5’ホスホリル基及び3’ヒドロキシル基を有する線状ssDNA分子の分子内ライゲーションをする能力がある。プレ−アデニル化リガーゼを用いるライゲーションとは、反応で使用されるリガーゼ分子が高い割合でアデニル化形態であるライゲーション反応をさす。概して、リガーゼ分子の60%超がそのアデニル化形態であってよい。一部の実施形態では、プレ−アデニル化リガーゼを用いてライゲーション反応を実施する場合、反応に用いるリガーゼ分子の70%超がそのアデニル化形態であってよい。一部のその他の実施形態では、プレ−アデニル化リガーゼを用いてライゲーション反応を実施する場合、反応に用いるリガーゼ分子の80%、90%、又は95%超がそのアデニル化形態であってよい。
本明細書において、用語「アデニル化酵素」とは、核酸配列をアデニル化して5’アデニル化核酸を生成する能力のある酵素をさす。本明細書において用いられる5’アデニル化核酸とは、ヒドロキシル基をその3’末端に有し、アデニル化末端ヌクレオチドをその5’末端に有する核酸配列をさす。例えば、5’アデニル化DNA(AppDNA)とは、その5’末端がアデニル化され、その3’末端にヒドロキシル基を有するDNA配列をさす。
本明細書において、用語「非アデニル化リガーゼ」とは、その非アデニル化形態のリガーゼをさす。リガーゼの非アデニル化形態は、ATP又はdATPの不在下で3’ヒドロキシル基を有する線状5’−アデニル化ssDNA分子の分子内ライゲーションをする能力がある。非アデニル化リガーゼを用いるライゲーションとは、反応で使用されるリガーゼ分子が高い割合で非アデニル化形態であるライゲーション反応をさす。概して、リガーゼ分子の60%超がその非アデニル化形態であってよい。一部の実施形態では、非アデニル化リガーゼを用いてライゲーション反応を実施する場合、反応に用いるリガーゼ分子の70%超がその非アデニル化形態であってよい。一部のその他の実施形態では、非アデニル化リガーゼを用いてライゲーション反応を実施する場合、反応に用いるリガーゼ分子の80%、90%又は95%超がその非アデニル化形態であってよい。
一部の実施形態では、線状DNAから一本鎖DNA環を生成するための方法が提供される。線状DNAは、断片化された線状DNAであってよい。断片化されたDNAは、循環DNA、非常に古いDNA又は環境曝露によって劣化したDNA、或いはホルマリンに固定されたDNAであってよい。断片化された線状DNAの長さは、15ヌクレオチドから21000ヌクレオチドに及んでよい。断片化された線状DNAは、ライゲーションできない末端を有する配列を含むことがある。例えば、線状DNAは、5’ヒドロキシル基か又は3’ホスホリル基のいずれか、或いは両方を有することができる。一部の実施形態では、この方法は、線状DNAを準備する工程、リン酸供与体の存在下でポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)とともに線状DNAをインキュベートすることによってそれを末端修復して、5’末端にリン酸基を有し、3’末端にヒドロキシル基を有するライゲーション可能なDNA配列を生成する工程、及び、ライゲーション可能なDNA配列のリガーゼによる分子内ライゲーションを実施して、一本鎖DNA環を生成する工程を含む。末端修復には、ライゲーション可能なDNA配列を生成するための、5’末端ヌクレオチドのリン酸化、3’末端ヌクレオチドの脱リン酸化又は両方が含まれうる。末端修復したライゲーション可能なDNAは、二本鎖形態である場合、分子内ライゲーション反応の前に変性させる必要がある。一部の実施形態では、DNAをPNK反応の前に変性させる。一本鎖DNAのリン酸化又は脱リン酸化は、通常、二本鎖平滑末端又は5’陥凹末端のリン酸化又は脱リン酸化よりも効率的である。リン酸供与体及び反応混合物中のその濃度は、それがその後の分子内ライゲーション反応を阻害しないように選択される。例えば、アデノシン三リン酸(ATP)又はデオキシアデノシン三リン酸(dATP)以外のいずれの適したリン酸供与体も、PNKを用いる末端修復反応に使用されてよい。適したリン酸供与体としては、限定されるものではないが、グアノシン三リン酸(GTP)、シチジン三リン酸(CTP)、ウリジン三リン酸(UTP)又はデオキシチミン三リン酸(dTTP)が挙げられる。一部の実施形態では、プレ−アデニル化リガーゼは、ライゲーション反応に使用される。鋳型非依存性一本鎖DNA配列の可能ないずれのプレ−アデニル化リガーゼも用いることができる。一部の実施形態では、TS2126 RNAリガーゼの実質的にアデニル化された形態が鋳型非依存性分子内ライゲーション反応に使用される。キナーゼ反応及びライゲーション反応は、ATP及び/又はdATPの不在下で実施される。この方法の全ての工程は、単離もしくは精製工程を介さずに単一の反応器で実施される。この方法の個々の工程は、中間の精製もしくは単離工程を含まずに同時に又は順次に実施することができる。例えば、PNKは、線状標的DNAの末端修復を促進するために、GTPとともに、線状標的DNAを含む核酸溶液を含有する反応器(例えば、エッペンドルフチューブ)に添加されてよい。5’リン酸化及び3’ホスファターゼ活性を有するいずれのPNK(例えば、T4 PNK)も、末端修復反応に使用することができる。その各々が5’リン酸化又は3’ホスファターゼを有するPNKの組合せを末端修復反応に使用してもよい。ひとたびキナーゼ反応が完了すれば、プレ−アデニル化リガーゼを同じ反応器に添加して、分子内ライゲーション反応を促進することができる。
線状DNAは、天然もしくは合成起源の二本鎖又は一本鎖DNAであってよい。DNAは、生体試料から得てもよいし(例えば、生物学的被験体から得た試料)、或いは、インビボ又はインビトロで未知の物体から見出してもよい(例えば、法医学調査中に得たDNA) 例えば、それは、限定されるものではないが、生物学的被験体の体液(例えば、血液、血漿、血清、尿、乳、脳脊髄液、胸腔内液、リンパ液、涙、痰、唾液、便、肺吸引液、咽頭もしくは生殖器スワブ)、器官、組織、細胞培養、細胞分画、切片(例えば、器官又は組織の断面部分)或いは生物学的被験体から、又は特定領域(例えば、疾患細胞、又は血中循環腫瘍細胞を含有する領域)から単離した細胞から得ることができる。標的線状DNA(すなわち目的の線状DNA)を含有するか含有すると思われる生体試料は、真核生物起源、原核生物起源、ウイルス起源又はバクテリオファージ起源の試料であってよい。例えば、標的線状DNAは、昆虫、原虫、鳥類、魚類、爬虫類、哺乳類(例えば、ラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモット、又はウサギ)、又は霊長類(例えば、チンパンジー又はヒト)から得ることができる。線状DNAは、ゲノムDNA又はcDNA(相補DNA)であってよい。cDNAは、逆転写酵素を用いてRNA鋳型(例えば、mRNA、リボソームRNA)から生成することができる。線状DNAは、断片化されたDNAであってよく、ライゲーションできない末端ヌクレオチドを有してよい。例えば、線状DNAは、DNAリガーゼが分子内ライゲーション反応を実施することができないように、5’ヒドロキシル基及び/又は3’リン酸基を含むことがある。線状DNAは、溶液中に分散させてもよいし、固相支持体、例えばブロット、アッセイ、アレイ、スライドガラス、マイクロタイタープレート又はELISAプレートの上に固定化されていてもよい。例えば、線状DNAは、プライマーを通じて基板の上に固定化されていてよく、その後環状化され増幅されてよい。
線状DNAが二本鎖形態である場合、それは分子内ライゲーション反応の前に一本鎖形態に変性させる必要がある。これは、dsDNAをssDNA配列に変換するための当該技術分野で承認されている方法のいずれかを使用することによって実現することができる。例えば、dsDNAは、加熱変性させてもよいし、化学変性させてもよいし、熱化学変性させてもよい。dsDNAは、dsDNAの融解温度を低下させる変性剤(例えば、グリセロール、エチレングリコール、ホルムアミド、尿素又はその組合せ)を用いて化学変性させることができる。変性剤は、反応混合物に加えられる変性剤10%(体積/体積)ごとに融解温度を5℃〜6℃低下させることができる。変性剤又は変性剤の組合せ(例えば、10%グリセロール及び6〜7%エチレングリコール)は、1%、5%、10%、15%、20%、又は25%の反応混合物(体積/体積)を含んでよい。ハイブリダイゼーション・ストリンジェンシーを低下させる塩を、低い濃度で反応緩衝液に含めて、dsDNAを低温で化学変性させてもよい。dsDNAは、例えば、95℃でdsDNAを加熱することによって、熱変性させることができる。
変性工程の後、生成したssDNAは、鋳型の不在下でssDNA基質の分子内ライゲーションをする能力のあるDNA又はRNAリガーゼで処理されて一本鎖DNA環を形成することができる。ライゲーション反応に使用してよい適したリガーゼとしては、限定されるものではないが、TS2126 RNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T3 DNAリガーゼ又は大腸菌DNAリガーゼが挙げられる。線状一本鎖DNA分子の一本鎖DNA環への変換は、T4 RNAリガーゼなどのライゲーション酵素を用いて鋳型依存性分子内ライゲーション反応によって慣習的に実施される。しかし、特にssDNA分子の環状化が未知の配列及び/又はサイズのssDNA分子の集団で実施される場合に、一本鎖DNA又は一本鎖RNAの鋳型依存性分子内ライゲーションは、制限された成功しかしなかった。たとえバクテリオファージT4 RNAリガーゼIが鋳型非依存性分子内ライゲーション活性を示すとしても、この活性は非常に低く、線状ssDNA分子から環状ssDNA分子を生成する際に実際に使用するには非効率的である。
一部の実施形態では、ssDNAの一本鎖DNA環への変換は、5’ホスホリル及び3’ヒドロキシル基を有する線状ssDNA及び/又はssRNA基質に対して良好な鋳型非依存性分子内ライゲーション活性を有する熱安定性RNAリガーゼで実施される。リガーゼは、実質的にプレ−アデニル化形態であってよい。例えば、好熱性細菌Thermus scotoductusに感染させるサーマスバクテリオファージTS2126に由来するTS2126 RNAリガーゼを、断片化された線状ssDNAの環状ssDNAへの鋳型非依存性環状化に用いることができる。TS2126 RNAリガーゼは、T4 RNAリガーゼなどの中温性のRNAリガーゼの多くよりも熱安定性が高い(約75℃まで安定)。TS2126 RNAリガーゼ活性の温度範囲は、約40℃よりも高く、例えば、約50℃〜約75℃でありうる。このため、TS2126 RNAリガーゼは、より高い温度で使用されてよく、それはssDNAの望ましくない二次構造をさらに減らす。線状ssDNAの環状化は、TS2126 RNAリガーゼ以外のリガーゼによって、又はトポイソメラーゼなどのDNA結合活性を有する任意のその他の酵素を用いることによっても実現されることができる。一部の実施形態では、断片化された一本鎖DNA分子の環状化は、線状の断片化されたssDNA分子を環状化する際に高い鋳型非依存性リガーゼ活性を有する好熱性古細菌Methanobacterium thermoautotrophicum(Mth RNAリガーゼ)に由来するRNAリガーゼ1によって実現される。
一部の実施形態では、TS2126 RNAリガーゼによるssDNAの環状化の効率を向上させる方法が提供される。pH8.0のHEPES緩衝液のライゲーション反応への使用は、ライゲーション効率を向上させた。鋳型非依存性ssDNAライゲーションは、反応をTRIS緩衝液(例えば、CircLigase(商標)IIについて、EpiCenterにより提案される10x反応緩衝液は、0.33M TRIS酢酸(pH7.5)、0.66M酢酸カリウム、及び5mM DTTを含む)で実施した場合に非効率的であった。さらに、ライゲーション反応の必須補因子であるマンガンは、アルカリ条件下で急速に酸化され、TRISの存在下で沈殿を生じる。Mn2+のMn3+への空気酸化は、Mn3+イオンを強く錯化することのできる陰イオンによって促進することができる。例えば、HClでpHを適切に調節した等量の0.2モル/リットルTris及び2ミリモル/リットルのMnCl2を混合した場合、色の変化は、pH9.3(TRIS塩基だけのpH)では即座であり、pH8.5では約3分の初期のタイムラグがあり、8.3よりも低いpH値では1時間以内に検出できなかった。低いpHでは反応が起こらなかったが、高いpHで観察された変化は、酸を添加することによって逆転しなかった。TRIS緩衝液中のマンガンの急速な酸化のために、分子内ライゲーションをTRIS緩衝液中で実施する場合には、より高い濃度のマンガンがライゲーション反応に必須である(例えば、2.5mMの終濃度へのMnCl2の添加)。さらに、マンガン濃度は時間とともに低下し続けるので、反応物中のマンガンの働く濃度を正確に予測することは困難となる。ライゲーション及び増幅が単一の反応器で実施される場合に、マンガンの濃度が高いほど、増幅中のポリメラーゼのエラーレートは高くなりうる。ライゲーション反応でTRIS緩衝液をHEPES緩衝液で置き換えることにより、効果的な分子内ライゲーションを、0.5mM未満のマンガンイオン濃度によって実現することができる。HEPESの他には、その他のGoodの緩衝液のいずれか(例えば、Good,Norman et al.Biochemistry,5(2):467−477,1966、及びGood,Norman et al.,Methods Enzymol.,24:53−68,1972参照)を分子内ライゲーション反応に用いることができる。
ライゲーション反応混合物中のssDNA環は、ローリングサークル増幅(RCA)方法によって等温条件下で増幅させることができる。DNAポリメラーゼ、プライマー及びdNTPを含む増幅試薬を同じ反応器に添加して増幅反応混合物を生成し、RCA反応を開始させてよい。増幅反応混合物には、一本鎖DNA結合タンパク質などの試薬及び/又は適した増幅反応緩衝液がさらに含まれてよい。ssDNA環の増幅は、ライゲーションが実施されている同じ反応器で実施される。ssDNA環の単離又は精製及び/又はリガーゼの除去は、増幅反応の前に必要ではない。増幅されたDNAは、DNA検出のための現在公知の方法のいずれかによって検出されてよい。
RCAは、Phi29DNAポリメラーゼなどの当技術分野で公知のDNAポリメラーゼのいずれかを使用することによって実施されてよい。それは、ランダムプライマー混合物を用いて、又は特異的プライマーを用いることにより実施されてよい。一部の実施形態では、ランダムプライマーがRCA反応に使用される。1又は複数のヌクレオチド類似体(例えば、LNAヌクレオチド、2−アミノ−A、又は2−チオT修飾)を含むプライマー配列を使用してもよい。一部の実施形態では、ヌクレアーゼ耐性プライマー(例えば、適切な位置にホスホロチオエート基を含むプライマー配列)を増幅反応に用いる(例えば、NNNN*N*N)。一部の実施形態では、RCAは、ssDNA環をランダムプライマー混合物を含むプライマー溶液と接触させて、核酸鋳型−プライマー複合体を形成すること、核酸鋳型−プライマー複合体をDNAポリメラーゼ及びデオキシリボヌクレオシド三リン酸と接触させること、並びに、核酸鋳型を増幅することにより実施されてよい。一部の実施形態では、プライマー溶液は、WWNNSなどの部分拘束プライマーを含む。部分拘束プライマーは、末端にミスマッチのあるプライマー−二量体構造を有しうる。一部の実施形態では、x、y及びzが互いに独立した整数値であり、xの値が2又は3であり、yの値が2、3又は4であり、zの値が1又は2である、ヌクレオチド配列(W)x(N)y(S)zからなる部分拘束プライマーが、RCA反応に使用される。部分拘束プライマーは、1又は複数のヌクレオチド類似体を含んでよい。一部の実施形態では、修飾ヌクレオチドを含み、末端ミスマッチプライマーダイマー構造を有する、ヌクレアーゼ耐性、部分拘束プライマーがRCA反応に用いられる。適したプライマー配列としては、限定されるものではないが、+W+WNNS、W+W+NNS、+W+WNNNS、W+W+NNNS、W+W+NN*S、+W+WNN*S、W+W+NNN*S、+W+WNNN*S、W+W+N*N*S、+W+WN*N*S、W+W+NN*N*S、又は+W+WNN*N*Sが挙げられる。一部の実施形態では、RCA反応は、ssDNA環を末端ミスマッチプライマーダイマー構造を含む部分拘束プライマー混合物から本質的になるプライマー溶液と接触させ、ssDNA環を増幅することによって実施される。一部のその他の実施形態では、RCA反応は、ssDNA環を、ヌクレオチド類似体を含む部分拘束プライマー混合物から本質的になるプライマー溶液と接触させ、ssDNA環を増幅することによって実施される。ssDNA環のRCAは、配列の脱落が減少し、増幅の偏りが減少した大量のDNAを生成する。ssDNAライゲーション及び増幅の全プロセスは、中間の精製もしくは単離工程を含まずに、単一の管で実施されてよい。
一部の実施形態では、多置換増幅(MDA)による制限量の線状の断片化されたDNAの増幅のための方法が提供される。MDAの従来法は、線状の断片化されたDNAで試みた場合、増幅速度の低下及び非常に配列に偏った増幅をもたらした。さらに、重要な配列の脱落が特に断片化されたDNAの末端の近くで多くの場合観察された。これらの制限を克服するために、断片化されたdsDNAは最初にssDNAに変換される。次に、ssDNAは、鋳型非依存性分子内ライゲーション反応によって一本鎖環状DNA(すなわちDNA環)に変換され、それにより問題の多いDNA末端を除去する。500bpよりも短いssDNA配列でさえも、ssDNAの鋳型非依存性分子内ライゲーションを用いて環状化することができる。さらに、ssDNAのライゲーションが鋳型に依存しない方法で実施される場合には、標的配列の事前の知識はDNA環を作成するために必要でない。環状化の前に、断片化されたDNAをPNKで処理してライゲーションできない末端を修復することができる。断片化されたssDNAを環状化した後、環状化されたDNAでMDAが実施される。増幅反応は、ローリングサークル増幅(RCA)方法を用いることによって等温条件下で実施することができる。RCAは、TempliPhi(商標)RCAキット(GE Healthcare社)などの市販のRCA増幅キットを用いて実施することができる。TempliPhi(商標)ローリングサークル増幅は、ロックド核酸を含有するランダムプライマーを用い、それはより高い感受性及び増幅バランスを提供する。一部の実施形態では、ヌクレアーゼ耐性プライマーがRCA反応に使用される。本明細書に開示される方法は、増幅感受性を向上させ、配列の脱落を減らし、よりバランスのとれた増幅を可能にする。一本鎖の断片化されたDNAの鋳型非依存性環状化は、低い濃度でさえ、より短い配列で達成されうるので、リガーゼ支援全ゲノム増幅を高度に断片化されたDNA(例えば、血漿中の循環DNA)の増幅に用いる場合、速度が速く配列包括度の向上した、よりバランスのとれたDNA増幅を達成することができる。例えば、ssDNAの持続長は、ssDNAの鋳型非依存性環状化に関して15ヌクレオチドと低いことがある。CircLigase(商標)をライゲーション反応に用いる場合、標準条件下で、線状のコンカテマー又は環状のコンカテマーはほとんど生成されない。さらに、環状化及び増幅反応は、ともに中間の精製もしくは単離工程を含まずに単一の反応器で実施することができ、それにより汚染の機会を減らし、増幅ワークフローを単純化することができる。リガーゼ支援全ゲノム増幅法は、限定されるものではないが、循環血漿DNA、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料から単離された断片化されたDNA、環境条件にさらされた法医学DNA試料又は非常に古いDNA試料を分析するために用いることができる。増幅されたライブラリーは、qPCR又は塩基配列決定法によって、増幅された配列の標的検出にさらに使用することができる。
ssDNA断片のDNA環への事前のライゲーションとそれに続くローリングサークル増幅を含む、本明細書に記載される様々なライゲーション支援全ゲノム増幅法は、高分子量ゲノムDNAよりも断片化されたDNAの優先増幅をもたらす。例えば、循環DNAを含む血漿調製物は、精製プロセス中に血液細胞から放出されるゲノムDNAでしばしば汚染されることがある。MDAによる全ゲノム増幅の従来法は、循環DNAとゲノムDNAの両方を増幅する。対照的に、断片化された循環DNA分子が最初にTS2126 RNAによって環状化され、その後にPhi29DNAポリメラーゼを用いるRCAによって環状化されたDNA分子が増幅される場合、循環DNAは高分子量ゲノムDNAよりも優先的に増幅された。そのような、断片化されたDNAのゲノムDNAへの優先増幅は、診断上関連するDNAを下流の分析のために優先的に増幅することができるので、診断用途に特に適している(実施例4参照)。さらに、リガーゼ支援全ゲノム増幅は、従来のMDAに基づく全ゲノム増幅と比較した場合に、断片化されたDNAのより強い増幅を許容する。
図1は、断片化されたdsDNAのリガーゼ支援全ゲノム増幅の一実施形態の模式図を示す。二本鎖DNAの持続長は非常に高く(約150bp)、その生得的な剛性は500bp未満の断片の環状化を非常に非効率的にする。さらに、約250bpの範囲の小型の二本鎖の断片化されたDNA分子で、末端が適切なアラインメントでない限り、環状化は非効率的である(約10.5bp/回転)。対照的に、一本鎖の断片化されたDNAの環状化の持続長は、二本鎖の断片化されたDNAと比較すると非常に小さく約15ヌクレオチドである。図1に示されるように、リガーゼ支援全ゲノム増幅において、断片化されたdsDNAは、最初に一本鎖DNA環に変換される。これは、断片化された二本鎖DNAを95℃で十分な時間インキュベートしてdsDNAを一本鎖に変性させることによって実現することができる。次に、断片化されたssDNAを、一本鎖DNA基質の鋳型非依存性分子内ライゲーションの能力のあるDNA又はRNAリガーゼで処理して、一本鎖DNA環を生成する。分子内ライゲーションに使用されうるリガーゼの限定されない例としては、CircLigase(商標)、T3 DNAリガーゼ、T4 RNAリガーゼ、Mth RNAリガーゼ(MthRnl1)、又は大腸菌リガーゼが挙げられる。次に、DNAポリメラーゼ、ランダムプライマー、及びdNTPを含む増幅試薬を添加して一本鎖DNA環のRCA反応を開始させる。RCAを用いるこのリガーゼ支援全ゲノム増幅は、従来の全ゲノム増幅法とは対照的に配列の脱落及び増幅の偏りの低下した大量のDNAを生成する。そのため、それは非常に断片化されたDNAでさえも増幅及び検出するために使用されうる。一本鎖DNA環の生成及びRCAによるそのその後の増幅の全プロセスは、精製工程を介さずに単一の管で行われる。
一部の実施形態では、ライゲーションできないDNA末端を修復するための断片化されたDNAのプロセシングを含む、断片化されたDNAのリガーゼ支援全ゲノム増幅に対して、単一管ワークフローが提供される。例えば、断片化された一本鎖DNAが5’ホスホリル基及び3’ヒドロキシル基を含まない場合、それは分子内ライゲーション反応においてライゲーションされないことがある。そのようなライゲーションできないDNA配列の存在は、リガーゼ支援全ゲノム増幅において増幅の偏りを引き起こすことがある。例えば、図8に概略的に表されるように、細胞死の間のDNアーゼII消化により生成されるDNA断片は、5’ヒドロキシル基、3’ホスホリル基を含むことがある。そのような5’ヒドロキシル基、3’ホスホリル基を含む二本鎖DNA断片から生じる一本鎖DNA断片は、分子内ライゲーション反応において環状化されない。従ってDNアーゼII型の切れ目は、全ゲノム増幅において標本として不十分である。一部の実施形態では、断片化されたDNAは、キナーゼ(例えば、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、TPK)で処理されて断片化されたDNAの5’ヒドロキシル基をリン酸化し、かつ/又は3’ホスホリル基を脱リン酸化する。キナーゼを反応に含めることにより、5’リン酸を含まないプールの断片の効率的な環状化が許容される。断片化されたDNAの5’末端をキナーゼでリン酸化し、その後断片化されたDNAを増幅することにより、より代表的なライブラリーが作成される。
一部の実施形態では、断片化されたdsDNAのリン酸化修復は、T4 PNKキナーゼを用いて実施することができる。リン酸化修復は、断片化されたdsDNAか又は変性し断片化されたssDNAのいずれかで実施されてよい。リン酸化修復がdsDNAで実施される場合、修復されたdsDNAをその後変性させて線状ssDNAとしてよく、それはその後にCircLigase II(商標)(CLIIと略される)を用いて環状化させることができる。CircLigase II(商標)は、実質的にアデニル化形態のTS2126 RNAリガーゼを含む。CircLigase II(商標)によるssDNAの鋳型非依存性分子内ライゲーションは、より高い濃度のATP又はdATPによって阻害される。しかし、キナーゼによるリン酸化修復は、多くの場合ATPの存在を必要とする。さらに、DNAに損傷を与えずに反応混合物からATPを除去することは容易でないことがある。例えば、ATPを除去するための反応混合物のホスファターゼ処理も、結果として(DNAが、例えば、プレ−アデニル化によって保護されていない限り)DNAの脱リン酸化をもたらし、従ってDNA鎖をライゲーション不可能にする。結果として、精製もしくは単離工程を介さずに、単一管において、断片化されたDNAのリン酸化修復及びssDNA環の生成を実施することは、困難な場合が多い。本明細書において提供される方法は、キナーゼ反応中にATPの代わりにGTP、CTP、UTP又はdTTPを用いる。CircLigase II(商標)はGTP又は代替リン酸供与体(例えば、CTP又はUTP)に対する寛容性が高いので、キナーゼ修復工程及びライゲーション工程は、精製及び/又は単離工程を介さずに単一の反応器で実行することができる。キナーゼ反応混合物は、マンガン塩及びベタイン(両性イオントリメチルグリシン)などの追加の試薬をさらに含んでよい。ライゲーションされると、ssDNA環を増幅させることができる。ライゲーション及び増幅反応を比較的低濃度のGTPで実行することにより、本明細書に記載される単一管ワークフローは、酵素処理間の間欠性のクリーンアップ工程を回避し、DNA鋳型の喪失を最小限に抑える(キナーゼ修復、ライゲーション及び増幅を伴う単一管ワークフローの模式図について図9を参照)。
一部の実施形態では、線状DNAから一本鎖DNA環を生成するための代替法が提供される。該方法は分子内ライゲーション工程の前にDNAプレ−アデニル化工程を用いる。最初に、線状DNAは、ATPの存在下でポリヌクレオチドキナーゼとともにインキュベートされて、5’末端にリン酸基を有し、3’末端にヒドロキシル基を含むライゲーション可能なDNA配列を生成することができる。その後、ライゲーション可能なDNA配列をアデノシン三リン酸の存在下でアデニル化酵素とともにインキュベートして、5’アデニル化DNA配列を生成する。5’アデニル化DNA配列は、遊離3’ヒドロキシル基を有する。ライゲーション反応でのATPの濃度は、ライゲーション可能なDNA配列の3’末端でアデニル化が起こらないように選択される。その後、5’アデニル化DNA配列を、5’アデニル化DNA配列の鋳型非依存性分子内ライゲーションの能力のある非アデニル化リガーゼとともにインキュベートして、一本鎖DNA環を生成する。ATP依存性非アデニル化リガーゼを分子内ライゲーション反応に用いる場合、ATPは、分子内ライゲーション反応の前に反応混合物をホスファターゼで処理することにより反応混合物から除去されているべきでありうる。DNAの末端ヌクレオチドの5’リン酸塩(通常、ホスファターゼによって除去される)は、プレ−アデニル化のためにホスファターゼ処理から保護される。DNAが二本鎖形態である場合、それは分子内ライゲーション反応の前に変性させる必要がある。この方法の全ての工程は、単離もしくは精製工程を介さずに単一の反応器で実施される。
一部の実施形態では、好熱性古細菌Methanobacterium thermoautotrophicum(Mth RNAリガーゼ1)に由来するRNAリガーゼIなどのRNAリガーゼをATPの存在下で使用して線状DNAのアデニル化形態を生成する。一本鎖DNA環を生成するために、自己アデニル化、脱アデニル化及び/又はアデニル酸転移のできない変異体又は適切に操作されたATP非依存性リガーゼを、アデニル化線状DNAの分子内ライゲーション反応に使用してよい。例えば、Mth RNAリガーゼのモチーフVリジン変異体(K246A)を用いることができる。この変異体はプレ−アデニル化基質で完全なライゲーション活性を有する。モチーフI(K97A)において触媒リジンに対するアラニン置換を有するMth RNAリガーゼ変異体を用いてもよい。K97A変異体の活性は、供与体基質としてプレ−アデニル化RNAか又は一本鎖DNA(ssDNA)のいずれかと類似しているが、同一配列をもつssDNAと比較して受容体基質としてRNAに対して2倍優先される。TS2126 RNAリガーゼなどのATP依存性リガーゼが5’アデニル化DNA配列の分子内ライゲーション反応に用いられる場合、反応中のATPは、ライゲーション反応の前に除去されているべきでありうる。
一部の実施形態では、代替ワークフローを用いるリガーゼ支援全ゲノム増幅が提供される。このワークフローの模式図は図11に提供される。この方法は、ライゲーション及び増幅の前に、断片化されたDNAをキナーゼで修復すること及び断片化されたDNAの5’末端をATPの存在下でRNAリガーゼ又はDNAリガーゼでプレ−アデニル化することを含む。ライゲーションできない末端を有する配列(例えば、5’ヒドロキシル及び/又は3’ホスホリル基を含む配列)を含む断片化されたDNAは、キナーゼで処理することによって5’末端でリン酸化され、3’末端で脱リン酸化されて、ライゲーション可能なDNA配列を生成する。次に、ライゲーション可能なDNA配列をATPの存在下でMth RNAリガーゼ(MthRnl 1)などのRNAリガーゼを用いてアデニル化して、断片化されたDNAのアデニル化形態を生成することができる。ATPはその後に反応混合物をホスファターゼ(例えば、シュリンプアルカリホスファターゼ(SAP))で処理することによって反応混合物から除去される。DNAの5’アデニル化のための、当技術分野で利用可能ないずれの方法を用いてもよい(例えば、RNAリガーゼ、DNAリガーゼ又は合成法)。次に、プレ−アデニル化一本鎖線状DNAを、CircLigase I(商標)などの低い程度のアデニル化を有するRNAリガーゼで処理して、分子内ライゲーションによってDNA環を生成する。次に、RCAを使用してDNA環を増幅する。CircLigase I(商標)が分子内ライゲーションによってDNA環を生成する実施形態では、分子内DNAライゲーション及びその後の増幅反応はATPの不在下で実施される。キナーゼ処理及びプレ−アデニル化反応の後のATPの反応混合物からの除去は、CircLigase Iによるプレ−アデニル化ssDNAの環状化がATPによって阻害されるので必須である。一部の実施形態では、ATPは、ホスファターゼによる処理によってアデノシン及びリン酸に変換される。たとえアデノシンが環状化反応に対して抑制性でないとしても、結果として得られるリン酸塩が分子内ライゲーション反応を阻害することがある。生成されたリン酸塩は、反応混合物をリン酸塩封鎖酵素で、又はリン酸塩を沈殿又は除去する試薬(例えば、LayneRT樹脂などのリン酸塩結合樹脂)で処理することによって、溶液からさらに除去することができる。リン酸塩の除去は、マルトースのグルコース及びグルコース−1−リン酸塩への変換を触媒するマルトースホスホリラーゼなどの酵素で反応混合物を処理し、それによりリン酸塩を溶液から除去することによっても実現することができる。キナーゼを反応に含めることにより、5’リン酸塩及び/又は3’ヒドロキシル基を含まないプールのDNA断片の環状化及び増幅が許容され、それによって、リガーゼ支援増幅による、より代表的なライブラリーが作成される。標的DNAのプレ−アデニル化は、分子内ライゲーション反応に、低い程度のアデニル化を有するリガーゼ(例えば、約30%アデニル化されているCircLigase I(商標))を使用することを容易にする。高い程度のアデニル化を有するリガーゼ(例えば、CircLigase II(商標))は、非アデニル化DNAを1回だけしかライゲーションしないので、これは興味深いものでありうる。従って、化学量論量のリガーゼがしばしば分子内ライゲーション反応を完了させるために必要とされる。対照的に、低い程度のアデニル化を有するリガーゼ(例えばCircLigase I(商標)など)は、高い回転率を有し、可逆的かつ触媒的に又は繰り返し複数のプレ−アデニル化されたDNA分子に作用することができる。これは、ライゲーション速度を高め、必要なリガーゼの量を減らし、潜在的により困難又は複雑なDNA鋳型の環状化の増加を可能にする。
一部の実施形態では、リガーゼ支援全ゲノム増幅のための方法は、全血又は尿などの生体試料中の循環核酸(例えば、生体試料の非細胞画分由来の循環DNA)の増幅及びその後の検出に使用される。循環核酸は、アポトーシス細胞又は壊死細胞に起源をもつものであってもよいし、細胞から活発に放出されたものであってもよい。細胞ヌクレアーゼは高分子量ゲノムDNAを小型のヌクレオソームの大きさの断片に分解するので、循環核酸は天然に高度に断片化されている。高度に断片化された循環核酸は多くの場合、従来の核酸増幅法に従わない。さらに、循環核酸は血流中に非常に少量で存在する。二本鎖循環線状核酸の標準的なローリングサークル増幅(RCA)は、非効率的であり、非常に偏っている。ローリングサークル増幅の前に循環核酸を一本鎖に分離し、リガーゼによって環状化することは、効率を高め、偏りを少なくする。そのような希薄なDNA鋳型で良好なRCA速度及び高い感受性を可能にするために、LNAを含むプライマーを用いるRCA法が用いられる。この改良されたRCAは、微量DNA及び単一細胞増幅のために最適化された。
一部の実施形態では、全血由来の循環DNAを増幅する方法が提供される。循環DNAは、全血の非細胞画分(例えば、血漿又は血清)から増幅される。この方法は、全血の非細胞画分を収集する工程、非細胞画分から循環DNA(主にその天然の二本鎖形態に存在)を収集する工程、二本鎖DNAを変性させて線状一本鎖DNAを生成する工程、循環一本鎖DNA分子を環状化して一本鎖DNA環を生成する工程、及びローリングサークル増幅によって一本鎖DNA環を増幅する工程を含む。持続長のために、150bpよりも小さい配列長を有するdsDNAを環状化することは通常可能ではなく、DNAが200bpよりも長くなるまでdsDNAを環状化することは非常に困難である。対照的に、15ヌクレオチド(nt)以上の配列長を有する線状ssDNA分子は、5’末端がリン酸化され、3’末端がヒドロキシル化されている限り、適したリガーゼによって非常に効率的に環状化される。一本鎖DNA環を生成するための一本鎖DNAの環状化は、一本鎖DNAの鋳型非依存性分子内ライゲーションの能力のあるリガーゼを用いることによって実現される。一部の実施形態では、一本鎖DNA分子の環状化は、一本鎖線状DNAを、CircLigase II(商標)などのRNAリガーゼで処理することによって実施される。
一部の実施形態では、循環DNA検出の感受性は、ssDNAライゲーション工程及びRCAの前にポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)で循環核酸をリン酸化することによってさらに高まる。PNK工程をワークフローに組み込むと、本明細書に提示されるリガーゼ支援全ゲノム増幅法は、1%のレベルでスパイクした場合に(三重反復)、雌全血中の雄循環DNAを検出することができた。鋳型非依存性分子内ライゲーションは、ssDNA鋳型が5’リン酸基及び3’ヒドロキシル基を有さない限り、達成されることができない。多様な条件がDNAにおいて5’ヒドロキシルを生じる(DNアーゼII酵素切断、及び血液中のホスファターゼ活性など)。PNK処理はこの問題を除去し、ローリングサークル増幅CNAライブラリーの多様性を向上させる。
一部の実施形態では、線状DNAからの一本鎖DNA環の生成のためのキットが提供される。一実施形態では、このキットは、一緒にパッケージングされた、ポリヌクレオチドキナーゼ、リン酸供与体、及びssDNA配列の鋳型非依存性分子内ライゲーションの能力のあるプレ−アデニル化リガーゼを含む。ポリヌクレオチドキナーゼは、T4 PNKであってよい。リン酸供与体は、GTP、UTP、CTP又はdTTPから選択されてよい。一実施形態では、キットには、TS2126リガーゼが含まれてよい。TS2126リガーゼの60%超がプレ−アデニル化されていてよい。キットは、緩衝液(例えば、HEPES)、DNA増幅試薬(例えば、DNAポリメラーゼ、プライマー、dNTP)、及び、提供される方法による一本鎖DNA環の生成に用いられるその他の試薬(例えば、MnCl2、ベタイン)をさらに含んでよい。一部の実施形態では、キットには、Phi29DNAポリメラーゼ及びランダム/部分拘束プライマーが含まれてよい。もう一つの実施形態では、キットは、一緒にパッケージングされた、アデニル化酵素、ホスファターゼ及び非アデニル化リガーゼを含む。キットは、ポリヌクレオチドキナーゼ及び/又はリン酸供与体をさらに含んでよい。アデニル化酵素は、Methanobacterium thermoautotrophicumに由来するRNAリガーゼI(Mth RNAリガーゼ)であってよい。非アデニル化リガーゼは、リガーゼの60%超がその非アデニル化形態である、TS2126リガーゼの組成物であってよい。キットには、線状DNAからの一本鎖DNA環の生成の説明書がさらに含まれてよい。
発明の実践は、説明のためだけに本明細書に提示され、添付される特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない、以下の実施例からさらにより十分に理解されるであろう。実施例の項で使用されるいくつかの略語は、略さずに書くと以下の通りである:「mg」:ミリグラム、「ng」:ナノグラム、「pg」:ピコグラム、「fg」:フェムトグラム、「mL」:ミリリットル、「mg/mL」:ミリリットル毎ミリグラム、「mM」:ミリモル、「mmol」:ミリモル、「pM」:ピコモル濃度、「pmol」:ピコモル、「μL」:マイクロリットル、「min.」:分及び「h.」:時間。
実施例1:血漿由来の循環核酸の全ゲノム増幅:
Wako DNA抽出器SPキット(和光純薬株式会社)を用いて、明らかに健康な個体の、クエン酸塩−リン酸塩−デキストロース(CPD)で安定化させた血漿から循環DNAを単離した。約1.3ngを、TBE緩衝液を用いる2%アガロースゲルによる電気泳動により分析し、SYBR Goldで染色し、Typhoonイメージャで可視化した。図2に示されるように、循環DNAの大部分は約180bpの長さであった。さらなるそれよりも少ない量の配列は約370bpの長さであり、さらにそれよりもかなり少ない量のそれよりも高分子量の配列があった。
350pgの血漿由来の循環DNAを95℃で加熱して鋳型を変性させた。次に、変性した一本鎖DNA鋳型をRNA又はDNAリガーゼで処理して一本鎖DNA環を生成した。ATP依存性T4 DNAリガーゼ、細胞にコードされたNAD依存性大腸菌DNAリガーゼ又は熱安定性RNAリガーゼ(CircLigase II)をライゲーション反応に使用した。次に、100pgのDNAを連結した一本鎖DNA環を、Phi29DNAポリメラーゼを用いるGenomiPhiキット(GE Healthcare社)を用いる全ゲノム増幅に供した。「at N」が、2−アミノ dA、2−チオ−dT、正常なG及び正常なCを含有するランダム混合物を表す、プライマー混合物+N+N(at N)(at N)(at N)*Nを用いて増幅を実施した。リアルタイム増幅は、少量のSYBRグリーンIを増幅混合物に添加し、Tecanプレートリーダー(Tecan SNiPer,Amersham−Pharmacia Biotech)で経時的に蛍光シグナル増加をモニターすることによって実施した。比較のために、当量濃度の未処理ゲノムDNA、未処理血漿DNA、及びDNA鋳型を含まない(鋳型増幅のない)試料を含めた。
図3に示されるように、同等量の高分子量ゲノムDNAと比較した場合に、未処理の断片化された血漿DNAの増幅速度は、はるかに低く、増幅の欠陥を示した。しかし、断片化された血漿DNAが前処理され、CircLigase II(商標)を用いて一本鎖DNA環に変換された場合、急速な増幅速度が実現された(図3A)。ATP依存性T4 DNAリガーゼ(図3B)及び細胞にコードされたNAD依存性大腸菌DNAリガーゼ(図3C)を含むリガーゼも効果的であったが、断片化された血漿DNAの増幅速度を回復させるには効率が低かった。これらの実施例では、増幅速度の相対的な増加は、一本鎖DNA鋳型の分子内ライゲーションを促進する際のリガーゼの各々の有効性を示す。
実施例2:リガーゼ支援全ゲノム増幅により増幅させた血漿由来の循環核酸の分析。
実施例1で生成した増幅させたDNAを、4つの異なるCODIS遺伝子座(vWA、TPOX、D8S1129、及びD13S317)を標的とするプライマーを用いる定量的PCRによってさらに分析して、感受性がありバランスのとれたDNA増幅を促進するためのリガーゼ支援全ゲノム増幅法の有効性を試した。これらのDNAレベルを増幅させていないDNAから得た値と比較して、増幅後の相対的な発現レベルを決定した。図4に示されるように、両方の例において、未処理血漿DNAの増幅は、配列の脱落を導くか、又は試験した遺伝子座で標本として非常に不十分であるDNAを生成した。対照的に、この方法にCircLigase II(商標)か又はT4 DNAリガーゼのいずれかを含めると、4つの遺伝子座の配列の脱落を防ぎ、増幅させた高分子量ゲノムDNAに表示の点でより類似するDNAを生成した。CircLigase II(商標)を一本鎖DNAリガーゼとして使用する実施例では、12の異なるCODIS遺伝子座を標的とするプライマーを用いる定量的PCR(qPCR)によって試験した12の異なるCODIS遺伝子座のうち、11を増幅後に回収したが、増幅させた未処理血漿DNAでは4しか存在しなかった(図5)。図5において、報告されるCt値は、2つの複製の平均である。Ct値が未決定であったPCR反応は「X」で印がつけられている。
実施例3:リガーゼ支援全ゲノム増幅の反応条件の最適化。
リガーゼ支援DNA増幅反応を、TS2126 RNAリガーゼによる一本鎖DNA分子のライゲーション反応の効率を最適化することによってさらに最適化した。標準的な製造業者の推奨する緩衝液からマンガンを除去することによって増幅率がバックグラウンドレベルまで低下したので、金属イオンの存在はライゲーション反応に必要不可欠であった。未処理ゲノムDNA及び未処理血漿DNAを、変更した緩衝条件を用いてCircLigase II(商標)で処理した血漿DNA試料と比較した(図6)。全ての緩衝条件は、33mM KOAc、0.5mM DTT、及び1Mベタインを含んだ。指示される場合、緩衝液は33mM TRIS−酢酸塩(pH7.5)又は33mM HEPES−KOH(pH8.0)を含み、さらに2.5mM MgCl2か又は2.5mM MnCl2を含んだ。少量のSYBRグリーンIを増幅混合物に添加し、Tecanプレートリーダーで経時的に蛍光の増加をモニターすることによってリアルタイム増幅を実施した。増幅閾値は、蛍光がバックグラウンドレベル(2000RFU)より高くなる時点である。
リガーゼ支援全ゲノム増幅反応(試料100pg)の増幅速度の比較を図6に示す。マグネシウムとマンガンの両方が、標準的なTRIS緩衝液の存在下で同様の効果を促進したが、HEPES緩衝液pH8.0の存在下でマンガンとマグネシウムの組合せが、高い増幅率を促進するのに最も効果的であったことが観察された。HEPES緩衝液は、HEPES緩衝液中のマンガン陽イオンの酸化の減少に起因しうるこの反応条件において、血漿DNAの環状化効率を増加させた。
実施例4:リガーゼ支援全ゲノム増幅における高分子量ゲノムDNAの増幅の抑制。
未処理のゲノムDNAの全ゲノム増幅反応の増幅速度を、CircLigase I(商標)及びCircLigase II(商標)で処理したゲノムDNA試料(試料100pg)と比較した。結果を図7に示す。図7に示されるように、ゲノムDNAのCircLigase処理は、高分子量ゲノムDNAの増幅率に抑制効果(血漿DNAへのプラスの効果とは異なる)を生じた。抑制は、CircLigase I及びCircLigase II(商標)の両方について明白であった。
Phi29に基づく増幅がリガーゼによって抑制されたかを調査するために、未処理のゲノムDNAを活性のあるリガーゼの存在下で増幅させた。少量のSYBRグリーンIを増幅混合物に添加し、Tecanプレートリーダーで経時的に蛍光の増加をモニターすることによってリアルタイム増幅を実施した。増幅閾値は、蛍光がバックグラウンドレベル(2000RFU)より高くなる時点である。ゲノムDNA増幅の抑制は、増幅中に存在する、活性のあるリガーゼの効果ではないことが観察された。
血液細胞由来のゲノムDNAはしばしば循環核酸の調製物を汚染し、診断価値が少ないので、高分子量ゲノムDNAよりも循環の増幅を優先することは、特定の用途に有利でありうる。
実施例5:リガーゼ支援全ゲノム増幅を用いる断片化されたDNAの単一管増幅−分子内ライゲーションの前の循環DNA断片のキナーゼによるリン酸化の効果。
循環DNA断片のキナーゼによるリン酸化は、血漿中の循環DNAのより感受性の高い検出を許容した。雄−雌血漿/血液混合実験を実施して、キナーゼで処理したインプットDNAから作成したライブラリーがより代表的であったことを確立し、DYS14雄特異的マーカーのより感受性の高い検出を可能にした(図10、3/3複製物、それに反してリン酸化が行われなかった場合は1/3しか検出されなかった)。100μLの血液/血漿混合物を以下の通り調製した:100A:100%雄血漿、5A〜C:雌全血に5%v/vでスパイクした雄血漿、1A〜C:雌全血に1%v/vでスパイクした雄血漿、及び0A:100%雌血液。MF1膜(Whatman)を通した横の流れによって血漿を血液細胞から分離し、それに続いて乾燥させ一晩貯蔵したセルロースパッドの上に収集した。次に、循環DNAを、標準的なヨウ化ナトリウム/洗浄剤に基づく方法であるWako抽出器SPキット(和光純薬株式会社)の変更によって、セルロースパッドから単離した。次に、約1.8ngのDNAを、GTP、マンガン、及びベタインの存在下、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて又は用いずに処理し、次にCircLigase II(商標)で処理して一本鎖DNA断片を環状化した。次に、DNAをGenomiPhi全ゲノム増幅(GE Healthcare社)に供し、生成物を定量的PCRで分析して、2つのマーカー:Dys14(Y−染色体に位置するマルチコピー遺伝子であり、雄画分だけから検出可能であるべきである)、及びD16S539(染色体16に位置するSTR遺伝子座であり、雄と雌の両方の画分から検出可能であるべきである)の検出を評価した。反応は、ワークフロー中に中間の精製もしくは単離工程を含まずに、単一の反応器で実施された。これは、比較的低い濃度のGTPでリン酸化反応を実施することによって実現された。
図10は、キナーゼを反応に含めることにより、5’リン酸塩を含まないプールのDNA断片の環状化及び増幅が許容され、それによって、より代表的なライブラリーが作成されることを示す。これには、細胞死の間にDNアーゼII消化によって特異的に生成される5’ヒドロキシルを含有するDNA断片が含まれる。雄−雌血漿/血液混合実験を用いて、キナーゼで処理したインプットDNAから作成したライブラリーがより代表的であったことが証明され、DYS14雄特異的マーカーのより感受性の高い検出(3/3複製物、それに反してリン酸化が行われなかった場合は1/3しか検出されなかった)を可能にした。
実施例6:環状化反応の前の断片化されたDNAのプレ−アデニル化の効果。
40分でリン酸化されたか又はプレ−アデニル化された小型のDNA断片の環状化の効率は、異なる量のCircLigase酵素で評価される。5’位にリン酸基か又はアデニル化を含む、2.5pmolの64−merオリゴヌクレオチドを、漸増量のCircLigase I(商標)又はCircLigase II(商標)で40分間60℃で処理した。環状化率を、線状及び環状の位置のバンドの強度を走査することによって求めた。図12に示されるように、断片化されたDNAのプレ−アデニル化は、ライゲーション及び増幅速度を向上させた。図12では、P−64merは、5’−リン酸化された64−ntオリゴヌクレオチドを表し、ad−64は、プレ−アデニル化された64−ntオリゴヌクレオチドを表す。プレ−アデニル化DNAは、標準的なリン酸化されたDNAよりも急速に環状化された。さらに、アデニル化の程度の低いライゲーション酵素は、モル過剰の基質のライゲーションを触媒し、リガーゼがプレ−アデニル化されたDNA分子と連結する複数の機会を有することを示した。そのことは、ライゲーション速度を増加させ、より困難な鋳型の環状化の増加を可能にする可能性がある。
実施例7:プレ−アデニル化ワークフローを用いる5’−リン酸塩及び5’−ヒドロキシル含有オリゴヌクレオチドの環状化。
5pmolの64−merオリゴヌクレオチドを含有する、5’位にリン酸基か又はヒドロキシル基のいずれかとの反応物を、1.25UのT4ポリヌクレオチドキナーゼで指示される場所で37℃で処理した。25pmol Mth RNAリガーゼとの65℃でのインキュベーションの後、反応物を0.25単位のシュリンプアルカリホスファターゼで処理した。Mth RNAリガーゼはATP濃度に対して非常に感受性が高いので、標準的な100μMのATP濃度で、Mth RNAリガーゼは、DNA末端をほとんどアデニル化する。このATP濃度ではMth RNAリガーゼによる分子内ライゲーションは起こらない。酵素は各々のインキュベーションの後に熱失活させた。最後に、反応物を、指示される場所で50単位のCircLigase Iで処理し、60℃で60分間インキュベートした。環状化率を、線状及び環状の位置のバンドの強度を走査することによって求めた(図13)。P−64merは、5’−リン酸化された64−ntオリゴヌクレオチドを表し、ad−64merは、プレ−アデニル化された64−ntオリゴヌクレオチドを表す。
図11は、5’−リン酸塩又は5’−ヒドロキシル基を含有する線状オリゴヌクレオチドが環状形態に変換される、「単一管」プレ−アデニル化ワークフローを示す。この「単一管」プロセスにおいて、基質は、中間の精製工程を含まずに、ポリヌクレオチドキナーゼ、Mth RNAリガーゼ、シュリンプアルカリホスファターゼ、及びCircLigase I(商標)で連続的に処理される。
特許請求される本発明は、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなくその他の具体的な形態で具体化されてよい。前述の実施形態は、多様な全ての可能性のある実施形態又は実施例から選択された実施形態又は実施例である。そのため、前述の実施形態は、本明細書に記載される本発明を制限するというよりもむしろあらゆる点で実例となると考えられるべきである。特許請求される本発明の特定の特徴だけが本明細書において例示され説明されたが、当業者が、本開示の利益を得て、これら及びその他の種類の用途に適した本発明の原理に従って本方法を用いるための適した条件/パラメータを特定し、選択し、最適化するか又は変更することができることは理解されるべきである。試薬の正確な使用、選択、変数、例えば濃度、体積、インキュベーション時間、インキュベーション温度、及び同類のものなどの選択は、主にそれが意図される特定の用途に依存しうる。そのため、添付される特許請求の範囲は、本発明の真の精神の中に入る全ての変更及び改変を網羅することを目的とすることが理解される。さらに、特許請求の範囲の等価物の意味及び範囲内にある全ての改変は、その中に包含されることを意図する。