JP2019105031A - 合成桁橋の床版の撤去方法及びこれに使用される補強部材 - Google Patents
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Abstract
Description
橋を交換する場合、既存の橋で交通量を確保しつつ既存の橋に隣接して新たな橋を建設し、完成した段階で切り替える方法も行われるが、高速道路のように長距離に渡って連続する高架橋の道路ではこのような方法は現実的ではない。そこで既存の橋桁は残したままで、床版を交換する方法が採用されている。
こうした合成桁橋では、従来橋桁直上の部分を除く床版をブロック状に切断して除去し、残った橋桁直上の部分は、機械的にはつりを行ってコンクリートを除去する方法が行われ、切断する床版のサイズに制約があること、少なくとも橋桁に沿って橋桁の両側を切断する必要があるために床版の撤去に必要な切断距離が長いこと、はつりによる騒音が発生することなど様々な課題があった。
特許文献1には、床版の上面から、鋼製の主桁の長さ方向に沿って高圧ウォータージェットによりコンクリートのみを除去して鋼桁の幅よりも狭い幅の切削帯域を形成し、切削帯域に鋼桁上面のジベルおよびコンクリート床版に埋設された鉄筋の一部を露出させて鋼桁とコンクリート床版との縁切りを行い、コンクリート床版を所要大きさのブロック片に切断し上方に引き剥がして撤去する橋梁床版の撤去方法が記載されている。
しかしこの撤去方法にしても、従来工法にしても、床版の撤去に着手する段階で車両等の通行を止める必要がある。交通の要所や高速道路における高架橋は物流の大動脈の一部となっており、床版の交換とはいえ長期間にわたり通行止めにすることは経済的な損失が大きく、極力通行止めにする工事期間を短くすることが求められる。
しかし、ハンチ部分を水平に切断して切り離すために、ずれ止めの効果がなくなってしまい、この状態で車両等の通行を認めるのは安全上の課題が懸念される。
そこで、車両等を通行止めにする前に処理できる工程を進め、通行止め後の作業期間を大幅に短縮することができる合成桁橋の床版の撤去方法が求められる。
また本発明に係る合成桁橋の床版の撤去方法によれば、橋桁に沿って橋桁の両側を切断する必要がなく、切断して切出す床版ブロックの大きさを大型化することができるので、ロードカッターによる床版の総切断距離が短くて済み、工事期間を短縮することができる。
さらに、本発明に係る補強部材は、複数のブロックで構成され、組立、分解が容易で再利用ができるため、合成桁橋の床版の撤去にかかる費用の必要以上の増加を防ぐことができる。
図1は本発明の実施形態による合成桁橋の床版の撤去方法を適用する前の合成桁橋の構造を概略的に示す図である。
合成桁橋1は、鋼製橋桁2上に設置する床版3も橋桁の役割を一部担うように、打設するコンクリートで鋼製橋桁2と床版3を一体化する。このとき鋼製橋桁2上に配列されたずれ止め筋5が鋼製橋桁2と床版3の接合強度を高める働きをする。
図2は、本発明の実施形態による床版ハンチ部4のコンクリートをウォータージェットで除去する方法を説明するための図である。
図2を参照すると、(a)〜(c)の3つの段階でコンクリートを除去する方法を示し、見やすくするため、コンクリートを除去する位置を平面的に表し、その上方に広がる床版を省略して示している。
ウォータージェットで、床版ハンチ部4の側面のような傾斜面を切削しようとすると噴射された水が斜めに反射されて、切削に寄与する水圧が分散してしまうため切削が効率的に進まない。そのため切削を行う床版ハンチ部4の側面は、予め垂直面となるように機械的にはつりしておく。
この時使用するウォータージェットのノズルも図2(a)と同様、前方噴射ノズル15である。
この場合も側方噴射ノズル16を橋軸と直角方向に移動させながらずれ止め筋5の間のコンクリートを切削除去する。
所定区間の所定区間のずれ止め筋5の周りのコンクリートを除去した後は、速やかに補強部材による仮補強を行う。
図3を参照すると、補強部材20は、主要な構成要素として本体ブロック21及び2つの背面ブロック(31、32)を含む。
そこで本体ブロック21は、取り外しやすいように上面にテーパ部26を備え、また凹部22に注入されて硬化したモルタルを反力材とするように押し出しボルトを締めこむための押し出しボルト用ネジ穴27を備える。他の実施形態では鋼製橋桁2の桁フランジ端部を反力材とするように溝部23に対応する位置に押し出しボルト用ネジ穴27を設けてもよい。
背面ブロック(31、32)はさらに、本体ブロックと組み合わせて固定するように、本体ブロック21の固定ネジ挿入孔28に対応する位置に固定ネジ穴35を備える。
図4(a)を参照すると、コンクリートが除去され露出したずれ止め筋5の内、鋼製橋桁2の側端部に近い2本の背面に、背面ブロック31及び32を互いの突起部が組み合わさるように併設して設置し、設置した背面ブロック(31、32)と組み合わせるように本体ブロック21を設置する状態を示す。
次いで図4(b)に示すようにモルタル注入パイプ29により注入孔25から凹部22及び33で形成される空間にモルタル30を注入して硬化させる。モルタル30は15時間で40N/mm2の強度が発現する可塑性の無収縮材を使用することで、短時間で必要な強度が得られる。
前述のようにコンクリートを除去した所定区間に亘り、鋼製橋桁2の側端部に近い1列のずれ止め筋5に対し、隣接する2本のずれ止め筋毎に補強部材20を設置することで当該所定区間の仮補強が完成する。
補強部材20は本体ブロック21と背面ブロック(31、32)との組み合わせ構造を有することで設置、撤去が容易であり、また撤去後は再利用が可能であるため一度必要数を製作すれば次回以降の工事費用の増加を防ぐことができる。
図5を参照すると、合成桁橋1の床版3の撤去作業は、道路を供用しながらの準備段階として段階S510にてウォータージェット装置10により床版ハンチ部4のコンクリート除去を行い、次いで段階S520にてコンクリート除去を行った部分に補強部材20を設置して仮補強を行う。床版ハンチ部4のコンクリート除去及び補強部材20の設置については以下で図6、7を用いて詳しく説明する。
図6のフローチャートは、コンクリート除去を開始する前に合成桁橋1の床版ハンチ部4の側方に、橋軸方向移動台12と直角方向移動台14とを備え、ノズルを橋軸方向及び橋軸と直角方向に沿って自在に移動可能なウォータージェット装置10が設置されていることを前提としている。また前述のようにウォータージェットが有効に切削に寄与するようにするため、床版ハンチ部4の側面の傾斜部はウォータージェットが垂直に当たるように、予め機械的にはつりを行って垂直面が出ていることを前提としている。
図7を参照すると、段階S710にて、ずれ止め筋5の背面に補強部材20の背面ブロック(31、32)を設置する。補強部材20を設置するのは、鋼製橋桁2の側端部に近い1列のずれ止め筋5であり、実施形態ではずれ止め筋2本ずつに補強部材20を1つ設置するので、背面ブロックは隣接する2本のずれ止め筋5の一方の背面に背面ブロック31、他方の背面に背面ブロック32を設置する。この時背面ブロック(31、32)の凹部33が各々の前面に位置するずれ止め筋5に対向するように配置する。
本体ブロック21は、溝部23が鋼製橋桁2の桁フランジを挟み込むように取り付け、本体ブロック21の凹部33がずれ止め筋5を囲み込み、背面ブロック(31、32)の凹部33と対向するように位置合わせして固定ネジにより鋼製橋桁2の桁フランジに固定する。また本体ブロック21と背面ブロック(31、32)も固定ネジにより固定する。これによりずれ止め筋5を個別に囲い込む空間が形成される。
所定区間内の鋼製橋桁2の側端部に近い1列のずれ止め筋5全てに補強部材20を設置し終えると補強部材20の設置を終了する(段階S740)。
段階S510〜段階S530の間は、床版撤去の準備期間であり、床版の上面を維持したまま行い道路として供用することができる。
橋桁直上の部分を後から処理する従来方法と異なり、本発明による実施形態では先に橋桁直上の部分のコンクリートを除去してしまうため、橋桁直上部の周囲で床版を切り分ける必要がなく、床版3の切断位置に制約はない。そこで床版3を搬出できる限界の大きさのプロックに切断することで、撤去する床版3の総切断距離を短くすることができる。
段階S560の不要なずれ止め筋5とは、床版3がずれ落ちたりしないように支持する必要最低限のずれ止め筋5以外のずれ止め筋5である。ずれ止め筋5の切断には狭隘部でも短時間で切断でき、更に近接する桁フランジに熱変質が生じないプラズマ切断を使用する。
最後に切り離した床版ブロックを搬出して(段階S580)、床版撤去を終了する。
2 鋼製橋桁
3 床版
4 床版ハンチ部
5 ずれ止め筋
10 ウォータージェット装置
11 走行架台
12 橋軸方向移動台
13 直角方向架台
14 直角方向移動台
15 前方噴射ノズル
16 側方噴射ノズル
20 補強部材
21 本体ブロック
22、33 凹部
23 溝部
24、35 固定ネジ穴
25 注入孔
26、34 テーパ部
27 押し出しボルト用ネジ穴
28 固定ネジ挿入孔
29 モルタル注入パイプ
30 モルタル
31、32 背面ブロック
Claims (5)
- 床版の上面を維持したまま床版ハンチ部の側方から床版ハンチ部のコンクリートをウォータージェットで所定の区間除去する段階と、
コンクリートを除去した区間に補強部材を設置する段階と、
床版上の通行を止めた後、補強部材を撤去して床版を撤去する段階とを有し、
前記コンクリートを所定の区間除去する段階と補強部材を設置する段階とを区間を変えながら繰り返し、床版を撤去する区間の床版ハンチ部のコンクリートを除去することを特徴とする合成桁橋の床版の撤去方法。 - 前記床版ハンチ部のコンクリートをウォータージェットで所定の区間除去する段階は、
ウォータージェットのノズルを橋軸方向に往復移動して合成桁橋の床版ハンチ部の一側面をずれ止め筋1列目が見えるまでコンクリートを切削除去する段階と、
ウォータージェットのノズルを隣接するずれ止め筋の間を橋軸直角方向に移動しながら合成桁橋の床版ハンチ部の他側面に至るまでコンクリートを切削除去する段階と、
ノズルを延伸方向に対し直角方向に噴出するノズルに交換して橋軸直角方向に配列するずれ止め筋の間のコンクリートを切削除去する段階と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の合成桁橋の床版の撤去方法。 - 前記補強部材を設置する段階は、
ずれ止め筋の背面に対向する凹部を備える複数の背面ブロックをずれ止め筋の背面に凹部が対向するように設置する段階と、
橋桁の桁フランジを挟み込むための溝部と背面ブロックの凹部に対応してずれ止め筋を囲い込むための複数の凹部を備える本体ブロックを桁フランジに設置して本体ブロックのそれぞれの凹部がずれ止め筋を囲い込むように複数の背面ブロックと組み合わせる段階と、
ずれ止め筋を囲い込む空間にモルタルを注入してずれ止め筋と補強部材とを固定する段階とを含むことを特徴とする請求項1に記載の合成桁橋の床版の撤去方法。 - 前記補強部材を撤去して床版を撤去する段階は、
補強部材を撤去する段階と、
床版をブロック状に切断する段階と、
床版ブロックの固定に必要なずれ止め筋以外のずれ止め筋を切断する段階と、
床版ブロックを吊り上げた状態で残りのずれ止め筋を切断して床版ブロックを搬出する段階と、を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の合成桁橋の床版の撤去方法。 - 合成桁橋の床版の撤去の際、コンクリートを除去した区間の補強に使用する補強部材であって、
橋桁の桁フランジを挟み込むための溝部と、ずれ止め筋を囲い込むための複数の凹部と、凹部にモルタルを注入するための注入孔と、を含む本体ブロックと、
本体ブロックの個々の凹部に対向し、ずれ止め筋を囲い込む空間を形成するための複数の背面ブロックと、を有することを特徴とする補強部材。
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