JP2019104193A - 積層体及びそれを用いた包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、接着性及びボイル・レトルト適性に優れた積層体を提供することである。また、それを用いた包装体を提供することである。【解決手段】本発明の積層体は、基材フィルム1上にインク受容層2、接着層及びラミネートフィルムを有する積層体であって、前記インク受容層2が、水分散性樹脂を含有し、前記インク受容層2が、温度25℃の環境下、下記2要件(a)及び(b)を満足することを特徴とする。(a)表面エネルギーの水素結合項が、40mN/m以下である。(b)ナノインデンテーション法による硬度が、350N/mm2以下である。【選択図】図1

Description

本発明は積層体及び包装体に関する。より詳しくは、接着性及びボイル・レトルト適性に優れた積層体及びそれを用いた包装体に関する。
近年、軟包装分野では、小ロット多品種化の流れがあり、インクジェット記録方法などのデジタル印刷が注目されている。
軟包装分野の中でも、ボイル・レトルト分野は、包装を高温殺菌する工程が必要であり、より高いレベルの製品が必要とされる分野である。具体的には、高い接着性を有し、高温の水環境下でも基材フィルムの接着性が優れたボイル・レトルト適性が要求される。
既存のインクジェット記録方法の中で、プレコート層を用いて非吸水性記録媒体に対する定着性を向上させることは知られているが(例えば特許文献1参照。)、必ずしもボイル・レトルト分野の要求を満たしているものはなく、特に高温の水環境下における基材フィルムの接着性が不十分であった。
特開2014−19811号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、接着性及びボイル・レトルト適性に優れた積層体を提供することである。また、それを用いた包装体を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、インク受容層の表面の表面エネルギーの水素結合項とナノインデンテーション法による硬度が特定範囲内であるとき、高温の水環境下でも基材フィルムの接着性が優れた積層体が得られることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基材フィルム上にインク受容層、接着層及びラミネートフィルムを有する積層体であって、
前記インク受容層が、水分散性樹脂を含有し、
前記インク受容層が、温度25℃の環境下、下記2要件(a)及び(b)を満足することを特徴とする積層体。
(a)表面エネルギーの水素結合項が、40mN/m以下である。
(b)ナノインデンテーション法による硬度が、350N/mm以下である。
2.前記表面エネルギーの水素結合項が、20mN/m以下であることを特徴とする第1項に記載の積層体。
3.前記ナノインデンテーション法による硬度が、300N/mm以下であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の積層体。
4.前記ナノインデンテーション法による硬度が、250N/mm以下であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の積層体。
5.前記水分散性樹脂が、カーボネート部位を有するウレタン樹脂、エステル部位を有するウレタン樹脂、エーテル部位を有するウレタン樹脂、ウレタン・アクリル複合樹脂及びウレタン・オレフィン複合樹脂のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の積層体。
6.前記ナノインデンテーション法による硬度が200N/mm以下であり、かつ前記表面エネルギーの水素結合項が13mN/m以下の範囲内であるか、又は
前記ナノインデンテーション法による硬度が125N/mm以下であり、かつ前記表面エネルギーの水素結合項が20mN/m以下あることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の積層体。
7.前記ナノインデンテーション法による硬度が125N/mm以下であり、かつ前記表面エネルギーの水素結合項が13mN/m以下であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の積層体。
8.前記ラミネートフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム及び直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の積層体。
9.第1項から第8項までのいずれか一項に記載の積層体を有する包装体。
本発明の上記手段により、接着性及びボイル・レトルト適性に優れた積層体を提供することができる。また、それを用いた包装体を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
インク受容層の水素結合項が低いことで、基材フィルムに対する親和性が向上し、水に対するバリア性が高く、インク受容層の性能を維持しやすいと考えられる。
一方でボイル・レトルト処理では、インク受容層の硬度を低くすることで、ラミネートフィルムの収縮応力が生じた場合でも、応力に追従しやすくなり、そのため基材フィルムとインク受容層の剥離がしにくくなるのではないかと推察している。
ナノインデンテーション法による硬度の測定の説明に供する説明図である。 同じく典型的な荷重−変位曲線の説明図である。 同じくインク受容層の表面プロファイルの一例の説明図である。
本発明の積層体は、基材フィルム上にインク受容層、接着層及びラミネートフィルムを有する積層体であって、前記インク受容層が、水分散性樹脂を含有し、前記インク受容層が、温度25℃の環境下、前記2要件(a)及び(b)を満足することを特徴とする。この特徴は、下記各実施態様(形態)に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記表面エネルギーの水素結合項が、3〜20mN/m以下であることが好ましい。
また、前記ナノインデンテーション法による硬度が、300N/mm以下であることが好ましく、より好ましくは250N/mm以下である。これにより基材追従性及び柔軟性が向上し、剥離強度の向上の効果が得られる。
さらに、本発明においては、前記水分散性樹脂が、カーボネート部位を有するウレタン樹脂、エステル部位を有するウレタン樹脂、エーテル部位を有するウレタン樹脂、ウレタン・アクリル複合樹脂及びウレタン・オレフィン複合樹脂のうちの少なくとも1種を含有することが好ましい。これにより、均一な被膜形成が可能で、剥離強度の向上が期待され、ソフトセグメントとハードセグメントからなるウレタン樹脂であることで、ソフトセグメントが、インクが着弾した際に適度に膨潤しインクの定着性を補助するとともに、ハードセグメントの存在で密着性を確保することができる。
本発明の実施態様としては、さらに、前記ナノインデンテーション法による硬度が200N/mm以下であり、かつ前記表面エネルギーの水素結合項が13mN/m以下であるか、又は前記ナノインデンテーション法による硬度が125N/mm以下であり、かつ前記表面エネルギーの水素結合項が20mN/m以下であることが好ましい。これにより疎水的かつ柔軟性の向上により、ボイル・レトルト適性の向上の効果が得られる。
さらに、本発明においては、前記ナノインデンテーション法による硬度が125N/mm以下であり、かつ前記表面エネルギーの水素結合項が13mN/m以下であることが好ましい。
また、前記ラミネートフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム及び直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなる群から選ばれるいずれかであることがラミネート強度を得る観点から好ましい。
本発明の積層体は、包装体に好適に具備され得る。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
なお、本発明におけるボイル・レトルト適性とは、殺菌処理等の目的で高温の水環境下におかれた際の、積層体の接着性に対する適性をいう。例えば、80〜100℃程度の水環境下での加熱殺菌で行われても接着性が優れていることが望まれている。
《積層体の概要》
本発明の積層体は、基材フィルム上にインク受容層、接着層及びラミネートフィルムを有する積層体であって、前記インク受容層が、水分散性樹脂を含有し、前記インク受容層が、温度25℃の環境下、下記2要件(a)及び(b)を満足することを特徴とする。
(a)表面エネルギーの水素結合項が、40mN/m以下である。
(b)ナノインデンテーション法による硬度が、350N/mm以下である。
〔インク受容層〕
本発明に係るインク受容層は、水分散性樹脂を含有し、前記2要件(a)及び(b)を満足することを特徴とする。このような構成とすることで、本発明らは、接着性及びボイル・レトルト適性に優れた積層体を得ることができることを見いだした。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、以下のように推察している。
本発明において、表面エネルギーの水素結合項が、40mN/m以下である。インク受容層の水素結合項が、このように低いことで、極性の低い非吸水基材である基材フィルムに対する親和性が向上することに加え、水に対するバリア性が高く、高温の水が存在するボイル・レトルト処理の環境下でもインク受容層の水分散性樹脂膜の性能を維持しやすいと考えられる。
一方でボイル・レトルト処理ではラミネートしているフィルムの収縮応力が生じるため、その応力を緩和する必要がある。そのため硬い水分散性樹脂を使用してしまうと応力の緩和ができず基材フィルムへの追従が保てないため剥離すると考えられる。つまりインク受容層の硬度がある値より低いことで、ラミネートフィルムの収縮応力が生じた場合でも、インク受容層が応力の緩和をしながら基材フィルムへ追従し、剥離しにくくなるのではないかと考えている。
したがって前記2要件(a)及び(b)の物性を有することが必要なのではないかと推察している。
表面エネルギーの水素結合項は、上記観点から低い方が好ましく、20mN/m以下がより好ましく、13mN/m以下であることがさらに好ましい。表面エネルギーの水素結合項の下限に特に制限はないが、3mN/m以上であることが、例えばPETなどのようにやや極性的な基材であっても密着性が劣ることはないため好ましい。
また、ナノインデンテーション法による硬度は、上記観点から低い方が好ましく、300N/mm以下がより好ましく、250N/mm以下であることがさらに好ましい。125N/mm以下であることが最も好ましい。ナノインデンテーション法による硬度の下限に特に制限はないが、インク受容層自体の保持性能の観点から25N/mm以上であることが好ましい。
(表面エネルギーの水素結合項)
本発明におけるインク受容層の表面エネルギーの水素結合項は、次のようにして算出できる。
下記式1(Youngの式)及び式2(Fowkes式の拡張式)により、表面エネルギーが既知の3種類の溶媒と記録媒体の記録面の接触角から記録面の表面エネルギーの分散項γ、極性項γ、水素結合項γを算出することができる。
本発明においては、接触角の測定溶媒として水、炭酸プロピレン及びn−ノナンの3種を用い、温度25℃の環境下、市販の接触角測定装置で各々接触角を5回測定し平均を求めた。この平均値及び表1に示す各溶媒のγ 、γ 、γ の値を用いて、インク受容層の表面エネルギーと水素結合項γを算出した。ただし、溶媒の表面張力のデータは「コーティングの基礎化学」(槇書店)、Journal of Colloid and Interface Science,Vol.44,p.144(1973)のデータを用いた。
式1 γ=γSL+γcosθ
式2 γSL=γ+γ−2(γ・γ 1/2−2(γ・γ 1/2−2(γ・γ 1/2
γ:固体の表面エネルギー
γSL:固体−溶媒の界面エネルギー
γ:溶媒の表面エネルギー
γ :溶媒の表面エネルギーの分散項
γ :溶媒の表面エネルギーの極性項
γ :溶媒の表面エネルギーの水素結合項
θ:接触角
Figure 2019104193
このような水素結合項を制御したインク受容層の作製は、後述するインク受容層中の水分散性樹脂や添加剤種類、その使用量などを制御することにより可能である。
(ナノインデンテーション法による硬度)
本発明に係るナノインデンテーション法による硬度の測定は、環境温度25℃で行われる。例えば、ナノインデンター(エリオニクス社製ENT−1100a)などを用いて行うことができる。
ここで、ナノインデンテーション法による硬度の測定について図1を参照して説明する。図1はナノインデンテーション法により硬度及び弾性率を測定する測定方法の一例の説明に供する模式的説明図である。
ナノインデンテーション法による硬度の測定は、微小なダイヤモンド圧子を薄層に押し込みながら荷重と押し込み深さ(変位量)の関係を測定し、測定値から塑性変形硬度を算出する方法である。
具体的には、図1に示すように、基材フィルム1上にインク受容層2が製膜されている。
そこで、トランスデューサー3と先端形状が正三角形のダイヤモンドBerkovich圧子4を用いて、μNオーダーの荷重を加えながら、ナノメートルの精度でインク受容層2の最表面の変位量を測定する。
このナノインデンテーション法により硬度及び弾性率を測定したときに得られる典型的な荷重−変位曲線を図2に示している。
次に、図3を参照して硬度の算出について説明する。図3は試料であるインク受容層に圧子を接触させた負荷をかけたとき及び圧子を離間させて除荷したときのインク受容層の表面プロファイルを説明する説明図である。
ここで、インク受容層2のナノインデンテーション法による表面の硬度Hは、次の(1)式から求めることができる。
(1) H=Pmax/A
なお、(1)式において、Pmaxは、圧子に加えられた最大荷重であり、Aはそのときの圧子と試料(インク受容層)間の接触射影面積である。
接触射影面積Aは、図3におけるhcを用いて、次の(2)式で表すことができる。
(2) A=24.5hc
ここで、hcは、図3に示すように、接触点の周辺表面の弾性へこみにより、全体の押し込み深さhより浅くなり、次の(3)式で表される。
(3) hc=h−hs
ここで、hsは、弾性によるへこみの量であり、圧子4の押し込み後の荷重曲線の勾配(図2の勾配S)と圧子の形状から、次の(4)式で表される。
(4) hs=ε×P/S
ここで、εは圧子4の形状に関する定数で、Berkovich圧子では0.75である。
このような測定装置を用いて硬度を測定することができる。
測定条件は、次のとおりである。
測定機:エリオニクス社製ENT−1100a
測定圧子:先端形状が正三角形のダイヤモンドBerkovich圧子
測定環境:25℃、50%RH
測定試料:1cm×1cmの大きさに試料を切断し、ホルダーに固定
押し込み速度:5.882μN/sec
押し込み加重:30μN
なお、測定は、各試料ともランダムに5点測定し、その平均値をナノインデンテーション法により測定した硬度とした。
(水分散性樹脂)
インク受容層は、水分散性樹脂を含有している。本発明で使用する水分散性樹脂は、いわゆるインクジェット用のインク(インクジェット記録インク)を受容でき、インクに対して溶解性又は親和性を示す樹脂である。
水分散性樹脂とは、本来水不溶性であるが、ミクロな微粒子として樹脂が水系媒体中に分散する形態を有するものであり、乳化剤等を用いて強制乳化させ水中に分散している非水溶性樹脂、又は、分子内に親水性の官能基を導入して、乳化剤や分散安定剤を使用することなくそれ自身で安定な水分散体を形成する自己乳化できる非水溶性樹脂がある。これらの樹脂は通常、水又は水/アルコール混合溶媒中に乳化分散させた状態で用いられる。
本発明に係る水分散性樹脂を含有するインク受容層は前記要件(a)及び(b)を満たしていれば、水分散性樹脂に制約はないが、水分散性樹脂が、ウレタン樹脂を含有することが好ましい。ウレタン樹脂としては、カーボネート部位を有するウレタン樹脂、エステル部位を有するウレタン樹脂、エーテル部位を有するウレタン樹脂、ウレタン・アクリル複合樹脂及びウレタン・オレフィン複合樹脂のうちの少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの中では、耐水性、基材追従性の観点から、ウレタン・オレフィン複合樹脂が好ましい。
カーボネート部位を有するウレタン樹脂、エステル部位を有するウレタン樹脂、エーテル部位を有するウレタン樹脂、ウレタン・アクリル複合樹脂及びウレタン・オレフィン複合樹脂の例及びその合成法は、特開2017−171904号公報及び特開平2−238015号公報等に記載されている。
例えばウレタン・オレフィン複合樹脂の例と合成例は特開2009−13226号公報、特開2009−46568号及び特開2016−60852号公報等に記載されている。
これらの樹脂は他のモノマーを用いた共重合体でもよい。モノマー等の組成比等を制御して、インク受容層としたとき前記要件(a)及び(b)を満たすように制御することができる。
水分散性樹脂の重量平均分子量は10000〜1000000の範囲内であることが好ましい。
これらのウレタン樹脂は市販品から求めることができる。例えば、ユーコートUWS−145、UX−390(以上、三洋化成工業社製)、スーパーフレックス150、同210、同820(以上、第一工業製薬社製)、WEM505、WEM−3008、WBR2101(以上、大成ファインケミカル社製)、ST053−D(宇部興産社製)、R−9699(楠本化成社製)及びユリアーノW600(荒川化学工業社製)などを挙げることができる。
インク受容層には、各種の添加剤を添加することができる。中でもカチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。
カチオン媒染剤としては、第1〜3級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましく用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いこと等から、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。好ましいポリマー媒染剤は、上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体又は縮重合体として得られる。カチオン媒染剤の具体例は、例えば、「インクジェットプリンター技術と材料」268頁(シーエムシー社)に記載されている。
さらに、例えば特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載の退色防止剤、アニオン、カチオン又は非イオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報及び特開平4−219266号公報等に記載の蛍光増白剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤等、公知の各種添加剤を含有させることもできる。
上記以外に、インクジェット記録インクと接触したときに、凝集物を生じさせる材料、すなわち凝集剤を含有することができる。インクジェット記録インクとの相互作用が大きくなり、水溶性インクのドットをより固定化できる点で好ましい。
凝集剤は、カチオン性樹脂、金属キレート剤、多価金属塩及び有機酸のいずれかを含有することが好ましく、多価金属塩及び有機酸のいずれかを含有することがより好ましい。
上記カチオン性樹脂及び多価金属塩は、塩析によって上記インクジェット記録インク中のアニオン性の成分(通常は色材、又は顔料等)を凝集させることができる。上記有機酸は、pH変動によって上記インクジェット記録インク中のアニオン性の成分を凝集させることができる。
上記カチオン性樹脂の例には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどが含まれる。
上記金属キレート剤の例には、アルミニウム、亜鉛、カドミウム、ニッケル、コバルト、銅、カルシウム、バリウム、チタン、マンガン、鉄、鉛、ジルコニウム、クロム、スズ等の金属に窒素含有基を有するアセ チルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、サリチル酸メチル等が配位した金属キレート化合物などが含まれる。
上記多価金属塩の例には、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩及び亜鉛塩などの水溶性の塩が含まれる。
前処理液が含有する有機酸は、インクジェット記録インク中に含まれうる顔料を凝集し得るものであり、第一解離定数が3.5以下であることが好ましく、1.5〜3.5の範囲内が好ましい。当該範囲内であると印字率が低い低濃度部における液寄りが更に防止され、印字率が高い高濃度部におけるビーディングが更に改善される。
有機酸は、塩基により完全には中和されていないものを用いることが好ましい。塩基による中和とは、これらの酸の酸性基と、正に帯電した他の元素又は化合物(例えば、金属などの無機化合物)と、がイオン結合していることを意味する。また、完全には中和されていないとは、有機酸が有する酸性基のうち、上記イオン結合を形成していない酸性基が存在することを意味する。イオン結合を形成していない酸性基を有する有機酸を用いることで、前処理液に含むポリウレタン構造を有する複合樹脂粒子との相溶性が高く、透明な前処理層を形成することができることから、多価金属塩などを用いる場合よりも、形成された画像の色調が鮮やかになると考えられる。また、有機酸を用いることで前処理液の保存安定性を維持しやすく、前処理液を塗布、乾燥した後にブロッキングが起きにくい。上記観点から好ましい有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、シュウ酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、安息香酸、2−ピロリドン−5−カルボン酸、乳酸、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、又は、アクリルアミド及びその誘導体などを含むカルボキシ基を有する化合物、スルホン酸誘導体、又は、リン酸及びその誘導体などが含まれる。
前処理液における有機酸の含有量は、前処理液のpHを前記有機酸の第一解離定数未満に調整する量であればよい。処理液のpHが前記有機酸の第一解離定数未満となる量の有機酸を前処理液に含有させることにより、高速プリント時の滲みを効果的に抑制できる。
本発明に係るインク受容層は、インク受容層を形成する塗工液を基材フィルム上に直接塗布することにより作製することが好ましい。ここでインク受容層に好ましく用いられる添加剤は十分に分散してから、塗工液として用いることが好ましい。
インク受容層の塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許2681294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
〔基材フィルム〕
本発明に用いることができる基材フィルムは特に限定されないが、耐熱性を有する吸水性の低い記録媒体、及び非吸水性の媒体である、フィルム、プラスチックボード(軟質塩化ビニル、硬質塩化ビニル、アクリル板、ポリオレフィン系など)などを用いることができる。
非吸水性の基材フィルムの例としては、公知のプラスチックフィルムが使用できる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ乳酸フィルム等の生分解性フィルム等が挙げられる。また、ガスバリア性、防湿性、保香性などを付与するために、フィルムの片面又は両面にポリ塩化ビニリデンをコートしたものや、金属酸化物を蒸着したフィルムも好ましく用いることができる。非吸水性フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも好ましく用いることができる。これらの中では、耐熱性の観点から、ポリエステルフィルムが、好ましくポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
本発明においては、基材フィルムは、厚さが、好ましくは10〜120μm、より好ましくは12〜60μmである。
基材フィルムは、その表面に濡れ性やガス透過性を制御するため、表面加工されていても良い。
〔ラミネートフィルム〕
本発明で用いられるラミネートフィルム材料は、耐熱性を有するフィルムであれば特に制限はなく、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン、芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリパラバン酸、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂を用いたフィルムなどが挙げられる。
これらの中では、ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム及び直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなる群から選ばれるいずれかであることが通気性やピンホール耐性など積層体の機能性の観点から好ましい。
ラミネート加工方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出しラミネーション等公知のラミネーションを用いることが可能である。
ドライラミネーション方法は、具体的には、基材フィルムの一方に後述する接着剤をグラビアロール方式で塗工後、もう一方のインク受容層を重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせる。またノンソルベントラミネーションは基材フィルムに予め室温〜120℃程度に加熱しておいた前記接着剤を室温〜120℃程度に加熱したロールコーターなどのロールにより塗布後、直ちにその表面に新たなフィルム材料を貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。
押出しラミネート法の場合には、基材フィルムに接着補助剤(アンカーコート剤)として前記接着剤の有機溶剤溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、室温〜140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行なった後に、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることによりラミネートフィルムを得ることができる。
このようにして得られた積層体を食品用の包装材料として使用する場合は、厚さが300μm以下となるように、使用するプラスチックフィルム、インク層の厚さ、接着層の厚さをコントロールすることが好ましい。
〔接着層〕
本発明では、上記ラミネートフィルムとインク受容層とを接着するために、接着層が設けられる。
接着層に用いられる接着剤としては、公知のものが使用でき、それ自身常温で接着性又は粘着性を有するもの、熱や圧力を掛けることにより接着性又は粘着性を発現するもののいずれでもよく、例えば、低軟化点の樹脂、接着性付与剤、熱溶剤を適宜選択することにより形成することができる。
低軟化点の樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−エチルアクリレート等のエチレン共重合体;スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、スチレン−エチレン−ブチレン等のポリスチレン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリビニルエーテル系樹脂;ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;アイオノマー樹脂;セルロース系樹脂;エポキシ系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂等が挙げられ、接着性付与剤としては、ロジン、水添ロジン、ロジンマレイン酸、重合ロジン及びロジンフェノール等の未変性若しくは変性物、テルペン並びに石油樹脂及びそれらの変性物等が挙げられる。
熱溶剤としては、常温で固体であり、加熱時に可逆的に液化又は軟化する化合物が挙げられ、具体的には、テルピネオール、メントール、アセトアミド、ベンズアミド、クマリン、ケイ皮酸ベンジル、ジフェニルエーテル、クラウンエーテル、カンファー、p−メチルアセトフェノン、バニリン、ジメトキシベンズアルデヒド、p−ベンジルビフェビル、スチルベン、マルガリン酸、エイコサノール、パルミチン酸セチル、ステアリン酸アミド、ベヘニルアミン等の単分子化合物、蜜ロウ、キャンデリラワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンロウ、カルナバワックス、アミドワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックス類、エステルガム、ロジンマレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂等のロジン誘導体、フェノール樹脂、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、テルペン系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオレフィンオキサイド等に代表される高分子化合物等を挙げることができる。
さらに、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として芳香族系や脂肪族系の2官能以上のイソシアネート化合物を作用させた2液硬化型のポリウレタン系接着剤を用いることもできる。2液硬化型のポリウレタン系接着剤の市販品としては、例えば、三井化学株式会社製タケラックA969V(主剤)/タケネートA5(硬化剤)、タケラックA520(主剤)/タケネートA50(硬化剤)、タケラックA626(主剤)/タケネートA50(硬化剤)、タケラックA616、(主剤)/タケネートA65(硬化剤)、タケラックA310(主剤)/タケラックA3(硬化剤)、タケネートA1143(主剤)/タケラックA3(硬化剤)等が挙げられる。中でもタケラックA626(主剤)/タケネートA50(硬化剤)が、ボイル・レトルト適性の観点から好ましい。
上記接着剤は、その形成成分を溶媒に分散或いは溶解して塗工液を調製し、この塗工液を前記ラミネートフィルム上に塗布し乾燥して作製することができきる。塗工に用いる溶媒としては、水、アルコール類(例えばエタノール、プロパノール)、セロソルブ類(例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ)、芳香族類(例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン)、エステル系溶剤(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル)、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン)、塩素系溶剤(例えばクロロホルム、トリクロルエチレン)、アミド系溶剤(例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン)、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
〔ラミネート方法〕
本発明において、インク受容層上に接着層を有するラミネートフィルムをラミネートする方法としては、インク受容層面と接着層面とを対向させて、加圧又は加熱加圧処理をして接着させる。その方法としては、密着性が稼げて気泡等が混入せずに、加圧又は加熱加圧処理できるものであれば、特に制限なく用いることができ、加圧する場合には、例えば、圧力ロールやスタンパー等を、加熱加圧処理する場合には、例えば、サーマルヘッド、ヒートロール、ホットスタンプ等を用いることができる。
また、ラミネートに際し、熱線や熱風などによる乾層を行ってからラミネートを行うことが好ましい。
〔インク〕
次に、本発明に係るインクジェット記録インク(「記録インク」又は単に「インク」ともいう)について詳しく説明する。
記録インクに含有される顔料としては、アニオン性の分散顔料、例えば、アニオン性の自己分散性顔料や、アニオン性の高分子分散剤により顔料を分散したものを用いることができ、特に、アニオン性の高分子分散剤により顔料を分散したものが好適である。
顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、酸化チタン等の無機顔料を好ましく用いることができる。
なお、インク吐出安定性と密着性の確保が一般に困難な酸化チタンにおいて、本発明により特に好適に滲みを生じにくくし、かつ、密着性を高めることができる。
酸化チタンには、アナターゼ型、ルチル型及びブルーカイト型の三つの結晶形態があるが、汎用なものとしてはアナターゼ型とルチル型に大別できる。特に限定するものではないが、屈折率が大きく隠蔽性が高いルチル型が好ましい。具体的には、富士チタン工業株式会社のTRシリーズ、テイカ株式会社のJRシリーズや石原産業株式会社のタイペークなどが挙げられる。
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
好ましく用いることのできる具体的な有機顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155等が挙げられる。特に色調と耐光性のバランスにおいて、C.I.ピグメントイエロー155が好ましい。
グリーン又はシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
顔料を分散させるために用いる分散剤は、格別限定されないがアニオン性基を有する高分子分散剤が好ましく、分子量が5000以上、200000以下のものを好適に用いることができる。
高分子分散剤としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体に由来する構造を有するブロック共重合体、ランダム共重合体及びこれらの塩、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等を挙げることができる。
高分子分散剤は、アクリロイル基を有することが好ましく中和塩基で中和して添加することが好ましい。ここで中和塩基は特に限定されないが、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等の有機塩基であることが好ましい。特に、顔料が酸化チタンであるとき、酸化チタンは、アクリロイル基を有する高分子分散剤で分散されていることが好ましい。
また、高分子分散剤の添加量は、顔料に対して、10〜100質量%であることが好ましく、10〜40質量%の範囲がより好ましい。
顔料は、顔料を上記高分子分散剤で被覆した、いわゆるカプセル顔料の形態を有することが特に好ましい。顔料を高分子分散剤で被覆する方法としては、公知の種々の方法を用いることができるが、例えば、転相乳化法、酸析法、あるいは、顔料を重合性界面活性剤により分散し、そこへモノマーを供給し、重合しながら被覆する方法などを好ましく例示できる。
特に好ましい方法として、水不溶性樹脂を、メチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解し、さらに塩基にて樹脂中の酸性基を部分的、もしくは完全に中和後、顔料及びイオン交換水を添加し、分散したのち、有機溶剤を除去し、必要に応じて加水して調製する方法を挙げることができる。
記録インク中における顔料の分散状態の平均粒子径は、50nm以上、200nm未満であることが好ましい。これにより、顔料の分散安定性を向上でき、記録インクの保存安定性を向上できる。顔料の粒子径測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、且つ該粒子径領域を精度よく測定できる。
顔料は、分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物と共に、分散機により分散して用いることができる。
分散機としては、従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等を使用できる。中でもサンドミルによって顔料を分散させると、粒度分布がシャープとなるため好ましい。また、サンドミル分散に使用するビーズの材質は、格別限定されないが、ビーズ破片の生成やイオン成分のコンタミネーションを防止する観点から、ジルコニア又はジルコンであることが好ましい。さらに、このビーズ径は、0.3mm〜3mmであることが好ましい。
記録インクにおける顔料の含有量は格別限定されないが、酸化チタンについては、7〜18質量%の範囲が好ましく、有機顔料については0.5〜7質量%が好ましい範囲である。
記録インクに含有される有機溶剤としては、水溶性の有機溶剤を好適に用いることができる。水溶性の有機溶剤としては、例えば、アルコール類、多価アルコール類、アミン類、アミド類、グリコールエーテル類、炭素数が4以上である1,2−アルカンジオール類などを好ましく例示できる。
本発明に係る記録インクは、必要に応じて、界面活性剤、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤を含有することができる。
〔インクジェット画像形成〕
本発明の積層体は、インク受容層にインクジェット記録方法により得られた印刷物の上に、更に接着層、及びラミネートフィルムをこの順で有することが好ましい。
インク受容層にプリントしてインクジェット画像を形成するには、公知の方式のインクジェットプリンターを用いることができる。
本発明において使用できるインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等などいずれの吐出方式を用いてもかまわない。
記録媒体の搬送速度は、例えば1m/min以上120m/minの間で設定することができる。搬送速度が速いほど画像形成速度が速まる。本発明によれば、シングルパスのインクジェット画像形成方法で適用可能な、線速50m/min以上120m/min以下という非常に速い線速でも滲みの発生をより抑制し、かつ、密着性の高い画像を得ることができる。
〔包装体〕
本発明の包装体は本発明の積層体を有する。包装体は軟包装用の例えば包装パッケージとして使用することができる。パッケージの用途により、多層構造のフィルムとすることもできる。また、パッケージの強度向上、酸素遮断等の目的で、AL(アルミニウム箔)、VMフィルム(アルミ蒸着フィルム、透明蒸着フィルム)等を多層構造に組み込むことも可能である。
〔包装体の製造方法〕
包装体は公知の方法で製造することができる。例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムからなる基材フィルム上にインク受容層を設け、インクジェットプリントを行い乾燥させ印刷物を作成する。次に上記印刷物に接着剤をローラー塗布法により塗布し、乾燥させる。用いる食品包装の用途に応じて中使い用機能性フィルム、アルミシート、をラミネートすることができる。この方式はドライラミネート法である。
他にもノンソルベントラミネート等、ラミネートの方式はあるが、ボイルレトルト用途の食品包装に関してはドライラミネートが好ましい。次にラミネートフィルムを同上の接着剤・ラミネート方式によりラミネートする。必要に応じて、各層がラミネートされた積層フィルムを40℃2日間、エージングを行うこともできる
各種包袋機を使用し、上記作成した積層フィルムを公知の方法により袋化する。形状として特に制限はないが、例えば、ピロー包装や、三方シール袋や、合掌張袋等ある
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
〔実施例1〕
〈ウレタン・オレフィン複合樹脂aの合成〉
<ウレタンプレポリマー溶液A−1の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリエステルポリオール(商品名テスラック 2461、日立化成(株)製)を182質量部と、ポリエチレングリコール(PEG、分子量600、商品名PEG600、第一工業製薬(株))を22.0質量部と、トリメチロールプロパンを5.6重量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを43.8質量部と、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを204質量部と、メチルエチルケトン(MEK)216質量部を反応容器にとり(三級アミンの添加量9.6質量%、PEGの添加量4.8質量%)、75℃に保ちながら反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を46.4質量部添加し、50〜60℃で30〜60分間反応させて、NCO含有率が2.2%であり、不揮発分約50%であるカチオン性ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液A−1を得た。
<複合樹脂粒子分散体B−1の調製>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリオレフィン系樹脂(商品名:アウローレン150S、日本製紙(株)製)80.0質量部、メチルシクロヘキサン240.0質量部及びメチルエチルケトン48.0質量部を投入し、80℃に昇温して加熱溶解させた。溶解後、内温を40℃に保ち、ポリウレタン系樹脂水分散体A−1(不揮発分約50%)40.0質量部を添加し、混合した。この溶液に58.0質量部の水を加え、ホモジナイザーを使用して乳化した後、570質量部の水を徐々に加え希釈し、これにエチレンジアミン1.0質量部と水12質量部を混合した水溶液を徐々に添加し、1時間撹拌してポリマー化を行った。これを50℃減圧下、脱溶剤を行い、不揮発分(粒子としての固形分)約30質量%の複合樹脂粒子分散体B−1を得た。得られた分散体の樹脂をウレタン・オレフィン複合樹脂aとした。
〈ウレタン・オレフィン複合樹脂bの合成〉
上記ウレタンプレポリマー溶液A−1の合成及び複合樹脂粒子分散体B−1の調製において、ポリエステルポリオール(商品名テスラック 2461、日立化成(株)製)を使用した代わりに、ポリエーテルポリオール(PolyTHF2000、BASF(株))を使用した以外は同様にして、ウレタン・オレフィン複合樹脂bを得た。
〈ウレタン・オレフィン複合樹脂cの合成〉
上記ウレタンプレポリマー溶液A−1の合成及び複合樹脂粒子分散体B−1の調製において、ポリエステルポリオール(商品名テスラック 2461、日立化成(株)製)を使用した代わりに、ポリカーボネートポリオール(分子量1000、商品名ニッポラン981、日本ポリウレタン工業(株))を使用した以外は同様にして、ウレタン・オレフィン複合樹脂cを得た。
〈ウレタン樹脂aの合成〉
ウレタン樹脂aの合成を以下に示す。
ポリカーボネートポリオール(分子量1000、ニッポラン981、日本ポリウレタン工業株式会社)を13.7質量部と、ポリエチレングリコール(分子量600、第一工業製薬株式会社)を7.9質量部と、トリメチロールプロパンを0.34質量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを1.65質量部と、イソホロンジイソシアネートを9.85質量部とメチルエチルケトン(略称:MEK)30質量部とを反応容器にとり、70℃〜75℃に保ちながら5時間反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマーに硫酸ジメチルを1.66質量部添加し、55℃〜60℃で1時間反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。その後、水140質量部を均一に添加して乳化した後、MEKを回収することにより、カチオン性のポリウレタン樹脂aを得た。
〈ウレタン樹脂bの合成〉
ウレタン樹脂bの合成を以下に示す。
ポリカーボネートポリオール(分子量2000、UHC50−200、宇部興産株式会社)を18.81質量部と、ポリエチレングリコール(分子量600、第一工業製薬株式会社)を1.13質量部と、トリメチロールプロパンを0.47質量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを2.27質量部と、イソホロンジイソシアネートを7.72質量部とメチルエチルケトン(略称:MEK)30質量部とを反応容器にとり、70℃〜75℃に保ちながら5時間反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマーに硫酸ジメチルを2.28質量部添加し、55℃〜60℃で1時間反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。その後、水140質量部を均一に添加して乳化した後、MEKを回収することにより、カチオン性のウレタン樹脂bを得た。
《インク受容フィルム1の作製》
基材フィルムとして、厚さ50μmの太閤ポリエステルフィルムE5100上に、水分散性樹脂としてパラゾールPC−86(固形分30%、大原パラヂウム化学製)を用いた以下に示すコート液をバーナンバー#10塗布し、その後70℃で乾燥させ、厚さ3.2μmのインク受容層を基材フィルム上に有する記録媒体であるインク受容フィルム1を得た。
(コート液)
パラゾールPC−86 14質量部
水 86質量部
《インク受容フィルム2〜15の作製》
水分散性樹脂をパラゾールPC−86から表IIに示すように変更して、インク受容フィルム1と同様にして、水分散性樹脂が異なるインク受容フィルム2〜16を作製した。なお、表IIに示した水分散性樹脂の詳細は以下のとおりである。
UWS−145:ユーコートUWS−145(固形分35%、三洋化成工業製)
スーパーフレックス210(固形分35%、第一工業製薬製)
WEM505(固形分30%、大成ファインケミカル製)
WBR2101(固形分27%、大成ファインケミカル製)
UX−390(固形分30%、三洋化成工業製)
スーパーフレックス150(固形分30%、第一工業製薬製)
ST−053D(固形分30%、宇部興産製)
R−9699(固形分40%、楠本化成製)
WEM−3008(固形分30%、大成ファインケミカル製)
《積層体1〜15》
上記作製したインク受容フィルム1〜15上に、接着剤(タケラックA626/タケネートA50(三井化学))と厚さ15μmのラミネートフィルム(ナイロンフィルム:ONBC、ユニチカ社製)を用い、インク受容フィルムの水分散性樹脂を有する面とラミネートフィルムを接着した。このようにして基材フィルム、インク受容層、接着層及びラミネートフィルムをこの順で有する積層体1〜15を作製した。
《評価》
(水素結合項評価)
上記作製したインク受容フィルム1〜15の各インク受容層に対して、前述した評価法により、25℃の環境下、接触角を測定し、前記(1)式及び(2)式を用いて表面エネルギーの水素結合項γを算出した。
(ナノインデンテーション法による硬度の評価)
上記作製したインク受容フィルム1〜15の各インク受容層に対して、前述した評価法により25℃の環境下、ナノイデンテーション法による硬度の評価を行った。
(接着性)
上記作製したインク受容フィルム1〜15に対してクロスカット試験を行い、試験後25マス中の残ったマスの数で接着性を評価し以下のランク付けを行った。
試験条件
インク受容フィルムのインク受容層表面に、25℃環境下、カッターナイフを用いて碁盤目の切り込みを入れて、25個の碁盤目(マス)を形成した。
次いで、その表面にテープを強く圧着させた後、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がした。圧着及び引き剥がしの操作を合計3回行った後、フィルムに残っている碁盤目(マス)の数をカウントした。
◎:25マス(インク受容層の剥がれは無い)
○:15〜24マス(わずかに剥がれが認められる)
△:1〜14マス(一部剥がれが認められる)
×:0(全面剥がれが認められる)
(ボイル・レトルト適性)
ボイル・レトルト適性として、高温の水環境下で30分処理した後における剥離と剥離強度の低下を評価した。
(剥離)
得られた試験片を、ウォーターバスを用いて100℃30分処理し、外観を評価した。
◎:異常なし
○:ごく一部インク受容層の剥離が見られる
△:一部にインク受容層の剥離が見られる
×:全面にインク受容層の剥離が見られる
(剥離強度低下)
上記高温水環境下の処理が未処理の状態と処理後の状態において、15mm幅にカットした積層体を用いて、テンシロン(島津製)で300mm/minの速度で、基材フィルムとインク受容層をT型剥離し、その前後の剥離強度を求め、剥離強度の低下率を求めいかのようにランク付けした。
◎:0%以上59%以下
○:60%以下
△:61%以上99%以下
×:100%
以上の結果を表IIに示す。
Figure 2019104193
表IIより、本発明の試料は常温での接着性にすぐれ、高温の水環境下においても基材フィルムの接着性を維持し、剥離強度の低下も少ないことがわかる。
〔実施例2〕
(顔料分散液の調製)
高分子分散剤としてスチレン−アクリル酸共重合体(ジョンクリル678、分子量8500、酸価215、BASF社製、「ジョンクリル」は同社の登録商標)3.0質量%、顔料(ピグメントイエロー155)15質量%、残部としてイオン交換水を加えた混合液をプレミックスした後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料の含有量が15質量%の顔料分散液を調製した。この顔料分散液に含まれる顔料粒子の平均粒子径は、122nmであった。なお、粒径測定は、マルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより行った。
(記録インクの調製)
上記調製した顔料分散液の29.8質量部を攪拌しながら、下記に示す各添加剤を順次添加して、インク組成物を調製した後、0.8μmのフィルターによりろ過して記録インクを得た。
顔料分散液 29.8質量部
エチレングリコール 15.0質量部
プロピレングリコール 10.0質量部
シリコン系界面活性剤(信越化学工業製、KF−351A) 0.2質量部
イオン交換水 全量が100質量部となる量
(積層体の作製)
次いで、実施例1で作製した、インク受容フィルム1〜15の各々に、ドロップオンデマンドピエゾ方式のインクジェットヘッド(ノズル数1024(512×2列)、ノズル間隔70.5μm(141μm×2列))を搭載したステージ移動型インクジェットプリンタにより、インク液滴体積32pl、記録密度360×360dpiの条件で、ベタ画像中のインクを吐出しないことにより形成される抜き文字(3ポイント、4ポイント、5ポイント文字)を、印刷した。同様にして、記録密度360×360dpiの条件で、ベタ画像を印刷した。本明細書でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。なお、インク液滴体積は、記録インク毎に射出電圧を調整することにより制御した。また、インクジェット印刷時の環境は室温25℃で、インク受容層の温度も同様に25℃条件で行った。
その後、受容フィルム1〜15に印刷された画像を有するインク受容フィルム21〜35を用いて、実施例1と同様にして接着剤を用いてラミネートフィルムを接着して、画像を有する積層体21〜35を作製した。作製した画像を確認したところ特に問題なく画像が形成されていた。
また、得られたインク受容フィルムと積層体を実施例1と同様に評価したところ、接着性及びボイル・レトルト適性は、実施例1と同様、比較に比べ優れていることが分かった。
1 基材フィルム
2 インク受容層
3 トランスデューサー
4 圧子

Claims (9)

  1. 基材フィルム上にインク受容層、接着層及びラミネートフィルムを有する積層体であって、
    前記インク受容層が、水分散性樹脂を含有し、
    前記インク受容層が、温度25℃の環境下、下記2要件(a)及び(b)を満足することを特徴とする積層体。
    (a)表面エネルギーの水素結合項が、40mN/m以下である。
    (b)ナノインデンテーション法による硬度が、350N/mm以下である。
  2. 前記表面エネルギーの水素結合項が、20mN/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 前記ナノインデンテーション法による硬度が、300N/mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層体。
  4. 前記ナノインデンテーション法による硬度が、250N/mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の積層体。
  5. 前記水分散性樹脂が、カーボネート部位を有するウレタン樹脂、エステル部位を有するウレタン樹脂、エーテル部位を有するウレタン樹脂、ウレタン・アクリル複合樹脂及びウレタン・オレフィン複合樹脂のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の積層体。
  6. 前記ナノインデンテーション法による硬度が200N/mm以下であり、かつ前記表面エネルギーの水素結合項が13mN/m以下であるか、又は
    前記ナノインデンテーション法による硬度が125N/mm以下であり、かつ前記表面エネルギーの水素結合項が20mN/m以下であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の積層体。
  7. 前記ナノインデンテーション法による硬度が125N/mm以下であり、かつ前記表面エネルギーの水素結合項が13mN/m以下であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の積層体。
  8. 前記ラミネートフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム及び直鎖状低密度ポリエチレンフィルムからなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の積層体。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の積層体を有する包装体。
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