JP2017105036A - 転写材、記録物、それらの製造装置および製造方法 - Google Patents

転写材、記録物、それらの製造装置および製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】記録物における転写画像の品位向上が可能な転写材、記録物、それらの製造装置および製造方法を提供すること。
【解決手段】基材シート50および透明シート52は、色材受容層53内の気体を外部に放出可能な通路を形成する細孔50A,52Aを含む。
【選択図】図30

Description

本発明は、画像が記録される転写材、転写材に記録された画像が転写される記録物、それらの製造装置および製造方法に関するものである。
特許文献1には、インクジェット方式によって転写材の色材受容層に画像を記録し、その画像を記録物(被転写材)に転写する技術が記載されている。その転写に際しては、転写材と被転写材とを重ね合わせて加熱する。これにより、画像が記録された転写材の受容層と共に、転写材の透明の保護層が被転写材に転写されて記録物が得られる。
特開2003−285542号公報
転写材における色材受容層は、インクを吸収するために多くの空隙を有する。そのため、転写材と画像支持体とを重ね合わせて加熱する転写時に、色材受容層の空隙内に残存する空気が膨張し、その空気が色材受容層と保護層との間に気泡となって、記録物の表面に気泡残りと称される転写不良が発生するおそれがある。
また、色材受容層の表面の凹凸などによって、色材受容層と画像支持体との密着性が低下した場合に、それらの間に入り込んだ空気が気泡として残る転写不良(気泡残り)が生じるおそれもある。また、色材受容層に吸収されたインク中の水分が転写時に急激に蒸発して、色材受容層と画像支持体との密着不良およびブリスターなどの転写不良が生じるおそれもある。
本発明の目的は、記録物における転写画像の品位向上が可能な転写材、記録物、それらの製造装置および製造方法を提供することにある。
本発明の転写材は、基材シート、保護シート、および色材受容層が積層された転写材であって、前記基材シートおよび前記保護シートは、前記色材受容層内の気体を外部に放出可能な通路を含むことを特徴とする。
本発明によれば、基材シートおよび保護シートを通して、色材受容層内の気体を外部に放出することにより、転写材の転写性を高めて、高品質の記録物を提供することができる。
転写材の断面図である。 転写材の異なる例の説明図である。 記録物の製造段階の説明図である。 基材シートの剥離工程を説明するための断面図である。 記録物の第1の製造装置の説明図である。 記録物の製造装置における制御系の構成を説明するためのブロック図である。 図6における記録部の制御系の構成を説明するためのブロック図である。 製造装置の動作を説明するためのフローチャートである。 記録物の第2の製造装置の説明図である。 転写材に画像を記録するプリンタの説明図である。 図10のプリンタと転写材との関係の説明図である。 転写材を画像支持体に加熱圧着する転写部の説明図である。 記録物の第6の製造装置におけるプリンタ部と、転写材と、関係の説明図である。 記録物の第7の製造装置におけるプリンタ部の説明図である。 記録物の第7の製造装置における転写部の説明図である。 記録物の第8の製造装置の説明図である。 記録物の第9の製造装置におけるプリンタ部の説明図である。 転写材の異なる構成例の断面図である。 記録物の製造方法の説明図である。 記録物の製造方法の他の例の説明図である。 記録物の製造方法のさらに他の例の説明図である。 記録装置の異なる例の説明図である。 記録物の第2の製造装置の説明図である。 記録物の第3の製造装置の説明図である。 記録物の第4の製造装置の説明図である。 気泡残りの発生メカニズムの説明図である。 記録物の異なる構成例の断面図である。 細孔による空気の排出動作の説明図である。 気泡残りおよびブリスターの発生メカニズムの説明図である。 細孔による空気の排出動作の説明図である。 細孔による空気および水蒸気の排出動作の説明図である。 発泡による細孔の形成方法の異なる例の説明図である。 多孔質粒子による細孔の形成方法の異なる例の説明図である。 中空粒子による細孔の形成方法の異なる例の説明図である。 穿孔加工による細孔の形成方法の異なる例の説明図である。 穿孔加工による細孔の形成方法の他の異なる例の説明図である。 穿孔加工による細孔の形成方法のさらに他の異なる例の説明図である。 延伸加工装置の説明図である。 クレイズ加工装置の説明図である。 クレイズ加工による細孔の形成方法の異なる例の説明図である。 穿孔処理方法の異なる例の説明図である。 記録物の製造方法のさらに他の例の説明図である。 記録物の製造方法のさらに他の例の説明図である。 記録物の製造方法のさらに他の例の説明図である。 記録物の第6の製造装置における細孔の形成方法の異なる例の説明図である。 記録物の第6の製造装置における転写部の説明図である。 記録物の第7の製造装置における細孔の形成方法の異なる例の説明図である。 記録物の第7の製造装置における転写部の説明図である。 記録物の第8の製造装置における細孔の形成方法の異なる例の説明図である。 記録物の第9の製造装置における細孔の形成方法の異なる例の説明図である。 記録物の第6の製造装置における細孔の形成方法の説明図である。 独立した穿孔部の構成例の説明図である。 独立した穿孔部の他の構成例の説明図である。 基材シートを剥離する工程を説明するための斜視図である。 細孔の分布密度の説明図である。 記録物の第2の製造装置における制御系の構成を説明するためのブロック図である。 図56における記録部の制御系の構成を説明するためのブロック図である。 記録物の第2の製造装置の動作を説明するためのフローチャートである。 転写材を画像支持体に加熱圧着した状態を示す説明図である。 転写材に記録される画像の説明図である。 膨潤吸収型の色材受容層とインクとの関係の説明図である。
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されず、その発明特定事項を有する全ての対象を含むものである。なお、同一構造の部材については図面において同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討を行った結果、気泡による転写不良を防止できる転写材等を実現することができた。
まず始めに、従来の技術で気泡残り、ブリスター等の転写不良が発生するメカニズムについて説明する。画像支持体に転写材の透明シートと色材受容層を転写させるときには、ヒートローラ(転写ローラ)により加熱して、色材受容層の水溶性樹脂を十分に溶融させながら圧着させる必要がある。このような加熱圧着工程における急激な温度変化により、色材受容層の空隙に存在する空気が膨張して、その空気が色材受容層と透明シートとの間に気泡として残った場合に、転写不良である気泡残りが発生する。空気の膨張は、シャルルの法則により、気体の体積Vは温度Tに比例するため、温度上昇が急激であるほど体積は大きくなる。
転写材は、図26のように、基材シート50と、透明シート52と、空隙吸収型の色材受容層53と、を積層して構成され、このような転写材は、図26のように、ヒートローラ21などによって画像支持体55に加熱圧着される。その加熱圧着時に、色材受容層53の空隙に残存する空気800は、図26中の空気801のように急激に膨張する。色材受容層53と透明シート52との間にトラップされた空気801は、図26のように、その後の冷却によって、膨張した空気は元の体積に戻るが、膨張によって変形した保護シートは元の形状に戻りきれず、保護シートと色材受容層の間に気泡が残るおそれがある。このようなメカニズムにより、空隙吸収型の色材受容層の特有の課題としての気泡残り803が発生する。
また、図29(a)のように、塗工ムラなどによって色材受容層53に凹凸部分806が生じた場合、画像支持体55に透明シート52および色材受容層53を転写させるときに、塗工ムラなどによって生じた色材受容層53の凹凸部分806と画像支持体55との間にとの間に残存する空気が気泡805として残ることにより、転写不良が発生するおそれがある。
さらに、図29(b)のように、色材受容層53に水性インク72によって画像を記録した場合に、加熱圧着時の急激な温度上昇によって、インク72の水分および溶媒成分が蒸発し、逃げ場のない水蒸気が気泡805となって残ることにより、転写不良であるブリスターが発生するおそれがある。
本発明は、転写材および記録物に形成した通路によって、色材受容層中の空隙に残存する余分な空気、塗工ムラなどによって生じた色材受容層の凹凸部分と画像支持体との間に残存する空気、および色材受容層に吸収されたインク中の水分が蒸発することに発生する水蒸気を外部に排出することにより、このような課題を解決する。
以下、本発明の転写材について図を用いて説明する。
本発明の転写材1は、図18のように、基材シート50、透明シート52、および色材受容層53が順次積層された積層構造を有する。色材受容層53は、水溶性樹脂660および無機微粒子65を含有する空隙吸収型である。図18(a)から(h)のように、基材シート50および透明シート52には、色材受容層53と大気とを連通するための細孔50Aおよび52Aが形成されている。これらの細孔50Aおよび52Aは、色材受容層53内の空気や水蒸気などの気体を外部に排出するための通路を形成する。また、このような通路は、図18(i),(j),(k)のように、発泡剤553,多孔質粒子554,中空粒子555によっても形成することができる。すなわち、これらの発泡剤553,多孔質粒子554,中空粒子555によって、基材シート50および透明シート52に、互いに連続する多数の連続する空隙を形成して、それを連泡構造の通路とすることができる。図18(a)から(h)のような細孔構造の通路、および図18(i)から(k)のような連泡構造の通路は同様に機能するため、以下、これらの通路を「細孔」ともいう。
このような通路により、図30のように、ヒートローラ21による転写材1と画像支持体55の加熱圧着時に、色材受容層53の空隙に残存する空気が急激に膨張した場合、その空気を、細孔50Aおよび52Aを通して外部(系外)に排出することができる。これにより、気泡残りの発生を抑制することができる。通路が連泡構造の場合も同様である。
また、図31(a)のように、色材受容層53の凹凸部分806に空気が入り込んだ場合、加熱圧着時に、その空気を細孔50Aおよび52Aを通して外部に排出することができる。また、図31(b)のように、加熱圧着時に水性インク72が蒸発した場合には、水蒸気を細孔50Aおよび52Aを通して外部に放出して、ブリスターの発生を抑制して転写性を向上させることができる。通路が連泡構造の場合も同様である。
通路を形成する細孔の間隔を制御することにより、空気や水蒸気を効果的に排出して、気泡残りやブリスターの発生を防ぐことができる。図28のように、転写材1と画像支持体55が加熱圧着されるときに、ヒートローラ21のニップ部における細孔50Aの開口部がヒートローラ21によって塞がれるため、その開口部からは空気や水蒸気を外部に排出することができない。図28(a),(b)のように、ニップ部に位置する色材受容層53の部分の空気や水蒸気は、空隙吸収型の色材受容層53を通してニップ部に近い細孔52A、50Aに導くことにより、外部に排出することができる。
図28(a)のように、細孔の間隔が大きくなると、ニップ部の空気や水蒸気をニップ部に最も近い細孔に導く距離が長くなるため、その気体は短時間で十分に排出されないおそれがある。一方、図28(b)のように、細孔の間隔が短くすることにより、短時間でより多くの空気や水蒸気を外部に排出して、気泡残りやブリスターの発生をより効果的に抑制することができる。好ましくは、細孔密度を5mm2に1つ以上の細孔が形成される密度、より好ましくは3mm2に1つ以上形成、さらにより好ましく1mm2に1つ以上形成される密度とする。これにより、ニップ部の空気や水蒸気を効率的に逃がして、気泡残りやブリスターによる転写不良をより効果的に抑制することができる。5mm2に一つも細孔がない場合は、加熱膨張した気体を短時間で十分に排出することができず、気泡残りやブリスターが発生しやすくなる場合がある。
細孔の平均径を制御することにより、空気や水蒸気を効果的に逃がして、気泡残りやブリスターの発生を抑制すると共に、安定的な塗工により転写材を製造することができる。基材シートおよび保護シートの細孔の平均径は特に限定されないが、好ましくは0.001μm以上10μm以下、より好ましくは0.002μm以上0.8μm以下、さらにより好ましくは0.004μm以上0.2μm以下である。空気は窒素と酸素を主とした混合物であって、窒素分子の直径は3.78Å酸素分子の直径は3.64Åである。また、水分子の直径は約4Åである。従って、細孔の平均径を好ましくは各分子の直径より十分大きい0.001μm以上、より好ましくは0.002μm以上、さらにより好ましくは0.004μm以上にすることにより、空気あるいは水蒸気を十分に排出することができる。その平均径が大き過ぎた場合には、保護シートあるいは色材受容層の塗工時に水やその他の成分が保護シートおよび基材シートを通過して、塗工面の平滑性の低下、および基材シート側からの塗工液の流出などが生じるおそれがある。基材シートおよび保護シートの細孔径は、水滴の直径である100μm以下する必要がある。そのため、基材シートおよび透明シートにおける細孔の平均径を好ましくは水滴の直径よりも十分に小さい10μm以下、より好ましくは0.8μm以下、さらにより好ましくは0.2μm以下にすることにより気泡残りやブリスターの発生を十分に抑制すると共に、各層を安定的な塗工を実施することができる。反対に保護シートおよび透明シートの細孔の平均径が0.004μmより小さいと色材受容層中の空気や水蒸気を短時間で十分に放出することができず、気泡残りやブリスターが発生しやすくなる。また細孔の平均径が10μmより大きいと塗工液が細孔を通過してしまうため、各層の塗工安定性が低下する。
[1]転写材
本実施形態の転写材は、上述したように、基材シート50、透明シート52、および色材受容層53がこの順で積層された積層構造を有するインクジェット記録用の転写材1である。その透明シート52および基材シート50には、色材受容層内の空隙に残存する空気、塗工ムラなどによって生じた色材受容層の凹凸部分と画像支持体との間に残存する空気、および色材受容層に吸収されたインク中の水分が蒸発することにより発生する水蒸気を系外に放出可能な通路が形成される。図18のように、色材受容層53は、水溶性樹脂660および無機微粒子65を含有する。図18(a)から(h)における基材シート50および透明シート52には、それらを貫通する細孔50A,52Aによって通路が形成されている。図18(i),(j),(k)における基材シート50および透明シート52には、発泡剤553,多孔質粒子554,中空粒子555によって連泡構造の通路が形成されている。
[1−1]色材受容層
色材受容層64は、水溶性樹脂660および無機微粒子65を含有する。これにより、色材受容層64内に微細な空隙を形成して、それを空隙吸収型の色材受容層とすることにより、インクの吸収性を向上させることができる。また、空隙吸収型の色材受容層は、インク吸収後も色材受容層64は平滑に保たれる。
基材シートおよび透明シートに本発明のような気体の通路が形成されていない転写材において、色材受容層に多くの空隙を形成してインクの吸収性を向上させた場合には、空隙構造によって色材受容層の空隙内部に残存する空気の量が多くなり、加熱圧着時の熱で空気が膨張し、その空気が色材受容層と透明シートとの間に気泡として残ってしまう。また、塗工ムラなどによって生じた、色材受容層53の凹凸部分と画像支持体55との間に残存する空気が、加熱圧着時の熱で空気が膨張し、その空気が画像支持体と色材受容層との間に気泡として残ってしまう。さらに、色材受容層に吸収されたインクに水や溶媒成分が加熱圧着時の熱で蒸発し、逃げ場のない水蒸気によりブリスターが発生する。この場合には、記録物における画像の記録品位が低下する。
そこで、本発明では、基材シートおよび透明シートに気体の通路が形成されている構成と、無機微粒子により色材受容層に形成される空隙によって、加熱圧着時の急激な温度上昇で、無機微粒子により形成される色材受容層の空隙に残存する空気が膨張しても、発生する気泡を、色材受容層の空隙構造および基材シートおよび透明シートの通路を通して、外部に空気および水蒸気を放出する。これによって、色材受容層と透明シートとの間に残る気泡残りを抑制することができる。また、気泡残り、および塗工ムラなどによって生じた色材受容層53の凹凸部分と画像支持体55との間に残存する空気が膨張して発生する気泡が、色材受容層と画像支持体との間に残ること、を抑制することができる。このように気泡残りを抑制できるため、空隙吸収型の色材受容層を用いてインク(色材)の吸収速度が高めて、画像の高速記録を実現することができる。すなわち、画像品位を損なうことなく、空隙吸収型の色材転写層を利用した画像の高速記録が可能となる。
色材受容層として、無機微粒子を含まずに、水溶性樹脂を主体とした膨潤吸収型の色材受容層を用いた場合には、その色材受容層が空隙を持たないために空隙に起因する気泡残りは発生しにくい。しかしながら、膨潤型色材受容層はインク中の水分により色材受容層が膨潤して、色材受容層の表面に凹凸が発生する。このため、加熱圧着時においては、この膨潤型色材受容層の凹凸部分と画像支持体55との間に多くの空気が残存する。しかし、色材受容層が空隙を持たないため、色材受容層内を気体が移動することができず、それが透明シートにおける気体の通路まで到達できない。そのため、透明シートと色材受容層との間に発生する気泡を透明シートおよび基材シートに形成された気体の通路を通して排出することができず、色材受容層53の凹凸部分と画像支持体55との間に残存する空気膨張に起因する気泡残りが発生する。また、水溶性高分子の網目構造中にインクを受容することによりインクを吸収する膨潤吸収型の色材受容層の表面には、インク中の水分が多く残存するため、加熱圧着時の熱により、インクに水や溶媒成分は蒸発しやすく、逃げ場のない水蒸気によりブリスターが発生しやすい。さらに、膨潤型インク受容層はインク(色材)の吸収速度も遅くなるため、画像の記録速度が制限され、高速記録に適さない。
色材受容層を形成する際に、無機微粒子の平均粒子径、水溶性樹脂の重量平均重合度及び、けん化度を精密に制御することが好ましい。これにより、色材受容層の透明性(透過性)、及び色材受容層と透明シートとの密着強度を向上させることができる。これにより、透明シートの側からの画像の視認性を向上させることができる。従って、色材として、色材受容層に浸透し難い顔料インクを使用した場合でも、インク密度を増加させ、又は多量のインクを受容させるために色材受容層の厚さを増大させる必要がない。このため、転写材、延いては記録物の全体厚さを薄厚化することができる。
[1−1−1]無機微粒子
無機微粒子は、無機材料からなる微粒子である。無機微粒子は色材受容層にインクを受容する空隙を形成する機能を有する。
無機微粒子を構成する無機材料の種類としては特に制限はない。ただし、インク吸収能が高く、発色性に優れ、高品位の画像が形成可能な無機材料であることが好ましい。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物、リトポン(硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物)、ゼオライト等を挙げることができる。
これらの無機材料からなる無機微粒子の中でも、アルミナ及びアルミナ水和物からなる群より選択される少なくとも1種の物質からなるアルミナ微粒子が好ましい。アルミナ水和物としては、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物等を挙げることができる。アルミナ、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物は、色材受容層の透明性及び画像の記録濃度を向上させることができる点において好ましい。
ベーマイト構造のアルミナ水和物は、長鎖のアルミニウムアルコキシドに対して酸を添加して加水分解・解膠を行うことによって得ることができる(特開昭56−120508号公報参照)。解膠には有機酸、無機酸のいずれを用いてもよい。ただし、硝酸を用いることが好ましい。硝酸を用いることにより、加水分解の反応効率を向上させることができ、形状が制御されたアルミナ水和物を得ることができ、分散性が良好な分散液を得ることができる。
無機微粒子は、その平均粒子径が120〜200nmであることが好ましい。平均粒子径を、好ましくは120nm以上、さらに好ましくは140nm以上とすることにより、色材受容層のインク吸収性を向上させて、記録後の画像におけるインクの滲みやビーディングを抑制することができる。一方、平均粒子径を、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは170nm以下とすることにより、無機微粒子による光散乱を抑制して、色材受容層の透明性を向上させることができる。また、色材受容層の単位面積当たりの無機微粒子数を増加させることができるため、インク吸収性を向上させることができる。従って、画像の記録濃度を向上させることができ、記録後の画像のくすみを抑制することができる。これにより、色材受容層の透明性(透過性)、透明シートの側からの画像の視認性を向上させることができる。色材として、色材受容層に浸透しにくい顔料インクを使用した場合においても、インクの付与密度が高まり、多量のインクを受容させるために、色材受容層の厚さを増大させる必要がない。このため、転写材延いては記録物の全体を薄厚化することができる。
無機微粒子は、公知の無機微粒子をそのまま用いてもよいし、粉砕分散機等を用いて公知の無機微粒子の平均粒子径、多分散指数を調整したものを用いてもよい。粉砕分散機の種類としては特に制限はない。例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)、連続式高速撹拌型分散機、超音波分散機等の従来公知の粉砕分散機を用いることができる。
粉砕分散機をより具体的に例示すると、以下全て商品名で、マントンゴーリンホモジナイザー、ソノレータ(以上、同栄商事製);マイクロフルイタイザー(みずほ工業製);ナノマイザー(月島機械製);アルティマイザー(伊藤忠産機製);パールミル、グレンミル、トルネード(以上、浅田鉄鋼製);ビスコミル(アイメックス製);マイティーミル、RSミル、SΓミル(以上、井上製作所製);荏原マイルダー(荏原製作所製);ファインフローミル、キャビトロン(以上、太平洋機工製);等を挙げることができる。
また、無機微粒子は、平均粒子径の範囲を満たし、かつ、多分散指数(μ/<Γ>2)が0.01〜0.20であることが好ましく、0.01〜0.18とすることがさらに好ましい。上述の範囲に設定することで粒子の大きさを一定に保つことが可能になるため、色材受容層の光沢性及び透明性を向上させることができる。従って、画像の記録濃度を向上させることができ、記録後の画像のくすみを抑制することができる。
なお、本明細書にいう平均粒子径及び多分散指数は動的光散乱法によって測定された値を、「高分子の構造(2)散乱実験と形態観察 第1章 光散乱」(共立出版 高分子学会編)、又はJ.Chem.Phys.,70(B),15 Apl.,3965(1979)に記載のキュムラント法によって解析することにより求めることができる。動的光散乱の理論によれば、異なる粒径を持つ微粒子が混在している場合、散乱光からの時間相関関数の減衰に分布を有する。この時間相関関数をキュムラント法により解析することにより、減衰速度の平均(<Γ>)と分散(μ)が求まる。減衰速度(Γ)は粒子の拡散係数と散乱ベクトルの関数で表わされるため、ストークス−アインシュタイン式を用いて、流体力学的平均粒径を求めることができる。従って、減衰速度の分散(μ)を平均の二乗(<Γ>2)で除した多分散指数(μ/<Γ>2)は、粒径の散らばりの度合いを表わしており、値が0に近づく程、粒径の分布は狭くなることを意味する。本実施の形態で定義される平均粒子径及び多分散指数は、例えば、レーザ粒径解析装置PARIII(大塚電子製)等を用いて容易に測定することができる。
無機微粒子は1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、材質自体が異なるものの他、平均粒子径、多分散指数等の特性が異なるものも含まれる。
[1−1−2]水溶性樹脂
水溶性樹脂は、25℃において、水と十分に混和するか、水に対する溶解度が1(g/100g)以上の樹脂である。水溶性樹脂は、無機微粒子を結着するバインダーとして機能する。
水溶性樹脂としては、下式(1)を満たすものであれば、特に制限はない。|ΔSP|が0.6以上になると水溶性樹脂と後述する第1のエマルジョンE1の分子間力が弱くなり、色材受容層と透明シートの密着性が低下して、テープ剥離等の試験において透明シートと色材受容層との間で剥がれが生じるため好ましくない。|ΔSP|を下式(1)の範囲にすることにより、水溶性樹脂と第1のエマルジョンE1の分子間力によって強力に接着して、透明シートと色材受容層の密着性を向上させることができる。
0≦|ΔSP|≦0.6 (1)
例えば、澱粉、ゼラチン、カゼイン及びこれらの変性物;
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;
ポリビニルアルコール(完全けん化、部分ケン化、低けん化等)又はこれらの変性物(カチオン変性物、アニオン変性物、シラノール変性物等);
尿素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸又はその共重合体樹脂、アクリルアミド系樹脂、無水マレイン酸系共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂等の樹脂;等を挙げることができる。
水溶性樹脂の中でも、ポリビニルアルコール、特にポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより得られる、けん化ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールのSP値は後述するPVCやPET−GのSP値と値が近い。従って、転写時の熱で水溶性樹脂および画像支持体表面が溶融すると両者の相溶性が高まり、水溶性樹脂は画像支持体に強固に接着される。ポリビニルアルコールは、画像支持体としてPVCやPET−Gを使用した場合に、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができ、特に好ましく用いられる。
色材受容層は、けん化度70〜100mol%のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。けん化度とは、ポリビニルアルコールの酢酸基と水酸基の合計モル数に対する水酸基のモル数の百分率を意味する。
けん化度を、好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは86mol%以上とすることにより、色材受容層を過度に硬くせずに、色材受容層に適度な柔軟性を付与することができる。したがって、剥離工程において色材受容層の箔切れ性が向上し、端部のバリの発生を抑制することができる。また、無機微粒子とポリビニルアルコールを含む塗工液の粘度を低下させることができる。従って、透明シートに対して塗工液を塗工し易くなり、転写材の生産性を向上させることができる。一方、けん化度を、好ましくは100mol%以下、さらに好ましくは90mol%以下とすることにより、色材受容層に適度な硬さを付与することができる。これにより、透明シートと色材受容層との接着強度を向上させて、接着強度の不足による透明シートからの色材受容層の剥離を抑制することができる。また、色材受容層に適度な親水性を付与することができ、インクの吸収性が良好となる。従って、色材受容層に高品位の画像を記録することが可能となる。
けん化度の範囲を満たす、けん化ポリビニルアルコールとしては、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98〜99mol%)、部分けん化ポリビニルアルコール(けん化度87〜89mol%)、低けん化ポリビニルアルコール(けん化度78〜82mol%)等を挙げることができる。中でも、部分けん化ポリビニルアルコールが好ましい。
色材受容層は、重量平均重合度が2,000〜5,000のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。
重量平均重合度を、好ましくは2,000以上、さらに好ましくは3,000以上とすることにより、色材受容層に適度な柔軟性を付与することができる。したがって、剥離工程において色材受容層の箔切れ性が向上し、端部のバリの発生を抑制することができる。一方、重量平均重合度を、好ましくは5,000以下、さらに好ましくは4,500以下とすることにより、無機微粒子とポリビニルアルコールを含む塗工液の粘度を低下させることができる。従って、透明シートに対して塗工液を塗工し易くなり、転写材の生産性を向上させることができる。また、色材受容層の細孔が埋まることを防止し、細孔の開口状態を良好に保つことができ、インクの吸収性が良好となる。従って、色材受容層に高品位の画像を記録することが可能となる。
重量平均重合度の値は、JIS−K−6726に記載の方法に準拠して算出された値である。
水溶性樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、けん化度、重量平均重合度等の特性が異なるものも含まれる。
水溶性樹脂の量は、無機微粒子100質量部に対し、3.3〜20質量部とすることが好ましい。水溶性樹脂の量を、好ましくは3.3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とすることにより、色材受容層のひび割れや粉落ちが発生し難くなる。一方、水溶性樹脂の量を、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下とすることにより、インクの吸収性が良好となる。
[1−1−3]カチオン性樹脂
カチオン性樹脂は、分子中にカチオン性の原子団(例えば、4級アンモニウム等)を有する樹脂である。また、カチオン性樹脂のSP値は、画像支持体を構成する樹脂のSP値と近い値を示すだけでなく、画像支持体に転写材を加熱圧着させる際の熱で容易に溶融し、また、静電気的な結合も促進するため、画像支持体と色材受容層との接着性を更に強固なものとし、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができる。すなわち、カチオン性樹脂は一般的にマイナスに帯電しているインクと静電気的に結合するため、色材受容層中にインクを定着させることができるが、この機能に加え、カチオン性樹脂は、(1)画像支持体のSP値に近い値となるようなものを選択しているため、画像支持体と親和性が高く、転写時の画像支持体と色材受容層との接着性を向上させることができる。また、カチオン性樹脂は、(2)融点が低く、転写時の熱で容易に溶融するので、画像支持体と色材受容層との接着性をさらに強くする。さらに、本発明で使用するカチオン性樹脂は、(3)分子量が小さいため、色材受容層への添加量が少なくても、色材受容層中に多くの分子を添加できる。よって、一般的にマイナスに帯電している画像支持体と静電気的に結合できるカチオン基を、色材受容層の表面に介在させることができ、結果として、画像支持体と接着性を向上させることができる。さらに、(4)後述する樹脂分散顔料との接着性を高めることができる。すなわち、樹脂分散顔料の分散樹脂のSP値は、カチオン性樹脂のSP値と近いため、転写時の熱でカチオン性樹脂および分散樹脂が溶融すると両者の相溶性が高まり、樹脂分散顔料は色材受容層に強固に接着される。これにより、色材受容層の画像支持体への転写性能が向上する。さらに、(5)透明シートの主成分として用いられるエマルションはマイナスに帯電しており、カチオン性樹脂と強固に接着し、透明シートと色材受容層との接着性を高めることができる。したがって、本発明で使用するカチオン性樹脂は、上記5つの効果により、色材受容層の画像支持体への転写性能を高める役目を果たしている。
このようなカチオン性樹脂としては、例えばポリアリルアミン(例えば、アリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物等)及びウレタン系重合物から選択される少なくとも1種の重合物を用いることが好ましい。これらの中でも、特に後述する低分子のポリアリルアミンは、(1)融点が80℃付近と低く、画像支持体に転写材を加熱圧着させる際に容易に溶融すること、(2)分子構造が小さいために、色材受容層表面において単位面積当たりのカチオン基を多く存在させることができ、画像支持体に対する静電気的な結合を促進することができること、等の理由から、特に好ましく用いることができる。
なお、ポリアリルアミンは、下記一般式(8)で示される少なくとも1種のポリアリルアミンであることが好ましい。
(式中、R3、R4、R5は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルカノール基、アリルアルキル基、アリルアルケニル基を示す。また、R3、R4、R5はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。X-は、無機系、有機系の陰イオンを示す。nは重合度を示す整数である。)
カチオン性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜15,000、さらに好ましくは1,000〜10,000、特に好ましくは1,000〜5,000である。重量平均分子量を範囲内とすることで塗工液の安定性を向上させることができることに加えて、色材受容層の空隙が減少し難く、色材の吸収性を維持することができる。さらに、カチオン性樹脂の分子量5,000以下とすると、画像支持体と接する色材受容層の表面にカチオン基(則ち、静電気的な結合を行う吸着サイト)をより多く分布させて、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)をさらに向上させることができる。なお、平均分子量が15000より大きくなると画像支持体と接する色材受容層の表面にカチオン基(則ち、静電気的な結合を行う吸着サイト)が少なくなるため、色材受容層との密着性(転写性能)が低下する。一方、重量平均分子量が1000より小さいと、印刷時のインク溶媒とともに色材受容層内部にカチオン性樹脂が移動してしまい色材受容層の表面に分布するカチオン基の量が少なくなるため、好ましくない
カチオン性樹脂の使用量は無機微粒子(アルミナ水和物等)に対して0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.01〜3質量%とすることがさらに好ましい。カチオン性樹脂の使用量が上述の範囲を超えると、無機微粒子の分散液や分散液にバインダーを添加した塗工液の粘度が高くなり、分散液又は塗工液の保存性や塗工性が低下する場合がある。
カチオン性樹脂の融点は、60〜160℃であることが好ましい。カチオン性樹脂の融点を上述の範囲内とすることにより、画像支持体に対して転写材を加熱圧着させる際にカチオン性樹脂を溶融させることができ、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができる。
[1−1−4]厚さ
色材受容層の厚さとしては特に制限はないが、インク吸収性の観点からは厚いほうが良い。一方、本発明の記録物では、インクジェット記録面とは反対側の透明シート側から画像情報を見ることになるので、色材受容層自体の透明性も考慮する必要がある。インクジェット記録の液滴径にも拠るが、インクの吸収性と加熱圧着転写性との兼ね合いの観点から、色材受容層の厚さは40μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは30μ以下とすることにより、色材受容層内の気体を外部に十分に逃がして、気泡に起因する転写不良の発生を抑制することができる。また色材受容層の透明性を一段と向上させることができると共に、画像支持体に加熱圧着転写させる際にも熱伝導をより良好にして、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)をより向上させることができる。さらに、吸水時の色材受容層の膨張収縮による応力を小さくして、結果的に、色材受容層の強度を高めることができる。また、色材受容層の厚さを小さくすることにより、色材受容層の端部におけるバリの発生を抑えることもできる。
一方、インクジェット記録におけるインクの液滴径によっては、色材受容層の厚さが5μm以上であれば良好な画像記録ができる場合がある。さらに好ましくは、色材受容層の厚さを5μm以上とすることでインクの吸収性を安定的に確保することができ、インクの吸収速度及びインクの定着性が良好となる。すなわち、色材受容層の厚さは、5〜30μmであることがより好ましい。本発明では、透明シート及び色材受容層の厚さのバランスに加えて、細孔の構成も用途に応じて適宜選定する必要がある。また、画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合、記録物全体の厚さは、JIS6301に記載される総厚さ0.84mm以下に抑制することが必要となる。この場合、色材受容層を良好なインクジェット記録を可能とする最小限の厚みとすることは、実用上のバランス設計の観点から好ましい。
[1−1−5]空隙容量
本発明の空隙吸収型の色材受容層(インク受容層)の空隙容量は、30ml/m2以上であることが好ましい。また、画像支持体に加熱圧着させた後(転写後)においても、空隙容量が30ml/m2以上に維持されていることが好ましい。このように空隙容量を設定することにより、インクの吸収性を良好にすることができる。空隙容量が大きくなると気泡が発生しやすくなるため、それは120ml/m2以下であることが好ましい。
色材受容層の空隙容量は。J.TAPPI紙パルプ試験方法(ブリストー法)に記載された方法により、動的浸透性試験機(例えば、商品名「B341000−702」、東洋精機製等)を用いて測定することができる。測定に使用する液体としては、蒸留水にBKインクを0.16%混合したものを用い、吸収時間2秒の時(紙の移動速度:v=0.5mm/S)の空隙容量を測定した。空隙容量の算出には、下式(6)を用いた。条件としては、ヘッドボックスへの液体添加量を40μl、スリット長さを15.00mmとした。
V=40*1000/(15*A) (6)
[V=空隙容量(ml/m2)、A=転移跡の長さ(トレース長)(mm)]
[1−2]透明シート
転写材1は、図18のように透明シート52を備えており、この透明シート52には、細孔構造または連泡構造の気体の通路が形成されている。また、図1(b)のように気体の通路が予め形成されていない転写材を用いる場合には、前記工程1および2のいずれかの工程の前に、気体の通路としての転写材に細孔を形成することができる。
透明シートを貫通する細孔は透気性を発現するように構成されており、転写材と画像支持体とを加熱圧着するときに生じる気泡中の空気、あるいは水蒸気を系外に放出して、ブリスター、気泡残り等による転写不良を抑制する。細孔の径と分布密度を制御することにより、転写不良を効果的に抑制することができる。
透明シートは、記録物の保護を目的として記録物の表面に構成されており、その保護性能は、下記の(1)から(4)の4つに大きく分けることができる。(1)は、水、薬品、汚染水など液体状の汚れからの保護性能、(2)は、オゾンや汚染ガスなど気体状の汚れからの保護性能、(3)は、紫外光などの光学的劣化に対する保護性能、(4)は、擦れ、引っ掻き、打坤などの機械的な力からの保護性能である。
透明シートに細孔を形成した場合には、上記(1)の液体状の汚れに対する保護性能、および上記(2)のガスに対する保護性能は低下するおそれがある。液体状の汚れに対しては細孔径を制御することにより、その進入を防ぐことが可能であり、またガスに対しては、耐ガス性が良好なインク(色材)である顔料インクを使用することにより、実用上問題ないレベルとすることができる。
透明シートの種類は特に限定されない。透明シートは、耐候性、耐摩擦性、耐薬品性などの耐久性に優れて、色材受容層と水溶性樹脂との相溶性が高い材質からなるシートあるいはフィルムであることが好ましい。さらに、透明シートが基材シートに接する場合は、基材シートのSP値と透明シートのSP値との差SP1が1.1以上となるように、透明シートの材料を選択することが好ましい。具体的な材質としては、例えば、樹脂フィルムなどを挙げることができ、より好ましくは、後述の2種類の樹脂エマルジョンを主体とした樹脂フィルムとすることにより、剥離時における端部の切れ性を向上させることができる。
また、転写材を画像支持体に加熱圧着させて、基材シートを剥離することにより、色材受容層に記録された画像が透明シートを介して視認される。透明シートは、色材受容層に記録された画像の保護層として機能する。
色材受容層に画像を記録するインクとして染料インクを用いる場合には、紫外線による染料の分解(光劣化)を防止するために、透明シートがUVカット剤を含有するものであることが好ましい。UVカット剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などの紫外線吸収剤;酸化チタン、酸化亜鉛などの紫外線散乱剤;などを挙げることができる。
[1−2−1]透明シートの細孔の大きさ
透明シートの細孔の大きさは、特に限定されないが、ブリスター、気泡残り等による転写不良、記録物を水に長時間浸漬したときに発生する透明シートのひび割れ、色材受容層の塗工液の塗工安定性、透明シートの保護性能などを考慮して設定する。
すなわち、透明シートの細孔の平均細孔径が好ましくは0.001μm以上かつ10μm以下、より好ましくは0.002μm以上かつ0.8μm以下、さらにより好ましくは0.004μm以上かつ0.2μm以下とする。
細孔径が10μmより大きいと、色材受容層を形成するときに、色材受容層を形成する塗工液が透明シートの内部まで浸透して、色材受容層が形成しにくくなり、塗工安定性が低下する。また、細孔の大きさが10μmを超えると、水に記録物を浸漬させた場合に、細孔の入り口に水のメニスカスが形成されにくくなる。そのため、透明シートを介しての色材転写層の吸水が促進されると共に、液体状の汚れなども侵入しやすくなり、透明シートの保護性能が低下する。一方で0.001μmより小さいと細孔内を加熱膨張した空気および水蒸気が透過しにくくなって、気泡残りおよびブリスターが発生しやすくなる。
水滴の大きさは約100μm程度であり、通常、数十μm径程度の細孔の先端では水の表面張力によりメニスカスが形成される。そのため、細孔の大きさを10μm以下とすることにより、水分を主体とする色材受容層を形成する塗工液(色材受容液)を塗工した場合に、その色材受容液は透過しにくくなる。
圧力の作用、細孔の内面の濡れ性、および毛管力などの条件により、1μm径程度の細孔でも色材受容液が透過する場合がある。そのため、細孔の平均径を0.8μm以下とすることにより、十分な水分難透過性を確保して、ほぼ液体状の水分の透過を抑制することが可能となる。また、温度湿度気圧などの環境条件、および水に含まれる不純物や溶解成分などによる粘度や表面張力に応じて、塗工液の透過のしやすさが変化するため、細孔の平均径を0.2μm以下とすることにより、実用上十分な水分難透過性を得ることができる。
一方、空気に含まれる酸素分子、窒素分子の大きさ、および蒸気の水分子の大きさが共に約0.0004μmであるため、細孔の平均径を0.0004μm以上にすれば空気および水蒸気を透過させることができる。また、その平均径を好ましくは0.001μm以上とすることにより、十分に実用性な透気性を得ることができる。より好ましくは、細孔構造の均一性を考慮して、細孔の平均径を0.002μm以上、さらにより好ましくは0.004μm以上とすることにより、加熱膨張した空気や水蒸気を安定的に透過させることができる。
したがって、透明シートの細孔の平均径を0.004μm以上かつ0.2μm以下とすることにより、透明シートに透気性をもたせてブリスターおよび気泡残り等による転写不良を十分に抑制しつつ、色材受容層の塗工表面の均一性、および汚染水等の表面汚れの保護性能を実使用上問題ないレベルにまで高めることができる。しかし、液体状の汚れは色材受容層の端部から侵入する可能性がある。しかし、汚染水の成分の各々の転写材中における浸透拡散度合いの違いから、汚れ成分自体が浸透する範囲は端部から数mmにも及ばない。しかも、記録物の搬送精度など機械的な制約の観点から、記録部の端部に対する情報の記録は稀有であるため、実使用上、液体状の汚れによる情報の消失には至らない。
[1−2−2]透明シートの細孔の分布密度
細孔の分布密度は、特に制限されない。しかし細孔の分布密度は、1cm2当たり5個〜200万個が好ましい。1cm2当たり5個以上にすることにより、透明シートの表面から、色材受容層の空隙に残存して加熱膨張した空気を放出することができ、また画像記録後に色材受容層の内部に残存するインク中の水および溶媒成分を蒸発させることができる。また1cm2当たり200万個以下にすることにより、透明シートの強度と透明性を保つことができる。1cm2当たり200万個以上になると、透明シートの強度と透明性が低下すると共に、細孔中に含まれる空気が断熱材として作用して転写性が低下する。
細孔の透気性は、細孔の平均径のみならず、細孔の分布密度によっても制御することができる。例えば、図1(b)のような透明シートに細孔構造がない転写材を用いた場合に、透明シートの全面に亘って5mm間隔(図55のA=B=5mm)で細孔を形成した。この結果、乾燥後の透明シートの表面に微かな気泡残りが見られる程度にまで、気泡残りの発生を抑制することができた。また、透明シートの全面に亘って1mm間隔(図55のA=B=1mm)で細孔を形成した場合には、乾燥後の透明シート表面には微かな気泡残りも見られず、色材転写層の転写性の改善が確認できた。したがって、20μm厚程度の空隙吸収型の色材転写層に対して、保護層として10μm厚程度の透明シートを設けた構成において、細孔の分布密度が1平方mm当たり1つ以上とすることにより、気泡残りが抑制できる。細孔は5mm2に一つ以上形成されることが好ましく、1mm2に一つ以上形成されることがさらに好ましい。5mm2に一つ細孔がない状態だと、加熱膨張した気体を短時間で十分に排出することができず、気泡残りやブリスターが発生しやすくなる場合がある。
[1−2−3]エマルジョン
透明シートは、異なるガラス転移温度を有する2種類のエマルジョン(エマルジョンE1、エマルジョンE2)により構成されるシートであることが好ましい。以下、エマルジョンE1およびE2について詳細に説明する。
[1−2−4]エマルジョンの状態
転写材の透明シートに含まれるエマルジョンは、エマルジョンE1が造膜状態であり、エマルジョンE2が粒子として残存する粒子状態であることが好ましい。エマルジョンの「造膜状態」とは、最低造膜温度およびガラス転移温度以上の温度で加熱処理されたことを意味する。一方、エマルジョンの「粒子状態」とは、最低造膜温度、ガラス転移温度以上の加熱処理がされていないことを意味する。転写材の製造時において、エマルジョン塗工後の乾燥温度をエマルジョンE1のTg以上、かつエマルジョンE2のTg以下とすることにより、エマルジョンの一方(エマルジョンE1)が造膜し、他方(エマルジョンE2)が粒子として残存している透明シートを製造することができる。このような構成により、図59に示すように、加熱圧着時に、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980と、画像支持体と色材受容層が接着していない部分964の透明シート部分981と、で膜状態が異なるように制御することができる。すなわち、加熱圧着時において、透明シート部分980はヒートロールの熱が伝わりやすいため、エマルジョンE2の一部が膜化して一部粒子が残存した状態(図59(b))、あるいは透明シートのエマルジョンE2が完全に皮膜化した状態(図59(c))になる。このとき、一部あるいは完全に膜化したエマルジョンE2は、予め膜化しているエマルジョンE1と結合力が強化されて透明シートの膜強度を強化することができる。一方、透明シート部分981はヒートロールの熱が伝わらないため、エマルジョンE2を粒子状態のままにすることができる。透明シート部分980と透明シート部分981では膜の状態が異なるため、剥離工程では、境界部982を基点としてクラックが入りやすくなる。以上から、2種類のエマルジョンを用いて、エマルジョンE2の膜状態を加熱圧着時の温度を利用して変化させることにより、箔切れが良好することができる。
[1−2−5]エマルジョンのガラス転移温度
ガラス転移温度(Tg)とは、非晶質の固体を加熱した場合に、低温では結晶なみに堅く(剛性率が大きく)流動性がなかった(粘度が測定不可能なほど大きかった)固体が、ある狭い温度範囲で急速に剛性と粘度が低下して流動性が増す温度である。ガラス転移温度Tgは、各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のガラス転移温度(Tg)及び該モノマーの質量分率(質量基準の共重合割合)に基づいて、フォックス(Fox)の式から算出される値である。
なお、本例においてガラス転移温度を表す数値の単位は、特に断りのない限り「℃」である。例えば、三種類のモノマーabcからなる共重合体のガラス転移温度は、記式(7)によって求めることができる。
1/Tg=Wa/Tga+Wb/Tgb+Wc/Tgc (7)
Tga,Tgb,Tgc:各abcモノマーのホモポリマーのガラス転移温度
W:各モノマーの重量
Tg:共重合体のガラス転移温度
上記ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。ここに開示される技術においては、上記ホモポリマーのTgとして、具体的に以下の値を用いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
n−ブチルアクリレート −55℃
エチルアクリレート −22℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
イソボルニルアクリレート 94℃
イソボルニルメタクリレート 180℃
酢酸ビニル 32℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
スチレン 100℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 130℃
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を用いるものとする。「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)にも記載されていない場合には、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする(特開2007−51271号公報参照)。
[1−2−6]エマルジョンE1
本例において、エマルジョンE1は透明シートの形成時に造膜状態にあることが好ましい。エマルジョンE1を造膜させることにより、色材受容層との接触面積を増大させることができる。この結果、透明シートと色材受容層との密着性が向上し、テープ剥離等の試験において透明シート(保護層)と色材受容層との間で剥がれないように制御することができる。
[1−2−7]第1のエマルジョンE1のTg
エマルジョンE1のガラス転移温度Tg1は、50℃より大きく90℃未満であることが好ましい。Tg1は、より好ましくは55℃より大きく80℃未満、さらにより好ましくは55℃より大きく70℃未満である。Tg1を50℃より大きく、さらに好ましくは55℃より大きくすることで、エマルジョンE1のガラス転移温度が高くなって透明シートの膜部分は硬く伸びにくくなり、端部を切るときに、膜が伸びるのを押さえて端部を綺麗に保つことができるので、端部の切れ性が向上する。それに加えて、Tg1を上記範囲に制御することで、樹脂が手の油脂や汗になじみにくくなると共に、膜の伸び性が抑えられ、透明シートに手が触れた場合でも、透明シートが手に密着しにくく、透明シートのべたつきを抑える効果もある。さらにTg1を高くするとエマルジョン樹脂の分子鎖間に働く力が強くなり、アルコール等の薬品に溶解しにくくなって、記録物の耐薬品性を著しく向上させることができる。一方、好ましくは90℃未満、より好ましくは80℃未満、さらに好ましくは70℃未満とすることで、透明シートを形成時の造膜を容易に行うことができ、透明シートと色材受容層の接着性を向上させることができる。さらには、膜の脆さを改善し、耐水試験での透明シートはがれ等を防止することもできる。また、実際の製造工程上、乾燥温度を完全に一定に保つのは難しく、ある程度の幅ができる。乾燥温度に幅がある場合、Tg1とTg2が近い値であると、E1を膜化させようとしたときに過剰な熱がかかり、乾燥温度がTg2を超えて、E2の粒子状態を維持しにくい場合がある。従って、Tg1とTg2が下記式(13)の関係を満たして、Tg2とTg1に10℃程度の差があると、乾燥温度に幅があった場合でも、過剰な熱がかかることなく、E1が膜、E2が粒子の状態を維持しやすくなるため好ましい。Tg1が50℃以下になると、樹脂が手の油脂や汗になじんでしまい、べたつきが発生する。ロール形状にした時のブロッキングも発生しやすい。Tg1が80℃以上になると、E1が造膜しにくいため透明シートと色材受容層の接着性が低下し、透明シートの剥がれが発生しやすい。さらには膜が脆くなり、耐水試験での透明シートはがれが発生しやすくなる。
Tg2−Tg1≧10 (13)
[1−2−8]エマルジョンE1のSP値
また、透明シートにエマルジョンを用いる場合には、エマルジョンE1のSP値と、色材受容層の水溶性樹脂のSP値と、の差の絶対値|ΔSP|が下式(8)の範囲にあることが好ましい。このような範囲に差の絶対値|ΔSP|を設定することにより、エマルジョンE1は色材受容層の水溶性樹脂との相溶性が増し、膜化したエマルションE1と水溶性樹脂との分子間距離が短くなる。そのため、分子間力を高めて、透明シートと色材受容層との密着性を向上させることができる。絶対値|ΔSP|が0.6より大きくなると、相溶性が低下して、膜化したエマルションE1と水溶性樹脂との分子間距離が長くなり、分子間力が低下して接着力が低下するため好ましくない。
0≦|ΔSP|≦0.6 (8)
[1−2−9]エマルジョンE1の材質
上述したエマルジョンE1の材質としては、アクリル系樹脂、酢ビ樹脂、塩ビ樹脂、エチレン/酢ビ共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂又はそれらの共重合体樹脂が好ましい。上記の中でもアクリル系樹脂は、比較的低温での造膜が可能で、塗膜の透明性が高くかつ水溶性樹脂として含有されるけん化ポリビニルアルコールへとのSP値が近く密着性を向上させることができるため、特に好ましく使用される。
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル単独又はこれを用いた共重合体を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは単独、又は組み合わせて用いることができる。さらに、これらの(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体を追加重合して用いることができ、このような単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルプロピル、(メタ)アクリル酸(4) 特開2002−121515ヒドロキシルブチル等の水酸基を有する単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシ基を有する単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基を有する単量体;(メタ)アクリロニトリルニトリル基を有する単量体;スチレン、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香環を有する単量体;(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する単量体;N−アルコキシ基を有する単量体やN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル基を有する単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブチロール(メタ)アクリルアミド等の、N−アルキロール基を有する単量体;ビニルクロライド、ビニルブロマイド、アリルクロライド、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロメチルスチレン、フッ化ビニル等のハロゲン原子が結合した基を有する単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン系単量体等を挙げることができる。以上示した材料の反応性の基を利用して部分架橋することも可能である。
本実施形態に用いられるエマルジョンは、一般的によく知られた公知の技術により合成できるものであり、市販の材料を使うことも可能である。エマルジョンに用いられる樹脂のTgは、モノマー成分とその比率を変えることにより調整することができる。第1のエマルジョンE1は1種類のエマルジョンとしてもよいし、複数のエマルジョンをブレンドして用いてもよい。
[1−2−10]第2のエマルジョンE2
本実施形態において、第2のエマルジョンE2は、透明シートの形成時に粒子状態にある。第2のエマルジョンE2を粒子状態にすることにより、転写時における端部の切れ性を良好にすることができる。
[1−2−11]エマルジョンE2のTg
エマルジョンE2のガラス転移温度Tg2は、90℃以上120℃以下であることが好ましい。より好ましくは95〜115℃、さらにより好ましくは100〜110℃である。エマルジョンのガラス転移温度Tg2は90℃以上、より好ましくは95℃以上、さらにより好ましくは100℃以上である。
この範囲にすることで、図59に示すように、加熱圧着時に、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980と、画像支持体と色材受容層が接着していない部分964の透明シート部分981と、で膜状態が異なるように制御することができる。すなわち、加熱圧着時において、透明シート部分980はヒートロールの熱が伝わりやすいため、エマルジョンE2の一部が膜化して一部粒子が残存した状態(図59(b))、あるいは透明シートのエマルジョンE2が完全に皮膜化した状態(図59(c))になる。一方、透明シート部分981はヒートロールの熱が伝わらないため、エマルジョンE2を粒子状態のままにすることができる。これにより剥離工程では、境界部982を基点としてクラックが入りやすくなる。
さらに上記範囲にすることで、エマルジョンE2の樹脂は伸びにくくなり、さらに手の油脂や汗になじみにくくなるため、透明シートのべたつきが防止できる。加えて、上記範囲にすることでアルコール等の薬品に対する溶解性が低下し、耐薬品性が向上する。またエマルジョンのガラス転移温度Tgを120℃以下、より好ましくは115℃以下、さらにより好ましくは110℃以下にすることで、加熱圧着における熱エネルギーを低エネルギーで効率的に制御でき、画像支持体への過剰な熱エネルギーの付加による熱変形を防止することができる。本発明においては、色材受容層の水溶性樹脂のポリビニルアルコール(PVA)をガラス転移温度の約90℃以上にすることで、色材受容層を画像支持体に転写できる。このため、上記温度範囲であれば、色材受容層を画像支持体に加熱圧着するときに、色材受容層は約90℃まで加熱される過程で、ヒートロール側に近い透明シートがTg2以上に加熱されるため、転写時に過剰な熱エネルギーを与えることなく、エマルジョンE2を膜化させて転写することができる。Tg2が90℃より小さくなると、手の油脂や汗になじみやすくなるためべたつきやすくなり、ブロッキング性も発生しやすくなる。さらに、クラックが入りにくくなり、箔切れ性も低下を招くおそれがある。Tg2が120より大きくなると、加熱圧着における熱エネルギーを高エネルギーが必要となり、画像支持体への過剰な熱エネルギーの付加による熱変形が発生しやすくなる。
[1−2−12]エマルジョンE2の材質
本実施の形態のエマルジョンE2を構成する高分子物質としては、エマルジョンE1と同等のものを使用できる。ただし、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂は、透明シートと基材シートのSPの差SP1を1.1以上に制御でき、基材シートからの剥離性が向上するため、好ましく用いられる。エマルジョンE2に特に好ましいのはウレタン系樹脂である。ウレタン系樹脂とすることで適度なやわらかさを持ち、べたつきが抑えられる。さらには膜の脆さや薬品への溶解性を改善し、アルコールなど薬品に浸漬しても割れやはがれ等が起きにくく、耐薬品性が向上できる。エマルジョンE2は、エマルジョンE1と異なる種類の樹脂を用いることが好ましく、種類の異なる樹脂を用いることで樹脂同士の相溶が起こりにくくなり、転写前の状態で膜と粒子の共存状態が維持しやすい。エマルジョンE1がアクリル系樹脂を用いた場合、エマルジョンE2に特に好ましいのはウレタン系樹脂である。
ウレタン系樹脂としては、例えば、以下に挙げるポリオール化合物とジイソシアネート化合物とを種々組み合わせて、重付加反応により合成されたウレタン系樹脂を挙げることができる。ウレタン系樹脂は特に限定されないが、好ましくはポリエーテル系のポリオール化合物とジイソシアネート化合物から合成されるポリエーテルウレタン系樹脂が好ましい。ポリエーテルウレタン系樹脂は加水分解しにくいので、記録物の耐水性を含む耐久性が向上する。上記ウレタン系樹脂の合成に使用可能なポリオール化合物、およびジイソシアネート化合物は、各々1種を単独で使用してもよい。また、種々の目的(例えば、ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整や溶解性の向上、バインダーとの相溶性付与、分散物の安定性改善等)に応じて、各々2種以上を任意の割合で使用することもできる。
ポリオール化合物としては、2つの水酸基を含有するジオール、若しくは3以上の水酸基を含有するポリオールであれば特に限定されずに用いることができる。例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、アクリル系、ポリブタジエン系若しくはポリオレフィン系等のポリオール、カプロラクトン変性ポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、エポキシ変性ポリオール、アルキド変性ポリオール、ひまし油、フッ素含有ポリオール等のポリオールを単独で用いてもよいし、これらを併用しても良い。
ポリエーテル系ポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール類、エチレンジアミン等の脂肪族アミン化合物類、トルエンジアミン、ジフェニルメタンー4,4−ジアミン等の芳香族アミン化合物、エタノールアミンおよびジエタノールアミン等のようなアルカノールアミン類のような少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド若しくはポリオキシテトラメチレンオキサイドに代表されるアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
ポリエステル系ポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンおよびその他の低分子ポリオールなどから選ばれる少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、その他の低分子脂肪族カルボン酸およびオリゴマー酸などから選ばれる少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトンまたはバレロラクトン等の開環重合体;等が挙げられる。
その他のポリオールとしては、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の低分子ポリオールが挙げられる。
ジイソシアネート化合物は、特に限定されずに用いることができる。ジイソシアネート化合物としては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート,1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート,m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等を挙げることができる。
[1−2−13]エマルジョンE2の平均粒子径
エマルジョンE2の平均粒径としては特に制限はないが、好ましくは1〜200nm、より好ましくは5〜150nm、さらにより好ましくは10〜50nmである。平均粒子径を、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、さらにより好ましくは10nm以上とすることで、加熱圧着時において、画像支持体と色材受容層が接着していない部分964の、透明シート部分980の第2のエマルジョンE2を粒子状態にすることが容易になり、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の、透明シート部分980の境界部でクラックが入りやすくなり、転写後の剥離工程において、端部にバリの発生がなく箔切れ性を良好にすることができる。本発明の転写材では、エマルジョンE2を粒子状態に維持させるため、そのエマルジョンE2の粒径は透明シートの透明性に大きく影響する。エマルジョンE2の平均粒子径を、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらにより好ましくは50nm以下とすることで、透明シートの透明性を良好にすることができる。さらには、粒子径が上記以下の場合は、細かいクラックがはいりやすくなり、端部の切れ性も良好となる。E2の平均粒径が1nmより小さいと、粒子が小さ過ぎて透明シートが膜に近い状態となり、転写時にクラックが入りにくくなって箔切れ性が低下するおそれがある。E2の平均粒径が200nmより大きいと、透明性が低下する。
[1−2−14]エマルジョンE1、E2の混合比率
本発明においては、エマルジョンE1とエマルジョンE2の比率(E1/E2)は下記式(3)を満たすことが好ましく、より好ましくは5.0≦E1/E2≦50.0、さらにより好ましくは10.0≦E1/E2≦35.0を満たすことが好ましい。E1/E2を65.0以下、さらに好ましくは50.0以下、より好ましくは35.0以下にすることで、E2が増加し、粒子成分が増えて、第2のエマルジョンE2を粒子状態で残存させることが容易になり、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980との境界部でクラックが入りやすくなり、端部にバリの発生がなく箔切れ性を良好にすることができる。
すなわち、この範囲にすることで、図59に示すように加熱圧着時に、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980と、画像支持体と色材受容層が接着していない部分964の透明シート部分981と、で膜状態が異なるように制御することができる。加熱圧着時において、透明シート部分980はヒートロールの熱が伝わりやすいため、エマルジョンE2の一部が膜化して一部粒子が残存した状態(図59(b))あるいは透明シートのエマルジョンE2が完全に皮膜化した状態(図59(c))になる。
一方、E1/E2が3.0以上、より好ましくは5.0以上、さらにより好ましくは10.0以上とすることで、E1が増加し、造膜成分が増えて膜強度が向上し、さらに色材受容層との接触面積が大きくなり、色材受容層と透明シートの接着性を向上させることができる。特に、10.0≦E1/E2≦35.0の範囲にすることで接着性と端部の切れ性の向上、およびひび割れ防止を高レベルで両立できる。E1/E2が65.0より大きくなると、粒子成分が少なくなって膜の状態に近づくため、クラックがはいりにくくなって箔切れ性が低下する。また、E1/E2が3.0より小さいと、E2のバインダーとなるE1が少なくなるため、色材受容層形成時に透明シートのエマルジョンのはがれや粉落ちが発生する場合があり、色材受容層を均一に形成することが難しくなる。さらには、膜成分が少なくなるため色材受容層との接着性が低下し、透明シートのはがれが発生しやすくなる。
3.0≦E1/E2≦65.0 (3)
エマルジョンE1とE2の割合(E1/E2)が10より小さい(エマルジョンE2の割合が9.1%より多い)と、透明シートと色材受容層を含む転写材の透明シートにエマルジョンを使用して、一部は造膜、一部は粒子状態にすると、透明シート上に色材受容層を塗工する際の色材受容層が乾燥していくときの収縮に耐え切れず、透明シートのひび割れが発生しやすくなる場合がある。この現象は、色材受容層を含有するタイプの転写材特有の現象であって、水溶性化合物と無機微粒子を含む水性塗工液を透明シート上に塗工する場合にのみ発生する。基材と保護層のみで構成されている転写材では発生しない。特に、本発明のようにインクジェット方式に好ましく用いられる転写材の場合は、色材受容層に大量のインクを吸収させる必要があるため、色材受容層の厚みが大きくなり、塗工量と乾燥時の収縮量も合わせて大きくなるため、塗工時のひび割れが発生しやすい。さらに本発明のように接着性、白切れ性、耐薬品性、べたつき防止を考慮して、透明シート中で膜化しているエマルジョンとして、ガラス転移温度Tg1が50℃より大きいエマルジョン樹脂E1を用いる場合は、エマルジョン樹脂が硬く伸びにくくなり、収縮によってひび割れの現象が非常に発生しやすい傾向にある。以上のことから、本発明のように、基材、色材受容層、透明シートが順次積層され、透明シートがエマルジョンE1とE2を含み、膜化しているエマルジョンE1のガラス転移温度Tg1が50℃より大きく、エマルジョンE2を粒子として残存させている場合は、E1とE2の比率を精密に制御することが重要である。
本実施形態の透明シートが基材シートに当接する場合、基材シートのSP値と透明シートのSP値との差の絶対値|SP1|が下式(11)を満たすように、それらの材料を選択することが好ましい。差の絶対値|SP1|が下式(11)の関係を満たすことにより、透明シートと基材シートは比較的弱い接着状態で積層されることなる。これにより、転写時においては、基材シートが透明シートから剥離しやすくなり、一方、色材受容層と画像支持体との接着性をより強くすることできるため、転写時の転写性を高めることができる。
1.1≦|SP1|≦3 (11)
また、本実施形態の転写材を画像支持体に加熱圧着させて、基材シートを剥離することにより、透明シートを介して、色材受容層に記録された画像を本来の画像として視認することができる。また、転写材を画像支持体に加熱圧着させた場合に、透明シートは色材受容層に記録された画像の保護層として機能する。
透明シートは、JIS K7375に準拠して測定される全光線透過率が50%以上、好ましくは90%以上であることが好ましい。したがって透明シートには、無色透明シートの他、半透明シート、着色透明シート等も含まれる。
[1−2−15]厚さ
透明シートの厚さは、特に制限されない。透明シート層の厚さは、2〜40μmであることが好ましい。透明シートの厚さを好ましくは2μm以上、さらに好ましくは10μm以上とすることにより、透明シートの耐水性や耐擦過性を確保することができる。また、色材受容層の厚さを好ましくは40μm以下、さらに好ましくは20μ以下とすることにより、転写時(加熱圧着時)に色材受容層の空気を十分に逃がして、気泡の発生を抑えることができると共に、色材受容層の透明性を向上させることができる。さらに、透明シートを画像支持体に加熱圧着させる際の熱伝導を良好にして、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができる。また、後述するように画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合には、記録物全体の厚さを、JIS6301に記載される総厚さ0.84mm以下に抑制することが容易となる。
色材受容層に画像を記録するインクとして染料インクを用いる場合には、紫外線による染料の分解(光劣化)を防止するために、透明シートが、UVカット剤を含有するものであることが好ましい。UVカット剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の紫外線吸収剤;酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線散乱剤;等を挙げることができる。
[1−3]基材シート
転写材1は図18のように基材シート50を備えており、基材シート50は、前述したように、透明シート52と共に貫通する細孔(細孔構造または連泡構造)が形成されている。基材シート(「剥離ライナー」または「セパレータ」とも称される。)は、後述する離型層または保護シートの支持体となるシート体である。
基材シートを貫通する細孔は透気性を発現するように構成されており、転写材と画像支持体とを加熱圧着するときの、色材受容層中の空隙に残存する余分な空気、および塗工ムラなどによって生じた色材受容層の凹凸部分と画像支持体との間に残存する空気、色材受容層に吸収されたインク中の水分が蒸発することに発生する水蒸気等を系外に放出することにより、ブリスター、気泡残り等による転写不良を抑制する。細孔の径と分布密度を制御することにより、転写不良を効果的に抑制することができる。
基材シートの材料は、基材シートのSP値と色材受容層のSP値との差SP1が前述した式(10)を満たすような材料であることが好ましく、そのような材料としては、樹脂フィルム等を挙げることができる。
例えば、ポリエステル(PET等)、ナイロン(脂肪族ポリアミド)、ポリイミド、酢酸セルロース、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ゴム、フッ素樹脂、アイオノマー等の樹脂からなる樹脂フィルム;等が好ましい。これらの中でも、耐熱性に優れるPETフィルムが好ましい。樹脂フィルムは、1種を単独で用いること、または2種以上を複合あるいは積層して用いることができる。
[1−3−1]基材シートの細孔の大きさ
基材シートの細孔の大きさについては特に限定されないが、細孔の平均径は0.001μm以上10μm以下が好ましく、より好ましくは0.002μm以上0.8μm以下、さらに好ましくは0.004μm以上0.2μm以下である。水滴の大きさは約100μm程度であり、通常は、数10μm径程度の細孔では、その先端において水の表面張力によるメニスカスが発生する。そのため、細孔の平均径が好ましくは10μm以下とすることで、水分を主体とする色材受容液を塗工した場合に、色材受容液は透過し難にくくなる。しかし、圧力の作用、細孔内面の濡れ性および毛管力などの条件によっては、1μm径程度の細孔であっても、色材受容液や透明シートの構成材料を基材シートに塗工したときに、それらが基材シートの内部まで透過して、基材シートの剥離が困難になるおそれがある。細孔の平均径をより好ましくは0.8μm以下にすることにより十分な水分難透過性を確保し、水分の透過を抑制して、剥離性に優れた色材受容層と透明シートを基材シート上に形成することができる。また、温度湿度気圧などの環境条件、および水に含まれる不純物や溶解成分などに起因する粘度や表面張力に応じて、塗工液の透過しやすさが変化する。さらに、より好ましくは細孔の平均径を0.2μm以下とすることにより、実用上十分な水分難透過性を得ることができる。また、細孔の平均径を好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.002μm以上、さらに、より好ましくは0.004μm以上とすることにより空気や水蒸気を十分に通して、ブリスター、および気泡残り等による転写不良を抑制することができる。反対に細孔の平均径が0.001μmより小さいと色材受容層中の空気や水蒸気を短時間で十分に放出することができず、気泡残りやブリスターが発生しやすくなる。また、細孔の平均径が10μmより大きいと透明シートの塗工液が基材シートの内部まで透過して、基材シートの剥離性が低下する場合がある。
基材シートには、少なくとも色材受容層内の気体を外部に放出可能な細孔が形成されていればよく、基材シートの細孔の大きさは、透明シートの細孔の大きさと同じであってもよく、または異なってもよい。細孔の大きさは、使用者の用途や目的に応じて設定することができる。
[1−3−2]基材シートの細孔の分布密度
基材シートの細孔の分布密度は、前述した透明シートの細孔の分布密度と同等の範囲に設定することが好ましい。このような範囲に基材シートの細孔の分布密度を制御することにより、転写性や基材シートの強度を低下させることなく、ブリスターおよび気泡残り等に起因する転写不良を抑制することができる。
基材シートには、少なくとも色材受容層内の気体を外部に放出可能な細孔が形成されていればよく、基材シートの細孔の密度分布は、透明シートの細孔の密度分布と同じであってもよく、または異なってもよい。細孔の密度分布は、使用者の用途や目的に応じて設定することができる。
[1−3−3]基材シートの厚み
基材シートの厚さは、材料強度等を考慮して適宜することができ、特に制限されない。基材シートの厚さは、5〜200μmであることが好ましい。基材シートの厚さを好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上とすることにより、色材受容層が積層された際に、その積層体のカールを防止することができる。転写材をロール状とする場合には、転写材の製造装置上での搬送性を向上させるために、転写材の厚さを15μm以上とすることが好ましい。転写材をカットシート状とする場合には、カットシートのカールを防止する観点から、転写材の厚さを30μm以上とすることが好ましい。
一方、基材シートの厚さを200μm以下、好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下とすることにより、転写材を画像支持体に加熱圧着させる場合の熱伝達性を良好とすることができる。
[1−4]離型層
転写材は、図1(c)のように離型層51を備えていてもよい。離型層は、離型剤を含有する組成物からなる層であり、基材シート50と透明シート52との間に設けられる。離型層51を備えることによって、透明シート52から基材シート50を容易に剥離することができる。このように離型層を設ける場合には、その離型層にも基材シートおよび透明シートと同様の細孔(細孔構造および連泡構造)を形成することが好ましい。例えば、離型層に対して、後述する図41のように基材シート50および透明シート52に細孔を50A,52Aを形成する場合と同様の処理を施して、細孔を形成することができる。このように、離型層にも細孔を形成することにより、空気および水蒸気を外部に逃がしやすくして、転写時における気泡残りおよびブリスターを抑制することができる。
離型層としては、例えば、特開2015−110321号公報に記載されているものを使用することができる。
[1−5]アンカー層
転写材は、図1(c)の転写材1のようにアンカー層59をさらに備えてもよい。アンカー層59は、透明シート52と色材受容層53との間に配置される。アンカー層を備えることにより、透明シートと色材受容層との接着強度を向上させて、接着強度の不足に起因する透明シートからの色材受容層の剥離を抑制することができる。アンカー層は、色材受容層の水溶性樹脂のけん化度や分子量を上述した範囲にすることにより、色材受容層と透明シートの密着性を向上させて、その相乗効果により高い接着性を得ることができる。アンカー層を設ける場合は、そのアンカー層にも基材シートおよび透明シートと同様の細孔(細孔構造および連泡構造)を形成することが好ましい。例えば、アンカー層に対して、後述する図41のように基材シート50および透明シート52に細孔を50A,52Aを形成する場合と同様の処理を施して、細孔を形成することができる。このように、アンカー層にも細孔を形成することにより、空気および水蒸気を外部に逃がしやすくして、転写時における気泡残りおよびブリスターを抑制することができる。
アンカー層としては、例えば、特開2015−110321号公報に記載されているものを使用することができる。
[1−6]ホログラム層
転写材は、図1(c)の転写材1のように、ホログラム層58をさらに備えていてもよい。ホログラム層58は三次元像が記録された層であり、透明シート52と色材受容層53との間に配置される。ホログラム層を備えることにより、記録物(クレジットカード等)の偽造を防止する効果が得られる。ホログラム層の構成は特に制限されず、従来公知の構成を採用することができる。例えば、レリーフホログラム等を挙げることができる。ホログラム層を設ける場合は、そのホログラム層にも基材シートおよび透明シートと同様の細孔(細孔構造および連泡構造)を形成することが好ましい。例えば、ホログラム層に対して、後述する図41のように基材シート50および透明シート52に細孔を50A,52Aを形成する場合と同様の処理を施して、細孔を形成することができる。このように、ホログラム層にも細孔を形成することにより、空気および水蒸気を外部に逃がしやすくして、転写時における気泡残りおよびブリスターを抑制することができる。
ホログラム層としては、例えば、特開2015−110321号公報に記載されているものを使用することができる。
[1−7]積層構造
転写材は、基本的には、図1(b)の転写材1のように、基材シート50、透明シート52、及び色材受容層53が順次積層された積層構造である。「基材シート、透明シート、及び色材受容層が順次積層」とは、基材シート、透明シート、および色材受容層の相互間に他の層が介在するか否かに拘わらず、基材シート、透明シート、色材受容層がその順序に従って積層されていることを意味する。そのため、図1(c))の転写材1のように、透明シート52と色材受容層53との間にアンカー層59やホログラム層58が存在する構造も、「基材シート、透明シート、及び色材受容層が順次積層」された積層構造に含まれる。
転写材は、図1(b)の転写材1のように、基材シート50、透明シート52、色材受容層53が相互に当接された積層構造であることが好ましい。すなわち、基材シート50と透明シート52との間、および透明シート52と色材受容層53との間に、他の層(シートも含む。)が介在していない構造が好ましい。記録物の対象物となるクレジットカード等は厚さの制限が厳格であるため、積層される層やシートの数を減じて、記録物を薄厚化することが望ましいからである。
図1(c)のように、転写材1が離型層51、アンカー層59、ホログラム層58を備える場合には、色材受容層53、アンカー層59、ホログラム層58、透明シート52、離型層51、及び基材シート50が順次積層された積層構造とすることが好ましい。
[1−8]転写材の形状と厚さ
転写材は、後述する画像記録装置や記録物の製造装置の構造に合わせて、ロール状又はシート状(カットシート状)であってもよい。ロール状の転写材の場合、色材受容層は外側にしても内側にしてもよい。しかし、後述する画像記録装置の搬送機構に最適に対応するように、色材受容層を外側とし、基材シートを内側とするロール状が好ましい。
基材シートの厚さは、色材受容層の厚さの1.5〜5倍であることが好ましい。それを1.5倍以上とすることにより、シート状(カットシート状)の転写材のカールを防止して、画像記録装置や記録物の製造装置における転写材の搬送性を良好にすることができる。一方、それを5倍以下とすることにより、画像支持体に転写材を加熱圧着させる際の熱伝達性を良好にすることができる。
転写材は、熱時剥離型であってもよいし、冷時剥離型であってもよい。熱時剥離型の転写材は、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、それら両部材の積層体の温度が高い状態のまま、基材シートを剥離することが最適な転写材である。一方、冷時剥離型の転写材は、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、それら両部材の積層体の温度が低下した状態で基材シートを剥離することが最適な転写材である。
熱時剥離型の転写材は、画像支持体に転写材を加熱圧着させた後、直ぐに基材シートを剥離することができるため、生産性の面で優れている。例えば、ロール状の転写材を用いて、基材シートの剥離をロール・ツー・ロール(roll to roll)で行うことにより、生産性を向上させることができる。一方、冷時剥離型の転写材は、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、両部材の積層体の温度が低下してからの基材シートの剥離が可能である。そのため、シート状(カットシート状)の転写材を用いる場合等には、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、基材シートを剥離する際のハンドリングが容易になる。
[1−9]転写材の透気度
転写材は、それが全体として透気性を有することにより、転写材の気泡残りおよびブリスターに起因する転写不良を抑制する。転写材の透気度は、5〜500sec/dl、好ましくは10〜300sec/dl、より好ましくは20〜200sec/dlにする。
透気度とは、厚さ方向に空気が通り抜ける度合いであり、通常は、紙などの媒体の表面から裏面、または裏面から表面への、一定量の空気の抜けやすさを示し、媒体の強度にも影響する。透気度を上述した範囲に制御することにより、転写時に、色材受容層、透明シート、および基材シートを通して基材シート側から十分に空気を排出して、ブリスターおよび気泡残りが実使用上問題ない範囲にまで抑制することができる。転写材の透気度は、JIS P 8117:2009に記載の紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法によって測定することができる。
透気度が5sec/dlより小さくになると、転写材の強度が低下して製造時にカールが発生しやすくなり、さらに転写時にしわなどが発生しやすくなるため、透気度を5sec以上、好ましくは10sec/dl以上、より好ましくは20sec/dl以上に制御するとよい。透気度が500sec/dlより大きくになると、空気を排出する速度が遅くなり、気泡残りおよびブリスターが発生しやすくなるため、透気度を500sec/dl以下、好ましくは300sec/dl以下、より好ましくは200sec/dl以下に制御するとよい。
[1−10]製造方法
転写材は、例えば、基材シートと透明シートが積層された積層体に、無機微粒子、水溶性樹脂、及びカチオン性樹脂を含有する塗工液を塗工することにより、製造することができる。以下においては、既に説明した事項についての説明を割愛し、製造方法固有の事項についてのみ説明する。
[1−10−1]基材シート
転写材1は、図1(b)のように基材シート50を備えている。基材シート(「剥離ライナー」または「セパレータ」とも称される。)は、後述する離型層または色材受容層の支持体となるシート体である。
[1−10−1−1]細孔の形成方法
基材シートに細孔を形成する方法としては、種々の方式を適用可能である。例えば、基材シートの製膜工程中、もしくは、その後の工程において、基材シートの構成材料中に成分として含まれる材料によって、連泡構造の細孔を形成するようにしてもよい。図18(i),(j),(k)は、それぞれ発泡剤、多孔質粒子、および中空粒子を用いて連泡構造の細孔が形成される。図35のような細孔構造を有する基材シートおよび透明シートを作成しておき、それらを基材シート上にラミネートないしは積層接着させてもよい。また、図36のように、基材シートを製膜した後、その基材シート上に透明シートを製膜してから、基材シートと透明シートに細孔の形成処理を施してもよい。また、図37のように、転写材を形成してから、基材シートと透明シートに細孔の形成処理を施してもよい。いずれにしても、基材シートが細孔を有する場合、その細孔は、基材シートから透明シートまで貫通して、色材受容層を大気連通させる通路を形成すればよい。このような細孔は、公知の方法を用いて形成することも可能であり、目的および用途に応じて、最適な形成方法を選択すればよい。
[1−10−1−2]発泡剤
発泡剤を用いて、基材内に連泡構造を構成する場合には、発泡剤を含有する塗工液に機械的撹拌を施して、その塗工液に多数の微細な気泡を形成して分散させて、基材シートを形成する。
具体的には、図32のように、発泡剤を含有する塗工液を攪拌して多数の微細の発泡剤553が分散された塗工液を用意し、ダイコーター655Cを用いて、その塗工液から連泡構造の基材シート50を形成する。図32(a)の場合は、ダイコーター655Aを用いて、発泡剤を含有する塗工液により透明シート52を形成した後、その透明シート52に対して、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。その後、ダイコーター655Cを用いて、多数の微細の発泡剤553が分散された塗工液により、連泡構造の基材シート50を形成する。図32(b)の場合は、透明シート52に対して、ダイコーター655Cを用いて基材シート50を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。図32(c)の場合は、ダイコーター65Cを用いて形成した連泡構造の基材シート50に対して、ダイコーター655Aを用いて透明シート52を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。この結果、図18(i)のように、気泡553が連なる連泡構造の基材シート50を含む転写材1が製造される。
発泡剤を含有する塗工液の機械的撹拌方法は特に制限はされず、公知の撹拌翼を有する発泡機、乳化分散等に利用されているホモミキサー、カウレスディゾルバー等の撹拌機、および連続発泡機等を用いて行うことができる。発泡剤を含有する塗工液には、発泡による皮膜形成性を安定化させるために、さらに樹脂を添加することが望ましい。その樹脂としては、色材受容層に添加する水溶性樹脂と同等のものが使用できるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂は必要に応じて、単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。
このような発泡剤を含有する塗工液には、気泡の安定性を向上させるために、整泡剤あるいは発泡剤と称されている、界面活性作用のある材料を適宜選定して配合してもよい。例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸変性物、高級脂肪族のアルカリ塩、高級脂肪酸のアミン塩等の陰イオン性の界面活性剤を配当することにより、特に、樹脂液の発泡性、および分散含有させた気泡の安定性を高めることができる。これら整泡剤あるいは発泡剤の材料は限定はされず、樹脂液の流動性や塗工作業性を考慮して選択することができる。
このような整泡剤あるいは発泡剤の樹脂液に対する配合比率は、樹脂液の固形分100重量部に対して、好ましくは固形分で0〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。その配合比率が30重量部を越えると、多くの気泡を小さく制御できるものの、その気泡により作製した基材シートの断熱性が高くなり、転写性が低下するため好ましくない。
また、発泡剤を含む塗工液に関して、その発泡前の体積に対する発泡後の体積の体積比(以下、発泡倍率という)は、樹脂液の組成とのバランスを考慮して設定すればよい。その発泡倍率は、好ましくは0.5倍を越えかつ10倍以下、より好ましくは1.0倍以上かつ5倍以下である。発泡倍率は、気泡を含有する水分散型樹脂の塗布液中の気泡含有率を示す尺度である。発泡倍率が0.5倍以下では、透明シートおよび基材シートが色材受容層の空隙内の空気、色材受容層凹凸部分と画像支持体との間に残存する空気、および色材受容層に吸収されたインク中の水分が蒸発することに発生する水蒸気を、通過させるに十分な連泡構造を得ることが困難になるため、好ましくない。一方、発泡倍率が10倍以上になると、空隙に内包される空気の量が増加し、基材シートの断熱性が高くなり、転写性能が低下する場合がある。
[1−10−1−3]多孔質粒子
連泡構造の基材シートは、多孔質粒子を含有する樹脂を主成分とした塗工液を製膜して、乾燥することによって形成することができる。例えば、図33のように、ダイコーター655Cを用いて、多孔質粒子554を含有する樹脂材料から基材シート50を形成する。
図33(a)の場合は、ダイコーター655Aを用いて、多孔質粒子554を含有する塗工液から連泡構造の透明シート52を形成した後、その透明シート52に対して、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。その後、ダイコーター655Cを用いて、多孔質粒子554を含有する塗工液によって連泡構造の基材シート50を形成する。図33(b)の場合は、透明シート52に対して、ダイコーター655Cを用いて基材シート50を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。図33(c)の場合は、ダイコーター65Cを用いて形成した連泡構造の基材シート50に対して、ダイコーター655Aを用いて透明シート52を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。この結果、図18(j)のように、多孔質粒子554の多孔質部分が連なる連泡構造の基材シート50を含む転写材1が製造される。
多孔質粒子の材料は特に制限されず、有機物および無機物の両方を用いることがきる。ただし、耐熱性の観点から、多孔質の無機微粒子を用いることが好ましい。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物、リトポン(硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物)、ゼオライト等を挙げることができる。多孔質粒子の含有量に応じて、細孔の密度を制御できる。多孔質粒子の含有量は、エマルジョンの合計量に対して1%〜30%程度が好ましい。その含有量が1%以下になると、気体の透過性が低下して、ひび割れが起こりやすくなる。それが30%以上になると、水の透過性が増大し、色材受容層および透明シートを形成する塗工液が基材シートに浸透して、基材シートの転写性能が低下する。
[1−10−1−4]中空粒子
連泡構造の基材シートは、中空粒子を含有する樹脂を主成分として製膜して、乾燥することによって形成することができる。例えば、図34のように、ダイコーター655Cを用いて、中空粒子555を含有する樹脂材料から基材シート50を形成する。
図34(a)の場合は、ダイコーター655Aを用いて、中空粒子555を含有する塗工液から連泡構造の透明シート52を形成した後、その透明シート52に対して、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。その後、ダイコーター655Cを用いて、中空粒子555を含有する塗工液によって連泡構造の基材シート50を形成する。図34(b)の場合は、透明シート52に対して、ダイコーター655Cを用いて基準シート50を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。図34(c)の場合は、ダイコーター655Cを用いて形成した連泡構造の基材シート50に対して、ダイコーター655Aを用いて透明シート52を形成してから、ダイコーター655Bを用いて色材受容層53を形成する。この結果、図18(k)のように、中空粒子555の中空部分が連なる連泡構造の基材シート50を含む転写材1が製造される。
中空粒子の材料は特に制限されず、無機物および有機物の両方を用いることができる。中空無機微粒子は耐熱性に優れており、例えば、ガラス、シラス、シリカ、アルミナ、セラミックなどを用いることができる。
中空樹脂微粒子は、その製造方法によっていくつかの種類が存在し、例えば、下記(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)ポリマー粒子中に発泡剤を含有させておき、後でこれを発泡させて、中空の粒子を得る方法。
(2)ポリマーにブタン等の揮発性物質を封入しておき、後にこれをガス化膨張させて中空の粒子を得る方法。
(3)ポリマーを溶融し、これに空気等のジェットを吹き付け、気泡を封入する方法。
(4)重合性モノマー成分を水中に分散して水中油滴型エマルジョンを作成し、重合して中空の粒子を得る方法。
(5)ポリマー粒子の内部にアルカリ膨潤性の物質を含有させておき、このポリマー粒子にアルカリ性液体を浸透させてアルカリ膨潤性物質を膨張させて中空の粒子を得る方法。
色材受容層を大気に連通させる細孔を基材シートと透明シートに形成するために、中空樹脂粒子を用いる場合には、その細孔を連泡構造とする必要がある。そのために使用する中空粒子としては、シェルに微細な穴があるものが好ましく、上記(1)〜(5)の中でも(4)または(5)の方法により製造された中空粒子が好ましい。上記(1)〜(3)により製造された中空粒子は、そのシェルに微細な穴がなく、透明シートに入れた場合に、水を系外に放出しにくい。
中空粒子の含有量に応じて、細孔の密度が制御できる。中空粒子の含有量は、エマルジョンの合計量に対して1%〜30%程度が好ましい。それが1%以下になると、水の透過性が低下して、ひび割れが起こりやすくなる。それが30%以上になると、空隙に内容される空気の量が増加し、基材シートの断熱性が高くなり転写性能が低下する
[1−10−1−5]延伸処理
基材フィルムとして、予め細孔構造を有するフィルムを用いてもよく、そのフィルムには、延伸処理を施すことによって細孔を形成することができる。例えば、図39のように、延伸加工装置656によって透明シート52の素材となるフィルムを延伸させることにより、細孔521を形成することができる。
予め細孔構造を有するフィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を延伸加工したePTFEフィルムと、ポリウレタンポリマーと、を複合化して作成された透気性フィルムを用いることができる。この場合には、1平方センチメートルに14億個の微細な孔を形成して、透気性をもたせることができる。このようなフィルムは単層として用いることも可能であり、また透気性の他のフィルムと複層化して用いてもよく、基材シートに積層して用いることができる。つまり、表裏を貫通する細孔構造が構成されている透気性フィルムであれば、好適に用いることができる。そのフィルムとしては、ポリエチレンを主成分として、炭酸カルシウムを分散させたフィルムを延伸加工して得られる多孔質フィルム、およびポリオレフィンを主成分として無機フィラーレスで延伸加工した多孔質フィルムなどを用いることができる。これらのフィルムによっても安定した細孔構造が得られるため、それを、空隙に存在する空気を容易に除去可能な基材シートとして用いることができる。
[1−10−1−6]クレイズ処理
樹脂フィルムに細孔構造を構成する加工法は、上記の延伸処理に特定されず、クレイズ加工を用いてもよい。
例えば、図40のようなクレイズ加工装置651を用いて、樹脂フィルムに細孔構造を構成することができる。すなわちクレイズ処理部653によって、透明なポリフッ化ビニリデンのフィルムを、その分子配向方向に対して略並行に所定の角度652で折り曲げ、その上面および下面に圧力を掛けながら矢印a方向に引っ張る。これによりフィルムには、図40(a)のように、分子配向方向と略平行に、細かな連続的なひび状の模様を成す縞状のクレイズが形成され、そのクレイズによって透明シート52の細孔52Aが形成される。図40(b)のように、透明シート52に基材シート50を接合してから、それらをクレイズ処理した場合には、細孔52A,50Aが形成される。また図40(c)のように、透明シート52に、基材シート50と色材受容層53とを接合してから、それらをクレイズ処理した場合には、細孔52A,40A,53Aが形成される。
クレイズには、樹脂フィルムの表面に現れる表面クレイズと、その内部に発生する内部クレイズがある。基材シートには、それらのクレイズが連結して、基材シートを貫通する細孔が形成されればよい。つまり、クレイズ加工により、基材シートには分子束(フィブリル)と孔(ボイド)とが形成され、それらが部分的に連結して、全体としてスポンジ構造を成すように貫通する細孔が形成されればよい。このような細孔が形成されたフィルムは、空隙に残存する空気が加熱して膨張したときに、その空気を排出する基材シートとして使用することができる。また、クレイズは、熱処理等により緩和されて消失する場合もある。しかし、再度引っ張ることにより再び現れるため、クレイズ加工したフィルムに適切な張力を掛けながら、それを積層することにより、細孔構造の大きさを調整することができる。また、細孔の大きさは、クレイズ加工の際にフィルムを引っ張る力、およびフィルムの上面および下面に掛ける圧力などによって、調整することができる。また、ポリフッ化ビニリデンのフィルムをクレイズ加工することによって、細孔構造を構成することが可能であり、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等のフィルムを用いることもできる。
[1−10−1−7]穿孔加工
図1(b)のように基材シートが細孔構造を持たない場合には、種々の穿孔処理によって、細孔を形成することができる。穿孔処理としては、図41(a),(b)のような針657、拍車650、および刃型などの機械的穿孔加工、あるいは図41(c)のようなレーザ加工装置658によるレーザ加工を用いることができる。
図35のように、基材シート50および透明シート52の単体に対して穿孔処理を施した後、同図(a)から(d)のように、それらをラミネート加工部654によって接合させてから、色材転写層53を積層してもよい。図35(a)から(d)のように、単体の基材シートおよび透明シートに対しては、それらの接合面が位置する側(接合面側)、または接合面の反対側(反接合面側)からの穿孔処理が可能である。このような穿孔処理の方向は、使用者の目的用途に応じて設定することができる。基材シート50に対しては、図35(b),(c)のように反接合面側から穿孔処理することにより、基材シート50における透明シート52の塗工面への影響が小さくなり、その塗工の安定性が増す。基材シートの強度が低下する場合には、図35(a),(d)のように接合面側から穿孔処理することが好ましい。透明シート52に対しては、図35(a),(c)のように非接合面側から穿孔処理することにより、記録物の表面における細孔の開口径が小さくなり、耐水性を含む透明シートの保護性能が向上する。
また、図36のように、基材シート50と透明シート52とを積層してから、透明シート52側または色材転写層53側から穿孔処理を施した後に、色材受容層53を積層してもよい。また、図37のように、基材シート50上に透明シート52と色材受容層53とを積層した後、同図(a),(b),(c)のように穿孔処理を施してもよい。図37(a),(b)の場合は、基材シート50側から穿孔処理され、図37(c)の場合は、色材受容層53側から穿孔処理される。
このような積層状態あるいは転写材の状態における穿孔加工は、基材シート側、または色材受容層側のいずれかでも実施することができ、使用者の目的用途に応じて設定することができる。基材シート側からの穿孔処理は、色材受容層が画質に及ぼす影響が小さいため好ましい。また、基材シート側からの穿孔処理による基材シートの強度低下が大きい場合には、色材受容層側からの穿孔処理が好ましい。また、穿孔処理によって色材受容層に細孔を形成することができるが、色材受容層の表面が荒れて画質に影響する場合には、図37(a)のように、基材シートと透明シートのみに穿孔処理を施すことが好ましい。
[1−10−1−8]穿孔加工(針)
基材シートに細孔構造を付与する簡単な加工方法としては、図41(a),(b)のように、先端が鋭利に尖った針や刃型を押し付けて、透明シートを貫通する細孔を形成する方法がある。
基材シートが薄膜の樹脂フィルムの場合は、小さく圧力による押し付け加工によって穿孔することが可能である。やや厚手の樹脂フィルムの場合は、ガラス転移温度の前後にまで樹脂フィルムを加熱した状態で機械的な穿孔加工を施すことによって、より安定した細孔構造を与えることが可能である。金属やセラミックスなどの先端を鋭利に加工した針列、針ローラ、拍車列、刃型、刃型ロールを用いることにより、好適な細孔構造を連続的に付与し、効率よく穿孔することができる。さらに、鋭利な先端に、ダイヤモンド加工などを施すことにより、その耐久性を向上させることができる。基材シートの穿孔加工は、基材シート単体、基材シート上に透明シートが積層された状態、または基材シート、透明シート、および色材受容層が積層された状態のいずれにおいても実施することができる。
基材シートや転写材の製膜・積層工程中、および画像記録装置の中において、拍車列や針ローラなどを用いて穿孔加工を行う場合には、それらの拍車列や針ローラなどにフィルムの搬送機能を合わせて持たせることが可能である。このように、記録物に対して、透明シートを貫通する細孔構造を機械的に設けてもよく、その方法、装置構成は特に制限されない。
[1−10−1−9]穿孔加工(レーザー)
図41(c)のように、基材シートに細孔構造を付与する簡単な加工方法としては、レーザ加工装置658を用いる方法がある。
基材シートが薄膜の樹脂フィルムの場合には、公知のレーザ加工装置を用いて、良好で安定した細孔構造を生産性良く付与することができる。例えば、特許公報第2706498号には、ワーク表面からの反射レーザ光のレベルを検知して、次の細孔の加工に移行するレーザ加工方法が記載されており、この加工方法を基材シートに細孔構造を付与する方法として適用可能である。基材シートに設けられる細孔の孔径は、レーザ光源の選定およびレーザ光の集光レンズなどの光学系の調整によって設定可能であり、また細孔の間隔は、反射ミラーなどによる光学走査系によって設定可能である。レーザ加工による穿孔加工は、機械的な穿孔加工と同様に、基材シート単体、基材シート上に透明シートが積層された状態、または基材シート、透明シート、および色材受容層が積層された状態のいずれにおいても実施することができる。
レーザ光を照射して基材シートに穿孔加工を施す場合、透明シートや色材受容層などにも微細な細孔が形成される場合がある。しかし、転写材の搬送性やインクジェット記録特性に影響がないように留意して、細孔の径や密度を調整すればよい。また、必要に応じて、レーザ光の照射側とは反対側になる他の層の表面に、レーザ光の反射膜などを設けて、透明シートが効率的にレーザ光を吸収できるようにしてもよい。さらに、透明シートの樹脂に、予め、レーザ光を吸収しやすい微粒子を分散させておいて、レーザ光による穿孔加工性を向上させてもよい。
[1−10−2]透明シート:
透明シートとしては、予め表面改質が行われたものを用いてもよい。透明シートの表面を粗面化する表面改質を行うことにより、透明シートの濡れ性が向上し、色材受容層やアンカー層との密着性を向上させることができる場合がある。表面改質の方法は、特に制限されない。例えば、透明シートの表面に、予めコロナ放電処理やプラズマ放電処理を行う方法;透明シートの表面にIPAやアセトン等の有機溶剤を塗工する方法;等を挙げることができる。これらの表面処理により、色材受容層と透明シートとの結着性が高まり、強度が向上し、透明シートからの色材受容層の剥離を抑制することができる。
透明シートは、他の層やシートとの積層体とした状態で用いてもよい。例えば、アンカー層、透明シート、離型剤を含有する組成物からなる離型層、および基材シートが順次積層された積層シートを用いてもよい。
透明シートの形成は、エマルション含む塗工液を、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法、スロットダイコーティング法等により塗工し、乾燥させることで行なうことができる。このとき、塗工後の乾燥温度をエマルジョンE1のTg以上、エマルジョンE2のTg未満とすることが好ましい。この温度で透明シートを作成することにより、エマルジョンの一方を造膜し、他方が粒子として残存している透明シートを製造することができる。透明シート形成時に、Tg2以上の温度で加熱乾燥するとE1とE2が両方とも造膜した状態となり、剥離工程において、クラックが入りにくくなり、十分な端部の切れ性、基材シートからの剥離性、べたつき防止が得られない。一方、透明シート形成時にTg1より小さい温度で加熱してしまうと、エマルジョンE1,E2が両方とも粒子状態となり、膜が形成しにくくなると共に、膜形成ができたとしても平滑性が低下して、色材受容層への十分な接着性が得られなくなる。また透明シートの強度が著しく低下して、薬品などに浸漬したときの剥がれなども発生しやすくなる。透明シート形成時の乾燥温度が高いと、塗工スピードをあげることができるので、生産性の面において、透明シート形成時の乾燥温度は、上記範囲内においてできるだけ高いほうが好ましい。
[1−10−2−1]細孔の形成方法
基材シートと同様に、透明シートの細孔の形成方法として種々の方式が適用可能である。例えば、図41(a),(b)のような機械的穿孔加工、あるいは図41(c)のようなレーザ加工装置658によるレーザ加工によって細孔を形成することができる。または、基材シートの製膜工程中もしくはその後の工程において、図18(i),(j),(k)のように、透明シートの構成材料中に成分として含まれる材料が連泡構造の細孔を構成するようにしてもよい。また図35のように、細孔構造を有する透明シートを作成しておき、それを基材シート上にラミネートないしは積層接着させてもよい。また図36のように、基材シートを製膜後、その上に透明シートを製膜してから、透明シートに細孔の形成処理を施しても良い。また図37のように、転写材を形成してから、透明シートに細孔の形成処理を施してもよい。このように透明シートが細孔を有する場合、その細孔は、色材受容層を大気に連通させる細孔構造であればよく、公知の方法を用いて形成することも可能である。基材シートと透明シートに対して、同じ方法で細孔を形成してもよく、異なる方法で細孔を形成してもよく、目的および用途に応じて最適な形成方法を選択することができる。
離型層は、基材シートを構成する樹脂フィルム等に、離型層を構成する樹脂やワックスを含有する塗工液を塗工し、乾燥することにより形成することができる。塗工方法としては、従来公知の塗工方法、例えばグラビア記録法、スクリーン記録法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の塗工方法を挙げることができる。離型層を形成する場合には、透明シートおよび基材シートに対する細孔の形成方法と同様の方法によって、細孔を形成してもよい。
[1−10−3]塗工液
色材受容層は、少なくとも無機微粒子、水溶性樹脂及びカチオン性樹脂を、適当な媒体と混合して塗工液を調製し、これを透明シートの表面に塗布し、乾燥させて色材受容層を形成することで得られる。
塗工液の媒体としては、水性媒体を用いることが好ましい。水性媒体としては、水;水と水溶性有機溶剤との混合溶媒;等を挙げることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、
メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
テトラヒドロフラン等のエーテル類;等を挙げることができる。
塗工液には、本発明の効果を妨げない限り、各種添加剤を含有させることができる。反転画像を記録するインクとして染料インクを用いる場合には、染料固着剤を含有させることが好ましい。染料固着剤は染料分子のアニオン性基と結合して塩を形成して、染料を水に対して不溶化させることにより、マイグレーションを防止することができる。
その他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、インク定着剤、ドット調整剤、着色剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤等を挙げることができる。
塗工液中の無機微粒子の濃度は塗工液の塗工性等を考慮して適宜決定すればよく、特に制限はない。ただし、塗工液の全質量に対し、10〜30質量%とすることが好ましい。
[1−10−4]塗工
色材受容層の形成は、例えば、基材シート及び透明シートの積層体を構成する透明シートの表面に、塗工液を塗工することにより行う。塗工後は、必要に応じて塗工液の乾燥を行う。これにより、図1(b)のように、基材シート50、透明シート52、及び色材受容層53が順次積層された積層構造の転写材1を得ることができる。
アンカー層、透明シート、離型層、及び基材シートが順次積層された積層シートを用いる場合には、積層シートを構成する透明シートの表面に、塗工液を塗工すればよい。これにより、図1(c)のように、色材受容層53、アンカー層59、透明シート52、離型層51、及び基材シート50が順次積層された積層構造を有する転写材1を得ることができる。
塗工方法としては、従来公知の塗工方法を用いることができる。例えば、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、スロットダイコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法等を挙げることができる。
塗工液の塗工量は、固形分換算で10〜40g/m2とすることが好ましい。塗工量を好ましくは10g/m2以上、さらに好ましくは15g/m2以上とすることにより、インク中の水分吸収性に優れた色材受容層を形成することができる。これにより、記録された反転画像中のインクが流れ、および反転画像の滲みを抑制することができる。一方、塗工量を好ましくは40g/m2以下、さらに好ましくは20g/m2以下とすることにより、塗工層を乾燥させる際に、転写材にカールが発生し難くなる。また、色材受容層の厚さを薄くすることにより、最終的に形成される記録物の厚さを薄厚化することができる。画像支持体がクレジットカード等のプラスチックカードである場合には、日本工業規格(JIS−X−6305)により厚さが厳格に規定されているため、塗工量とすることが有効である。なお、色材受容層用塗工液の塗工時に乾燥工程を設ける場合は、乾燥温度をエマルジョンE2のTg2未満にする必要がある。透明シート形成時の乾燥工程によって、色材受容層用塗工液を塗工するときには、エマルジョンE1が造膜し、エマルジョンE2が粒子状態となっている。色材受容層塗工時の乾燥温度がTg2以上になるとエマルジョンE2が造膜し、透明シート全体では、E1とE2の両方が膜化した状態になり、転写材を転写するときにクラックが入りにくくなって、端部の切れ性が低下する。
[1−11]画像
図60(a)は、転写材を模式的に示す斜視図である。転写材は、その色材受容層に画像が記録される。図60(a)のように、色材受容層53には、色材受容層53の側から見ると鏡像となり、透明シート52の側から見ると正像となる反転画像72が記録されることが好ましい。反転画像72は、透明シート52が積層されていない色材受容層53の面に記録される。インクジェット記録方式は、従来の熱転写方式と比較して、記録物の生産性及び情報セキュリティーが向上して、記録コストの低減を図ることが可能となる。
転写材に記録される画像は、染料インクにより形成された画像であってもよいし、顔料インクにより形成された画像であってもよい。ただし、画像は、顔料インクにより形成されることが好ましい。顔料インクにより反転画像を形成することにより、色材受容層の表面にインク中の水分や溶媒が残存し難くなり、乾燥が容易となる。この結果、水分や溶媒に起因する画像支持体と転写材(具体的には、色材受容層)との接着不良、およびマイグレーション(インクの移動)を効果的に抑制することができる。さらに、顔料インクにより反転画像を形成することにより、その反転画像の耐光性を向上させることができる。
顔料インクは、図60(b)のように、その顔料インク中の顔料成分63は粒子径が大きい。そのため顔料成分63は、空隙吸収型の色材受容層64においては、その色材受容層64を形成する無機微粒子65によって構成される細孔の内部までは浸透せずに、色材受容層64の記録表面で定着する。また、空隙吸収型の色材受容層64は、膨潤型の色材受容層とは異なり、色材受容層64が膨潤することなく平滑に保たれる。一方、膨潤吸収型の色材受容層の場合は、図61(a)のように、インク中の水分により色材受容層67が膨潤して、色材受容層67の表面に凹凸が発生するため、画像支持体に対する色材受容層67の接着性を低下させてしまう。また、インク中の残存水分や溶媒は、色材受容層66の表面に残って、加熱圧着工程における残存水分及び溶媒の蒸発により画像支持体と色材受容層66との密着性を低下させる可能性があるため、好ましくない。
また、空隙吸収型の色材受容層64においては、図60(b)のように、顔料インク中の顔料成分63は色材受容層64の表面で定着し、一方、インク中の水分及び溶媒成分62は、色材受容層64の内部まで浸透して、顔料成分63と分離(固液分離)する。そのため、転写時には色材受容層64の表面が乾燥した状態になるため、水分の蒸発に起因する接着不良を抑制して、接着性を向上することができる。また、残存水分及び溶媒成分62は色材受容層64の内部に留まるため、顔料成分63は、再度、残存水分及び溶媒成分62が接触することがなく、インクの移動(マイグレーション)を抑制することができる。一方、染料インクの場合には、図61(b)のように、残存水分の影響により、染料成分68が溶媒成分69のように移動(マイグレーション)してしまい、にじみが発生する。
顔料インク中の顔料成分としては、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、およびスルホン基のうちの少なくとも1種の官能基またはその塩を結合された自己分散顔料、あるいは顔料粒子の周りを樹脂で被覆した樹脂分散型の顔料を用いることができる。それらの中でも後者の樹脂分散型の顔料は、記録画像の擦過性が向上するため好ましい。また、樹脂分散型顔料を用いることによって、インク媒体と分離した後の顔料粒子同士の結着力を高めて、色材受容層の表面に顔料膜を形成することができる。この場合、顔料膜の表面上の水分は少量となる。これは、顔料膜が色材受容層中の下層の水分をほぼ遮断し、さらに下層からの水分補給もほぼ遮断するからである。そのため、樹脂分散型の顔料成分は、インクの高速定着および高速記録に適しており、好ましい。なお、色材受容層にカチオン性樹脂を含有させることにより、一般的にマイナス帯電している顔料粒子は、カチオン性樹脂と静電気的に結合して、色材受容層と顔料インクとの接着性を強固にする。また、顔料インクとして樹脂分散型顔料を使用する場合には、その分散樹脂と色材受容層中のカチオン性樹脂のSP値を近い値にすることが好ましい。これにより、樹脂分散型顔料の色材受容層への接着性が向上する。このような分散樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のアクリル樹脂を用いることが好ましい。
また、分散樹脂は色材受容層の水溶性樹脂のポリビニルアルコールなどのSP値と値が近いため、転写時の熱で分散樹脂および水溶性樹脂が溶融すると両者の相溶性が高まり、樹脂分散顔料は色材受容層にも強固に接着される。そのため、記録画像の表面が顔料膜で覆われても、色材受容層との結着性を高めることができる。
さらに、分散樹脂のSP値は、画像支持体のPVC、PET−GなどのSP値と値が近いため、転写時の熱で分散樹脂および画像支持体表面の構成成分(PVC、PET−Gなど)が溶融すると両者の相溶性が高まり、樹脂分散顔料は画像支持体に強固に接着される。これにより、記録画像の色材受容層表面が顔料膜で覆われても、画像支持体との結着性を高めることができる。よって、画像支持体に対する色材受容層の転写性能を向上させることができる。
顔料粒子の周りを被覆する樹脂としては、酸価100〜160mgKOH/gである(メタ)アクリル酸エステル系のランダム共重合体が好ましい。酸価を100mgKOH/g以上とすると、サーマル方式でインクを吐出するインクジェット記録方式において、インクの吐出安定性が向上する。一方、酸価を160mgKOH/g以下とすると、顔料粒子に対して相対的に疎水性を有するようになり、インクの定着性及び耐滲み性が良好となる。したがって、インクの高速定着および高速記録に適する。
ここで酸価とは、1gの樹脂を中和するのに必要となるKOHの量(mg)であり、その親水性を示す指標となり得るものである。また、この場合の酸価は、樹脂分散剤を構成する各モノマーの組成比から計算により求めることもできる。具体的な顔料分散体の酸価の測定方法としては、電位差滴定により酸価を求める、Titrino(Metrohm製)等を使用することができる。
顔料分散体で使用する樹脂は、疎水性の顔料を水系液媒体中に良好に分散させる分散機能を有するものであることが好ましく、ランダムコポリマーが使用される。ランダムコポリマー以外、例えばブロックコポリマー等は、顔料の親水性が高くなるものが多く、印字画像の耐水性が劣るものが多いため好ましくない。顔料分散体で使用する樹脂の製法は、常法によるものであり、例えば、特許4956917号に開示されている方法を用いることができる。尚、顔料インクの各成分と物性の好ましい範囲については、例えば、特開2015−110321号公報に記載されているものを使用することができる。
[1−12]画像の記録
転写材に対しては、前述したように、透明シートが積層されていない色材受容層の面に画像を記録する。その画像は、色材受容層の側から見ると鏡像となり、透明シートの側から見ると正像となる反転画像である。その結果、図2(a)のように、転写材1の色材受容層53に反転画像72が記録されて、記録媒体(画像が記録された転写材)が形成される。
インクジェット記録方式とは、記録ヘッドに形成された複数のノズルから、転写材に対してインク(インク滴)を吐出して画像を記録する方式である。インクジェット記録方式の種類は、特に制限されない。例えば、駆動パルスに応じてヒータが発する熱エネルギーによって、ノズル内のインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用してノズルからインク滴を吐出させる、サーマルインクジェット記録方式が好ましい。
インクジェット記録方式による画像の記録は、インクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)により実施することができる。インクジェットプリンタは、画像の記録時に、記録ヘッドと転写材とが接触しないため、画像を極めて安定して記録することができる点において好ましい。インクジェットプリンタの種類は、特に制限されない。例えば、インク吐出口及びインク流路等からなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを、転写材の搬送方向と直交するように多数配列させたラインヘッドを備えた、フルライン型のインクジェットプリンタを用いることが好ましい。フルライン型のインクジェットプリンタは、転写材の搬送に合わせて、複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させて画像の記録を行う。そのため、高品位で高解像度の画像を高速で記録することができる。
フルラインヘッドは、例えば、ノズル列を形成する複数のノズル流路に連通する共通液室と、その共通液室と連通する開口部と、その開口部と連通するメイン液体供給室と、そのメイン液体供給室と連通する液体供給路と、その液体供給路と連通する液体供給室と、を含む。その液体供給室は、供給フィルターによって、液体の供給方向の上流側の第1液体供給室と、下流側の第2液体供給室と、に分離される。さらに、メイン液体供給室の一部に設けられた気液分離部と、その気液分離部と連通する空気室と、を備える。ノズル流路、共通液室、開口部、メイン液体供給室、液体供給路、液体供給室、供給フィルター、気液分離部、および空気室は、ノズル流路の配列方向と液体の吐出方向とを含む平面に対して、平行な平面上に配置される。メイン液体供給室、液体供給路、供給フィルター、気液分離部、および空気室は、各々積層することなく配置されることが好ましい。
このような構成のフルラインヘッドには、前述した樹脂分散型の顔料インクが適する。すなわち、気液分離部を有するヘッドにおいては、ノズルから発生する泡を効果的に除去でき、一方、インクが増粘しやすくなりリフィル性能が低下するおそれがあるため、高速記録においては、インク物性に厳密な調整が必要となる。しかし、前述した樹脂分散型の顔料インクは、このような調整を容易なものとする。
記録ヘッドのインクの吐出量としては、20pl以下であることが好ましい。インクの吐出量を好ましくは20pl以下、さらに好ましくは10pl以下、特に好ましくは5pl以下とすることにより、転写材と画像支持体との加熱圧着工程において、インクの水分量を適切なレベルにコントロールすることができる。また、吐出量を小さくするほど、色材受容層でのインクの広がりを抑えて、稠密で十分な濃度の反転画像を記録することができる。さらには、画像層(インク層)の厚さを抑えることが可能となる。
また、記録方式として、記録面に対する記録ヘッドの相対的な移動走査と、画像が記録された転写材の搬送と、を繰り返す、シリアルヘッド型のインクジェット記録方式を用いてもよい。このような記録方式は、熱転写方式の記録速度に比べて十分な優位性があり、また液滴を小さくして高品位な画像を容易に記録することができる。
また画像は、画像支持体よりも大きなサイズで転写材に記録することが好ましい。これにより、転写材の記録画像を記録物の画像支持体に転写して、結果的に、その画像支持体に対して、良好な画像をふち無し記録することができる。仮に、インクジェット方式によって、直接、画像支持体にふち無し記録を行った場合には、その画像支持体のエッジ部分にインクが吸収されて、そのエッジ部分に記録される画像の品位が低下するおそれがある。しかし、本実施形態のように、画像支持体よりも大きなサイズの画像を転写材に記録して、その画像を画像支持体に転写することにより、画像支持体のエッジ部に対しても良好な画像を記録することができる。
[1−12−1]マーキング処理
また、画像を記録する際に、後述する転写工程における自動ラミネート機(転写部)に転写材を位置合わせするために、マーキングを印刷することが好ましい。転写材に対して、記録物の画像支持体のサイズに対応する記録領域と、その外側の領域と、を含む範囲に画像を記録して、それを転写することにより、上記のように画像支持体にふち無し記録を行うことができる。位置合わせ用のマーキングは、これらの領域の外側に印刷される。このマーキングを後述する透過または反射型のセンサで読み取ることにより、転写時における貼り合わせ位置を正確に規制することができる。また、転写材がカットシート形状である場合には、記録領域の外側に、マーキングに加えて、貼り合わせガイドを印字することにより、転写時における貼り合わせの位置調整を容易に行うことができる。
[1−12−2]インクの乾燥
画像が記録された転写材は、画像を形成しているインクジェット記録用のインクの水分量が、インクの総打ち込み量に対して70質量%以下となるまで乾燥することが好ましい。インクの水分量を好ましくは70%質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下とすることにより、画像支持体と転写材とを加熱圧着させる際に、インク成分の急激な蒸発を抑制することができる。この結果、画像支持体と転写材との密着強度の低下、および色材受容層における気泡残り等の発生を抑制することができる。なお、ここにいう水分量とは、色材を除く水及び不揮発性溶媒等の総量を意味するものとする。
インクの総打ち込み量は、記録ヘッドのインク吐出量により調整することができる。水分量の制御を容易に行えるように、予め、画像記録時に形成するインクのドット数を間引く等して、打ち込み量を制限してもよい。
乾燥は、ハロゲンヒータ等のヒータ(熱源)、またはファン等の排気装置等の特別な乾燥装置によって行うことができ、また後述するヒートロールに巻き付けることによっても行うことができる。特に、ヒートロールに巻き付ける場合は、乾燥と、色材受容層内に残存する空気を加熱膨張させる予備加熱と、を同時に実行できるため、処理の高速化および装置が小型化を図ることができる。ヒートロールに巻き付けて乾燥を行う場合には、色材受容層からの水分蒸発により結露が生じるおそれがある。この場合には、例えば、ヒートロール上に、後述する図9のファン10等の排気装置を設けることにより、結露の発生を効果的に抑制することができる。また、ヒータ等の特別な乾燥手段を設けずに、十分な長さの搬送路によって転写材を搬送させることによって、インクの自然乾燥を促してもよい。
[1−13]プライマー層
本実施の形態においては、図5および図68のように、画像記録後の転写材1の色材受容層53の表面に、プライマー層56をさらに備えてもよい。プライマー層として、例えば、特開2015−110321号公報に記載されているものを使用することができる。
[2]記録物
記録物は、上述のように、画像を支持する画像支持体上に、画像が転写された色材受容層と、透明シートと、が順次積層されたものである。
具体的に記録物73は、図1(a)のように、画像が支持される画像支持体55と、画像が記録された記録媒体と、を備える。記録媒体は、図1(b)のような転写材1の色材受容層53に画像が記録されて、基材シート50が剥離されたものである。記録物は、前述した図27のように構成することができ、画像支持体55に、画像が記録された転写材1の色材受容層53および保護シート52が転写される。色材受容層53を覆う透明シート52には、前述したように、細孔52Aが形成、または連泡構造553,554,555が構成される。
[3]記録物の製造方法
画像支持体、色材受容層、及び透明シート、を備えた記録物は、工程1,2,3を含む製造方法によって製造される。工程1においては、基材シートと、透明シートと、色材受容層と、が積層された転写材の色材受容層に、インクジェット記録方式などにより画像を記録して、画像が記録された転写材(記録媒体)を得る。工程2においては、その記録媒体の色材受容層を画像支持体に加熱圧着する。工程3においては、記録媒体から基材シートを剥離して記録物を得る。機材シートと透明シートには、図19のように予め細孔が形成されていてもよい。また、前述しように穿孔工程によって透明シートに細孔を形成してもよく、図20および図21(b),(c)の場合には工程2の前、図21(a)の場合は工程1の前に、穿孔工程(工程4)によって細孔が形成される。
以下、具体的に、記録物の製造方法における工程2および工程3について説明する。
図3(a)は、転写材1を画像支持体55に貼付した積層体84を模式的に示す断面図である。図3(b)および図54は、図3(a)の積層体84から基材シート50を剥離した記録物73を模式的に示す斜視図である。
転写材1は、図3(a)のように、その色材受容層53が画像支持体55に貼り付けられる。これにより、画像支持体55、色材受容層53、透明シート52、および基材シート50が順次積層された積層体84が形成されて、色材受容層53に記録された反転画像72が画像支持体55に貼り付けられる。その後、図3(b)および図54のように、積層体84から基材シート50を剥離することにより記録物73が得られる。
[3−1]画像支持体
画像支持体の構成は、特に制限されない。画像支持体としては、例えば、樹脂を構成材料とする画像支持体(樹脂ベース支持体)、紙を構成材料とする画像支持体(紙ベース支持体)等を挙げることができる。樹脂ベースの画像支持体は非吸収性であり、この画像支持体側から空気が抜けることがないため、画像転写時の気泡残りが発生しやすい。したがって、このような樹脂ベースの画像支持体に画像を転写するときは、本発明のように透明シートと基材シートに透気性をもたせることにより、気泡残りの発生を効果的に抑制することができる。樹脂ベース支持体としては、例えば、クレジットカード、ICカード等の樹脂製カードを挙げることができる。紙ベース支持体としては、例えば、パスポート等の紙製冊子、および紙製カード等を挙げることができる。
[3−1−1]樹脂ベース支持体
樹脂ベース支持体を構成する樹脂は、画像支持体の用途に応じて適宜選択すればよく、特に制限されない。例えば、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂;
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂;
ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体等のポリフッ化エチレン系樹脂;
ナイロン6、ナイロン6,6等の脂肪族ポリアミド樹脂;
ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体樹脂;
三酢酸セルロース、セロハン等のセルロース系樹脂;
ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;
ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の、その他の合成樹脂;を挙げることができる。
樹脂ベース支持体を構成する樹脂は、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂であってもよい。また、樹脂ベース支持体は、樹脂を主たる構成材料としているものであればよく、例えば、属箔等の樹脂以外の材料を含むものであってもよい。
[3−1−2]紙ベース支持体
紙ベース支持体を構成する紙の種類は、特に制限されない。例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、サイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙等を挙げることができる。
[3−1−3]その他
樹脂ベース支持体及び紙ベース支持体は、必要に応じて、エンボス、サイン、ICメモリ(ICチップ)、光メモリ、磁気記録層、偽変造防止用記録層(パール顔料層、透かし記録層、マイクロ文字等)、エンボス記録層、ICチップ隠蔽層等を備えてもよい。また、樹脂ベース支持体及び紙ベース支持体は、上述の材質からなる単層体として構成してもよいし、材質や厚さの異なるシートやフィルムを2層以上貼り合わせた複層体として構成してもよい。
さらに、画像支持体の全体の厚さは、30〜800μmであることが好ましい。画像支持体の厚さを好ましくは30μm以上、さらに好ましくは500μm以上、特に好ましくは650μm以上とする。一方、画像支持体の厚さを好ましくは800μm以下、さらに好ましくは770μm以下とする。画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合には、インクジェット記録物全体の厚さをJIS6301に記載される総厚さ0.68〜0.84mmに制御することができる。
[3−2]積層構造
記録物73は、図3(b)および図54のように、画像支持体55、色材受容層53、及び透明シート52が順次積層された積層構造を有している。また、図54の記録物73における透明シート52は、貫通する細孔52Aを有している。
[3−2−1]積層構造への細孔形成
予め細孔が形成されていない転写材を使用する場合には、図21のように、基材シート50側から、基材シート50および透明シート52に細孔50A,52Aを形成することができる。このような細孔は、図41(a),(b),(c)のような針657、拍車650、および刃型などによる機械的な穿孔加工、あるいは図41(c)のようなレーザ加工装置658などによる穿孔処理によって、形成することができる。色材受容層にも細孔を形成してもよい。しかし、画像品位を良好に保つためには、基材シートと透明シートに対してのみ細孔が形成することが好ましい。
[3−3]記録媒体と画像支持体との加熱圧着
図3(a)のように、画像支持体と、画像が記録された転写材(記録媒体)1と、が重ねた状態で加熱圧着されることにより、積層体84が得られる。
加熱圧着の温度は、60〜160℃に制御することが好ましい。加熱圧着の温度を好ましくは60℃以上とすることにより、色材受容層中のカチオン性樹脂、水溶性樹脂等の樹脂やプライマー層(又はアンカー層)に含まれる熱可塑性樹脂を接着に十分な程度に溶融させて、画像支持体と転写材とを圧着させることができる。一方、加熱圧着の温度を好ましくは160℃以下とすることにより、画像支持体と記録媒体とを加熱圧着させる際に、インク成分の急激な蒸発を抑制して、画像支持体と記録媒体との密着強度の低下、色材受容層における気泡残り等の発生を抑制することができる。
記録物におけるエマルジョンE2は、転写条件(例えば、転写温度や転写速度)を調整することにより、十分に皮膜化した状態で転写することもでき、または、一部粒子が残った状態で転写することもできる。図59に示すように加熱圧着時に、画像支持体55と色材受容層が接着している部分963の透明シート部分980と、画像支持体と色材受容層が接着していない部分964の透明シート部分981と、で膜状態が異なるように制御することができる。すなわち、加熱圧着時において、透明シート部分980はヒートロールの熱が伝わりやすいため、エマルジョンE2の一部が膜化して一部粒子が残存した状態(図59(b))。あるいは透明シートのエマルジョンE2が完全に皮膜化した状態(図59(c))になる。このとき、一部あるいは完全に膜化したエマルジョンE2は、予め膜化しているエマルジョンE1と結合力が強化されて透明シートの膜強度を強化することができる。一方、透明シート部分981はヒートロールの熱が伝わらないため、エマルジョンE2を粒子状態のままにすることができる。透明シート部分980と透明シート部分981では膜の状態が異なるため、剥離工程では、境界部982を基点としてクラックが入りやすくなる。以上から、2種類のエマルジョンを用いて、エマルジョンE2の膜状態を、加熱圧着時の温度を利用して変化させることにより、箔切れを良好することができる。使用者の要求する性能に応じて、エマルジョンE2の一部粒子が皮膜化した状態と、エマルジョンE2完全に膜化した状態と、を使い分けることができる。
加熱圧着の方法は、特に制限されない。例えば、画像支持体に記録媒体を積層して積層体とし、その積層体を一対のヒートローラ間に挟み込んで加熱圧着する方法等を挙げることができる。その場合、ヒートローラの表面温度は、100〜180℃とすることが好ましい。これにより、積層体の搬送速度が速くて加熱時間が十分にとれない場合でも、積層体を60〜160℃に加熱することができる。
図5および図23から図25のような後述する製造装置25を用いる場合には、画像支持体55側に接するヒートローラ22として、シリコーンローラを使用することが好ましい。シリコーンローラはSP値が8.7付近になるため、ヒートロータ21,22の間に画像支持体55が存在しないとき、つまり色材受容層53がヒートローラ22に接するときに、ヒートローラ22に対して色材受容層53が付着し難くなる。したがって、ヒートローラ22への色材受容層53の転写を防止することができる。ヒートローラ21は、基材シート50側から記録媒体を加熱する。
[3−4]基材シート及び離型層の剥離
図3(a)の積層体84から基材シート50を剥離することにより、インクジェット記録物73が得られる。この記録物73において、最上層に位置する透明シート52は、その下層側の色材受容層53に記録された反転画像72を保護する。プライマー層を備える場合、画像支持体55は、プライマー層を介して色材受容層53に十分に密着固定される。
転写材が熱時剥離である場合には、加熱圧着後、温度が下がらないうちに、直ちに基材シートを剥離することが好ましい。熱時剥離タイプの場合は、図4(a)のような分離爪86を備えた剥離機構、または図4(b)のような剥離ロール88を用いて、基材シートを剥離することが好ましい。このような剥離方法は、転写材をロール・ツー・ロール(roll to roll)によって供給する場合、つまりロール状の転写材を繰り出して供給し、その転写材の基材シートをロール状に巻き取る場合に、生産性を高める上において有効である。
転写材が冷時剥離型の場合は、温度が下がっても基材シートを剥離することができる。そのため、ロールやピール機構による剥離だけでなく、手動による剥離も可能になるため、特に、基材シートがカットシート状に加工されている場合に好適である。転写材をロール・ツー・ロール(roll to roll)によって供給する場合の剥離角度θは0〜165°であり、さらに好ましくは90°〜165°である。この剥離角度θを設定することにより、後述する転写材のプレカット処理により分離されたパッチ部分が不用意に剥がれたり、めくれたりすることが防止できる。図4(b)における搬送角度θは、上記の角度のみに限定されない。
加熱圧着および剥離工程においては、公知の2本ロールタイプ、あるいは4本ロールタイプのラミネート機を使用してもよい。4本ロールタイプは、2本ロールタイプに比べて、加熱圧着時の熱が伝わりやすく、剥離工程を容易に行うことができるため、好ましく使用される。
[3−5]両面同時剥離
画像支持体の両面のそれぞれに、画像が記録された転写材を同時に転写する場合には、上面転写材と下面転写材における画像の記録位置をずらすことが好ましい。
[4]インクジェット記録装置
図22(a)の記録装置は、転写材を搬送経路に送り出す供給部4と、その搬送経路に送り出された転写材の色材受容層に、色材を付与して画像を記録する記録部6と、を備える。予め透明シートと基材シートに細孔が形成されていない転写材を用いる場合には、図22(b),(c)のように画像の記録(工程1)の前、または画像の記録後において、透明シートと基材シートに細孔を形成するための穿孔部659を備える。
[4−1]インクジェット記録装置
具体的に、記録装置としては、記録ヘッドに形成された複数のノズルから、転写材にインク(インク滴)を吐出して画像を記録するインクジェット方式の記録装置(インクジェットプリンタ)を用いることができる。このような記録装置は、画像の記録時に記録ヘッドと転写材とが接触しないため、極めて安定的に画像を記録することができて好ましい。インクジェットの記録方式は特に限定されず、サーマル方式およびピエゾ方式は、いずれも好適に使用できる。駆動パルスに応じて発熱するヒータの熱エネルギーによってノズル内のインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して、ノズルからインク滴を吐出させるサーマルインクジェット記録方式は、他の記録方式に比して高解像度であるため好ましい。また、インク吐出口およびインク流路などからなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを、転写材の搬送方向と直交するように多数配列させたラインヘッドを備えた、フルライン型のインクジェットプリンタを用いることが好ましい。このフルライン型のインクジェットプリンタは、転写材の搬送に合わせて、複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させて画像を記録する。そのため、高品位で高解像度の画像を高速に記録することができる。
[4−2]細孔形成
前述したように、透明シートと基材シートに予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図22(b),(c)の記録装置において、機械的穿孔加工あるいはレーザ加工によって、透明シートと基材シートに細孔を形成することができる。
[5]記録物の製造装置
記録物の製造装置は、図22のような記録装置と、画像支持体を搬送経路に送り出す画像支持体供給部と、搬送経路に送り出された画像支持体に転写材を加熱圧着させる加熱圧着部と、転写材から基材シートを剥離する剥離部と、を備える。透明シートと基材シートに予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図21および図22のような穿孔工程に対応する穿孔部659を備える。
[5−1]第1の製造装置
図5は、透明シートおよび基材シートに予め細孔が形成されている転写材を用いて、記録物を製造する製造装置25の第1の構成例(以下、「第1の製造装置」ともいう。)を模式的に示す側面図である。
[5−1−1]主要な構成
製造装置25は、供給部4と、記録部6と、を備える。供給部4は、透明シートと色材シートに予め細孔が形成されていてロール状に巻かれた転写材1を、搬送経路へと送り出す。記録部6は、搬送経路へ送り出された転写材1に、色材、水、および不揮発性の有機溶媒等を含有する水系インクを直接吐出して、反転画像を記録する。
また、製造装置25は、インクが付与された転写材1の中の水分を蒸発させて、画像支持体55との密着性を向上させるための乾燥部7と、蒸発した水分によって、装置内の結露を防止するファン10と、を備える。さらに、製造装置25は、反転画像が記録された色材受容層および透明シートを画像支持体55に加熱圧着させる加熱圧着部29と、を備える。さらに、加熱圧着後の画像支持体55のカールを矯正するカール矯正部150、基材シートを剥離する剥離部151、両面記録を行う際に画像支持体55を反転させる画像反転部152、および画像が記録された画像支持体55を排出して集積する排出部26を備える。
[5−1−2]動作
供給部4は、色材受容層が外側に位置するように巻かれたロール状の転写材1を、図中の矢印に示す方向に回転させることにより、転写材1を記録部6へ送り出す。転写材1は、不図示のガイド板によって案内されると共に、グリップローラ3とニップローラ2により挟持されて、平坦な状態で記録部6へと搬送される。
供給部4から転写材1の搬送が開始されると、マーキングをセンサ部31が検出し、その転写材1の色材受容層に記録部6が反転画像を記録する。その後、転写材1は乾燥部7を通過する。乾燥部7は、反転画像を形成するインク中の水などを蒸発させ、ファン10は蒸発した水分を排気する。これにより、色材受容層に反転画像が記録された転写材1が得られる。このとき、前述したマーキング印刷も行う。
一方、供給部12は、加熱圧着部に画像支持体55を1枚ずつ供給する。レジストガイド14が画像支持体55と転写材1とを位置合わせし、その画像支持体55の上に転写材1が積層される。画像支持体55と転写材1との積層体は、加熱圧着部29に搬送される。加熱圧着部29は一対のヒートローラ21,22を備えており、それらのローラ間を積層体が通過する際に、画像支持体55と転写材1とが加熱圧着される。
その後、画像支持体55と転写材1との積層体は、カール矯正部150に搬送されてカールが矯正されてから、剥離部151において、転写材1の基材シート及び離型層が剥離されて巻取りロール24に巻き取られる。また、両面記録を行う場合には、画像反転部152によって画像支持体55を反転させて、それをレジストガイド14までバックフィードさせる。そして記録部6において、表面記録時と同様に、画像支持体55の裏面に転写すべき反転画像を転写材1の色材受容層に記録し、レジストガイド14までバックフィードさせた画像支持体55の裏面に、その反転画像を転写させる。このようにして、画像支持体55に転写材1が加熱圧着された記録物を得ることができる。
[5−1−3]第1の製造装置とコントローラとの接続
製造装置25は、図8のように、ネットワーク47を経由してコントローラ41に接続される。この製造装置25は、ネットワーク47を介さずに、シリアル・ポート、パラレル・ポート、またはUSBポート等を介して、コントローラ41に接続することも可能である。製造装置25の制御部44に備わるCPUは、前述した記録部、乾燥部、加熱圧着部、カール矯正部、剥離部、画像反転部に接続されていて、それらの動作を制御する。
ネットワーク47は、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワークであり、有線、無線を問わない。コントローラ41は、製造装置25を制御するためのコンピュータである。コントローラ41において、制御部44、表示部45、入出力部46、記憶部42、および通信部43は、システム・バス48を介して互いに接続されている。コントローラ41には、デジタルカメラ、画像データ等を読み込むためのドライブ装置、および製版装置等を接続してもよい。
制御部44は、CPU、RAM、およびROM等を有する。CPUは、ROM等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、演算処理および動作制御を行って、システム全体を制御する。ROMは不揮発性メモリであり、プログラムおよびデータ等を恒久的に保持する。RAMは揮発性メモリであり、プログラム、およびデータ等を一時的に保持する。
表示部45は、CRTモニタ、または液晶パネル等のディスプレイ装置であり、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を含む。入出力部46は、データの入出力を行う部分である。データの入力を行うものとしては、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等であり、これらの入力部を介して、コントローラ41に対して、操作指示、動作指示、データ入力、維持管理等を行うことができる。また、入出力部46に不図示のスキャナやドライブ装置等を接続することにより、これらの外部装置からの入力データを制御部44に転送したり、データを外部装置に出力したりすることができる。
記憶部42はデータを記憶する装置であり、磁気ディスク、メモリ、光ディスク装置等を用いることができる。記憶部42には、制御部44が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(Operating System)等が格納される。また、製造装置25の記録部6によって記録されるパターンを格納することもできる。通信部43は、コントローラ41とネットワーク47間の通信を媒介する通信インターフェースであり、通信制御装置および通信ポート等を有する。コントローラ41の代りに、パーソナルコンピュータ等を用いることも可能である。
[5−1−4]制御系
図7は、図5の記録部6に備わる制御系の構成を示すブロック図である。ホストPC120から送信された記録データやコマンドは、インターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、記録部6の記録データの受信、記録動作、転写材1のハンドリング等、全般的な制御を司る演算処理装置である。CPU100は、受信したコマンドを解析した後、記録データの各色成分の画像データをイメージメモリ106にビットマップ展開する。画像の記録前に、出力ポート114およびモータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動する。また、記録ヘッド22(22K、22C、22M、22Y)をキャッピング位置(待機位置)から記録位置(画像形成位置)に移動させる。記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、それぞれブラック(Bk)、シアン(C),マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する記録ヘッドである。その後、一定速度で搬送される転写材に対して、インクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するために、センサ部31(先端検出センサ)によって転写材の位置を検出する。その後、転写材の搬送に同期して、CPU100は、イメージメモリ106から各インク色に対応する記録データを順次に読み出し、その記録データを、記録ヘッド制御回路112を介して対応する記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに転送する。これにより、記録ヘッドの各ノズルに設けられた吐出エネルギー発生素子(ヒータやピエゾ素子など)が記録データに基づいて駆動され、駆動された吐出エネルギー発生素子に対応するノズルからインク滴が吐出される。吐出されたインク滴は、記録ヘッドの対向位置にある転写材の色材受容層(インク受容部)へ着弾して、ドットを形成する。このドットの集合によって、所望の画像が記録される。
このようなCPU100の動作は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブル等が記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108が使用される。
[5−1−5]第1の製造装置の動作フロー
次に、図8のフローチャートにしたがって、図5の製造装置(第1の製造装置)25の動作フローについて説明する。この動作フローにしたがう処理は、図7の記録部のCPU100によって実行される。
記録部のCPUは、記録データがコントローラからネットワークまたは各種ポートを介して送信されたか否かを判定し(ステップS101)、記録データが送信されたときに、供給部からの画像が未記録の転写材の供給を開始させる(ステップS102)。そして、マーキングをセンサ部が検出していなければ、つまりセンサ部がOFFであれば、記録部が転写材に対する記録動作を開始する(ステップS103,S104)。記録動作の終了後(ステップS105)、乾燥部の乾燥処理によって、画像が記録された転写材から余分な水分を蒸発させる(ステップS106)。その後、レジストガイドにおいて、画像支持体と転写材とを位置合わせする(ステップS107)。その位置合わせの完了後、加熱圧着部において転写材と画像支持体とを接着させる(ステップS108,S109)。以上の動作は、いずれもセンサ部がマーキングを検出した時点を基準としている。
一方、CPUによって、記録データが送信されたと判定されたときに、画像支持体の供給部から加熱圧着部へ画像支持体が給送される(ステップS107A,S108A)。レジストガイドにおいて、画像支持体と転写材とを位置合わせする(ステップS111)。その位置合わせの完了後、加熱圧着部において転写材と画像支持体とを接着させる(ステップS112,S113)。その後、剥離部へと搬送されるに伴って、転写材の基材シートが剥離され、記録物(最終記録物)を排出部に排出して積載させる(ステップS114)。
[5−1−6]第1の製造装置により実行される処理
[5−1−6−1]転写材の位置検出
図5のセンサ部31は、加熱圧着部の動作の同期をとるために転写材1の位置を検出し、CPUは、その検出結果に基づいて各部の制御を行う。マーキングの検出には、反射型又は透過型の光センサを用いる。
[5−1−6−2]プレカット処理
必要に応じて、転写材に色材受容層を形成した後に、色材受容層の側から、色材受容層と透明シートの一部に切り込みを入れるプレカット処理を行ってもよい。プレカット処理は、反転画像が記録された転写材と画像支持体とを接着した後に、切り込みを起点にして透明シートを綺麗に切断することができる。これにより、均一な厚さの透明シートによって強固な保護層を形成して、色材受容層に形成された反転画像に十分な耐久性を付与することができる。
プレカット処理としては、特開2015−110321号公報に記載の処理方法が挙げられる。
[5−1−6−3]記録処理
前述したように、インクジェット方式の記録装置によれば、記録ヘッドと転写材とが非接触であるため画像を安定的に記録することができ、またフルライン型の場合には、高解像度の高品位の画像を高速に記録することができる。
図5の製造装置25において、転写材1は、グリップローラ3とニップローラ2とに挟持されつつ、不図示のガイド板上を通過して記録部6に入る。記録部6は、画像データに応じて記録ヘッド6からインクを吐出することにより、転写材1の色材受容層に画像を記録する。
[5−1−6−4]水分蒸発制御
画像の転写時に、インクを含む色材受容層の表面にインクが残存していると、その色材受容層と画像支持体との密着不良が生じるおそれがある。その転写時の加熱により、色材受容層の表面に残るインク成分やインクが急激に蒸発して、密着不良や色材受容層の部分的な気泡残り等が生じるおそれがある。そのため、画像が記録されてから転写されるまでの間の転写材の搬送路において、その転写材を乾燥させることが好ましい。その場合、ヒータ等の特別な乾燥手段を設けずに、転写前の転写材の搬送路を十分に長くして自然乾燥を促してもよい。また、蒸発したインク成分を考慮して、記録装置内部の気流制御および排気手段が必要となる場合もある。図5の製造装置25においては、インク画像が記録された転写材1が乾燥部7と不図示のガイド板との間を通る際に、ハロゲンなどの熱源、送風機、またはそれら組み合わせた乾燥部7によって、インクの主成分である水や若干の揮発性溶剤成分を蒸発させる。また、その蒸発した気体の記録装置内における結露等を防ぐために、ファン10によって気流および排気を制御する。気流の制御を併用することによって、色材受容層の表面の飽和蒸気圧を改善して乾燥を促進させることもできる。
このようなインクの水分制御によって、加熱圧着部29における加熱圧着工程時に、色材受容層中のインクの水分量(色材を除く水と不揮発性溶媒等の総量)をインクの総打ち込み量に対して、好ましくは70%以下、さらに好ましくは50%以下に制御する。インクの水分量が70%以上残る場合には、色材受容層の厚さにもよるが、色材受容層の表面に残るインク成分やインクの急激な蒸発により、密着不良や色材受容層の部分的な気泡残り等が生じるおそれがある。また、インクの総打ち込み量は、記録ヘッドの吐出量により異なるが、上記のような水分制御が適切に行われるように、予め、画像の記録時にドット数を間引く等して適正な量に設定することができる。
[5−1−6−5]加熱圧着工程
図5のように、画像が記録された転写材1は不図示のガイド板に案内されて、ヒートローラ21,22を含む加熱圧着部29に移動する。枚葉状のシート形態の画像支持体55は、供給部12に積載されており、レジストガイド14によって位置を補正されてから、転写材1の搬送に合わせて加熱圧着部29に供給される。供給部12は、画像支持体55における画像の転写面へのゴミ付着、およびピックアップ時によるゴムロールからの汚染を防止するため、下側に位置するものから供給される。
画像が記録された転写材1の色材受容層と、画像支持体55と、が当接するように、転写材1と画像支持体55とを重ねてヒートローラ21,22間に搬送して、加熱圧着することにより、画像支持体55と転写材1とが接着される。その後、転写材1の基材シートを剥離する。これにより、画像支持体55は、画像が記録された色材受容層と共に透明シートが接着された状態となる。つまり、画像支持体55上には、透明シートが保護膜として最上層に位置し、その保護膜の下に画像が位置する。
転写時における転写材への加熱は、プラスチックカード等の厚めの画像支持体側からでなく、主として転写材の基材シート側からの熱伝達によって行う。加熱圧着部29による加熱圧着工程において、色材受容層の最大到達温度は、色材受容層の水溶性樹脂成分をガラス転移温度以上で、かつインクの主成分たる水の蒸発温度を超えないように制御すればよい。つまり、転写材1と画像支持体55とを接着させる際のヒートローラの表面温度は、色材受容層の水溶性樹脂が十分に溶融し、かつ水が蒸発して転写材1と画像支持体55との間に気泡を生じさせない温度であればよい。また、搬送速度等が速くて、熱源による加熱時間が十分に確保できない場合には、熱源と色材受容層とに温度差が生じるおそれがある。この場合には、ヒートローラの表面温度は、100〜180℃等、通常よりも高くなるように制御してもよい。また、閉空間内において加熱した場合には、圧力上昇によって沸点が上昇して、プライマー層と透明シート層とに挟まれた色材受容層では水の蒸発温度は上昇するため、密着性および端部の箔切れ性に考慮してさらに高い温度となるように制御してもよい。
[5−1−6−6]予備加熱
必要に応じて、画像支持体55を加熱して転写材1との密着性を向上させるために、予備加熱部を供給部12と加熱圧着部との間に設けてもよい。予備加熱により、転写材1が加熱圧着される前の画像支持体(カード等)55の表面を適度に加熱することができる。
[5−1−6−7]カール矯正
図5のように、画像支持体55と転写材1とを加熱圧着させた後に、カール矯正部150によって画像支持体55のカールを矯正して、それをフラットにする。画像支持体55が温かいうちに、それをカール矯正部150における加熱プレートと支持プレートとの間に挟み込むことにより、その画像支持体55のカールを矯正することができる。
[5−1−6−8]剥離処理
図5のように、加熱圧着部29を通過した転写材1における基材シート50は、画像の記録領域以外の部分が剥がされて、巻取りロール24に巻き取られる。また画像が転写された画像支持体55は、排出部26に搬送されて一枚ずつ集積される。
[5−1−6−9]画像反転装置
画像支持体55の両面に画像を転写する場合には、図5のように、製造装置25に画像反転部152を備えることが好ましい。画像支持体55の一方の面(表面)に画像が転写されて、その面から基材シート50が剥離された後の画像支持体55(記録物)は、反転装置152により上下が反転される。その記録物は、他方の面(裏面)に画像を転写するために、レジストガイド14までフィードバックされる。これと同時に転写材1もフィードバックされ、そのフィードバック後、記録部、加熱圧着部、カール矯正部、および剥離部において表面の画像記録時と同様の処理を行なって、記録物の裏面に画像が転写される。
製造装置25には、図9のように、転写材1の搬送経路上のインクジェット画像記録後に、転写材1にプライマーを転写するための転写部13を備えてもよい。プライマーは、レジストガイド14において位置合わせされた画像支持体55を転写材1に接着させるためのものである。
転写部13には、転写材1が1枚ずつ供給される。転写部13において、プライマーシートは、供給ロール15(プライマー供給ロール)から供給され、サーマルヘッド30と転写材1との間を通り、ガイドロール16を経由して巻上げロール17(プライマー巻上げロール)に巻き取られる。サーマルヘッド30によって、転写材1にプライマーが転写される。サーマルヘッド30は、プライマーの厚さや材質等により変化する熱容量に応じたエネルギーが印加されることにより、発熱して、プライマーを転写材1に移行させて接着層を形成する。サーマルヘッド30がプライマーシートを部分的に加熱(選択的加熱)することにより、IC部等、表面コートを施したくない特殊な部分に対しては、プライマーを転写させない選択的なプライマー転写が可能となる。転写材1の全面にプライマー層を付与する場合には、ヒートローラ等の安価な加熱手段を用いてプライマー転写を行うことが可能である。
[5−2]第2の製造装置
図23は、記録物の製造装置の第2の構成例(以下、「第2の製造装置」ともいう)の説明図である。第2の製造装置25は、透明シートおよび基材シートに予め細孔構造が構成されていない転写材1を用いる。この第2の製造装置は、図56のように、前述した第1の製造装置に対して、透明シートおよび基材シートに細孔を付与するための穿孔部659を備えた構成となっている。この穿孔部659は、図57のようにCPU100の制御下において、図58(a)のように記録動作の開始前に、転写材1の透明シートおよび基材シートに細孔を付与する(ステップS103A)。第1の製造装置と同様の部分についての説明は省略する。
穿孔部659は、転写材の色材受容層側もしく基材シート側のどちら側からでも細孔を形成することができる。記録画像の品位を良好に保つためには、図23のように、基材シート側から穿孔することが好ましい。また、このような穿孔加工は、透明シートと基材シートに細孔が形成できればよい。このような細孔は、図41(a),(b)のような針657、拍車650、刃型などの機械的の穿孔加工、図41(c)のようなレーザ加工装置658によるレーザ加工、あるいは図40のようなクレイズ加工によって形成することができる。
[5−3]第3の製造装置
図24は、記録物の製造装置の第3の構成例(以下、「第3の製造装置」ともいう)の説明図である。第3の製造装置25は、透明シートおよび基材シートに予め細孔構造が構成されていない転写材1を用いる。この第3の製造装置は、穿孔部659の配備位置が第2の製造装置と異なる。すなわち、第3の製造装置における穿孔部659は、画像記録後の転写材1の透明シートに対して細孔を付与するように配備されている。第2の製造装置と同様の部分についての説明は省略する。
[5−4]第4の製造装置
記録物の製造装置の第4の構成例(以下、「第4の製造装置」ともいう)においては、プリンタ部と転写部とが分離独立して構成されている。
図10(a)は、転写材1に画像を記録するプリンタ301の斜視図であり、図10(b)および図11(a)は、転写材1を搬送する搬送機構302の説明図である。まず、図11(a)の巻き出しロール313に、図11(b)のように色材受容層53が外側にして巻かれたロール状(外巻きロール)の転写材1をセットする。転写材1は、搬送ベルト310によって記録ヘッド311と対向する記録位置に搬送され、反転画像が記録されてから、巻き取りロール314によって記録媒体として巻き取られる。
次に、画像が記録済みのロール状の転写材(記録媒体)1を、図12のラミネート機の巻き出しロール201にセットする。画像支持体55が供給部206から供給され、転写材1は巻き出しロール201から転写部203へ搬送される。転写材は、センサ208によってマーキングが検知され、画像支持体55と位置合わせされてから、転写ロール204によって画像支持体55と加熱圧着される。その後、転写材1の基材シート50が剥離ロール207によって剥離されてから、巻き取りロール202によって巻き取られる。なお、図13(a)のように、基材シート50を外側にし、色材受容層53を内側にして巻かれたロール状(内巻きロール)の転写材1を用いる場合には、図13(b)のように構成された搬送パスを用いる。このような内巻きのロール形態においては、色材受容層の表面に対するゴミの付着を防止することができる。
透明シートおよび基材シートに予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図45(a),(b)のように記録ヘッド311による画像の記録工程の前後において、穿孔部659により透明シートおよび基材シートに細孔を形成することができる。または、図46のようにラミネート機による転写工程の前において、穿孔部659により透明シートおよび基材シートに細孔を形成してもよい。また、穿孔部659は、プリンタ部と転写部から独立させた穿孔加工装置を構成するものであってもよい。この場合、転写材の状態において細孔を形成するためには、プリンタ部と転写部の間に、図51のような独立した穿孔部を設けることが好ましい。
[5−5]第5の製造装置
記録物の製造装置の第5の構成例(以下、「第5の製造装置」ともいう)においては、プリンタ部と転写部とが分離独立して構成されている。この製造装置は、図14のように、転写材1に画像を記録した後に、その転写材1をカット機構315によってシート状にカットしてから、排出部316に排出する。カットされた転写材1は、その後、図15のように、手動によって画像支持体55と位置合わせされた後、転写部203を構成する転写ロール204によって加熱圧着されてから、排出部205に排出される。その後、基材シートを手動で引き剥がして記録物を得る。また、転写材に画像する記録するときに張り合わせガイドを同時に記録することにより、その張り合わせガイドに画像支持体55が沿うように目視により確認しつつ、それらを手動により位置合わせすることができる。
予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図47(a),(b)のようにカット機構315による転写材1のカット工程の前後において、穿孔部659により透明シートに細孔を形成することができる。または、図48のようにラミネート機による転写工程の前後において、穿孔部659により透明シートに細孔を形成してもよい。また、穿孔部659は、プリンタ部と転写部から独立させた穿孔加工装置を構成するものであってもよい。この場合、転写材の状態において細孔を形成するためには、プリンタ部と転写部の間に、図52のような独立した穿孔部を設けることが好ましい。
[5−6]第6の製造装置
記録物の製造装置の第6の構成例(以下、「第6の製造装置」ともいう)においては、プリンタ部と転写部とが分離独立して構成されている。
図16(a)は、カットシート状に加工された転写材1に画像を記録するプリンタ401の斜視図であり、図16(b)は、プリンタ401における搬送機構402の概略構成図である。プリンタ401の供給部にセットされた転写材1は、搬送ベルト310によって記録ヘッド311と対向する記録位置に搬送され、反転画像が記録されてから、記録媒体として排出部414に排出される。その後、画像が記録済みの転写材1と画像支持体55とを図15のラミネート機より加熱圧着してから、手動により基材シートを引き剥がすことにより、記録物を得る。また、転写材に画像する記録するときに張り合わせガイドを同時に記録することにより、その張り合わせガイドに画像支持体55が沿うように目視により確認しつつ、それらを手動により位置合わせすることができる。
予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図49(a),(b)のように記録ヘッド311による画像の記録工程の前後において、穿孔部659により透明シートおよび基材シートに細孔を形成することができる。または、図48のようにラミネート機による転写工程の前において、穿孔部659により透明シートおよび基材シートに細孔を形成してもよい。また、穿孔部659は、プリンタ部と転写部から独立させた穿孔加工装置を構成するものであってもよい。この場合、転写材の状態において細孔を形成するためには、プリンタ部と転写部の間に、図51のような独立した穿孔部を設けることが好ましい。
[5−7]第7の製造装置
第7の製造装置は、プリンタ部と転写部とが分離独立したものである。第7の製造装置は転写材をカットシート状に加工し、その転写材に、シリアルヘッドを搭載したプリンタによって画像を記録し、その後、公知のラミネーターによって、転写材の画像を画像支持体に転写させる。図9のようなプリンタ部と転写部とが一体の製造装置において、シリアル型のインクジェットプリンタを用いる場合には、プリント部と転写部との間において、転写材および画像支持体の搬送速度に差を生じる場合がある。このような速度差を吸収及び調節するためには、転写材および画像支持体に弛みをもたせる必要がある。プリント部と転写部とを独立させた分離型の場合には、プリント部と転写部における処理を各々の最適な速度で実施することができるため好ましい。また、転写材に画像する記録するときに張り合わせガイドを同時に記録することにより、その張り合わせガイドに画像支持体55が沿うように目視により確認しつつ、それらを手動により位置合わせすることができる。
図17は、転写材1に画像を記録するシリアルプリンタ501の斜視図であり、供給部513に転写材1がセットされる。転写材1は、搬送ロール510によって記録ヘッド502と対向する記録位置に搬送され、反転画像が記録されてから排出される。記録ヘッド502を矢印a,b方向に移動させつつ、記録ヘッド502のノズルからインクを吐出する動作と、矢印a,b方向と交差(本例の場合は、直交)する方向に転写材1を搬送する動作と、繰り返すことによって、画像を記録する。その後、画像が記録済みの転写材と画像支持体とを図15のラミネート機により加熱圧着させてから、手動で基材シートを引き剥がすことにより、記録物を得る。
予め細孔構造が構成されていない転写材を用いる場合には、図50(a),(b)のように記録ヘッド502による画像の記録工程の前後において、穿孔部659により透明シートと基材シートに細孔を形成することができる。または、図48のようにラミネート機による転写工程の前において、穿孔部659により透明シートおよび基材シートに細孔を形成してもよい。また、穿孔部659は、プリンタ部と転写部から独立させた穿孔加工装置を構成するものであってもよい。この場合、転写材の状態において細孔を形成するためには、プリンタ部と転写部の間に、図53のような独立した穿孔部を設けることが好ましい。
以上の第1から第7の製造装置においては、転写材が基材上に少なくとも透明シートと色材受容層を有している場合に、転写材を画像支持体に加熱圧着させる工程において、色材受容層のインク水分量の制御と加熱圧着時の温度制御とが行われる。これにより、転写材の透明シートと画像支持体との密着性を向上させて、耐候性、耐水性、耐薬品性、および耐ガス性等の各種耐久性に優れた記録物を提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例によっていかなる制限を受けるものではない。なお、以下の記載における「部」、「%」は特に断らない限り質量基準である。
(実施例1)
[透明シート形成用塗工液の合成]
アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg101℃)1部と、を加えて5分攪拌混合し、積層シート用塗工液を得た。
[積層シート(転写材の構成素材)の製造]
透明シート形成用の塗工液をPET基材シートの表面(厚さ25μm)に塗工した後、乾燥することにより、細孔が形成されていない透明シートおよび基材シートを含む転写材の構成素材としての積層シートを製造した。塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は5g/m2とした。乾燥温度は90℃とした。透明シートの厚さは5μmであった。
[細孔の形成]
積層シートに、図36中の(a)の細孔形成方法によって機械的な穿孔処理を行い、細孔が形成された透明シートと基材シートを含む転写材を製造した。穿孔処理には、図41(a)のような針657を用いた。細孔の分布密度は、1平方mm当たり1つの孔が存在する密度とし、細孔径は0.02μmとした。細孔が形成された層(実施例1では保護シートと基材シート)については、表内の通路場所に○をつけている。表内に○が付いていない場合はその層には細孔は形成されていないことを示す。
[アルミナ水和物分散液の調製]
ベーマイト構造(擬ベーマイト構造)を有するアルミナ水和物A(商品名「Disperal HP14」、サソール製)20部を純水中に添加し、さらに酢酸0.4部を添加して解膠処理を行うことにより、アルミナ水和物分散液を得た。アルミナ水和物分散液におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は、140nmであった。次いで、分散液に対して、ホウ酸0.3部を添加して、ホウ酸添加アルミナ水和物分散液を得た。
[ポリビニルアルコール水溶液の調製]
ポリビニルアルコール(商品名「PVA235」、クラレ製)をイオン交換水に溶解して、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が3,500、けん化度が87〜89mol%、SP値は9.4であった。
[色材受容層形成用の塗工液の調製]
ホウ酸添加アルミナ水和物分散液100部に、ポリビニルアルコール水溶液27.8部を加え、さらにカチオン性樹脂としてポリアリルアミン3.0部を加えてスタティックミキサーにより混合し、色材受容層形成用の塗工液を得た。ポリアリルアミンとしては、融点が83.3℃、重量平均重合度が1,600のポリアリルアミン(商品名「PAA−01」、日東紡製)を用いた。
[転写材の製造]
細孔が形成された積層シートの透明シートの表面に、混合直後の色材受容層形成用の塗工液を塗工して、乾燥することにより、空隙吸収型の色材受容層を備えた転写材を製造した。塗工液の塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は15g/m2とした。乾燥温度は60℃とした。転写材は、色材受容層を外側、基材シートを内側にしてロール状に巻くことにより、ロール状転写材とした。色材受容層の厚さは10μmであった。
このようにして得られた実施例1の転写材に、上述した第1の製造装置を用いて、顔料インクにより記録デューティー60%の60%ベタ画像を記録した。その後、その転写材を画像支持体に加熱圧着させた後、基材シートを剥離することにより、実施例1の記録物を得た。顔料インクの調製法については、後述する。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。加熱圧着の条件は、温度160℃、圧力3.9Kg/cm、搬送速度50mm/secとした。基材シートを剥離する際の引き剥がし角度は90°とした。色材受容層のSP値と、画像支持体のSP値と、の差SP2は0.1であった。
[顔料インクの調製]
<(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の合成>
撹拌装置と、滴下装置と、温度センサと、上部に窒素導入装置を有する還流装置と、を取り付けた反応容器に、メチルエチルケトン1,000部を仕込み、そのメチルエチルケトンを撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸2−ヒドロキシエチル63部、メタクリル酸141部、スチレン417部、メタクリル酸ベンジル188部、メタクリル酸グリシジル25部、重合度調整剤(商品名「ブレンマーTGL」、日本油脂社製)33部、及びペルオキシ−2−エチルヘキサン酸−t−ブチル 67部を混合して得た混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で10時間反応を継続させて、酸価110mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)89℃、重量平均分子量8,000の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液(樹脂分:45.4%)を得た。
<水性顔料分散体の調製1>
冷却機能を備えた混合槽に、フタロシアニン系ブルー顔料1,000部、上記の合成により得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液、25%水酸化カリウム水溶液、及び水を仕込み、撹拌及び混合して混合液を得た。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)は、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で40%の比率となる量を用いた。また、25%水酸化カリウム水溶液としては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)が100%中和される量を用いた。さらに、水は、得られる混合液の不揮発分を27%とする量を用いた。得られた混合液は、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置に通し、循環方式により4時間分散させた。分散液の温度は40℃以下に保持した。
混合槽から分散液を抜き取った後、水10,000部で混合槽と分散装置との流路を洗浄し、洗浄液と分散液とを混合して希釈分散液を得た。得られた希釈分散液を蒸留装置に入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、濃縮分散液を得た。室温まで放冷した濃縮分散液を撹拌しながら2%塩酸を滴下して、pH4.5に調整した後、ヌッチェ式濾過装置にて固形分を濾過して水洗した。得られた固形分(ケーキ)を容器に入れ、水を加えた後、分散撹拌機を使用して再分散させ、25%水酸化カリウム水溶液によってpH9.5に調整した。その後、遠心分離器を使用し、6000Gで30分間かけて粗大粒子を除去した後、不揮発分を調整して水性シアン顔料分散体(顔料分:14% 酸価110)を得た。
フタロシアニン系ブルー顔料を、カーボンブラック系ブラック顔料、キナクリドン系マゼンタ顔料又はジアゾ系イエロー顔料に変更したことを除いては、水性シアン顔料分散体と同様にして、水性ブラック顔料分散体、水性マゼンタ顔料分散体、又は水性イエロー顔料分散体を得た。
<インクの調製>
下表3に示す組成(合計:100部)となるように、水性顔料分散体及び表3に示す各成分を容器に投入し、プロペラ撹拌機を使用して30分以上撹拌した。その後、孔径0.2μmのフィルター(日本ポール社製)で濾過して、顔料インクを調製した。なお、表3中の「AE−100」は、アセチレングリコール10モルエチレンオキサイド付加物(商品名「アセチレノールE100」、川研ファインケミカル製)を示す。
(実施例2)
細孔の分布密度を1平方mm当たり1孔から5平方mm辺り1孔に変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例2における細孔径、細孔密度分布、通路場所は表4に記載した。
(実施例3)
細孔の分布密度を1平方mm当たり1孔から10平方mm辺り1孔に変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例3における細孔径、細孔密度分布、通路場所は表4に記載した。
(実施例4)
透明シートおよび基材シートの細孔径を0.02μmから0.002μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例4における細孔径、細孔密度分布、通路場所は表4に記載した。
(実施例5)
透明シートおよび基材シートの細孔径を0.02μmから0.7μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例5における細孔径、細孔密度分布、通路場所は表4に記載した。
(実施例6)
透明シートおよび基材シートの細孔径を0.02μmから0.001μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例6における細孔径、細孔密度分布、通路場所は表4に記載した。
(実施例7)
透明シートおよび基材シートの細孔径を0.02μmから10μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例7における細孔径、細孔密度分布、通路場所は表4に記載した。
(実施例8)
透明シートおよび基材シートの細孔径を0.02μmから100μmに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。実施例8における細孔径、細孔密度分布、通路場所は表4に記載した。
(実施例9)
透明シートおよび基材シートの細孔径を0.02μmから0.0005μmに変更した以外は実施例1と同様にして、転写材および記録物を得た。実施例9における細孔径、細孔密度分布、通路場所は表4に記載した。
(実施例10)
[基材シートの製造]
細孔構造を有する基材シートとして、炭酸カルシウム含有のPETフィルムを延伸加工して、厚さ25μmのPETフィルムを作成した。
[透明シートの製造]
細孔構造を有する透明シートとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を延伸加工したePTFEフィルムと、ポリウレタンポリマーと、を複合化して作成された厚さ5μmの防水透湿フィルムに、基材シート(厚さ25μm)にラミネートして、積層シートを製造した。積層シートの透明シートは、防水性と透湿性とをもつ。
[転写材の製造]
実施例1の積層シートを実施例10の積層シートに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。転写材における細孔径、細孔密度分布、通路場所は表5に記載した。
(実施例11)
[基材シートの製造]
PET基材シート(厚さ25μm)表面をクレイズ加工して、基材シートを製造した。
[積層シートの製造]
細孔構造を有する透明フィルムとして、ポリフッ化ビニリデンをクレイズ加工して作成された厚さ5μmの透明シートを、基材シート(厚さ25μm)にラミネートして積層シートを製造した。
[転写材の製造]
実施例1の積層シートを実施例11の積層シートに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。転写材における細孔径、細孔密度分布、通路場所は表5に記載した。
(実施例12)
[基材シートの製造]
主原料のPETに分解型発泡剤として5−フェニルテトラゾーンを加え、押し出し成型により、細孔を有する発泡PETフィルムである基材シートを得た。
[透明シート形成用の塗工液の合成]
アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg)を1部と、発泡剤1部と、を加えて5分攪拌混合して、積層シート形成用の塗工液を得た。
[積層シートの製造]
図32(a)に記載の方法によって、透明シート形成用の塗工液を基材シートの表面(厚さ25μm)に塗工してから、乾燥させることにより、積層シートを製造した。その塗工にはダイコーターを用い、塗工速度を5m/分、乾燥後の塗工量を5g/m2とした。乾燥温度は90℃とした。積層シートにおける細孔径、細孔分布密度、通路場所は表5に記載した。
[転写材の製造]
実施例1の積層シートを実施例12の積層シートに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。
(実施例13)
[透明シート形成用の塗工液の合成]
アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg)を1部と、多孔質樹脂粒子を1部と、を加えて5分攪拌混合して、透明シート形成用の塗工液を得た。
[積層シートの製造]
図33(c)に記載の方法により、細孔構造を有する基材シートである、多孔質粒子を分散したPETフィルム(厚さ25μm)の表面に、透明シート形成用の塗工液を塗工してから、乾燥させることにより、積層シートを製造した。その塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分、乾燥後の塗工量は5g/m2とした。乾燥温度は90℃とした。透明シートの厚さは5μmであった。積層シートにおける細孔径、細孔分布密度、通路場所は表5に記載した。
[転写材の製造]
実施例1の積層シート1を実施例13の積層シートに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。
(実施例14)
[透明シート形成用の塗工液の合成]
アクリルエマルジョン水溶液(BASF社製ジョンクリル352D、Tg56℃)を9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(第一工業製薬社製スーパーフレックス130、Tg)を1部と、中空樹脂粒子を1部と、加えて5分攪拌混合して、透明シート形成用の塗工液を得た。
[積層シートの製造]
図34(c)に記載の方法により、細孔構造を有する基材シートである、中空樹脂粒子を分散したPETフィルムの表面(厚さ25μm)に、透明シート形成用の塗工液を塗工してから、乾燥させることにより、積層シートを製造した。その塗工にはダイコーターを用い、塗工速度は5m/分とし、乾燥後の塗工量は5g/m2とした。乾燥温度は90℃とした。透明シートの厚さは5μmであった。積層シートにおける細孔径、細孔分布密度、通路場所は表5に記載した。
[転写材の製造]
実施例1の積層シートを実施例14の積層シートに変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。
(実施例15)
[転写材の製造]
穿孔処理方法を図41(a)のような針657を用いる方法から、図41(c)のようなレーザー加工装置658に変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。
(実施例16)
[転写材の製造]
細孔の形成方法を図36(a)のような方法から、図37(c)のような方法に変更した以外は、実施例1と同様にして転写材および記録物を得た。転写材における基材シート、透明シート、および色材受容層のそれぞれには、細孔が形成される。
(実施例17)
[転写材の製造]
実施例1の積層シートに細孔を形成しない以外は、実施例1と同様にして転写材17を得た。
[記録物の製造]
上述した第2の製造装置(図23の製造装置25)を用い、実施例17の転写材17に対して、記録前の段階で機械的に穿孔処理を施して基材シートおよび透明シートに細孔を形成した後、前述の顔料インクにより記録デューティー90%の60%ベタ画像を記録した。その後、その転写材を画像支持体に加熱圧着させてから、基材シートを剥離することにより記録物を得た。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。
(実施例18)
[記録物の製造]
上述した第3の製造装置(図24に示す製造装置25)を用いて、実施例17の転写材17に、前述の顔料インクにより記録デューティー60%の60%ベタ画像を記録した。その後、機械的な穿孔処理により、基材シートおよび透明シートに細孔を形成してから、その転写材を画像支持体に加熱圧着させ、その後、基材シートを剥離することにより記録物を得た。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。
(実施例19)
[記録物の製造]
上述した第4の製造装置(図25の製造装置25)を用いて、実施例17の転写材17に、前述の顔料インクにより記録デューティー60%の60%ベタ画像を記録した。その後、その転写材を画像支持体に加熱圧着させてから、機械的な穿孔処理により、基材シートおよび透明シートに細孔を形成し、その後、基材シートを剥離することにより記録物を得た。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。
(比較例1)
上述した第1の製造装置を用いて、前述の転写材17に対して、前述の顔料インクにより記録デューティー90%の60%ベタ画像を記録した。その後、その転写材を画像支持体に加熱圧着させてから、基材シートを剥離することにより記録物を得た。製造装置の記録部としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用い、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。
以上の実施例および比較例に対して、下記のような評価を行った。
[評価<透明シートのひび割れ>]
記録物における、ブリスターおよび気泡に起因する画像の転写不良を、目視および顕微鏡により観察した。
◎:気泡およびブリスターがない。
○:顕微鏡で細かいブリスターおよび気泡が確認できる。
△:目視での細かい気泡およびブリスターが確認できる。
×:目視で大量の気泡およびブリスターが確認できる。
[評価<透明性>]
学反射濃度計(グレタマクベス社製、RD−918)を用いて、転写材におけるブラックインク(Bk)の光学濃度を、光色材受容層側と基材シート側との両方から測定し、そのODの差(色材受容層側OD−基材シート側OD)で透明性を評価した。
◎:ODの差が0.10未満
○:ODの差が0.10以上0.15未満
△:ODの差が0.15以上0.2未満
×:ODの差が0.20以上
[評価<塗工面安定性>]
色材受容層の表面状態を目視で観察して、塗工面の安定性を評価した。
◎:問題なし。
○:色材受容層の表面に少量の凹凸がある。
△:色材受容層の表面に大量の凹凸がある。
×:色材受容層表面に抜けがある。
1 転写材
50 基材シート
52 透明シート(保護シート)
52A 細孔
53 色材受容層
55 画像支持体
72 画像
73 記録物
650 拍車
657 針
658 レーザ加工装置

Claims (11)

  1. 基材シート、保護シート、および色材受容層が積層された転写材であって、
    前記色材受容層は、少なくとも水溶性樹脂及び無機微粒子を含有した空隙吸収型であり、
    前記基材シートおよび前記保護シートは、前記色材受容層内の気体を外部に放出可能な通路を含むことを特徴とする転写材。
  2. 前記通路は、穿孔された細孔によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の転写材。
  3. 前記基材シートおよび保護シートは、複数の空隙を形成する成分を含有し、
    前記通路は、前記複数の空隙が連なることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の転写材。
  4. 前記通路の平均径は、0.001〜10.μmであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の転写材。
  5. 前記通路は、5mm2に1つ以上形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の転写材。
  6. 画像支持体、画像が記録された色材受容層、および保護シートが積層された記録物であって、
    前記受容層および前記保護シートは、請求項1から5のいずれか1項に記載の転写材から転写されたものであることを特徴とする記録物。
  7. 画像支持体、画像が記録された色材受容層、および保護シートが積層された記録物であって、
    前記保護シートは、前記色材受容層内の気体を外部に放出可能な通路を含むことを特徴とする記録物。
  8. 画像支持体、画像が記録された色材受容層、および保護シートが積層された記録物の製造方法であって、
    請求項1から5のいずれか1項に記載の転写材の色材受容層にインクジェット記録により画像を記録する工程1と、
    前記転写材の前記色材受容層を前記画像支持体に加熱圧着する工程2と、
    前記転写材から前記基材シートを剥離して、前記画像支持体、前記画像が記録された前記前記転写材から前記基材シートを剥離する工程3と、
    を含むことを特徴とする記録物の製造方法
  9. 画像支持体、画像が記録された色材受容層、および保護シートが積層された記録物の製造方法であって、
    基材シート、保護シート、および色材受容層が積層された転写材の色材受容層にインクジェット記録により画像を記録する工程1と、
    前記転写材の前記色材受容層を前記画像支持体に加熱圧着する工程2と、
    前記転写材から前記基材シートを剥離して、前記画像支持体、前記画像が記録された前記前記転写材から前記基材シートを剥離する工程3と、
    前記工程1および2のいずれかの工程の前に、前記基材シートおよび保護シートに細孔を穿孔して、前記色材受容層内の気体を外部に放出可能な通路を形成する工程4と、
    を含むことを特徴とする記録物の製造方法。
  10. 画像支持体、画像が記録された色材受容層、および保護シートが積層された記録物の製造装置であって、
    前記請求項1から5のいずれか1項に記載の転写材の色材受容層にインクジエットにより画像を記録する記録部と、
    前記画像が記録された転写材を画像支持体に加熱圧着させる加熱圧着部と、
    前記転写材から前記基材シートを剥離する剥離部と、
    を備えることを特徴とする記録物の製造装置。
  11. 画像支持体、画像が記録された色材受容層、および保護シートが積層された記録物の製造装置であって、
    基材シート、保護シート、および色材受容層が積層された転写材の色材受容層にインクジエットにより画像を記録する記録部と、
    前記画像が記録された転写材を画像支持体に加熱圧着させる加熱圧着部と、
    前記転写材から前記基材シートを剥離する剥離部と、
    前記記録部による画像の記録前もしくは加熱圧着部による加熱圧着の前の前記基材シートおよび前記保護シートに、細孔を穿孔して、前記色材受容層内の気体を外部に放出可能な通路を形成する形成手段と、
    を含むことを特徴とする記録物の製造装置。
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