JP2019103469A - 培養容器基材、及び培養容器 - Google Patents
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Abstract
Description
このような培養方法においては、細胞培養容器内の底面に、細胞が接着しないように、細胞接着抑制剤を塗布(コーティング)しておく必要がある。
一方、iPS細胞などの接着細胞を、培養容器に接着させて培養する接着培養を行う場合にも、培養容器を構成する基材と細胞との接着性を上げるために、基材の表面の親水性を上げる必要があった。
しかしながら、表面処理を行う方法では、基材が露出するために、過剰な清浄空間を要するという問題があった。
しかしながら、極性樹脂を使用すると、基材のガス透過性が低下する結果、これを用いて形成された培養容器による培養効率が低くなるという問題があった。
また、アクリル酸やメタクリル酸の単体の重合体で構成されているために極性官能基密度が高く、培養容器を形成する際のヒートシール性が悪くなるという問題があった。
さらに、培養表面に薄膜を接着して形成しているため、ウェル形成などを行う場合には、基材が露出する懸念があるという問題があった。
また、本発明の培養容器は、上記の培養容器基材により形成された構成としてある。
まず、本発明の第一実施形態の培養容器基材について、図1を参照して説明する。本実施形態の培養容器基材は、培養容器を形成するために用いられる基材であって、図1に示すように、第一の層1と、第二の層2とからなる。
本実施形態の培養容器基材は、多層フィルムとして構成することができ、また培養容器などを形成するための包材として使用することができる。
第一の層1をこのような構成にすれば、本実施形態の培養容器基材を使用して形成された培養容器内の底面に細胞接着抑制剤を塗布する場合や、この培養容器内で接着細胞を培養する場合において、細胞接着抑制剤や接着細胞を第一の層1に適切に接着することができ、かつ、ヒートシールにより培養容器を形成する場合、これを適切に行うことが可能である。
さらに、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンを用いることが好ましく、密度が0.87以上で、0.93g/cc以下のポリオレフィンを用いることがより好ましい
すなわち、本実施形態の培養容器基材は、第一の層1に細胞接着抑制剤や接着細胞を適切に接着可能にすることができ、かつ、第二の層2を備えることにより、第一の層1のみでは得ることができない優れたガス透過率を示すものとすることができる。
一方、培養容器基材を、エチレン-メタクリル酸共重合樹脂のみからなる100μmの層を用いて形成した場合、酸素透過率は、およそ250ml・mm/m2・day・atm(37℃−80%RH)となる。
ここで、細胞接着抑制剤や接着細胞を好適に接着可能にするためには、培養容器の内面を極性の高い樹脂を用いて形成することが望ましい。すなわち、第一の層1をメタクリル酸やアクリル酸などの極性の高い樹脂を用いて形成すれば、細胞接着抑制剤や接着細胞に対する接着性を向上させることは可能である。
また、第一の層1を、コロナ処理、エキシマ処理、又はプラズマ重合などの表面処理を行うことで、親水性を向上させて細胞接着抑制剤や接着細胞を好適に接着可能にする場合には、培養容器を製造するために高度な清浄空間を必要とするが、本実施形態の培養容器基材によれば、過剰な清浄空間を必要とすることなく、培養容器を製造することが可能になっている。
また、本実施形態において、接着細胞としては、例えば多能性幹細胞(iPS細胞など)や胚性幹細胞(ES細胞)等を用いることができる。
また、本実施形態の培養容器は、本実施形態の培養容器基材をヒートシールすることによって、好適に形成することが可能である。すなわち、上記の通り、本実施形態の培養容器基材は、第一の層1を、エチレンと、カルボキシル基又はカルボキシル基の金属塩を有するモノマーとの共重合体を用いて形成しているため、培養容器を形成するためにヒートシールを好適に行うことが可能になっている。
次に、本発明の第二実施形態の培養容器基材について、図2を参照して説明する。本実施形態の培養容器基材は、三層構造とすることによってガス透過率をさらに向上させた点で第一実施形態と相違する。その他の点は、第一実施形態と同様である。
本実施形態の培養容器基材も、多層フィルムとして構成することができ、また培養容器などを形成するための包材として使用することができる。
この密度のポリエチレンは粘着性が非常に高いため、一般的にハンドリングすることが困難であり、培養容器基材の外側表面として使用することが難しい。
この密度のポリエチレンは、ガス透過性に優れる一方で、一般的にハンドリングすることは可能であるため、培養容器基材の外側表面として使用することができる。
また、本実施形態の培養容器は、上記の通り、本実施形態の培養容器基材をヒートシールすることによって、好適に形成することが可能である。
さらに、本実施形態の培養容器を、少なくとも一方の内側面に複数の凹部(ウェル)が形成されたものとすることも好ましい。
まず、培養容器基材と細胞接着抑制剤との密着性を確認するための試験を行った。
本試験では、培養容器基材からなる第一の層1と細胞接着抑制剤との密着性を確認すれば良いため、以下の条件で試験を行った。
第一の層1として、ニュクレル(登録商標)(エチレン-メタクリル酸共重合樹脂,三井・デュポンポリケミカル株式会社)からなる長方形のフィルムを準備した。
次に、第一の層1からなる底面側表面に対して、細胞接着抑制剤として0.5%に調製されたリン脂質ポリマー(LIPIDURE(登録商標),日油株式会社)エタノール溶液をバーコーターで塗布して層を形成した後、この細胞接着抑制剤の層をクマシーブルーにて染色して乾燥させた。
そして、底面側表面に対して上面側表面を貼り付けて、10g/cm2の荷重をかけて1分静置した後、上面側表面を底面側表面から剥離した。
第一の層1として、ポリエチレン(PE)からなる長方形のフィルムを準備した点以外の条件については、実施例1と同様にして、実験を行った。
その結果、底面側表面に形成された細胞接着抑制剤の層は、上面側表面に裏移りしていた。すなわち、本実験では底面側表面も上面側表面もポリエチレン(PE)であり、共に疎水性であるため、底面側表面に細胞接着抑制剤が十分に接着せず、上面側表面に裏移りして、底面側表面から剥離してしまったと考えられる。
第一の層1として、ハイミラン(登録商標)(アイオノマー樹脂,三井・デュポンポリケミカル株式会社)からなる長方形のフィルムを準備した。
次に、第一の層1からなる底面側表面に対して、細胞接着抑制剤として0.5%に調製されたリン脂質ポリマー(LIPIDURE(登録商標),日油株式会社)エタノール溶液をバーコーターで塗布して層を形成した後、この細胞接着抑制剤の層をクマシーブルーにて染色して乾燥させた。
そして、底面側表面に対して上面側表面を貼り付けて、10g/cm2の荷重をかけて1分静置した後、上面側表面を底面側表面から剥離した。
次に、本発明の実施形態に係る培養容器を用いて接着細胞を培養した場合に、接着細胞を培養容器内の底面に好適に接着できるかを確認するための試験を行った。具体的には、以下の条件で試験を行った。
培養容器基材の第一の層1(厚み15μm)として、ハイミラン(登録商標)(アイオノマー樹脂,三井・デュポンポリケミカル株式会社)を用い、第二の層2(厚み70μm)として、ポリエチレン(密度0.898g/cc,日本ポリエチレン株式会社)を用い第三の層3として、ポリエチレン(密度0.921g/cc,宇部丸善ポリエチレン株式会社)を用いて、押出成形により、培養容器基材を形成した。そして、この培養容器基材の第一の層1を内面として、ヒートシールにより培養容器を形成して、接着細胞の培養を行った。接着細胞としては、iPS細胞(1231A3株)を使用した。また、培地としては、StemFit AK02N(品番RCAK02N,味の素株式会社)を使用した。
その結果、図5に示すように、接着細胞は培養容器内の底面に好適に接着していることが確認された。
ポリエチレン(密度0.921g/cc,宇部丸善ポリエチレン株式会社)を用いて、一層の培養容器基材(厚み100μm)を形成した。そして、この培養容器基材を用いてヒートシールにより培養容器を形成し、実施例3と同様にして接着細胞の培養を行った。
その結果、図5に示すように、接着細胞は培養容器内の底面に接着しておらず、接着細胞を適切に培養できていないことが確認された。
また、このような培養容器基材を使用して、ヒートシールにより培養容器を製造できることが確認された。
さらに、第一の層1としてエチレンと、カルボキシル基又はカルボキシル基の金属塩を有するモノマーとの共重合体を用い、第二の層2としてガス透過性に優れたポリオレフィンを用いた培養容器基材を使用して形成された培養容器によって、接着細胞を好適に培養できることも明らかとなった。
例えば、上記実施例では、細胞接着抑制剤としてリン脂質ポリマーを使用したが、ポリビニルアルコールやその他の細胞接着抑制剤を使用することができる。また接着細胞として他の細胞を使用するなど適宜変更することが可能である。
2,2a 第二の層
3 第三の層
Claims (10)
- 培養容器を形成するために用いられる基材であって、
エチレンと、カルボキシル基又はカルボキシル基の金属塩を有するモノマーとの共重合体により形成される第一の層と、酸素透過率が第一の層よりも高い樹脂により形成される第二の層とからなる
ことを特徴とする培養容器基材。 - 前記第一の層が、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、及びアイオノマー樹脂から選択される少なくともいずれかにより形成される
ことを特徴とする請求項1記載の培養容器基材。 - 前記第二の層が、熱可塑性樹脂、及びシリコーン樹脂から選択される少なくともいずれかにより形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の培養容器基材。
- 前記熱可塑性樹脂がポリオレフィンであることを特徴とする請求項3記載の培養容器基材。
- 前記ポリオレフィンの密度が、0.87以上で、0.93g/cc以下であることを特徴とする請求項4記載の培養容器基材。
- 培養容器を形成するために用いられる基材であって、
エチレンと、カルボキシル基又はカルボキシル基の金属塩を有するモノマーとの共重合体により形成される第一の層と、
密度0.87以上で、0.90g/cc未満のポリエチレンにより形成される第二の層と、
密度0.90以上で、0.93g/cc以下のポリエチレンにより形成される第三の層と、からなる
ことを特徴とする培養容器基材。 - 酸素透過率が400ml・mm/m2・day・atm(37℃−80%RH)以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の培養容器基材。
- 請求項1〜7に記載のいずれかの培養容器基材における前記第一の層を内面として形成されたことを特徴とする培養容器。
- 前記培養容器基材をヒートシールすることにより形成されたことを特徴とする請求項8記載の培養容器。
- 少なくとも一方の内側面に複数の凹部が形成されてなることを特徴とする請求項8又は9記載の培養容器。
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