JP2016101095A - 細胞培養容器、培地入細胞培養容器および細胞の培養方法 - Google Patents

細胞培養容器、培地入細胞培養容器および細胞の培養方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016101095A
JP2016101095A JP2014239911A JP2014239911A JP2016101095A JP 2016101095 A JP2016101095 A JP 2016101095A JP 2014239911 A JP2014239911 A JP 2014239911A JP 2014239911 A JP2014239911 A JP 2014239911A JP 2016101095 A JP2016101095 A JP 2016101095A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cell culture
layer
gas barrier
culture container
region
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014239911A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6613558B2 (ja
Inventor
拓也 樋口
Takuya Higuchi
樋口  拓也
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Nippon Printing Co Ltd filed Critical Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority to JP2014239911A priority Critical patent/JP6613558B2/ja
Publication of JP2016101095A publication Critical patent/JP2016101095A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6613558B2 publication Critical patent/JP6613558B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、保管時の二酸化炭素透過が抑制され、細胞培養時にガス透過性を発現可能な培地入細胞培養容器を形成可能であり、かつ、培地入細胞培養容器の形成が容易な細胞培養容器を提供することを主目的とする。【解決手段】本発明は、ガスバリア性を有する細胞培養容器であって、上記細胞培養容器は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された積層領域を有し、上記積層領域では、上記ガスバリア層が剥離可能に積層されている剥離領域を有することを特徴とする細胞培養容器を提供することにより、上記目的を達成する。【選択図】図1

Description

本発明は、保管時の二酸化炭素透過が抑制され、細胞培養時にガス透過性を発現可能な培地入細胞培養容器を形成可能であり、かつ、培地入細胞培養容器の形成が容易な細胞培養容器に関するものである。
細胞を効率的に培養するには、生育に適した条件下で培養する必要がある。このため、通常、所定の温度・湿度に保つことができる培養用恒温槽内で細胞の培養が行われる。
また、培養中の細胞の状態を観察する際には、細胞が入った細胞培養容器を恒温槽から取り出す必要があるが、恒温槽から取り出した際のコンタミネーションを防止するため、通常、細胞培養容器として蓋つきの細胞培養容器が用いられる。
一方、細胞の培養において、細胞への酸素供給および培地のpH調製用の二酸化炭素供給のために、細胞培養容器内への酸素および二酸化炭素等のガスの供給が必要である。
しかしながら、細胞培養容器として一般的に用いられる蓋つきのポリスチレン製容器等は、ガスの透過性が低く、細胞培養容器内へのガスの供給を十分に行うことができない場合があるといった問題があった。
このような問題に対して、ガス透過性フィルムが底面等に配置されている細胞培養容器が開示されている。
細胞培養容器にガス透過性フィルムが配置されていることにより、細胞培養容器内へのガスの供給を安定的に行うことが可能となる。
しかしながら、このような細胞培養容器は、細胞培養時にガスの供給が可能になる一方で、培養前に培地を充填した状態で長期保管した場合に、細胞培養容器を透過した二酸化炭素によって培地のpHが変化し、細胞培養に用いることができないものとなるといった問題がある。
この問題に対して、二酸化炭素の透過によりpHが変化する培地成分を収納するガスバリア性の第1容器と、その他の培地成分を収納するガス透過性の第2容器と、が中間しきいにより隔てられ、細胞培養時に中間しきいを取り除いて用いる細胞培養容器(特許文献1)、ガス透過性フィルムおよびガスバリアフィルムからなる袋状容器であり、保管時に、ガスバリアフィルムが外側になるように折り曲げて用いる細胞培養容器(特許文献2)等が開示されている。
特許第4534702号公報 特開2006−262876号公報
上述のような特許文献1または特許文献2に開示される細胞培養容器であれば、保管時において培地のpH変化を十分に抑制でき、細胞培養時にはガス透過性を発現可能とすることができる。
しかしながら、培地を第1の容器および第2の容器に分けて用いる細胞培養容器は、培地を2つの成分に分け、さらにそれらを別容器に充填する必要があることから、培地入細胞培養容器の製造工程が煩雑であるといった問題がある。
また、ガスバリアフィルムが外側になるように折り曲げて用いる細胞培養容器は、培地充填後に折り曲げる作業が必要となることから、培地入細胞培養容器の製造工程が煩雑であるといった問題がある。また、折り曲げ部での強度低下および破損のおそれがあるといった問題もある。
本発明は、保管時の二酸化炭素透過が抑制され、細胞培養時にガス透過性を発現可能な培地入細胞培養容器を形成可能であり、かつ、培地入細胞培養容器の形成が容易な細胞培養容器を提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、ガスバリア性を有する細胞培養容器であって、上記細胞培養容器は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された積層領域を有し、上記積層領域では、上記ガスバリア層が剥離可能に積層されている剥離領域を有することを特徴とする細胞培養容器を提供する。
本発明によれば、ガスバリア性を有する細胞培養容器であることにより、本発明の細胞培養容器に培地を充填して培地入細胞培養容器とした際には、培地入細胞培養容器を、保管時の二酸化炭素透過が抑制されたものとすることができる。
剥離領域のガスバリア層をガス透過層から剥離することで、ガス透過層を露出させることができる。このため、上記培地入細胞培養容器を、細胞培養時にガス透過性を容易に発現可能なものとすることができる。
また、細胞培養容器に培地を充填し、密閉するのみで、二酸化炭素透過が抑制された培地入細胞培養容器とすることができることから、細胞培養容器を、培地入細胞培養容器の形成の容易なものとすることができる。
本発明においては、上記積層領域が、上記ガス透過層および上記ガスバリア層の間に形成された接着層を有するものであることが好ましい。上記ガスバリア層をガス透過層上に安定的に接着させることができるからである。
本発明においては、上記ガス透過層の厚みが5μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みであることにより、細胞培養容器を、ガス透過性に優れたものとすることができるからである。
本発明は、ガスバリア性を有する細胞培養容器と、上記細胞培養容器内に充填された培地と、を有し、上記細胞培養容器は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された積層領域を有し、上記積層領域では、上記ガスバリア層が剥離可能に積層されている剥離領域を有することを特徴とする培地入細胞培養容器を提供する。
本発明によれば、上記細胞培養容器として、上述の細胞培養容器を用いることにより、培地入細胞培養容器を、保管時の二酸化炭素透過が抑制されたものとすることができる。
剥離領域のガスバリア層をガス透過層から剥離することで、ガス透過層を露出させることができる。このため、上記培地入細胞培養容器を、細胞培養時にガス透過性を容易に発現可能なものとすることができる。
また、細胞培養容器に培地を充填し、密閉するのみで、二酸化炭素透過が抑制された培地入細胞培養容器とすることができることから、培地入細胞培養容器を、形成の容易なものとすることができる。
本発明は、ガスバリア性を有する細胞培養容器と、上記細胞培養容器内に充填された培地とを有し、上記細胞培養容器は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された積層領域を有し、上記積層領域では、上記ガスバリア層が剥離可能に積層されている剥離領域を有する培地入細胞培養容器を準備し、上記培地入細胞培養容器に細胞を注入する細胞注入工程と、上記剥離領域の上記ガスバリア層を上記ガス透過層から剥離する剥離工程と、上記細胞注入工程および上記剥離工程後に上記培地入細胞培養容器内の上記細胞を培養する培養工程と、を有することを特徴とする細胞の培養方法を提供する。
本発明によれば、上述の培地入細胞培養容器に対して上記剥離工程を行うことにより、ガス透過層を露出させて、培地入細胞培養容器にガス透過性を発現させることができる。このため、上記培養工程で細胞を安定的に培養することができる。
本発明は、保管時の二酸化炭素透過が抑制され、細胞培養時にガス透過性を発現可能な培地入細胞培養容器を形成可能であり、かつ、培地入細胞培養容器の形成が容易な細胞培養容器を提供できるといった効果を奏する。
本発明の細胞培養容器の一例を示す概略断面図である。 本発明の細胞培養容器の他の例を示す概略断面図である。 本発明の細胞培養容器の他の例を示す概略断面図である。 本発明におけるハーフカット部を説明する説明図である。 本発明における支持層を説明する説明図である。 本発明における支持層を説明する説明図である。 本発明の培地入細胞培養容器の一例を示す概略断面図である。 本発明の培地入細胞培養容器の他の例を示す概略断面図である。 本発明の細胞の培養方法の一例を示す工程図である。 本発明における剥離工程を説明する説明図である。
本発明は、細胞培養容器、ならびにそれを用いた培地入細胞培養容器および細胞の培養方法に関するものである。
以下、本発明の細胞培養容器、培地入細胞培養容器および細胞の培養方法について詳細に説明する。
A.細胞培養容器
まず、本発明の細胞培養容器について説明する。
本発明の細胞培養容器は、ガスバリア性を有するものであって、上記細胞培養容器は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された積層領域を有し、上記積層領域では、上記ガスバリア層が剥離可能に積層されている剥離領域を有することを特徴とするものである。
このような本発明の細胞培養容器について図を参照して説明する。図1は、本発明の細胞培養容器の一例を示す概略断面図であり、細胞培養容器が袋状である例を示すものである。図2は、本発明の細胞培養容器の他の例を示す概略断面図であり、細胞培養容器が箱状である例を示すものである。
図1および図2に例示するように、本発明の細胞培養容器10は、ガスバリア性を有するものであって、内面側からガス透過層1およびガスバリア層2の順で積層された積層領域11を有し、上記積層領域11では、上記ガスバリア層2が剥離可能に積層されている剥離領域12を有するものである。
なお、この例において、積層領域11では、接着層3がガス透過層1およびガスバリア層2の間に形成されるものである。
図1では、剥離領域12に、ガスバリア層2上に基材層4が形成されるものである。また、図1においては、ガスバリア層2および接着層3のそれぞれを平面視上、剥離領域12の外周に沿って切断するハーフカット部5が形成されるものであり、ハーフカット部5で切断されたガスバリア層2および接着層3はガスバリア層2上に形成された基材層4と共に剥離されるものである。
また、図1は、上記剥離領域12が、細胞培養時に底面側となる箇所および細胞培養時に上面側となる箇所の両者に形成される例を示すものである。
図2では、上記剥離領域12が、細胞培養時に底面側となる箇所に形成され、さらに、剥離領域12には、ガス透過層1のガスバリア層2側表面上に配置され、開口部7aを有する支持層7が形成されるものである。
また、図2では、細胞培養容器10が積層領域11と非積層領域13とを有し、非積層領域13には、ガスバリア性外枠層6と注入口8aおよび注入口8aを密閉する蓋部8bを有する注入部8とを有するものである。
さらに、図2では、接着層3およびガスバリア層2が上記ガス透過層1およびガスバリア性外枠層6に対して剥離されるものである。
本発明によれば、ガスバリア性を有する細胞培養容器であることにより、本発明の細胞培養容器に培地を充填して培地入細胞培養容器とした際には、培地入細胞培養容器を、保管時の二酸化炭素透過が抑制されたものとすることができる。その結果、pH変化の少ない培地入細胞培養容器とすることができる。
剥離領域のガスバリア層をガス透過層から剥離することで、ガス透過層を露出させることができる。このため、上記培地入細胞培養容器を、細胞培養時にガス透過性を容易に発現可能なものとすることができる。その結果、上記培地入細胞培養容器を、細胞を安定的に培養可能なものとすることができる。
また、細胞培養容器に培地を充填し、密閉するのみで、二酸化炭素透過が抑制された培地入細胞培養容器とすることができることから、細胞培養容器を、培地入細胞培養容器の形成の容易なものとすることができる。
また、培地を充填した後に、細胞培養容器に対する折り曲げ加工等が不要なものとすることができ、強度に優れたものとすることができる。したがって、保管時および細胞培養時に破損等のないものとすることができる。また、細胞培養容器として箱状のものとすること等、細胞培養容器の構成材料の選択の自由度の高いものとすることができる。
また、剥離領域のガスバリア層を剥離し、ガス透過層を露出させることにより、この露出したガス透過層から細胞を容易に観察することができる。
本発明の細胞培養容器は、袋状である態様(第1実施態様)と箱状である態様(第2実施態様)との2つの態様に分けることができる。以下、各態様に分けて説明する。
1.第1実施態様
まず、本発明の細胞培養容器の第1実施態様について説明する。
本態様の細胞培養容器は、ガスバリア性を有し、袋状のものであり、積層領域を有するものである。
ここで、袋状であるとは、細胞培養用の培養バッグ等のように、充填される培地の量によって、外観形状が変化し得るものであることをいうものである。
このような本態様の細胞培養容器としては、既に説明した図1に示すものとすることができる。
なお、図1において、細胞培養容器は、ガス透過層およびガスバリア層が積層したフレキシブル性およびガスバリア性を有するシート部材を2枚準備し、シート部材を重ね合わせた後、シート部材の端部同士をヒートシールすることにより得られるものである。
本態様の細胞培養容器は、積層領域を有するものである。
以下、本態様の細胞培養容器の各構成について詳細に説明する。
(1)細胞培養容器のガスバリア性
本態様の細胞培養容器は、ガスバリア性を有するものである。
ここで、ガスバリア性を有するとは、二酸化炭素の透過を抑制し、充填される培地のpH変化を抑制できることをいうものである。
このような細胞培養容器の厚み方向の二酸化炭素透過率としては、1,000cm/m・24hr・atm未満であることが好ましく、なかでも、100cm/m・24hr・atm以下であることが好ましく、特に、1cm/m・24hr・atm以下であることが好ましい。上記透過率が上述の範囲内であることにより、保管時における二酸化炭素の透過を安定的に少ないものとすることができるからである。
なお、上記二酸化炭素の透過率の下限は、低いほど好ましいが、例えば、1×10-6cm/m・24hr・atm以上とすることができる。細胞培養容器を構成する材料の選択性を広いものとすることができるからである。
細胞培養容器の厚み方向とは、細胞培養容器内面に垂直な方向をいうものである。
また、細胞培養容器の厚み方向の気体の透過率とは、細胞培養容器の全ての箇所での透過率をいうものである。
上記細胞培養容器の厚み方向の酸素透過率としては、培地品質を安定的に維持可能なものであれば特に限定されるものではなく、100cm/m・24hr・atm未満であることが好ましく、なかでも、10cm/m・24hr・atm以下であることが好ましく、特に、0.1cm/m・24hr・atm以下であることが好ましい。上記酸素透過率が上述の範囲内であることにより、培地品質を安定的に維持可能なものとすることができるからである。
なお、上記酸素透過率の下限は、低いほど好ましいが、例えば、1×10-6cm/m・24hr・atm以上とすることができる。上記細胞培養容器を構成する材料の選択性を広いものとすることができるからである。
(2)積層領域
上記積層領域は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された領域である。
上記積層領域は、上記剥離領域を有するものである。
(a)ガス透過層
上記ガス透過層は、細胞培養に必要な酸素および二酸化炭素を細胞培養容器内に透過することができるガス透過性を有するものである。
このようなガス透過層の酸素透過率としては、100cm/m・24hr・atm以上であることが好ましく、なかでも、2,000cm/m・24hr・atm〜100,000cm/m・24hr・atmの範囲内であることが好ましく、特に、3,500cm/m・24hr・atm〜60,000cm/m・24hr・atmの範囲内であることが好ましい。上記酸素透過率が上述の範囲内であることにより、安定的に酸素を供給することができるからである。
また、上記ガス透過層の二酸化炭素透過率は、1000cm/m・24hr・atm以上であることが好ましく、なかでも、5,000cm/m・24hr・atm〜150,000cm/m・24hr・atmの範囲内であることが好ましく、特に、15,000cm/m・24hr・atm〜130,000cm/m・24hr・atmの範囲内であることが好ましい。上記二酸化炭素透過率が上述の範囲内であることにより、安定的に二酸化炭素を供給することができ、培地のpHを安定的に制御できるからである。
上記ガス透過層を構成する材料は、所望のガス透過性を有するガス透過層を形成可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、二軸延伸されたポリスチレン(OPS)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等を挙げることができ、なかでも本態様においては、OPSを好ましく用いることができる。上記材料が上述の材料であることにより、ガス透過性に優れたガス透過層とすることができるからである。また、細胞に対する毒性がなく、細胞培養に適した細胞培養容器を形成可能だからである。
上記ガス透過層の層構造は、1層の層のみを含む単層構造でも、2層以上の層を含む多層構造であっても良い。
また、上記ガス透過層の層構造が多層構造である場合、各層の構成材料および厚みは同一であっても良く、異なっていても良い。
上記ガス透過層の厚みは、所望のガス透過性を有するガス透過層を形成可能であれば特に限定されるものではなく、構成材料等によって異なるものであるが、5μm〜200μmの範囲内とすることができ、なかでも、10μm〜180μmの範囲内であることが好ましく、特に、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、ガス透過性に優れたガス透過層とすることができるからである。
なお、上記厚みは、上記ガス透過層の層構造が多層構造である場合には、各層の合計厚みをいうものである。
上記ガス透過層の培地が充填される側の表面は、ガス透過性を妨げない範囲内で、表面処理されたものであっても良い。
上記表面処理は、例えば、親水性向上を目的として行われるプラズマ処理、微細賦型処理等、撥水性向上を目的として行われるフッ素加工処理、微細賦型処理等を挙げることができる。
(b)ガスバリア層
上記ガスバリア層は、所望のガスバリア性を有する細胞培養容器を形成可能な程度のガスバリア性を有するものである。
このようなガスバリア層の二酸化炭素透過率としては、上記細胞培養容器の厚み方向の二酸化炭素透過率と同様とすることができる。
また、上記ガスバリア層の酸素透過率についても、上記細胞培養容器の厚み方向の酸素透過率と同様とすることができる。
上記ガスバリア層を構成する材料としては、所望のガスバリア性を有するガスバリア層を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、無機材料、金属材料および樹脂材料を挙げることができ、なかでも、無機材料および金属材料であることが好ましく、特に、金属材料であることが好ましい。上記材料であることにより、ガスバリア性に優れたガスバリア層を容易に形成できるからである。
上記金属材料としては、具体的には、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等を好適に用いることができ、なかでも、アルミニウム(Al)であることが好ましい。
上記無機材料としては、具体的には、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)等を挙げることができる。
上記樹脂材料としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、エチレンービニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリグリコール酸、芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)を挙げることができる。
なお、本態様においては、上記材料の2以上を組み合わせて用いても良い。
また、上記材料が樹脂材料である場合、ガスバリア層は、無延伸フィルムであってもよく、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルム等の延伸フィルムであってもよい。
上記ガスバリア層の層構造は、1層の層のみを含む単層構造でも、2層以上の層を含む多層構造であっても良い。
また、上記ガスバリア層の層構造が多層構造である場合、各層の構成材料および厚みは同一であっても良く、異なっていても良い。
上記ガスバリア層としては、より具体的には、ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルム、ニ軸延伸ナイロンフイルム等の単層ないし多層の延伸フイルム、エチレンービニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリグリコール酸、芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等からなるフイルム;各種ポリ塩化ビニリデンコートフイルム、アルミナ蒸着ないしシリカ蒸着のポリエステルないしポリアミドフイルム等合成樹脂フイルム等の多層フィルム等を挙げることができる。
本態様においては、なかでも、上記ガスバリア層がシリカ蒸着のポリエステルフィルムであることが好ましい。ガスバリア性に優れたガスバリア層を容易に形成できるからである。
上記シリカ蒸着のポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムおよび上記ポリエステルフィルム上に積層されたシリカ蒸着層を有するものとすることができる。
具体的には、上記シリカ蒸着層は、所望のガスバリア性を有するものであれば特に限定されるものではないが、ケイ素酸化物を主体とする連続層を用いることができ、例えば、ケイ素酸化物と、炭素単体および酸化ケイ素分子鎖に結合した炭素化合物の少なくとも一方を含む化合物と、を含有する連続層であり、かつ、シリカ蒸着層の表面から深さ方向に向かって炭素含有量が減少しているものとすることができる。
なお、上記炭素単体としては、グラファイト状、ダイヤモンド状およびフラーレン状のいずれかの炭素材料を挙げることができる。
上記炭素化合物としては、C−H結合を有する化合物を挙げることができる。
シリカ蒸着層の厚みは、10Å〜3000Åの範囲内とすることができ、好ましくは60Å〜400Åの範囲内程度とすることができる。
シリカ蒸着層の蒸着は、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)により行うことができ、膜質の異なる蒸着薄膜層を多層で積層することができる。本態様で利用する化学気相成長法には、例えば、プラズマCVD法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等が含まれる。
このようなシリカ蒸着のポリエステルフィルムの市販品としては、例えば、PETフィルムにシリカ蒸着層が形成された、大日本印刷社製IBフィルム等を挙げることができる。
上記ガスバリア層の厚みとしては、所望のガスバリア性を有するガスバリア層を形成できるものであれば特に限定されるものではない。
上記厚みは、例えば、5μm〜250μmの範囲内とすることができ、なかでも、6μm〜188μmの範囲内であることが好ましく、特に、9μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、ガスバリア性に優れたガスバリア層とすることができるからである。
なお、上記厚みは、上記ガスバリア層の層構造が多層構造である場合には、各層の合計厚みをいうものである。
(c)積層領域
上記積層領域に含まれる層としては、ガス透過層およびガスバリア層を少なくとも有するものであるが、必要に応じてその他の層を有するものであっても良い。
このようなその他の層としては、ガス透過層およびガスバリア層の間に形成された接着層を有することが好ましい。
上記接着層を有することにより、上記ガスバリア層をガス透過層上に安定的に接着させることができるからである。
上記接着層を構成する接着材料は、所望の接着性を有する接着層を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、細胞培養、医療用途等で用いられる器具の接着層の形成に一般的に用いられるものを用いることができる。
上記接着材料は、例えば、従来から知られたシーラント樹脂を使用できる。上記シーラント樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ポリプロピレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびそれらの金属架橋物であるアイオノマー等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができ、なかでも低温シール性の観点からポリオレフィン系樹脂が好ましく、安価であることからポリエチレンが特に好ましい。
上記接着層の厚みについては、所望の接着性を有するものとすることができれば良く、構成材料等に応じて適宜設定されるものである。
上記厚みは、0.1μm〜200μmの範囲内とすることができ、なかでも5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に、10μm〜60μmの範囲内であることが好ましく、なかでも特に15μm〜40μmの範囲内であることが好ましい。加工性やヒートシール性に優れたものとすることができるからである。
上記接着層の接着面に対する量は、0.001g/m〜100g/mの範囲であることが好ましく、0.01g/m〜50g/mであることがより好ましく、0.02g/m〜10g/mであることがさらに好ましく、0.03g/m〜1g/mであることが特に好ましく、0.05g/m〜1g/mであることが最も好ましい。上記量が上述の範囲内であることにより、十分な接着性を有する接着層とすることができるからである。
上記接着層は、表面に高低差が5μm〜20μmの範囲内の凹凸を有するものであってもよい。上記凹凸を有することにより、接着前の上記接着層表面に滑り性を付与することや、接着前後の接着層に引き裂き容易性等を付与することができるからである。
上記積層領域の形成箇所としては、上記剥離領域を含むものであれば良く、上記細胞培養容器の全面であっても良く、上記細胞培養容器の一部であっても良い。
上記形成箇所が上記細胞培養容器の一部である場合、上記形成箇所は、細胞培養時に底面側となる箇所、すなわち、細胞培養容器の細胞培養時に培地と接する箇所、および、細胞培養時に上面側となる箇所、すなわち、細胞培養容器の細胞培養時に培地と接しない箇所等とすることができる。
なお、既に説明した図1は、上記形成箇所が細胞培養容器の全面であり、細胞培養時に底面側となる箇所および上面側となる箇所の両者に形成される例を示すものである。
また、図3は、上記形成箇所が細胞培養容器の一部である場合であり、細胞培養時に上面側となる箇所に形成される例を示すものである。
なお、図3中の符号については、図1と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
(3)剥離領域
上記剥離領域は、積層領域に形成される領域であり、上記ガスバリア層が剥離可能に積層されている領域である。
ここで剥離可能に積層されているとは、ガス透過層を破損することなく、剥離領域内のガス透過層を露出させることができることをいうものである。
上記剥離領域においてガス透過層に対して剥離可能に積層されている層としては、少なくともガスバリア層を含むものであれば特に限定されるものではないが、上記ガス透過層上の全ての層を含むこと、すなわち、ガスバリア層の剥離と同時に、ガス透過層より外側の全ての層が剥離され、ガス透過層が外気と接することができることが好ましい。細胞培養容器を、剥離領域のガスバリア層の剥離により優れたガス透過性を示すものとすることができるからである。
例えば、既に説明した図1に示すように、剥離領域が内面側からガス透過層、接着層、ガスバリア層および基材層の順で積層されている場合、接着層、ガスバリア層および基材層の全てがガス透過層に対して剥離可能に積層されていることが好ましい。
上記剥離領域に含まれる層としては、積層領域として含まれる層以外に、必要に応じてその他の層を有するものであっても良い。
上記その他の層としては、ガスバリア層の外面側に形成され、ガスバリア層と共に剥離される基材層を挙げることができる。
上記基材を構成する材料としては、ガスバリア層の剥離を容易にすることができるものであれば特に限定されるものではなく、樹脂材料、金属材料等を用いることができる。
上記樹脂材料としては、具体的には、塩化ビニル樹脂、PET、PP、PS、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、OPS等を挙げることができる。また、金属材料としては、アルミニウム等を挙げることができる。
上記基材は、例えば、紙、アルミニウム箔等の金属箔、ユポ(登録商標)等も用いることができる。
上記基材層の厚みは、剥離領域のガスバリア層を容易に剥離することが可能なものであることが好ましく、構成材料等に応じて適宜設定されるものである。
上記厚みは、例えば、0.005mm〜2mmの範囲内とすることができる。
上記基材層の形成箇所は、剥離領域のガスバリア層を容易に剥離することが可能なものであることが好ましく、例えば、剥離領域の全面を覆うものとすることができる。
上記剥離領域には、上記剥離領域が上記積層領域の一部に形成されるものである場合、ガス透過層の外側の層に、剥離領域の外周に沿って形成される切断面であるハーフカット部を有するものであっても良い。剥離領域のガスバリア層を剥離容易なものとすることができるからである。
上記ハーフカット部が形成される層としては、ガス透過層の外面側の層であれば特に限定されるものではないが、少なくともガスバリア層を含むことが好ましく、なかでも、ガス透過層の外面側表面上に形成された層からガスバリア層までの全ての層を含むことが好ましい。剥離領域のガスバリア層を剥離容易なものとすることができるからである。
なお、ガス透過層の外面側表面上に形成された層からガスバリア層までの全ての層とは、例えば、既に説明した図1に示すように、剥離領域が内面側からガス透過層、接着層、ガスバリア層および基材層の順で積層されている場合、接着層およびガスバリア層をいうものである。
上記ハーフカット部の平面視上の形状としては、剥離領域のガスバリア層を容易に剥離可能なものとするものであれば特に限定されるものではないが、直線状、破線状、点線状等とすることができる。
図4は、ハーフカット部を説明する説明図であり、図4(a)は、平面視上、四角形状の剥離領域12が形成される例を示すものである。図4(b)および(d)は太線で示されるハーフカット部5が直線状である例を示すものであり、図4(c)は太線で示されるハーフカット部5が点線状である例を示すものである。
上記ハーフカット部の平面視上の形成箇所としては、剥離領域の外周上であれば特に限定されるものではない。上記形成箇所は、剥離領域の外周の全周を含む箇所であっても良く、剥離領域の外周の一部を含む箇所であっても良い。
上記形成箇所が剥離領域の外周の全周を含む箇所である場合、上記ハーフカット部により囲まれる剥離領域のガスバリア層をガス透過層から分離可能なものとすることが容易だからである。
また、上記形成箇所が剥離領域の外周の一部を含む箇所である場合、剥離領域をガス透過層から剥離した後に、ハーフカット部が形成されていない箇所で細胞培養容器に接続可能なものとすることが容易だからである。
既に説明した図4(b)および(c)は、太線で示されるハーフカット部の形成箇所が、剥離領域の外周の全周を含む箇所である例を示すものであり、図4(d)は、太線で示されるハーフカット部の形成箇所が、四角形状の剥離領域の3辺に形成され、剥離領域の外周の一部を含む箇所である例である。
上記剥離領域の形成箇所は、剥離領域のガスバリア層をガス透過層から剥離することにより、上記細胞培養容器をガス透過性を有するものとすることができる箇所であれば特に限定されるものではない。
上記形成箇所は、例えば、細胞培養時に底面側となる箇所および細胞培養時に上面側となる箇所等とすることができる。上記形成箇所が細胞培養時に底面側となる箇所であることにより、剥離領域のガスバリア層を剥離することで、細胞培養容器を細胞の顕微鏡観察の容易なものとすることができるからである。
また、上記形成箇所が細胞培養時に上面側となる箇所であることにより、剥離領域のガスバリア層を剥離することで、細胞培養容器をガス透過性に優れたものとすることができるからである。
既に説明した図1は、上記形成箇所が細胞培養時に底面側となる箇所と上面側となる箇所の両者を含む例を示すものである。また、既に説明した図3は、上記形成箇所が、細胞培養時に上面側となる箇所である例を示すものである。
上記剥離領域の上記積層領域内の数としては、1以上であれば良く、2以上であっても良い。
例えば、上記剥離領域は、細胞培養時に底面側となる箇所と上面側となる箇所との2か所に配置されるものとすることができる。
上記剥離領域の面積としては、ガスバリア層を剥離することにより、細胞培養容器を、細胞培養に必要なガス透過性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではない。
上記面積は、例えば、10mm〜60,000mmの範囲内とすることができ、なかでも、2,000mm〜42,000mmの範囲内であることが好ましく、特に12,000mm〜30,000mmの範囲内であることが好ましい。
上記剥離領域の面積の細胞培養容器の全内面積に対する面積割合としては、0.02%〜90%の範囲内であることが好ましく、なかでも5%〜70%の範囲内であることが好ましく、特に20%〜50%の範囲内であることが好ましい。
上記面積または面積割合が上述の範囲内であることにより、細胞培養容器を、細胞培養に必要なガス透過性を有するものとすることが容易だからである。
なお、上記面積は、剥離領域の数が2以上である場合には、剥離領域の合計面積をいうものである。
また、上記面積は、剥離領域に剥離されることにより露出するガス透過層の面積をいうものである。
(4)細胞培養容器
本態様の細胞培養容器は、積層領域を少なくとも有するものである。
本態様においては、上記積層領域が細胞培養容器の一部の領域に形成されるものである場合には、積層領域と共にガスバリア性を有する細胞培養容器を形成可能であり、ガス透過層を含まない非積層領域を有するものである。
このような非積層領域としては、例えば、ガスバリア性外枠層を有するものとすることができる。
上記ガスバリア性外枠層のガスバリア性、構成材料、厚みについては、上記ガスバリア層と同様とすることができる。
上記ガスバリア性外枠層は、上記ガスバリア層と接続されたものであっても良い。また、ガスバリア層と接続されている場合、ガスバリア性外枠層は、ガスバリア層と一体として形成されるものであっても良く、別体として形成されるものであっても良い。
既に説明した図3は、細胞培養容器10が、積層領域11と非積層領域13とを有し、非積層領域13にガスバリア性外枠層6を有する例を示すものである。
なお、図3中の符号については、図1および図2と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。また、図3においては、ガスバリア性外枠層がガスバリア層と別体として形成される例を示すものである。
上記細胞培養容器は、必要に応じてその他の構成を有するものであっても良い。
このようなその他の構成としては、培地や細胞を細胞培養容器内に充填する際に用いる注入部を挙げることができる。
上記注入部としては、培地および細胞等を細胞培養容器内への充填前後においてガスバリア性を有するものであればよく、細胞培養容器に一般的に用いられるものとすることができる。例えば、培地および細胞等が通過可能な注入口および注入口を密閉する密閉部を有するもの等とすることができる。
上記注入口は、培地および細胞等が通過可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、積層領域または非積層領域を構成する層に形成された開口部、細胞培養容器の外側に向かって凸状に形成された円筒形状の凸部、フレキシブル性を有するチューブ等とすることができる。また、注入口が非積層領域に形成される場合、非積層領域を構成するガスバリア性外枠層と一体形成され、ガスバリア性外枠層の構成材料および厚みと同様のものであっても良いが、ガスバリア性外枠層と別体として形成されるものであっても良い。
上記注入口がチューブであり、積層領域または非積層領域を構成する層とは別体として形成される場合、その構成材料としては、シリコーンゴム、軟質塩化ビニル樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマー、例えば、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン)、SIS(スチレン・イソプレン・スチレン)、SEBS(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン)、SEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)等を用いることができる。
上記密閉部としては、注入口を密閉可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、スクリューキャップ式等の注入口に対して脱着可能な蓋部や、シリンジの針を刺し込み可能なゴム栓を挙げることができる。
上記細胞培養容器の内容量としては、所望のガスバリア性を有する細胞培養容器を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、本態様の細胞培養容器の用途等に応じて異なるものであるが、例えば、10ml〜20,000mlの範囲内とすることができる。
本態様の細胞培養容器の製造方法としては、上記構成の細胞培養容器を形成可能な方法であれば特に限定されるものではない。
上記製造方法としては、例えば、ガス透過層、接着層、ガスバリア層および基材層がこの順で積層した積層体を2枚準備し、この積層体を重ね合わせた後、4辺をヒートシールし、次いで、剥離領域とする箇所の外周に沿って、接着層、ガスバリア層および基材層を切断することによりハーフカット部を形成する方法を挙げることができる。
2.第2実施態様
次に、本発明における細胞培養容器の第2実施態様について説明する。
本態様の細胞培養容器は、ガスバリア性を有し、箱状のものであり、積層領域を有するものである。
ここで、箱状であるとは、細胞培養用のフラスコおよびボトル等のように、充填される培地の量によって、外観形状が変化しないものであることをいうものである。
このような本態様の細胞培養容器としては、既に説明した図2に示すものとすることができる。
なお、図2において、細胞培養容器10は、積層領域11と非積層領域13とを有し、非積層領域には、ガスバリア性外枠層6および注入口8aおよび注入口8aを密閉するスクリュー式の蓋部8bを有する注入部8を有するものである。
本態様の細胞培養容器は、積層領域を有するものである。
以下、本態様の細胞培養容器の各構成について詳細に説明する。
(1)細胞培養容器のガスバリア性
本態様の細胞培養容器は、ガスバリア性を有するものである。
ここで、ガスバリア性を有するとは、二酸化炭素の透過を抑制し、充填される培地のpH変化を抑制できることをいうものである。
このような細胞培養容器の厚み方向の二酸化炭素透過率および酸素透過率については、上記「1.第1実施態様」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
(2)積層領域
上記積層領域は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された領域である。
上記積層領域は、上記剥離領域を有するものである。
なお、このような積層領域としては、上記「1.第1実施態様」の「(2)積層領域」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
(3)剥離領域
上記剥離領域は、積層領域に形成される領域であり、上記ガスバリア層が剥離可能に積層されている領域である。
なお、ガス透過層に対して剥離可能に積層されている層、ならびに、剥離領域の形成箇所、積層領域内の数および面積については、上記「1.第1実施態様」の「(3)剥離領域」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、上記剥離領域に後述する支持層が形成される場合、剥離領域の面積は、支持層により被覆される面積を含まないものである。したがって、剥離領域の全面に支持層が形成されている場合、上記剥離領域の面積は、上記支持層の開口部の合計面積をいうものである。
上記剥離領域に含まれる層としては、積層領域として含まれる層以外に、必要に応じてその他の層を有するものであっても良い。
また、上記その他の層は、剥離領域の形成箇所が細胞培養時に底面側となる箇所である場合に、剥離領域の上記ガス透過層の上記ガスバリア層側表面上に配置された支持層を有することが好ましい。上記支持層を有することにより、剥離領域のガスバリア層が剥離された後に、上記ガス透過層を支持し、上記ガス透過層の培地の重みによる撓みの発生を抑制することができるからである。
なお、既に説明した図2は、細胞培養容器10が、剥離領域12の上記ガス透過層1の上記ガスバリア層2側表面上に配置された支持層7を有する例を示すものである。
上記支持層は、ガス透過層の形成箇所が細胞培養時に底面側となる箇所である場合に、上記ガス透過層の上記ガスバリア層側表面上に配置されるものである。
このような支持層としては、剥離領域のガスバリア層が剥離された後に、剥離領域内の露出したガス透過層を介したガスの透過を妨げないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ガス透過層が露出する開口部を有するものとすることができる。
既に説明した図2は、開口部を有する支持層を有する例を示すものである。
また、図5および図6は、図2の細胞培養容器の底面の一例および他の例を示す概略平面図である。図5および図6は、平面視形状が長方形状である開口部7aを有し、平面視形状が格子状である支持層7を有するものであり、図6は、支持層7が細胞観察用開口部7bを有する例を示すものである。なお、図5および図6中のその他の符号については、図2と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
ここで、撓みの発生を抑制するとは、細胞が集まる箇所が生じない程度にガス透過層の培地の重さによる変形を抑制することをいうものである。
このような支持層としては、培地の充填前後で、ガス透過層の培地支持面側の表面の位置が5mm以上低くなる箇所が生じないものとすることができる。
なお、培地の充填後としては、ガス透過層の培地支持面側表面から培地液面までの距離が2cmである場合とすることができる。また、このような撓みの測定方法としては、細胞培養容器に培地を充填して確認する方法であっても良いが、ガス透過層の撓みの視認容易のため、細胞培養容器の底面側に形成される剥離領域に含まれるガス透過層と同一面積のガス透過性フィルムを測定用サンプルとして準備し、そのガス透過性フィルムの周囲を固定した状態で行う方法を用いても良い。
上記支持層は、剥離領域のガスバリア層が剥離された後に、ガス透過層を支持するものである。したがって、上記支持層は、ガスバリア層と共に剥離されないもの、すなわち、ガス透過層に対して剥離可能に積層されている層に含まれないものである。
上記開口部は、ガス透過層のガスバリア層側表面を外気と直接接触することを可能とするものである。
このような開口部の形状は、上記ガス透過層へのガスの供給が可能であり、上記ガス透過層の撓みの発生を抑制できるものであれば特に限定されるものではない。
上記形状は、例えば、三角形状、四角形状および六角形状等の多角形状、円形状および楕円形状等とすることができる。
本実施形態においては、なかでも、上記形状が、四角形状および六角形状であることが好ましい。上記形状であることにより、開口部の形成が容易だからである。また、上記開口部を一定間隔で整列配置することが容易であり、安定的にガス透過層を支持することができる支持層とすることができるからである。
上記開口部の数は、1以上であれば良いが、通常2以上である。
複数の開口部を区画するように配置された支持層により、ガス透過層を安定的に支持することができるからである。
上記開口部の数が2以上である場合、上記開口部の配置としては、上記ガス透過層の撓みの発生を抑制できるものであれば良いが、開口部が一定間隔で整列配置され、上記支持層の平面視形状が格子状となるもの、または開口部の形状が六角形状である場合にはハニカム状となるものが好ましい。上記配置であることにより、安定的にガス透過層を支持することができる支持層とすることができるからである。
上記開口部の面積は、上記ガス透過層へのガスの供給が可能であり、上記ガス透過層の撓みの発生を抑制できるものであれば特に限定されるものではない。
上記面積は、例えば、1mm〜10,000mmの範囲内とすることができ、なかでも、25mm〜2,500mmの範囲内あることが好ましく、特に100mm〜500mmの範囲内であることが好ましい。上記面積が上述の範囲内であることにより、上記ガス透過層へのガスの十分な供給が可能であり、上記ガス透過層の撓みの発生を十分に抑制可能な支持層とすることができるからである。
なお、上記面積は、1つあたりの開口部の面積をいうものである。
上記支持層の開口率は、上記ガス透過層へのガスの供給が可能であり、上記ガス透過層の撓みの発生を抑制できるものであれば特に限定されるものではない。
上記開口率は、例えば、10%〜90%の範囲内であることが好ましく、なかでも、30%〜85%の範囲内であることが好ましく、特に、60%〜80%の範囲内であることが好ましい。上記開口率が上述の範囲内であることにより、上記ガス透過層へのガスの十分な供給が可能であり、上記ガス透過層の撓みの発生を十分に抑制可能な支持層とすることができるからである。
なお、開口率は、上記剥離領域の面積に対する、上記開口部の全面積の割合(開口部の全面積/剥離領域の面積×100)により求められるものである。
また、開口率は、支持層が後述する細胞観察用開口部を有する場合、細胞観察用開口部も開口部として含むものである。
上記支持層は、上記開口部より面積の広い細胞観察用開口部を有することが好ましい。上記支持層は上記開口部を有するものであるが、ガス透過層上で培養されている細胞の観察を行う際に、上記開口部の大きさによっては細胞の観察を容易に行うことができない場合がある。これに対して、支持層が細胞観察用開口部を有することにより、この細胞観察用開口部を介して支持層により妨げられることなく細胞を観察することが可能となり、上記細胞培養容器を、細胞観察の容易なものとすることができるからである。
既に説明した図6は、支持層7が2つの円形状の細胞観察用開口部7bを有する例を示すものである。
上記細胞観察用開口部の形状については、細胞観察を行うことが可能なものであれば特に限定されるものではないが、上記開口部と同様とすることができる。
上記細胞観察用開口部の面積は、上記開口部より面積が大きく、細胞観察を行うことが可能なものであれば特に限定されるものではない。
上記面積は、例えば、10mm〜2000mmの範囲内とすることができ、なかでも、100mm〜1500mmの範囲内であることが好ましく、特に400mm〜900mmの範囲内であることが好ましい。上記面積が上述の範囲内であることにより、ガス透過層上の細胞を容易に観察可能なものとすることができるからである。
なお、上記面積は、1つあたりの細胞観察用開口部の面積をいうものである。
上記細胞観察用開口部の数は、細胞観察を行うことが可能なものであれば特に限定されるものではなく、ガス透過層の面積等に応じて適宜設定されるものである。
上記数は、例えば、2つとすることができる。
上記支持層を構成する材料としては、ガス透過層の撓みを抑制できるものであれば特に限定されるものではない。
上記材料は、例えば、ガラス等の無機材料、金属材料および樹脂材料を挙げることができ、なかでも、樹脂材料であることが好ましい。上記材料が樹脂材料であることにより、支持層を形成容易なものとすることができるからである。
上記樹脂材料としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等を好適に用いることができ、なかでも、ポリスチレン樹脂であることが好ましい。上記材料は細胞培養用途の容器に広く用いられているからである。
なお、本態様においては、上記材料の2以上を組み合わせて用いても良い。
上記支持層の厚みとしては、ガス透過層の撓みを抑制できるものであれば特に限定されるものではなく、支持層により支持される剥離領域の面積、支持層の開口率および支持層の構成材料により異なるものである。
上記厚みは、例えば、1mm〜5mmの範囲内とすることができ、なかでも、1mm〜3mmの範囲内であることが好ましく、特に、1mm〜2mmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、支持層を安定的に上記ガス透過層を支持可能なものとすることができるからである。
なお、上記厚みは、具体的には、図2中のaで示されるものである。
上記支持層は、ガス透過層を支持することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、細胞培養容器が非積層領域にガスバリア性外枠層を有する場合には、支持層がガスバリア性外枠層と接続された形状とすることができる。
本態様において、上記支持層がガスバリア性外枠層と接続されるものである場合には、上記支持層が、上記ガスバリア性外枠層と一体で形成されていることが好ましい。上記細胞培養容器を、形成容易なものとすることができるからである。
なお、既に説明した図2、図5および図6は、上記支持層が、上記ガスバリア性外枠層と一体で形成されている例を示すものである。
(4)細胞培養容器
本態様の細胞培養容器は、積層領域を少なくとも有するものである。
本態様においては、上記積層領域が細胞培養容器の一部の領域に形成されるものである場合には、積層領域と共にガスバリア性を有する細胞培養容器を形成可能な非積層領域を有するものである。
なお、このような非積層領域については、上記「1.第1実施態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、上記細胞培養容器は、必要に応じてその他の構成を有するものであっても良い。
このようなその他の構成としては、培地や細胞を細胞培養容器内に充填する際に用いる注入部を挙げることができる。
上記注入部としては、培地および細胞等を細胞培養容器内への充填前後においてガスバリア性を有するものであればよく、細胞培養容器に一般的に用いられるものとすることができる。例えば、培地および細胞等が通過可能な注入口および注入口を密閉する密閉部を有するものとすることができる。
上記注入口については、細胞培養容器の外側に向かって凸状に形成された円筒形状の凸部等とすることができる。また、注入口が非積層領域に形成される場合、注入口は、非積層領域を構成するガスバリア性外枠層と一体形成され、ガスバリア性外枠層の構成材料および厚みと同様のものとすることができる。
上記密閉部としては、注入口を密閉可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、スクリューキャップ式等の注入口に対して脱着可能な蓋部を挙げることができる。
上記細胞培養容器の内容量としては、所望のガスバリア性を有する細胞培養容器を形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、上記「1.第1実施態様」の項に記載の内容と同様とすることができる。
本態様の細胞培養容器の製造方法としては、上記構成の細胞培養容器を形成可能な方法であれば特に限定されるものではない。
例えば、市販の細胞培養容器の底面に開口部を形成することにより支持層を形成し、次いで、ガス透過性フィルムを支持層の培地支持面側、すなわち、容器内面側に配置し、ガス透過性フィルムを容器に対して固定する方法を挙げることができる。
また、底面に支持層が形成された細胞培養容器の形成方法については、開口部を含まない底面と外枠部とにより密閉された容器を形成した後に、底面に開口部を形成する方法であっても良く、射出成形法等を用いて開口部を含む底面を外枠部と共に同時に形成する方法であっても良い。
B.培地入細胞培養容器
次に、本発明の培地入細胞培養容器について説明する。
本発明の培地入細胞培養容器は、ガスバリア性を有する細胞培養容器と、上記細胞培養容器内に充填された培地と、を有し、上記細胞培養容器は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された積層領域を有し、上記積層領域では、上記ガスバリア層が剥離可能に積層されている剥離領域を有することを特徴とするものである。
このような本発明の培地入細胞培養容器について図を参照して説明する。図7は、本発明の培地入細胞培養容器の一例を示す概略断面図であり、細胞培養容器が袋状である例を示すものである。図8は、本発明の培地入細胞培養容器の他の例を示す概略断面図であり、細胞培養容器が箱状である例を示すものである。
図7および図8に例示するように、本発明の培地入細胞培養容器20は、ガスバリア性を有する細胞培養容器10と、上記細胞培養容器10内に充填された培地21とを有するものであって、上記細胞培養容器10は、内面側からガス透過層1およびガスバリア層2の順で積層された積層領域11を有し、上記積層領域11では、上記ガスバリア層2が剥離可能に積層されている剥離領域12を有するものである。
本発明によれば、上記細胞培養容器として、上述の細胞培養容器を用いることにより、培地入細胞培養容器を、保管時の二酸化炭素透過が抑制されたものとすることができる。
剥離領域のガスバリア層をガス透過層から剥離することで、ガス透過層を露出させることができる。このため、上記培地入細胞培養容器を、細胞培養時にガス透過性を容易に発現可能なものとすることができる。
また、細胞培養容器に培地を充填し、密閉するのみで、二酸化炭素透過が抑制された培地入細胞培養容器とすることができることから、培地入細胞培養容器を、形成の容易なものとすることができる。
本発明の培地入細胞培養容器は、細胞培養容器および培地を有するものである。
以下、本発明の培地入細胞培養容器の各構成について詳細に説明する。
なお、上記細胞培養容器については、上記「A.細胞培養容器」の項に記載の内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
1.培地
本発明における培地は、上記細胞培養容器内に充填されるものである。
このような培地としては、細胞の培養に一般的に用いられるものを使用することができる。
具体的には、培地としては、細胞培養に一般的に用いられるものとすることができ、IMDM培地、MEM培地、X-VIV015培地、RPMI1640培地、DXF培地等を挙げることができる。
また、上記培地に含まれる培地成分としては、それぞれの培地に一般的に用いられるのとすることができるが、上記培地がガン免疫療法に用いられる樹状細胞、リンパ球等の細胞培養に用いられる場合には、GM-CSF、SCF、IL-2、IL-4等のサイトカインを含み、さらに、緩衝剤、エネルギー源、栄養素、補酵素、無機イオン、pH緩衝液等を含むものとすることができる。これらの培地成分は、培養すべき細胞に応じて適切な配合量で含有するように調製される。
また、上記培地成分は、必要に応じて、血清や細胞成長因子を含むものとすることができる。
上記エネルギー源は、グルコースなどが用いられ、細胞の生理活動に必要な燃料となる。
上記栄養素は、核酸、アミノ酸などの細胞の構成原料が選択される。
上記補酵素は、ビタミン類や微量金属などの細胞内酵素活性の増強および安定化する役割のものが選択される。
上記無機イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどの生体内に存在するイオンであり、培地の浸透圧の調整を行う役割を果たす。
上記pH緩衝剤液は、以上の培地成分を配合した培地のpHを調整する役割を果たし、リン酸緩衝液、重曹、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N'−2−エタンスルホン酸(HEPES)等から適切なものが使用される。
上記培地の充填量としては、本発明の培地入細胞培養容器の用途等に応じて異なるものであるが、例えば、細胞培養容器の内容量の30体積%〜90体積%の範囲内とすることができる。上記充填量が上述の範囲内であることにより、細胞培養容器への培地の充填を容易なものとすることができるからである。
2.培地入細胞培養容器
本発明の培地入細胞培養容器は、上記細胞培養容器および培地を有するものであるが、必要に応じて、その他の構成を有するものであってもよい。
本発明の培地入細胞培養容器の用途としては、培地の保管および細胞培養容器に充填された培地を用いた細胞培養用途に用いることができるが、なかでも本発明においては、保管時の培地のpH変化の影響に敏感な細胞の培養等に用いられることが好ましい。本発明の保管時の二酸化炭素透過が抑制することができるとの効果をより効果的に発揮できるからである。
具体的には、上記細胞および培地としてガン免疫療法向けの細胞培養等の培地を用いた樹状細胞、リンパ球等の細胞の培養の保管およびこれを用いた細胞培養等に好ましく用いることができる。
C.細胞の培養方法
次に、本発明の細胞の培養方法について説明する。
本発明の細胞の培養方法は、ガスバリア性を有する細胞培養容器と、上記細胞培養容器内に充填された培地とを有し、上記細胞培養容器は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された積層領域を有し、上記積層領域では、上記ガスバリア層が剥離可能に積層されている剥離領域を有する培地入細胞培養容器を準備し、上記培地入細胞培養容器に細胞を注入する細胞注入工程と、上記剥離領域の上記ガスバリア層を上記ガス透過層から剥離する剥離工程と、上記細胞注入工程および上記剥離工程後に上記培地入細胞培養容器内の上記細胞を培養する培養工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明の細胞の培養方法を図を参照して説明する。図9は、本発明の細胞の培養方法の一例を示す工程図である。本発明の細胞培養方法は、図9(a)に示すように、培地入細胞培養容器20を準備し、上記培地入細胞培養容器20に細胞31を注入し、次いで、剥離領域に形成された基材4を所定の力Pで引っ張ることで、剥離領域の上記ガスバリア層2をガス透過層1から剥離し、ガス透過層がガスバリア層から露出するガス透過領域12aを形成することによりガス透過性を有する細胞培養容器10aを有する培地入細胞培養容器20aとし(図9(b))、次いで、ガス透過性を有する培地入細胞培養容器20a内の上記細胞31を培養するものである(図9(c))。
なお、上記培地入細胞培養容器20は、ガスバリア性を有する細胞培養容器10と、上記細胞培養容器10内に充填された培地21とを有し、上記細胞培養容器10は、内面側からガス透過層1およびガスバリア層2の順で積層された積層領域11を有し、上記積層領域11では、上記ガスバリア層2が剥離可能に積層されている剥離領域12を有するものである。
また、図9(a)〜(c)が、それぞれ、細胞注入工程、剥離工程および培養工程である。
また、図9中の符号については、図1と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
本発明によれば、上述の培地入細胞培養容器に対して上記剥離工程を行うことにより、ガス透過層を露出させて、培地入細胞培養容器にガス透過性を発現させることができる。このため、上記培養工程で細胞を安定的に培養することができる。
本発明の細胞の培養方法は、細胞注入工程、剥離工程および培養工程を有するものである。
以下、本発明の細胞の培養方法の各工程について詳細に説明する。
1.細胞注入工程
本発明における細胞注入工程は、上記培地入細胞培養容器を準備し、上記培地入細胞培養容器に細胞を注入する工程である。
なお、上記培地入細胞培養容器については、上述の「A.培地入細胞培養容器」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本工程において、培地入細胞培養容器に細胞を注入する方法としては、上記培地入細胞培養容器内に、所定数の細胞を注入することができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な細胞の注入方法を用いることができる。
例えば、培地入細胞培養容器に含まれる細胞培養容器が袋状である態様の場合、すなわち、第1実施態様の細胞培養容器であり、注入部の密閉部がゴム栓部である場合には、培地等に細胞を懸濁させた細胞懸濁液を、注入部からシリンジ等を用いて加圧状態で注入する方法等を挙げることができる。
また、培地入細胞培養容器に含まれる細胞培養容器が箱状である態様の場合、すなわち、第2実施態様の細胞培養容器である場合には、注入口を密閉する密閉部としての蓋部を開封し、細胞懸濁液を注入口から無加圧状態で注ぎ込む方法等を挙げることができる。
本工程において注入される細胞およびその数等は、本発明の細胞の培養方法により培養する目的等に応じて適宜設定されるものである。
2.剥離工程
本発明における剥離工程は、上記剥離領域の上記ガスバリア層を上記ガス透過層から剥離する工程である。
本工程における上記剥離領域の上記ガスバリア層を上記ガス透過層から剥離する剥離方法としては、剥離領域のガスバリア層を安定的にガス透過層から剥離することができる方法であれば特に限定されるものではない。
上記剥離方法は、例えば、所定の力で上記ガスバリア層をガス透過層面に垂直または水平方向に引っ張る等の方法を用いることができる。
また、上記ガスバリア層を剥離する際に要する力としては、剥離領域のガスバリア層を安定的にガス透過層から剥離できるものであれば良く、例えば、細胞培養容器の使用者が道具を使用することなく、素手で剥離できる力程度とすることができる。
また、剥離領域においてガスバリア層上に基材層が形成されている場合、ガスバリア層を引っ張る方法としては、ガスバリア層を直接引っ張る方法であっても、基材層を引っ張ることにより間接的にガスバリア層を引っ張る方法であってもよい。
本工程により剥離された剥離領域のガスバリア層は、細胞培養容器から分離されるものであっても良く、細胞培養容器に接続された状態であっても良い。
既に説明した図9(b)は、本工程後の剥離領域のガスバリア層が細胞培養容器から分離される例を示すものである。
一方、図10は、本工程後の剥離領域のガスバリア層が細胞培養容器に接続された状態である例を示すものである。
なお、図10は、剥離された剥離領域のガスバリア層が、折り曲げられた基材層を介して細胞培養容器に接続されるものである。
また、図10中の符号については、図9と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
本工程の実施タイミングとしては、上記細胞注入工程の前であっても、後であっても良いが、通常、細胞注入工程の後である。
3.培養工程
本発明における培養工程は、上記細胞注入工程および上記剥離工程後に上記培地入細胞培養容器内の上記細胞を培養する工程である。
本工程において、上記細胞を培養する方法としては、一般的な細胞培養に用いられる方法と同様の方法を用いることができ、上記細胞注入工程後の培地入細胞培養容器を、所定の条件に設定された恒温装置内で静置することにより培養する方法を用いることができる。
4.細胞の培養方法
本発明の細胞の培養方法は、細胞注入工程、剥離工程および培養工程を有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有するものであっても良い。
上記その他の工程としては、例えば、上記剥離工程後に、上記ガス透過層から細胞を顕微鏡等を用いて観察する細胞観察工程、上記剥離工程前に、上記培地入細胞培養容器を保管する保管工程等を挙げることができる。
また、上記その他の工程は、細胞培養容器の注入部が注入口および密閉部として注入口を密閉する蓋部等を有する場合、注入工程前に行われ、注入口を密閉する密閉部を開封する開封工程、および注入工程後に行われ、注入口を密閉部により密閉する密閉工程等を有するものであっても良い。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
ガス透過層として厚さ50μmのOPSフィルムと、厚さ50μmの接着層と、ガスバリア層としてPET/アルミ箔/PETがこの順で積層したフィルムと、を積層し、培養バックを作製した。
次いで、剥離領域となる箇所の外周の全周に沿ってガスバリア層を切断することによりハーフカット部を形成し、細胞培養容器とした。
なお、ガス透過層の酸素透過率は、50,000cm/m・24hr・atmであり、二酸化炭素透過率は、100,000cm/m・24hr・atmであった。
また、ガスバリア性フィルムであるPET/アルミ箔/PETの酸素透過率は0.3cm/m・24hr・atmであり、二酸化炭素透過率は、0.6cm/m・24hr・atmであった。
また、得られた細胞培養容器の内容量は、2Lであり、剥離領域の面積は10,000mmとした。
[比較例1]
実施例1の細胞培養容器のハーフカット部によって囲まれる剥離領域のガスバリア層を剥離除去した以外は、実施例1と同様にして細胞培養容器とした。
[評価]
実施例1および比較例1の細胞培養容器に、pH緩衝液として重炭酸イオンを含み、pHが7.2〜7.4であるRPMI1640培地を2L入れ、2週間常温にて放置前後でpHを測定した。
その結果、実施例1の細胞培養容器では2週間後のpHは放置前と変化はなかったが、比較例1の細胞培養容器では、2週間後のpHは7.0以下となった。
1 … ガス透過層
2 … ガスバリア層
3 … 接着層
4 … 基材層
5 … ハーフカット部
6 … ガスバリア性外枠層
7 … 支持層
7a … 開口部
8 … 注入部
10 … 細胞培養容器
11 … 積層領域
12 … 剥離領域
12a … ガス透過領域
13 … 非積層領域
20 … 培地入細胞培養容器
21 … 培地
31 … 細胞

Claims (5)

  1. ガスバリア性を有する細胞培養容器であって、
    前記細胞培養容器は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された積層領域を有し、
    前記積層領域では、前記ガスバリア層が剥離可能に積層されている剥離領域を有することを特徴とする細胞培養容器。
  2. 前記積層領域が、前記ガス透過層および前記ガスバリア層の間に形成された接着層を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養容器。
  3. 前記ガス透過層の厚みが5μm〜200μmの範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の細胞培養容器。
  4. ガスバリア性を有する細胞培養容器と、
    前記細胞培養容器内に充填された培地と、
    を有し、
    前記細胞培養容器は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された積層領域を有し、
    前記積層領域では、前記ガスバリア層が剥離可能に積層されている剥離領域を有することを特徴とする培地入細胞培養容器。
  5. ガスバリア性を有する細胞培養容器と、前記細胞培養容器内に充填された培地とを有し、
    前記細胞培養容器は、内面側からガス透過層およびガスバリア層の順で積層された積層領域を有し、
    前記積層領域では、前記ガスバリア層が剥離可能に積層されている剥離領域を有する培地入細胞培養容器を準備し、前記培地入細胞培養容器に細胞を注入する細胞注入工程と、
    前記剥離領域の前記ガスバリア層を前記ガス透過層から剥離する剥離工程と、
    前記細胞注入工程および前記剥離工程後に前記培地入細胞培養容器内の前記細胞を培養する培養工程と、
    を有することを特徴とする細胞の培養方法。
JP2014239911A 2014-11-27 2014-11-27 細胞培養容器、培地入細胞培養容器および細胞の培養方法 Active JP6613558B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014239911A JP6613558B2 (ja) 2014-11-27 2014-11-27 細胞培養容器、培地入細胞培養容器および細胞の培養方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014239911A JP6613558B2 (ja) 2014-11-27 2014-11-27 細胞培養容器、培地入細胞培養容器および細胞の培養方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016101095A true JP2016101095A (ja) 2016-06-02
JP6613558B2 JP6613558B2 (ja) 2019-12-04

Family

ID=56087647

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014239911A Active JP6613558B2 (ja) 2014-11-27 2014-11-27 細胞培養容器、培地入細胞培養容器および細胞の培養方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6613558B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017123786A (ja) * 2016-01-12 2017-07-20 ヤマト科学株式会社 加湿用バッグおよび加湿用バッグを備えるインキュベータ
JP2018000081A (ja) * 2016-06-30 2018-01-11 株式会社新菱 ガス供給機能付き容器、細胞培養容器、運搬用容器、保存用容器、細胞培養方法、内容物運搬方法および内容物保存方法
JP2019103469A (ja) * 2017-12-14 2019-06-27 東洋製罐グループホールディングス株式会社 培養容器基材、及び培養容器
KR102116633B1 (ko) * 2019-01-02 2020-05-29 웨이 케이. 수 미생물 배양용 배양백

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03124578A (ja) * 1989-09-28 1991-05-28 Terumo Corp 細胞保存容器
JPH10262647A (ja) * 1997-03-19 1998-10-06 Becton Dickinson & Co 培養容器アセンブリ、これに用いる蓋およびこれを用いた細胞培養方法
JPH10262648A (ja) * 1997-03-19 1998-10-06 Becton Dickinson & Co 培養容器アセンブリ、これに用いる蓋およびこれを用いた細胞培養方法
JPH10262649A (ja) * 1997-03-19 1998-10-06 Becton Dickinson & Co 培養容器アセンブリ、これに用いる蓋およびこれを用いた細胞培養方法
JPH10337178A (ja) * 1997-03-19 1998-12-22 Becton Dickinson & Co 培養容器アセンブリ、これに用いる蓋およびこれを用いた細胞培養方法
JP2854394B2 (ja) * 1990-07-12 1999-02-03 株式会社ニッショー 液体培地入りカルチヤーバツグの製造方法
JPH11506933A (ja) * 1995-06-05 1999-06-22 アクゾ・ノベル・エヌ・ベー 微生物を検出するデバイスおよび方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03124578A (ja) * 1989-09-28 1991-05-28 Terumo Corp 細胞保存容器
JP2854394B2 (ja) * 1990-07-12 1999-02-03 株式会社ニッショー 液体培地入りカルチヤーバツグの製造方法
JPH11506933A (ja) * 1995-06-05 1999-06-22 アクゾ・ノベル・エヌ・ベー 微生物を検出するデバイスおよび方法
JPH10262647A (ja) * 1997-03-19 1998-10-06 Becton Dickinson & Co 培養容器アセンブリ、これに用いる蓋およびこれを用いた細胞培養方法
JPH10262648A (ja) * 1997-03-19 1998-10-06 Becton Dickinson & Co 培養容器アセンブリ、これに用いる蓋およびこれを用いた細胞培養方法
JPH10262649A (ja) * 1997-03-19 1998-10-06 Becton Dickinson & Co 培養容器アセンブリ、これに用いる蓋およびこれを用いた細胞培養方法
JPH10337178A (ja) * 1997-03-19 1998-12-22 Becton Dickinson & Co 培養容器アセンブリ、これに用いる蓋およびこれを用いた細胞培養方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017123786A (ja) * 2016-01-12 2017-07-20 ヤマト科学株式会社 加湿用バッグおよび加湿用バッグを備えるインキュベータ
JP2018000081A (ja) * 2016-06-30 2018-01-11 株式会社新菱 ガス供給機能付き容器、細胞培養容器、運搬用容器、保存用容器、細胞培養方法、内容物運搬方法および内容物保存方法
JP2019103469A (ja) * 2017-12-14 2019-06-27 東洋製罐グループホールディングス株式会社 培養容器基材、及び培養容器
JP7155513B2 (ja) 2017-12-14 2022-10-19 東洋製罐グループホールディングス株式会社 培養容器基材、及び培養容器
KR102116633B1 (ko) * 2019-01-02 2020-05-29 웨이 케이. 수 미생물 배양용 배양백

Also Published As

Publication number Publication date
JP6613558B2 (ja) 2019-12-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6613558B2 (ja) 細胞培養容器、培地入細胞培養容器および細胞の培養方法
US10023360B2 (en) Sealing bag for hydrogen gas, and method for dissolving hydrogen gas
JP5098471B2 (ja) 細胞培養用トレイ状容器並びに同容器への収容物の充填方法
WO2007043699A9 (ja) 培養容器及び培養方法
KR101484865B1 (ko) 다층 필름 및 세포 배양 용기
JP6405690B2 (ja) 複室培養容器、及び細胞培養方法
WO2017145870A1 (ja) 細胞培養容器および細胞培養容器の固定用治具
NO340383B1 (no) Emballasje for myke engangskontaktlinser samt fremgangsmåter for fremstilling derav.
CN103180430A (zh) 粘附细胞用培养容器以及粘附细胞用培养容器的制造方法
WO2019017464A1 (ja) シール機構を具備する脆弱物保持デバイス
JP2017123976A (ja) バイオロジカルインジケータ用基材、バイオロジカルインジケータ、バイオロジカルインジケータ用基材保管体、バイオロジカルインジケータ保管体、バイオロジカルインジケータ用基材保管体の製造方法、バイオロジカルインジケータ保管体の製造方法および殺菌装置の殺菌能力評価方法
JP2008022715A (ja) 細胞シート培養方法及び細胞培養容器
MX2008008552A (es) Montaje de sobreenvoltura y bolsa llena con fluido.
WO2020013172A1 (ja) 移植片を移送するためのデバイス
WO2020013174A1 (ja) 移植片を移送するためのデバイス
JP2008048654A (ja) トレイ状容器
EP3722411A1 (en) Fragile-object retaining device provided with protective mechanism
CA2789100C (en) Methods and devices for improved oxygen permeability in microorganism storage container
JP2016077164A (ja) 細胞培養容器
JP2017171380A (ja) 容器
JP2018121568A (ja) シート状生体組織の輸送用容器及びそれを用いた輸送方法
JP5622362B2 (ja) 積層体
JP6582375B2 (ja) 培地包装体および培地容器
JP6340704B2 (ja) 水素ガスの密封袋、及び水素ガスの溶解方法
JP2016016897A (ja) 包装袋

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170927

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180724

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180821

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181019

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190326

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190523

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191008

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191021

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6613558

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150