JP7364825B2 - 培養容器及び培養方法 - Google Patents
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Description
本発明の態様は、例えば以下の〔1〕~〔7〕に関する。
〔1〕 細胞、組織、又は器官を培地中で培養する培養容器であって、前記培養容器の培養面の少なくとも一部が、下記要件(1)及び(2)を満たす酸素透過層(I-a)と、下記要件(3)及び(4)を満たすガスバリア層(II-a)との積層領域を有し、前記ガスバリア層(II-a)が前記酸素透過層(I-a)の下面に設けられ、前記ガスバリア層(II-a)が前記酸素透過層(I-a)から培養中に着脱可能である、培養容器。
(1)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(I-a)が20000~60000cm3/(m2×24h×atm)である
(2)JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である
(3)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(II-a)が3000cm3/(m2×24h×atm)以下である
(4)JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である
〔2〕 前記酸素透過層(I-a)の水接触角が、30~120°である、〔1〕に記載の培養容器。
〔3〕 前記酸素透過層(I-a)が、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の培養容器。
〔4〕 前記4-メチル-1-ペンテン重合体(X)が、4-メチル-1-ペンテン単独重合体(x1)並びに、4-メチル-1-ペンテンと、エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体(x2)から選択される少なくとも1種の重合体である、〔3〕に記載の培養容器。
〔5〕 培養面に、天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料がコーティングされた、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の培養容器。
〔6〕 前記ガスバリア層(II-a)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の培養容器。
〔7〕 細胞、組織、又は器官の培養方法であって、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の培養容器を用いて、細胞、組織、又は器官を培養する工程(A-a)、前記ガスバリア層(II-a)を前記酸素透過層(I-a)から取り外す工程(B-a)、及び前記工程(B-a)で得られた培養容器を用いて、細胞、組織、又は器官をさらに培養する工程(C-a)、を含む、培養方法。
〔i〕 細胞、組織、又は器官を培養する培養容器であって、前記培養容器が、底面部材と、側壁部材とを有し、前記底面部材と前記側壁部材とが接合することで少なくとも一つの培養空間が形成され、前記底面部材の少なくとも一部が、少なくとも酸素透過層(I-b)と、ガスバリア層(II-b)とを有し、前記ガスバリア層(II-b)が、前記酸素透過層(I-b)の下に、前記酸素透過層(I-b)から着脱可能に重ねられ、前記ガスバリア層(II-b)が、下記要件(5)を満たし、前記酸素透過層(I-b)が、下記要件(6)を満たす、培養容器。
(5)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(II-b)が3000cm3/(m2×24h×atm)以下である
(6)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(I-b)が前記P(II-b)の6.0倍以上である
〔ii〕 前記ガスバリア層(II-b)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、かつ、下記要件(7)または(8)を満たす、〔i〕に記載の培養容器。
(7)ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種と、粘着剤との混合物を含む
(8)ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む層と、粘着剤を含む層と、を有する
〔iii〕 下記方法で測定される、前記ガスバリア層(II-b)の前記酸素透過層(I-b)に対する剥離強度が、0.01~0.20N/25mmである、〔i〕又は〔ii〕に記載の培養容器。
[幅25mmのガスバリア層(II-b)を酸素透過層(I-b)に貼付した後、剥離試験機を用いて、ガスバリア層(II-b)を酸素透過層(I-b)から剥離角度180°で10mm/分の速度で剥離する試験を行う。]
〔iv〕 前記酸素透過層(I-b)が、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)を含む、〔i〕~〔iii〕のいずれかに記載の培養容器。
〔v〕 前記4-メチル-1-ペンテン重合体(X)が、4-メチル-1-ペンテン単独重合体(x1)並びに、4-メチル-1-ペンテンと、エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体(x2)から選択される少なくとも1種の重合体である、〔iv〕に記載の培養容器。
〔vi〕 前記P(I-b)が、20000~60000cm3/(m2×24h×atm)である、〔i〕~〔v〕のいずれかに記載の培養容器。
〔vii〕 前記底面部材の、前記酸素透過層(I-b)と前記ガスバリア層(II-b)とを有する領域の、JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である、〔i〕~〔vi〕のいずれかに記載の培養容器。
〔viii〕 前記酸素透過層(I-b)の、JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である、〔i〕~〔vii〕のいずれかに記載の培養容器。
〔ix〕 前記ガスバリア層(II-b)の、JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である、〔i〕~〔viii〕のいずれかに記載の培養容器。
〔x〕 前記酸素透過層(I-b)の水接触角が、30~120°である、〔i〕~〔ix〕のいずれかに記載の培養容器。
〔xi〕 前記底面部材の培養面に、天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料がコーティングされた、〔i〕~〔x〕のいずれかに記載の培養容器。
〔xii〕 細胞、組織、又は器官の培養方法であって、〔i〕~〔xi〕のいずれかに記載の培養容器を用いて、細胞、組織、又は器官を培養する工程(A-b)、前記ガスバリア層(II-b)を前記酸素透過層(I-b)から取り外す工程(B-b)、及び前記工程(B-b)で得られた培養容器を用いて、細胞、組織、又は器官をさらに培養する工程(C-b)、を含む、培養方法。
〔xiii〕 〔i〕~〔xii〕のいずれかに記載の培養容器の製造方法であって、前記方法が、前記側壁部材に、前記底面部材を貼付する工程を含む、培養容器の製造方法。
なお、数値範囲に関する「A~B」との記載は、特に断りがなければ、A以上B以下であることを表す。例えば、「1~5%」との記載は、1%以上5%以下を意味する。
下記要件(1)及び(2)を満たす酸素透過層(I-a)と、
下記要件(3)及び(4)を満たすガスバリア層(II-a)との積層領域を有し、
前記ガスバリア層(II-a)が前記酸素透過層(I-a)の下面に設けられ、
前記ガスバリア層(II-a)が前記酸素透過層(I-a)から培養中に着脱可能である、培養容器である。この培養容器を培養容器(α)と称する。
(1)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(I-a)が20000~60000cm3/(m2×24h×atm)である
(2)JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である
(3)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(II-a)が3000cm3/(m2×24h×atm)以下である
(4)JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である
細胞、組織、又は器官を培養する培養容器であって、前記培養容器が、底面部材と、側壁部材とを有し、
前記底面部材と前記側壁部材とが接合することで少なくとも一つの培養空間が形成され、
前記底面部材の少なくとも一部が、少なくとも酸素透過層(I-b)と、ガスバリア層(II-b)とを有し、
前記ガスバリア層(II-b)が、前記酸素透過層(I-b)の下に、前記酸素透過層(I-b)から着脱可能に重ねられ、
前記ガスバリア層(II-b)が、下記要件(5)を満たし、
前記酸素透過層(I-b)が、下記要件(6)を満たす、培養容器である。この培養容器を、培養容器(β)と称する。
(5)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(II-b)が3000cm3/(m2×24h×atm)以下である
(6)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(I-b)が前記P(II-b)の6.0倍以上である。
本明細書において、細胞、組織、又は器官は、単に「細胞等」とも称する。細胞等の由来は、特に限定されず、動物、植物、昆虫、菌、原生生物、細菌などあらゆる生物であってよいが、動物、又は植物が好ましく、動物がさらに好ましく、特に哺乳動物が好ましい。本発明の一態様である培養容器は、細胞等の接着性に優れるので、細胞等は接着性のものであることが好ましい。培養容器の培養面での培養に適することから、細胞等は細胞であることが好ましい。本発明の一態様において、細胞等は、好気性であると好ましく、嫌気性のものを含まないことがより好ましい。
細胞は、浮遊性細胞であってもよく、接着性細胞であってもよいが、好ましくは接着性細胞である。
細胞は、2次元で培養される細胞であってもよいし、3次元で培養される細胞であってもよく、細胞を培養して得られるスフェロイドを含む。細胞は、初代培養細胞あるいは株化継代された細胞のいずれであってもよいが、好ましくは初代培養細胞である。細胞は、凍結又は再凍結したものを用いてもよい。
前記細胞は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、細胞は、幹細胞または前駆細胞を含んでもよく、除いてもよい。細胞は、上皮系幹細胞または前駆細胞を除いてもよく、含んでいてもよい。
本発明の一態様において、培養とは、細胞等を増殖、維持させることだけでなく、細胞等の播種、継代、分化誘導、自己組織化誘導等のプロセスも含む広い意味で用いる。培養に用いる培地等は制限されず、細胞等の特性に応じた培地を選択すればよい。
細胞播種密度が上記の範囲であると、上記範囲外の場合と比べて、細胞が容器に良好に接着し、細胞の正常な機能が維持されやすい。
培養容器(α)において、培養容器とは、細胞、組織、又は器官を培地中で培養するために用いられる容器全てを意味する。培地中で培養するとは、細胞等の少なくとも一部が、培地に浸漬されて培養されるという意味であり、細胞等の全体が培地に浸漬されていなくてもよい。
培養容器(β)において、培養容器とは、細胞、組織、又は器官を培養するために用いられる容器全てを意味する。該培養は、培地中で行ってもよい。
培養容器は、少なくとも1つのウェルを有する培養容器であることが好ましく、少なくとも1つのウェルを有するプレートであることがさらに好ましく、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェル、1536ウェル等の複数のウェルを有するプレートであることがさらに好ましい。一般にウェルのようなくぼみ形状を底面に有する培養容器は、底面の複雑な形状を安定させるために底面を厚くする必要があり、細胞等への酸素供給が充分に行われ難い。培養容器(α)のように、底面が酸素透過層(I-a)とガスバリア層(II-a)との積層領域を有すると、1ウェル、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェル、1536ウェル等の複数のウェルを有するプレートであっても、形状が安定しており、細胞等への酸素供給量も調節しやすい。培養容器(β)のように、底面部材の少なくとも一部が、少なくとも酸素透過層(I-b)と、ガスバリア層(II-b)とを有し、前記ガスバリア層(II-b)が前記酸素透過層(I-b)の下に重ねられている場合も、同様に、複数のウェルを有するプレートであっても、形状が安定しており、細胞等への酸素供給量も調節しやすい。
底面部材と、側壁部材とは、培養空間内の細胞等または培地が漏れ出さないように接合している。接合は、機械的接合、材料的接合、接着接合のいずれであってもよいが、所望の材料からなる、底面部材と側壁部材の組み合わせが容易であることから、接着接合が好ましい。
ここで培養面とは、培養容器を構成する部分のうち、細胞等を培養する際に、培地及び/又は細胞等が接触している部分、若しくは培地及び/又は細胞等が接触する予定の部分を意味する。例えば、培養容器がディッシュ、フラスコ又はプレートの場合、通常、底面部分が培養面を含み、該培養面の上側、すなわち、培養容器の内側に培地及び/又は細胞等が接触する。
コーティングされた培養容器は、細胞等の接着性、増殖性がより優れる。これは、培養面にコーティングされている天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料が、細胞等の足場となるためと考えられる。したがって、細胞等を接着させて培養する際には、培養容器は、培養面に、天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料がコーティングされていることが好ましく、培養面の培地及び/又は細胞等が接触する側が、天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料によりコーティングされていることがより好ましい。
表面改質処理に用いる方法は特に限定されないが、例えばコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線処理等の親水化処理、エステル化、シリル化、フッ化等の疎水化処理、表面グラフト重合、化学蒸着、エッチング、又は、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン基、チオール基、カルボキシル基等の特定の官能基付加、シランカップリング、チタンカップリング、ジルコニウムカップリング等の特定の官能基による処理、酸化剤等による表面粗化、ラビングやサンドブラスト等の物理的処理等が挙げられる。これらの表面改質処理は、単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
プラズマ処理を行う場合には、同伴させるガスとして、窒素、水素、ヘリウム、酸素、アルゴンなどが用いられ、好ましくは、窒素、ヘリウム、アルゴンから選択される少なくとも一種のガスが選ばれる。
以下で説明する、酸素透過層(I-a)及び酸素透過層(I-b)を総称して、酸素透過層(I)ともいう。
酸素透過層(I-a)は、下記要件(1)及び(2)を満たす層である。
(1)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(I-a)が20000~60000cm3/(m2×24h×atm)である
(2)JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である
酸素透過度P(I-a)は、具体的には以下の方法で測定できる。
酸素透過層(I-a)から測定サンプルを作製し、差圧式ガス透過率測定法により、温度23℃、湿度0%での酸素透過係数[cm3×mm/(m2×24h×atm)]を測定する。測定に用いる機器は差圧式ガス透過率測定法を用いたものであれば特に制限されないが、例えば株式会社東洋精機製作所製の差圧式ガス透過率測定装置MT-C3が挙げられる。測定サンプルは、酸素透過層(I-a)から厚さ50μmの90×90mmの試験片を切り出して作製し、測定部径は70mm(透過面積は38.46cm2)とすると好ましい。酸素透過度が大きいため、予めサンプルにアルミニウムマスクを施し、実透過面積を5.0cm2とすることがより好ましい。測定サンプルは、微細加工、表面改質処理を行ったものでもよいし、行っていないものでもよいが、何も処理を行っていないものが好ましい。酸素透過係数をフィルムの厚さ(μm)で除した値を酸素透過度[cm3/(m2×24h×atm)]とする。
酸素透過層(I-a)の酸素透過度P(I-a)は、例えば、酸素透過層(I-a)の厚さ、又は酸素透過層(I-a)を構成する材料等を調整することにより、調整することができる。
全光線透過率は、具体的には以下の方法で測定できる。
酸素透過層(I-a)から作製した試験片を使用して、JIS K 7361-1に準拠して、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズ透過率計HM-150(D65光源)を用い、全透過光量を測定し、下記式にて全光線透過率を求める。
全光線透過率(%)=100×(全透過光量)/(入射光量)
酸素透過層(I-a)の全光線透過率は、例えば、酸素透過層(I-a)の厚さ、又は酸素透過層(I-a)を構成する材料等を調整することにより、調整することができる。
酸素透過層(I-b)は、下記要件(6)を満たす層である。
温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(I-b)が、後述するP(II-b)の6.0倍以上である
酸素透過度P(I-b)は、酸素透過度P(I-a)と同様の方法及び好適態様で測定できる。
酸素透過層(I-b)の酸素透過度P(I-b)は、例えば、酸素透過層(I-b)の厚さ、又は酸素透過層(I-b)を構成する材料等を調整することにより、調整することができる。
酸素透過層(I-b)の全光線透過率は、酸素透過層(I-a)と同様の方法で測定できる。
酸素透過層(I-b)の全光線透過率は、例えば、酸素透過層(I-b)の厚さ、又は酸素透過層(I-b)を構成する材料等を調整することにより、調整することができる。
酸素透過層(I)の水接触角は、例えば、酸素透過層(I)を構成する材料、酸素透過層(I)の表面改質処理条件等を調整することにより、調整することができる。
酸素透過層(I-b)を構成する材料は、要件(6)を満たす酸素透過層(I-b)を形成可能なものであれば特に制限されない。
酸素透過層(I)を構成する材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸素透過層(I)を構成する材料は、成形加工性、透明性、形状安定性、軽量性、薬剤低収着性、自家蛍光、放射線耐性などの観点から、適切な材料を選択できる。このような観点から、ポリオレフィン系樹脂又はフッ素系樹脂、より好ましくはポリオレフィン系樹脂を選択することにより、本発明の一態様である培養容器は、細胞等を効率よく培養し、細胞等の形態を観察しやすく、また創薬スクリーニング用途や診断用途で使用しやすくなる。
本発明の一態様においては、4-メチル-1-ペンテン単独重合体、及び4-メチル-1-ペンテンと他のモノマーとの共重合体を総称して「4-メチル-1-ペンテン重合体(X)」と称する。
また、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)が、4-メチル-1-ペンテンと、エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体である場合は、その共重合体におけるエチレン及び炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは0~40モル%、より好ましくは0.5~20モル%、さらに好ましくは2~15モル%である。なお、これら構成単位の含有量は、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)中の全繰返し構成単位量を100モル%とする。構成単位の含有量が上記範囲内にあると、加工性に優れ均質な培養面が得られ、またフィルムの靭性と強度のバランスが良いため、撓みも少なくなる。
前記4-メチル-1-ペンテン重合体(X)を製造する方法は、4-メチル-1-ペンテン、オレフィン、その他のモノマーを重合させられれば、いずれの方法であってもよい。また、分子量や分子量分布を制御するために連鎖移動剤、例えば水素を共存させてもよい。製造に用いる機器も制限されない。重合法は公知の方法でもよく、気相法、スラリー法、溶液法、バルク法であってもよい。好ましくはスラリー法、溶液法である。また、重合法は単段重合法、又は二段等の多段重合法で、分子量の異なる複数の重合体を重合系中にブレンドする方法であってもよい。単段、多段重合法の何れであっても、連鎖移動剤として水素を用いる場合には、一括投入しても、分割投入、例えば重合初期、中期、終期に投入してもよい。重合は常温で行ってもよく、必要に応じて加温してもよいが、重合の効率の観点から、20℃~80℃で行うことが好ましく、40℃~60℃で行うことがより好ましい。製造に用いる触媒も制限されないが、重合の効率の観点から、例えば国際公開公報2006/054613に記載される固体状チタン触媒成分(I)や、国際公開公報2014/050817に記載される遷移金属化合物(A)を含有するオレフィン重合用触媒(メタロセン触媒)を用いることが好ましい。
4-メチル-1-ペンテン重合体(X)以外の成分としては、耐熱安定化剤、耐光安定化剤、加工助剤、可塑剤、酸化防止剤、滑剤、消泡剤、アンチブロック剤、着色剤、改質剤、抗菌剤、抗黴剤、防曇剤などの添加剤が挙げられる。
また、酸素透過層(I)が多層構造である場合、各層の構成材料及び厚さは同一であってもよく、異なっていてもよい。
酸素透過層(I-b)の厚さは、要件(6)を満たす限り、特に制限されないが、好ましくは20~500μm、より好ましくは25~500μm、さらに好ましくは30~200μmである。
なお、厚さとは、酸素透過層(I)が多層構造である場合には、各層の厚さの合計をいうものである。
以下で説明する、ガスバリア層(II-a)及びガスバリア層(II-b)を総称して、ガスバリア層(II)ともいう。
ガスバリア層(II-a)は、下記要件(3)及び(4)を満たす層である。
(3)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(II-a)が3000cm3/(m2×24h×atm)以下である
(4)JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である
酸素透過度P(II-a)は、酸素透過層(I-a)と同様の方法で測定することができる。
ガスバリア層(II-a)の酸素透過度P(II-a)は、好ましくは、1cm3/(m2×24h×atm)より大きく3000cm3/(m2×24h×atm)以下、より好ましくは1cm3/(m2×24h×atm)より大きく1000cm3/(m2×24h×atm)以下、さらに好ましくは1cm3/(m2×24h×atm)より大きく500cm3/(m2×24h×atm)以下、特に好ましくは1cm3/(m2×24h×atm)より大きく300cm3/(m2×24h×atm)以下である。
酸素透過度P(II-a)が前記範囲にあるということは、ガスバリア層(II-a)はガスバリア性に優れるといえる。
ガスバリア層(II-a)の酸素透過度P(II-a)は、例えば、ガスバリア層(II-a)の厚さ、又はガスバリア層(II-a)を構成する材料等を調整することにより、調整することができる。
全光線透過率は、酸素透過層(I-a)と同様の方法で測定することができる。
ガスバリア層(II-a)の全光線透過率は、好ましくは85.0%以上、より好ましくは90.0%以上である。全光線透過率の上限は特にないが、通常99.9%である。全光線透過率が前記範囲にあるということは、ガスバリア層(II-a)が透明性に優れるといえる。
ガスバリア層(II-a)の全光線透過率は、例えば、ガスバリア層(II-a)の厚さ、又はガスバリア層(II-a)を構成する材料等を調整することにより、調整することができる。
ガスバリア層(II-b)は、下記要件(5)を満たす層である。
温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(II-b)が3000cm3/(m2×24h×atm)以下である
酸素透過度P(II-b)は、酸素透過度P(I-a)と同様の方法及び好適態様で測定することができる。
ガスバリア層(II-b)の酸素透過度P(II-b)の好適な範囲及び調整方法は、ガスバリア層(II-a)と同様である。
ガスバリア層(II-b)の全光線透過率は、酸素透過層(I-a)と同様の方法で測定することができる。
ガスバリア層(II-b)の全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは85.0%以上、さらに好ましくは90.0%以上である。全光線透過率の上限は特にないが、通常99.9%である。全光線透過率が前記範囲にあるということは、ガスバリア層(II-b)が透明性に優れるといえる。
ガスバリア層(II-b)の全光線透過率は、例えば、ガスバリア層(II-b)の厚さ、又はガスバリア層(II-b)を構成する材料等を調整することにより、調整することができる。
ガスバリア層(II-a)を構成する材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ガスバリア層(II-b)を構成する材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、エチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)、ポリグリコール酸、芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリオレフィンを挙げることができ、これらの中から成形加工性、透明性、形状安定性、軽量性、薬剤低収着性、自家蛍光、放射線耐性などの観点から、適切な材料を選択できる。このような観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリオレフィンを選択することにより、本発明の一態様である培養容器は、細胞等を効率よく培養し、細胞等の形態を観察しやすく、また創薬スクリーニング用途や診断用途で使用しやすくなる。すなわち、ガスバリア層(II-b)は、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、より好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。
ガスバリア層(II-b)を構成する材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも1つと、エチレングリコール及びそのエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも1つとを重縮合することによって得られる重合体である。テレフタル酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸のアルキルエステルなどが挙げられる。エチレングリコールのエステル形成性誘導体としては、例えば、エチレングリコール脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステルなどが挙げられる。
ポリエチレンテレフタレートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
ガスバリア層(II-b)を構成する材料として用いることができるポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン(プロピレンの単独重合体);プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとの共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂;フッ素含有環状オレフィン重合体等が挙げられる。なかでも、プロピレンの単独重合体又は共重合体が好ましい。すなわち、ガスバリア層(II-b)は、好ましくはプロピレンの単独重合体又は共重合体を含み、より好ましくはポリプロピレン(プロピレンの単独重合体)を含む。
前記プロピレンの共重合体におけるプロピレンに由来する構成単位以外の構成単位は、特に制限されないが、エチレン及び炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンとすることができる。前記オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。前記オレフィンは、ガスバリア層(II-b)に必要な物性に応じて適宜選択することができる。
ポリエチレンテレフタレートおよびポリオレフィン以外の成分としては、耐熱安定化剤、耐光安定化剤、加工助剤、可塑剤、酸化防止剤、滑剤、消泡剤、アンチブロック剤、着色剤、改質剤、抗菌剤、抗黴剤、防曇剤、接着剤などの添加剤が挙げられる。
また、ガスバリア層(II)が多層構造である場合、各層の構成材料及び厚さは同一であってもよく、異なっていてもよい。
(7)ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種と、粘着剤との混合物を含む
(8)ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む層と、粘着剤を含む層と、を有する
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種と、粘着剤との混合物を含むとは、ガスバリア層(II-b)の1層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種と、粘着剤との組成物から構成されることを意味する。
該組成物中におけるポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種の含有量は特に制限されない。
該組成物中における粘着剤の含有量は特に制限されない。
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種と、粘着剤との質量比は、特に制限されない。
粘着剤については後述する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む層と、粘着剤を含む層と、を有するとは、ガスバリア層(II-b)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む層と、粘着剤を含む層との少なくとも2層を有することを意味する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む層の厚さは特に制限されないが、好ましくは10~500μm、より好ましくは50~100μmである。
粘着剤を含む層の厚さは特に制限されないが、好ましくは1~100μm、より好ましくは5~20μmである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む層と、粘着剤を含む層の厚さの比は特に制限されないが、好ましくは500:1~10:100、より好ましくは100:5~50:20である。
粘着剤については後述する。
培養容器(α)は、培養容器の培養面の少なくとも一部が、要件(1)及び(2)を満たす酸素透過層(I-a)と、要件(3)及び(4)を満たすガスバリア層(II-a)との積層領域を有する。
培養面の一部の領域のみが酸素透過層(I-a)とガスバリア層(II-a)との積層領域である場合、培養面の前記積層領域以外の領域は、酸素透過層(I-a)で構成される領域を有することが好ましく、培養面の前記積層領域以外の全ての領域は、酸素透過層(I-a)で構成される領域であることがより好ましい。
培養容器(α)の培養面の、酸素透過層(I-a)とガスバリア層(II-a)との積層領域以外の部材を構成する材料も特に制限されず、公知の材料を用いることができる。かかる材料としては、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、熱硬化性樹脂、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ガラス等が挙げられる。培養容器(α)の培養面の、酸素透過層(I-a)とガスバリア層(II-a)と積層領域以外の部材を構成する材料は、酸素透過層(I-a)を構成する材料と同じであることが好ましい。
培養容器(β)は、前記底面部材の少なくとも一部が、少なくとも酸素透過層(I-b)と、ガスバリア層(II-b)とを有し、前記ガスバリア層(II-b)が前記酸素透過層(I-b)の下に設けられている。
底面部材の一部の領域のみが、酸素透過層(I-b)とガスバリア層(II-b)とを有する領域である場合、底面部材における、該両方の層を有する領域以外の領域は、酸素透過層(b)で構成される領域であることが好ましく、底面部材における該両方の層を有する領域以外の全ての領域は、酸素透過層(I-b)で構成される領域であることがより好ましい。
培養容器(β)は、培養面全体が酸素透過層(I-b)とガスバリア層(II-b)とを有する領域であることが好ましい。
ガスバリア層(II-b)は、酸素透過層(I-b)の下に直接重ねられてもよいし、酸素透過層(I-b)とガスバリア層(II-b)との間に、他の層(例えば金属蒸着層、上記接着層など)が含まれていてもよい。該他の層は、培養容器(β)の内部側から、酸素透過層(I-b)、ガスバリア層(II-b)、他の層の順で重ねられていてもよい。
培養容器(β)の底面部材の、酸素透過層(I-b)とガスバリア層(II-b)とを有する領域以外の領域を構成する材料も特に制限されず、公知の材料を用いることができる。かかる材料としては、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、熱硬化性樹脂、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ガラス等が挙げられる。培養容器(β)の底面部材の、酸素透過層(I-b)とガスバリア層(II-b)とを有する領域以外の領域を構成する材料は、酸素透過層(I-b)を構成する材料と同じであることが好ましい。
培養容器(β)の底面部材の、酸素透過層(I-b)とガスバリア層(II-b)とを有する領域の全光線透過率は、例えば、酸素透過層(I-b)とガスバリア層(II-b)の厚さ、又は酸素透過層(I-b)とガスバリア層(II-b)を構成する材料等を調整することにより、調整することができる。
前記接着層を構成する接着材料は、所望の接着性を有する接着層を形成可能なものであれば特に制限されないが、細胞培養、医療用途等で用いられる器具の接着層の形成に一般的に用いられるものを用いることができる。
また、前記接着材料は、例えば、従来から知られたシーラント樹脂を使用できる。前記シーラント樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、プロピレンの共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体、ポリプロピレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体及びそれらの金属架橋物であるアイオノマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができ、なかでも低温シール性の観点からポリオレフィン系樹脂が好ましく、安価であることからポリエチレンが特に好ましい。
前記接着材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記接着層の厚さは、0.1μm~200μmの範囲内とすることができ、好ましくは5μm~100μm、より好ましくは10μm~60μm、特に好ましくは15μm~40μmの範囲内である。この範囲内であると、接着層を加工性やヒートシール性に優れたものとすることができる。
培養容器(α)又は培養容器(β)の製造方法は、特に制限されず、製造に用いる機器も制限されない。
培養容器(α)の全ての部材が酸素透過層(I-a)を構成する材料から形成される場合には、例えば、酸素透過層(I-a)を構成する材料を含むフィルム又はシートを形成し、必要に応じてそのフィルム又はシートを成形して所望の形状とした後、ガスバリア層(II-a)を積層して、培養容器(α)を作製することができる。また、培養容器(α)は、酸素透過層(I-a)を構成する材料を、押出成形、溶液キャスト成形、射出成形、ブロー成形等の方法により、直接成形した後、ガスバリア層(II-a)を積層することによっても得られる。
培養容器(β)の製造方法は、側壁部材に、底面部材を貼付する工程を含んでもよい。例えば、培養容器(β)は、側壁部材に、酸素透過層(I-b)を構成する材料を含むフィルム又はシートを貼付することで底面部材と側壁部材とを接合した後、該フィルム又はシートの下に、ガスバリア層(II-b)を構成する材料を含むフィルム又はシートをさらに貼付することで製造することができる。また、培養容器(β)は、酸素透過層(I-b)を構成する材料を含むフィルム又はシートの下に、予め、ガスバリア層(II-b)を構成する材料を含むフィルム又はシートを貼付しておき、該貼付された2つのフィルム又はシートを側壁部材に貼付することで底面部材と側壁部材とを接合して製造することができる。
培養中とは、細胞等を培養する期間中の任意のタイミングとの意味である。
着脱可能とは、培養容器の使用者の通常の力で、取り付け及び取外しができるとの意味である。
ガスバリア層(II-b)の領域の一部のみを酸素透過層(I-b)から取り外しできる態様としては、例えば、培養容器が少なくとも1つのウェルを有するプレートである場合、各ウェルに対応する格子状の切れ目を予めガスバリア層(II-b)に入れておき、細胞に十分な酸素を供給したいウェルに対応するガスバリア層(II-b)のみを取り外すことが挙げられる。また、培養容器が少なくとも1つのウェルを有するプレートである場合、ガスバリア層(II-b)の領域の一部(例えば、1/4、1/3、1/2)、すなわち、プレートが有するウェルのうちの一部(例えば、1/4、1/3、1/2)の数のウェルに対応する領域だけを取り外して、該一部の数のウェルにおいて酸素透過層(I-b)を露出させる態様、ガスバリア層(II-b)の各ウェルに対応する領域の一部(例えば、1/4、1/3、1/2)だけを取り外して、該各ウェルの酸素透過層(I-b)の領域の一部(例えば、1/4、1/3、1/2)を露出させる態様も挙げられる。
[剥離強度]
ガスバリア層(II-b)の酸素透過層(I-b)に対する剥離強度は、0.01~0.20N/25mmであることが好ましく、より好ましくは0.02~0.15N/25mmである。剥離強度が上記下限値以上であると、意図しない剥離、例えば、ガスバリア層(II-b)が自重で酸素透過層(I-b)から剥離してしまうことを防ぐことができる。一方、剥離強度が上記上限値以下であると、剥離時の衝撃による細胞等への損傷、例えば、剥離音による振動又は培養容器を持つ手の振動により生じる細胞等への損傷を防ぐことができる。
ガスバリア層(II-b)から作製した、幅25mmの試験片の剥離強度を測定する面を下向きにして、酸素透過層(I-b)の上面に貼付し、2kgローラーを1往復させる。これを23℃、RH50%の環境下に30分間保持した後、剥離試験機を用い、JIS Z 0237に準拠して、23℃、RH50%の環境下、剥離角度180°、引張速度10mm/分の条件にて、剥離強度[N/25mm]を測定する。剥離試験機としては、例えば、株式会社東洋精機製作所製、ストログラフE-Sを用いることができる。試験を3回行い、その平均値を算出する。
本発明の一態様である、細胞、組織、又は器官の培養方法は、
培養容器(α)を用いて、細胞、組織、又は器官を培養する工程(A-a)、
前記ガスバリア層(II-a)を前記酸素透過層(I-a)から取り外す工程(B-a)、及び
前記工程(B-a)で得られた培養容器を用いて、細胞、組織、又は器官をさらに培養する工程(C-a)を含む。
培養容器(β)を用いて、細胞、組織、又は器官を培養する工程(A-b)、
前記ガスバリア層(II-b)を前記酸素透過層(I-b)から取り外す工程(B-b)、及び
前記工程(B-b)で得られた培養容器を用いて、細胞、組織、又は器官をさらに培養する工程(C-b)を含む。
培養容器(α)又は培養容器(β)は、前記酸素透過層(I)の水接触角が、30~120°であることが好ましい。
培養容器(α)又は培養容器(β)は、前記酸素透過層(I)が、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)を含むことが好ましい。
培養容器(α)又は培養容器(β)は、培養面、好ましくは培養面の培地及び/又は細胞等が接触する側に、天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料がコーティングされていることが好ましい。
培養容器(α)又は培養容器(β)は、前記ガスバリア層(II)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことが好ましい。
培養に用いる培地は、細胞等が増殖できる培地であれば特に制限されず、使用細胞種に合わせて適宜選択すればよい。
培養に用いる培地の量及び培地交換の頻度は特に制限されない。培養温度は特に制限されないが、通常は25~40℃程度で行う。
工程(A-a)又は工程(A-b)では、酸素供給の少ない状態で初期の培養を行うので、接着性がより良好になりやすい。
培養容器(α)は、ガスバリア層(II)を有するので、容器内部への酸素透過が抑制されたものであるが、ガスバリア層(II)を酸素透過層(I)から取り外すことにより酸素透過層が露出されるので、培養容器(α)又は培養容器(β)は、容器内部へ充分に酸素が透過するものとなる。
細胞等を培地中で培養する方法は特に制限されず、工程(A-a)又は工程(A-b)に準じて行うことができる。培養に用いる培地、培養に用いる培地の量及び培地交換の頻度は、工程(A-a)又は工程(A-b)と同じであってもよいし、異なってもよい。
工程(C-a)又は工程(C-b)では、充分に酸素供給される状態で細胞等を培養するので、細胞等の機能が正常に維持されやすい。
[材料]
TPXフィルム:4-メチル-1-ペンテン重合体フィルム(厚さ50μm、三井化学東セロ株式会社製、商品名:オピュランX-88B)
PETフィルム1:PETと粘着剤の混合物からなる市販のPETフィルム(厚さ80μm、ビーエム機器株式会社製、商品名:qPCRプレートシール(ABI、圧着タイプ)
PETフィルム2:基材層(PET層、厚さ75μm)、及び、粘着剤層(厚さ10μm)からなる市販のPETフィルム(日榮新化株式会社、商品名:PET75-H270(10))
PPフィルム:基材層(PET層、厚さ60μm)、及び粘着剤層(厚さ10μm)からなる市販のPPフィルム(日榮新化株式会社、商品名:PP60-H270(10))
PDMS容器:底面が、厚さ350μmのPDMS(ジメチルポリシロキサン)フィルムで構成される市販の96ウェル培養容器(製品名G-plate、VECELL社製型番V96WGPB-10)
PS容器:PS(ポリスチレン)製の底面の厚さが1000μmである市販の24ウェルPS培養容器(コーニング社製)
上述のTPXフィルム、PETフィルム1~2、PPフィルム、PDMS容器及びPS容器を測定サンプルとして、以下で詳述する方法により、酸素透過度、及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
測定サンプルについて、株式会社東洋精機製作所製差圧式ガス透過率測定装置MT-C3を用いて温度23℃、湿度0%の環境下にて酸素透過係数を測定した。測定部径は70mm(透過面積は38.46cm2)とした。酸素透過係数が大きいことが予想されたため、予めサンプルにアルミニウムマスクを施し、実透過面積を5.0cm2とした。
測定した酸素透過係数[cm3×mm/(m2×24h×atm)]の値をフィルム(又は培養容器底面)の厚さ(μm)で除して、酸素透過度[cm3/(m2×24h×atm)]を算出した。
測定サンプルについて、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業社製)を用い、JIS K 7361-1に準拠して全光線透過率を測定した。
水接触角の測定は、日本工業規格JIS-R3257(基板ガラス表面のぬれ性試験方法)に準じて行った。25±5℃、50±10%の恒温恒湿条件下で水滴の形状を球形とみなせる4μL以下の容量の水滴を、測定サンプルの表面に滴下し、静滴法により、測定サンプル表面に水滴が接触した直後から1分以内の測定サンプルと水滴の接触界面の角度を測定した。
0.1Mの塩酸溶液(容量分析用、富士フイルム和光純薬株式会社製)を注射用水(日本薬局方、大塚製薬株式会社製)で100倍希釈し、0.001Mの塩酸溶液を調製してろ過滅菌をした。3mg/mLのコラーゲン溶液(セルマトリックスTypeI-P、ブタ腱由来、新田ゼラチン株式会社製)を0.001Mの塩酸溶液で6倍希釈し、0.5mg/mLのコラーゲン溶液を調製した。
ラット初代凍結肝細胞(Hepatocyte)を含む細胞懸濁液を入れた遠沈管(50mL)に培地(A)を加えた。培地(A)は、ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum、FBS、富士フイルム和光純薬株式会社製)を1.5mL、注射用水(扶桑薬品工業株式会社製)で3.0g/mLに希釈したL-プロリン(培養用、富士フイルム和光純薬株式会社製)溶液を0.15mL、エタノール(分子生物学用、富士フイルム和光純薬株式会社製)で1×10-3Mに希釈したデキサメタゾン(生化学用、富士フイルム和光純薬株式会社製)溶液を1.5μL、エタノールで36mMに希釈したハイドロコルチゾン(培養用、富士フイルム和光純薬株式会社製)溶液を21μL、注射用水で1.0mg/mLに希釈したBSA溶液を用いて、さらに20μg/mLに希釈した上皮成長因子(Epidermal growth factor、EGF、細胞生物学用、富士フイルム和光純薬株式会社製)溶液を15μL、インスリン溶液(10mg/mL in HEPESS、シグマアルドリッチジャパン合同会社製)を8.7μL、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(5000units/mLペニシリン、5000μg/mLストレプトマイシン含有、培養用、富士フイルム和光純薬株式会社製)を0.3mL、D-MEM培地(4500mg/mL D-グルコース、584mg/mL L-グルタミン、15mg/mLフェノールレッド、110mg/mLピルビン酸ナトリウム、3700mg/mL炭酸水素ナトリウム含有、培養用、富士フイルム和光純薬株式会社製)を13mL加えて調製した。細胞密度の調整は、ラット初代凍結肝細胞を含む細胞懸濁液の細胞数を調整する方法で実施し、1.0×105cells/cm2の細胞密度で培養した。
細胞播種の24時間後、培養容器の培地を除去した後、新たに培地(A)を0.5mL添加し、蛍光式の酸素センサー(FireSting酸素モニター、株式会社ビー エー エス社製)を用いて培地中の酸素分圧(hPa)を測定した。測定は、加湿インキュベーター中で実施し、センサーをジャッキで培養容器底面から80μmの高さに設置し、1時間測定した。測定開始から1時間後の培地中の酸素分圧(hPa)を、1013hPa(大気1気圧)で除して100をかけた値(%)を算出し、培地中の酸素濃度とした。代表的な3ウェルで測定し、平均値を算出した。
細胞播種24時間後、又は48時間後の培養容器中の培地を除去した後、培地で希釈したLuciferin-CEEを添加して、さらに3時間培養した。培養後の細胞をLuciferin-CEEを含む培地を同伴して96ウェルプレートに移した後、Luciferin Detection RegentとReconstitution Bufferの混合液を添加して、室温で遮光して1時間反応させた。1時間後、ルミノメーターで発光量(Relative Light Unit、RLU)を測定した。
蛋白量は、培地で希釈したLuciferin-CEE溶液を除去後、PBS(-)を培地200μL添加した後、セルスクレーパーを用いてエッペンチューブに細胞を回収し、遠心した(4℃、22000×g、10分間)。その後、上澄みを除去し、0.1M水酸化ナトリウム溶液を100μL添加した後、PierceTMBCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher Scientific社製)を使用して蛋白量を測定した。波長450nmの吸光度をプレートリーダー(SPECTRA max PLUS384、Molecular Devices社製)で測定した。
ルミノメーターで得られたLuciferin-CEE溶液の代謝活性量(pmol/L)をP450-GloTM CYP1A1 Assay kit(Promega社製)を使用して測定し、吸光度から得られたタンパク量及びLuciferin-CEE溶液の反応時間で除することにより、代謝活性値(pmol/min/mg protein)を算出した。代表的な3ウェルで測定し、平均値を算出した。
代謝活性維持率は以下の式により算出した。
代謝活性維持率(%)=播種48時間後の代謝活性値/播種24時間後の代謝活性値×100
ヒト初代凍結肝細胞(Hepatocyte)を含む細胞懸濁液を入れた遠沈管(50mL)に培地(B)を加えた。培地(B)は、ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum、FBS、富士フイルム和光純薬株式会社製)を2.5mL、Antibiotic-Antimycotic(10000units/mLペニシリン、10000μg/mLストレプトマイシン、25μg/mLアンホテリシンB含有、GibcoTM)を2.5mL、エタノール(分子生物学用、富士フイルム和光純薬株式会社製)で1×10-3Mに希釈したデキサメタゾン(生化学用、富士フイルム和光純薬株式会社製)溶液を0.05mL、インスリン溶液(10mg/mL in HEPESS、シグマアルドリッチジャパン合同会社製)を0.02mL、GlutaMAX溶液(GibcoTM)を0.5mL、HEPES buffer solution(生化学用緩衝剤、同仁化学株式会社製)を0.75mL、注射用水で100mMに調製したL-アスコルビン酸2-リン酸エステル三ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を0.05mL、注射用水で1.0mg/mLに希釈したBSA溶液を用いて、さらに20μg/mLに希釈した上皮成長因子(Epidermal growth factor、EGF、細胞生物学用、富士フイルム和光純薬株式会社製)溶液を0.5mL、William’s E Medium(2000mg/mL D-グルコース、10mg/mLフェノールレッド、25mg/mLピルビン酸ナトリウム、2200mg/mL炭酸水素ナトリウム含有、培養用、Giboco)を43.13mL加えて調製した。細胞密度の調整は、ラット初代凍結肝細胞を含む細胞懸濁液の細胞数を調整する方法と同様に実施し、1.0×105cells/cm2の細胞密度で培養した。
培養容器にヒト初代凍結肝細胞の細胞懸濁液を0.5mL添加し、細胞密度が1×105cells/cm2となるように播種し、37℃、5%CO2下でインキュベートし、24時間培養後の状態を顕微鏡下で観察し、以下の基準で評価した。また、顕微鏡下で写真撮影を行った。
AA:肝細胞が培養面に接着し、伸展している状態が観察される。
BB:肝細胞が培養面に接着しているが丸くなり伸展していないか、もしくは一部に剥離した状態が観察される。
培養容器底面を構成するフィルムに接着させたフィルム(PETフィルム1、2、PPフィルムのいずれか)をフィルム縁部から剥離した。培養容器底面を構成するフィルム及び剥離したフィルム(PETフィルム1、2、PPフィルムのいずれか)の破れの有無等を確認し、以下基準で評価した。
AA:培養容器底面を構成するフィルム及び剥離したフィルム(PETフィルム1、2、PPフィルムのいずれか)の破れがなく、培養容器底面を構成するフィルムの撓みも確認されず、剥離性が良好であった。
BB:培養容器底面を構成するフィルム及び/又は剥離したフィルム(PETフィルム1、2、PPフィルムのいずれか)の破れがあるか、培養容器底面を構成するフィルムが撓み、剥離性が不良であった。
25mm×150mmに切り取ったフィルム(PETフィルム1、2、PPフィルムのいずれか)の剥離紙を剥離して、剥離した面を、50mm×150mmに切り取ったTPXフィルム、又はPDMSフィルム上面に貼付し、2kgローラーを1往復させた。これを23℃、RH50%の環境下に30分間保持した後、剥離試験機(株式会社東洋精機製作所製、ストログラフE-S)を用い、JIS Z 0237に準拠して、23℃、RH50%の環境下、剥離角度180°、引張速度10mm/分の条件にて、剥離強度[N/25mm]を測定した。試験は3回行い、その平均値を算出した。
TPXフィルムに対し、常圧プラズマ表面処理装置(積水化学工業製)を用いて、チャンバー内を窒素の気流で満たし、プラズマ処理した(処理速度2m/min、出力4.5kW、2往復)。
前記プラズマ処理したTPXフィルムを8cm×12cmサイズにカットし、ウェル底無しPS製24ウェル容器枠に、医療用粘着剤(スリーエム製)を介して密着させ、培養プレートの底面が、TPXフィルムで構成される24ウェル培養プレートを作製した。
上記培養プレート底面のTPXフィルムに対して、容器枠とは逆側に、PETフィルム1を圧着ゴムローラー(ローラー幅:45mm、ローラー質量2kg)を2往復させ、一定圧で圧着して、培養プレートの底面が、TPXフィルムとPETフィルム1との積層体で構成される24ウェル培養プレートを作製した。すなわち、PETフィルム1の剥離紙を剥離した面を、培養プレート底面を構成するTPXフィルムの下面に接着した。
その後、上記24ウェル培養プレートを耐ガンマ線袋に梱包して10kGyのガンマ線を照射し滅菌した。
細胞播種から24時間後、インキュベーターから培養容器A~Dを取り出した。
培養容器(1)A、Bは、底面のPETフィルムを剥離した後、インキュベーターに戻して、さらに24時間培養を行った。
培養容器(1)Cでは、培地中の溶存酸素濃度を測定した。
培養容器(1)Dでは、肝細胞の正常な機能の指標として、代謝活性値を測定した。
細胞播種から48時間後、PETフィルム1を剥離した培養容器(1)Aをインキュベーターから取り出し、溶存酸素濃度の測定を行った。
細胞播種から48時間後、PETフィルム1を剥離した培養容器(1)Bをインキュベーターから取り出し、代謝活性値の測定を行った。
結果を表1に示す。
播種24時間後に培養容器(1)Eをインキュベーターから取り出し、底面のPETフィルム1を剥離して、剥離性の評価及び細胞接着性の評価を行った。結果を表1及び図2に示す。
培養容器(1)の底面のPETフィルム1をPPフィルムに変更したこと、及び、TPXフィルムへの表面処理をテーブル型コロナ処理装置(春日電機製)を用いたコロナ処理(処理速度3m/min、出力0.5kW、2往復)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてラット凍結肝細胞およびヒト凍結肝細胞の培養及び評価を実施したものを実施例2とした。結果を表1に示す。
培養容器(1)の底面のPETフィルム1をPETフィルム2に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてラット凍結肝細胞およびヒト凍結肝細胞の培養及び評価を実施したものを実施例3とした。結果を表1に示す。
PDMS容器の底面を構成するPDMSフィルムに対して、PETフィルム2を圧着ゴムローラー(ローラー幅:45mm、ローラー質量2kg)を2往復させ、一定圧で圧着して、培養プレートの底面が、PDMSフィルムとPETフィルム2との積層体で構成される96ウェル培養プレートを作製し、各ウェルに、0.5mg/mLのコラーゲン溶液を0.1mL添加した後、余分なコラーゲン溶液を除去した。室温で30~60分間静置した後、ダルベッコPBS(-)で洗浄して、一晩、室温で乾燥させた。実施例1と同様にしてラット凍結肝細胞およびヒト凍結肝細胞の培養及び評価を実施したものを実施例4とした。結果を表1に示す。
培養容器(1)の底面のPETフィルム1を剥離しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてラット凍結肝細胞の培養及び評価を実施したものを参考例1とした。結果を表2に示す。ヒト凍結肝細胞の培養及び評価は行わなかった。
比較例1では、培養プレートの底面がTPXフィルムとPETフィルム1との積層体で構成される24ウェル培養プレートの代わりに、市販の24ウェルPS培養容器(PS)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてラット凍結肝細胞の培養及び評価を実施した。結果を表2に示す。ヒト凍結肝細胞の培養及び評価は行わなかった。
比較例2では、培養プレートの底面が、TPXフィルムで構成される24ウェル培養プレートを用い、PETフィルム1を貼付しなかったこと以外は実施例1と同様にしてラット凍結肝細胞及びヒト凍結肝細胞の培養及び評価を実施した。結果を表2及び図3に示す。
実施例1~4はいずれも、播種24時間後における細胞接着性が良好であった。また、代謝活性維持率も良好で、播種24時間後から播種48時間後にかけて起こる、細胞の代謝活性の低下を抑制できた。実施例1~4の培養容器は、肝細胞を良好に接着させ、肝細胞の正常な機能を維持できるものであることが明らかになった。
この出願は、2021年11月9日に日本国特許庁に出願された特願2021-182633号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
Claims (12)
- 細胞、組織、又は器官を培養する培養容器であって、
前記培養容器が、底面部材と、側壁部材とを有し、
前記底面部材と前記側壁部材とが接合することで少なくとも一つの培養空間が形成され、
前記底面部材の少なくとも一部が、少なくとも酸素透過層(I-b)と、ガスバリア層(II-b)とを有し、
前記ガスバリア層(II-b)が、前記酸素透過層(I-b)の下に、前記酸素透過層(I-b)から着脱可能に重ねられ、
前記ガスバリア層(II-b)が、下記要件(5)を満たし、
前記酸素透過層(I-b)が、下記要件(6)を満たす、
培養容器であって、
前記底面部材の領域の80%以上が前記酸素透過層(I-b)と前記ガスバリア層(II-b)とを有する領域であり、
前記ガスバリア層(II-b)の領域の少なくとも一部が前記酸素透過層(I-b)から培養中に取り外されるものであり、
下記方法で測定される、前記ガスバリア層(II-b)の前記酸素透過層(I-b)に対する剥離強度が、0.01~0.20N/25mmである、
培養容器。
(5)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(II-b)が3000cm3/(m2×24h×atm)以下である
(6)温度23℃、湿度0%の時の酸素透過度P(I-b)が前記P(II-b)の6.0倍以上である
[幅25mmのガスバリア層(II-b)を酸素透過層(I-b)に貼付した後、剥離試験機を用いて、ガスバリア層(II-b)を酸素透過層(I-b)から剥離角度180°で10mm/分の速度で剥離する試験を行う。] - 前記ガスバリア層(II-b)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、かつ、下記要件(7)または(8)を満たす、請求項1に記載の培養容器。
(7)ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種と、粘着剤との混合物を含む
(8)ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む層と、粘着剤を含む層と、を有する - 前記酸素透過層(I-b)が、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)を含む、請求項1又は2に記載の培養容器。
- 前記4-メチル-1-ペンテン重合体(X)が、4-メチル-1-ペンテン単独重合体(x1)並びに、4-メチル-1-ペンテンと、エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体(x2)から選択される少なくとも1種の重合体である、請求項3に記載の培養容器。
- 前記P(I-b)が、20000~60000cm3/(m2×24h×atm)である、請求項1又は2に記載の培養容器。
- 前記底面部材の、前記酸素透過層(I-b)と前記ガスバリア層(II-b)とを有する領域の、JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である、請求項1又は2に記載の培養容器。
- 前記酸素透過層(I-b)の、JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である、請求項1又は2に記載の培養容器。
- 前記ガスバリア層(II-b)の、JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が70%以上である、請求項1又は2に記載の培養容器。
- 前記酸素透過層(I-b)の水接触角が、30~120°である、請求項1または2に記載の培養容器。
- 前記底面部材の培養面に、天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料がコーティングされた、請求項1または2に記載の培養容器。
- 細胞、組織、又は器官の培養方法であって、
請求項1または2に記載の培養容器を用いて、細胞、組織、又は器官を培養する工程(A-b)、
培養中に前記ガスバリア層(II-b)を前記酸素透過層(I-b)から取り外す工程(B-b)、及び
前記工程(B-b)で得られた培養容器を用いて、細胞、組織、又は器官をさらに培養する工程(C-b)、
を含む、培養方法。 - 請求項1または2に記載の培養容器の製造方法であって、
前記方法が、
前記側壁部材に、前記底面部材を貼付する工程を含む、培養容器の製造方法。
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