JP2022157708A - 多能性幹細胞の分化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多能性幹細胞を効率よく分化させることができる多能性幹細胞の分化方法を提供する。
【解決手段】培養容器の培養面に多能性幹細胞を播種する工程(A)と、多能性幹細胞の分化を誘導する工程(B)とを含む、多能性幹細胞の分化方法であって、前記培養容器の培養面の少なくとも一部が、下記要件(1)及び(2)を満たすポリオレフィン系樹脂を含む基材から形成されている、多能性幹細胞の分化方法。
(1):JIS K 7361-1に準拠して測定した厚さ50μmの上記ポリオレフィン系樹脂のシートの全光線透過率が90%以上である
(2):温度23℃、湿度0%の時の酸素透過係数が100~3000cm3×mm/(m2×24h×atm)である
【選択図】なし

Description

本発明は、多能性幹細胞の分化方法に関する。
多能性幹細胞は、培養容器に播種した後、分化誘導因子や化合物を含む培地を添加して培養することで、目的とする様々な細胞に分化させることができる。この培養の過程において新薬候補物質等の薬剤を添加すると薬剤の細胞及び臓器に対する毒性を評価することができるため、多能性幹細胞をin vitroで培養し、分化させる方法の重要性は年々高まっている。また、多能性幹細胞から分化誘導された細胞は、in vivoの分化細胞及び臓器により近い特性を有することが望まれる。
生体の器官及び組織は、それらを構成する分化した細胞同士が三次元的にネットワークを形成することで、機能を発現している。そのため、分化した細胞に三次元的にネットワークを形成させ、器官及び組織が有する機能を発現させることを目的として、細胞を分化させながら三次元培養して得られるスフェロイドが作製され、注目を集めている。スフェロイドは、細胞の機能評価及び薬剤のスクリーニング等において、平面的に培養された細胞に比べて生体に近い結果が得られることが報告されており、創薬においてin vitro試験とin vivo試験の間の溝を埋める重要なツールとして期待されている。したがって、多能性幹細胞から分化誘導された細胞がスフェロイドを形成していると、器官及び組織が有する機能を発現することができる。
多能性幹細胞を心筋細胞に分化誘導させる方法としては、例えば非特許文献1に記載の方法が知られる。しかしながら、この方法で分化誘導された細胞は、心筋細胞に特徴的な細胞内構造である、サルコメア構造を構成するタンパク質の発現が低いとされている。
また、特許文献1には、少なくとも培養面が脂環構造含有重合体で構成される培養容器に多能性幹細胞を接着させて心筋細胞へと分化誘導させる、多能性幹細胞の分化誘導方法が記載されている。
特開2020-156348号公報
諫田泰成、他2名、「ヒトiPS細胞から成熟した心筋細胞の開発と安全性評価への応用」、日薬理誌、2016、Vol.147、p.334-338
特許文献1の方法では、多能性幹細胞は培養面に接着しているので、細胞を培養面から剥がすことは困難であり、スフェロイドを形成させることはできない。また、ポリスチレン製の一般的な細胞容器で多能性幹細胞を接着させて心筋細胞へと分化誘導させようとしても、細胞への酸素供給が不足し心筋機能が低下してしまう。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、多能性幹細胞を効率よく分化させることができる多能性幹細胞の分化方法を提供することを課題とする。また、分化細胞がスフェロイドを形成しやすい、多能性幹細胞の分化方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する培養方法により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば以下の〔1〕~〔10〕である。
〔1〕 培養容器の培養面に多能性幹細胞を播種する工程(A)と、多能性幹細胞の分化を誘導する工程(B)とを含む、多能性幹細胞の分化方法であって、前記培養容器の培養面の少なくとも一部が、下記要件(1)及び(2)を満たすポリオレフィン系樹脂を含む基材から形成されている、多能性幹細胞の分化方法。
(1):JIS K 7361-1に準拠して測定した厚さ50μmの上記ポリオレフィン系樹脂のシートの全光線透過率が90%以上である
(2):温度23℃、湿度0%の時の酸素透過係数が100~3000cm3×mm/(m2×24h×atm)である
〔2〕 前記工程(B)が、多能性幹細胞の心筋細胞への分化を誘導する工程である、〔1〕に記載の多能性幹細胞の分化方法。
〔3〕 前記ポリオレフィン系樹脂が、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)又は下記一般式(1)で表される繰返し構造単位を含有するフッ素含有環状オレフィン重合体(Y)である、〔1〕又は〔2〕に記載の多能性幹細胞の分化方法。
Figure 2022157708000001
(式(1)中、R1~R4のうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキルである。R1~R4がフッ素を含有しない基である場合、R1~R4は、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルコキシ、又は炭素数2~10のアルコキシアルキルから選ばれる。R1~R4は互いに同一であっても異なっていてもよい。R1~R4は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
〔4〕 前記4-メチル-1-ペンテン重合体(X)が、4-メチル-1-ペンテンとエチレン及び炭素数3~20のα―オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種の共重合体(x1)である、〔3〕に記載の多能性幹細胞の分化方法。
〔5〕 前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が、1.3~5.0である、〔3〕に記載の多能性幹細胞の分化方法。
〔6〕 前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の多能性幹細胞の分化方法。
〔7〕 前記工程(B)が、プロテインフリー心筋分化誘導(PFCD)法によるものである、〔2〕~〔6〕のいずれか1項に記載の多能性幹細胞の分化方法。
〔8〕 心筋純度を増加させる、〔2〕~〔7〕のいずれかに記載の多能性幹細胞の分化方法。
〔9〕 心筋細胞のMYL2(Myosin regulatory light chain 2)遺伝子の発現を増加させる、〔2〕~〔8〕のいずれかに記載の多能性幹細胞の分化方法。
〔10〕 心筋細胞の拍動数を増加させる、〔2〕~〔9〕のいずれか1項に記載の多能性幹細胞の分化方法。
本発明によれば、多能性幹細胞を効率よく分化させることができる多能性幹細胞の分化方法を提供することができる。また、本発明によれば、分化細胞がスフェロイドを形成しやすい、多能性幹細胞の分化方法を提供することができる。
図1は、iPS細胞から心筋細胞を分化誘導する実験のスケジュールを示す図である。 図2は、心筋分化誘導19日目の心筋純度を示すグラフである。 図3は、心筋分化誘導19日目の拍動数を示すグラフである。 図4は、心筋分化誘導12日目のMYL2の発現量を比較したグラフである。 図5は、心筋分化誘導12日目のMYL7の発現量を比較したグラフである。 図6は、心筋分化誘導19日目のMYL2の発現量を比較したグラフである。 図7は、心筋分化誘導19日目のMYL7の発現量を比較したグラフである。 図8は、心筋分化誘導12日目の細胞の形態を観察した写真である。 図9は、心筋分化誘導19日目の細胞の形態を観察した写真である。
次に本発明の多能性幹細胞の分化方法について具体的に説明する。
本発明は、培養容器の培養面に多能性幹細胞を播種する工程(A)と、多能性幹細胞の分化を誘導する工程(B)とを含む、多能性幹細胞の分化方法であって、前記培養容器の培養面の少なくとも一部が、下記要件(1)及び(2)を満たすポリオレフィン系樹脂を含む基材から形成されている、多能性幹細胞の分化方法である。
要件(1):JIS K 7361-1に準拠して測定した厚さ50μmの上記ポリオレフィン系樹脂のシートの全光線透過率が90%以上である
要件(2):温度23℃、湿度0%の時の酸素透過係数が100~3000cm3×mm/(m2×24h×atm)である
なお、上記要件(1)及び(2)を満たすポリオレフィン系樹脂を、ポリオレフィン系樹脂(α)とも称する。また、培養面の少なくとも一部がポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成されている培養容器を、培養容器(β)とも称する。
なお、数値範囲に関する「A~B」との記載は、特に断りがなければ、A以上B以下であることを表す。例えば、「1~5%」との記載は、1%以上5%以下を意味する。
また、本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
[培養容器(β)]
本発明における培養容器は、前記培養容器の培養面の少なくとも一部が、ポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成されている。
本発明において、培養容器とは、細胞の培養に用いられる容器全てを意味する。前記培養容器としては、公知の各種の培養容器を用いることができ、形状や大きさは特に制限されない。前記培養容器としては、例えば、ディッシュ、フラスコ、プレート、ボトル、バッグ、チューブ等が挙げられる。前記培養容器は通常、インキュベーター、大量培養装置、又は灌流培養装置などの装置内で用いられる。
ここで培養面とは、細胞を培養する際に、培地及び/又は細胞が接触している面、若しくは培地及び/又は細胞が接触する予定の面を意味する。
前記培養容器において、「前記培養容器の培養面の少なくとも一部が、ポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成されている」とは、培養面の少なくとも一部の範囲がポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成されていることを意味し、培養面の全ての範囲がポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成されていてもよい。
培養容器(β)は、培地を保持あるいは貯留するため、底面が培養面を含む培養容器であることが好ましい。培養容器(β)が、ディッシュ、フラスコ又はプレートの場合、底面が培養面を含むので、これらの底面、側面、上面のうち、少なくとも、底面の一部又は全部は、ポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成されている。少なくとも、底面の一部又は全部がポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成されていると、前記ポリオレフィン系樹脂(α)を介して培地中に酸素を効率的に供給でき、培地中にある細胞を効率的に増殖及び分化させやすくなる。また、細胞の機能を保持したまま、細胞を高密度で培養しやすくなる。
培養容器(β)は、培養面全体がポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成されていることが好ましい。すなわち、培養容器(β)が、ディッシュ、フラスコ又はプレートの場合、底面の内側が培養面であるので、これらの底面、側面、上面のうち、底面の全部がポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成されていることが好ましい。
前記ポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材の厚さは特に限定されないが、好ましくは20μm~400μm、より好ましくは20μm~300μm、さらに好ましくは20μm~200μmである。前記ポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材の厚さは、培養容器の形態に応じて適宜選ばれるが、前記範囲に調整することで細胞が増殖及び分化する上で必要な適度な培地中の酸素濃度が得られやすく、また、培養容器としての強度も充分に得やすい。
培養容器(β)は、少なくとも1つのウェルを有する培養容器であることが好ましく、少なくとも1つのウェルを有するプレートであることがさらに好ましく、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェル、1536ウェル等のウェルを有するプレートであることがさらに好ましい。一般にウェルのようなくぼみ形状を底面に有する培養容器は、底面の複雑な形状を安定させるために底面を厚くする必要があり、細胞への酸素供給が充分に行われ難い。底面がポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成されていると、1ウェル、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、384ウェル、1536ウェル等のウェルを有するプレートであっても、形状が安定しており、細胞への酸素供給も充分である。
培養容器(β)の底面の形状は特に制限されず、平底、丸底(U底)、平底(F底)、円錐底(V底)、平底+カーブエッジ等が挙げられる。丸底(U底)、平底(F底)、円錐底(V底)、平底+カーブエッジ等に加工する場合には、一般の射出成形やプレス成形で一度に加工してもよいし、フィルム又はシートを作成しておき、真空成形や圧空成形などで2次加工を行い作成することも可能である。底面の形状は培養の目的に応じて選択されるが、細胞を2次元培養する際には、平底であることが通常は望ましく、3次元培養する際には丸底(U底)又は円錐底(V底)であることが通常は望ましい。
培養容器(β)の培養面以外の部分は、前記ポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材以外の材料で構成してもよい。前記材料は特に制限されず、公知の材料を用いることができる。かかる材料としては、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、熱硬化性樹脂、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ガラス等が挙げられる。
培養容器(β)は、少なくともその培養面を天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料でコーティングしてもよい。コーティングは公知の方法により行うことができる。前記培養容器(β)は、その培養面をコーティングしない方が、細胞が接着しにくいため、スフェロイドを形成させやすい。したがって、培養容器(β)は、少なくともその培養面がコーティングされていないことが好ましい。
コーティングされた培養容器(β)は、細胞の接着性、増殖性がより優れる。これは、培養面にコーティングされている天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料が、細胞の足場となるためと考えられる。したがって、付着性の細胞を培養する際には、培養容器(β)に天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料をコーティングしてから用いることが好ましい一形態である。
前記天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料は特に制限されないが、天然高分子材料として、コラーゲン、ゼラチン、アルギン酸、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等のグリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、フィブリノーゲン、オステオポンチン、テネイシン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン、アガロース、エラスチン、ケラチン、キトサン、フィブリン、フィブロイン、糖類、合成高分子材料として、ポリグルコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、合成ペプチド類、合成タンパク質類、ポリヒドロキシエチルメタクリラート、ポリエチレンイミン、無機材料として、β-リン酸三カルシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
また、前記天然高分子材料、合成高分子材料、又は無機材料としては、従来の細胞外マトリックス成分等のハイドロゲルをガラス化した後に再水和して得られるビトリゲルなども挙げられる。例えば、細胞外マトリックス成分の一つであるコラーゲンから作製された高密度のコラーゲン繊維網で構成されるコラーゲンビトリゲルも挙げられる。
細胞の接着性や細胞の増殖性を向上させる、細胞の機能をより長期に維持させる、などの観点から、コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ポリリジン等のタンパク質、又はペプチドによるコーティングが好ましく、コラーゲン又はポリリジンによるコーティング処理がより好ましい。これらのコーティングは、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
培養容器(β)は、少なくともその培養面の表面を加工してもよい。表面の加工としては、例えば、凹凸構造の形成加工、親水化処理、疎水化処理等の表面改質処理が挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂(α)は、その表面を加工しなくても、細胞が接着しにくいため、スフェロイドを形成させやすい。したがって、培養容器(β)は、少なくともその培養面の表面を加工されていないことが好ましく、凹凸構造の形成加工を施されていないことがより好ましい。
表面改質処理に用いる方法は特に限定されないが、例えばコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線処理等の親水化処理、エステル化、シリル化、フッ化等の疎水化処理、表面グラフト重合、化学蒸着、エッチング、又は、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホン基、チオール基、カルボキシル基等の特定の官能基付加、シランカップリング、チタンカップリング、ジルコニウムカップリング等の特定の官能基による処理、酸化剤等による表面粗化、ラビングやサンドブラスト等の物理的処理等が挙げられる。これらの表面改質処理は、単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。なお、表面改質処理を行う場合には、少なくとも培養面に行うことが好ましい。
培養容器(β)の培養面は、水接触角が80°~130°であることが好ましく、90°~120°であることがより好ましく、100°~120°であることがさらに好ましい。
培養容器(β)の培養面の水接触角を上記範囲に調整することで、例えば細胞が培養面に接着しにくくなり、スフェロイドを形成しやすくなる。
水接触角の測定方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができるが、好ましくは静滴法である。水接触角は、例えば、日本工業規格JIS-R3257(基板ガラス表面のぬれ性試験方法)に準じて、25±5℃、50±10%の恒温恒湿条件下で水滴の形状を球形とみなせる4μL以下の容量の水滴を、培養容器と同一の材料を用いて作成された測定サンプルの表面に滴下し、静滴法により、測定サンプル表面に水滴が接触した直後から1分以内の測定サンプルと水滴の接触界面の角度を計測する方法で測定することができる。
培養容器(β)は、コンタミネーション防止のために、消毒又は滅菌処理を施してもよい。消毒又は滅菌処理の方法としては、特に制限されず、流通蒸気法、煮沸法、間歇法、紫外線法等の物理的消毒法、オゾン等の気体、エタノール等の消毒薬を用いる化学的消毒法;高圧蒸気法、乾熱法等の加熱滅菌法;ガンマ線法、高周波法等の照射滅菌法;酸化エチレンガス法、過酸化水素ガスプラズマ法等のガス滅菌法等が挙げられる。中でも操作が簡便で、充分に滅菌が行えることから、エタノール消毒法、高圧蒸気滅菌法、ガンマ線滅菌法、又は酸化エチレンガス滅菌法が好ましい。これらの消毒又は滅菌処理は、1種単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
培養容器(β)の製造方法は、特に制限されず、製造に用いる機器も制限されない。培養容器の全部がポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成される場合には、例えば、ポリオレフィン系樹脂(α)を含むフィルム又はシートを形成し、必要に応じてそのフィルム又はシートを成形して所望の形状として培養容器を作製することができる。また、培養容器は、押出成形、溶液キャスト成形、射出成形、ブロー成形等の方法により、直接成形することによっても得られる。培養容器の一部がポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材から形成される場合には、例えば、ポリオレフィン系樹脂(α)を含むフィルム又はシートを形成し、該フィルム又はシートと、その他の基材とを、適宜接合することにより培養容器を得ることができる。接合する方法としては特に制限はなく、ポリオレフィン系樹脂(α)を含む基材と、その他の基材とを一体で形成してもよく、接着剤や粘着剤を介して密着させてもよい。
前記フィルム又はシートを形成する方法としては、具体的には、例えば、通常のインフレーション法、T-ダイ押出法などが採用される。製造は通常加温して行う。T-ダイ押出法を採用する場合、押出温度は100℃~400℃が好ましく、200℃~300℃が特に好ましい。また、ロール温度は45℃~75℃が好ましく、55℃~65℃が特に好ましい。
また、前記フィルム又はシートはポリオレフィン系樹脂(α)を溶剤に溶解し、樹脂や金属上に流し、レベリングしながらゆっくりと乾かしフィルム化(シート化)する溶液キャスト法で製造してもよい。用いられる溶剤は特に制限ないが、シクロヘキサン、ヘキサン、デカン、トルエンなどの炭化水素溶剤を用いてもよい。また、溶剤は、前記ポリオレフィン系樹脂(α)の溶解性や乾燥効率を考慮して2種類以上を混合してもよい。テーブルコート、スピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコート、バーコート、ロールコート、カーテンフローコートなどの方法でポリマー溶液を塗布し、乾燥、剥離することでフィルム又はシートに加工することができる。
[ポリオレフィン系樹脂(α)]
ポリオレフィン系樹脂(α)は、下記要件(1)及び(2)を満たすポリオレフィン系樹脂であれば、特に制限されない。
(1):JIS K 7361-1に準拠して測定した厚さ50μmの上記ポリオレフィン系樹脂のシートの全光線透過率が90%以上である
(2):温度23℃、湿度0%の時の酸素透過係数が100~3000cm3×mm/(m2×24h×atm)である
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体;高圧法低密度ポリエチレン;直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;プロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとの共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂;フッ素含有環状オレフィン重合体等が挙げられる。
[要件(1)]
要件(1)は、厚さ50μmのポリオレフィン系樹脂のシートを用い、JIS K 7361-1に準拠して測定した全光線透過率が90%以上であることを規定する。該全光線透過率は、具体的には以下の方法で測定できる。
ポリオレフィン系樹脂で構成される厚さ50μmの試験片を使用して、JISK7361-1に準拠して、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズ透過率計HM-150(D65光源)を用い、全透過光量を測定し、下記式にて全光線透過率を求める。
全光線透過率(%)=100×(全透過光量)/(入射光量)
前記全光線透過率は、好ましくは90.0~97.0%、より好ましくは92.0~95.0%である。全光線透過率が前記範囲にあるということは、ポリオレフィン系樹脂が透明性に優れるといえる。
ポリオレフィン系樹脂の全光線透過率が小さすぎるとポリオレフィン系樹脂の透明性が低く、培養容器中の細胞を観察しにくい。全光線透過率が上記上下限の範囲である場合、ポリオレフィン系樹脂は透明性に優れるため、肉眼でも顕微鏡下においても細胞を観察しやすい。
[要件(2)]
要件(2)は、ポリオレフィン系樹脂の温度23℃、湿度0%の時の酸素透過係数が100~3000cm3×mm/(m2×24h×atm)であることを規定する。該酸素透過係数は、具体的には以下の方法で測定できる。
ポリオレフィン系樹脂で構成されるフィルムから測定サンプルを作成し、差圧式ガス透過率測定法により、温度23℃、湿度0%での酸素透過係数[cm3×mm/(m2×24h×atm)]を測定する。測定に用いる機器は差圧式ガス透過率測定法を用いたものであれば特に制限されないが、例えば東洋精機製作所製の差圧式ガス透過率測定装置MT-C3が挙げられる。測定サンプルは、ポリオレフィン系樹脂で構成される厚さ50μmのフィルムから90×90mmの試験片を切り出して作成し、測定部径は70mm(透過面積は38.46cm2)とすると好ましい。酸素透過度が大きいため、予めサンプルにアルミニウムマスクを施し、実透過面積を5.0cm2とすることがより好ましい。測定サンプルは、微細加工、表面改質処理を行ったものでもよいし、行っていないものでもよいが、何も処理を行っていないものが好ましい。酸素透過係数を基材の厚さ(μm)で除した値を酸素透過度[cm3/(m2×24h×atm)]とする。
前記酸素透過係数は、好ましくは100~2500cm3×mm/(m2×24h×atm)、より好ましくは1000~2500cm3×mm/(m2×24h×atm)である。酸素透過係数が前記範囲にあるということは、ポリオレフィン系樹脂が酸素透過性に優れるといえる。
ポリオレフィン系樹脂の酸素透過係数が小さすぎると培地中の酸素濃度が低くなり、細胞は充分に増殖及び分化しない。一方で、酸素透過係数が大きすぎると培地中の酸素濃度が高くなりすぎ、酸素ストレスにより細胞機能が低下する。酸素透過係数が上記上下限の範囲である場合、細胞は良好な形態を保ち培養期間に応じて効率良く増殖及び分化することができる。
ポリオレフィン系樹脂(α)は、成形加工性、透明性、形状安定性、軽量性、薬剤低収着性、自家蛍光、放射線耐性などの観点から、適切な材料を選択できる。このような観点から、ポリオレフィン系樹脂(α)を選択することにより、本発明の分化方法は、多能性幹細胞を効率よく分化させ、細胞の形態を観察しやすく、また創薬スクリーニング用途や診断用途で使用しやすくなる。
ポリオレフィン系樹脂(α)は、成形加工性、透明性、形状安定性、軽量性、薬剤低収着性、自家蛍光などのバランスに優れる点から、好ましくは、後述する4-メチル-1-ペンテン重合体(X)又は後述するフッ素含有環状オレフィン重合体(Y)である。また、表面処理の有無及びその種類で細胞の接着性を調整できるため、細胞接着性を広い範囲で調製できる点、酸素透過性が好適である点から、より好ましくは4-メチル-1-ペンテン重合体(X)である。
ポリオレフィン系樹脂(α)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
〈4-メチル-1-ペンテン重合体(X)〉
以下、ポリオレフィン系樹脂(α)の好適な一例である、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)についてさらに詳細に説明する。
本発明においては、4-メチル-1-ペンテン単独重合体、及び4-メチル-1-ペンテンと他のモノマーとの共重合体を総称して「4-メチル-1-ペンテン重合体(X)」と称する。
4-メチル-1-ペンテン重合体の一例である、4-メチル-1-ペンテンと、他のモノマーとの共重合体としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。4-メチル-1-ペンテンと、他のモノマーとの共重合体としては、4-メチル-1-ペンテンと、エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体が、強度が高く、基材として用いても破れにくく割れにくく、撓みも少ないため好ましい。
4-メチル-1-ペンテン重合体としては、4-メチル-1-ペンテン単独重合体並びに、4-メチル-1-ペンテンと、エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体から選択される少なくとも1種の重合体であることが好ましく、4-メチル-1-ペンテンと、エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体であることがより好ましい。
前記オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。前記オレフィンは、基材に必要な物性に応じて適宜選択することができる。例えば、前記オレフィンとしては、適度な酸素透過度と、優れた剛性という観点からは、炭素数8~18のα-オレフィンが好ましく、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン及び1-オクタデセンから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。オレフィンの炭素数が上記範囲にあると、重合体の加工性がより良好になり、クラックや端部の割れによる基材の外観不良が生じにくくなる傾向にある。また、基材の不良品発生率が低くなる。
前記オレフィンは、1種又は2種以上を用いることができる。材料の強度の観点から、炭素数は2以上が好ましく、更に好ましくは炭素数10以上である。異なる2種以上のα-オレフィンを組み合わせる場合には、1-テトラデセン及び1-ヘキサデセンから選ばれる少なくとも1種と、1-ヘプタデセン及び1-オクタデセンから選ばれる少なくとも1種とを組み合わせることが特に好ましい。
前記4-メチル-1-ペンテン重合体における4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは60~100モル%、より好ましくは80~99.5モル%、さらに好ましくは85~98モル%である。
また、4-メチル-1-ペンテン重合体が、4-メチル-1-ペンテンと、エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンとの共重合体である場合は、その共重合体におけるエチレン及び炭素数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは0~40モル%、より好ましくは0.5~20モル%、さらに好ましくは2~15モル%である。なお、これら構成単位の含有量は、4-メチル-1-ペンテン重合体中の全繰返し構成単位量を100モル%とする。構成単位の含有量が上記範囲内にあると、加工性に優れ均質な培養面が得られ、またフィルムの靭性と強度のバランスが良いため、撓みも少なくなる。
前記4-メチル-1-ペンテン重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位及び前記エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位以外の構成単位(以下「その他の構成単位」ともいう)を有してもよい。その他の構成単位の含有量は、例えば0~10.0モル%である。前記4-メチル-1-ペンテン重合体がその他の構成単位を有する場合、その他の構成単位は、1種でも2種以上であってもよい。
その他の構成単位を導くモノマーとしては、例えば、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィンが挙げられる。環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン及びハロゲン化オレフィンとしては、例えば、特開2013-169685号公報の段落[0035]~[0041]に記載の化合物を用いることができる。
前記4-メチル-1-ペンテン重合体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
4-メチル-1-ペンテン重合体としては市販品を使用することもできる。具体的には、三井化学(株)製のTPX MX001、MX002、MX004、MX0020、MX021、MX321、RT18、RT31又はDX845いずれも商標)などが挙げられる。また、その他のメーカー製でも上記の要件を満たす4-メチル-1-ペンテン重合体であれば、好ましく使用できる。これらの市販品は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用することもできる。
4-メチル-1-ペンテン重合体は、通常、融点200℃~240℃であり耐熱性が高い。また加水分解を起こさず、耐水性、耐沸水性、耐スチーム性が優れているため、4-メチル-1-ペンテン重合体を含む基材は高圧蒸気滅菌処理が可能である。また、4-メチル-1-ペンテン重合体を含む基材は、表面処理を容易に行うことができ、また表面処理することにより、その後のコーティングを行いやすくすることができる。4-メチル-1-ペンテン重合体は、また可視光線透過率が高く(通常90%以上)、自家蛍光を発しない特徴を有するので、4-メチル-1-ペンテン重合体を含む基材から形成される培養容器は培養細胞の観察がしやすい。さらに、ほとんどの薬品に優れた耐薬品性を示し、薬剤を収着しにくいため、多能性幹細胞の分化を誘導するための薬剤の効果を妨げ、また、創薬スクリーニング用途や診断用途にも好適に用いられる。4-メチル-1-ペンテン重合体は、放射線耐性が高いので、4-メチル-1-ペンテン重合体を含む基材から形成される培養容器滅菌や表面処理を行いやすい。4-メチル-1-ペンテン重合体は、靭性が高く、撓みにくいので、形状安定性に優れる培養容器を得ることができる。4-メチル-1-ペンテン重合体は、ヒートシールが可能であり、自材同士の熱融着のみならず他の材料との熱接着も容易である。また、熱成形が可能であるため、任意の形状の培養容器に成形することが容易であり、例えばインプリント法やインサート法を用いた成形も容易である。
4-メチル-1-ペンテン重合体の、標準ポリスチレンを基準物質としたゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10000~2000000、より好ましくは20000~1000000、さらに好ましくは30000~500000である。ここで、GPC測定の際の試料濃度は、例えば1.0~5.0mg/mlとすることができる。また、4-メチル-1-ペンテン重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~30、より好ましくは1.1~25、さらに好ましくは1.1~20である。GPCで用いられる溶剤は、オルトジクロロベンゼンが好ましい。また、測定条件の一例としては、後述する実施例に示した条件が挙げられるが、該測定条件に限定されるものではない。
重量平均分子量(Mw)を上記上限以下とすることにより、後述する4-メチル-1-ペンテン重合体の成形法において、溶融成形で作製したフィルムは、ゲル等の不具合の発生を抑制しやすく、表面が均一な製膜をしやすくなる。また、溶液キャスト法で作製する際は溶剤への溶解性をより良好にし、フィルムのゲル等の不具合を抑制しやすく、表面均一な製膜がしやすくなる。
また、重量平均分子量(Mw)を上記下限以上とすることにより、培養容器は強度が十分となる傾向にある。さらに、分子量分布を上記の範囲内とすることで、作製した培養容器表面のベタツキを抑えやすく、培養容器の靭性も充分となる傾向にあり、成形時の曲げや裁断時のクラックの発生などを抑制しやすくなる。
前記4-メチル-1-ペンテン重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、4-メチル-1-ペンテン重合体として、2種以上を用いた場合には、それぞれの、Mw及びMw/Mnが、上記範囲にあればよい。
4-メチル-1-ペンテン重合体は以上のような優れた特性を有しているので、少なくとも培養面が4-メチル-1-ペンテン重合体で形成された培養容器は、培養に悪い影響を与えることも無く、また形状安定性、光透過性、成形加工性が良好で、滅菌処理を行うことができ、多能性幹細胞を分化させるために用いる培養容器として非常に優れている。
〈4-メチル-1-ペンテン重合体の製造方法〉
前記4-メチル-1-ペンテン重合体を製造する方法は、4-メチル-1-ペンテン、オレフィン、その他のモノマーを重合させられれば、いずれの方法であってもよい。また、分子量や分子量分布を制御するために連鎖移動剤、例えば水素を共存させてもよい。製造に用いる機器も制限されない。重合法は公知の方法でもよく、気相法、スラリー法、溶液法、バルク法であってもよい。好ましくはスラリー法、溶液法である。また、重合法は単段重合法、又は二段等の多段重合法で、分子量の異なる複数の重合体を重合系中にブレンドする方法であってもよい。単段、多段重合法の何れであっても、連鎖移動剤として水素を用いる場合には、一括投入しても、分割投入、例えば重合初期、中期、終期に投入してもよい。重合は常温で行ってもよく、必要に応じて加温してもよいが、重合の効率の観点から、20℃~80℃で行うことが好ましく、40℃~60℃で行うことが特に好ましい。製造に用いる触媒も制限されないが、重合の効率の観点から、例えば国際公開公報2006/054613に記載される固体状チタン触媒成分(I)を用いることが好ましい。
なお、ポリオレフィン系樹脂を含む基材が、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)を含む組成物である場合には、組成物100質量%中に、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)が、好ましくは90質量%以上100質量%未満であり、より好ましくは95質量%以上100質量%未満であり、特に好ましくは99質量%以上100質量%未満である。4-メチル-1-ペンテン重合体(X)以外の成分を多量に含むと、酸素透過度の低下のみならず、透明性の低下や強度の低下を招く。
4-メチル-1-ペンテン重合体(X)以外の成分としては、耐熱安定化剤、耐光安定化剤、加工助剤、可塑剤、酸化防止剤、滑剤、消泡剤、アンチブロック剤、着色剤、改質剤、抗菌剤、抗黴剤、防曇剤などの添加剤が挙げられる。
[フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)]
以下、ポリオレフィン系樹脂(α)の好適な一例である、フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)についてさらに詳細に説明する。
フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、下記一般式(1)で表される繰返し構造単位を含有する。
Figure 2022157708000002
式(1)中、R1~R4のうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキルである。R1~R4がフッ素を含有しない基である場合、R1~R4は、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルコキシ、又は炭素数2~10のアルコキシアルキルから選ばれる。R1~R4は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、R1~R4は互いに結合して環構造を形成していてもよい。
一般式(1)においてR1~R4としては、フッ素;フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘキサフルオロイソプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、ヘキサフルオロ-2-メチルイソプロピル、ペルフルオロ-2-メチルイソプロピル、n-ペルフルオロブチル、n-ペルフルオロペンチル、ペルフルオロシクロペンチル等のアルキル基の水素の一部又は全てがフッ素で置換されたアルキル等のフッ素を含有する炭素数1~10のアルキル;フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、ヘプタフルオロプロポキシ、ヘキサフルオロイソプロポキシ、ヘプタフルオロイソプロポキシ、ヘキサフルオロ-2-メチルイソプロポキシ、ペルフルオロ-2-メチルイソプロポキシ、n-ペルフルオロブトキシ、n-ペルフルオロペントキシ、ペルフルオロシクロペントキシ等のアルコキシの水素の一部又は全てがフッ素で置換されたアルコキシ等のフッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ;又はフルオロメトキシメチル、ジフルオロメトキシメチル、トリフルオロメトキシメチル、トリフルオロエトキシメチル、ペンタフルオロエトキシメチル、ヘプタフルオロプロポキシメチル、ヘキサフルオロイソプロポキシメチル、ヘプタフルオロイソプロポキシメチル、ヘキサフルオロ-2-メチルイソプロポキシメチル、ペルフルオロ-2-メチルイソプロポキシメチル、n-ペルフルオロブトキシメチル、n-ペルフルオロペントキシメチル、ペルフルオロシクロペントキシメチル等のアルコキシアルキルの水素の一部又は全てがフッ素で置換されたアルコキシアルキル等のフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキルが例示される。
また、R1~R4は、互いに結合して環構造を形成していてもよく、ペルフルオロシクロアルキル、酸素を介したペルフルオロシクロエーテル等の環を形成してもよい。
さらに、フッ素を含有しないその他のR1~R4としては、水素;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチルイソプロピル、n-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル等の炭素数1~10のアルキル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ等の炭素数1~10のアルコキシ;又はメトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、ペントキシメチル等の炭素数2~10のアルコキシアルキルが例示される。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、一般式(1)で表される構造単位のみを有するものであってもよく、一般式(1)で表される構造単位とともに他の構造単位を有するものであってもよい。また、前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、一般式(1)で表される構造単位であって、R1~R4の少なくとも1つが互いに異なる2種類以上の構造単位を含んでいてもよい。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)としては、例えば、ポリ(1-フルオロ-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-フルオロ-1-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-1-フルオロ-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1-ジフルオロ-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロエチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1-ビス(トリフルオロメチル)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ビス(トリフルオロメチル)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロプロピル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-ペルフルオロプロピル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ブチル-2-ペルフルオロプロピル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロ-iso-プロピル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-ペルフルオロ-iso-プロピル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1,2-ビス(トリフルオロメチル)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2,2,3,3,3a, 6a-オクタフルオロシクロペンチル-4,6-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2,2,3,3,4,4,3a, 7a-デカフルオロシクロヘキシル-5,7-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロブチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロ-iso-ブチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロ-tert-ブチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-ペルフルオロ-iso-ブチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ブチル-2-ペルフルオロ-iso-ブチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメチル-2-ペルフルオロエチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(1-トリフルオロメチル-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-シクロペンチル)-3,5-シクロペンチレンエチレン))、ポリ((1,1,2-トリフルオロ-2-ペルフルオロブチル)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメチル-2-ペルフルオロブチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-フルオロ-1-ペルフルオロエチル-2,2-ビス(トリフルオロメチル)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-ペルフルオロプロパニル-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロヘキシル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-ペルフルオロヘキシル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ブチル-2-ペルフルオロヘキシル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ヘキシル-2-ペルフルオロヘキシル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-オクチル-2-ペルフルオロヘキシル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロヘプチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロオクチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロデカニル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2-トリフルオロ-ペルフルオロペンチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメチル-2-ペルフルオロブチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2-トリフルオロ-ペルフルオロヘキシル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメチル-2-ペルフルオロペンチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ビス(ペルフルオロブチル)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ビス(ペルフルオロヘキシル)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-tert-ブトキシメチル-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,3,3,3a, 6a-ヘキサフルオロフラニル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-フルオロ-2-トリフルオロメトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-フルオロ-1-トリフルオロメトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-1-フルオロ-2-トリフルオロメトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1-ジフルオロ-2-トリフルオロメトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-2-トリフルオロメトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロエトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1-ビス(トリフルオロメトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2-トリフルオロ-2-トリフルオロメトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ビス(トリフルオロメトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロプロポキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-ペルフルオロプロポキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ブチル-2-ペルフルオロプロポキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロ-iso-プロポキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-ペルフルオロ-iso-プロポキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1,2-ビス(トリフルオロメトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロブトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロ-iso-ブトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロ-tert-ブトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-ペルフルオロ-iso-ブトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ブチル-2-ペルフルオロ-iso-ブトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメトキシ-2-ペルフルオロエトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2-トリフルオロ-2-ペルフルオロブトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメトキシ-2-ペルフルオロブトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-フルオロ-1-ペルフルオロエトキシ-2,2-ビス(トリフルオロメトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-ペルフルオロプロポキシ-2-トリフルオロメトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロヘトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-ペルフルオロヘトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ブチル-2-ペルフルオロヘトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ヘキシル-2-ペルフルオロヘトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-オクチル-2-ペルフルオロヘトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロヘプトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロオクトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ペルフルオロデトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2-トリフルオロ-ペルフルオロペントキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメトキシ-2-ペルフルオロブトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2-トリフルオロ-2-ペルフルオロヘトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメトキシ-2-ペルフルオロペンチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ビス(ペルフルオロブトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ビス(ペルフルオロへトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メトキシ-2-トリフルオロメトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-tert-ブトキシメチル-2-トリフルオロメトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(2’,2’,2’-トリフルオロエトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(2’,2’,3’,3’,3’-ペンタフルオロプロポキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-(2’,2’,3’,3’,3’-ペンタフルオロプロポキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ブチル-2-(2’,2’,3’,3’,3’-ペンタフルオロプロポキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(1’,1’,1’-トリフルオロ-iso-プロポキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-(1’,1’,1’-トリフルオロ-iso-プロポキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,4’-ヘプタフルオロブトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(1’,1’,1’-トリフルオロ-iso-ブトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(1’,1’,1’-トリフルオロ-iso-ブトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-(1’,1’,1’-トリフルオロ-iso-ブトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ブチル-2-(1’,1’,1’-トリフルオロ-iso-ブトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメトキシ-2-(2’,2’,2’-トリフルオロエトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2-トリフルオロ-2-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,4’-ヘプタフルオロブトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメトキシ-2-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,4’-ヘプタフルオロブトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-フルオロ-1-(2’,2’,2’-トリフルオロエトキシ)-2,2-ビス(トリフルオロメトキシ))-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-(2’,2’,3’,3’,3’-ペンタフルオロプロポキシ)-2-トリフルオロメトキシ-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’,6’,6’,6’-ウンデカフルオロヘトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-メチル-2-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’,6’,6’,6’-ウンデカフルオロヘトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ブチル-2-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’,6’,6’,6’-ウンデカフルオロヘトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-ヘキシル-2-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’,6’,6’,6’-ウンデカフルオロヘトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-オクチル-2-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’,6’,6’,6’-ウンデカフルオロヘトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’
,6’,6’,7’,7’,7’-トリデカフルオロヘプトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’,6’,6’,7’,7’,8’,8’,8’-ペンタデカフルオロオクトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’,6’,6’,7’,7’,8’,8’,9’,9’,9’-ヘプタデカフルオロデトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2-トリフルオロ-2-(1’,1’,1’-トリフルオロ-iso-プロポキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-トリフルオロメトキシ-2-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,4’-ヘプタフルオロブトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2-トリフルオロ-(2’,2’,3’,3’,4’,4’,5’,5’,6’,6’,6’-ウンデカフルオロヘトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ビス(2’,2’,3’,3’,4’,4’,4’-ヘプタフルオロブトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ビス(2’,2’,3’,3’, 4’,4’,5’,5’,6’,6’,6’-ウンデカフルオロヘトキシ)-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-ペルフルオロエチル-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2-ジフルオロ-1-ペルフルオロ-iso-プロピル-2-トリフルオロメチル-3,5-シクロペンチレンエチレン)等が挙げられる。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)としては市販品を使用することもできる。具体的には、三井化学(株)製のFROMP(登録商標)などが挙げられる。また、その他のメーカー製でも上記の要件を満たすフッ素含有環状オレフィン重合体であれば、好ましく使用できる。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)の分子量は、たとえば試料濃度3.0~9.0mg/mlでゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)において、5,000~1,000,000であることが好ましく、10,000~300,000であることがより好ましい。この重量平均分子量(Mw)を上記下限値以上とすることにより、溶液キャスト法により成形した成形物において曲げなどの外部応力に起因したヒビなどの発生しにくい、良好な状態の成形物を得やすくなる。また、重量平均分子量(Mw)を上記上限値以下とすることにより、溶融成形が容易な流動性を得やすい。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)の分子量分布(Mw/Mn:重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比)は、1.3~5.0とすることが好ましく、1.5~4.5とすることがより好ましく、1.7~4.0とすることがさらに好ましい。この分子量分布(Mw/Mn)を上記下限値以上とすることにより、溶液キャスト法や溶融成形法などの各種成形法で作製した成形物の靱性を向上させ、外部応力に起因したクラックや割れの発生をより効果的に抑制しやすくなる。一方で、分子量分布(Mw/Mn)を上記上限値以下とすることにより、オリゴマーなどの特に低分子量成分が溶出することを抑え、培養容器表面の水接触角が変化して細胞増殖を妨げることを抑制しやすくなる。重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を上記した範囲とすることにより、多能性幹細胞を分化させるために特に好適な培養容器を得ることが可能になる。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)として、2種以上を用いた場合には、各重合体それぞれの、Mw及びMw/Mnが、上記範囲にあればよい。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)の示差走査熱量分析によるガラス転移温度は、50~300℃とすることが好ましく、80~280℃とすることがより好ましく、100~250℃とすることがさらに好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内にあると、加熱滅菌処理が行え、また使用環境下で形状を維持することができ、さらに溶融成形において加熱温度に対して優れた流動性を有し、製造安定性が良く、色相にも優れた培養容器を得やすくなる。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、部分フッ素化ポリマーであるので、全フッ素化ポリマーとは異なり、主鎖が炭化水素で側鎖にフッ素原子を有する部分的なフッ素化ポリマーである構造に起因して極性が大きい。そのため、ポリマー合成時の溶剤である通常市販されているエーテル、ケトンなどの極性溶剤に対して良く溶解し、光硬化性化合物などの極性化合物にも優れた溶解性を示しながら、その成形物は、PET、アクリル樹脂などの汎用樹脂からなる成形物に対して優れた密着性を示し、かつ、フッ素系ポリマーとしての特徴である疎水な表面性状を有する。
フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)を含む基材は、表面処理及びコーティングを容易に行うことができ、表面処理をしなくてもコーティングしやすい。また、フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、可視光線透過率が非常に高く(通常90%以上)、自家蛍光を発しない特徴を有するので、フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)を含む基材から形成される培養容器は細胞観察性の点で非常に優れている。さらに、ほとんどの薬品に優れた耐薬品性を示し、薬剤を収着しにくいため、多能性幹細胞の分化を誘導するための薬剤の効果を妨げ、また、創薬スクリーニング用途や診断用途にも好適に用いられる。フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、放射線耐性が高いので、フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)を含む基材から形成される培養容器は滅菌や表面処理を行いやすい。フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、靭性が高く、撓みにくいので、形状安定性に優れる培養容器を得ることができる。
フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、以上のような優れた特性を有しているので、少なくとも培養面がフッ素含有環状オレフィン重合体(Y)で形成された培養容器は、培養に悪い影響を与えることも無く、また形状安定性、光透過性、表面処理性が良好で、滅菌処理を行うことができるので、多能性幹細胞を分化させるために用いる培養容器として非常に優れている。
(フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)の製造方法)
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)を製造する方法は、前記一般式(1)で表される繰返し構造単位を含有させられれば、いずれの方法であってもよいが、例えば下記一般式(2)で表わされる環状オレフィンモノマー(以下、環状オレフィンモノマー(A)という)を開環メタセシス重合触媒によって重合させ、得られる重合体の主鎖のオレフィン部に水素添加することによって合成することができる。
Figure 2022157708000003
(式(2)中、R1~R4は、上記式(1)と同義である。)
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、環状オレフィンモノマー(A)以外のモノマーを含んでいてもよい。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、環状オレフィンモノマー(A)を開環メタセシス重合した後に、主鎖二重結合を水素添加したフッ素含有ポリマーである。開環メタセシス重合には、Schrock触媒が好ましく用いられ、Grubbs触媒を用いても良く、これにより極性モノマーに対する重合触媒活性を高め、工業的に優れた製造方法を実現しやすくなる。なお、これらの開環メタセシス重合触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、古典的な有機遷移金属錯体、遷移金属ハロゲン化物又は遷移金属酸化物と、助触媒としてのルイス酸との組み合せからなる開環メタセシス重合触媒を用いることもできる。
環状オレフィンモノマー(A)の開環メタセシス重合において、環状オレフィンモノマー(A)と開環メタセシス重合触媒とのモル比は、タングステン、モリブデン、又はルテニウム等の遷移金属アルキリデン触媒の場合は、遷移金属アルキリデン触媒1モルに対して、該モノマーを100~30,000モルとすることが好ましく、1,000~20,000モルとすることがより好ましい。
また、上記範囲に分子量、及びその分布を制御するために、連鎖移動剤としてオレフィン又はジエンを使用することができる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン又はこれらのフッ素含有オレフィンがあげられ、さらに、ビニルトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリイソプロピルシラン等のケイ素含有オレフィン又はこれらのフッ素及びケイ素含有オレフィンがあげられる。また、ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン等の非共役系ジエン又はこれらのフッ素含有非共役系ジエンがあげられる。これらオレフィン、フッ素含有オレフィン又はジエンはそれぞれ1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記連鎖移動剤の使用量は、前記連鎖移動剤が環状オレフィンモノマー(A)1モルに対して0.001~1,000モルであることが好ましく、0.01~100モルであることがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、遷移金属アルキリデン触媒1モルに対して0.1~1,000モルであることが好ましく、1~500モルであることがより好ましい。
また、環状オレフィンモノマー(A)の開環メタセシス重合は、無溶媒でも溶媒を使用して行ってもよいが、特に使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンもしくはジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピルもしくは酢酸ブチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンもしくはエチルベンゼン等の芳香族炭化水素:ペンタン、ヘキサンもしくはヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンもしくはデカリン等の脂肪族環状炭化水素;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンもしくはトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライド等のフッ素含有芳香族炭化水素;ペルフルオロヘキサン等のフッ素含有脂肪族炭化水素;ペルフルオロシクロデカリン等のフッ素含有脂肪族環状炭化水素;又はペルフルオロ-2-ブチルテトラヒドロフラン等のフッ素含有エーテル類が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
環状オレフィンモノマー(A)の開環メタセシス重合では、該モノマーの反応性及び重合溶媒ヘの溶解性によっても異なるが、モノマー溶液に対する環状オレフィンモノマー(A)の濃度は5~100質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましい。また、反応温度は、-30~150℃であることが好ましく、30~100℃であることがより好ましい。また、反応時間は、10分~120時間であることが好ましく、30分~48時間であることがより好ましい。さらに、ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、水等の失活剤で反応を停止し、重合体の溶液を得ることができる。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)は、好ましくは、環状オレフィンモノマー(A)を開環メタセシス重合して得られたポリマーの主鎖のオレフィン部を、触媒によって水素添加反応することによって得られる。また、その水素添加触媒は使用する溶媒の水素添加反応を起こさずに、該ポリマーの主鎖のオレフィン部を水素添加できる触媒であれば、均一系金属錯体触媒でも不均一系の金属担持触媒のいずれであってもよい。
均一系金属錯体触媒としては、例えば、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)オスミウム、ジクロロヒドリドビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。
不均一系金属担持触媒としては、例えば、活性炭担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、活性炭担持ロジウム、アルミナ担持ロジウム、活性炭担持ルテニウム、アルミナ担持ルテニウム等が挙げられる。
これら水素添加触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。特に、細胞培養を効率的に行いやすいことから、ろ過で簡単に除去できる活性炭担持パラジウム、又はアルミナ担持パラジウムが好適に用いられる。
上記の主鎖のオレフィン部の水素添加処理をするに際して、不均一系又は均一系水素添加触媒を使用する場合には、水素添加触媒の使用量は、水素添加触媒中の金属成分が、水素添加処理前のポリマー100質量部に対して5×10-4質量部~100質量部であることが好ましく、1×10-2質量部~30質量部であることがより好ましい。
水素添加に用いられる溶媒としては、水素添加処理前のポリマーを溶解し、かつ、溶媒自身が水素添加されないものであれば特に制限はなく、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル又は酢酸ブチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族環状炭化水素;メチレンジクロリド、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、メタキシレンヘキサフルオライド等のフッ素含有芳香族炭化水素;ペルフルオロヘキサン等のフッ素含有脂肪族炭化水素;ペルフルオロシクロデカリン等のフッ素含有脂肪族環状炭化水素;ペルフルオロ-2-ブチルテトラヒドロフラン等のフッ素含有エーテル類等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
上記の主鎖のオレフィン部の水素添加反応は、水素圧力が常圧~30MPaで行うことが好ましく、0.5~20MPaであることがより好ましく、2~15MPaであることがさらに好ましい。また、反応温度は、0~300℃の温度であることが好ましく、室温~250℃であることがより好ましく、50~200℃であることがさらに好ましい。水素添加反応の実施様式は、特に制限はないが、例えば、触媒を溶媒中に分散又は溶解して行う方法、触媒をカラムなどに充填し、固定相としてポリマー溶液を流通させて行う方法などが挙げられる。
さらに、主鎖のオレフィン部の水素添加処理は、水素添加処理前のポリマーの重合溶液を貧溶媒と混合して、ポリマーを析出させ単離した後に、再度溶媒に溶解して水素添加処理を行なってもよいし、重合溶液からポリマーを単離することなく、上記の水素添加触媒で水素添加処理を行なってもよく、特に制限はない。
また、前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)のオレフィン部の水素添加率は50%以上であることが好ましく、70~100%であることがより好ましく、90~100%であることがさらに好ましい。水素添加率を上記下限値以上とすることにより、オレフィン部において、光吸収に起因した劣化や成形時の加熱に起因した酸化が生じることを抑制しやすく、水接触角などの基材表面の性質を良好なものとしやすくなる。
前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)を、水素添加後のポリマー溶液、特に、活性炭担持パラジウム、アルミナ担持パラジウムなどの固体触媒を好ましく用いる場合のポリマー溶液から取得する方法は、特に制限はないが、例えば、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の方法で前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)を取得し、撹拌下の貧溶媒に反応溶液を排出する方法、反応溶液中にスチームを吹き込むスチームストリッピング等の方法によって前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)を析出させる方法、又は、反応溶液から溶媒を加熱等によって蒸発除去する方法等が挙げられる。
また、不均一系金属担持触媒を利用して水素添加反応を実施した場合は、合成液をろ過して金属担持触媒をろ別した後に、上記した方法で前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)を取得する事ができる。なお、粒径の大きな触媒成分を予めデカンテーション、延伸分離などの方法でポリマー溶液中に沈降させ、上澄みを採取し、触媒成分を粗取りした溶液をろ過し、上記した方法で前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)を取得してもよい。特に、触媒成分を精密ろ過することが、好適であり、ろ過フィルターの目開きは、好ましくは、10μm~0.05μm、より好ましくは、10μm~0.1μm、さらに好ましくは、5μm~0.1μmである。
[多能性幹細胞]
多能性幹細胞とは、あらゆる組織の細胞へと分化する能力(分化多能性)を有する幹細胞の総称である。多能性幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)、胚性癌腫細胞(embryonic carcinoma cell:EC細胞)、栄養芽幹細胞(trophoblast stem cell:TS細胞)、エピブラスト幹細胞(epiblast stem cell:EpiS細胞)、胚性生殖細胞(embryonic germ cell:EG細胞)、多能性生殖細胞(multipotent germline stem cell:mGS細胞)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)、Muse細胞((Multi-lineage differentiating Stress Enduring cell)等が挙げられる。多能性幹細胞は、好ましくは、ES細胞又はiPS細胞である。
多能性幹細胞の由来は特に制限されず、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類等の由来であってもよいが、好ましくは、哺乳類由来であり、より好ましくはヒト、サル、マウス、ラット、ブタ、イヌ、ヒツジ、ネコ、ヤギ由来であり、さらに好ましくはヒト由来である。
多能性幹細胞は、好ましくは、ヒト由来ES細胞又はヒト由来iPS細胞である。
ES細胞は、哺乳動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、内部細胞塊を線維芽細胞のフィーダー上で培養することによって樹立することができる。また、継代培養による細胞の維持は、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor (LIF))、塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor (bFGF))などの物質を添加した培養液を用いて行うことができる。ヒト及びサルのES細胞の樹立と維持の方法については、例えばUSP5,843,780; Thomson JA, et al. (1995), Proc Natl. Acad. Sci. U S A. 92:7844-7848;Thomson JA, et al. (1998), Science. 282:1145-1147;H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932; M. Ueno et al. (2006), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9554-9559; H. Suemori et al. (2001), Dev. Dyn., 222:273-279;H. Kawasaki et al. (2002), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:1580-1585;Klimanskaya I, et al. (2006), Nature. 444:481-485などに記載されている。
また、ヒトES細胞株は、例えばWA01(H1)及びWA09(H9)は、WiCell Reserch Instituteから、KhES-1、KhES-2及びKhES-3は、京都大学再生医科学研究所(京都、日本)から入手可能である。
iPS細胞は、特定の初期化因子を、DNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.ら, Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);国際公開第2007/069666号)。
前記体細胞は、卵子、卵母細胞、ES細胞などの生殖系列細胞又は分化全能性細胞を除くあらゆる動物細胞(好ましくは、ヒトを含む哺乳動物細胞)を意味し、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、及び成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含し、また、初代培養細胞、継代細胞、及び株化細胞のいずれも包含する。前記体細胞としては、例えば、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞);組織前駆細胞;リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、筋肉細胞、線維芽細胞、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞、脳細胞、肺細胞、腎細胞及び脂肪細胞等の分化した細胞などが挙げられる。
前記初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-cording RNA又はES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-coding RNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3又はGlis1等が挙げられ、これらの初期化因子は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
[工程(A)]
工程(A)は、培養容器(β)の培養面に多能性幹細胞を播種する工程である。培養容器(β)の培養面に多能性幹細胞を播種する方法は特に制限されず、例えば、培地に懸濁した多能性幹細胞をピペット等で培養容器内に添加し、必要に応じて該培養容器を揺動させて培養容器内に細胞を均等に散らした後、インキュベーター内で静置する。
多能性幹細胞を播種する密度は、前記多能性幹細胞が増殖及び分化できれば特に制限されないが、好ましくは0.1×105cells/cm2~10.0×105cells/cm2であり、より好ましくは0.3×105cells/cm2~5.0×105cells/cm2であり、さらに好ましくは0.5×105cells/cm2~3.0×105cells/cm2である。
細胞播種密度が上記の範囲であると、上記範囲外の場合と比べて、多能性幹細胞の増殖及び分化がより効率よく行えるため好ましい。
播種に用いる培地は、多能性幹細胞が生存できる培地であれば特に制限されず、使用細胞種に合わせて適宜選択すればよい。播種に用いる培地は、後述する工程(B)で用いる培地であってもよい。播種に用いる培地は、例えば、任意の細胞培養基本培地や分化培地、初代培養専用培地等、具体的には、Essential8、StemFit培地、ReproFF2培地、Stem-PartnerSF、イーグル細小必須培地(EMEM)、ダルベッコ改イーグル培地(DMEM)、α-MEM、グラスゴーMEM(GMEM)、IMDM、RPMI1640、ハムF-12、MCDB培地、ウィリアムス培地E及びこれらの混合培地等が挙げられる。さらに、血清、各種成長因子、分化誘導因子、抗生物質、ホルモン、アミノ酸、糖、塩類、ミネラル、金属、ビタミン等を添加した培地を使用してもよい。
播種に用いる培地の量は特に制限されないが、培養容器に添加した状態で、培地の高さは好ましくは3~30mm、より好ましくは3~25mm、さらに好ましくは4~20mmである。
培養温度も特に制限されないが、通常は25~40℃程度で行う。
[工程(B)]
工程(B)は、多能性幹細胞から、目的とする分化細胞への分化を誘導する工程である。多能性幹細胞の分化を誘導する方法は特に制限されず、公知のプロトコルに従って所望の目的とする分化細胞への分化誘導を行えばよく、市販の分化誘導培地や分化キットを用いてもよい。
分化誘導の条件は、特に制限されず、使用細胞種及び目的とする分化細胞種等に応じて適宜設定できる。通常、所定のサイトカイン、増殖因子又はその他の化合物を培養液中に所定濃度添加して培養を行うことにより分化を誘導しうる。
前記目的とする分化細胞は、特に制限されず、あらゆる分化細胞であってよい。前記目的とする分化細胞は、各種前駆細胞を含み、例えば、脂肪細胞、肝細胞、腎細胞、膵臓細胞、乳腺細胞、内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、心筋細胞、神経細胞、グリア細胞、樹状細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞、線維芽細胞、各種血液系細胞、網膜細胞、角膜由来細胞、生殖腺由来細胞、各種線細胞等である。
前記目的とする分化細胞は、好ましくはスフェロイドを形成する細胞であり、より好ましくは酸素要求性の高い細胞である。前記目的とする分化細胞は、好ましくは肝細胞、神経細胞、心筋細胞、膵β細胞、血管内皮細胞、脂肪細胞、脂肪由来幹細胞、軟骨細胞、間葉系幹細胞、毛包上皮幹細胞、毛乳頭細胞、皮膚繊維芽細胞、皮膚角化細胞、骨芽細胞、及び造血前駆細胞等であり、より好ましくは心筋細胞、神経細胞、肝細胞であり、さらに好ましくは心筋細胞である。
工程(B)は、好ましくは、多能性幹細胞の心筋細胞への分化を誘導する工程であり、より好ましくはiPS細胞の心筋細胞への分化を誘導する工程である。
多能性幹細胞の心筋細胞への分化を誘導する方法は特に制限されない。多能性幹細胞から心筋細胞への分化を誘導する方法としては、様々な手法が知られており(例えば、Burridge et al., Cell Stem Cell. 2012 Jan 6;10(1):16-28; Kattman et al., Cell Stem Cell 2011; 8: 228-240; Zhang et al., Circ Res 2012; 111: 1125-1136; Lian et al., Nat Protoc 2013; 8: 162-175; 国際公開第2016/076368号; 国際公開第2013/111875号; Minami et al., Cell Rep. 2012, 2(5): 1448-1460等)、例えば、胚様体形成による方法、単層分化培養による方法、強制凝集による方法などが挙げられる。いずれの方法においても、中胚葉誘導因子(例えば、アクチビンA、BMP4、bFGF、VEGF、SCFなど)、心臓決定因子(例えば、VEGF、DKK1、Wntシグナル阻害剤(例えば、IWR-1、IWP-2、IWP-4等)、BMPシグナル阻害剤(例えば、NOGGIN等)、TGFβ/アクチビン/NODALシグナル阻害剤(例えば、SB431542等)、レチノイン酸シグナル阻害剤など)、心臓分化因子(例えば、VEGF、bFGF、DKK1など)等を、順次作用させることにより誘導効率を高めることができる。
iPS細胞の心筋細胞への分化を誘導する方法は特に制限されないが、例えば公知のプロテインフリー心筋分化誘導(PFCD)法を用いることができる(国際公開第2015/182765号を参照)。プロテインフリー心筋分化誘導(PFCD)法は、高い心筋分化効率を達成することができるため、前記工程(B)は、プロテインフリー心筋分化誘導(PFCD)法によるものであることが好ましい。
工程(B)における培養期間は、使用細胞種及び目的とする分化細胞種、分化の度合い、分化誘導方法等に応じて適宜設定できる。iPS細胞を心筋細胞への分化を誘導する場合、培養期間は好ましくは7~30日、より好ましくは10~25日、さらに好ましくは11~20日である。
工程(B)は、工程(A)の後、又は工程(A)と同時に行う。工程(B)を工程(A)と同時に行うと、多能性幹細胞の分化誘導がより効率よく行える。
[多能性幹細胞の分化方法]
本発明の多能性幹細胞の分化方法は、培養容器(β)で多能性幹細胞を培養すると、多能性幹細胞を分化細胞へと効率よく分化させることができるというものである。また、本発明によれば、分化細胞がスフェロイドを形成しやすい。
前記スフェロイドとは、細胞同士が集まって塊になったもののことを言い、細胞凝集体又は細胞塊などと言い換えることができる。スフェロイドは心筋細胞のような単一な細胞を含むスフェロイドでも、例えば線維芽細胞と心筋細胞のような2種以上の異なる細胞種を含むスフェロイドでもよい。
前記分化細胞及び前記スフェロイドは、創薬用途や医療用途に利用することができる。
本発明の多能性幹細胞の心筋細胞への分化方法は、心筋純度を増加させるものであることが好ましい。
前記増加とは、培養容器(β)の代わりに、ポリスチレン製細胞培養容器を用い、それ以外の条件は本発明の多能性幹細胞の心筋細胞への分化方法と同じである実験条件下において多能性幹細胞の心筋細胞へ分化させた際の心筋純度を比較対照として、該比較対象よりも心筋純度が高いことを言う。前記比較対象よりも2倍以上心筋純度が高いことが好ましく、3倍以上心筋純度が高いことがより好ましい。
前記心筋純度は、多能性幹細胞に由来する分化細胞総数に占める、多能性幹細胞から分化した心筋細胞数の割合(%)である。前記心筋純度を測定する方法は特に制限されないが、例えば、分化誘導の所定の期間経過後に、細胞総数と、心筋細胞マーカーを発現する細胞数を測定し、割合を算出することができる。細胞がスフェロイドを形成している場合は、スフェロイドを公知の方法によりシングルセル化して、スフェロイドを構成する全細胞数を細胞総数とすることができる。
細胞数の計測には、例えば、血球計算板、FACS等を用いることができる。
前記心筋細胞マーカーは特に制限されず、例えば心筋トロポニンC(cTnC)、心筋トロポニンI(cTnI)、心筋トロポニンT(cTnT)、ミオシン軽鎖、αActinin、NKX2.5、KCNQ1、HERG1b、Cav1.2、Nav1.5等が挙げられる。前記心筋細胞マーカーは、好ましくは心筋トロポニンT(cTnT)である。
心筋細胞マーカーを発現する細胞数の測定は、例えば、心筋細胞マーカーに対する抗体を用いてFACSで行うことができる。
前記心筋純度は、好ましくは、cTnT陽性細胞数/スフェロイドを構成する全細胞数×100で算出することができる。
本発明の多能性幹細胞の心筋細胞への分化方法は、心筋細胞のMYL2(Myosin regulatory light chain 2)遺伝子の発現を増加させるものであることが好ましい。
前記増加とは、培養容器(β)の代わりに、ポリスチレン製細胞培養容器を用い、それ以外の条件は本発明の多能性幹細胞の心筋細胞への分化方法と同じである実験条件下において多能性幹細胞の心筋細胞へ分化させた際の心筋細胞のMYL2遺伝子の発現量を比較対照として、該比較対象よりもMYL2遺伝子の発現量が高いことを言う。前記比較対象よりも2倍以上MYL2遺伝子の発現量が高いことが好ましく、3倍以上MYL2遺伝子の発現量が高いことがより好ましい。
MYL2遺伝子の発現量は、公知の方法で測定することができ、例えば定量RT-PCR法が挙げられる。
本発明の多能性幹細胞の心筋細胞への分化方法は、心筋細胞の拍動数を増加させるものであることが好ましい。
前記増加とは、培養容器(β)の代わりに、ポリスチレン製細胞培養容器を用い、それ以外の条件は本発明の多能性幹細胞の心筋細胞への分化方法と同じである実験条件下において多能性幹細胞の心筋細胞へ分化させた際の心筋細胞の拍動数を比較対照として、該比較対象よりも拍動数が高いことを言う。前記比較対象よりも2倍以上筋細胞の拍動数が高いことが好ましく、3倍以上筋細胞の拍動数が高いことがより好ましい。
心筋細胞の拍動数は、公知の方法で測定することができ、例えば、心筋細胞の動画を撮影し、任意の心筋細胞のBPM(1分間における拍動数)を測定することができる。
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定]
実施例に用いた4-メチル-1-ペンテン重合体及びフッ素含有環状オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)、及び、分子量分布(Mw/Mn)をゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
具体的には、下記の条件で、オルトジクロロベンゼンに溶解したポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を、標準ポリスチレンによって分子量を較正して測定した。
・装置:ゲル浸透クロマトグラフ HLC-8321 GPC/HT型 (東ソー社製)
・データ解析ソフト:Empower3(Waters社製)
・検出器:示差屈折計
・直列連結カラム:TSKgel GMH6-HT(2本)、及び、TSKgel GMH6-HTL(2本)
・カラム温度:140℃
・流量:1.0ml/分
・試料濃度:1.5mg/ml
[全光線透過度の測定]
厚さ約50μm(50~52μm)の測定サンプルについて、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業社製)を用い、JIS K 7361-1に準拠して全光線透過率を測定した。
[酸素透過係数の測定]
測定サンプルについて、東洋精機製作所製差圧式ガス透過率測定装置MT-C3を用いて温度23℃、湿度0%の環境下にて酸素透過係数[cm3×mm/(m2×24h×atm)]を測定した。測定部径は70mm(透過面積は38.46cm2)とした。酸素透過係数が大きいことが予想されたため、予めサンプルにアルミニウムマスクを施し、実透過面積を5.0cm2とした。
[水接触角の測定]
水接触角の測定は、日本工業規格JIS-R3257(基板ガラス表面のぬれ性試験方法)に準じて行った。25±5℃、50±10%の恒温恒湿条件下で水滴の形状を球形とみなせる4μL以下の容量の水滴を、測定サンプルの表面に滴下し、静滴法により、測定サンプル表面に水滴が接触した直後から1分以内の測定サンプルと水滴の接触界面の角度を測定した。
[製造例1]基材の製造
4-メチル-1-ペンテン重合体であるTPX(登録商標)(三井化学株式会社製:分子量(Mw)=428000、分子量分布(Mw/Mn)=4.1)を使用し、基材層を押し出すフルフライト型のスクリューを備えたTダイ付き押出機へ投入し、押出し温度を270℃、ロール温度を60℃に設定し、ロール回転速度の条件を変えて押出し成形することで、厚さ50μmのフィルム1を得た。得られた前記フィルム1について、酸素透過係数、全光線透過度及び水接触角を測定した。結果を表1に示す。
[製造例2]培養容器の作製
前記フィルム1を8cm×12cmサイズにカットし、ポリスチレン(PSとも称す)製24ウェル容器枠の底面に、医療用粘着剤(スリーエム製)を介して密着させて24ウェルの培養プレートを作製した。その後、耐ガンマ線袋に梱包して10kGyのガンマ線を照射し滅菌した。これをTプレートとした。
[製造例3]基材の製造
フッ素含有環状オレフィン重合体であるFROMP(登録商標)(三井化学株式会社製:分子量(Mw)=78000、分子量分布(Mw/Mn)=1.70)を使用し、基材層を押し出すフルフライト型のスクリューを備えたTダイ付き押出機へ投入し、押出し温度を270℃、ロール温度を60℃に設定し、ロール回転速度の条件を変えて押出し成形することで、厚さ50μmのフィルム2を得た。得られた前記フィルム2について、酸素透過係数、全光線透過度及び水接触角を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2022157708000004
[製造例4]培養容器の作製
前記フィルム2を8cm×12cmサイズにカットし、ポリスチレン(PSとも称す)製24ウェル容器枠の底面に、医療用粘着剤(スリーエム製)を介して密着させて24ウェルの培養プレートを作製した。その後、耐ガンマ線袋に梱包して10kGyのガンマ線を照射し滅菌した。これをFプレートとした。
[実施例1]iPS細胞から心筋細胞への分化誘導
製造例2で作製したTプレートを用い、後述する方法によりiPS細胞から心筋細胞への分化を誘導した。培地は培地深さが5mmとなるように用いた(培地量:1mL)。
[実施例2]
実施例1よりも培地の量を増やして、培地深さを10mmとした以外は、実施例1と同様にして培養を行った(培地量:1.8mL)。
[実施例3]iPS細胞から心筋細胞への分化誘導
製造例4で作製したFプレートを用い、後述する方法によりiPS細胞から心筋細胞への分化を誘導した。培地は培地深さが5mmとなるように用いた(培地量:1mL)。
[実施例4]
実施例3よりも培地の量を増やして、培地深さを10mmとした以外は、実施例3と同様にして培養を行った(培地量:1.8mL)。
[比較例1]
培養面の厚さが1000μmである超低接着面PS製培養容器(コーニング社製、CostarTM3473、1ウェルの培養面の内径が15mm、24ウェルプレート、以下、PSプレート又はCorningとも称す)を使用した以外は、実施例1と同様な方法で培養した。
[比較例2]
比較例1よりも培地の量を増やして、培地深さを10mmとした以外は、比較例1と同様にして培養を行った。
[iPS細胞培養]
<培地・試薬の調製>
液体窒素中で凍結保存したヒト由来iPS細胞(iPS細胞研究所提供)を用いた。
使用試薬は以下の通りである。
・Essential 8(製品番号A1517001、Gibco)
・iMatrix-511 silk(製品番号387-10131、Nippi)
・CultureSureTMY-27632(製品番号 034-24024、富士フィルム和光純薬)
・0.5mol/L-EDTA溶液(pH8.0)(製品番号06894-85、ナカライテスク)
・PBS(-)(製品番号166-23555、富士フィルム和光純薬)
・2.5%Trypsin(製品番号15090-046、Gibco)
・Trypan blue(製品番号145-0022、Bio-Rad)
・ホルムアルデヒド溶液(製品番号064-00406、富士フィルム和光純薬)
・anti-Troponin T-C(CT3)(製品番号SC-20025、Santacruz)
・anti-Mouse IgG(H+L)Alexa Fluor 647(製品番号A-21236、Thermo Fisher)
・Saponin from Soybeans(製品番号192-08851、富士フィルム和光純薬)
・心筋分化誘導培地(低分子化合物群A、低分子化合物群B):国際公開第2015/182765号段落[0064]及び[0065]の記載に従う。
培地及び試薬の調製は以下の通りに行った。
・iPS細胞培地:Essential 8は使用時に室温にしてから使用した。解凍時と継代時に使用する培地はCultureSureTMY-27632を3μMになるように添加し使用した。
・心筋分化誘導培地:使用時に心筋分化誘導培地に低分子化合物群A又は低分子化合物群Bを混合し、37℃に加温してから使用した。
・剥離液:0.5mol/L-EDTA溶液(pH8.0)をPBS(-)で0.5mMに調整した。使用時には37℃に加温してから使用した。
・Y-27632溶液:PBS(-)で10mMに調整した。
・シングル化溶液:2.5%TrypsinをPBS(-)で終濃度0.25w/v%に調整した。使用時には37℃に加温してから使用した。
・サポニン溶液:Saponin from SoybeansをPBS(-)で0.1%溶液に調整した。
・保存条件:Y-27632溶液、シングル化溶液、その他心筋細胞培養に必要な試薬は冷凍保存し、培地・剥離液は冷蔵保存した。
<培養スケジュール>
細胞培養は下記のスケジュールで行った。iPS細胞は起眠から5継代した細胞を分化誘導に供した。サンプリングは心筋細胞の拍動が全体的に確認される12日目と、より成熟化させた19日目で行った。
Day-1:試薬調製及び準備
Day0:iPS細胞起眠
Day3~:iPS細胞の継代(day3、6、10、15、19 合計5継代)
Day23:iPS細胞の心筋分化誘導開始(0日目)
Day45:心筋分化誘導12日目のサンプリング及びシングルセル化(FACS、遺伝子発現解析)
Day39:心筋分化誘導19日目のサンプリング及びシングルセル化(FACS、遺伝子発現解析)
<iPS細胞培養方法>
iPS細胞の解凍
1)iPS細胞の解凍前に、チューブに培地を10mL入れて37℃ウォーターバスで加温した。
2)凍結iPS細胞チューブは37℃ウォーターバスで半溶解状態にし、クリーンベンチ内で加温しておいた培地10mLの入ったチューブにゆっくり移した。
3)100×gで室温、3分間の遠心後、上清を除去した。
4)新しい培地10mLを加えて軽く混和し、0.13μg/cm2のiMatrix-511 silkを細胞懸濁液に添加後、10cm dishに播種し、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。
iPS細胞の継代
1)位相差顕微鏡で細胞の状態を観察し、1:12-1:20の間で継代のスプリット比を決めた。
2)培地上清をチューブに回収した。PBS(-)で洗浄後、剥離液を添加し、37℃、5%CO2インキュベーターで約5分間反応させた。
3)反応後、ディッシュを傾けて細胞を剥がし、回収しておいた上清を使って細胞をチューブに回収した。
4)100×gで室温、3分間の遠心後、上清を除去した。
5)新しい培地10mLを加えて軽く混和し、0.13μg/cm2のiMatrix-511 silkを細胞懸濁液に添加後、10cm dishに播種し、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。
<心筋分化誘導方法>
実験スケジュールの概略を図1に示す。
0日目:約50%コンフルエントのiPS細胞を剥離液で剥がした後、100×gで室温、3分間遠心した。上清除去後に新しい培地で懸濁し、未処理の55cm2dishに播種して37℃、5%CO2インキュベーターで4時間静置した。その後、細胞をチューブに回収し、低分子化合物群Aを添加した心筋分化誘導培地に置換した。実施例又は比較例の24ウェルプレートに2×105cells/ウェルで細胞を播種し、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。実験はtriplicateで行った。
3日目:培地を低分子化合物群Bの入った心筋分化誘導培地に交換した。
5日目:培地を低分子化合物群Bの入った心筋分化誘導培地に交換した。
7日目以降:3~4日ごとに心筋分化誘導培地で培地交換を行った。
なお、分化誘導3日目、7日目の培地交換時にウェルを交換した。
<細胞塊のシングルセル化(分化誘導12日目と19日目のサンプリング)>
1)細胞塊(心筋塊であると考えられる)をチューブに回収し、細胞塊が自然沈降した後、上清を除去した。
2)シングル化溶液を1mL添加し、37℃ウォーターバスで30分前後加温し、細胞塊がシングルセルになるまで撹拌した。
3)3倍量のPBS(-)3mLで希釈し反応を停止した。
4)細胞懸濁液のセルカウントを行い、後述のFACS、又はRNA抽出に用いた。
<FACSサンプルの調製>
シングル化した細胞1×106cellsをチューブに移し、300×gで室温にて5分間の遠心後に上清を除去してPBS(-)1mLで再懸濁した。細胞懸濁液にホルムアルデヒド(富士フイルム和光純薬)を終濃度4体積%となるように加え、室温で5分間静置した。300×gで室温にて3分間遠心し、上清を除去後、サポニン溶液を1mL加えて懸濁し、2本のチューブにそれぞれ0.7mL(サンプル)と0.3mL(ネガティブコントロール)ずつ分注した。再度遠心して上清を除去した後、サンプルには一次抗体としてanti-Troponin T-C(CT3)抗体を1:1000で添加したサポニン溶液0.5mLを添加した。ネガティブコントロールには抗体を添加していないサポニン溶液0.5mLを加えて細胞を懸濁し、4℃で一晩抗体を反応させた。翌日、一次抗体を除去し、二次抗体anti-Mouse IgG(H+L) Alexa Fluor 647を1:500で添加したサポニン溶液0.5mLを加えて遮光し、室温で1時間反応させた。1時間後、二次抗体を添加したサポニン溶液を、PBS(-)0.5mLに置換し、FACS(AccuriTM CS6 Plus(BD社製))で解析を行った。
<RNA抽出とRT-qPCR>
MYL2(心筋細胞の一つである心室筋特異的遺伝子)、MYL7(心筋細胞の一つである心房筋特異的遺伝子)を解析対象とした。
(1)試薬及び機器
RNA抽出:miRNeasy Mini Kit(品番号217004、キアゲン社製)
cDNA合成:ReverTra Ace(R) qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(製品番号FSQ-301、TOYOBO社製)
qPCR反応:PowerUp SYBR Green Master Mix(製品番号A25776、Thermo Fisher社製)
QuantStudio 6 Flex Real-time PCR system(Thermo Fisher社製)
Nanophotometer 分光光度計 C40(ワケンビーテック株式会社製)
(2)RNA抽出
心筋細胞への分化誘導12日目と19日目の培養上清を除去した後、QIAZOL(キアゲン社製)0.5mLを添加し、懸濁して細胞を溶解し、溶解物を1.5mlチューブに回収した。以降はmiRNeasy Mini Kitに添付のプロトコルに従ってRNAを抽出し、NanophotometerC40でRNA濃度を測定した。
(3)RT-qPCR
上記で抽出したRNA 1μgを用いて、PowerUp SYBR Green Master Mixに添付のプロトコルに従って逆転写反応を行いcDNAの合成を行った。その後、6ngのcDNAを用いてスタンダード法にてqPCR反応を行った。検量線は10ng/μLの各cDNAサンプルを10μLずつ集め、そこから1/10希釈して5点作製した。
<心筋純度の評価>
分化誘導19日目の細胞塊をシングルセル化したあと、FACSにより、cTnT陽性率(cTnT陽性細胞数/細胞塊を構成する全細胞数×100)を算出し、心筋純度(%)とした。結果を図2に示す。
Tプレート(実施例1、2)及びFプレート(実施例3、4)は、分化誘導19日目において、PSプレート(比較例1、2)に比べて心筋純度が高かった。また、液深さは5mmよりも10mmの方が心筋純度が高かった。分化誘導12日目においても同様の結果であった。
<拍動数の評価>
分化誘導19日目の細胞の動画を撮影し、任意のスフェロイドのBPM(1分間における拍動数)を算出した。結果を図3に示す。
Tプレート(実施例1、2)及びFプレート(実施例3、4)は、分化誘導19日目において、PSプレート(比較例1、2)に比べて拍動数が高かった。また、液深さは5mmよりも10mmの方が拍動数が高かった。
<心筋特異的遺伝子発現の評価>
分化誘導12日目と19日目の細胞から抽出したRNAを用い、QuantStudio 6 Flex Real-time PCR systemにて遺伝子発現量の解析を行った。使用したプライマーの配列を表2、PCR条件を表3に示す。遺伝子発現量は、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の遺伝子発現量を1とした場合の相対値で示す。結果を図4~図7に示す。
Figure 2022157708000005
Figure 2022157708000006
図4より、分化誘導12日目におけるMYL2の発現量は、Tプレート(実施例1、2)及びFプレート(実施例3、4)が、PSプレート(比較例1、2)に比べて高かった。また、液深さは5mmよりも10mmの方がMYL2の発現量が高い傾向があった。
図5より、分化誘導12日目におけるMYL7の発現量は、Tプレート(実施例1、2)及びFプレート(実施例3、4)が、PSプレート(比較例1、2)に比べて高かった。また、液深さは5mmよりも10mmの方がMYL7の発現量が高かった。
図6より、分化誘導19日目におけるMYL2の発現量は、Tプレート(実施例1、2)及びFプレート(実施例3、4)が、PSプレート(比較例1、2)に比べて高かった。また、液深さは5mmよりも10mmの方がMYL2の発現量が高かった。
図7より、分化誘導19日目におけるMYL7の発現量は、Tプレート(実施例1、2)及びFプレート(実施例3、4)が、PSプレート(比較例1、2)に比べて高かった。また、液深さは5mmよりも10mmの方がMYL2の発現量が高かった。
図4、図6より、Tプレート(実施例1、2)及びFプレート(実施例3、4)を用いた場合のMYL2の発現量は、分化誘導12日目から分化誘導19日目にかけて増加した。
図5、図7より、Tプレート(実施例1、2)及びFプレート(実施例3、4)を用いた場合のMYL7の発現量は、分化誘導12日目から分化誘導19日目にかけて減少した。
<形態観察>
位相差顕微鏡を使用して、それぞれの細胞の様子を観察した。結果を図8、図9に示す。
実施例1、2、3、4では、比較例1、2に比べて、大きさ及び形状が均一である複数のスフェロイドが形成されていた。
以上の結果から、本発明の分化方法を用いると、人工多能性幹細胞が心筋細胞へと効率よく分化することが明らかになった。また、分化した心筋細胞はスフェロイドを形成しやすい。したがって、本発明の分化方法は創薬スクリーニング用途や診断用途、再生医療用途に用いる心筋細胞を作製するためにも好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. 培養容器の培養面に多能性幹細胞を播種する工程(A)と、多能性幹細胞の分化を誘導する工程(B)とを含む、多能性幹細胞の分化方法であって、前記培養容器の培養面の少なくとも一部が、下記要件(1)及び(2)を満たすポリオレフィン系樹脂を含む基材から形成されている、多能性幹細胞の分化方法。
    (1):JIS K 7361-1に準拠して測定した厚さ50μmの上記ポリオレフィン系樹脂のシートの全光線透過率が90%以上である
    (2):温度23℃、湿度0%の時の酸素透過係数が100~3000cm3×mm/(m2×24h×atm)である
  2. 前記工程(B)が、多能性幹細胞の心筋細胞への分化を誘導する工程である、請求項1に記載の多能性幹細胞の分化方法。
  3. 前記ポリオレフィン系樹脂が、4-メチル-1-ペンテン重合体(X)又は下記一般式(1)で表される繰返し構造単位を含有するフッ素含有環状オレフィン重合体(Y)である、請求項1又は2に記載の多能性幹細胞の分化方法。
    Figure 2022157708000007
    (式(1)中、R1~R4のうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキルである。R1~R4がフッ素を含有しない基である場合、R1~R4は、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルコキシ、又は炭素数2~10のアルコキシアルキルから選ばれる。R1~R4は互いに同一であっても異なっていてもよい。R1~R4は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
  4. 前記4-メチル-1-ペンテン重合体(X)が、4-メチル-1-ペンテンとエチレン及び炭素数3~20のα―オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種の共重合体(x1)である、請求項3に記載の多能性幹細胞の分化方法。
  5. 前記フッ素含有環状オレフィン重合体(Y)の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が、1.3~5.0である、請求項3に記載の多能性幹細胞の分化方法。
  6. 前記多能性幹細胞が、人工多能性幹細胞である、請求項1~5のいずれか1項に記載の多能性幹細胞の分化方法。
  7. 前記工程(B)が、プロテインフリー心筋分化誘導(PFCD)法によるものである、
    請求項2~6のいずれか1項に記載の多能性幹細胞の分化方法。
  8. 心筋純度を増加させる、請求項2~7のいずれか1項に記載の多能性幹細胞の分化方法。
  9. 心筋細胞のMYL2(Myosin regulatory light chain 2)遺伝子の発現を増加させる、請求項2~8のいずれか1項に記載の多能性幹細胞の分化方法。
  10. 心筋細胞の拍動数を増加させる、請求項2~9のいずれか1項に記載の多能性幹細胞の分化方法。
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