本発明を適用可能な実施例1の表示装置について説明する。
図1に本発明を適用できる表示装置を示す。
表示装置1は、導光板(導光素子)2、入射光学系3、表示素子4を有する。
表示素子4から放射された発散光束は、入射光学系3により平行光束に変換されて導光板2の入射面に結合され、結合された光束は導光板2の内部を伝搬した後、導光板2の射出面から射出されて観察者の眼5に入射する。このように、本実施例の表示装置1は、観察者が導光板2の射出面側の所定の位置に眼5を置いた際に、観察者の眼5に画像(映像を含む)を表示することが可能な表示装置である。表示素子4としては、透過型液晶ディスプレイ(LCD)、反射型液晶ディスプレイ(LCOS)、デジタルミラーデバイス(DMD)、有機エレクトロルミネッセンス(OLED)、空間変調装置(SLM)などを用いることができる。
図2に本実施例の導光板を示す。
本実施例の導光板2は、光束が導光板内部を水平方向(第1方向)に伝搬する水平導光部21と垂直方向(第2方向)に伝搬する垂直導光部22とを有する。水平導光部21は、水平伝搬部211と水平ミラー群212とを有し、水平伝搬部211の下に水平ミラー群212を配置している。また、垂直導光部22は、垂直伝搬部221と垂直ミラー群222とを有し、垂直伝搬部221の観察者の眼5を配置する側に垂直ミラー群222を配置している。そして、水平ミラー群212の下に垂直伝搬部221を配置して、水平導光部21と垂直導光部22とを連結し、導光板2を構成している。
図3(A)は、水平導光部の上面図、図3(B)、図3(C)は水平導光部の正面図である。
図3(A)、図3(B)には、観察者の眼に対する画角の中心を通過する光束(導光板からX方向と平行に射出する光束)、すなわち中心画角の光束が、水平導光部内を伝搬する様子も示した。
図3(A)ならびに図3(B)を用いて、水平導光部内の光束伝搬について説明する。
水平導光部21は、水平伝搬部211と水平ミラー群212を備え、水平伝搬部211の下面2114の一部と水平ミラー群212の上面とを接合して構成している。この接合面、すなわち、水平伝搬部211と水平ミラー群212の間には、入射した一部の光束が透過し且つ一部の光束が反射する透過反射膜を配置している。
水平伝搬部211は、正面2111、背面2112、上面2113、下面2114、左面2115、右面2116を有する立方体であり、長さL、高さH、幅Wとしたときに、長さLが最も大きく、次に高さHが大きく、幅Wが最も小さい構成である。水平伝搬部211は水平方向(Z軸方向)が長手の立方体であり、上面2113が垂直導光部22を配置したY方向を向くように配置した。また、水平ミラー群212を水平伝搬部の上面2113(第1反射面)と対向させて配置している。
水平伝搬部の左面2115を入射面としており、図示しない入射光学系からの光束がその入射面から入射する。また、水平伝搬部の下面2114(第1射出面)のうち水平ミラー群212と接合されている領域を射出領域としており、水平伝搬部の少なくとも一部を通過した光がその射出領域から射出する。入射光束のうち中心画角の光束は、水平伝搬部211の長手方向の軸(長軸)Axに対して、XZ断面方向に±26°、YZ断面方向±32°の4つの角度で平伝搬部211内部に入射され、水平導光部21内部の伝搬光束となる。中心画角の光束がXZ断面方向、YZ断面方向それぞれにプラスとマイナスの傾きを持ち、4つの角度で入射する理由は、実施例2の図9(A)、図9(B)を用いて後程詳述する。ここでは簡単に説明する。水平導光部に接続される入射光学系3の接続部32には、背面2112と上面2113にそれぞれ平行な平面部(不図示)が設けられている。その平面部で内面反射されて水平導光部に入射する光束とその平面部で内面反射せずに水平導光部に入射する光束とが、XZ断面方向及びYZ断面方向のそれぞれで生じるため、4つの角度で入射することになる。本実施例では入射光学系と水平導光部21を同じ材料で構成しており、水平導光部21内部でも伝搬光束は長軸Axに対してXZ断面方向に±26°、YZ断面方向に±32°の角度を有する。このとき、長軸Axに対する伝搬光束が成す角度をXZ断面方向とYZ断面方向でそれぞれXZ伝搬角、YZ伝搬角と呼ぶ。
図3(A)において、伝搬光束511と513は、XZ伝搬角+26°の光束で、伝搬光束512と514は、XZ伝搬角−26°の光束であり、それらの伝搬光束は、正面2111と背面2112で全反射を繰り返して右面2116まで到達する。
図3(B)において、伝搬光束511と512は、YZ伝搬角+32°の光束で、伝搬光束513と514は、XZ伝搬角−32°の光束であり、それらの伝搬伝搬光束は、上面2113で全反射、下面2114で反射を繰り返して右面2116まで到達する。
このように、中心画角の光束を含む全画角の伝搬光束は、水平伝搬部211内で2次元方向(XZ断面方向とYZ断面方向)に角度を有して伝搬しており、伝搬光束が水平伝搬部211内を螺旋状に伝搬するように構成している。
伝搬光束は、水平伝搬部211の水平方向に平行な4面(正面2111、背面2112、上面2113、下面2114)で内面反射を繰り返しながら右面2116まで水平方向に伝搬される。水平伝搬部の下面2114に到達した伝搬光束は、接合面に設けた透過反射膜によって一部が反射、一部が透過し、透過した伝搬光束は水平ミラー群212へ入射する。水平ミラー群212には、YZ断面内に傾きを有した複数枚の水平取出ミラー2120をZ軸方向に並べて配置しており、水平ミラー群212へ入射した伝搬光束を水平取出ミラー2120で反射してY軸方向に偏向し、垂直導光部へ入射させている。
前述したように、本実施例では一つの画角に対して、伝搬角はXZ断面方向、YZ断面方向それぞれにプラス方向とマイナス方向があり、全部で4方向となる。このように配置することで、水平伝搬部211内を伝搬光束で満たすことができ、水平伝搬部211のどの位置で伝搬光束を取り出しても観察者の眼に入射する光束の光量分布を均一にすることができる。
図示しないが、水平導光部21内部の伝搬角について、各画角光束は中心画角光束に対して、それぞれXZ断面方向に0°〜±7.7°、YZ断面方向に0°〜±13.5°の角度を有している。屈折率N=1.4以上2.0以下の導光板から屈折率N=1.0の空気層へ射出して観察者の眼に入射する際には、射出面で屈折するために画角は伝搬角よりも大きくなる。XZ断面方向が垂直方向なので、XZ伝搬角は垂直画角に変換されて0°〜±11.6°、YZ断面方向が水平方向なのでYZ伝搬角が水平画角に変換されて0°〜±20.0°を有する表示装置となる。
水平伝搬部内の伝搬角ωと水平伝搬部の側面(上面、下面、正面、及び背面)への入射角Ψとはω=90°−Ψの関係にある。水平伝搬部内の伝搬光束の伝搬角を大きく設定すれば、水平伝搬部の材料の屈折率によっては水平伝搬部の側面で全反射せずに透過してしまう状況が発生する。例えば、水平伝搬部の材料が合成石英(Nd=1.45857)であった場合、臨界角は43.28°となり、伝搬角ω=90°−43.28°=46.72°以上で水平伝搬部の側面を透過してしまう。
本実施例では、水平伝搬部内において2次元方向に伝搬させており、2次元方向の合成の入射角が1次元方向に伝搬させた場合と比較して水平伝搬部の側面への入射角を大きくすることができる。水平伝搬部内における伝搬角ωは条件式(1)の範囲とするのが良い。
10°≦ω≦50°… 条件式(1)
上限を超えると、水平伝搬部の側面への入射角が材料によっては臨界角を下回る。下限を下回ると水平ミラー群212で反射された偏向光束群に多くの空隙が生じてしまう。後者については、図4を用いて後程詳述する。
本実施例では、水平伝搬部内で、XZ断面方向の伝搬角(XZ伝搬角ωxz)を+18.3°〜+33.7°、−18.3°〜−33.7°とし、YZ断面方向の伝搬角(YZ伝搬角ωyz)を+18.5°〜+44.5°、−18.5°〜−44.5°とした。なお、2次元方向の伝搬角ωが“90°−臨界角”未満になる範囲で1次元方向のXZ伝搬角又は1次元方向のYZ伝搬角を“90°−臨界角”以上に設定して、広画角の光束を光量ロスを低減しつつ伝搬することも可能である。
図3(C)には画角光線の伝搬の様子を示す。
図3(C)を用いて各画角光束について説明する。
図3(C)中の画角光束511はYZ伝搬角+32°、画角光束523はYZ伝搬角−45°、画角光束533はYZ伝搬角−19°で水平伝搬部211内を伝搬している。各画角の伝搬光束はプラス方向とマイナス方向の伝搬角を有するが、図3(C)中にはそのうちの1つを表示している。
伝搬光束511、523、533は、水平伝搬部211の上面、下面、正面、及び背面で内面反射(全反射)を繰り返しながら伝搬する。伝搬光束が透過反射膜を塗布した下面2114に到達した際、伝搬光束の一部は下面2114を透過して水平ミラー群212へ入射し、他の一部は下面2114で反射して水平伝搬部211内を伝搬する。
水平ミラー群212にはYZ断面内に傾きを有した複数の取出ミラー2120を配置しており、水平ミラー群212へ入射した光を取出ミラー2120で反射してYZ断面方向の伝搬角を偏向し、水平ミラー群212の下面を透過して垂直導光部へ入射させる。
このとき、水平ミラー群212を水平伝搬部211の垂直導光部22側へ配置することで、水平伝搬部211内を伝搬する際の反射回数を減らし、光量ロスを低減することができる。
これについて詳しく説明する。観察者が真っ直ぐ前を見るときは、導光板の垂直導光部22の水平方向(Z軸方向)中央から射出した光束が、観察者の眼に届くことで画像を表示する。観察者が左方向を見るときは垂直導光部22の左側から射出した光束が、観察者が右方向を見るときは垂直導光部22の右側から射出した光束が、観察者の眼に届くことで画像を表示する。図3(C)中の画角光束511はYZ伝搬角+32°であり、水平ミラー群212で反射された光束はYZ断面では真っ直ぐ下に進み、眼に対する画角の中央を進む光束に相当する。画角光束523はYZ伝搬角−45°であり、水平ミラー群212で反射された光束はYZ断面では右下方向に進み、眼に対する画角の左方向を進む光束に相当する。画角光束533はYZ伝搬角−19°であり、水平ミラー群212で反射された光束はYZ断面では左下方向に進み、眼に対する画角の右方向を進む光束に相当する。したがって、画角光束511は水平ミラー群212の中央付近から射出すると観察者の眼に入る有効光束となる。画角光束523は水平ミラー群212の左側(水平伝搬部の左面2115側)から、画角光束533は水平ミラー群212の右側(水平伝搬部の右面2116側)から射出すると観察者の眼に入る有効光束となる。このように、伝搬角の絶対値が大きい光束ほど水平ミラー群212の水平伝搬部の入射面(左面2115)側から射出すると有効光束になるように構成している。伝搬角の絶対値が大きい場合、伝搬距離に対する水平伝搬部211内部での反射回数が多くなり、有効光束となる位置まで伝搬する際の反射回数が増えて光量ロスの問題が生じる。特に、水平伝搬部の下面2114と水平ミラー群との接合面には透過反射膜が設置してあり、接合面(もしくは、水平伝搬部の下面2114の接合領域)での反射率が50%程度である場合は、反射回数に応じて伝搬光束の光量が低下する。これは、水平伝搬部の入射面2115から離れた位置ほど伝搬光束の光量が低下することとなるが、全画角における光量分布を均一化するためには、光量が低いところに合わせることとなり光量ロスが問題となる。
本実施例のように、水平伝搬部211と垂直伝搬部221との間に水平ミラー群212を配置すると、伝搬角の絶対値が大きい光束ほど水平ミラー群212の水平伝搬部の入射面2115側から射出すると有効光束になるように構成することができる。これにより、水平伝搬部211内での反射回数を減らすことができるので、光量ロスの低減が可能となる。
図4(A)、図4(C)、図4(D)は本実施例における水平ミラー群212の説明図、図4(B)は比較例の水平ミラー群212の説明図である。
図4(A)〜図4(D)を用いて本実施例における水平ミラー群212の複数の取出ミラー2120の構成を説明する。
水平ミラー群212としては、43枚の水平取出ミラー2120をZ軸方向に互いに平行に並べたものを用いている。図4(A)には水平取出ミラー2120の一部を模式的に表示している。43枚の水平取出ミラー2120の法線は、Y方向とZ方向とを含む平面内で、YZ方向に61°傾いている。水平取出ミラー2120には、反射率及び透過率が異なる2種類の反射領域2121、2122が設けられている。水平取出ミラー2120の水平伝搬部に近い第1反射領域2121には反射率が約45%、透過率が約45%と反射率と透過率の比が約1:1のハーフミラーを配置している。一方、水平取出ミラー2120の水平伝搬部から遠い第2反射領域2122には、反射率が約85%、透過率が1%以下の高反射ミラーを配置している。すなわち、水平取出ミラー2120の高さ(Y方向)の上半分をハーフミラー2121、下半分を高反射ミラー2122とした。これにより、水平伝搬部211からの光束のうち、ハーフミラー2121への入射光束の一部を反射して垂直導光部の方向へ偏向し、入射光束の他の一部を透過させて次の取出ミラー2120の高反射ミラー2122で反射して垂直導光部の方向へと偏向できる。つまり、水平取出ミラー2120が第1及び第2ミラーを有する場合、第1ミラーの第1反射領域を透過した光が第2ミラーの第2反射領域で反射され垂直導光部に入射し、第1ミラーの第2反射領域で反射した光は第2ミラーを介さず垂直導光部に直接入射する。この際、取出ミラー2120で垂直導光部の方向へ偏向された偏向光束群は、水平伝搬部211内の伝搬光束よりも光束幅を拡大している。水平伝搬部211内の伝搬光束の光束幅はWp1、Wp2、Wp3であったが、水平取出ミラー2120で反射された後の偏向光束群の幅はWr1、Wr2、Wr3となる。Wr1>Wp1、Wr2>Wp2、Wr3>Wp3と水平取出ミラー2120で反射された後の光束群の幅が常に大きく、この光束幅で観察者の眼に届くので水平導光部によって水平方向に瞳拡大する効果を有する。
また、図4(B)に比較例を示した。比較例の水平ミラー群は、本実施例の構成とは異なり水平取出ミラー2120全領域を高反射ミラーとしている。水平取出ミラーで偏向した偏向光束群も本実施例と同様に伝搬光束の光束幅よりも拡大されているが、偏向光束群には多くの空隙(光束が存在しない部分)が生じてしまい、偏向光束群内の光量の均一性が問題となる。
しかしながら、本実施例のように水平取出ミラー2120の一部にハーフミラー2121を配置した場合は、ハーフミラー2121によって反射光束と透過光束に分離されるので、反射光束の光束幅を拡大する際に生じた空隙を透過光束で埋めることができる。そのため、ハーフミラー2121の垂直導光部側に高反射ミラーを配置し、ハーフミラー2121の透過光束は、隣の水平取出ミラー2120の高反射ミラー2122で反射して、上述の空隙を埋める構成とした。
このように、水平取出ミラー2120に入射する光束を2光束に分離しつつ垂直導光部の方向へと偏向させることにより、従来の偏向光束群の光束幅の拡大という効果に加えて、拡大した偏向光束群内の光量分布を均一化する効果も得ている。
水平伝搬部の上面2113で全反射した伝搬光束が水平取出ミラー2120へ到達する。水平取出ミラー2120の第1反射領域を第2反射領域より水平伝搬部の上面2113側に配置する、すなわち第1反射領域は第2反射領域よりも水平伝搬部の上面2113から距離を短く配置する。この構成を採用することで、偏向光束群による瞳拡大と光量の均一性を実現することができる。
本実施例の水平取出ミラー2120はハーフミラー2121と高反射ミラー2122とを上下半分ずつに分けて配置の比率を1:1としたがこれに限ったものではなく、配置の比率は2:1や3:1、4:1などとしてもよい。さらには、全てをハーフミラー2121としてもよい。これらと比べて、ハーフミラー2121と高反射ミラー2122を1:1に配置すると、ハーフミラー2121の反射した光束の間にハーフミラー2121を透過した光が高反射ミラー2122で反射した光束を配置する構成にできる。この構成は、光束幅の拡大と、拡大した光束内の光量分布の均一化ならびに光利用効率の向上に好適である。さらに、ハーフミラー2121は反射率45%、透過率を45%に限ったものではなく、振幅分割する振幅分割ミラーであればよい。例えば、反射率41%、透過率49%として、透過率を反射率よりも高くすることにより、ハーフミラーでの反射光束とハーフミラーを透過して高反射ミラーで反射した光束との光量がほぼ同等になって光束群内の光量分布をより均一に補正することができる。また、反射率と透過率の比率が2:1や1:2となっても実用上問題なく使用できる。
また、水平取出ミラー2120のうち、最後のミラー(最も入射面2115から遠いミラー)は、それ以降にミラーが無く有効部が無いので、第1領域2121、第2領域2122を共に高反射ミラーとして偏向光束の光量を増やしている。
また、複数の水平取出ミラー2120の間隔は眼5の瞳径4mmよりも小さくすることが好ましく、2mm以下と瞳径よりも十分に小さい方がより好ましい。しかし、水平取出ミラー2120の間隔が0.5mmよりも小さいと開口数が小さくなって解像力に問題が生じる為、水平取出ミラーの間隔Pは下記の範囲が好ましい。
0.5mm ≦ P ≦ 2.0mm … 条件式(2)
図1に示したように、観察者が表示画像を見るとき、画像の左側の画角を担当する光束は導光板2の左側から発せられ、画像の右側の画角を担当する光束は導光板2の右側から発せられて観察者の眼に入射する。
本実施例のように、水平ミラー群212を水平伝搬部211と垂直導光部22との間に配置すれば、伝搬角が大きい光束が入射面に近い場所(図2の導光板の左側)で必要になり、伝搬角が小さい光束は入射面から遠い場所(図2の導光板の右側)で必要になる。
水平伝搬部211内の伝搬において、正面2111と背面2112及び上面2113では全反射するが、下面2114では透過反射膜による反射のため反射率が100%よりも低く、反射回数に応じで伝搬光の光量が低下する。
本実施例のように水平ミラー群212を水平伝搬部211と垂直導光部22との間に配置すると、各画角における反射回数を揃えるとともに、水平伝搬部の下面2114での反射回数を減らして光利用効率が向上できる。このように、伝搬角と必要となる場所を好適な関係に設定できる点にメリットがある。さらには、水平伝搬部の下面2114とは異なり、水平ミラー群の下面2124では反射させる必要がない。したがって、水平ミラー群の下面2124の光束が射出する領域と垂直伝搬部221の光束が入射する領域とを接合することができ、水平導光部21と垂直導光部22とを容易に一体化することができる。これにより、水平導光部21と垂直導光部22と位置関係を高精度に維持することが可能となり、常に良好な画像を表示することが可能となる。
このように、本実施例の構成は、特許文献2や特許文献3のように水平ミラー群212を水平伝搬部211の上面2113側へ配置した場合と比べて、反射透過膜による反射回数低減による光利用効率向上、導光板の一体化のメリットがある。また、本実施例の構成は、特許文献1のように水平ミラー群212を水平伝搬部211の中へ配置し且つ水平伝搬部211の下面で最後に反射した光束がミラー群によって反射される構成にした場合と比べても、同様のメリットがある。
本実施例の水平ミラー群212は、隣り合う水平取出ミラー2120の間隔は常に等しく1mmに設定しており、高さ(Y方向)を水平取出ミラー2120の位置に応じて変化させている。水平伝搬部の入射面2115近傍にある水平取出ミラーは高く、入射面2115から離れるほど(Z方向の距離に応じて)高さを低く設定している。水平伝搬部の上面2113で全反射した伝搬光束が水平取出ミラー2120に入射するので、水平伝搬部の入射面2115から離れるにつれて水平伝搬部の上面2113との距離を長くすると良い。これは、前述したように、有効光束になる伝搬光束の伝搬角の絶対値が水平伝搬部の入射面2115からの距離に応じて小さくなるため、水平取出ミラー2120の高さをその伝搬角の絶対値に応じて低くしたものである。水平伝搬部の入射面2115側は大きい伝搬角±45°の伝搬光束が有効光束になる領域であり、この伝搬光束が水平取出ミラー2120で偏向した際に光束の隙間が少なくなるように、水平取出ミラー2120を高く3.0mmに設定している。水平ミラー群212の中央付近は中央値の伝搬角±32°の伝搬光束が有効光束になる領域であり、水平取出ミラー2120を中程度の高さ1.8mmに設定している。水平ミラー群212の入射面と反対側は小さい伝搬角±19°の伝搬光束が有効光束になる領域であり、水平取出ミラー2120を低く1.2mmに設定している。このように、有効光束になる伝搬光束の伝搬角に応じて水平取出ミラー2120の高さを変更している。
なお、図4(A)及び図4(B)では、複数の水平取出ミラー2120の高さを全て異ならせて直線状に高さを減少させている。しかし、数枚ごとに高さを減少させることによってステップ状に高さを減少させてもよいし、非線形に(例えば、サインカーブに沿って)高さを減少させてもよい。また、それらを組み合わせてもよい。
図4(C)、図4(D)は水平取出ミラーの高さの決定方法についての説明図である。
図4(C)で水平取出ミラー2120の高さの上限について説明する。
本実施例の水平取出ミラー2120には、第1領域2121はハーフミラー、第2領域は高反射ミラーとなっており、第1領域2121と第2領域2122の境界へ向かう光線54が水平伝搬部211から水平ミラー群212へ入射している。
光線54が透過するハーフミラーをN枚以下とする為、光線54がN個前(入射面側)の水平取出ミラー2120の上端をかすめるようにN個前の水平取出ミラー2120の高さを規定し、それを基に対象の水平取出ミラー2120の高さの上限を設定した。光線54と平行で且つ第2領域2122で反射する光束が透過するハーフミラーの枚数は、好ましくは3枚以下とするのが良い。対象の水平取出ミラー2120の第1領域2121と第2領域2122との境界からN個前の水平取出ミラー2120の上端までのZ軸方向の間隔をLuとする。この間隔Luは、対象の水平取出ミラー2120とN個前の水平取出ミラー2120との間隔PNと、角度θ°傾けて配置した際のN個前の水平取出ミラー2120の幅の半分の幅Lu1と、から求められる。伝搬角ωの光線54が対象の水平取出ミラー2120の第1領域2121と第2領域2122との境界に入射すると仮定する。そのとき、N個前の水平取出ミラー2120の上端の位置では、対象の水平取出ミラー2120の第1領域2121と第2領域2122との境界の高さからLu×tanωの高さを光線54が通過する。ここで、N個前の水平取出ミラー2120は光線54を遮らない高さに設定すれば光線54と平行で且つ第2領域2122で反射する光束の透過枚数をN枚以下に設定できる。すなわち、N個前の水平取出ミラー2120の高さをH/2<Lu×tanωとすればよい。対象となる水平取出ミラー2120についても同様である。
図4(D)を用いて水平取出ミラー2120の高さの下限について説明する。
水平取出ミラー2120の上端に光線55が入射しており、水平取出ミラーの第1領域2121で反射され、対象の水平取出ミラー2120と1つ前の水平取出ミラー2120との間を通過している。この際、水平取出ミラー2120のピッチP1に対して、水平取出ミラー2120の高さHが低いと、1つ前の水平取出ミラー2120と反射光55との間隔Llが大きくなり、偏向光束群に隙間が生じてしまう。水平取出ミラー2120の高さの下限は、水平取出ミラー2120での偏向光束群に所定幅B以上の隙間を作らない配置とした。好ましくは、偏向光束群の隙間は所定幅B≦0.5mmとするのが良い。図中Ll1は水平取出ミラー2120のZ方向の距離でありLl1=H/tanθである。また、Ll2は光束55の反射光が反射位置から水平ミラー群の下面2124までにZ方向に進む距離でありLl2=H×tanαである。このような条件のもと、水平取出ミラー2120の高さHは条件式(3)の関係を満足させると良い。
条件式(3)でNは3以下とするのが良い。本実施例ではNを2とした。条件式の上限を上回るとハーフミラーの透過回数が多くなり、光量ロスが生じて問題となる。
本実施例では、条件式(3)で水平取出ミラーの高さを決定したが、これに限ったものではなく、垂直ミラー群における垂直取出ミラーの高さを条件式(3)で決定してもよい。
図5(A)に本実施例の表示装置における垂直導光部のXY断面図を示す。
図5(A)に示しように、垂直導光部22は、垂直伝搬部221と垂直ミラー群222とで構成している。垂直伝搬部221は平板であり、正面2211、背面2212、上面2213を研磨面としており、その他の3つの面には不要光を遮光する遮光膜(遮光部)を設けている。垂直伝搬部の上面2213を入射面としており、水平導光部からの光束がその入射面から入射する。また、垂直伝搬部の正面2211(第2射出面)のうち垂直ミラー群222と接合されている領域を射出領域としており、垂直伝搬部の少なくとも一部を通過した光がその射出領域から射出する。垂直伝搬部221に入射した伝搬光束は、垂直伝搬部221の垂直方向に平行な4面のうち2面以下(正面2211、背面2212)で内面反射を繰り返しながら垂直方向に伝搬される。垂直ミラー群222は垂直伝搬部の背面2212(第2反射面)と対向させて配置されている。垂直ミラー群222には、入射した光束の一部を透過し一部を反射する透過反射面を有した垂直取出ミラー2220を複数備え、垂直取出ミラー2220をXY断面内で傾け、かつ互いに平行にしてY軸方向に並べて配置している。垂直ミラー群222の外形は平板形状であり、正面2221、背面2222を研磨面としている。垂直伝搬部221、及び垂直ミラー群222は水平方向(Z軸方向)に最も幅が広く、次に垂直方向(Y軸方向)に幅が広く、奥行き方向(X軸方向)が最も幅が狭い。垂直ミラー群222を垂直伝搬部221の観察者の眼5側に配置し、垂直伝搬部221の正面2211と垂直ミラー群の背面2222とを接合して垂直伝搬部221と垂直ミラー群222とを一体化している。垂直伝搬部221の正面2211と垂直ミラー群222の背面2222との接合面には透過反射膜を塗布しており、入射した光束の一部を透過し一部を反射する構成とした。
図3(B)に示した水平導光部21の水平ミラー群212の下面2124と、図5に示した垂直導光部22の垂直伝搬部221の上面2213とを接合して水平導光部21と垂直導光部22とを一体化している。
水平導光部21の水平取出ミラーで反射された伝搬光束は、垂直伝搬部221の上面2213に入射して垂直伝搬部221内部へ入射し、垂直伝搬部221の正面2211と背面2212との間で内面反射を繰り返しながら垂直伝搬部221内を伝搬する。垂直伝搬部221の正面2211のうち垂直ミラー群の背面2222との接合している部分は、接合面に備えた透過反射膜によって、伝搬光束の一部が透過して垂直ミラー群222へ入射し、一部が反射して再び垂直伝搬部221内を伝搬する。
垂直ミラー群222には背面2212に対してXY方向に58°傾け、互いに平行に配置した垂直取出ミラー2220を28枚設置している。各垂直取出ミラー2220は垂直ミラー群222へ入射した伝搬光束の一部を反射して垂直ミラー群の正面2221の方向へ偏向するとともに、伝搬光束の一部を透過させる。1つ目の垂直取出ミラー2220を透過した伝搬光束は次の垂直取出ミラー2220によって反射され垂直ミラー群222の正面2221の方向へ偏向させる。
垂直ミラー群222の正面2221は垂直伝搬部221の背面2212と平行であり、垂直ミラー群222へ入射したままの角度では垂直ミラー群222の正面2221に入射した場合は入射角が臨界角を超えるので全反射される。一方で、垂直取出ミラー2220で偏向された伝搬光束は、垂直ミラー群222の正面2221への入射角が臨界角よりも小さくなり、伝搬光束が垂直ミラー群222の正面2221から観察者の眼5の方向(第3方向側)へ射出する。これにより、観察者の眼5に光束を入射させて画像を表示することができる。なお、入射角とは、光束の入射方向と入射面の法線とがなす角度のことである。
垂直導光部22においても、水平導光部21と同様に、1つの画角における伝搬光束が複数の垂直取出ミラー2220で偏向されるように構成することによって偏向光束群の光束幅を伝搬光束の光束幅よりも拡大している。
図6は本実施例の垂直取出ミラーの概要図である。
図6を用いて本実施例の垂直取出ミラーを説明する。
本実施例の垂直ミラー群222として、28枚の垂直取出ミラー2220を用いている。本実施例では、水平取出ミラーの枚数を、垂直取出ミラーの枚数よりも多くしている。これは、観察者の眼に対する画角のうち水平画角を垂直画角より大きく設定しており、更に、観察者の眼と水平ミラー群との距離が観察者の眼と垂直ミラー群との距離よりも大きいためである。この構成によって、観察者に良好な画像を常に提供することが可能となる。
図6には、28枚の垂直取出ミラー2220のうちの6枚の垂直取出ミラー2220を表示している。本実施例の垂直取出ミラー2220は、Z方向に長軸を持つ矩形のミラーである。本実施例の垂直取出ミラー2220としては、偏光分割する偏光分割ミラーである偏光ビームスプリッタ(PBS)用いている。より具体的には、サブ波長構造(Sub−Wavelength Structure:SWS)を用いた構造複屈折型のPBSの一種であるワイヤーグリッド偏光板を用いている。ワイヤーグリッド偏光板は、光学基板2225上(例えばガラス基板)に誘電体ワイヤ2226(金属ワイヤ、例えばアルミミウム)を波長以下(100nm程度)のピッチで多数並べてグリッド状に構成したものである。ワイヤーグリッド偏光板は、ワイヤーグリッド(金属ワイヤ)と平行方向2227に電場が振動する光(P偏光)を透過させ、ワイヤーグリッドと垂直方向に電場が振動する光(S偏光)を反射する特性がある。すなわち、ワイヤーグリッドの向きによって反射/透過の偏光方向を選択できる偏光ビームスプリッタである点が特徴である。
本実施例では、垂直取出ミラー2220のワイヤーグリッドの向きを交互に90°回転させて配置することにより、隣り合う垂直取出ミラー2220のワイヤーグリッドの向きが直交するように配置した。具体的には、垂直取出ミラー2220の1つである第1の偏光ビームスプリッタはワイヤーグリッドの向きを垂直取出ミラーの長軸に対して90°とし、隣の垂直取出ミラー2220である第2の偏光ビームスプリッタはワイヤーグリッドの向きを0°とした。最初に入射した垂直取出ミラー2220で伝搬光束を反射光束と透過光束とに分岐し、反射光束を垂直ミラー群の正面2221へ偏向し、透過光束を隣の垂直取出ミラー2220で反射して垂直ミラー群の正面2221へ偏向する構成とした。最初の垂直取出ミラー2220のワイヤーグリッドの向きと隣の垂直取出ミラー2220のワイヤーグリッドの向きは直交しているので、最初の垂直取出ミラー2220の透過光束は隣の垂直取出ミラー2220で全て反射される。第1偏光ビームスプリッタを透過した光は第2偏光ビームスプリッタで反射されて導光板2から射出し、第1偏光ビームスプリッタで反射した光は第2偏光ビームスプリッタを介さずに導光板2から射出させている。このため、伝搬光束が最初に入射した垂直取出ミラー2220で反射光束と透過光束を1:1に分岐し、透過光束は次に入射した垂直取出ミラー2220で反射することによって、1光線が2つの垂直取出ミラー2220から観察者の眼に向けて射出する。これによって、偏向光束群を形成し、偏向光束群の光束幅を伝搬光束の光束幅よりも拡大している。構造複屈折型のPBSの代わりに誘電体多層膜型のPBSを垂直取出ミラー2220として用いた場合には、最初に入射した垂直取出ミラー2220で透過したP偏光が、次に入射した垂直取出ミラー2220でも透過するようにしか構成できない。しかし、構造複屈折型のPBSは、ワイヤーグリッドの向きを変更することにより透過する偏光や反射する偏光の偏光方向を変更できる。したがって、本実施例のように構造複屈折型のPBSを垂直取出ミラー2220として用いれば、最初に入射した垂直取出ミラー2220で透過したP偏光を、隣の垂直取出ミラー2220で反射することが可能になる。なお、本実施例では、偏光度が低い光を放射する有機エレクトロルミネッセンス(OLED)パネルを表示素子4として使用している。しかし、偏光度の高い光を放射する液晶パネル等を表示素子4として使用する場合には、表示素子4と垂直ミラー群222との間の光路中に偏光解消板を設けても良い。具体的には、表示素子4と入射光学系3との間、又は、入射光学系3と導光板2との間に、偏光解消板を配置しても良い。
図7に本実施例の垂直取出ミラーの説明図を示す。
図7には5枚の垂直取出ミラー2220を表示している。
垂直導光部22内を伝搬角ωが小さい伝搬光束が導光しており、最初に到達した垂直取出ミラー2220で光量の半分が反射し、半分が透過する。反射した伝搬光束は垂直ミラー群の正面2221の方向へ偏向されて、観察者の眼へ向けて射出される。透過した伝搬光束は次の垂直取出ミラー2220で反射して垂直ミラー群の正面2221の方向へ偏向されて、観察者の眼へ向けて射出される。
このとき、最初の第1垂直取出ミラー2220を透過して次の第2垂直取出ミラー2220で反射された光束とその第2垂直取出ミラー2220に最初に入射して第2垂直取出ミラー2220で反射された光束とが並べて配置される。これにより、観察者の眼に向けて射出する偏向光束群における光束の隙間を減らし、観察者が各画角を均一な光量分布で観察可能な構成を実現している。
このとき、垂直取出ミラー2220の高さHと間隔Pが条件式(4)を満足するように配置することにより、偏向光束群内の光束の隙間を減らした適切な構成を実現できる。
上限を超えると、3枚以上の偏光板を通過する構成となり、取出ミラーに到達する伝搬光束に隙間が生じて、結果として偏向光束幅の隙間が大きくなり問題となる。下限を下回ると偏向光束と取出ミラーとの間隔が大きくなり、結果として偏向光束幅の隙間が大きくなり問題となる。
観察者の眼の瞳(瞳孔)の平均径(約4mm)よりも大きくなり、反射光束の隙間による光量分布が目立つようになって問題である。下限を下回ると反射光束の幅が狭く成りすぎて解像力が低下して問題となる。
また、構造複屈折型の偏光板は、誘電体膜多層膜型の偏光ビームスプリッタと比較して、入射角特性や波長特性が広い範囲で高い性能(反射率、透過率)を維持できる特徴がある。垂直取出ミラー2220では入射角の範囲が45°以上70°以下と広く、波長も可視光400nm以上700nm以下の広帯域で使用するため、構造複屈折型の偏光板が持つ広角かつ広帯域で高性能が必要となる。
このように、導光板から射出する光束幅を拡大し、かつ拡大した光束内の光量分布を均一化している。これにより、観察者の眼の位置にEMB(Eye Motion Box)を15mm確保しており、広画角な表示画像の周辺部を観察する際に瞳位置の移動があっても観察者の眼の瞳に表示画像からの光束を常に入射することができ、高品位な画像を提供できる。
図5(B)には、図5(A)に示した垂直導光部22と垂直導光部22内の伝搬光束に加えて、外界から垂直導光部22に入射した光束を一点鎖線で示した。
外界からの光束は、垂直伝搬部の背面2212、正面2211、垂直ミラー群の背面2222の順に透過し、更には垂直取出ミラー2220と垂直ミラー群の正面を透過して観察者の眼5に到達する。本実施例の垂直取出ミラー2220にはワイヤーグリッド偏光板を用いているため、ワイヤーグリッドの配列方向と垂直方向の偏光光束はワイヤーグリッド偏光板を透過することができる。これにより、観察者が垂直導光部22越しに外界を観察可能とし、光学シースルーの機能を発揮している。
更には、垂直取出ミラー2220から観察者の眼5までにおいて、表示素子4からの伝搬光束の光路と外界からの光束の光路とを同じ光路に重ねることができるので、外界に表示素子4からの画像を重ねて表示することが可能となる。
このように本実施例の表示装置では、観察者に水平方向、垂直方向共に広画角で高品位な表示画像を観察可能とするとともに、外界を光学シースルーで観察可能とし、両者を重畳して観察可能にすることができる。
そして、本実施例の表示装置における入射光学系3は、伝搬光束が、水平伝搬部211の上面2113及び垂直伝搬部221の背面2212で反射されるように、表示素子4からの光をXY断面内とYZ断面内の2方向において斜めに入射させている。これにより、水平方向と垂直方向の2次元方向において、観察者の眼に照射する光束幅を拡大することができ、2次元方向に広画角化している。
本実施例の表示装置では、水平導光部21の水平取出ミラー2120にハーフミラーとミラーの組合せを用いたが、これに限ったものではない。水平取出ミラー2120に、ハーフミラーだけ、または、ワイヤーグリッドの向きが交差している複数の偏光板の組合せを用いても良い。水平ミラー群212の構成として、前述の垂直ミラー群の構成(ワイヤーグリッド偏光板を交互に回転させて配置する構成)を適用してもよい。
また、垂直導光部22の垂直取出ミラー2220にはワイヤーグリッド偏光板を用いたが、これに限った物ではなく、ハーフミラーやハーフミラーとミラーの組合せを用いてもよい。
また、本実施例の表示装置では、垂直導光部22の垂直取出ミラー2220にワイヤーグリッド偏光板を交互に90°回転させて配置する構成を用いた。しかし、隣り合うワイヤーグリッドは90°回転に限らず、30°、45°、60°、120°、135°、150°回転であってもよい。要するに、30°以上150°以下が好ましいが、隣り合うワイヤーグリッドが異なる方向を向いていればよい。
また、本実施例の導光板では、水平導光部内を光束が水平方向(Z方向)に導光され垂直導光部内を光束が垂直方向(Y方向)に導光されるように構成していた。しかし、特許文献3に記載されているように、水平導光部内を光束が垂直(Y方向)に導光され垂直導光部内を光束が垂直(Z方向)に導光されるように構成してもよい。本実施例のように導光板を構成したほうが、垂直ミラー群の長軸方向が水平方向と一致して観察者の垂直ミラー群の視認性を低減することが可能になるため、より好ましい。なお、本実施例の表示装置では、水平伝搬部の光束の伝搬方向(第1方向)と垂直伝搬部の光束の伝搬方向(第2方向)とが直交し、それらの方向と導光板から光束が射出する方向(第3方向)とが直交するように構成していた。しかし、それらは、必ずしも直交させる必要はなく、交差させる構成にすれば良い。
また、本実施例の導光板では、水平伝搬部211と垂直伝搬部221との間に水平ミラー群212を配置した。しかし、水平ミラー群212は、水平伝搬部211の上面2113と垂直伝搬部221との間に配置すればよく、特許文献1と同様、水平伝搬部211の中にミラー群を配置してもよい。ただし、その場合に、特許文献1のように、水平伝搬部211の下面で最後に反射した光束がミラー群によって反射される構成にすることは好ましくない。本実施例のように、水平伝搬部211の上面2113で最後に反射した光束がミラー群によって反射される構成することが好ましい。換言すると、中心画角の光束(ミラー群からY方向と平行に射出する光束)がミラー群のミラーに45°より大きい入射角度で入射するように構成することが好ましい。このように構成することで、伝搬角の絶対値が大きい光束ほど水平導光部の入射面に近い側から有効光束として射出させることができ、本実施例と同様の効果を得ることができる。
また、本実施例の導光板では、垂直伝搬部221と観察者の眼5との間に垂直ミラー群222を配置した。しかし、垂直ミラー群222は、垂直伝搬部221の背面2212と観察者の眼5との間(つまり、垂直伝搬部221の背面2212よりも、導光板からの光束が射出される方向側)に配置すればよく、垂直伝搬部221の中にミラー群を配置してもよい。ただし、その場合にも、垂直伝搬部221の背面2212で最後に反射した光束がミラー群によって反射される構成することが好ましい。換言すると、中心画角の光束(ミラー群からX方向と平行に射出する光束)がミラー群のミラーに45°より大きい入射角度で入射するように構成することが好ましい。
図8に本発明を適用可能な実施例2の表示装置を示す。
本実施例と実施例1との相違点は、水平導光部21ならびに垂直導光部22の構成を変更した点にある。具体的には、水平導光部21においては、水平伝搬部211の高さを水平導光部21の入射光学系の開口絞りよりも高くした点と、水平伝搬部21と水平ミラー群22との接合面に配置した透過反射膜を無くした点である。垂直導光部22においては、垂直伝搬部221のX軸方向の幅を水平伝搬部211のX軸方向の幅よりも大きくした点と、垂直伝搬部221と垂直ミラー群222との接合面に配置した透過反射膜を無くした点である。
図9(A)、図9(B)には比較例の水平導光部、図9(C)には本実施例の水平導光部を示す。
図9(A)、図9(B)、図9(C)を用いて本実施例における水平導光部の構成を説明する。
図9(A)、図9(B)、図9(C)中には、水平伝搬部211と水平ミラー群212から成る水平導光部21、投影レンズ31と接続部32とからなる入射光学系3、表示素子4を模式的に表示している。
表示素子4の各画素から射出された光束は投影レンズ31によって平行光束に変換されるとともに、表示素子4の画素位置に応じた画角を有する画角光束となる。投影レンズ31からの画角光束は接続部32に入射し、画角光束の一部が接続部32で内面反射して水平伝搬部の入射面2115との接合領域33へ到達し、他の一部は接続部32で内面反射せずに接合領域33へ到達している。これより、水平伝搬部211の長軸Axに対してプラス方向とマイナス方向の2つの入射光束が生じることになる。そして、各画角光束は接合領域33で光束幅を制限されて水平伝搬部211へ入射し、伝搬光束となる。つまり、入射光学系の接続部32と水平伝搬部の入射面2115との接合領域33が、入射光学系3の開口絞り33の機能を持っている。つまり、水平導光部21には入射光学系の開口絞り33で制限された光束が入射している。
図9(A)に示したように比較例は、水平伝搬部の左面2115の全面を使って入射光学系の接続部32と接合しており、水平伝搬部の左面2115が入射光学系の開口絞り33と同サイズである。水平伝搬部の入射面2115から入射した伝搬光束が、水平伝搬部の上面2113、下面2114で内面反射して水平伝搬部211内部を伝搬している。水平伝搬部の入射面2115ではYZ方向において、水平伝搬部211の長軸Axに対してプラス方向とマイナス方向の2つの方向で入射させており、水平伝搬部211内を伝搬光束で満たすことができる。これにより、水平ミラー群212の下面2124には、水平伝搬部の入射面2115に近い側において伝搬光束を満遍なく行き渡らせることができる。
図9(A)の比較例の水平導光部21では、水平伝搬部の下面2114と水平ミラー群の上面2123との接合面に透過反射膜を設置しておらず、水平伝搬部211内の伝搬光束は接合面を透過して水平ミラー群212に入射する。この際、水平伝搬部211内の伝搬光束は、水平伝搬部の下面2114と水平ミラー群の上面2123との接合面の開始位置から距離Lpを伝搬し、水平ミラー群212には伝搬光束が隙間なく到達している。
また、図9(A)中のWeは、中心画角で必要とされる必要光束領域であり、EMBと呼ばれる表示装置の瞳径と同等の幅が必要で、通常6mm〜15mmを確保する。
しかしながら、図9(A)の比較例では、水平ミラー群212の下面2124の位置における必要光束領域Weの一部にしか伝搬光束が届かない。これでは観察者の眼に十分な幅の光束が到達せず、画像が欠ける問題が発生する。
図9(B)には、図9(A)の比較例の水平導光部21に対して、水平伝搬部の下面2114と水平ミラー群の上面2123との接合面に透過反射膜を配置した比較例である。実施例1もこの形態である。この場合、水平伝搬部211内の伝搬光束は水平伝搬部の下面2114と水平ミラー群の上面2123との接合面で一部が透過して水平ミラー群212に入射し、他の一部は反射して再び水平伝搬部211内を伝搬する。これを繰り返し行うことにより、伝搬光束は水平伝搬部の終端2116まで到達し、水平ミラー群212の全域へ伝搬光束を行き渡らせている。従って、水平取出ミラー2120で偏向された偏向光束群は中心画角の必要光束領域Weの全領域に存在し、観察者の眼に十分な幅の光束を到達させることができる。しかしながら、水平伝搬部の下面2114と水平ミラー群の上面2123との接合面には透過反射膜が配置され、透過反射膜に入射した伝搬光束の一部しか反射しない。例えば、透過反射膜の透過率が25%、反射率が65%だとすると、反射の度に伝搬光束の光量が35%低下する。伝搬距離が長くなる程、透過反射膜での反射回数は増えるので水平導光部21から射出する偏向光束群には伝搬距離に応じた光量分布が生じることとなり、光量の高い所の光量を減光して光量の低い所に合わせて光量分布を補正することとなる。そのため、光量ロスが発生して問題となる。
図9(C)には本実施例の水平導光部を示した。
本実施例の水平伝搬部21は、水平伝搬部211の高さH(Y軸方向の幅)を入射光学系との開口絞り33の高さHaよりもHcだけ高く設定した。水平伝搬部21の下面2114(後述の張出面)に垂直なY軸方向における長さは、入射光学系の開口絞り33のY軸方向における開口の幅の1倍よりも長く、2倍より短い。すなわち、0<Hc<Haとした。なお、ここでの水平伝搬部21のY軸方向における長さは、水平伝搬部21の2つの全反射面(上面2113及び下面2114)間の距離に相当する。
図9(A)及び図9(B)の比較例では水平伝搬部211の高さH=Haであった。
本実施例の水平導光部21も図9(A)の比較例と同様に、水平伝搬部の入射面2115における接続部32との接続領域33には、YZ断面においてプラスマイナスの2方向の角度(±ω)で光束が入射して伝搬光束になっている。伝搬光束は水平伝搬部の下面2114と上面2113で全反射しながら水平伝搬部211内を伝搬している。また、本実施例の水平導光部も、水平伝搬部の下面2114と水平ミラー群の上面2123との接合面に透過反射膜を設置していない。そのため、水平伝搬部211の下面2114の射出領域に入射した90%以上(より好ましくは95%以上)の伝搬光束は接合面を透過して水平ミラー群212に入射する。従って、水平伝搬部211が水平ミラー群212と接合する領域に入ってからは、反射回数は水平伝搬部の上面2113での1回だけとなる。この1回の反射回数で各画角光束を必要な領域まで届ける必要がある。
ここで、水平伝搬部の下面2114からスタートして水平伝搬部の上面2113で反射し、再び水平伝搬部の下面2114へ到達するまでを伝搬1周期としたとき、伝搬1周期当たりの伝搬距離Laは条件式(5)で与えられる。
La=H/tanω×2 … 条件式(5)
条件式(5)に示したように、水平導光部の高さHに比例して伝搬1周期当たりの伝搬距離Laが長くなる。
本実施例の水平導光部21は、水平伝搬部211の高さH(Y軸方向の幅)を入射光学系の開口絞り33の高さHaよりもHcだけ高く設定したことにより、伝搬距離を2×Hc/tanω伸ばすことができる。これにより、各画角における必要光束領域Weの遠端(必要光束領域Weの入射面2115から最も遠い位置)に伝搬光束を到達させることができる。図9(C)には中央画角の画角光束を例に挙げて表示しているが、本実施例の構成により中央画角光束における必要光束領域Weの遠端を超える位置へ伝搬光束を届けている。
各画角における必要光束領域Weの遠端に伝搬光束を到達させるためには、条件式(6)を満足するように、水平伝搬部の高さHを入射光学系の開口絞り33の高さHaよりもHcだけ高く設定すると良い。
ただし、
Hは水平伝搬部211の高さ(Y軸方向の幅)
Haは入射光学系の開口絞り33の高さ
Hcは水平伝搬部211の高さを入射光学系の開口絞り33の高さよりも高くする量
Hmは水平ミラー群212の高さ
Loは水平伝搬部211と水平ミラー群212の接合面の最も入射面2115側の位置から必要光束領域Weの最も入射面2115側の位置までの距離
Weは必要光束領域の幅
ωは伝搬角
… 条件式(6)
一方、水平伝搬部211の高さを入射光学系の開口絞り33より高く設定すると、水平伝搬部211内を伝搬光束で満たすことができなくなる。水平伝搬部211内には伝搬光束が存在しない伝搬光束の隙間が生じてしまうが、各画角において伝搬光束の隙間が必要光束領域Wpに掛からないように構成すれば、前述の利点のみが得られる。図9(C)に示した中央画角の画角光束を例においても、伝搬光束の隙間が必要領域Weに掛からないように構成している。
そのためには、水平伝搬部211の高さHが入射光学系の開口絞り33の高さHaよりもHcだけ高い領域を水平伝搬部211と水平ミラー群212との接合面の端より接続部32側へ張出す構成が重要である。図9(C)においては張出し量をLhとし、入射光学系3の接続部32の上面で反射した光束を、張出面(水平方向において水平伝搬部の入射面2115とミラー群212との間に配置されており且つ上面2113と対向している面)で反射させている。これにより、伝搬光束が到達する最も手前(水平伝搬部の入射面側に最も近い)の位置が必要光束領域Weよりも手前になるように構成している。
各画角において、伝搬光束の隙間を必要光束領域から外すには、水平伝搬部211が入射光学系の開口絞り33よりHc高い部分の張出し量Lhが条件式(7)を満足する構成をとればよい。
ただし、
Haは入射光学系の開口絞り33の高さ
Hcは水平伝搬部211の高さを入射光学系の開口絞り33の高さよりも高くする量
Hmは水平ミラー群212の高さ
Loは水平伝搬部211と水平ミラー群212の接合面の最も入射面2115側の位置から必要光束領域Weの最も入射面2115側の位置までの距離
ωは伝搬角
… 条件式(7)
このように、本実施例では、各画角において必要光束領域Wpに各画角の伝搬光束を到達させるとともに、伝搬光束の隙間部分が必要とされる光束領域Wpに掛からないように構成している。
すなわち、条件式(6)と条件式(7)とを同時に満足する構成がよく、水平伝搬部211の高さを入射光学系の開口絞り33の高さよりも高くする量Hcが条件式(8)を満足する構成とするのが良い。
ただし、
Hは水平伝搬部211の高さ(Y軸方向の幅)
Haは入射光学系の開口絞り33の高さ
Hmは水平ミラー群212の高さ
Loは水平伝搬部211と水平ミラー群212の接合面の最も入射面2115側の位置から必要光束領域Weの最も入射面2115側の位置までの距離
Lhは水平伝搬部211が入射光学系の開口絞り33よりHc高い部分の張出し量
Weは必要光束領域の幅
ωは伝搬角
… 条件式(8)
本実施例のように、水平導光部の水平伝搬部の高さHを入射光学系3の開口絞り33よりも高くすることで、少ない反射回数で各画角の伝搬光束を必要な光束領域へ到達させることができる。
本実施例では、水平導光部の水平伝搬部の高さを入射光学系3の開口絞り33よりHc高く設定したことや、水平伝搬部211が入射光学系の開口絞り33よりHc高い部分の張出し量Lhを適切に設定した。これによって、透過反射面での反射回数が0回の構成を実現しており、光量ロスを軽減した表示装置を実現している。すなわち、本実施例では、水平伝搬部211に入射した伝搬光束は、水平伝搬部211の水平方向に平行な4面(正面2111、背面2112、上面2113、下面2114)のうち3面以上で内面反射して水平方向に伝搬される。
図9(B)の比較例では、中心画角の光束が、必要光束領域Weを含む中央部に配置されているミラーだけでなく、両端部に配置されているミラーでも、反射されるように構成されており、光量ロスが多かった。しかし、図9(C)の本実施例では、中心画角の光束が、必要光束領域Weを含む中央部に配置されているミラーだけで反射され、両端部に配置されているミラーでは反射されないように構成しており、光量ロスが少ない。
なお、本実施例では、開口絞りの開口の両端のうち、下側(張出面側)の一端を下面(張出面)2114と同じ位置に配置し、上側(反射面側)の他端を上面(反射面)2113よりも下側に配置していた。しかし、開口絞りの開口の両端のうち、上側(反射面側)の一端を上面(反射面)2113と同じ位置に配置し、下側(張出面側)の他端を下面(張出面)2114よりも上側に配置してもよい。ただし、この場合は、伝搬距離をHc/tanωしか伸ばすことができない。
図10には、本実施例の垂直導光部22を示す。
本実施例においても垂直導光部22は垂直伝搬部221と垂直ミラー群222とから構成される。垂直ミラー群222は複数の垂直取出ミラー2220を備え、各垂直取出ミラー2220にはワイヤーグリッドを使用し、隣り合う垂直取出ミラー2220でワイヤーグリッドの方向を90°回転させて配置している。なお、本実施例では、図10に示したように、垂直伝搬部221に段差を設けて、その段差のところに垂直ミラー群222を配置している。
本実施例の垂直伝搬部221の厚みT(X方向の幅)は、実施例1の垂直伝搬部221の厚みよりも大きくしている。実施例1の垂直伝搬部221の厚みは水平導光部21の厚みと同じであるが、本実施例の垂直伝搬部221の厚みTは水平導光部21の厚みTaよりもTc大きくしている。これにより、垂直伝搬部221内の伝搬光束は垂直伝搬部の背面2212で全反射した後、垂直ミラー群222へ入射し、垂直取出ミラー2220で反射されて偏向され垂直ミラー群の正面2221から射出して観察者の眼5へ入射する。
ここで、垂直伝搬部221を厚くしたことにより、垂直伝搬部の背面2212で1回全反射しただけで各画角光束が必要な場所へ伝搬光束を到達させることができる。これにより、垂直伝搬部221と垂直ミラー群222との接合面で反射させる必要がなくなり、透過反射膜が不要になるばかりでなく、垂直伝搬部221と垂直ミラー群222とを一体化して形成することでコストダウンが図れる。