JP2019099955A - 混繊糸、布帛、繊維強化成形品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維強化成形品を製造する際の熱可塑性樹脂の強化繊維間への含浸性に優れるとともに、機械特性に優れる繊維強化成形品を得ることができる混繊糸及び布帛、ならびに機械特性に優れる繊維強化成形品及びその製造方法の提供。【解決手段】強化繊維と第1の熱可塑性樹脂繊維とを含む混繊糸であり、第1の熱可塑性樹脂繊維が、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する溶融成形可能なフッ素樹脂を含む混繊糸、この混繊糸を含む布帛、及びこの布帛を成形してなる繊維強化成形品。【選択図】なし

Description

本発明は、混繊糸、布帛、繊維強化成形品及びその製造方法に関する。
繊維強化成形品は、輸送機器(車両(自動車、鉄道車両等)、航空機等)、建築部材、電子機器、医療機器等の幅広い用途に用いられる。繊維強化成形品のマトリックス樹脂としては、従来から熱硬化性樹脂の硬化物がよく用いられている。しかし、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂の硬化物を用いた繊維強化成形品には、熱硬化性樹脂の硬化に時間がかかるため生産性が悪い、耐衝撃性が低い、プリプレグの保存安定性が悪い、という問題がある。
これらの問題を解決するため、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いたプリプレグ及び繊維強化成形品が提案されている。マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いたプリプレグは、熱可塑性樹脂のフィルム、シート等と強化繊維シートとを重ねた状態で、フィルム、シート等を溶融させて熱可塑性樹脂を強化繊維シートに含浸させることによって製造される。しかし、熱可塑性樹脂の溶融粘度が高いため、熱可塑性樹脂が強化繊維シートに含浸しにくい、という問題がある。強化繊維シートへの熱可塑性樹脂の含浸性が不充分であると、繊維強化成形品の耐衝撃性等の機械特性が不充分となる。
この問題を解決するため、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維との混繊糸を含む織物、編物等の布帛を加熱し、熱可塑性樹脂繊維を溶融させて熱可塑性樹脂を強化繊維間に含浸させる繊維強化成形品の製造方法が提案されている(特許文献1、2)。
特開2014−173196号公報 特開2015−101794号公報
しかし、特許文献1、2の方法で得られた繊維強化成形品は、耐衝撃性等の機械特性がいまだ不充分である。
本発明は、繊維強化成形品を製造する際の熱可塑性樹脂の強化繊維間への含浸性に優れるとともに、機械特性に優れる繊維強化成形品を得ることができる混繊糸及び布帛、ならびに機械特性に優れる繊維強化成形品及びその製造方法を提供する。
本発明は、下記の態様を有する。
<1>強化繊維と第1の熱可塑性樹脂繊維とを含む混繊糸であり、前記第1の熱可塑性樹脂繊維が、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する溶融成形可能なフッ素樹脂を含む、混繊糸。
<2>前記第1の熱可塑性樹脂繊維が、前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂をさらに含む、前記<1>の混繊糸。
<3>前記混繊糸が、前記溶融成形可能なフッ素樹脂を含まず、前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む第2の熱可塑性樹脂繊維をさらに含む、前記<1>又は<2>の混繊糸。
<4>前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルイミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド及び液晶ポリエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記<2>又は<3>の混繊糸。
<5>前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリアミドであり、前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド9T、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66コポリマー、ポリアミド6/66/610コポリマー、ポリアミド6T、ポリアミド6I及びポリアミドMXD6からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記<2>又は<3>の混繊糸。
<6>前記溶融成形可能なフッ素樹脂の融点が、100〜325℃である、前記<1>〜<5>のいずれかの混繊糸。
<7>前記強化繊維が、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記<1>〜<6>のいずれかの混繊糸。
<8>前記<1>〜<7>のいずれかの混繊糸を含む、布帛。
<9>前記<8>の布帛を成形してなる、繊維強化成形品。
<10>前記<8>の布帛と、前記溶融成形可能なフッ素樹脂及び前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方を含むフィルムとの積層物を成形してなる、繊維強化成形品。
<11>前記<8>の布帛を、前記溶融成形可能なフッ素樹脂の融点以上、かつ前記布帛が前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む場合は前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して成形する、繊維強化成形品の製造方法。
<12>前記<8>の布帛と、前記溶融成形可能なフッ素樹脂及び前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方を含むフィルムとの積層物を、前記溶融成形可能なフッ素樹脂の融点以上、かつ前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して成形する、繊維強化成形品の製造方法。
本発明の混繊糸及び布帛は、繊維強化成形品を製造する際の熱可塑性樹脂の強化繊維間への含浸性に優れる。また、本発明の混繊糸及び布帛によれば、機械特性に優れる繊維強化成形品を得ることができる。
本発明の繊維強化成形品は、機械特性に優れる。
本発明の繊維強化成形品の製造方法によれば、機械特性に優れる繊維強化成形品を製造できる。
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「混繊糸」とは、2種類以上の繊維を混ぜ合わせ一本の糸としたものである。
「マルチフィラメント」とは、複数の単繊維を束ねて一本の糸としたものである。
「連続繊維」とは、長さが100mm超の繊維を意味する。
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことを意味する。
「溶融流動性を示す」とは、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1〜1000g/10分となる温度が存在することを意味する。
「融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「溶融流れ速度」は、JIS K 7210−1:2014(対応国際規格ISO 1133−1:2011)に規定されるメルトマスフローレイト(MFR)である。
「カルボニル基含有基」とは、構造中にカルボニル基(−C(=O)−)を有する基を意味する。
「酸無水物基」とは、−C(=O)−O−C(=O)−で表される基を意味する。
「単量体に基づく単位」は、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。本明細書において、単量体に基づく単位を、単に、単量体単位とも記す。
「単量体」とは、重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
<混繊糸>
本発明の混繊糸は、強化繊維と、後述する特定の第1の熱可塑性樹脂繊維とを含む。
本発明の混繊糸は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて第1の熱可塑性樹脂繊維以外の第2の熱可塑性樹脂繊維を含んでいてもよい。以下、第1の熱可塑性樹脂繊維及び第2の熱可塑性樹脂繊維をあわせて「熱可塑性樹脂繊維」とも記す。
本発明の混繊糸は、撚りを有するものであってもよく、撚りを有しないものであってもよい。
混繊糸の繊度は、1000〜100000dtexが好ましく、1500〜50000dtexがより好ましく、2000〜50000dtexがさらに好ましく、3000〜5000dtexが特に好ましい。ここで混繊糸の繊度は、1本の混繊糸の製造に用いられる強化繊維の繊度及び熱可塑性樹脂繊維の繊度の合計値である。
強化繊維の繊度に対する熱可塑性樹脂繊維の繊度の比(熱可塑性樹脂繊維の繊度/強化繊維の繊度)は、0.1〜10が好ましく、0.1〜6.0がより好ましく、0.8〜2.0がさらに好ましい。ここで熱可塑性樹脂繊維の繊度/強化繊維の繊度は、1本の混繊糸の製造に用いられる強化繊維の繊度に対する熱可塑性樹脂繊維の繊度の比である。
強化繊維の繊度に対する第1の熱可塑性樹脂繊維の繊度の比(第1の熱可塑性樹脂繊維の繊度/強化繊維の繊度)は、0.01〜10が好ましく、0.01〜6.0がより好ましく、0.04〜2.0がさらに好ましい。ここで第1の熱可塑性樹脂繊維の繊度/強化繊維の繊度は、1本の混繊糸の製造に用いられる強化繊維の繊度に対する第1の熱可塑性樹脂繊維の繊度の比である。
混繊糸の繊維数は、100〜100000fが好ましく、1000〜100000fがより好ましく、1500〜70000fがより好ましく、2000〜20000fがさらに好ましく、2500〜10000fがよりさらに好ましく、3000〜5000fが特に好ましい。混繊糸の繊維数が前記範囲内であれば、混繊糸の混繊性が向上し、機械特性がさらに優れる繊維強化成形品が得られる。ここで混繊糸の繊維数は、1本の混繊糸の製造に用いられる強化繊維の繊維数及び熱可塑性樹脂繊維の繊維数の合計値である。
強化繊維の繊維数に対する熱可塑性樹脂繊維の繊維数の比(熱可塑性樹脂繊維の繊維数/強化繊維の繊維数)は、0.001〜1が好ましく、0.001〜0.5がより好ましく、0.05〜0.2がさらに好ましい。熱可塑性樹脂繊維の繊維数/強化繊維の繊維数が前記範囲内であれば、混繊糸の混繊性が向上し、機械特性がさらに優れる繊維強化成形品が得られる。ここで熱可塑性樹脂繊維の繊維数/強化繊維の繊維数は、1本の混繊糸の製造に用いられる強化繊維の繊維数に対する熱可塑性樹脂繊維の繊維数の比である。
(強化繊維)
強化繊維としては、無機繊維、金属繊維、有機繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維等が挙げられる。
金属繊維としては、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維等が挙げられる。
強化繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
強化繊維は、連続繊維であってもよく、不連続繊維であってもよい。強化繊維としては、混繊糸を製造しやすい点から、連続繊維が好ましい。
強化繊維は、表面処理が施されているものであってもよい。
強化繊維としては、強度および軽量性に優れる点から、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、比重が小さく、高強度及び高弾性率である点から、炭素繊維がより好ましい。
炭素繊維としては、例えば、WO2013/129169号に記載されたものが挙げられ、段落[0018]〜[0026]に記載されたものが好ましい。炭素繊維は、公知の製造方法によって製造できる。
強化繊維の繊度は、混繊糸1本あたり100〜50000dtexが好ましく、500〜40000dtexがより好ましく、1000〜10000dtexがさらに好ましく、1000〜3000dexが特に好ましい。混繊糸1本あたりの強化繊維の繊度が前記範囲内であれば、混繊糸の製造が容易となり、また、機械特性がさらに優れる繊維強化成形品が得られる。
強化繊維の繊維数は、混繊糸1本あたり500〜50000fが好ましく、500〜20000fがより好ましく、1000〜10000fがさらに好ましく、1500〜5000fが特に好ましい。混繊糸1本あたりの強化繊維の繊維数が前記範囲内であれば、混繊糸中での強化繊維の分散状態が良好となる。
(第1の熱可塑性樹脂繊維)
第1の熱可塑性樹脂繊維は、後述する特定のフッ素樹脂Aを含む。
第1の熱可塑性樹脂繊維は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてフッ素樹脂A以外の熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
第1の熱可塑性樹脂繊維は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてフッ素樹脂A及び他の熱可塑性樹脂以外成分(以下、「他の成分」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
第1の熱可塑性樹脂繊維中のフッ素樹脂Aの割合は、1〜100質量%が好ましく、5〜100質量%がより好ましい。フッ素樹脂Aの割合は、100質量%であってもよい。
第1の熱可塑性樹脂繊維は、1種を単独で用いてもよく、成分の異なる2種以上を併用してもよい。
第1の熱可塑性樹脂繊維は、連続繊維であってもよく、不連続繊維であってもよい。第1の熱可塑性樹脂繊維としては、混繊糸を製造しやすい点から、連続繊維が好ましい。
第1の熱可塑性樹脂繊維は、表面処理が施されているものであってもよい。
第1の熱可塑性樹脂繊維は、撚りを有するものであってもよく、撚りを有しないものであってもよい。
第1の熱可塑性樹脂繊維は、フッ素樹脂A、又はフッ素樹脂Aを含む樹脂組成物を公知の紡糸方法によって紡糸して製造される。紡糸方法としては、溶融紡糸法が挙げられる。紡糸によって得られた第1の熱可塑性樹脂繊維は、公知の方法によってマルチフィラメント、モノフィラメント等に加工される。
フッ素樹脂Aを含む組成物は、各成分をタンブラー、ヘンシェルミキサー等の各種混合機を用いてあらかじめ混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー等で溶融混練して調製される。
第1の熱可塑性樹脂繊維は、通常、複数の繊維が束状になった第1の熱可塑性樹脂繊維束として混繊糸の製造に用いられる。
第1の熱可塑性樹脂繊維束の繊度は、40〜600dtexが好ましく、50〜500dtexがより好ましく、100〜400dtexがさらに好ましい。第1の熱可塑性樹脂繊維束の繊度が前記範囲内であれば、混繊糸中での第1の熱可塑性樹脂繊維の分散状態が良好となる。
第1の熱可塑性樹脂繊維束の繊維数は、1〜200fが好ましく、5〜100fがより好ましく、10〜80fがさらに好ましく、20〜50fが特に好ましい。第1の熱可塑性樹脂繊維束の繊維数が前記範囲内であれば、混繊糸中での第1の熱可塑性樹脂繊維の分散状態が良好となる。
(フッ素樹脂A)
フッ素樹脂Aは、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「接着性官能基」と記す。)を有する。フッ素樹脂Aは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しもよい。
接着性官能基は、フッ素樹脂Aの溶融時の成形性及び強化繊維間への含浸性がさらに優れる点から、フッ素樹脂Aの主鎖の末端基及び主鎖のペンダント基のいずれか一方又は両方として存在することが好ましい。接着性官能基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
フッ素樹脂Aは、強化繊維間への含浸性がさらに優れる点から、接着性官能基として少なくともカルボニル基含有基を有することが好ましい。
カルボニル基含有基としては、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基等が挙げられる。
炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基における炭化水素基としては、炭素数2〜8のアルキレン基等が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、カルボニル基を構成する炭素を含まない状態での炭素数である。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
ハロホルミル基は、−C(=O)−X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。
フッ素樹脂A中の接着性官能基の含有量は、フッ素樹脂Aの主鎖炭素数1×10個に対し10〜60000個が好ましく、100〜50000個がより好ましく、100〜10000個がさらに好ましく、300〜5000個が特に好ましい。接着性官能基の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、強化繊維間への含浸性が著しく優れる。接着性官能基の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、紡糸時に高温条件にすることなく繊維への加工が可能となる。
接着性官能基の含有量は、核磁気共鳴(NMR)分析、赤外吸収スペクトル分析等の方法によって測定できる。例えば、特開2007−314720号公報に記載のように赤外吸収スペクトル分析等の方法を用いて、フッ素樹脂Aを構成する全単位中の接着性官能基を有する単位の割合(モル%)を求め、この割合から、接着性官能基の含有量を算出できる。
フッ素樹脂Aの融点は、100〜325℃が好ましく、120℃以上315℃未満がより好ましく、150〜310℃がさらに好ましい。フッ素樹脂Aの融点が前記範囲の下限値以上であれば、混繊糸、布帛及び繊維強化成形品の耐熱性に優れる。フッ素樹脂Aの融点が前記範囲の上限値以下であれば、紡糸の際及び繊維強化成形品を製造する際に汎用的な装置を用いることができる。
フッ素樹脂Aの融点は、フッ素樹脂Aを構成する単位の種類、単位の割合、フッ素樹脂Aの分子量等によって調整できる。例えば、後述する単位u1の割合が多くなるほど、融点が上がる傾向がある。
フッ素樹脂Aとしては、第1の熱可塑性樹脂繊維及び繊維強化成形品を製造しやすい点から、溶融成形が可能なものを用いる。
溶融成形が可能なフッ素樹脂Aとしては、公知の溶融成形が可能なフッ素樹脂(テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体等)に接着性官能基を導入したフッ素樹脂等が挙げられる。
フッ素樹脂Aとしては、荷重49Nの条件下、フッ素樹脂Aの融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1〜1000g/10分となる温度が存在するものを用いる。溶融流れ速度は、好ましくは0.5〜100g/10分、より好ましくは1〜30g/10分、さらに好ましくは5〜20g/10分である。溶融流れ速度が前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂Aの繊維への加工性に優れる。溶融流れ速度が前記範囲の上限値以下であれば、混繊糸、布帛及び繊維強化成形品の機械特性がさらに優れる。
フッ素樹脂Aとしては、製造方法の違いによって下記のものが挙げられる。
・含フッ素重合体の製造の際に用いた単量体、連鎖移動剤及び重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する接着性官能基を有する含フッ素重合体(以下、「含フッ素重合体A1」とも記す)。
・コロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理によって接着性官能基を有しないフッ素樹脂に接着性官能基を導入したフッ素樹脂。
・接着性官能基を有しないフッ素樹脂に、接着性官能基を有する単量体をグラフト重合して得られたフッ素樹脂。
フッ素樹脂Aとしては、下記の理由から、含フッ素重合体A1が好ましい。
・含フッ素重合体A1においては、含フッ素重合体A1の主鎖の末端基及び主鎖のペンダント基のいずれか一方又は両方に接着性官能基が存在するため、繊維への加工性が著しく優れる。
・表面処理によってフッ素樹脂に導入された接着性官能基は不安定であり、時間とともに消失しやすい。
含フッ素重合体A1における接着性官能基が、含フッ素重合体A1の製造に用いられた単量体に由来する場合、含フッ素重合体A1は、下記方法1によって製造できる。この場合、接着性官能基は、単量体単位中に存在する。
方法1:単量体の重合によって含フッ素重合体A1を製造する際に、接着性官能基を有する単量体を用いる。
含フッ素重合体A1における接着性官能基が、含フッ素重合体A1の製造に用いられた連鎖移動剤に由来する場合、含フッ素重合体A1は、下記方法2によって製造できる。この場合、接着性官能基は、含フッ素重合体A1の主鎖の末端基として存在する。
方法2:接着性官能基を有する連鎖移動剤の存在下に、単量体の重合によって含フッ素重合体A1を製造する。
接着性官能基を有する連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
含フッ素重合体A1における接着性官能基が、含フッ素重合体A1の製造に用いられた重合開始剤に由来する場合、含フッ素重合体A1は、下記方法3によって製造できる。この場合、接着性官能基は、含フッ素重合体A1の主鎖の末端基として存在する。
方法3:接着性官能基を有するラジカル重合開始剤等の重合開始剤の存在下に、単量体の重合によって含フッ素重合体A1を製造する。
接着性官能基を有するラジカル重合開始剤としては、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
含フッ素重合体A1における接着性官能基が、含フッ素重合体A1の製造に用いられた単量体、連鎖移動剤、重合開始剤のうちの2種以上に由来する場合、含フッ素重合体A1は前記方法1〜3のうちの2種以上を併用して製造できる。
含フッ素重合体A1としては、接着性官能基の含有量を容易に制御でき、そのため、繊維強化成形品の耐衝撃性を調整しやすい点から、方法1で製造された、単量体に由来する接着性官能基を有するものが好ましい。
接着性官能基を有する単量体としては、カルボキシ基を有する単量体(マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ウンデシレン酸等)、酸無水物基を有する単量体(無水イタコン酸(以下、「IAH」とも記す。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」とも記す。)、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)、無水マレイン酸等)、水酸基及びエポキシ基を有する単量体(ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル等)等が挙げられる。
単量体に由来する接着性官能基を有する含フッ素重合体A1としては、含フッ素重合体A1の溶融時の成形性が著しく優れる点から、下記含フッ素重合体A1が特に好ましい。
テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)又はクロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」とも記す。)に基づく単位u1と、酸無水物基含有環状単量体に基づく単位u2と、含フッ素単量体(ただし、TFE及びCTFEを除く。)に基づく単位u3とを有する含フッ素重合体A1。
ここで、単位u2の有する酸無水物基が接着性官能基に相当する。
単位u2を構成する酸無水物基含有環状単量体としては、IAH、CAH、NAH、無水マレイン酸等が挙げられる。酸無水物基含有環状単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸無水物基含有環状単量体としては、IAH、CAH及びNAHからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。IAH、CAH及びNAHからなる群から選ばれる1種以上を用いると、無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法(特開平11−193312号公報参照)を用いることなく、酸無水物基を有する含フッ素重合体A1を容易に製造できる。
酸無水物基含有環状単量体としては、繊維への加工性が著しく優れる点から、IAH又はNAHが好ましい。
単位u3を構成する含フッ素単量体としては、重合性炭素−炭素二重結合を1つ有する含フッ素化合物が好ましく、フルオロオレフィン(フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」とも記す。)、ヘキサフルオロイソブチレン等。ただし、TFEを除く。)、CF=CFORf1(ただし、Rf1は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基である。)(以下、「PAVE」とも記す。)、CF=CFORf2SO(ただし、Rf2は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基であり、Xはハロゲン原子又は水酸基である。)、CF=CFORf3CO(ただし、Rf3は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基であり、Xは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。)、CF=CF(CFOCF=CF(ただし、pは1又は2である。)、CH=CX(CF(ただし、Xは水素原子又はフッ素原子であり、qは2〜10の整数であり、Xは水素原子又はフッ素原子である。)(以下、「FAE」とも記す。)、環構造を有する含フッ素単量体(ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソール、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等)等が挙げられる。
含フッ素単量体としては、含フッ素重合体A1の成形性に優れる点から、HFP、PAVE及びFAEからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、FAE及びHFPのいずれか一方又は両方がより好ましい。
PAVEとしては、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFF等が挙げられ、PPVEが好ましい。
FAEとしては、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF(以下、「PFEE」と記す。)、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF(以下、「PFBE」と記す。)、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH等が挙げられる。
FAEとしては、CH=CH(CFq1(ただし、q1は、2〜6であり、2〜4が好ましい。)が好ましく、PFEE、CH=CH(CFF、PFBE、CH=CF(CFH、CH=CF(CFHがより好ましく、PFEE又はPFBEが特に好ましい。
含フッ素重合体A1は、単位u1〜u3に加えて、非フッ素単量体(ただし、酸無水物基含有環状単量体を除く。)に基づく単位u4を有していてもよい。
非フッ素単量体としては、重合性炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物が好ましく、オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテン等)、ビニルエステル(酢酸ビニル等)等が挙げられる。非フッ素単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非フッ素単量体としては、繊維への加工性がさらに優れる点から、エチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
単位u4がエチレン単位(以下、「E単位」とも記す。)である場合の各単位の好ましい割合は下記のとおりである。
単位u1の割合は、単位u1と単位u2と単位u3と単位u4との合計のうち、25〜79.79モル%が好ましく、40〜64.47モル%がより好ましく、45〜61.95モル%がさらに好ましい。
単位u2の割合は、単位u1と単位u2と単位u3と単位u4との合計のうち、0.01〜5モル%が好ましく、0.03〜3モル%がより好ましく、0.05〜1モル%がさらに好ましい。
単位u3の割合は、単位u1と単位u2と単位u3と単位u4との合計のうち、0.2〜20モル%が好ましく、0.5〜15モル%がより好ましく、1〜12モル%がさらに好ましい。
単位u4の割合は、単位u1と単位u2と単位u3と単位u4との合計のうち、20〜74.79モル%が好ましく、35〜50モル%がより好ましく、37〜53.95モル%がさらに好ましい。
単位u4を有しない場合の各単位の好ましい割合は下記のとおりである。
単位u1の割合は、単位u1と単位u2と単位u3との合計のうち、50〜99.89モル%が好ましく、50〜99.4モル%がより好ましく、50〜98.9モル%がさらに好ましい。
単位u2の割合は、単位u1と単位u2と単位u3との合計のうち、0.01〜5モル%が好ましく、0.1〜3モル%がより好ましく、0.1〜2モル%がさらに好ましい。
単位u3の割合は、単位u1と単位u2と単位u3との合計のうち、0.1〜49.99モル%が好ましく、0.5〜49.9モル%がより好ましく、1〜49.9モル%がさらに好ましい。
各単位の割合が前記範囲内であれば、混繊糸、布帛及び繊維強化成形品の難燃性、耐薬品性等に著しく優れる。
単位u2の割合が前記範囲内であれば、含フッ素重合体A1における酸無水物基の量が適切になり、繊維への加工性が著しく優れる。
単位u3の割合が前記範囲内であれば、含フッ素重合体A1の繊維への加工性に著しく優れる。
各単位の割合は、含フッ素重合体A1の溶融NMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析等により算出できる。
含フッ素重合体A1には、単位u2における酸無水物基の一部が加水分解し、その結果、酸無水物基含有環状単量体に対応するジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、マレイン酸等)に基づく単位が含まれる場合がある。ジカルボン酸に基づく単位が含まれる場合、ジカルボン酸に基づく単位の割合は、単位u2の割合に含めるものとする。
含フッ素重合体A1の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
TFE単位とNAH単位とPPVE単位とを有する共重合体、
TFE単位とIAH単位とPPVE単位とを有する共重合体、
TFE単位とCAH単位とPPVE単位と有する共重合体、
TFE単位とIAH単位とHFP単位と有する共重合体、
TFE単位とCAH単位とHFP単位とを有する共重合体、
TFE単位とIAH単位とPFBE単位とE単位とを有する共重合体、
TFE単位とCAH単位とPFBE単位とE単位とを有する共重合体、
TFE単位とIAH単位とPFEE単位とE単位とを有する共重合体、
TFE単位とCAH単位とPFEE単位とE単位とを有する共重合体、
TFE単位とIAH単位とHFP単位とPFBE単位とE単位とを有する共重合体等。
フッ素樹脂Aは、常法により製造できる。単量体の重合によってフッ素樹脂Aを製造する場合、重合方法としては、ラジカル重合開始剤を用いる重合方法が好ましい。
重合法としては、塊状重合法、有機溶媒(フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等)を用いる溶液重合法、水性媒体と必要に応じて適当な有機溶媒とを用いる懸濁重合法、水性媒体と乳化剤とを用いる乳化重合法が挙げられ、溶液重合法が好ましい。
(他の熱可塑性樹脂)
他の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステル等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリブチレン等)、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド樹脂(ポリフェニレンスルフィド等)、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルニトリル、フッ素樹脂A以外のフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン等)、液晶ポリマー、スチレン樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂等)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、未変性又は変性されたポリフェニレンエーテル、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、ポリイソプレン系エラストマー、フッ素系エラストマー(ただし、フッ素樹脂Aを除く。)、アクリロニトリル系エラストマー等が挙げられる。
他の熱可塑性樹脂としては、機械特性に優れる点から、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルイミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド及び液晶ポリエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
他の熱可塑性樹脂としては、成形性及び機械特性の向上の点から、ポリアミドが好ましい。ポリアミドは、例えば、ω−アミノ酸、ラクタム又はジカルボン酸と、ジアミン等とを開環重合又は重縮合して製造できる。
ω−アミノ酸としては、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、2−クロロ−パラアミノメチル安息香酸、2−メチル−パラアミノメチル安息香酸、4−アミノメチル安息香酸等が挙げられる。
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。
カルボン酸としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、ヘキサデセンジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、キシリレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、テレフタルジアミン等が挙げられる。
ポリアミドとしては、機械特性と成形性とのバランスに優れている点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド9T、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66コポリマー、ポリアミド6/66/610コポリマー、ポリアミド6T、ポリアミド6I及びポリアミドMXD6からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミド9T、ポリアミド6Tが特に好ましい。
(他の成分)
他の成分としては、無機フィラー、有機フィラー、有機顔料、金属せっけん、界面活性剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、シランカップリング剤、有機化合物(有機モノマー、重合度50以下の有機オリゴマー等)等が挙げられる。
無機フィラーとしては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルーン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、炭素繊維、ガラスバルーン、炭素バーン、木粉、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機フィラーは、樹脂への分散性の向上の点から、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の表面処理剤による表面処理が施されてもよい。
有機フィラーとしては、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維等が挙げられる。
(第2の熱可塑性樹脂繊維)
第2の熱可塑性樹脂繊維は、フッ素樹脂Aを含まず、他の熱可塑性樹脂を含む。
他の熱可塑性樹脂としては、第1の熱可塑性樹脂繊維における他の熱可塑性樹脂と同様なものが挙げられ、好ましい形態も同様である。
第2の熱可塑性樹脂繊維中の他の熱可塑性樹脂の割合は、1〜100質量%が好ましく、5〜100質量%がより好ましい。他の熱可塑性樹脂の割合は、100質量%であってもよい。
第2の熱可塑性樹脂繊維は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の熱可塑性樹脂以外の成分をさらに含んでいてもよい。
他の熱可塑性樹脂以外の成分としては、第1の熱可塑性樹脂繊維における他の成分と同様なものが挙げられ、好ましい形態も同様である。
第2の熱可塑性樹脂繊維は、1種を単独で用いてもよく、成分の異なる2種以上を併用してもよい。
第2の熱可塑性樹脂繊維は、連続繊維であってもよく、不連続繊維であってもよい。第2の熱可塑性樹脂繊維としては、混繊糸を製造しやすい点から、連続繊維が好ましい。
第2の熱可塑性樹脂繊維は、表面処理が施されているものであってもよい。
第2の熱可塑性樹脂繊維は、撚りを有するものであってもよく、撚りを有しないものであってもよい。
第2の熱可塑性樹脂繊維は、第1の熱可塑性樹脂繊維と同様にして製造される。
第2の熱可塑性樹脂繊維は、通常、複数の繊維が束状になった第2の熱可塑性樹脂繊維束として混繊糸の製造に用いられる。
第2の熱可塑性樹脂繊維束の好ましい繊度及び繊維数は、第1の熱可塑性樹脂繊維束の好ましい繊度及び繊維数と同様である。
(混繊糸の製造方法)
混繊糸は、公知の混繊方法によって強化繊維と第1の熱可塑性樹脂繊維と必要に応じて第2の熱可塑性樹脂繊維とを混繊することによって製造できる。
混繊方法としては、開繊合糸法、流体交絡(インターレース)法等が挙げられる。
開繊合糸法は、静電気力や流体噴霧による圧力、ローラー等に押し付ける圧力等による外力によって各繊維を開繊した後、各繊維を開繊したままで合糸し、引き揃える方法である。
流体交絡法としては、空気、窒素ガス、水蒸気等の流体による渦流乱流帯域を糸軸とほぼ平行に複数形成し、渦流乱流帯域に各繊維を導いてループや捲縮を生じない程度の張力下で非嵩高性の糸条とする方法、強化繊維のみ開繊した後、又は強化繊維及び熱可塑性樹脂繊維を開繊した後に流体交絡させる方法等が挙げられる。
混繊方法の具体例としては、例えば、特開平2−308824号公報、特開平3−33237号公報、特開平2−28219号公報、特開平4−73227号公報、特開平9−324331号公報、特許文献1、特許文献2等に記載の方法が挙げられる。
混繊糸の製造には、通常、強化繊維束及び熱可塑性樹脂繊維束が用いられる。
1本の混繊糸において強化繊維が所定の繊度及び繊維数を満たすために、1本の強化繊維束で製造してもよく、複数本の強化繊維束を用いて製造してもよい。1本の混繊糸を製造するために、1〜10本の強化繊維束を用いることが好ましく、1〜3本の強化繊維束を用いることがより好ましく、1本の強化繊維束を用いることがさらに好ましい。
1本の混繊糸において熱可塑性樹脂繊維が所定の繊度及び繊維数を満たすために、1本の熱可塑性樹脂繊維束で製造してもよく、複数本の熱可塑性樹脂繊維束を用いて製造してもよい。1本の混繊糸を製造するために、1〜100本の熱可塑性樹脂繊維束を用いることが好ましく、1〜50本の熱可塑性樹脂繊維束を用いることがより好ましく、3〜15本の熱可塑性樹脂繊維束を用いることがさらに好ましい。
(作用機序)
以上説明した本発明の混繊糸にあっては、強化繊維と第1の熱可塑性樹脂繊維とを含む混繊糸であるため、混繊糸を加工した布帛を用いて繊維強化成形品を製造する際に、熱可塑性樹脂の強化繊維間への含浸性に優れる。また、第1の熱可塑性樹脂繊維が、接着性官能基を有する溶融成形可能なフッ素樹脂を含むため、繊維強化成形品とした際にマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂と強化繊維との接着性に優れる。そのため、機械特性に優れる繊維強化成形品を得ることができる。
<布帛>
本発明の布帛は、本発明の混繊糸を含む。本発明の混繊糸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の布帛は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて本発明の混繊糸以外の糸条(以下、「他の糸条」と記す。)を含んでいてもよい。他の糸条としては、本発明の混繊糸以外の混繊糸、強化繊維束、熱可塑性繊維束等が挙げられる。
本発明の布帛は、2枚以上を積層した積層物であってもよい。
布帛の形態としては、織物、編物、組物、不織布、トウシート等が挙げられる。
織物の形態としては、平織、八枚朱子織、四枚朱子織、綾織等が挙げられる。また、繊維の屈曲を有さないノンクリンプ織物(ノンクリンプファブリック)であってもよい。
編物の形態としては、たて編み、よこ編み、ラッセル編み等が挙げられる。また、編みロープ(縄)であってもよい。
組物としては、組紐等が挙げられる。
不織布としては、混繊糸及び必要に応じて他の糸条を連続繊維の状態でランダムに積層し、熱融着又は交絡によって一体化した不織布、混繊糸及び必要に応じて他の糸条を短く切断して積層し、熱融着によって一体化した不織布(チョップドストランドマット)等が挙げられる。
トウシートとしては、混繊糸及び必要に応じて他の糸条を一方向に揃えたテープ状もしくはシート状の基材が挙げられる。
本発明の布帛は、公知の方法によって製造される。
以上説明した本発明の布帛にあっては、強化繊維と第1の熱可塑性樹脂繊維とを含む混繊糸を含むため、布帛を用いて繊維強化成形品を製造する際に、熱可塑性樹脂の強化繊維間への含浸性に優れる。また、第1の熱可塑性樹脂繊維が、接着性官能基を有する溶融成形可能なフッ素樹脂を含むため、繊維強化成形品とした際にマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂と強化繊維との接着性に優れる。そのため、機械特性に優れる繊維強化成形品を得ることができる。
<繊維強化成形品>
本発明の繊維強化成形品は、本発明の布帛を成形してなるものである。
本発明の繊維強化成形品は、本発明の布帛と、フッ素樹脂A及び他の熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方を含むフィルムとの積層物を成形してなるものであってもよい。
本発明の繊維強化成形品の製造方法としては、本発明の布帛を、フッ素樹脂Aの融点以上、かつ他の熱可塑性樹脂を含む場合は他の熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して成形する方法が挙げられる。
また、本発明の繊維強化成形品の製造方法としては、本発明の布帛と、フッ素樹脂A及び他の熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方を含むフィルムとの積層物を、フッ素樹脂Aの融点以上、かつ他の熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して成形する方法が挙げられる。
繊維強化成形品の具体的な製造方法としては、例えば、本発明の布帛及び必要に応じてフィルムを金型内に配置し、フッ素樹脂Aの融点以上、かつ他の熱可塑性樹脂を含む場合は他の熱可塑性樹脂の融点以上に加熱されたプレス成形機で加熱及び加圧する方法が挙げられる。
本発明の布帛は、2枚以上用いてもよい。また、フィルムは、2枚以上用いてもよい。
本発明の繊維強化成形品の用途としては、下記のものが挙げられる。
電気・電子機器(パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳等の携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品等)の筐体、内部部材(トレイ、シャーシ等)、内部部材のケース、機構部品等、産業機械の筐体、建材(パネル)等。
自動車、二輪車関連部品、部材及び外板:モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、各種バルブ(排気ガスバルブ等)、燃料関係、排気系又は吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラー、各種モジュール等。
航空機関連部品、部材及び外板:ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブ等。
鉄道関連部品、部材及び外板:台車フレーム、骨、梁、屋根板、床等。
その他:風車の羽根、掘削治具、掘削パイプ、補強テープ、燃料電池部材、バッテリー部材等。
本発明の繊維強化成形品は、特に、航空機部材、スポーツ用品、風車の羽根、自動車外板、自動車内装、及び電子機器の筐体、トレイ、シャーシ等に好ましく用いられる。
以上説明した本発明の繊維強化成形品にあっては、本発明の布帛を成形したものであるため、繊維強化成形品を製造する際に熱可塑性樹脂が強化繊維間に充分に含浸する。また、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂と強化繊維との接着性に優れる。そのため、耐衝撃性等の機械特性に優れる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(含フッ素重合体における単位の割合)
含フッ素重合体における単位の割合は、溶融NMR分析、フッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析によって求めた。
(接着性官能基の含有量)
下記の赤外吸収スペクトル分析によって、含フッ素重合体におけるIAH単位の割合を求めた。
含フッ素重合体をプレス成形して200μmのフィルムを得た。赤外吸収スペクトルにおいて含フッ素重合体中のIAH単位の吸収ピークは1778cm−1に現れる。この吸収ピークの吸光度を測定し、IAHのモル吸光係数20810mol−1・L・cm−1を用いて、IAH単位の割合(モル%)を求めた。
IAH単位の割合をa(モル%)とすると、主鎖炭素数1×10個に対する接着性官能基(酸無水物基)の個数は、[a×10/100]個と算出される。
(融点)
示差走査熱量計(セイコーインスツル社製、DSC−7020)を用い、含フッ素重合体又はポリアミドを10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度(℃)を融点とした。
(アイゾット衝撃強度)
コンターマシン(アマダ社製、V−400)を用いてシートを切断し、高さ:63mm、幅:13mmのサンプルを得た。サンプルの高さ32mmの位置にノッチを入れ、試験片を得た。
試験片について、アイゾッド試験装置(東洋精機製作所社製)を用い、ハンマー容量:2.75J、ハンマー質量×重力加速度:13.97N、軸心から重心までの距離:10.54cm、軸心から打撃点までの距離:33.5cmの条件にてアイゾット衝撃強度を測定した。
(溶融紡糸性)
実施例に記載の方法にて含フッ素重合体又は樹脂組成物を溶融紡糸して熱可塑性樹脂繊維を得た。溶融紡糸性を下記の基準で評価した。
○:溶融紡糸が可能である。
△:溶融紡糸が可能であるが不安定である。
×:溶融紡糸できない。
(フッ素樹脂A)
含フッ素重合体A−1:
内容積が430Lの撹拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサンの237.2kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子社製、AK225cb、以下「AK225cb」と記す。)の49.5kg、HFPの122kg、PFBEの1.31kgを仕込み、重合槽内を66℃に昇温し、TFEとエチレンの混合ガス(TFE/エチレン=89/11モル比)で、1.5MPa[gauge]まで昇圧した。重合開始剤としてtert−ブチルペルオキシピバレートの2質量%を含む1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の2.5Lを仕込み、重合を開始させた。重合中、圧力が一定になるようにTFEとエチレンの単量体混合ガス(TFE/エチレン=54/46モル比)を連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとエチレンの合計モル数に対して1モル%に相当する量のPFBEと0.4モル%に相当する量のIAHを連続的に仕込んだ。重合開始から9.3時間後、単量体混合ガスの29kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を25℃まで降温するとともに、常圧までパージした。
得られたスラリ状の含フッ素重合体A−1を、水の300kgを仕込んだ860Lの造粒槽に投入し、撹拌下に105℃まで昇温して溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で15時間乾燥して、33.2kgの含フッ素重合体A−1の乾燥造粒物を得た。
含フッ素重合体A−1における各単量体単位の割合は、TFE単位/HFP単位/PFBE単位/IAH単位/E単位=46.2/9.4/1.0/0.4/43.0モル比であり、接着性官能基の含有量は、含フッ素重合体A−1の主鎖炭素数1×10個に対し3000個であり、含フッ素重合体A−1の融点は170℃であり、溶融流れ速度(250℃、荷重21.2N)は4.4g/10分であった。
含フッ素重合体A−2:
国際公開第2015/182702号の実施例1と同様にして含フッ素重合体A−2を得た。含フッ素重合体A−2における各単位の割合は、TFE単位/IAH単位/PFBE単位/E単位=58.5/0.1/2.4/39モル比であり、接着性官能基の含有量は、含フッ素重合体A−2の主鎖炭素数1×10個に対し3000個であり、含フッ素重合体A−2の融点は245℃であり、溶融流れ速度(297℃、荷重49N)は22g/10分であった。
含フッ素重合体A’−3:接着性官能基を有しないETFE(旭硝子社製、LM−ETFE LM−730AP、融点:225℃、溶融流れ速度(297℃、荷重49N):30g/分)。
(他の熱可塑性樹脂)
他の熱可塑性樹脂B−1:ポリアミド6(宇部興産社製、UBEナイロン 1022B、融点:223℃)。
他の熱可塑性樹脂B−2:ポリアミド66(旭化成社製、レオナ1500 X11、融点:265℃)。
他の熱可塑性樹脂B−3:ポリアミド9T(クラレ社製、ジェネスタN1000A、融点:300℃)。
(実施例1〜3)
含フッ素重合体A−1と他の熱可塑性樹脂B−1を表1に示す割合でドライブレンドし、2軸押出機(テクノベル社製、KZW15TW−45MG)に投入し、樹脂吐出量:2.0kg/時間、スクリュー回転数:200rpm、設定樹脂温度:240℃の条件にて溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をメルト熱プレス機(テスター産業社製)でプレス成形し、厚さ2.8mmのシートを得た。プレス条件は、加工温度:240℃、予熱:6分、圧力:10MPa、プレス時間:3分間とした。得られたシートを用いてアイゾット衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
得られた樹脂組成物を、溶融紡糸装置の炉体(バレル)に供給して加熱溶融し、吐出ダイから押出し、張力をかけて引き取りながら冷却して第1の熱可塑性樹脂繊維を製造した。紡糸条件は下記の通りとした。溶融紡糸性の結果を表1に示す。
[紡糸条件]
炉体内温度:260℃、
せん断速度(γ):60.8sec−1
延伸倍率:1.5〜1.6倍、
繊維直径:0.65±0.01mm。
得られた第1の熱可塑性樹脂繊維と炭素繊維の混繊糸を作製し、混繊糸から織物を作製した。得られた織物を10枚積み重ね、積層物とした。積層物について、メルト熱プレス機(テスター産業社製)を用い、温度:260℃、圧力:10MPa、プレス時間:15分間(予熱工程:12分(加圧無し)、圧縮工程:3分)の条件でプレス成形し、厚さ2.3mm(±0.05mm)の積層体(繊維強化成形品)を得た。得られた積層体は、各層間の接着性に優れるとともに、アイゾット衝撃強度も良好であった。
(比較例1)
含フッ素重合体A−1の代わりに含フッ素重合体A’−3を用いた以外は、実施例2と同様に樹脂組成物を調製し、厚さ2.8mmのシートを得た。得られたシートを用いてアイゾット衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
実施例2の樹脂組成物の代わりに比較例1の樹脂組成物を用いた以外は、実施例2と同様に第2の熱可塑性樹脂繊維を製造した。溶融紡糸性の結果を表1に示す。
(実施例4、5)
含フッ素重合体A−2と他の熱可塑性樹脂B−2(実施例4)又は他の熱可塑性樹脂B−3(実施例5)を表1に示す割合でドライブレンドし、2軸押出機(テクノベル社製、KZW15TW−45MG)に投入し、樹脂吐出量:2.0kg/時間、スクリュー回転数:200rpm、設定樹脂温度:実施例4は300℃、実施例5は320℃の条件にて溶融混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物をメルト熱プレス機(テスター産業社製)でプレス成形し、厚さ2.8mmのシートを得た。プレス条件は、加工温度:実施例4は300℃、実施例5は320℃、予熱:6分、圧力:10MPa、プレス時間:3分間とした。得られたシートを用いてアイゾット衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
得られた樹脂組成物を、溶融紡糸装置の炉体(バレル)に供給して加熱溶融し、吐出ダイから押出し、張力をかけて引き取りながら冷却して第1の熱可塑性樹脂繊維を製造した。紡糸条件は下記の通りとした。溶融紡糸性の結果を表1に示す。
[紡糸条件]
炉体内温度:実施例4は300℃、実施例5は320℃、
せん断速度(γ):60.8sec−1
延伸倍率:1.5〜1.6倍、
繊維直径:0.65±0.01mm。
得られた第1の熱可塑性樹脂繊維と炭素繊維の混繊糸を作製し、混繊糸から織物を作製した。得られた織物を10枚積み重ね、積層物とした。積層物について、メルト熱プレス機(テスター産業社製)を用い、温度:実施例4は300℃、実施例5は320℃、圧力:10MPa、プレス時間:15分間(予熱工程:12分(加圧無し)、圧縮工程:3分)の条件でプレス成形し、厚さ2.3mm(±0.05mm)の積層体(繊維強化成形品)を得た。得られた積層体は、各層間の接着性に優れるとともに、アイゾット衝撃強度も良好であった。
(実施例6)
含フッ素重合体A−2をメルト熱プレス機(テスター産業社製)でプレス成形し、厚さ2.8mmのシートを得た。プレス条件は、加工温度:290℃、予熱:6分、圧力:10MPa、プレス時間:3分間とした。得られたシートを用いてアイゾット衝撃強度を測定した。結果を表1に示す。
含フッ素重合体A−2を、溶融紡糸装置の炉体(バレル)に供給して加熱溶融し、吐出ダイから押出し、張力をかけて引き取りながら冷却して第1の熱可塑性樹脂繊維を製造した。紡糸条件は下記の通りとした。溶融紡糸性の結果を表1に示す。
[紡糸条件]
炉体内温度:270℃、
せん断速度(γ):60.8sec−1
延伸倍率:1.5〜1.6倍、
繊維直径:0.65±0.01mm。
得られた第1の熱可塑性樹脂繊維と炭素繊維の混繊糸を作製し、混繊糸から織物を作製した。得られた織物を10枚積み重ね、積層物とした。積層物について、メルト熱プレス機(テスター産業社製)を用い、温度:290℃、圧力:10MPa、プレス時間:15分間(予熱工程:12分(加圧無し)、圧縮工程:3分)の条件でプレス成形し、厚さ2.3mm(±0.05mm)の積層体(繊維強化成形品)を得た。得られた積層体は、各層間の接着性に優れるとともに、アイゾット衝撃強度も良好であった。
Figure 2019099955
なお、表1に示す配合比は体積%であり、含フッ素重合体A−1〜A−3’の比重は1.75、他の熱可塑性樹脂B−1〜B−3の比重は1.14として計算した。
本発明の混繊糸及び布帛は、繊維強化成形品の原材料及び中間体として有用である。

Claims (12)

  1. 強化繊維と第1の熱可塑性樹脂繊維とを含む混繊糸であり、
    前記第1の熱可塑性樹脂繊維が、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する溶融成形可能なフッ素樹脂を含む、混繊糸。
  2. 前記第1の熱可塑性樹脂繊維が、前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項1に記載の混繊糸。
  3. 前記混繊糸が、前記溶融成形可能なフッ素樹脂を含まず、前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む第2の熱可塑性樹脂繊維をさらに含む、請求項1又は2に記載の混繊糸。
  4. 前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルイミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド及び液晶ポリエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2又は3に記載の混繊糸。
  5. 前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリアミドであり、
    前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド9T、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66コポリマー、ポリアミド6/66/610コポリマー、ポリアミド6T、ポリアミド6I及びポリアミドMXD6からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2又は3に記載の混繊糸。
  6. 前記溶融成形可能なフッ素樹脂の融点が、100〜325℃である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の混繊糸。
  7. 前記強化繊維が、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の混繊糸。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の混繊糸を含む、布帛。
  9. 請求項8に記載の布帛を成形してなる、繊維強化成形品。
  10. 請求項8に記載の布帛と、前記溶融成形可能なフッ素樹脂及び前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方を含むフィルムとの積層物を成形してなる、繊維強化成形品。
  11. 請求項8に記載の布帛を、前記溶融成形可能なフッ素樹脂の融点以上、かつ前記布帛が前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む場合は前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して成形する、繊維強化成形品の製造方法。
  12. 請求項8に記載の布帛と、前記溶融成形可能なフッ素樹脂及び前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂のいずれか一方又は両方を含むフィルムとの積層物を、前記溶融成形可能なフッ素樹脂の融点以上、かつ前記溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して成形する、繊維強化成形品の製造方法。
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