JP2019099633A - 焼成色鉛筆芯 - Google Patents

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【課題】書き味が滑らかで、筆跡の発色性に優れ、焼成色鉛筆芯および筆跡の経時変化が少なく、保存安定性に優れた、焼成色鉛筆芯の提供。【解決手段】体質材と無機系結合材を含む焼成芯体の気孔中に、沸点が250℃以上のグリコールエーテルと蛍光染料を含むインキを含浸した焼成色鉛筆芯。前記グリコールエーテルが、フェニル基を有するジグリコールエーテル類である焼成色鉛筆芯。【選択図】なし

Description

本発明は、焼成色鉛筆芯に関する。更に詳細には、発色性に優れ、書き味が滑らかで、保存安定性に優れる、蛍光染料を含むインキが気孔中に含浸されてなる焼成色鉛筆芯に関する。
従来から、色鉛筆芯には種々のものが知られている。例えば、窒化ホウ素などの体質材と粘土などの結合材を主成分として有機高分子化合物などを加えた混練物を押出成型した後、高温で焼成し得られた白色芯体の気孔中に染料を含むインキを含浸させて色鉛筆芯とする方法がとられている(例えば、特許文献1〜4参照)。また、鮮やかな発色であることから、色鉛筆芯として蛍光色の色鉛筆芯についても検討されている(例えば特許文献5〜6参照)。
しかしながら、前述した色鉛筆芯は、発色濃度を向上するために、気孔率を高くして含浸するインキの量を増やすと、強度が低下したり、染料の量を多くすると、含浸するインキに用いる溶剤に十分溶解しなかったり、経時後に、溶剤が揮発したり、色目が変化したりすることがあった。前記の通り、染料と溶剤の組合せによっては、発色性が劣ったり、書き味が悪くなったり、強度が低下するなど、色鉛筆芯として十分満足するものではなかった。
特開昭51−63744号公報 特開昭61−23667号公報 実開昭61−142835号公報 特開平07−041723号公報 特開昭56−163172号公報 特開2015−227426号公報
本発明は、書き味が滑らかで、筆跡の発色性に優れ、焼成色鉛筆芯および筆跡の経時変化が少なく、保存安定性に優れた、焼成色鉛筆芯を提供するものである。
本発明は、特定のグリコールエーテルと蛍光染料を含むインキを焼成芯体の気孔中に含浸し、焼成色鉛筆芯とすること等により前記課題が解決された。
すなわち、本発明は、
「1.体質材と無機系結合材を含む焼成芯体の気孔中に、沸点が250℃以上のグリコールエーテルと、蛍光染料を含むインキを含浸したことを特徴とする焼成色鉛筆芯。
2.前記グリコールエーテルが、フェニル基を有するジグリコールエーテル類であることを特徴とする第1項に記載の焼成色鉛筆芯。」に関する。
本発明によれば、焼成芯体の気孔中に、沸点が250℃以上のグリコールエーテルと蛍光染料を含むインキを含浸したことにより、グリコールエーテルが揮発することなく、書き味が滑らかで、筆跡の発色性が優れた焼成色鉛筆芯となった。さらに、含浸したインキが揮発することもなく、経時後にインキの色目や物性などが変化することなく、保存安定性に優れるなど、焼成色鉛筆芯としての優れた効果を奏するものである。
本発明の焼成色鉛筆芯は、焼成芯体の気孔中に、特定のグリコールエーテルと蛍光染料とを含むインキを含浸させたことが、ひとつの特徴である。
本発明の焼成色鉛筆芯に用いる焼成芯体としては、体質材と無機系結合材を含んでなるが、体質材としては、酸化チタン、雲母、タルク、窒化ホウ素、アルミナ、炭酸カルシウムなど白色系のものや、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛など有色系のものなどが挙げられる。本発明においては、蛍光色に発色する筆跡を得ることから、白色系のものを用いるのが好ましい。特に、窒化ホウ素を用いると、体質材が蛍光発色を阻害せず、また、焼成色鉛筆芯の強度が高くなることから好ましい。
前記無機系結合材としては、カオリナイト系、ハロサイト系、モンモリロナイト系、セリサイト系、ベントナイト系などの粘土類、セラミックス類、ゼオライト、珪藻土、活性白土、シリカ、リン酸アルミニウム、シリコーン樹脂、シリコーンゴムなどが挙げられ、これらを単独、あるいは組み合わせて用いることができる。
本発明による焼成色鉛筆芯は、焼成芯体の気孔中に特定のグリコールエーテルと蛍光染料とを含むインキを含浸させてなるが、前記特定のグリコールエーテルとしては、沸点が250℃以上のグリコールエーテルである。沸点が250℃以上のグリコールエーテルとすることで、焼成芯体中にインキを含浸した際に、揮発することなく、焼成色鉛筆芯の発色性、書き味を落とすことなく、さらに、保存安定性も向上できる。具体的には、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。経時的にインキが変化しないことから、ジグリコールエーテルが好ましく、後述する蛍光染料の溶解性やインキとしての安定性から、フェニル基を有していると特に好ましい。具体的には、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。さらに、焼成色鉛筆芯の性能に影響を及ぼさない範囲で、沸点が250°以下のグリコールエーテルを併用してもよい。
前記沸点が250℃以上のグリコールエーテルの配合割合としては、インキ全質量に対して、40〜90質量%であることが好ましい。この範囲より少ないと、蛍光染料が経時的に析出するなど、インキの経時安定性や、焼成色鉛筆芯の保存安定性が劣る恐れがあり、この範囲より多いと、蛍光染料の含有量が少なくなり、発色性が劣る傾向がある。さらに好ましくは、50〜85質量%であり、さらに好ましくは、60〜80質量%である。前記範囲にあると、発色性も良好で、インキの経時安定性、焼成色鉛筆芯の保存安定性が良好となる。
本発明に用いる蛍光染料は、前記沸点が250℃以上のグリコールエーテルに溶解し、発色性が高ければ、特に限定はないが、具体的には、ベーシックイエロー1、同40、ベーシックレッド 1、同1:1、同13、ベーシックバイオレット1、同7、同10、同11:1、ベーシックオレンジ22、ベーシックブルー7、ベーシックグリーン1、アシッドイエロー3、同7、アシッドレッド52、同77、同87、同92、アシッドブルー9、ディスパースイエロー121、同82、同83、ディスパースオレンジ11、ディスパースレッド58、ディスパースブルー7、ダイレクトイエロー85、ダイレクトオレンジ8、ダイレクトレッド9、ダイレクトブルー22、ダイレクトグリーン6、ソルベントイエロー44、ソルベントレッド49、ソルベントブルー5、ソルベントグリーン7などが挙げられる。特に、発色性、前記グリコールエーテルの溶解性、インキ安定性の観点から、前記蛍光染料の中でも、アゾメチン系、キサンテン系、トリフェニルメタン系の蛍光染料などが好ましく用いられる。具体的には、アゾメチン系の蛍光染料としては、ベーシックイエロー1、同40、キサンテン系の蛍光染料としては、ベーシックレッド1:1、ベーシックバイオレット11:1、トリフェニルメタン系の蛍光染料としては、ベーシックバイオレット1などが特に好ましい染料として挙げられる。これらの染料は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
さらに、焼成色鉛筆芯の性能に影響を及ぼさない範囲で、筆跡の色を調整するなどために、前記蛍光染料以外の染料を併用してもよい。
また、前記樹脂粒子を前記蛍光染料で染着した着色樹脂粒子などを用いてもよい。
前記蛍光染料の配合割合としては、インキ全質量に対して、10〜50質量%であることが好ましい。この範囲より少ないと、蛍光染料の含有量が少なくなり、発色性が劣る傾向があり、この範囲より多いと、蛍光染料の発色性の向上が見られない傾向にあり、蛍光染料が経時的に析出するなど、インキの経時安定性や、焼成色鉛筆芯の保存安定性が劣る恐れがある。さらに好ましくは、20〜45質量%であり、さらに好ましくは、25〜40質量%である。前記範囲にあると、発色性も良好で、インキの経時安定性、焼成色鉛筆芯の保存安定性が良好となる。
本発明に用いるインキには、前記グリコールエーテルと前記蛍光染料の組み合わせとすることで、グリコールエーテル中に十分な蛍光染料を溶解でき、染料の変色や、インキの揮発がなく、また、インキの変色や物性の変化を生じないため、焼成色鉛筆芯や筆跡の初期、経時性能を向上することができる。
本発明に用いるインキには、焼成色鉛筆芯の性能に影響を及ぼさない範囲で各種添加剤を用いてもよい。具体的には、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、樹脂等が挙げられる。
また、本発明に用いる焼成芯体の気孔率は特に限定されないが、5〜40%の範囲であることが好ましい。5%より小さいと含浸するインキの量が少なくなり、発色が劣ったり、書き味が若干ざらつく傾向があり、40%より大きいと、得られた焼成色鉛筆芯の強度が若干小さくなり、折れやすくなる傾向がある。5〜40%の範囲であると、発色性も良好で、書き味が滑らかで、焼成色鉛筆芯の強度が維持できるので好ましい。
なお、本発明に用いる焼成芯体の気孔率は、以下の方法により測定することが出来る。浸透性の良い液体(例えばベンジルアルコール)を芯の気孔に吸収させ、吸収された液体の容量を芯の嵩容積で除し、百分率で表したものであり、下記(数1)に示す式により、求められる。
Figure 2019099633
本発明の焼成鉛筆芯の製造方法の一例を挙げると以下の通りである。体質材と無機系結合材を加え、さらに必要に応じて溶剤、可塑剤などを添加して混練、押出成形する。この押出成形物を、600℃以上の高温で焼成し、気孔を有する焼成芯体を得る。前記焼成芯体の気孔中に、沸点が250℃以上のグリコールエーテルと、蛍光染料を含むインキを含浸して焼成色鉛筆芯とする。前記インキを含浸する方法としては、常圧含浸または減圧、加圧含浸法を用いて、含浸を行うことができる。充分に含浸させた後に、表面に付着した余分なインキを遠心分離または吹き付け洗浄などにより除去する。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
(実施例1)
(焼成色鉛筆芯の製造)
(1a)焼成芯体の製造
窒化ホウ素 45質量部
シリカ 45質量部
ポリビニルアルコール 10質量部
水 100質量部
上記配合物をニーダー、三本ロールにて水分を蒸発しながら加熱混練し、得られた混練物を所定の径にて押出成形を行い、成形物を得た。この成形物をアルゴンガス中において、昇温速度10℃/時間で600℃まで昇温し5時間保持し、その後、酸素雰囲気として、100℃/hrで昇温し、1100℃で1時間焼成して、気孔率が30%の焼成芯体を得た。
(1b)含浸インキの製造
ジエチレングリコールモノベンジルエーテル 70質量部
桃色蛍光染料 30質量部
(キサンテン系染料、ベーシックバイオレット11:1/ベーシックレッド1:1)
上記配合物を70℃に加温しながら、均一に混合するまで攪拌をし、含浸インキ(1)を得た。
(1c)焼成色鉛筆芯の製造
上記(1a)で得られた焼成芯体を、(1b)で作製した含浸インキ(1)中に70℃に加温した状態で浸漬し、10時間保持をした。次に焼成芯体の表面をエタノールで洗浄し、表面に付着した過剰のインキを除去し、焼成色鉛筆芯を得た。
(実施例2〜9、比較例1〜4)
(b)含浸インキの製造
(表1)に示した配合とした以外は実施例1と同じ方法により、含浸インキ(2)〜(13)を作製した。
Figure 2019099633

・桃色蛍光染料:キサンテン系染料、ベーシックバイオレット11:1/ベーシックレッド1:1
・黄色蛍光染料:キサンテン系、アゾメチン系混合染料、ベーシックイエロー40/ベーシックバイオレット11:1/ベーシックレッド1:1・紫色蛍光染料:トリフェニルメタン系染料、ベーシックバイオレット1
・赤色蛍光染料:キサンテン系、アゾメチン系混合染料、ベーシックイエロー40/ベーシックバイオレット11:1/ベーシックレッド1:1
・青色染料:アシッドブルー9と有機アミンの造塩染料
・ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(沸点:302.0℃)
・ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点:283.0℃)
・プロピレングリコールモノフェニルエーテル(沸点:242.7℃)
・トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:249.0℃)
・ベンジルアルコール(沸点:205.0℃)
・エチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点:244.7℃)
(c)焼成鉛筆芯の製造
実施例1の(1a)で得られた焼成芯体と、(表1)に示した含浸インキを用いた以外は、実施例1と同じ方法により、実施例2〜9、比較例1〜4の焼成色鉛筆芯を得た。
実施例1〜9、比較例1〜4で得た焼成色鉛筆芯について、下記要領にて評価を行った。結果を(表2)に示す。
Figure 2019099633

発色性1(初期):焼成色鉛筆芯を用いて、筆記用紙Aに筆記し、その時の発色状態を目視により評価した。
○ :非常に発色が良く、蛍光色が鮮やかに視認できる。
△ :筆跡が薄く、やや発色に劣るが、蛍光色として視認可能。
× :筆記することができず、筆跡を視認できない。
書き味1(初期):焼成色鉛筆芯を用いて、筆記用紙Aに筆記し、その時の書き味を官能試験により評価した。
○ :滑らかに筆記可能。
△ :筆感がややざらつき重い。
× :筆感がざらつき重く、筆記できない。
保存安定性:焼成鉛筆芯の質量を、初期と25℃で4週間放置し、発色性、書き味について初期と同じ方法で評価を行った。た後に測定し、その減量を比較した。
発色性2(経時):焼成色鉛筆芯を用いて、筆記用紙Aに筆記し、その時の発色状態を目視により評価した。
○ :初期と変わりなく非常に発色が良く、蛍光色が鮮やかに視認できる。
△ :初期と比べて筆跡が薄く、やや発色に劣るが、蛍光色として視認可能。
× :筆記することができず、筆跡を視認できない。
書き味2(経時):焼成色鉛筆芯を用いて、筆記用紙Aに筆記し、その時の書き味を官能試験により評価した。
○ :滑らかに筆記可能。
△ :筆感がややざらつき重い。
× :筆感がざらつき重く、筆記できない。
実施例1〜8の焼成色鉛筆芯は、経時後も初期と変わりなく、良好な発色性、書き味を有していた。さらに、インキを含浸した芯体も初期と比較して変化しておらず、焼成色鉛筆芯としての保存安定性も良好であった。実施例9においては、実施例1〜8と比較すると、経時後の性能が若干劣ってはいたが、筆跡、焼成色鉛筆芯としての保存安定性において、一定の性能を保っていた。一方、比較例1〜4においては、実施例に比較して、初期の性能は満足するもので有ったが、経時後は、焼成芯体の気孔中に含浸したインキの揮発が見られ、筆感がざらついて筆記できず、焼成色鉛筆芯としての性能を満たしていなかった。
本発明の焼成色鉛筆芯は、発色性に優れ、書き味が滑らかで経時変化が少なく、保存安定性に優れていることから、シャープペンシル、鉛筆、プロッターペン用等の芯として利用が可能である。

Claims (2)

  1. 体質材と無機系結合材を含む焼成芯体の気孔中に、沸点が250℃以上のグリコールエーテルと、蛍光染料を含むインキを含浸したことを特徴とする焼成色鉛筆芯。
  2. 前記グリコールエーテルが、フェニル基を有するジグリコールエーテル類であることを特徴とする請求項1に記載の焼成色鉛筆芯。
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