JP2019096624A - 電極材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池や水電解装置等の電極材料に適し、貴金属触媒の使用量が低減された電極材料を提供する。【解決手段】電子伝導性酸化物を含む担体(コア)に、平均膜厚が2nm以下の薄膜状に触媒活性に優れる貴金属触媒(シェル)が析出し、被覆したコアシェル構造の電極材料。当該電極材料は、貴金属触媒の使用量が低減され、優れた電極触媒活性及び導電性を有し、燃料電池や水電解装置等の電極の構成材料として好適に使用できる。【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池や水電解装置等の電極の構成材料として使用できる電極材料に関する。
固体高分子形燃料電池(PEFC)では、アノードで水素酸化反応、カソードで酸素還元反応が触媒存在下で起こることにより発電する。PEFCの作動温度は80℃付近と比較的低いため、各極(アノード、カソード)での化学反応を円滑に進行させるために低温でも高い触媒活性をもつPtやPt合金などのPt系触媒が用いられている。現在主に使用されているPEFC電極は、Pt系触媒粒子が、カーボンや電子伝導性酸化物などの担体に担持されたものである。
また、PEFCと同様に固体高分子膜を使用した固体高分子形水電解セルが知られている。水の電気分解反応には、標準状態(25℃、1気圧)で1.23V以上の電圧が理論的に必要となり、水電解セルは、燃料電池セル(0.6V〜1.0V程度)よりも更に高い電位下で使用される。特に再生可能エネルギーの貯蔵を目的に水電解セルを利用する際には、高い電位(1.5V〜2.0V程度)で電位変動の激しい状況下で用いられるため、水電解セル用電極には、PEFC用電極材料より高電位における高い耐久性が求められる。そのため、水電解用電極材料に用いられる電極触媒として、Ptの代わりにより高価なイリジウム(Ir)をIr酸化物の形で用いることが多い。
一方で、PtやIrなどは、貴金属であり希少かつ高価である。そして、燃料電池セルや水電解セルの電極反応に実質的に寄与しているのは、PtやIrO2などの貴金属触媒粒子の表面のみである。そこで、貴金属の使用量を低減し、有効利用するためには、少ない貴金属で、できるだけ大きな表面積を確保することが求められる。そのため、使用量のさらなる低減が求められており、PtやIrなどの貴金属の使用量のさらなる低減・有効利用のために様々な研究がおこなわれている。
例えば、Pt系触媒粒子の担持方法としては、例えば、貴金属触媒前駆体として貴金属アセチルアセトナートを使用する貴金属アセチルアセトナート法や貴金属コロイドを使用するコロイド法などの湿式法が知られている(例えば、特許文献1)。
また、RuやPd等の非白金金属をコアとし、シェルをPtとしたコアシェル構造の電極材料が報告されている(例えば、非特許文献1、2)。
国際公開2015/141595号
J.A.Viswanathan、V.Forman、A.J.Larsen、A.H.Norskov、J.K.Jaramillo 、「ChemElectroChem」、2014年、1巻、1号、p67−71 X.Wang、M.Vara、M.Luo、H.Huang、A.Ruditskiy et al.、「Journal of the American Chemical society」、2015年、137巻、47号、p15036−15042
しかしながら、従来の湿式法によるPt系触媒粒子の担持では、微細なPt系触媒粒子も形成されるが、Pt系触媒粒子同士が凝集する場合もあった。
コアシェル構造の電極材料も、耐久性の問題や、コアとして用いているRuやPd自体が貴金属であり、高コスト化は免れないという問題がある。
そのため、貴金属の使用量をさらに低減させることが実用化に向けて望まれている。
また、Pt系触媒粒子が担体に担持された電極材料や、Ptをシェルとするコアシェル構造の電極材料は、一般的に、Pt前駆体を担体やコアと反応させ得られるものであるため、Pt前駆体と、担体及びコアとの反応を高め、電極材料の製造において、未反応のPt前駆体を低減させることも望まれている。
また、水電解用の電解触媒としても、一般的に、数ミクロン径の酸化イリジウム(IrO2)粉末が、市販・使用されており、貴金属の使用量のさらなる低減が望まれている。
かかる状況下、本発明の目的は、電子伝導性酸化物を含む担体の表面に、PtやIrなどの貴金属を、微粒子状及び/又は薄膜状で析出させた電極材料を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 電子伝導性酸化物を含む担体の表面の少なくとも一部に、平均粒径4nm以下の微粒子状、及び/又は、平均膜厚が2nm以下の薄膜状の貴金属触媒が担持された構造を有する電極材料。
<2> 電子伝導性酸化物を含む担体の全面に、平均膜厚が2nm以下の膜状の貴金属触媒が担持された構造を有する<1>に記載の電極材料。
<3> 前記電子伝導性酸化物を含む担体が、平均粒径2〜40nmの粒子である<1>または<2>に記載の電極材料。
<4> 前記電子伝導性酸化物が、酸化スズ又は酸化スズを主体とする電子伝導性酸化物である<1>から<3>のいずれかに記載の電極材料。
<5> 前記貴金属触媒が、Pt及び/又はPtを含む合金である<1>から<4>のいずれかに記載の電極材料。
<6> 前記貴金属触媒が、Ir及び/又はIrを含む合金である<1>から<4>のいずれかに記載の電極材料。
<7> 固体高分子形燃料電池のカソード用、または固体高分子形水電解装置のアノード用の電極材料である<1>から<6>のいずれかに記載の電極材料。
本発明によれば、電子伝導性酸化物を含む担体の表面に、貴金属を、微粒子状及び/又は薄膜状で析出させた電極材料が提供される。
本発明の製造方法で製造される電極触媒の模式図である。 実施例1−1の電極材料(1a)の高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF−STEM)像である。 実施例1−2の電極材料(1b)のHAADF−STEM像である。 実施例1−2の電極材料(1b)の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。 実施例2の電極材料(2)のHAADF−STEM像である。 実施例2の電極材料(2)のTEM像である。 実施例3−2の電極材料(3b)のHAADF−STEM像である。 実施例3−2の電極材料(3b)のSTEM−EDSマッピングである。 実施例1−1の電極材料(1a)、実施例3−1の電極材料(3a)及び実施例3−2の電極材料(3b)のPt担持率の評価結果を示す図である。 実施例1−1の電極材料(1a)、実施例3−1の電極材料(3a)及び実施例3−2の電極材料(3b)の電気化学的有効表面積(ESCA)の評価結果を示す図である。 実施例3−2の電極材料(3b)の熱処理前後の電気化学的有効表面積(ESCA)の評価結果を示す図である。 実施例3−2の電極材料(3b)の熱処理前後のMass activity(単位Pt質量当たりの活性)の評価結果を示す図である。 実施例3−2の電極材料(3b)及び実施例4の電極材料(4)の電気化学的有効表面積(ESCA)の評価結果を示す図である。 実施例3−2の電極材料(3b)及び実施例4の電極材料(4)のMass activity(単位Pt質量当たりの活性)の評価結果を示す図である。 実施例3−2の電極材料(3b)及び実施例4の電極材料(4)のSpecific activity(単位Pt有効表面積当たりの活性)の評価結果を示す図である。
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
本発明は、電子伝導性酸化物を含む担体の表面に、粒子状及び/又は膜状の貴金属触媒が担持された電極材料の製造方法であって、電子伝導性酸化物を含む担体、貴金属触媒前駆体及び犠牲試薬を含む分散水溶液を調製する工程(1)と、前記分散水溶液に、前記担体を構成する電子伝導性酸化物のバンドギャップエネルギーを超えるエネルギーを有する波長の光を照射して、前記担体の表面に、平均粒径4nm以下の微粒子状、及び/又は、平均膜厚が4nm以下の薄膜状となるように貴金属触媒を析出させる工程(2)と、を有することを特徴とする電極材料の製造方法(以下、「本発明の電極材料の製造方法」、又は単に「本発明の製造方法」と記載する。)に関する。
本発明の電極材料の製造方法は、電子伝導性酸化物に、そのバンドギャップエネルギーを超えるエネルギーを有する波長の光を照射することにより生じる電子と、貴金属触媒前駆体との原子レベルの反応を利用して貴金属触媒を析出させるため、微粒子状、及び/又は、薄膜状の貴金属触媒を、光励起されることで還元性をもった電子伝導性酸化物の表面に析出させることができる。
図1に、本発明の製造方法で製造される電極材料の一例の模式図を示す。本発明の製造方法で製造される電極材料の一例は、図1(a)に示すように、電子伝導性酸化物を含む担体の表面に、微粒子状の貴金属触媒が担持されている。また、本発明の製造方法で製造される電極材料の別の例は、図1(b)に示すように、電子伝導性酸化物を含む担体の表面が、薄膜状の貴金属触媒で被覆された構造である。図1(b)の構造は、いわゆるコアシェル構造と呼ばれ、膜厚2nm以下(好適には1nm以下)の貴金属触媒(シェル)が電気化学的触媒として機能し、貴金属触媒で被覆された電子伝導性酸化物を含む担体(コア)が電極材料における導電性を担い、貴金属触媒の使用量が少なくとも優れた触媒活性及び導電性を有する電極材料となりうる。
本発明の製造方法においては、光還元により金属状態で貴金属触媒が析出するため、必ずしも熱処理等の活性化処理を必要としないという利点がある。
また、光照射時間や光の強度などを調整することにより、析出させる貴金属の大きさ(膜厚)を制御しやすい。
以下、本発明の電極材料の製造方法の各工程についてより詳細に説明する。
<工程(1)>
工程(1)は、電子伝導性酸化物を含む担体、貴金属触媒前駆体及び犠牲試薬を含む分散水溶液を調製する工程である。
本発明の電極材料の製造方法では、電子伝導性酸化物を含む担体として、電子伝導性酸化物からなる担体を使用しても、電子伝導性酸化物と他の成分とを含む担体を使用してもよい。すなわち、電子伝導性酸化物を含む担体として、電子伝導性酸化物をそのまま使用してもよいが、電子伝導性酸化物と他の材料を複合化したものを使用してもよい。
電子伝導性酸化物としては、光応答性を有するものを使用でき、具体的には、酸化スズ、または、酸化スズを主体とする電子伝導性酸化物が挙げられる。ここで、本発明において「主体とする電子伝導性酸化物」とは、(A)母体酸化物のみからなるもの、及び(B)他元素をドープされた酸化物であって、母体酸化物が50mol%以上含まれるもの、を意味する。
ドープされる元素として、具体的には、Sn,Ti,Sb,Nb,Ta,W,In,V,Cr,Mn,Moなどが挙げられる(但し、母体酸化物と異なる元素である。)。ドープされる元素は、母体酸化物より価数が高い元素であり、例えば、母体酸化物が酸化スズの場合で例示すると、上記ドープ種元素のうち、Sn以外の元素(例えば、Nb)が選択される。
電子伝導性酸化物は、一次粒子、二次粒子のいずれでもよい。但し、電子伝導性酸化物が一次粒子であることが好ましい。これは、電子伝導性酸化物が二次粒子の場合には二次粒子を構成する一次粒子間の粒界抵抗により電気抵抗が大きくなるためである。
電子伝導性酸化物の平均粒径は、適宜決定すればよいが、通常、平均粒径2〜200nm程度であり、実質的に一次粒子となる平均粒径2〜40nmの粒子であることが好ましい。
なお、本発明における「電子伝導性酸化物の平均粒子径」は、電子顕微鏡像より調べられる電子伝導性酸化物(20個)の粒子径の平均値により得ることができる。
電子伝導性酸化物のなかで好適なものは、酸化スズ又は酸化スズを主体とする電子伝導性酸化物である。ここで、「主体とする酸化物」とは、上述の通り、対象となる酸化物を50mol%以上含む酸化物をいう。酸化スズは、十分な光応答性、電子導電性を有し、貴金属微粒子を高分散で担持が可能な担体である。元素としてスズ(Sn)は、PEFCカソードや水電解電極のアノード条件として使用される領域において、酸化物であるSnO2が熱力学的に安定であり、酸化分解が起こらない。
上述のように酸化スズは、他元素をドープした酸化スズ(SnO2)を含む概念であるが、ドープされる元素として具体的には、Sb,Nb,Ta,W,In,V,Cr,Mn,Moなどが挙げられる。ここで、酸化スズの電子導電性を向上させるという観点からは、Sb,Nb,Ta,W,Inが好ましく用いられる。このなかでも、Nbを0.1〜20mol%ドープした、ニオブドープ酸化スズが特に好適である。その理由については、詳細は明らかではないが、前記ニオブドープ酸化スズは、優れた電子導電性を有すると共に、担持された貴金属微粒子とニオブドープ酸化スズとの間に電子的な相互作用が生じるためと推測される。
また、電子伝導性酸化物を含む担体はコアシェル構造であってもよい。例えば、酸化スズからなる担体の表面が、酸化スズとは異なる酸化物(例えば、酸化チタン)で被覆された構造を有する担体を用いてもよい。
また、使用する電子伝導性酸化物を含む担体は、他の材料に固定化されていてもよい。
例えば、導電補助材の表面に固定された電子伝導性酸化物を含む担体を原料として使用してもよい。なお、本明細書において、「導電補助材」とは、燃料電池用電極または水電解用電極材料に含まれ、燃料電池用電極または水電解用電極を形成した際に電子伝導性を向上させる役割を有するものを意味する。
電子伝導性酸化物を含む担体の中でも好適なものは、電子伝導性酸化物を含む担体が、表面がグラファイト構造である繊維状炭素及び鎖状連結炭素粒子から選択される1種以上からなる炭素系導電補助材(以下、「炭素系導電補助材」と記載する場合がある。)に固定化された態様である。
すなわち、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材を用いることが好ましく、工程(1)で、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材、貴金属触媒前駆体及び犠牲試薬を含む分散水溶液を調製することが好ましい。
本発明の電極材料の製造方法では、電子伝導性酸化物を含む担体が、炭素系導電補助材の表面の一部を被覆するように固定化されていても、炭素系導電補助材の表面に比べて、光励起した電子伝導性酸化物の表面で選択的に貴金属触媒の析出が起こる。このため、炭素系導電補助材と貴金属触媒の接触による腐食劣化が起こりにくい電極材料が得られる。
炭素系導電補助材は相互接触性がよく、優れた電子伝導性を有するため、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材を使用して製造された電極材料を用いて、燃料電池用電極や水電解用電極を構成した際に、炭素系導電補助材が互いに接触して低抵抗の導電パスが形成され、電子伝導性に優れた電極となる。すなわち、電子伝導性酸化物に起因する電気化学的酸化への優れた耐久性と、炭素系導電補助材に起因する優れた電子伝導性を併せ持つ電極材料を製造することができる。
例えば、燃料電池用電極や水電解用電極として使用した際に、優れた電極性能を示すとともに、耐久性が高く、発電や水電解反応を長時間継続することができる電極材料を、本発明の製造方法によって好適に製造することができる。
また、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材は、電極材料の骨格としての役割を炭素系導電補助材が担うことから、電子伝導性酸化物の平均粒径を小さくすることができるため、電子伝導性酸化物に起因する電気抵抗を低減できる。このため、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材を用い電極材料を製造することで、電気抵抗が低減された電極材料を得ることができる。
また、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材は、燃料電池用電極や水電解用電極を形成した際に、隣接する炭素系導電補助材が連続的に接触でき、かつ燃料電池用電極内や水電解用電極内の水素や酸素などのガス拡散及び水(蒸気)の移動がスムーズに行える程度の空間を形成できるという点からも、電極材料を製造するための原料として好適である。
すなわち、本発明の製造方法は、表面がグラファイト構造である繊維状炭素及び鎖状連結炭素粒子から選択される1種以上からなる導電補助材を含み、前記電子伝導性酸化物を含む担体が、前記導電補助材の表面の一部を被覆するように固定化された電極材料の製造方法として好適である。
なお、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材は、粒子状の電子伝導性酸化物が炭素系導電補助材に分散担持される形態で固定化されていても、炭素系導電補助材を薄膜状の電子伝導性酸化物が被覆する形態で固定化されていてもよい。
また、表面がグラファイト構造である繊維状炭素及び鎖状連結炭素粒子から選択される1種以上からなる導電補助材の中でも、表面がグラファイト構造である繊維状炭素からなる導電補助材が好ましい。
繊維状炭素は、中空状あるいは繊維状の炭素材料であり、具体的にはカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノファイバーが挙げられる。なお、本発明において、「カーボンナノチューブ」とは、単層CNT、2層CNT、複層CNT及びこれらの混合物を含む。
ここで、燃料電池用電極または水電解用電極用として好適な電極材料を製造するためには、燃料電池用電極または水電解用電極用を形成した際の電極内の電気伝導性とガス拡散性を両立できるように、直径2nm〜10μm、全長0.03〜500μmである繊維状炭素を用いることが好ましい。
なお、中空状あるいは繊維状の炭素材料のうち、カーボンナノチューブに代表されるように、直径が100nm以下のもの、または、気相成長炭素繊維(Vaper Grown Carbon Fiber,VGCF)のような直径が100〜1000nm程度のもの、炭素繊維のような直径が1μm〜20μmのものを指すことが多いが、これらの炭素材料の長さと呼称についての明確な規定はないため、本明細書内ではこれらを合わせて繊維状炭素と称する。
表面がグラファイト構造である繊維状炭素としては、カーボンナノチューブ(単層CNT、2層CNT、複層CNTの何れも含む)、気相成長炭素繊維(VGCF)が挙げられ、高結晶性、高純度のものが好ましい。
また、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材において、電子伝導性酸化物の担持量は粒径(薄膜状の場合は膜厚)や表面積等の電子伝導性酸化物の物性、電子伝導性酸化物の製造方法によっても最適値がかわるため、十分な量の貴金属触媒が析出できる範囲で適宜決定される。本発明の電極材料の製造方法では、使用する炭素系導電補助材への電子伝導性酸化物の担持量は、特に限定されない。
従来の製造方法では、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材の電子伝導性酸化物の担持量が少ない場合、貴金属触媒(例えば、Pt)の担持を行うときに、炭素系導電補助材の上に担持される貴金属触媒の量が多くなり、この点を起点として、炭素系導電補助材の腐食劣化が起こりやすかった。一方、本発明の製造方法では、光反応を利用したものであるので、選択的に電子伝導性酸化物の表面に貴金属触媒を析出させることができる。このため、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材の電子伝導性酸化物の担持量が少ない場合でも、炭素系導電補助材上への貴金属触媒の担持は起こりにくい。
本発明の製造方法において、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材の電子伝導性酸化物の担持率は、酸化スズの場合を例示すると、炭素系導電補助材と電子伝導性酸化物の合計を100重量%としたときに、通常、電子伝導性酸化物が5〜95重量%であり、好ましくは20〜95重量%であり、より好ましくは45〜95重量%である。電子伝導性酸化物の担持量が少なすぎると、工程(2)において十分な量の貴金属触媒を析出させることができないおそれがある。電子伝導性酸化物の担持量が多すぎると電子伝導性酸化物の粒径(薄膜状の場合は膜厚)が大きくなりすぎて、得られる電極材料の電気抵抗が高くなる場合がある。
本発明の製造方法において、使用する、電子伝導性酸化物を含む担体は、従来公知の方法で製造したものを使用可能である。具体的には、電子伝導性酸化物の構成元素(例えばスズ)の粉末を熱酸化する方法、電子伝導性酸化物の構成元素(例えばスズ)の金属を酸溶液に溶解して得られる金属酸(例えばメタスズ酸)を熱分解する方法、電子伝導性酸化物の前駆体となるアルコキシドを加水分解して得る方法などから作製することできるが、アンモニア共沈法が特に好適である。アンモニア共沈法は、溶媒中で目的の酸化物に対応する塩化物や硝酸塩とアンモニアを反応させて、沈殿物を得る方法であり、アンモニア共沈法によって作製すると、均一な粒径の電子伝導性酸化物が作製可能である。また、詳細な理由は不明であるが、他の方法で作製した電子伝導性酸化物と比較して、担持する貴金属の活性が向上する効果もある。なお、アンモニア共沈法における電子伝導性酸化物の前駆体としては、特に制限はなく、電子伝導性酸化物(例えば、スズ)の硫酸塩、オキシ硝酸塩、オキシ硫酸塩、酢酸塩、塩化物、アンモニウム錯体、リン酸塩、カルボン酸塩などを使用することができる。
また、電子伝導性酸化物を含む担体が固定化された炭素系導電補助材も、従来公知の方法で製造したものを使用可能であるが、分散性の高い粒子状の電子伝導性酸化物を繊維状炭素や鎖状連結炭素粒子に担持できる点で、アンモニア共沈法が好適な一例である。
アンモニア共沈法によって、作製された電子伝導性酸化物は、非晶質状態であるものを含むため、これを乾燥・焼成することで結晶性が高い電子伝導性酸化物となり、導電性を向上させることができる。一方で、工程(2)の貴金属触媒の析出は、電子伝導性酸化物の表面のエッジ部分を生成スポットとして生成すると考えられる。そのため、貴金属触媒の凝集を抑え、貴金属を微細に析出させるためには、電子伝導性酸化物の表面は、貴金属原子の生成スポットが多い、非晶質状態であるほうが好ましい。
乾燥方法は、特に制限がなく、加熱・減圧・自然乾燥などの方法で上述の水、エタノールなどの溶媒を蒸発させればよい。また、乾燥時の雰囲気は特に限定されるものではなく、酸素を含有する酸化性雰囲気中や大気雰囲気、窒素やアルゴンなどを含有する不活性雰囲気、水素を含有する還元性雰囲気などの雰囲気条件を任意に選ぶことができるが、通常、大気雰囲気である。
乾燥後の電子伝導性酸化物の焼成温度は、高いほど電子伝導性酸化物の結晶性が高まり、導電性が向上して光還元が生じやすくなる。一方で、電子伝導性酸化物の結晶性が高まるほど、表面に大きなエッジが散在し、貴金属原子の生成スポットが減少するため、貴金属が凝集して析出しやすくなる。また、焼成温度は、使用する貴金属触媒前駆体や犠牲試薬の種類によって最適値がわかるため、電子伝導性酸化物の表面状態と電子伝導性のバランスを考慮した上で、適宜決定される。
乾燥後の電子伝導性酸化物の焼成温度は、300〜800℃、好適には、350℃〜700℃、特に好適には350〜650℃である。焼成温度が300℃未満の場合には、結晶性が低くなり、十分な電子伝導性が得られない場合があり、800℃を超える場合には、酸化スズ粒子が凝集し、表面積が小さくなりすぎる問題がある。
例えば、酸化スズの場合、電子伝導性酸化物の内部は結晶化して表面のみが非晶質な貴金属の生成スポットが多い構造とする方法として、結晶化が完了する380℃近辺で焼成を行う方法が挙げられる。
電子伝導性酸化物を含む担体の濃度は、光還元反応を阻害しない範囲で、貴金属触媒前駆体及び犠牲試薬の濃度や電子伝導性酸化物の種類等を考量して、適宜決定することができる。
本発明の製造方法で使用できる貴金属触媒前駆体は、工程(2)において光還元されて貴金属触媒を析出できるものであれば特に限定されない。貴金属触媒としては、例えば、Ru,Ir,Pd,Rh,Os,Au,Agから選択される貴金属、及びこれらの貴金属を含む合金が挙げられ、光還元よりこれらを析出できる貴金属触媒前駆体が使用できる。貴金属触媒前駆体は1種でもよいが、2種以上を用いてもよく、2種以上の貴金属触媒前駆体を使用する場合、金属種は同じであっても異なってもよい。なお、「貴金属を含む合金」とは「上記の貴金属のみからなる合金」と、「上記の貴金属とそれ以外の金属からなる合金で上記の貴金属を10質量%以上含む合金」を含む。貴金属と合金化される上記「それ以外の金属」は、特に限定されないが、Co,Ni,Ti,W,Ta,Nb,Snを好適な例として挙げることができ、これらは1種類あるいは2種類以上を使用してもよい。
なお、これらの貴金属の中でも、Pt及び/又はPtを含む合金は、固体高分子形燃料電池の作動温度である80℃付近の温度域において、酸素の還元に対する電気化学的触媒活性が高い。そのため、工程(2)で、Pt及び/又はPtを含む合金が析出するような、貴金属触媒前駆体を用いて電極材料を製造した場合、得られた電極材料は、燃料電位用電極としての特に好適に使用することができる。
また、工程(2)で、Ir及び/又はIrを含む合金が析出するような、貴金属触媒前駆体を用いる製造方法は、水電解用電極の製造方法として好適である。
具体的には、Ru,Ir,Pd,Rh,Os,Au,Agから選択される貴金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物や、硝酸塩、硫酸塩等の無機酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩等の有機酸塩などの中から、使用目的に応じて、適宜選択すればよい。
通常、溶媒として使用される水に可溶性のものが選択される。水に可溶性の貴金属触媒前駆体を使用することにより、親水性の高い電子伝導性酸化物との親和性が高まり、電子伝導性酸化物の表面に貴金属触媒が析出しやすい。電子伝導性酸化物が、炭素系導電補助材の表面の一部を被覆するように固定化された担体を使用した場合には、疎水性の高い炭素系導電補助材の表面に比べて、親水性の高い電子伝導性酸化物の表面で、より選択的に貴金属触媒が析出できる。
例えば、Ptの前駆体としては、塩化白金塩、臭化白金、ヨウ化白金、クロロ白金酸、テトラクロロ白金酸アンモニウム、ヘキサクロロ白金酸カリウム、白金アセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金、シアン化白金等を用いることができる。Irの前駆体としては、塩化イリジウム、臭化イリジウム等を用いることができる。
貴金属触媒前駆体の濃度は、本発明の目的を損なわない範囲で、電子伝導性酸化物を含む担体及び犠牲触媒の濃度や貴金属触媒前駆体の金属種等に応じて適宜決定される。貴金属触媒前駆体は、電子伝導性酸化物に対して多すぎると貴金属触媒が凝集して析出しやすくなる一方で、少なすぎると得られる電極材料の触媒活性が不十分なものとなるおそれがある。
犠牲試薬は、電子伝導性酸化物に光を照射することにより生じる正孔により酸化され、電子伝導性酸化物の表面に還元性をもたせるために用いられる。犠牲試薬は、溶媒である水よりも酸化されやすく、水に溶解でき、電子伝導性酸化物に光を照射することにより生じる正孔によって酸化されるものであればよく、例えば、メタノール等のアルコール類や、アセトン等のケトン類、ギ酸等のカルボン酸類等が挙げられる。
この中でも、短時間の光照射で、電子伝導性酸化物の表面に貴金属触媒をより多く析出させることができるため、ギ酸を用いることが好ましい。
犠牲試薬の濃度は、光化学反応を進行させうる十分な量であれば、特に限定されず、犠牲試薬の種類等により適宜変更可能であるが、例えば、分散水溶液対して20〜30質量%程度である。
分散水溶液の溶媒は、主成分(溶媒の50質量%超)が水であれば、水以外の成分を含んでもよい。
溶液のpHは、貴金属前駆体の種類に応じて適宜決定される。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、工程(1)で調製される分散水溶液は、電子伝導性酸化物を含む担体、貴金属触媒前駆体及び犠牲試薬以外の成分を含んでいてもよい。
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で調整した分散水溶液に、前記担体を構成する電子伝導性酸化物のバンドギャップエネルギーを超えるエネルギーを有する波長の光を照射して前記担体の表面に、平均粒径4nm以下の微粒子状、及び/又は、平均膜厚2nm以下の膜状の貴金属触媒を析出させる工程である。
なお、「平均粒径」とは、電子顕微鏡観察より調べられる任意の粒子状の貴金属触媒(50個)の粒子径を平均した値である。2以上の粒子状の貴金属触媒が連結している場合は、それぞれの粒子について粒子径を求め、他の粒子の粒子径とあわせて平均値を算出する。また、形状が球状以外の場合は、粒子における最大長を示す方向の長さをその粒子径とする。また、「平均膜厚」とは、担体の厚み方向の断面顕微鏡写真像より調べられる任意位置の厚み(5点)を平均した値である。電子顕微鏡としては、透過型電子顕微鏡や走査型透過電子顕微鏡が用いられる。
工程(2)において、貴金属触媒が微粒子状で析出する場合、微粒子の平均粒径は4nm以下であり、好ましくは平均粒径3nm以下である。
また、工程(2)において、貴金属触媒が薄膜状で析出する場合、薄膜の平均膜厚は2nm以下であり、好ましくは平均膜厚1nm以下の薄膜状ある。
このようにすることで、少ない貴金属の量であっても、大きな表面積を確保できる。
照射する光は、電子伝導性酸化物を光励起することができるエネルギーを有する波長の光であればよく、電子伝導性酸化物の種類によって適宜決定される。光源は、電子伝導性酸化物を光励起できるエネルギーを有する波長の光を照射できるものであれば特に限定されず、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、エキシマランプなどを使用することができる。電子伝導性酸化物を光励起することができるエネルギーを有する波長を含む光を照射することができれば、単一波長の光を照射するものであっても、任意の波長範囲の光を照射するものであってもよい。また、光源とフィルターなどとを組み合わせて、特定の波長領域の光を選択的に照射してもよい。
光照射の強度は、反応が十分に進行する強度であれば特に限定されず、光の強度は、使用する光源や、分散水溶液と光源との距離などで調整できる。
光の照射方法は、特に限定されず、連続照射であっても、間欠照射であっても、パルス照射であってもよい。
光照射時間は、電子伝導性酸化物の種類や分散水溶液の濃度、光の強度を考慮して、本発明の目的を達成できる範囲で、適宜決定されるものである。光照射時間が長すぎると、析出する貴金属触媒の粒子径や膜厚が増大しやすくなる。光照射時間が短すぎると、反応が十分にしない場合がある。光照射時間は、2時間以下が好ましく、1時間以下がより好ましい。
本発明の製造方法では、工程(2)では、光還元により金属状態で貴金属触媒が析出するため、必ずしも熱処理等の活性化処理を必要としないが、工程(2)の後に、さらに熱処理工程を行ってもよい。熱処理工程を行うことで、電子伝導性酸化物の結晶性を高めて、導電性を向上させたり、析出した貴金属触媒の活性を高めることができる。
例えば、水電解用の電極材料を製造する場合には、析出したイリジウムを、酸素を含有する酸化性雰囲気で熱処理することにより、酸化イリジウムと変換することも可能である。
本発明の製造方法で製造される電極材料は、固体高分子形燃料電池のカソード用の電極材料や固体高分子形水電解装置のアノード用の電極材料として好適に使用できる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[1]:SnO2/VGCF担体(電子伝導性酸化物を含む担体)の調製
導電性補助材である繊維状炭素の表面に酸化スズ粒子が担持された担体を調製した。使用した試薬は以下の通りである。
・繊維状炭素:昭和電工株式会社製、VGCF−H(登録商標)
・エタノール:キシダ化学株式会社、純度99.5%以上
・塩化スズ水和物(SnCl2・2H2O):キシダ化学株式会社、純度97.0%以上
・塩化ニオブ(NbCl5):(三津和化学薬品株式会社、純度99.9%)
・アンモニア水(NH3aq):キシダ化学株式会社、28%水溶液
[1.1]:SnO2/VGCF担体(1)の調製
まず、繊維状炭素にエタノールを加え、超音波ホモジナイザーで撹拌し、繊維状炭素の分散液を得た。次に、この分散液に塩化スズ水和物を入れ、撹拌しながらアンモニア水をビュレットにより5cc/minで滴下した。アンモニア水の滴下後、1時間撹拌を続け、ろ過、洗浄を行い、100℃で10時間乾燥させた。乾燥後に、窒素雰囲気下、600℃で2時間の熱処理を行い、SnO2/VGCF担体(1)を得た。なお、塩化スズ水和物の量は、SnO2の担持率が50wt%となるようにした。
調製したSnO2/VGCF担体(1)は、繊維状炭素上にSnO2が粒子径17nm程度で均一に担持されていることがわかった。
[1.2]:SnO2/VGCF担体(2)の調製
窒素雰囲気下、400℃で2時間の熱処理を行った以外は、SnO2/VGCF担体(1)の調製と同様にしてSnO2/VGCF担体(2)を調製した。
[1.3]:SnO2/VGCF担体(3)の調製
窒素雰囲気下、380℃で2時間の熱処理を行った以外は、SnO2/VGCF担体(1)の調製と同様にしてSnO2/VGCF担体(3)を調製した。
[1.4]:Nb−SnO2/VGCF担体の調製
塩化スズ水和物にかえて、塩化スズ水和物と塩化ニオブを使用した以外は、SnO2/VGCF担体(4)の調製と同様にしてNb−SnO2/VGCF担体を調製した。
表1に、調製したSnO2/VGCF担体(電子伝導性酸化物を含む担体)の一覧を示す。
[2]:電極材料の製造
以下の試薬を使用した。
(白金触媒前駆体)
・ヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物(H2PtCl6・6H2O):キシダ化学株式会社、純度98.5%以上
(犠牲試薬)
・メタノール:キシダ化学株式会社、純度99.8%以上
・ギ酸:キシダ化学株式会社、濃度98.0%以上
<実施例1> SnO2/VGCF担体(1)を用いた電極材料の製造
<実施例1−1>
(工程(1))
SnO2/VGCF担体(1)(0.0500g)、ヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物(0.00709g)、メタノール(20mL)、超純水(100mL)を混合し、超音波撹拌装置で10分間撹拌をして、SnO2/VGCF担体(1)が分散した分散水溶液を調製した。
(工程(2))
工程(1)で調製した分散水溶液をマグネチィックスターラーで撹拌しながら、キセノン光源装置(LAX−C100:朝日分光株式会社)で2時間、紫外線を照射し、SnO2/VGCF担体(1)の表面に白金(Pt)を析出させた。紫外線照射後、濾過、洗浄を行い、100℃で10時間乾燥させ、実施例1−1の電極材料(1a)を得た。なお、キセノン光源装置は分散水溶液から10cm離して設置した。
<実施例1−2>
紫外線を照射する時間を2時間から30分に変更した以外は実施例1−1と同様にして、実施例1−2の電極材料(1b)を製造した。
<実施例2> SnO2/VGCF担体(2)を用いた電極材料の製造(I)
SnO2/VGCF担体(1)のかわりにSnO2/VGCF担体(2)を使用した以外は実施例1−2と同様にして、実施例2の電極材料(2)を製造した。
<実施例3> SnO2/VGCF担体(3)を用いた電極材料の製造
<実施例3−1>
(工程(1))
SnO2/VGCF担体(3)(0.0500g)、ヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物(0.00709g)、ギ酸(20mL)、超純水(80mL)を混合し、超音波撹拌装置で10分間撹拌して、SnO2/VGCF粉末が分散した分散水溶液を調製した。
(工程(2))
工程(1)で調製した分散水溶液をマグネチィックスターラーで撹拌しながら、キセノン光源装置(LAX−C100:朝日分光株式会社)で2時間、紫外線を照射し、SnO2/VGCF担体(3)の表面に白金(Pt)を析出させた。紫外線照射後、濾過、洗浄を行い、100℃で10時間乾燥させ、実施例3−1の電極材料(3a)を得た。なお、キセノン光源装置は分散水溶液から10cm離して設置した。
<実施例3−2>
紫外線を照射する時間を2時間から1時間に変更した以外は実施例3−1と同様にして、実施例3−2の電極材料(3b)を製造した。
<実施例4>
SnO2/VGCF担体(3)のかわりにNb−SnO2/VGCF担体を使用した以外は実施例3−2と同様にして、実施例4の電極材料(4)を製造した。
表2に、実施例1〜4で製造した電極材料の一覧を示す。
[3]:評価
[3.1] :焼成温度の異なる担体を用いて製造した電極材料の評価
[3.1.1]:微細構造観察
高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF−STEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、製造した電極材料の微細構造観察を行った。HAADF−STEMおよびTEMは、日本電子製収差補正付透過電子顕微鏡 JEM−ARM200Fを使用した。
実施例1−1の電極材料(1a)のHAADF−STEM像を図2に示す。図2に示すように、電極材料(1a)では、酸化スズ微粒子の表面に粒子径3〜4nmのPt微粒子が担持されており、観察されたPt微粒子の粒子径はすべて4nm以下であった。
実施例1−2の電極材料(1b)のHAADF−STEM像を図3に、TEM像を図4に示す。図3および図4に示すように、電極材料(1b)では、酸化スズ微粒子の表面に粒子径1〜2nmのPt微粒子が担持されており、観察されたPt微粒子の粒子径はすべて2nm以下であった。
実施例2の電極材料(2)のHAADF−STEM像を図5に、TEM像を図6に示す。図5および図6に示すように、電極材料(2)では、酸化スズ微粒子の表面に粒子径1nm程度のPt微粒子が担持されており、観察されたPt微粒子の粒子径はすべて2nm以下であった。
実施例3−2の電極材料(3b)のHAADF−STEM像を図7に示す。また、STEM−EDSマッピングを図8に示す。図7に示すように、電極材料(3b)では、酸化スズ微粒子の表面に粒子径3〜4nmのPt微粒子が担持されており、観察されたPt微粒子の粒子径はすべて4nm以下であった。また、図8に示すようにPt担持されていることが確認された。
[3.1.2]:Pt担持率
実施例1−1、実施例3−1、実施例3−2の電極材料のPt担持率を測定するため、熱王水を用いて触媒中のPtを溶かした溶液を作製した。その溶液からICP発光分析(装置名:島津製作所株式会社製 ICPE−9000)によってPt担持率を求めた。
結果を図9に示す。実施例1−1の電極材料(1a)のPt担持率は4.8wt%であり、実施例3−1の電極材料(3a)のPt担持率は5.6wt%であり、実施例3−2の電極材料(3b)のPt担持率は4.5wt%であった。使用したヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物(Pt触媒前駆体)は、約5wt%の担持率となる量を使用しており、実施例1−1、実施例3−1及び実施例3−2の電極材料は仕込んだPtをほぼ担持することができていた。また、実施例1−1の電極材料(犠牲試薬:メタノール、光照射時間:2時間)と実施例3−1の電極材料(犠牲試薬:ギ酸、光照射時間:2時間)のPt担持率の比較からわかるように、犠牲試薬にギ酸を用いることで、より効率的にPtを担持できている。
[3.1.3]:電気化学測定(ECSAの評価)
実施例1−1、実施例3−1、実施例3−2の電極材料を用いて、酸性溶液中での電気化学測定を行い、製造した電極材料の電気化学的表面積(ECSA)を定量的に評価した。
電気化学的表面積(Pt有効表面積)は、表面のPt原子一つに水素原子が一つ吸着するとの仮定に基づき、CVから求めた水素吸着量から算出した。CVの測定条件は以下の通りである。なお、1原子のPtに付き1原子のHが吸着すると仮定すると210μC/cm2の電気量となる。
測定:三電極式セル(作用極:電極材料/GC,対極:Pt,参照極:Ag/AgCl)
電解液:0.1M HClO4(pH:約1)
測定電位範囲:0.05〜1.2VRHE(可逆水素電極基準)
走査速度 :50 mV/s
水素吸着量:0.05〜0.4Vの水素吸着を示すピーク面積から算出
電気化学的表面積(ECSA):下記式より算出
ECSA=(水素脱離電気量QH)[μC] / 210[μC/cm2
結果を図10に示す。実施例1−1の電極材料(1a)のESCAは25.8m2/gであり、実施例3−1の電極材料(3a)のESCAは30.9m2/gであり、実施例3−2の電極材料(3b)のESCAは49.8m2/gであった。実施例3−2の電極材料(3b)は、実施例1−1の電極材料(1a)や実施例3−1の電極材料(3a)に比べてPt担持率は低かったものの、ESCAの値では最も大きく、Ptを有効に利用できていることがわかる。
[3.2]:Pt担持後の熱処理の評価
実施例3−2の工程(2)の後に、さらに、下記に示す2つの条件で、熱処理工程を行い、熱処理前後での電気化学的表面積(ECSA)及びORR活性を定量的に評価した。
(熱処理条件)
(1)N2雰囲気、200℃で2時間
(2)N2雰囲気、200℃で1時間
なお、本評価では電極活性の模擬評価として、ORR活性を評価しているが溶液中にH2を飽和させると水素酸化(HOR)活性の評価ができる。
[3.2.1]:電気化学測定(ECSAの評価)
熱処理後の電極材料を用いて、[3.1.3]と同様にして評価した。
[3.2.2]:電気化学測定(ORR活性の評価)
ORR活性は、回転ディスク電極法(RDE法)から得られる活性化支配電流(ik)を基に算出するMass activity(単位Pt質量当たりの活性)、Specific activity(単位Pt有効表面積当たりの活性)を指標とした。
なお、活性化支配電流(ik)の算出は0.90VRHEで測定した(VRHE:可逆水素電極(RHE)基準の電位)。
Mass activity = ik/電極上のPt質量
Specific activity = ik/ECSA
図11にECSAの結果を、図12にORR活性の指標であるMass activity(単位Pt質量当たりの活性)の結果を示す。図11および図12に示すように、実施例3−2の電極材料(3b)では、必ずしも熱処理を必要としないことが示された。
[3.3]:組成の異なる担体を用いて製造した電極材料の評価
[3.3.1]:Pt担持率
実施例3−2と実施例4について、上記評価と同様にして、Pt担持率を評価した。実施例3−2の電極材料(3b)のPt担持率は、4.54wt%であり、実施例4の電極材料(4)のPt担持率は4.67wt%であった。Nb−SnO2/VGCFのように組成の異なる担体であっても、SnO2/VGCFと同様に、Ptを担持できることが確認できた。
[3.3.2]:電気化学測定(ECSAおよびORR活性の評価)
実施例3−2と実施例4について、上記評価と同様にして、電気化学的有効面積(ECSA)および酸素還元(ORR)活性を評価した。結果を図13〜図15に示す。実施例4の電極材料(4)は、実施例3−2の電極材料(3b)に比べて、ECSA、Mass activityは若干劣るものの、Specific activityは同等であった。
本発明によれば、貴金属触媒が担持された電極材料の製造において、貴金属の使用量をして低減して製造することができるため、産業的に有用である。

Claims (7)

  1. 電子伝導性酸化物を含む担体の表面の少なくとも一部に、平均粒径4nm以下の微粒子状、及び/又は、平均膜厚が2nm以下の薄膜状の貴金属触媒が担持された構造を有することを特徴とする電極材料。
  2. 電子伝導性酸化物を含む担体の全面に、平均膜厚が2nm以下の膜状の貴金属触媒が担持された構造を有する請求項1に記載の電極材料。
  3. 前記電子伝導性酸化物を含む担体が、平均粒径2〜40nmの粒子である請求項1または2に記載の電極材料。
  4. 前記電子伝導性酸化物が、酸化スズ又は酸化スズを主体とする電子伝導性酸化物である請求項1から3のいずれかに記載の電極材料。
  5. 前記貴金属触媒が、Pt及び/又はPtを含む合金である請求項1から4のいずれかに記載の電極材料。
  6. 前記貴金属触媒が、Ir及び/又はIrを含む合金である請求項1から4のいずれかに記載の電極材料。
  7. 固体高分子形燃料電池のカソード用、または固体高分子形水電解装置のアノード用の電極材料である請求項1から6のいずれかに記載の電極材料。
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