(本実施形態の前提となる吸引カテーテルの構成)
まず、本実施形態の前提となる吸引カテーテルの構成について、説明する。図1は、本実施形態の前提となる吸引カテーテル11の概略構成を示し、図1の(a)は、側面図であり、図1の(b)は断面図である。
図1の(a)に示されるように、吸引カテーテル11は、吸引ルーメンを構成する吸引チューブ1と、ガイドワイヤルーメンを構成するガイドワイヤチューブ2と、を備えている。吸引チューブ1の遠位端には、吸引部3が設けられている。この吸引部3は、血栓などの吸引対象(閉塞物)を吸引するための吸引口3aを有する。吸引口3aは、吸引チューブ1の軸線に対して傾斜して設けられている。ここで、吸引カテーテルにおける吸引対象側を遠位端側、または遠位側とし、それと反対側を近位端側、または近位側とする。
ガイドワイヤチューブ2は、吸引チューブ1の吸引部3側に設けられている。また、ガイドワイヤチューブ2の遠位端は、吸引部3における最も遠位端側の位置(図2の(c)に示す最遠位端部1a)よりも遠位側に位置している。また、ガイドワイヤチューブ2の長さは、例えば、120mmである。
また、図1の(b)に示されるように、吸引チューブ1の壁部は、内層12、補強層13、及び被覆層14を備えた積層構造である。内層12を構成する樹脂は、フッ素系樹脂や高密度ポリエチレンが用いられる。内層12を構成する樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。
また、補強層13は、素線を交互に網目状に編んだ編組形状となっている。補強層13の素線の材質としては、例えばナイロン繊維等の合成繊維や、Ti−Ni、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。
被覆層14は、内層12及び編組形状の補強層13を被覆する層である。被覆層14を構成する樹脂は、エラストマーが用いられる。被覆層14を構成する樹脂の具体例としては、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー等が挙げられる。
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態に係る吸引カテーテルは、図1に示された吸引カテーテル11における遠位端側の構成に特徴がある。すなわち、本実施形態に係る吸引カテーテルは、吸引口3aを閉塞する閉塞物を係止するためのサポート部材4(係止部材)を備えていることを特徴としている。図2の(a)は、本実施形態に係る吸引カテーテル10に備えられたサポート部材4の概略構成を示す斜視図であり、図2の(b)〜(d)は、本実施形態に係る吸引カテーテル10の概略構成を示し、図2の(b)は上面図であり、図2の(c)は側面図であり、図2の(d)は遠位端側から見た正面図である。
図2の(a)に示されるように、サポート部材4は、環形状のリング部4aと、操作ワイヤ4bと、を備えている。リング部4aは、閉塞物に当接する当接部である。操作ワイヤ4bは、リング部4aの移動を操作するためのものであり、リング部4aに連結している。
図2の(b)〜(d)に示されるように、本実施形態に係る吸引カテーテル10において、吸引部3は、吸引チューブ1の軸線Xに対して傾斜して形成された吸引口3aを有する。このため、吸引部3の遠位端側の端部には、最も遠位端側の最遠位端部1a、及び最も近位端側の最近位端部1bが存在する。血管内で、ガイドワイヤはよく血管壁に沿って配置されるため、ガイドワイヤチューブ2に隣接する最遠位端部1aは、吸引口3aにおいて最も血管壁側に配される。一方、最近位端部1bは、血管壁から最も遠い位置に配される。吸引カテーテル10では、最近位端部1bでの吸引圧が最も高く、最遠位端部1aでの吸引圧が最も低くなる。
また、本願明細書では、吸引チューブ1の軸線Xを基準として、吸引部3における最遠位端部1a側を上側とし、上側と反対側を下側としている。なお、上側は、吸引カテーテル10におけるガイドワイヤチューブ2が設けられた側ともいえる。そして、ガイドワイヤチューブ2と反対側を下側といえる。
また、ガイドワイヤチューブ2は、吸引チューブ1の内側及び外側の両方に設けられている。それゆえ、ガイドワイヤチューブ2のガイドワイヤルーメンB内のガイドワイヤは、吸引チューブ1の側壁を貫通して配されることになる。
また、吸引部3には、X線不透過マーカー1cが取り付けられている。これにより、吸引カテーテル10を血管に挿入しているとき、X線検出モニタによって、吸引部3の位置を確認することができる。
なお、X線不透過マーカー1cの形状や位置は、特に限定されるものではなく、例えば管状、コイル状、塗料状、粉体状のものなどを吸引部3の表面、内面、または肉厚内に付与して用いることができる。また、吸引部3の一部もしくは全体にX線不透過物質を混ぜ込んで、吸引部3全体がX線下で確認できるようにしてもよい。X線不透過マーカー1cの材質は、X線に不透過な性質を有するX線不透過性材料であればどのような素材でも使用することができる。X線不透過マーカー1cの材質として、例えば、ステンレス、白金、プラチナ、タングステンまたはそれらの合金、更に、次炭酸ビスマス、酸化ビスマス、硫酸バリウムなどの造影物を使用することができる。
また、図2の(b)〜(d)に示されるように、吸引カテーテル10では、サポート部材4のリング部4aは、吸引チューブ1の吸引ルーメンA内に収容されている。吸引カテーテル10の遠位端側から見たとき、リング部4aの外径は、吸引チューブ1の内径と略同じになっている。また、操作ワイヤ4bは、吸引チューブ1の上側の側壁を貫通して設けられている。リング部4aは、操作ワイヤ4bから下方へ向かって延びている。すなわち、リング部4aと操作ワイヤ4bとの連結部は、上側に配されている。
吸引カテーテル10の遠位端側から見たとき、リング部4aは、楕円形状であってもよいし、真円形状であってもよく、好ましくは楕円形状であり、特に好ましくは吸引チューブ1の内壁(吸引ルーメンAを構成する壁)と接触する楕円形状である。吸引チューブ1内にリング部4aが配置されている場合、吸引チューブ1の長手方向の軸線に対するリング部4aの角度は、15°〜165°であり、好ましくは30°〜120°であり、特に好ましくは45°〜90°である。
操作ワイヤ4bは、操作することにより、軸線Xの方向において、遠位側と近位側との間を往復移動することが可能になっている。このため、リング部4aは、操作ワイヤ4bの操作により、閉塞物と当接して、吸引チューブ1に対して軸線Xの方向に往復移動する。より具体的には、操作ワイヤ4bを遠位側へ移動させることにより、リング部4aは、吸引口3aを閉塞する血栓などの閉塞物と当接する。そして、リング部4aを閉塞物に当接させた状態で、操作ワイヤ4bを操作してリング部4aを遠位側へ移動させる。これにより、吸引部3における最も近位端側に位置する最近位端部1bと閉塞物との間に隙間が形成される。リング部4aの移動範囲は、最近位端部1bと閉塞物との間に隙間を形成することができる範囲であれば、特に限定されない。例えば、リング部4aの移動範囲は、最近位端部1bから遠位側へ10mmの範囲である。
また、サポート部材4のリング部4aは、閉塞物の近位側から閉塞物に当接可能な範囲で移動できれば特に限定されない。リング部4aは、軸線Xの方向において少なくとも最遠位端部1aと最近位端部1bとの間を移動するように構成されていることが好ましい。
また、サポート部材4における少なくとも操作ワイヤ4bの材料及び寸法は、吸引チューブ1に対して追随性があることが要求される。それゆえ、少なくとも操作ワイヤ4bの寸法・材料の条件は、例えばガイドワイヤチューブ2を挿通するガイドワイヤと同様の条件である。また、製造の容易性から、リング部4aと操作ワイヤ4bとは同材料で構成され、例えば、1本の直線状のワイヤから溶接などにより製造されることが好ましい。
次に、吸引カテーテル10の操作方法について、説明する。図3は、吸引カテーテル10の操作方法を模式的に示す断面図であり、図3の(a)は、吸引カテーテル10が血管中にて吸引対象物である血栓に到達したときの状態を示し、図3の(b)は、吸引カテーテル10が血栓に到達した後の動作を示す。
図3の(a)に示されるように、吸引カテーテル10を用いた治療においては、まず、血管6内にて、ガイドワイヤ5が血管壁に沿って移動する。そして、ガイドワイヤ5の遠位側端部が吸引対象部位である血栓6Aに引っ掛かることにより、吸引カテーテル10が血栓6Aへ到達するためのガイドワイヤ5による経路が確保される。吸引カテーテル10は、ガイドワイヤ5をガイドワイヤチューブ2に通し、ガイドワイヤ5に沿って血管内に挿入される。
このとき、サポート部材4のリング部4aは、吸引チューブ1の吸引口3aに引っ掛かっている。このため、吸引カテーテル10の挿入操作中、吸引チューブ1に対するリング部4aの相対的位置は変化しない。それゆえ、操作ワイヤ4bの操作なしに、リング部4aを血栓6A近傍の位置Cに到達させる。このとき、リング部4aは、少なくとも遠位側の部分にて血栓6Aと接触している。
また、ガイドワイヤ5の遠位端側の部分(例えば遠位端から近位端側へ15cm程度の部分)は、血管が傷つかないように、近位端側の部分よりも柔軟になっている。そして、ガイドワイヤ5は、遠位端へ向かうに従い、柔軟性が高くなる。
吸引カテーテル10がガイドワイヤ5の近位端側の部分に沿って移動する場合、ガイドワイヤチューブ2は、該ガイドワイヤチューブ2を通過するガイドワイヤ5の形状に追随する。また、吸引カテーテル10がガイドワイヤ5の遠位端側の部分に沿って移動する場合、ガイドワイヤ5に柔軟性があるため、ガイドワイヤ5に対するガイドワイヤチューブ2の形状の追随性が遠位端へ向かうに従い小さくなる。例えば、ガイドワイヤ5の遠位端から3cmの部分は、ガイドワイヤ5の形状がガイドワイヤチューブ2の形状に追随する程度の柔軟性を有する。
図3の(b)に示されるように、吸引カテーテル10が血管6中の血栓6Aに到達した後、吸引操作をしつつ、操作ワイヤ4bを操作せず吸引チューブ1を往復移動するように操作し吸引チューブ1の遠位端側の先端部で血栓6Aをつつく(pecking)。このとき、リング部4aの位置Cは変化せず、吸引チューブ1がリング部4aに対して相対移動することになる。
このように吸引操作をしつつ吸引チューブ1の先端部で血栓6Aをつつく操作をすることによって、血栓6Aは、細分化され、吸引口3aから吸引チューブ1内部へ吸引される。このとき、細分化された血栓6Aのサイズが吸引口3aよりも大きい場合、吸引カテーテル10の先端部の吸引口3aは、血栓6Aによって閉塞される。
本実施形態に係る吸引カテーテル10では、吸引口3aが血栓6Aにより閉塞されたとき、吸引性能を維持しつつ、血栓6Aを除去することが可能である。図4は、吸引口3aが血栓6Aにより閉塞したときの吸引カテーテル10の操作方法を模式的に示す断面図であり、図4の(a)は、血栓6Aにより吸引口3aが閉塞された吸引カテーテル10の状態を示し、図4の(b)は、図4の(a)の状態になったときの吸引カテーテル10の操作方法を示し、図4の(c)は、サポート部材4を備えていない吸引カテーテル10’が血栓6Aにより吸引口3aが閉塞された状態を示す。
図4の(a)に示されるように、血栓6Aにより吸引口3aが閉塞されたとき、リング部4aは、血栓6Aの近位端側に配置されることになる。すなわち、リング部4aは、血栓6Aの近位端側から血栓6Aに当接した状態となっている。この状態で、リング部4aの位置を固定しつつ(操作ワイヤ4bの操作なし)、遠位側と近位側との間で吸引チューブ1が往復移動するように操作する。
このように吸引口3aとリング部4aとの相対位置を変化させることにより、吸引部3(吸引口3a)における最近位端部1bと血栓6Aとの間に隙間が形成される(図4の(b))。そして、形成された隙間を介して血流などの流体が吸引チューブ1内部へ流れ込むことにより、血栓6Aに吸引力F2が発生する。ここで、リング部4aは、吸引チューブ1内に収容される寸法である。このため、血栓6Aは、吸引力F2により、リング部4a内を通過して吸引チューブ1内部へ吸引される。すなわち、吸引力F2によりリング部4aを通過した血栓6Aは、吸引口3a外に出ることがなく、全て吸引チューブ1内に吸引される。また、血栓6Aはリング部4aを有するサポート部材4により係止された状態になっているので、血栓6Aには吸引力F2と反対方向の押圧力F1が働く。そして、互いに反対方向の押圧力F1及び吸引力F2の作用により、血栓6Aは、吸引チューブ1の軸線方向に伸長し、位置Dにて分割または切断されて吸引チューブ1内に吸引される。
このように吸引カテーテル10によれば、吸引部3(吸引口3a)の最近位端部1bと血栓6Aとの間に隙間が形成された状態で、血栓6Aが分割または切断されて吸引チューブ1内に吸引される。このため、吸引チューブ1内に負圧が発生することがない。それゆえ、吸引性能を維持しつつ血栓6Aを除去することができる。
また、図4の(c)に示されるような吸引カテーテル10’は、サポート部材4を備えていないため、血栓6Aには吸引力F2と反対方向の押圧力F1が働かない。吸引力F2の反対方向の力として、例えば血栓6Aと血管壁との付着力F1’が働く。この付着力F1’は、押圧力F1ほど大きくない。それゆえ、血栓6Aは、付着力F1’及び吸引力F2により、吸引チューブ1の軸線方向に伸長し分割または切断されることはない。
なお、図4の(a)及び(b)に示された方法では、リング部4aが血栓6Aに当接した状態で、リング部4aの位置を固定しつつ、遠位側と近位側との間で吸引チューブ1が往復移動するように操作していた。しかし、吸引チューブ1及び操作ワイヤ4bの操作は、この操作に限定されず、吸引口3aとリング部4aとの相対位置を変化させる操作であればよい。例えば、吸引チューブ1の位置を固定しつつ、操作ワイヤ4bによりリング部4aを往復移動するように操作してもよい。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図5は、本実施形態に係る吸引カテーテル10Aの概略構成を示し、図5の(a)は上面図であり、図5の(b)は側面図であり、図5の(c)は遠位端側から見た正面図である。
本実施形態に係る吸引カテーテル10Aは、図5の(a)〜(c)に示されるように、リング部4cのサイズが実施形態1と異なる。図5の(c)に示されるように、リング部4cは、吸引チューブ1の外径よりも大きい環形状である。そして、吸引チューブ1は、リング部4cの環形状内を通過するように配置されている。また、吸引チューブ1の外表面の少なくとも一部の領域がリング部4cの内側部分と接触している。
また、吸引カテーテル10Aは、サポート部材4の操作ワイヤ4bを収容する操作ワイヤチューブ7を備えている。操作ワイヤチューブ7は、吸引チューブ1の外表面に設けられており、吸引チューブ1の軸線Xと平行になるように配置されている。また、操作ワイヤチューブ7は、最近位端部1bよりも近位側に設けられている。
次に、吸引カテーテル10Aの操作方法について、説明する。図6は、吸引カテーテル10Aの操作方法を模式的に示す断面図であり、図6の(a)は、血管挿入時の吸引カテーテル10Aの構成を示し、図6の(b)は、吸引カテーテル10Aが血管中にて吸引対象物である血栓に到達したときの状態を示し、図6の(c)は、吸引カテーテル10Aが血栓に到達した後の動作を示す。
図6の(a)に示されるように、吸引カテーテル10Aは、操作ワイヤ4bによる操作によりリング部4cが最も遠位側に配置された状態で、血管に挿入される。リング部4cは、吸引チューブ1の外表面に接触するように配置されている。このため、リング部4cが最近位端部1bに接触して配置されている場合、吸引チューブ1の屈曲による変位は、リング部4cにより制約される。このため、リング部4cと最近位端部1bとの接触により、血管に対する吸引カテーテル10Aの追随性が維持されない。そこで、本実施形態では、リング部4cが最も遠位側に配置された状態とすることにより、リング部4cが最近位端部1bと接触しなくなり、吸引チューブ1の屈曲による変位がリング部4cにより制約されることない。それゆえ、この状態で吸引カテーテル10Aを血管に挿入することにより、血管に対する吸引カテーテル10Aの追随性が維持される。
図6の(a)に示される状態で、ガイドワイヤ5をガイドワイヤチューブ2に通し、ガイドワイヤ5に沿って吸引カテーテル10Aを血管内に挿入する。そして、図6の(b)に示されるように、吸引カテーテル10Aが血栓6Aに到達したとき、操作ワイヤ4bによる操作により、リング部4cを近位側へ移動させる。
そして、図6の(b)に示されるように、吸引カテーテル10Aが血管6中の血栓6Aに到達した後、吸引操作をしつつ、操作ワイヤ4bを操作せず吸引チューブ1を往復移動するように操作し吸引チューブ1の遠位端側の先端部で血栓6Aをつつく(pecking)。これにより、血栓6Aは、細分化され、吸引口3aから吸引チューブ1内部へ吸引される。
図7は、吸引口3aが血栓6Aにより閉塞したときの吸引カテーテル10Aの操作方法を模式的に示す断面図であり、図7の(a)は、血栓6Aにより吸引口3aが閉塞された吸引カテーテル10Aの状態を示し、図7の(b)は、図7の(a)の状態になったときの吸引カテーテル10Aの操作方法を示す。
図7の(a)に示されるように、血栓6Aにより吸引口3aが閉塞されたとき、リング部4cは、血栓6Aの近位端側から血栓6Aに当接した状態となっている。この状態で、リング部4cの位置を固定しつつ(操作ワイヤ4bの操作なし)、遠位側と近位側との間で吸引チューブ1が往復移動するように操作し、最近位端部1bと血栓6Aとの間に隙間を形成する。これにより、図7の(b)に示されるように、血栓6Aに吸引力F2が発生する。そして、この状態で、操作ワイヤ4bによる操作により、リング部4cを近位側へ移動させる。
ここで、リング部4cは、吸引チューブ1の外径よりも大きい環形状である。それゆえ、吸引力F2によりリング部4cを通過した血栓6Aは、吸引口3aよりも大きいため、一部が最近位端部1bに当接する。このため、血栓6Aは、吸引口3aを介して吸引力F2により吸引されている部分6Bと、最近位端部1bに当接し吸引チューブ1外に残っている部分6Cとに分かれた状態となる。この状態でリング部4cを近位側へ移動させると、血栓6Aの部分6Cの遠位側から、リング部4cが部分6Cに当接する。このリング部4cの当接により、部分6Cには、吸引力F2と同方向の押圧力F1が働く。
その結果、図7の(b)に示されるように、血栓6Aには、最近位端部1bとの当接部分に対し、吸引チューブ1内部側の部分6Bには吸引力F2が働く一方、吸引チューブ1外部側の部分6Cには吸引力F2と同方向の押圧力F1が働く。このため、さらにリング部4cを近位側へ移動させると、血栓6Aは、最近位端部1b近傍の位置Dにて分割または切断される。そして、血栓6Aの部分6Bが吸引チューブ1内に吸引される。
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図8は、本実施形態に係る吸引カテーテル10B及び10Cの概略構成を示し、図8の(a)及び(b)は、吸引カテーテル10Bの構成を示す側面図、及び遠位端側から見た正面図であり、図8の(c)及び(d)は、図8の(a)及び(b)に示す構成の変形例である吸引カテーテル10Cの構成を示す側面図、及び遠位端側から見た正面図である。
本実施形態に係る吸引カテーテル10B及び10Cは、図8の(a)〜(d)に示されるように、操作ワイヤチューブ7が設けられている点が実施形態1と異なる。操作ワイヤチューブ7は、サポート部材4の操作ワイヤ4bが挿通する操作ワイヤルーメンを有する。
図8の(a)及び(b)に示されるように、吸引カテーテル10Bでは、操作ワイヤチューブ7は、吸引チューブ1の内壁と外壁との両方に設けられている。それゆえ、操作ワイヤチューブ7内の操作ワイヤ4bは、吸引チューブ1の側壁を貫通して配されることになる。吸引カテーテル10Bでは、操作ワイヤチューブ7が吸引チューブ1の内側と外側との両方に設けられているので、吸引チューブ1の内壁における操作ワイヤチューブ7の占有部分を小さく設定することができる。このため、吸引ルーメンAの容積を大きく形成することができ、吸引力を大きくすることができる。
また、図8の(c)及び(d)に示されるように、吸引カテーテル10Cでは、操作ワイヤチューブ7は、吸引チューブ1の内壁のみに形成されている。それゆえ、サポート部材4の操作ワイヤ4bは、吸引チューブ1の側壁を貫通することなく、吸引チューブ1内に配されることになる。吸引カテーテル10Cでは、リング部4a及び操作ワイヤ4bが全て吸引チューブ1内に配されているので、操作ワイヤ4bにより吸引チューブ1の屈曲が制約されることがない。それゆえ、吸引チューブ1に対する操作ワイヤ4bの追随性が向上する。
なお、吸引カテーテル10B及び10Cにおいて、吸引チューブ1の内壁に設けられている操作ワイヤチューブ7は、吸引カテーテル10の壁部内部に設けられていてもよい。
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図9は、本実施形態に係る吸引カテーテル10D及び10Eの概略構成を示し、図9の(a)及び(b)は、吸引カテーテル10Dの構成を示す側面図、及び遠位端側から見た正面図であり、図9の(c)及び(d)は、図9の(a)及び(b)に示す構成の変形例である吸引カテーテル10Eの構成を示す側面図、及び遠位端側から見た正面図である。
本実施形態に係る吸引カテーテル10Dは、図9の(a)及び(b)に示されるように、操作ワイヤ4bが吸引チューブ1の下側に配されるとともにリング部4dが操作ワイヤ4bから上方へ向かって延びる点が実施形態1と異なる。
吸引カテーテル10Dでは、操作ワイヤ4bが挿通する操作ワイヤチューブ7は、吸引チューブ1の下側にある内壁及び外壁の両方に設けられている。それゆえ、操作ワイヤチューブ7内の操作ワイヤ4bは、吸引チューブ1の下側の側壁を貫通して配されることになる。
また、リング部4dと操作ワイヤ4bとの連結部は、最近位端部1b近傍に配されている。このため、リング部4dは、吸引チューブ1の吸引部3において、最近位端部1b近傍の位置から上方へ延びている。実施形態1に係る吸引カテーテル10におけるサポート部材4のリング部4aと異なり、リング部4dの外径は、吸引カテーテル10Dの遠位端側から見たとき、吸引チューブ1の内径よりもはるかに小さい。リング部4dは、楕円形状であってもよいし、真円形状であってもよく、好ましくは楕円形状であり、特に好ましくは吸引チューブ1の内壁と接触する楕円形状である。吸引チューブ1内にリング部4dが配置されている場合、吸引チューブ1の長手方向の軸線に対するリング部4dの角度は、15°〜165°であり、好ましくは30°〜120°であり、特に好ましくは45°〜90°である。
また、変形例としての吸引カテーテル10Eは、図9の(c)及び(d)に示されるように、吸引チューブ1の外壁に操作ワイヤチューブ7の代わりに挿通突起7aが設けられている点が図9の(a)及び(b)に示す吸引カテーテル10Dと異なる。また、吸引カテーテル10Eは、リング部4eの形状が吸引カテーテル10Dと異なる。
挿通突起7aは、操作ワイヤ4bを挿通する挿通孔が設けられており、例えば吸引チューブ1の外壁に対して突出する1つのドット状に設けられている。挿通突起7aが設けられていることにより、吸引チューブ1の外壁での挿通突起7aの設置面積を極めて小さくすることができる。その結果、吸引チューブ1の外壁の挿通突起7aによる吸引チューブ1の屈曲変位の制約が小さくなり、吸引カテーテル10Eに対する操作ワイヤ4bの追随性が向上する。挿通突起7aは、例えば、最近位端部1bから近位側へ1〜2mm離間した吸引チューブ1の外壁に設けられている。また、この場合、吸引チューブ1の内壁に設けられた操作ワイヤチューブ7は、最近位端部1bから近位側へ1〜2mm程延びている。
また、リング部4eは、複数のリングが組み合わさった構成である。より具体的には、図9の(d)に示されるように、リング部4eは、2つの楕円リング4e1及び4e2から構成されている。楕円リング4e1及び4e2は、互いに線対称となるように、最近位端部1bの近傍位置で連結している。
図9の(a)〜(d)に示された吸引カテーテル10D及び10Eであっても、吸引口3aとリング部4dまたは4eとの相対位置を変化させる操作により、吸引部3(吸引口3a)における最近位端部1bと血栓との間に隙間が形成することが可能である。それゆえ、本実施形態に係る吸引カテーテル10D及び10Eによれば、吸引性能を維持しつつ血栓を除去することができる。
また、図10は、本実施形態に係る吸引カテーテル10D及び10Eに適用可能な、閉塞物に当接する当接部の形状例を示し、図10の(a)〜(d)は、遠位端側から見た正面図である。なお、図10の(a)は、当接部としての上述したリング部4dを示す。
図10の(b)に示された構成では、当接部は、環形状のリング部4fである。このリング部4fは、下側に頂点を有するU字環の形状になっている。
また、当接部の形状は、環形状に限定されない。例えば、図10の(c)に示されるように、当接部は、下側に頂点を有するV字形状の棒状体で構成されたV字部4gであってもよい。V字部4gは、2つの棒状体4g1及び4g2から構成されている。棒状体4g1及び4g2は、互いに線対称となるように、最近位端部1bの近傍位置で連結している。棒状体4g1及び4g2それぞれにおける連結部(V字形状の頂点)と反対側の端部には、球状体が形成されている。
また、図10の(d)に示されるように、当接部は、球形状の球状部4hであってもよい。
〔当接部と操作ワイヤ4bとのなす角度θについて〕
ここで、実施形態1〜4にて説明した当接部(リング部4a〜4f、V字部4g、及び球状部4h)と操作ワイヤ4bとのなす角度θについて、説明する。図11の(a)及び(b)は、リング部4aと操作ワイヤ4bとのなす角度θを説明するための側面図であり、図11の(c)は、球状部4hと操作ワイヤ4bとのなす角度を説明するための側面図である。
当接部がリング部4aである場合を例にして説明する。サポート部材4におけるリング部4aと操作ワイヤ4bとのなす角度θは、5〜175°の範囲であればよい。例えば、図11の(a)に示されるように、角度θは、90°よりも大きい角度であってもよい。また、図11の(b)に示されるように、角度θは、90°よりも小さくてもよい。角度θは、好ましくは60〜120°の範囲である。
また、当接部が球状部4hである場合、球状部4hと操作ワイヤ4bとのなす角度θは、180°であることが好ましい。
なお、当接部がリング部4aである場合の角度θについて説明したが、実施形態2〜4に係るリング部4a〜4fと操作ワイヤ4bとのなす角度θについても、上記と同様の範囲に設定される。また、図11の(a)及び(b)では、操作ワイヤ4bからリング部4aが下方へ延びた構成における角度θが示されている。しかし、上記角度θの範囲は、例えば、実施形態4のように当接部(リング部4d〜4f、またはV字部4g)が操作ワイヤ4bから上方へ延びた構成に対しても適用可能である。
〔実施形態5〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図12の(a)は、本実施形態に係る吸引カテーテルに備えられたサポート部材(係止部材)の構成を示す図であり、図12の(b)は、図12の(a)に示す構成の変形例であるサポート部材の構成を示す図である。
本実施形態に係る吸引カテーテルは、係止部材としてのサポート部材にX線不透過材料により構成されたコイル8が設けられている点が実施形態1と異なる。図12の(a)に示されるように、コイル8はリング部4aに巻き付いて設けられている。これにより、吸引カテーテルを血管に挿入しているとき、X線検出モニタによって、リング部4aの位置を確認することができる。
また、図12の(b)に示されるように、コイル8は、操作ワイヤ4bに巻き付いて設けられていてもよい。この場合、コイル8は、リング部4aと操作ワイヤ4bとの連結部4X近傍の操作ワイヤ4bに巻き付いていることが好ましい。これにより、X線検出モニタによって、リング部4aの位置を予測及び確認することができる。
コイル8の材料は、X線不透過の性質を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、ステンレス、白金、プラチナ、タングステンまたはそれらの合金が挙げられ、白金が好ましい。
なお、図12の(a)に示されたサポート部材は、SUS(ステンレス鋼)製のワイヤの先端に白金からなるコイル8を溶接し、次いでワイヤを折り曲げ連結部4Xで溶接してリング部4aを形成することにより製造される。
また、図12の(b)に示されたサポート部材は、SUS(ステンレス鋼)製のワイヤにおける連結部4Xの近傍位置に白金からなるコイル8を溶接し、次いでワイヤを折り曲げ連結部4Xで溶接してリング部4aを形成することにより製造される。また、コイル8の長さは1mmである。
図12の(a)及び(b)に示された構成において、ワイヤの線径はφ0.23mmであり、溶接強度は、5N以上であり、リング部4aは円形環形状ではなく、寸法Iが1.7mmであり寸法IIが2.5mmである。また、コイル8は、白金からなり、φ0.05mmである。また、リング部4aを構成するワイヤの線径は、操作ワイヤ4bを構成するワイヤの線径よりも小さい。図12の(a)に示された構成では、リング部4aを構成するワイヤの線径は、φ0.11mmである。それゆえ、連結部4Xは、線径がφ0.11mmであるワイヤを折り曲げて形成された部分である。それゆえ、連結部4Xの線径は、φ0.22mmである。
〔まとめ〕
本発明の一実施形態に係る吸引カテーテル10は、遠位端に吸引部3を有する吸引ルーメンAを備えた吸引チューブ1を備え、前記吸引部3は、前記吸引チューブ1の軸線Xに対して傾斜して形成された吸引口3aを有する吸引カテーテル10であって、前記吸引口3aを閉塞する閉塞物(血栓6A)を係止するための係止部材(サポート部材4)が設けられており、当該係止部材は、当接部(リング部4a)と、前記当接部の移動を操作するための操作ワイヤ4bと、を備え、前記当接部は、前記閉塞物と当接して、前記吸引チューブ1に対して前記軸線Xの方向に移動し、前記吸引部3における最も近位端側に位置する最近位端部1bと前記閉塞物との間に隙間を形成することを特徴としている。
上記の構成によれば、係止部材(サポート部材4)は、当接部(リング部4a〜4f、V字部4g、球状部4h)と、前記当接部の移動を操作するための操作ワイヤ4bと、を備え、前記当接部は、前記閉塞物と当接して、前記吸引チューブ1に対して前記軸線Xの方向に移動し、前記吸引部3における最も近位端側に位置する最近位端部1bと前記閉塞物との間に隙間を形成する。このため、吸引口3aが閉塞物により閉塞されたとき、前記当接部は、前記操作ワイヤ4bによる操作により、近位側から閉塞物に当接する。そして、近位側から閉塞物に当接した状態で、操作ワイヤ4bにより当接部と吸引チューブ1の吸引口3aとの相対位置を変化させることによって、前記吸引部3における最も近位端側に位置する最近位端部1bと前記閉塞物との間に隙間が形成される。そして、形成された隙間を介して血流などの流体が吸引チューブ1内部へ流れ込むことにより、閉塞物に吸引力F2が発生する。また、閉塞物は当接部を有する係止部材により係止された状態になっているので、閉塞物には吸引力F2と反対方向の押圧力F1が働く。そして、互いに反対方向の押圧力F1及び吸引力F2の作用により、閉塞物は、分割または切断されて吸引チューブ1内に吸引される。このように上記の構成によれば、吸引部3の最近位端部1bと閉塞物との間に隙間が形成された状態で、閉塞物が分割または切断されて吸引チューブ1内に吸引されるため、吸引チューブ1内に負圧が発生することがない。このため、上記の構成によれば、吸引性能を維持しつつ閉塞物を除去することができる。
また、本発明の一実施形態に係る吸引カテーテル10は、前記当接部(リング部4a〜4f)は、環形状を有する構成であることが好ましい。
上記の構成によれば、前記当接部は、環形状を有するので、当接部による吸引力の低下を抑えることができる。
また、本発明の一実施形態に係る吸引カテーテル10Aは、前記当接部(リング部4c)は、環形状であり、該環形状の内部に前記吸引チューブ1が配されている構成であってもよい。
また、本発明の一実施形態に係る吸引カテーテル10は、前記当接部(リング部4a)は、前記吸引ルーメンA内に配されているとともに、環形状である構成であってもよい。
また、本発明の一実施形態に係る吸引カテーテルは、前記環形状(リング部4a)および前記操作ワイヤ4b、または何れか一方に、X線不透過性材料により構成されたコイル8が巻き付いて設けられている構成であることが好ましい。
これにより、吸引カテーテルを血管に挿入しているとき、X線検出モニタによって、リング部4aの位置を確認することができる。
また、本発明の一実施形態に係る吸引カテーテル10Bは、前記操作ワイヤ4bが挿通する操作ワイヤルーメンを有する操作ワイヤチューブ7を備え、前記操作ワイヤチューブ7は、前記吸引チューブ1の外壁に設けられている構成であってもよい。
上記の構成によれば、前記操作ワイヤチューブ7は、前記吸引チューブ1の外壁に設けられているので、吸引チューブ1の内壁における操作ワイヤチューブ7の占有部分を小さく設定することができる。このため、上記の構成によれば、吸引ルーメンAの容積を大きく形成することができ、吸引力を大きくすることができる。
また、本発明の一実施形態に係る吸引カテーテル10Cは、前記操作ワイヤ4bが挿通する操作ワイヤルーメンを有する操作ワイヤチューブ7を備え、前記操作ワイヤチューブ7は、前記吸引チューブ1の壁部内または内壁に設けられている構成であってもよい。
上記の構成によれば、前記操作ワイヤチューブ7は、前記吸引チューブ1の壁部内または内壁に設けられているので、操作ワイヤ4bにより吸引チューブ1の屈曲が制約されることがない。それゆえ、上記の構成によれば、吸引チューブ1に対する操作ワイヤ4bの追随性が向上する。
また、本発明の一実施形態に係る吸引カテーテルは、前記当接部(リング部4a〜4f、V字部4g、球状部4h)と前記操作ワイヤ4bとのなす角度θは、5°〜175°である構成であってもよい。
このような角度θの範囲であれば、吸引性能を維持しつつ閉塞物を除去することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の一実施例について以下に説明する。まず、ウシ血液からφ3.5mm長さ100mmの人工血栓を作製し、当該血栓をチューブに詰めた血管モデルを作製した。この血管モデルに対して、サポート部材を備えた吸引カテーテル(サポート部材あり)を用いて人工血栓の吸引操作を5回行った。サポート部材を備えた吸引カテーテルとして、実施形態2に係る吸引カテーテル10Aを用いた。また、サポート部材を備えていない吸引カテーテル(サポート部材なし)を用いて、同様に人工血栓の吸引操作を5回行った。そして、各吸引操作において、人工血栓により吸引カテーテルが詰まったか否かを判定するとともに、吸引カテーテルにより吸引された人工血栓の長さを計測した。その結果を図13に示す。なお、図13に示す吸引血栓長さは、5回の吸引操作で得られた吸引血栓長さの計測値の平均値である。
図13に示されるように、サポート部材を備えていない吸引カテーテル(サポート部材なし)を用いて吸引操作を行った場合、吸引血栓長さは、5回の吸引操作で平均65mmであった。このことから、吸引カテーテル(サポート部材なし)では、長さ100mmの人工血栓を完全に吸引することが困難であることがわかった。また、5回の吸引操作において、人工血栓により吸引カテーテルが詰まった回数は4回であった。
一方、サポート部材を備えた吸引カテーテル(サポート部材あり)を用いて吸引操作を行った場合、吸引血栓長さは、5回の吸引操作で平均100mmであった。このことから、吸引カテーテル(サポート部材あり)では、長さ100mmの人工血栓を100%完全に吸引できることがわかった。吸引カテーテル(サポート部材あり)を用いて吸引操作を行った場合、吸引カテーテルの先端は、人工血栓により閉塞される。しかし、サポート部材と吸引チューブとを相対移動させることにより、人工血栓が伸長し切断する効果(図4、図7参照)があったため、長さ100mmの人工血栓を100%完全に吸引できた。また、5回の吸引操作において、人工血栓により吸引カテーテルが詰まった回数は0回であった。
また、吸引操作により人工血栓が詰まった吸引カテーテルに対し、サポート部材を装着して吸引操作を行ったところ、詰まった人工血栓が切断されて、吸引カテーテルの吸引が回復した。
以上の結果から、サポート部材を備えた吸引カテーテルを用いて吸引操作を行った場合、人工血栓による吸引カテーテルの詰まりを防止できることがわかった。