以下、本発明の詳細を説明する。
本発明の蓄電デバイスとしては、特に限定されないが、非水電解質一次電池、水系電解質一次電池、非水電解質二次電池、水系電解質二次電池、コンデンサ、電気二重層キャパシタ、又はリチウムイオンキャパシタなどが例示される。本発明の蓄電デバイス用電極材料は、前記のような蓄電デバイスの電極に用いられる電極材料である。また、本発明の蓄電デバイス用電極は、前記のような蓄電デバイスに用いられる電極である。
[蓄電デバイス用炭素材料]
本発明の蓄電デバイス用炭素材料は、グラフェン積層構造を有する炭素材料を含む。前記炭素材料のBET比表面積は、10m2/g以上、200m2/g以下である。前記炭素材料の細孔分布における直径0.3nm以上、1.0nm以下の細孔容積は、0.2mL/g以上である。また、前記炭素材料のDBP吸油量は、150mL/100g以上である。
本発明に用いるグラフェン積層構造を有する炭素材料としては、例えば、黒鉛又は薄片化黒鉛などが挙げられる。
黒鉛とは、複数のグラフェンシートの積層体である。黒鉛のグラフェンシートの積層数は、通常、10万層〜100万層程度である。黒鉛としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛又は膨張黒鉛などを用いることができる。膨張黒鉛は、通常の黒鉛よりもグラフェン層同士の層間距離が大きくなっている割合が高く、電解液の補液性を高く保つ可能性があることから、好ましい。
薄片化黒鉛とは、元の黒鉛を剥離処理して得られるものであり、元の黒鉛よりも薄いグラフェンシート積層体をいう。薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、元の黒鉛より少なければよい。なお、薄片化黒鉛は、酸化薄片化黒鉛であってもよい。
薄片化黒鉛において、グラフェンシートの積層数は、特に限定されないが、好ましくは2層以上、より好ましくは5層以上、好ましくは1000層以下、より好ましくは500層以下である。グラフェンシートの積層数が前記下限以上である場合、薄片化黒鉛の導電性をより一層高めることができる。グラフェンシートの積層数が前記上限以下である場合、薄片化黒鉛の比表面積をより一層大きくすることができる。
また、薄片化黒鉛は、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有する部分剥離型薄片化黒鉛であることが好ましい。前記黒鉛の場合、所望のBET比表面積、細孔体積、およびDBP吸油量をより確保しやすい。
「部分的にグラファイトが剥離されている」構造の一例としては、グラフェンの積層体において、端縁からある程度内側までグラフェン層間が開いており、すなわち端縁にてグラファイトの一部が剥離しており、中央側の部分ではグラファイト層が元の黒鉛又は一次薄片化黒鉛と同様に積層していることをいうものである。従って、端縁にてグラファイトの一部が剥離している部分は、中央側の部分に連なっている。さらに、前記部分剥離型薄片化黒鉛には、端縁のグラファイトが剥離され薄片化したものが含まれていてもよい。
前記部分剥離型薄片化黒鉛は、中央側の部分において、グラファイト層が元の黒鉛又は一次薄片化黒鉛と同様に積層している。そのため、従来の酸化グラフェンやカーボンブラックより黒鉛化度が高く、導電性に優れている。また、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有することから、比表面積が大きい。そのため、活物質と接触する部分の面積を大きくすることができる。したがって、前記部分的剥離型薄片化黒鉛を含む蓄電デバイス用電極材料は、二次電池などの蓄電デバイスの電極に用いたときに、蓄電デバイスの抵抗を小さくすることができるので、大電流での充放電時における発熱を抑制することもできる。
部分剥離型薄片化黒鉛は、例えば、黒鉛または一次薄片化黒鉛と、樹脂とを含み、樹脂が黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフトまたは吸着により固定されている組成物を用意し、該組成物中に含まれている樹脂を、熱分解することにより得ることができる。なお、樹脂を熱分解させる際には、樹脂の一部を残存させながら熱分解してもよいし、樹脂を完全に熱分解してもよい。
前記部分剥離型薄片化黒鉛は、例えば、国際公開第2014/034156号に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法と同様の方法で製造することができる。また、前記黒鉛としては、より一層容易にグラファイトを剥離することが可能であるため膨張黒鉛を使用することが好ましい。
また、一次薄片化黒鉛とは、各種方法により黒鉛を剥離することにより得られた薄片化黒鉛を広く含むものとする。一次薄片化黒鉛は、部分剥離型薄片化黒鉛であってもよい。一次薄片化黒鉛は、黒鉛を剥離することにより得られるものであるため、その比表面積は、黒鉛よりも大きいものであればよい。
前記樹脂としては、特に限定されないが、ラジカル重合性モノマーの重合体であることが好ましい。この場合、1種のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよく、複数種のラジカル重合性モノマーの共重合体であってもよい。ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性の官能基を有するモノマーである限り、特に限定されない。
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−エチルアクリル酸メチル、α−ベンジルアクリル酸メチル、α−[2,2−ビス(カルボメトキシ)エチル]アクリル酸メチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジシクロヘキシル、α−メチレン−δ−バレロラクトン、α−メチルスチレン、α−アセトキシスチレンからなるα−置換アクリル酸エステル、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートなどのグリシジル基や水酸基を持つビニルモノマー;アリルアミン、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなアミノ基を有するビニルモノマー、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸などのカルボキシル基を有するモノマー;ユニケミカル社製、ホスマー(登録商標)M、ホスマー(登録商標)CL、ホスマー(登録商標)PE、ホスマー(登録商標)MH、ホスマー(登録商標)PPなどのリン酸基を有するモノマー;ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基を有するモノマー;アルキル基やベンジル基などを有する(メタ)アクリレート系モノマーなどが挙げられる。
用いられる樹脂の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリブチラール(ブチラール樹脂)、又はポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレンなどが挙げられる。
前記樹脂の中でも、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ酢酸ビニルを用いることができる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ酢酸ビニルを用いた場合、部分剥離型薄片化黒鉛の比表面積をより一層大きくすることができる。なお、樹脂種は使用する溶媒との親和性を鑑み、適宜選定を行うことが可能である。
残存樹脂の含有量は、樹脂分を除く部分剥離型剥片化黒鉛100重量部に対し、0重量部以上、40重量部以下であることが好ましく、1.0重量部以上、35量部以下であることがより好ましく、2.0重量部以上、30重量部以下であることがさらに好ましい。残存樹脂量が前記上限より多い場合は、製造コストが増大する場合がある。
なお、部分剥離型剥片化黒鉛に残存している残存樹脂量は、例えば熱重量分析(以下、TG)によって加熱温度に伴う重量変化を測定し、算出することができる。
また、後述する正極活物質との複合体を作製する場合は、正極活物質との複合体を作製した後に、樹脂を除去してもよい。
前記樹脂を除去する方法としては、樹脂の分解温度以上、正極活物質の分解温度未満で加熱処理する方法が好ましい。この加熱処理は、大気中、不活性ガス雰囲気下、低酸素雰囲気下、又は真空下のいずれで行ってもよい。
本発明のグラフェン積層構造を有する炭素材料は、例えば、原料としての黒鉛又は一次薄片化黒鉛を粉砕する工程を経ることによって製造することができる。
前記粉砕方法は、適当な溶媒に前記黒鉛を分散させた後に、超音波を照射する湿式粉砕、又は、例えば、ジェットミル粉砕、ボールミルでの粉砕等が挙げられる乾式粉砕が例示されるが、グラフェン積層構造を有する炭素材料の粉体抵抗の低減に高い効果があることから、ジェットミル粉砕、ボールミルでの粉砕等が挙げられる乾式粉砕が好ましい。
本発明において、前記乾式粉砕後の黒鉛または一次薄片化黒鉛の平均粒子径は、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは2.0μm以上、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。乾式粉砕後の黒鉛または一次薄片化黒鉛の平均粒子径が前記範囲内にある場合、粉体抵抗の低減だけでなく、得られた炭素材料の細孔容積やDBP吸油量をより一層最適な範囲に調整することができ、電解液の保液性をより一層高めることができる。なお、平均粒子径は、レーザー回折法により、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて、体積基準分布で算出した値をいう。
前記乾式粉砕した黒鉛又は一次薄片化黒鉛をそのまま用いても良いし、前述の部分剥離型薄片化黒鉛にしてもよい。
前記炭素材料の製造方法では、酸化工程を経ていないので、得られた炭素材料は、従来の酸化グラフェン及び該酸化グラフェンを還元して得られるグラフェンと比較して導電性に優れている。従来の酸化グラフェンや酸化還元グラフェンでは、sp2構造を十分に担保できないためであると考えられる。従来の酸化グラフェンや酸化還元グラフェンと比較して導電性に優れているため、前記炭素材料を用いた蓄電デバイス用電極は、二次電池などの蓄電デバイスの電極に用いたときに、蓄電デバイスの抵抗をより一層低減することができ、大電流での充放電時における発熱を抑制することをできる。また、得られた炭素材料は、表面に活性点が少ないので、酸化グラフェンと比べて電解液がより一層分解しにくい。そのため、ガスの発生をより一層抑制することもできる。
炭素材料のBET比表面積は、BET法に準拠して、窒素の吸着等温線から測定することができる。測定装置としては、例えば、島津製作所社製、品番「ASAP−2000」を用いることができる。
炭素材料の細孔分布は、HK法(Horvath−Kawazoe法)に準拠してアルゴン吸着等温線から測定することができる。測定装置としては、例えば、Microtrac BEL社製、品番「BELSORP−MAX」を用いることができる。細孔容積は、直径0.3nm以上、1.0nm以下の細孔が占める容積である。
また、炭素材料のDBP吸油量は、JIS K 6217−4に準拠して測定することができる。DBP吸油量は、例えば、吸収量測定器(あさひ総研社製、品番「S500」)を用いて測定することができる。
本発明の蓄電デバイス用炭素材料は、細孔容積及びDBP吸油量が前記下限以上にある炭素材料を含むので、電解液の保液性に優れている。そのため、電解液を集電体側の活物質まで十分に浸透させることができ、サイクル特性に代表される電池特性を向上させることができる。
また、前記炭素材料のBET比表面積が前記範囲内にある場合、前記炭素材料を含むスラリーを集電体上に塗工して電極を形成する際の塗工性を高めることができる。従って、電極の歩留まりを高めることができ、さらに、大電流時の充放電特性、すなわちレート特性などの電池特性も高めることができる。
本発明において、炭素材料のBET比表面積は、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは15m2/g以上、好ましくは200m2/g以下、より好ましくは160m2/g以下である。炭素材料のBET比表面積が前記下限以上である場合、電解液の補液性をより一層高めることができ、蓄電デバイスの容量などの電池特性をより一層高めることができる。また、炭素材料のBET比表面積が前記上限以下である場合、前記炭素材料を含むスラリーを集電体上に塗工して電極を形成する際の塗工性をより一層高めることができる。また、導電性をより一層高めることもできる。さらには、前記炭素材料と電解液との反応場が減少することから、電解液の劣化をより一層抑制することもできる。
本発明において、炭素材料の細孔分布における直径0.3nm以上、1.0nm以下の細孔容積は、好ましくは0.20mL/g以上、より好ましくは0.25mL/g以上である。炭素材料の細孔容積が前記下限以上である場合、電解液の保液性をより一層高めることができる。なお、炭素材料の細孔容積の上限は、特に限定されない。もっとも、電解液の劣化をより一層抑制する観点から、炭素材料の細孔容積は、好ましくは3.5mL/g以下、より好ましくは3.2mL/g以下、さらに好ましくは3.0mL/g以下である。
本発明において、炭素材料のDBP吸油量は、好ましくは150mL/100g以上、より好ましくは200mL/100g以上である。炭素材料のDBP吸油量が前記下限以上である場合、電解液の保液性をより一層高めることができる。なお、炭素材料のDBP吸油量の上限は、特に限定されない。もっとも、電解液の劣化をより一層抑制する観点から、炭素材料のDBP吸油量は、好ましくは450mL/100g以下、より好ましくは400mL/100g以下、さらに好ましくは300mL/100g以下である。
本発明においては、前記炭素材料とSiとの重量比1:1における混合物のX線回折スペクトルを測定したときに、以下の範囲となることが好ましい。すなわち、2θが、24°以上、28°未満の範囲における最も高いピークの高さcと、2θが、28°以上、30°未満の範囲における最も高いピークの高さdとの比c/dが、0.2以上、1.0以下であることが好ましい。なお、前記Siとしては、例えば、φ=100nm以下のシリコン粉末を用いることができる。
X線回折スペクトルは、広角X線回折法によって測定することができる。X線としては、CuKα線(波長1.541Å)を用いることができる。X線回折装置としては、例えば、SmartLab(リガク社製)を用いることができる。
X線回折スペクトルにおいて、グラファイト構造に代表されるグラフェン積層構造に由来するピークは、2θ=26.4°付近に現れる。一方、シリコン粉末になどのSiに由来するピークは、2θ=28.5°付近に現れる。従って、前記比c/dは、2θ=26.4°付近のピークと2θ=28.5°付近のピークとのピーク比(2θ=26.4°付近のピーク/2θ=28.5°付近のピーク)により求めることができる。
なお、前記c/dが0.2未満の場合、炭素材料自身における黒鉛構造の形成が未熟であり、電子伝導性が低いことに加え、欠陥を有するので、正極や負極の抵抗値が増大し、電池特性が低下する場合がある。
前記c/dが1.0より大きい場合、炭素材料自身が剛直となり、蓄電デバイスの正極や負極内に分散し難くなり、良好な電子伝導経路を形成しにくくなる場合がある。
蓄電デバイスの電極内において、電子伝導経路をより一層形成しやすくする観点から、前記比c/dは、より好ましくは0.22以上、さらに好ましくは0.25以上、より好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。
本発明において、炭素材料の粉体抵抗は、好ましくは1×10−3Ωcm未満、より好ましくは8×10−4Ωcm以下である。前記粉体抵抗の場合、蓄電デバイス自身の抵抗を低下させることが出来るので、出力特性などの電池特性をより一層高めることができる。また、粉体抵抗の下限は特に限定されないが、例えば、4×10−5Ωcm以上とすることができる。粉体抵抗は、例えば、4端子法により、粉体に圧力を4kNずつかけて、20kNのときにおける抵抗値を測定することにより得ることができる。粉体抵抗は、例えば、低抵抗粉体測定装置(三菱化学アナリテック社製、ロレスタGX)を用いて測定することができる。
[蓄電デバイス用電極]
本発明の蓄電デバイス用炭素材料は、蓄電デバイス用電極、すなわち、正極、及び/又は、負極に用いることができる。その中でも、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池の正極の導電助剤として用いた場合には、レート特性及びサイクル特性をより一層向上させることができるので、正極に用いられることが好ましい。また、この場合、前記炭素材料の適用によって、前記正極の導電性をより一層高めることができるので、正極中における導電助剤の含有量を少なくすることができる。そのため、正極活物質の含有量をより一層多くすることができ、蓄電デバイスのエネルギー密度をより一層大きくすることができる。
前記正極は、一般的な正極構成、組成、および製造方法のものでもよいし、正極活物質と前記炭素材料との複合体を用いてもよい。なお、蓄電デバイス用電極が負極である場合は、負極活物質として、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、金属酸化物、チタン酸リチウム、又はシリコン系の活物質を用いることができる。
以下、本発明の蓄電デバイス用電極の一例としての二次電池用正極について説明する。なお、蓄電デバイス用電極が負極の場合も同様のバインダー等を用いることができるものとする。
蓄電デバイス用電極100重量%中における前記炭素材料の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、さらに好ましくは0.4重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。前記炭素材料の含有量が前記範囲内にある場合、活物質の含有量をより一層多くすることができ、蓄電デバイスのエネルギー密度をより一層大きくすることができる。
本発明の蓄電デバイス用電極においては、本発明の炭素材料を第1の炭素材料(特に断りがない限り、単に炭素材料と称するものとする)としたときに、第1の炭素材料とは異なる第2の炭素材料をさらに含んでいてもよい。
第2の炭素材料としては、特に限定されず、グラフェン、人造黒鉛、粒状黒鉛化合物、繊維状黒鉛化合物、カーボンブラック又は活性炭が例示される。
本発明の蓄電デバイス用電極に用いられる正極活物質は、負極活物質の電池反応電位よりも、貴であればよい。その際、電池反応は、1族若しくは2族のイオンが関与していればよい。そのようなイオンとしては、例えば、Hイオン、Liイオン、Naイオン、Kイオン、Mgイオン、Caイオン、又はAlイオンが挙げられる。以下、Liイオンが電池反応に関与する系について詳細を例示する。
この場合、前記正極活物質としては、例えば、リチウム金属酸化物、リチウム硫化物、又は硫黄が挙げられる。
リチウム金属酸化物としては、スピネル構造、層状岩塩構造、若しくはオリビン構造を有するもの、又はこれらの混合物が挙げられる。
スピネル構造を有するリチウム金属酸化物としては、マンガン酸リチウムなどが例示される。
層状岩塩構造を有するリチウム金属酸化物としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、三元系などが例示される。
オリビン構造を有するリチウム金属酸化物としては、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガンリチウムなどが例示される。
前記正極活物質は、所謂ドープ元素が含まれてもよい。前記正極活物質は、単独で用いてもよいし、2種類以上用いてもよい。
前記正極は、正極活物質と前記炭素材料のみで形成されてもよいが、正極をより一層容易に形成する観点から、バインダーが含まれていてもよい。
前記バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイミド、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いることができる。
前記バインダーは、二次電池用正極をより一層容易に作製する観点から、非水溶媒又は水に溶解又は分散されていることが好ましい。
非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル又はテトラヒドロフランなどを挙げることができる。これらに、分散剤や、増粘剤を加えてもよい。
前記二次電池用正極に含まれるバインダーの量は、正極活物質100重量部に対して、好ましくは0.3重量部以上、30重量部以下であり、より好ましくは0.5重量部以上、15重量部以下である。バインダーの量が前記範囲内にある場合、正極活物質と炭素材料との接着性を維持することができ、集電体との接着性をより一層高めることができる。
前記二次電池用正極の作製方法としては、例えば、正極活物質、炭素材料、並びにバインダーの混合物を、集電体上に形成させることによって作製する方法が挙げられる。
前記二次電池用正極をより一層容易に作製する観点から、以下のようにして作製することが好ましい。まず、正極活物質、炭素材料にバインダー溶液又は分散液を加えて混合することによりスラリーを作製する。次に、作製したスラリーを集電体上に塗布し、最後に溶媒を除去することによって二次電池用正極を作製する。
前記スラリーの作製方法としては、既存の方法を用いることができる。例えば、ミキサー等を用いて混合する方法が挙げられる。混合に用いられるミキサーとしては、特に限定されないが、プラネタリミキサー、ディスパー、薄膜旋回型ミキサー、ジェットミキサー、又は自公回転型ミキサー等が挙げられる。
前記スラリーの固形分濃度は、塗工をより一層容易に行う観点から、30重量%以上、95重量%以下が好ましい。貯蔵安定性をより一層高める観点から、前記スラリーの固形分濃度は、35重量%以上、90重量%以下であることがより好ましい。また、より一層製造費用を抑制する観点から、前記スラリーの固形分濃度は、40重量%以上、85重量%以下であることがさらに好ましい。
なお、前記固形分濃度は、希釈溶媒によって制御することができる。希釈溶媒としては、バインダー溶液、又は分散液と同じ種類の溶媒を用いることが好ましい。また、溶媒の相溶性があれば、他の溶媒を用いてもよい。
前記二次電池用正極に用いる集電体は、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金であることが好ましい。アルミニウムは、正極反応雰囲気下で安定であることから、特に限定されないが、JIS規格1030、1050、1085、1N90、1N99等に代表される高純度アルミニウムであることが好ましい。
集電体の厚みは、特に限定されないが、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。集電体の厚みが10μm未満の場合、作製の観点から取り扱いが困難となることがある。一方、集電体の厚みが100μmより厚い場合は、経済的観点から不利になることがある。
なお、集電体は、アルミニウム以外の金属(銅、SUS、ニッケル、チタン、及びそれらの合金)の表面に、アルミニウムを被覆させたものであってもよい。
前記スラリーを集電体に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、前記スラリーをドクターブレード、ダイコータ又はコンマコータ等により塗布した後に溶剤を除去する方法や、スプレーにより塗布した後に溶剤を除去する方法、又はスクリーン印刷によって塗布した後に溶媒を除去する方法等が挙げられる。
前記溶媒を除去する方法は、より一層簡便であることから、送風オーブンや真空オーブンを用いた乾燥が好ましい。溶媒を除去する雰囲気としては、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気、又は真空状態などが挙げられる。また、溶媒を除去する温度は、特に限定されないが、60℃以上、250℃以下であることが好ましい。溶媒を除去する温度が60℃未満では、溶媒の除去に時間を要する場合がある。一方、溶媒を除去する温度が250℃より高いと、バインダーが劣化する場合がある。
前記二次電池用正極は、所望の厚み、密度まで圧縮させてもよい。圧縮は、特に限定されないが、例えば、ロールプレスや、油圧プレス等を用いて行うことができる。
圧縮後における前記二次電池用正極の厚みは、特に限定されないが、10μm以上、1000μm以下であることが好ましい。厚みが10μm未満では、所望の容量を得ることが難しい場合がある。一方、厚みが1000μmより厚い場合は、所望の出力密度を得ることが難しい場合がある。
前記二次電池用正極の気孔率は、10%以上、45%以下である。気孔率が10%未満であると、電解液が正極内に浸透しにくくなり、リチウムイオン伝導性が低下する場合があり、気孔率が45%より大きいと、正極活物質と炭素材料の接触が不十分となり電子伝導性が低下する場合がある。
前記正極の気孔率は、水銀圧入法に準拠して測定することができる。測定装置としては、例えば、水銀ポロシメーター(例えば、micromeritics社製、商品名:オートポアIV9520)を用いることができる。
前記二次電池用正極は、正極1cm2当たりの電気容量が、0.5mAh以上、10.0mAh以下であることが好ましい。電気容量が0.5mAh未満である場合は、所望する容量の電池の大きさが大きくなる場合がある。一方、電気容量が10.0mAhより大きい場合は、所望の出力密度を得ることが難しくなる場合がある。なお、正極1cm2当たりの電気容量の算出は、二次電池用正極作製後、リチウム金属を対極とした半電池を作製し、充放電特性を測定することによって算出してもよい。
二次電池用正極の正極1cm2当たりの電気容量は、特に限定されないが、集電体単位面積あたりに形成させる正極の重量で制御することができる。例えば、前述のスラリー塗工時の塗工厚みで制御することができる。
また、前記正極は、正極活物質と前記炭素材料との複合体を用いてもよい。正極活物質−炭素材料複合体は、例えば、次のような手順で作製される。
最初に、前記炭素材料を溶媒に分散させた炭素材料の分散液(以下、炭素材料の分散液1)を作製する。次に、前記分散液1とは別に、正極活物質を溶媒に分散させた正極活物質の分散液(以下、正極活物質の分散液2)を作製する。
次に、炭素材料の分散液1と、正極活物質の分散液2とを混合する。最後に、前記炭素材料及び前記正極活物質が含まれる分散液の溶媒を除去することによって、蓄電デバイス用電極に用いられる正極活物質と炭素材料との複合体(活物質−炭素材料複合体)が作製される。
また、上述の作製方法以外にも、混合の順序を変えてもよいし、前記分散液1,2のいずれかが分散液ではなく乾式であってもよいし、全て乾式の状態で混合する方法でもよい。また、炭素材料と正極活物質と溶媒との混合物を、ミキサーで混合する方法、すなわち、後述の正極のスラリーの作製と、複合体の作製とを兼ねていてもよい。
正極活物質や炭素材料を分散させる溶媒は、水系、非水系、水系と非水系との混合溶媒、又は異なる非水系溶媒の混合溶媒のいずれでもよい。また、炭素材料を分散させる溶媒と、正極活物質を分散させる溶媒は同じでもよいし、異なっていてもよい。異なっている場合は、互いの溶媒に相溶性があることが好ましい。
非水系溶媒としては、特に限定されないが、例えば分散のしやすさから、メタノール、エタノール、プロパノールに代表されるアルコール系、テトラヒドロフラン又はN−メチル−2−ピロリドンなどの非水系溶媒を用いることができる。また、分散性をより一層向上させるため、前記溶媒に、界面活性剤などの分散剤が含まれてもよい。
分散方法は、特に限定されないが、超音波による分散、ミキサーによる分散、ジェットミルによる分散、又は攪拌子による分散が挙げられる。
炭素材料の分散液の固形分濃度は、特に限定されないが、炭素材料の重量を1とした場合に、溶媒の重量が0.5以上、1000以下であることが好ましい。取り扱い性をより一層高める観点から、炭素材料の重量を1とした場合に、溶媒の重量が1以上、750以下であることがより好ましい。また、分散性をより一層高める観点から、炭素材料の重量を1とした場合に、溶媒の重量が2以上、500以下であることがさらに好ましい。
溶媒の重量が前記下限未満の場合は、炭素材料を所望の分散状態まで分散させることができない場合がある。一方、溶媒の重量が前記上限より大きい場合は、製造費用が増大する場合がある。
正極活物質の分散液の固形分濃度は、特に限定されないが、正極活物質の重量を1とした場合に、溶媒の重量が0.5以上、100以下であることが好ましい。取り扱い性をより一層高める観点から、溶媒の重量は、1以上、75以下であることがより好ましい。また、分散性をより一層高める観点から、溶媒の重量は、5以上、50以下であることがさらに好ましい。なお、溶媒の重量が前記下限未満の場合は、正極活物質を所望の分散状態まで分散させることができない場合がある。一方、溶媒の重量が前記上限より大きい場合は、製造費用が増大する場合がある。
正極活物質の分散液と、炭素材料の分散液とを混合する方法は、特に限定されないが、互いの分散液を一度に混合する方法や、一方の分散液を他方の分散液に複数回に分けて加える方法が挙げられる。
一方の分散液を他方の分散液に複数回に分けて加える方法としては、例えば、スポイドなどの滴下の器具を用いて滴下する方法や、ポンプを用いる方法、又はディスペンサーを用いる方法が挙げられる。
炭素材料、正極活物質及び溶媒の混合物から、溶媒を除去する方法としては、特に限定されないが、ろ過により溶媒を除去した後に、オーブン等で乾燥させる方法が挙げられる。前記ろ過は、生産性をより一層高める観点から、吸引ろ過であることが好ましい。また、乾燥方法としては、送風オーブンで乾燥させた後に、真空で乾燥させた場合、細孔に残存している溶媒を除去できることから好ましい。
活物質−炭素材料複合体における、正極活物質と炭素材料との重量の比率は、正極活物質の重量を100とした場合に、炭素材料の重量が、0.2以上、10.0以下であることが好ましい。レート特性をより一層向上させる観点からは、炭素材料の重量が、0.3以上、8.0以下であることがより好ましい。また、サイクル特性をより一層向上させる観点からは、炭素材料の重量が、0.5以上、7.0以下であることがさらに好ましい。
[蓄電デバイス]
本発明の蓄電デバイスは、前記本発明の蓄電デバイス用電極を備える。そのため、電極抵抗が低く、かつ電解液の保液性に優れるため、電池性能の向上が期待できる。
上述したように、本発明の蓄電デバイスとしては、特に限定されないが、非水電解質一次電池、水系電解質一次電池、非水電解質二次電池、水系電解質二次電池、コンデンサ、電気二重層キャパシタ、又はリチウムイオンキャパシタなどが例示される。
本発明の蓄電デバイスの一例としての二次電池は、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンの挿入及び脱離反応が進行する化合物を用いられたものであればよい。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンが例示される。アルカリ土類金属イオンとしては、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンが例示される。特に、本発明は非水電解質二次電池の正極に効果が大きく、そのなかでもリチウムイオンを用いたものに好適である。以下、リチウムイオンを用いた非水電解質二次電池(以下、リチウムイオン二次電池)を例に説明する。
前記非水電解質二次電池の正極及び負極は、集電体の両面に同じ電極を形成させた形態であってもよく、集電体の片面に正極、他方の面に負極を形成させた形態、すなわち、バイポーラ電極であってもよい。
前記非水電解質二次電池は、正極側と負極側との間にセパレータを配置したものを倦回したものであってもよいし、積層したものであってもよい。正極、負極及びセパレータには、リチウムイオン伝導を担う非水電解質が含まれている。
前記非水電解質二次電池は、前記積層体を倦回、又は複数積層した後にラミネートフィルムで外装してもよいし、角形、楕円形、円筒形、コイン形、ボタン形、又はシート形の金属缶で外装してもよい。外装には発生したガスを放出するための機構が備わっていてもよい。積層体の積層数は、特に限定されず、所望の電圧値、電池容量を発現するまで積層させることができる。
前記非水電解質二次電池は、所望の大きさ、容量、電圧によって、適宜直列、並列に接続した組電池とすることができる。前記組電池においては、各電池の充電状態の確認、安全性向上のため、組電池に制御回路が付属されていることが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(実施例1)
最初に、膨張化黒鉛(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8F」、BET比表面積=22m2/g)をジェットミル粉砕により乾式粉砕し、平均粒子径が10μmの黒鉛粉末を作製した。なお、平均粒子径は、レーザー回折法により、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製、商品名「LA−950」)を用いて、体積基準分布で算出した。
次に、乾式粉砕した膨張化黒鉛16gと、カルボキシメチルセルロース0.48gと、水530gとの混合物に、超音波処理装置で5時間超音波を照射した後に、ポリエチレングリコール80gを加え、ホモミクサーで30分間混合することによって、原料組成物を作製した。
なお、カルボキシメチルセルロースは、アルドリッチ社製のもの(平均分子量=250,000)を用いた。ポリエチレングリコールは、三洋化成工業社製、商品名「PG600」を用いた。超音波処理装置は、SMT.CO.,LTD社製、型番「UH−600SR」を用いた。また、ホモミクサーは、TOKUSHU KIKA社製、型番「T.K.HOMOMIXER MARKII」を用いた。
次に、作製した原料組成物を150℃で加熱処理することによって、水を除去した。その後、水を除去した組成物を、380℃の温度で、1時間加熱処理することよって、ポリエチレングリコールの一部が残存している炭素材料を作製した。
最後に、作製した炭素材料を420℃で1時間の順に加熱処理することによって、グラファイト構造を有し、部分的にグラファイトが剥離されている、炭素材料を得た。得られた炭素材料においては、全重量に対して8重量%樹脂が含まれていた。なお、樹脂量は、TG(日立ハイテクサイエンス社製、品番「STA7300」)を用いて、200℃〜600℃の範囲で重量減少した分を樹脂量として算出した。
(実施例2)
最後の加熱条件を420℃で0.5時間の順に加熱処理する変更したこと以外は、実施例1と同様にして炭素材料を得た。実施例2で得られた炭素材料においては、全重量に対して15重量%樹脂が含まれていた。
(比較例1)
薄片化黒鉛(日本黒鉛工業社製、商品名「UP−5−α」、BET比表面積=9m2/g)を超音波ホモジナイザーによる湿式粉砕したものを用いて比較例1の炭素材料を得た。
(比較例2)
膨張化黒鉛(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8F」、BET比表面積=22m2/g)のジェットミル粉砕を、超音波ホモジナイザーによる湿式粉砕に変更したこと、および加熱条件を460℃で0.5時間のみにしたこと以外は、実施例2と同様にして炭素材料を得た。比較例2で得られた炭素材料においては、全重量に対して35重量%樹脂が含まれていた。
(評価)
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた炭素材料を用いて以下の評価を行った。結果を下記の表1に示す。
BET比表面積;
BET比表面積は、比表面積測定装置(島津製作所社製、品番「ASAP−2000」、窒素ガス)を用いて測定した。
細孔容積の評価;
炭素材料の細孔分布は、Microtrac BEL社製、品番「BELSORP−MAX」を用いて、HK法に準拠してアルゴン吸着等温線から測定した。測定した細孔分布から、直径0.3nm以上、1.0nm以下の細孔容積を求めた。
DBP吸油量の評価;
DBP吸油量は、JIS K 6217−4に準拠して、吸収量測定器(あさひ総研社製、品番「S500」)を用いて測定した。
X線回折評価;
得られた炭素材料とシリコン粉末(Nano Powder、純度≧98%、粒径≦100nm、アルドリッチ社製)とを重量比1:1の割合でサンプル瓶中にて混合することにより、測定試料としての混合粉末を作製した。作製した混合粉末を無反射Si試料台にいれ、X線回折装置(Smart Lab、リガク社製)に設置した。その後に、X線源:CuKα(波長1.541Å)、測定範囲:3°〜80°、スキャンスピード:5°/分の条件で、広角X線回折法によりX線回折スペクトルを測定した。得られた測定結果から、2θ=28°以上、30°未満の範囲における最も高いピークの高さdを1として規格化し、そのときの2θ=24°以上、28℃未満の範囲における最も高いピークの高さcを算出した。最後にcとdとの比、すなわち、c/dを算出した。
粉体抵抗;
炭素材料100mg以上を秤量し、低抵抗粉体測定装置(三菱化学アナリテック社製、ロレスタGX)を用いて4端針法で測定を行った。粉体に圧力を4kNずつかけて、20kNの時における抵抗値を用いた。
塗工性、電解液保液性、及び電池特性の評価;
塗工性、電解液保液性、及び電池特性は、以下のようにして非水電解質二次電池を作製して評価した。
(正極)
まず、実施例1〜2及び比較例1〜2の各炭素材料0.10gに、エタノール5gを加え、5時間超音波洗浄機(AS ONE社製)で処理し、炭素材料の分散液を調製した。
次に、正極活物質としてのLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2を、非特許文献(Journal of PowerSources,Vol.146,pp.636−639(2005))に記載されている方法で作製した。
すなわち、まず、水酸化リチウムと、コバルト、ニッケル及びマンガンのmol比が1:1:1の3元水酸化物とを混合し混合物を得た。次に、この混合物を空気雰囲気下において、1000℃で加熱することによって正極活物質を作製した。
次に、エタノール9gに得られた正極活物質(LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2)3gを加え、マグネチックスターラーにて600rpmで10分攪拌することによって、正極活物質の分散液を調製した。
さらに、前記炭素材料の分散液に、前記正極活物質の分散液をスポイトで滴下した。なお、滴下時は、炭素材料の分散液は、超音波洗浄機(AS ONE社製)で処理し続けた。その後、分散液の混合液をマグネチックスターラーで3時間攪拌した。
最後に、分散液の混合液を吸引ろ過した後に、110℃で1時間真空乾燥することによって、正極活物質と炭素材料との複合体(活物質−炭素材料複合体)を作製した。正極の作製に必要な量は、前記の工程を繰り返すことによって作製した。
次に、前記複合体96重量部に、バインダー(PVdF、固形分濃度12重量%、NMP溶液)を固形分が4重量部となるように混合し、スラリーを作製した。次に、このスラリーをアルミニウム箔(20μm)に塗工した後に、送風オーブンにて120℃で1時間加熱し、溶媒を除去した後、120℃で12時間真空乾燥した。次に、同様にしてアルミニウム箔の裏面にもスラリーを塗工及び乾燥させた。なお、この際、塗工性について以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
○…割れ、剥れ無し
×…割れ、及び/又は剥れ有
最後に、ロールプレス機にて、前記正極をプレスした。
正極の容量は、単位面積当たりの電極重量、及び正極活物質の理論容量(150mAh/g)から算出した。その結果、正極の容量(片面あたり)は、5mAh/cm2であった。
作製した正極について、以下のようにして、電解液保液性の評価を行った。
具体的には、音叉型物性試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、品番「TFP−10」)を用いて電解液の保液量を測定した。測定手順としては、作製した正極を、体積が18.5mm3となるように円形にカットし、アルミニウム箔側にポリイミドフィルム基材の両面粘着テープを貼付け、音叉型物性試験機の2枚の感応板に正極を1枚ずつ取付けた。2枚の感応板の固有振動数は30Hzとし、電解液としては、比重1.071のジメチルカーボネート(DMC)を使用した。感応板の振動を開始し、電解液に浸漬したときの応力をA1、浸漬後8時間後の応力をA2とし、比A2/A1を相対的な電解液保液量と定義し、各正極の評価を以下の評価基準で行った。
[評価基準]
○…比A2/A1が、1.15以上、1.50以下
×…比A2/A1が、1.15未満、又は1.50より大きい
(負極)
負極は、次の通りに作製した。
最初に負極活物質(人造黒鉛)100重量部にバインダー(PVdF、固形分濃度12重量%、NMP溶液)を固形分が5重量部となるように混合し、スラリーを作製した。次に前記スラリーを銅箔(20μm)に塗工した後に、送風オーブンにて120℃で1時間加熱し、溶媒を除去した後、120℃で12時間真空乾燥した。次に、同様にして銅箔の裏面にもスラリーを塗工及び乾燥させた。
最後に、ロールプレス機にて、プレスし、負極を作製した。負極の容量は、単位面積当たりの電極重量、及び負極活物質の理論容量(350mAh/g)から算出した。その結果、負極の容量(片面あたり)は、6.0mAh/cm2であった。
(非水電解質二次電池の製造)
最初に、作製した正極(電極部分:40mm×50mm)、負極(電極部分:45mm×55mm)及びセパレータ(ポリオレフィン系の微多孔膜、25μm、50mm×60mm)を、負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極の順に、正極の容量が200mAh(正極1枚、負極2枚)となるように積層した。次に、両端の正極及び負極にそれぞれアルミニウムタブ及びニッケルめっき銅タブを振動溶着させた後に、袋状のアルミラミネートシートに入れ、3方を熱溶着させ、電解液封入前の非水電解質二次電池を作製した。さらに、前記電解液封入前の非水電解質二次電池を60℃で3時間真空乾燥した後に、非水電解質(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート=1/2体積%、LiPF6 1mol/L)を20g入れ、減圧しながら封止することによって非水電解質二次電池を作製した。なお、ここまでの工程は、露点が−40℃以下の雰囲気(ドライボックス)で実施した。最後に、非水電解質二次電池を、4.25Vまで充電させた後に、25℃で100時間放置し、露点が−40℃以下の雰囲気(ドライボックス)にて発生したガス、及び過剰な電解液を除去した後に、再度減圧しながら封止することによって非水電解質二次電池を作製した。
(サイクル特性)
サイクル特性の評価は次の方法で行った。最初に、作製した非水電解質二次電池を25℃の恒温槽に入れ、充放電装置(HJ1005SD8、北斗電工社製)に接続した。次に定電流定電圧充電(電流値:100mA、充電終止電圧:4.25V、定電圧放電電圧:4.25V、定電圧放電終止条件:3時間経過、又は電流値4mA)、定電流放電(電流値:100mA、放電終止電圧:2.5V)を100回繰り返すサイクル運転を行った。最後に、1回目の放電容量を100としたときの、100回目の放電容量の割合を算出することによって放電容量の維持率(サイクル特性)とした。なお、サイクル特性は、以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
○…前記割合(サイクル特性)が90%以上
×…前記割合(サイクル特性)が90%未満
表1より、実施例1〜2の炭素材料を用いた場合、塗工性及び100回目の放電容量が高められていることが確認できた。なお、比較例2の炭素材料は、塗工性が悪く、電極、および電池の評価をすることができなかった。