しかしながら、特許文献1に示されたキャスタでは、被取付体を回してキャスタの操作レバーを作業者の前に導いて操作したり、作業者が被取付体の回りを移動してキャスタの操作レバーの前に行って操作したりしなければならず、ベッドなど大型の被取付体では、女性や老人など力のない作業者では操作しにくいという問題がある。また、キャスタ毎に操作レバーを操作して制動装置を動作させなければならず、手間がかかるという問題がある。
本発明は上記課題を解消するためなされたもので、被取付体回りのどこからでもキャスタを制動することができるキャスタの制動機構を提供することを目的とする。
本発明のキャスタの制動機構は、被取付体の進行方向前後にそれぞれ設けられる操作部と、被取付体の進行方向前後にそれぞれ設けられ、操作部に対する押圧操作に応じて軸回転する軸とを備える。
また、被取付体の進行方向前後にそれぞれ設けられ、連結する軸の一方向への軸回転に応じてキャスタの車輪をロック可能な制動装置と、押圧操作によって生じる一方の軸の軸回転力を、他方の軸へ伝達する制動操作伝達機構とを備える。
そして、制動操作伝達機構は、制動操作伝達機構が、一方の軸の回転方向とは逆方向の軸回転力を、他方の軸へ伝達する。
キャスタの制動機構は、被取付体に装着可能である。
制動操作伝達機構は、被取付体の進行方向前後にそれぞれ設けられた軸の間で、一方の軸の軸回転力の回転方向を逆方向に切り替える構成にすることができる。
例えば制動操作伝達機構が、歯車から構成される逆動装置を備える。
操作伝達機構は、例えば、軸と連結する揺動レバーと、揺動レバーと逆動装置を連結するコネクティングロッドとを備える。
本発明の他の態様のキャスタの制動機構は、被取付体の進行方向前後側にそれぞれ対で配置されて旋回軸が旋回自在に取り付けられ、本体に車輪が回動自在に軸支されたキャスタの制動機構であって、前後側の各対のキャスタのうち少なくとも一方のキャスタに設けられ係合部材を変位させて車輪の係止部に係脱自在に係合させて車輪をロックする制動装置と、被取付体に操作部を有する軸を回動自在に軸支し、前後側で軸と係合部材との前後方向の位置を逆に配置し、一端が軸に取り付けられた作動部材を係合部材に当接可能に配置し、操作部を操作して係合部材を変位させる制動操作機構とを備え、前側キャスタと後側キャスタとの制動装置間に、一方向の力を受けるとこの力を逆方向に出力しいずれか一方の軸の回動を他方の軸に反転させて伝達する制動操作伝達手段を設けたことを特徴とするものである。
被取付体の進行方向前後側にそれぞれ対で配置されて旋回軸が旋回自在に取り付けられ、本体に車輪が回動自在に軸支されたキャスタと、前後側の各対のキャスタのうち少なくとも一方のキャスタに設けられ係合部材を変位させて車輪の係止部に係脱自在に係合させて車輪をロックする制動装置と、被取付体に操作部を有する軸を回動自在に軸支し、前後側で軸と係合部材との前後方向の位置を逆に配置し、一端が軸に取り付けられた作動部材を係合部材に当接可能に配置し、操作部を操作して係合部材を変位させる制動操作機構とを備え、前側キャスタと後側キャスタとの制動装置間に、一方向の力を受けるとこの力を逆方向に出力しいずれか一方の軸の回動を他方の軸に反転させて伝達する制動操作伝達手段を設けたことにより、操作部を操作するだけで、複数のキャスタを同時にロックさせることができ、操作が簡便化される。
制動操作伝達手段を、前後の軸間に、外部から一方向の力を受けるとこの力を逆方向に出力する逆動装置を設け、この逆動装置と軸とを出力伝達可能に連結して構成し、いずれか一方の軸の回動を、逆動装置を介して他方の軸に伝達する制動操作伝達機構により構成してもよい。
逆動装置を、被取付体に設けられた支持枠に2つの回動軸を回動自在に軸支し、これら回動軸に互いに噛合する歯車を嵌装して回動軸を支持枠から突出させて構成し、制動操作伝達機構を、前後それぞれの軸とこれら軸に臨む回動軸の突出端とにそれぞれ、揺動レバーの一端を連結し、これら揺動レバーの他端にはコネクティングロッドを回動自在に枢支して接続して構成してもよい。
逆動装置の一方の回動軸を前後いずれか一方の軸と軸芯同一に構成し、他方の軸とこの軸に臨む回動軸の突出端とを揺動レバーとこの揺動レバーに回動自在に接続されたコネクティングロッドとにより連結してもよい。
制動操作伝達手段を、前後の各軸に柄部をそれぞれ上下の向きを異ならせて設け、連杆を前後の軸間でなす面を横切らせて前後側の各柄部に回動自在に枢支して連結したクランク機構により構成してもよい。
柄部を、操作部の軸側端部に形成してもよい。
操作部を、コ字状に折曲して形成し、柄部を、操作部の各軸側端部を上下の向きを逆にして延長して形成し、操作部を前後の軸にそれぞれ向かい合わせ向かい合う柄部の向きを異ならせて取り付け、前後で向きの異なる柄部同士を連杆により連結してもよい。
係合部材を、係合部材の変位に応じて旋回軸の係止部に係脱自在に配置して構成し、車輪のロック時、旋回軸の旋回も同時にロックしてもよい。
軸を軸回りの一方向に弾発付勢して構成し、操作部が外力により弾発付勢力に打ち勝って押圧操作されると、軸を回動させて所定の回動角度でロックし、操作部が再び外力により押圧操作されると、軸のロックを解除し元の位置に復帰させてもよい。
被取付体側に取り付けられ軸が貫通する支持部材と、この支持部材に臨み一端が軸に連結されて軸と一体に回動する揺動部材と、この揺動部材の揺動端側に係止部材を軸と平行に進退動可能に挿着して支持部材側に突出させる進退動手段と、支持部材に揺動自在に設けられ、操作部に外力が加えられると、係止部材に従動して揺動し所定の揺動角度で係止部材を係止して復帰を阻止し、操作部に再び外力が加えられると、係止部材との係合を解除して係止部材を揺動部材側に変位させ元の位置に復帰させる係脱手段とを備えた作動切換機構を設けてもよい。
なお、以下のような構成も得ることができる。
本発明の他の態様であるキャスタの制動機構では、被取付体の進行方向前後側に取付部材を介してそれぞれ対で配置され、本体に車輪が回動自在に軸支されたキャスタと、前後側の各対のキャスタのうち少なくとも一方のキャスタに設けられ係合部材を進退動させて車輪の係止部に係脱自在に係合させて車輪をロックする制動装置と、取付部材に作動軸を回動自在に軸支して一端を取付部材から突出させ、一端が作動軸に連結された作動部材を係合部材に当接可能に配置し、被取付体に主操作部を有する軸を回動自在に軸支し、この軸と作動軸とを運動伝達可能に連結して軸の回動を作動軸に伝達する制動操作伝達機構を備えるとともに、軸両端のうち少なくともいずれか一方を、被取付体の外側に延出させ、延出端に副操作部を設けたことにより、被取付体の回りに主操作部と副操作部とが設けられているので、たとえ被取付体の向きが絶えず変わっても、作業者は操作部に近づきやすくなり、作業効率が向上する。
制動装置をキャスタ毎に設け、制動操作伝達機構を、作動軸の両端を取付部材から突出させ、前後の取付部材の作動軸の突出他端同士を運動伝達可能に連結して軸の回動を作動軸に伝達するよう構成してもよい。
軸と作動軸突出一端および前後の作動軸突出他端同士はそれぞれ、揺動レバーとこの揺動レバーに回動自在に接続されたコネクティングロッドとにより連結してもよい。
被取付体を左右の台枠とこれら台枠を接続する横枠とにより構成し、左右の台枠の前後両端にキャスタを設け、横枠に軸を軸支して構成してもよい。
軸を軸回りの一方向に弾発付勢して構成し、主操作部と副操作部とのうちいずれか1の操作部が外力により弾発付勢力に打ち勝って押圧操作されると、軸を回動させて所定の回動角度でロックし、主操作部と副操作部とのうちいずれか1の操作部が再び外力により押圧操作されると、軸のロックを解除し元の位置に復帰させてもよい。
横枠に取り付けられ軸が貫通する支持部材と、この支持部材に臨み一端が軸に連結されて軸と一体に回動する揺動部材と、この揺動部材の揺動端側に係止部材を軸と平行に進退動可能に挿着して支持部材側に突出させる進退動手段と、支持部材に揺動自在に設けられ、主操作部と副操作部とのうちいずれか1の操作部に外力が加えられると、係止部材に従動して揺動し所定の揺動角度で係止部材を係止して復帰を阻止し、主操作部と副操作部とのうちいずれか1の操作部に再び外力が加えられると、係止部材との係合を解除して係止部材を揺動部材側に変位させ元の位置に復帰させる係脱手段とを備えた作動切換機構を設けてもよい。
本発明では、例えば、寝具、台車などが被取付体として構成可能である。
また本発明では、押圧部材を繰り返すだけで制動、制動解除を行う制動装置を提供することが可能である。
さらに本発明では、主操作部と副操作部を設ける構成にすることもできる。
本発明によれば、被取付体回りのどこからでもキャスタを制動することができる。
制動操作と制動解除操作の操作性を向上させるという目的を、キャスタの制動装置から制動のオン・オフ切り換えを行う切換部材の一部を外部に突出させ、この切換部材を進退動させて制動装置の作動のオン・オフを切り換える作動装置の作動切換機構であって、固定側に操作部を有する軸を回動自在に軸支して弾発付勢し、一端が軸に取り付けられた作動部材を切換部材に当接可能に配置して構成するとともに、操作部が外力により弾発付勢力に打ち勝って押圧操作されると、軸を回動させて所定の回動角度でロックし、操作部が再び外力により押圧操作されると、軸のロックを解除し元の位置に復帰させるようにしたことにより実現した。
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。本発明の一実施例に係る作動装置の作動切換機構2は、図1および図2に示すように、機械的な作動を行う作動装置を、キャスタ5の制動装置20に、作動切換機構を前記制動装置の制動切換機構60にそれぞれ適用している。本実施例では、作動装置をキャスタ5の制動装置として、作動切換機構を制動切換機構60に置き換えて説明する。なお、作動装置は制動装置に限られるものではなく、機械的な作動を行う作動装置であればよく、作動装置から作動の切り換えを行う切換部材の一部を外部に突出させ、この切換部材を進退動させて作動装置の作動をオン・オフさせて切り換える作動切換機構であればよいことはいうまでもない。
まず、本発明の一実施例に係る制動装置の制動切換機構60について、キャスタ5とその制動装置20について説明する。キャスタ5は台車や床頭台などの家具(被取付体)3の底部4に設けられる(図3、図4参照)。家具3の底部4の四隅には、取付部材6(6FR、6FL、6RR、6RL、図1参照)を介してキャスタ5(5A〜5D)が内側に後退して取り付けられる。取付部材6には、キャスタ5が旋回自在に取り付けられるようになっている。取付部材6は、底部4の進行方向前後側にそれぞれ対で2個ずつ取り付けられる。前後に対で配置された取付部材6FR、6FLおよび6RR、6RLはそれぞれ、前後で互いに向き合って配置されるようになっている(前側の左方取付部材6FLと後側の左方取付部材6RL、前側の右方取付部材6FRと後側の右方取付部材6RR参照)。
キャスタ5は、双輪タイプのキャスタであって、図3の(A)、(B)に示すように、キャスタ本体10の左右両側に一対の車輪11が車軸12を介して回転可能に支持されて構成される。キャスタ本体10には、車軸12から進行方向前方側に偏心した位置に上下を貫通する貫通穴14が形成され、この貫通穴14内に旋回軸13が旋回自在に嵌合される。旋回軸13の上部には、ねじ部13Aが形成され、その下側にはこの旋回軸13を回転操作するフランジ部15が設けられる。旋回軸13の下端はキャスタ本体10の貫通穴14の下部開口から突出し、旋回軸13の小径部13Bにピン18が圧入され、キャスタ本体10からの抜け止めがなされている。左右の車輪11、11は内側の面が環状に凹陥して形成され、この環状凹陥部の外側周面に沿って凹凸部(係止部)17が形成される。
この旋回軸13は、取付部材6に取り付けられる。取付部材6は、図2および図3の(A)ないし(C)に示すように、底部6Aとこの底部6Aの左右から立ち上がる左右両壁6B、6Cとを有する断面コ字状本体と、各壁6B、6C上端を外側に折曲して形成され家具3の底部4への取付穴6Dが穿設された折曲部6Eとを備えて構成される。取付部材6は、ねじにより折曲部6Eが家具3の底部4に取り付けられるようになっている。取付部材6の底部6Aには、旋回軸13のねじ部13Aに遊挿される円孔6Hが、左右両壁6B、6Cには、互いに向き合って貫通される貫通孔6G、6Gが円孔6Hより進行方向後方側にそれぞれ形成される。取付部材6には、旋回軸13のねじ部13Aが円孔6Hに螺入されキャスタ5が取り付けられるようになっている。このため、取付部材6が家具3の底部4に取り付けられると、キャスタ5は取付部材6に対して旋回するようなっている。こうして、キャスタ5は、家具3の底部4の四隅に取付部材6FR、6FL、6RR、6RLを介して取り付けられる。
キャスタ5には、車輪11の回転をロックする制動装置(作動装置)20が設けられる。制動装置20は、旋回軸13に同一軸芯上に上下に貫通される断面円形の縦孔が形成され、この縦孔には、制動ロッド(切換部材)22が上下動自在に挿通されるようになっている。制動ロッド22の外面は、縦孔の形状にほぼ合致して形成され、上下動可能な構造となっている。この制動ロッド22の上部は、縦孔の上端開口から突出して露出し、上端面21近傍には、円板状の第1の保持部材23が取り付けられ、この第1の保持部材23と旋回軸13の上端面との間にばね(制動ロッド付勢ばね)24が介装され、制動ロッド22を常時上方に付勢している。
制動ロッド22の下部は、旋回軸13の縦孔下端開口から突出し、突出端には、車輪ロック部材30が設けられる。車輪ロック部材30は、制動ロッド22の下端に抜け止めされて上下動自在に挿通され上面に凹陥部25Aが形成された円筒状本体25と、この円筒状本体25に連続して下方に延長され上面に凹陥部26Aが形成され下面に凹凸部27が設けられた係脱部26とを備えて構成される。凹陥部26Aは、キャスタ本体10の軸孔下方に形成された円筒状突出部10Aに摺動自在に嵌入するようになっている。
制動ロッド22の下部には、車輪ロック部材30の上方に第2の保持部材28が取り付けられ、この第2の保持部材28と円筒状本体25の上面凹陥部25Aとの間にばね(車輪ロック部材付勢ばね)29が介装され、制動ロッド22がばね24の弾発付勢力に抗して下方に押し下げられると、車輪ロック部材30を車輪11、11の凹凸部17側に付勢するようになっている。このように、制動装置20は、制動ロッド22と車輪ロック部材30とを備えて構成され、制動ロッド22が、外力によりばね24の弾発付勢力に抗して下方に押し下げられると、ばね29を押圧して車輪ロック部材30を下方に押し下げ、凹凸部27を車輪11、11の凹凸部17に係合させて車輪11、11をロックするようになっている。そして、制動ロッド22に対する外力が失われると、ばね24により制動ロッド22は上方に弾発復帰し、車輪ロック部材30の凹凸部27が車輪11、11の凹凸部17から離脱して車輪11、11の回動ロックが解除され、車輪11、11の回動を許容するようになっている。
家具3の底部4の四隅のうち、進行方向前方側に取り付けられた左右の両取付部材6FL、6FRには、これら両取付部材6FL、6FR間を接続し、摺動材43を介して貫通孔6Gに回動自在に支持される断面多角形状の前方側軸40(本実施例では、六角形状の角軸)が設けられ、進行方向後方側の左右の両取付部材6RL、6RRには、前方側と同様に、これら両取付部材6RL、6RR間を接続し、摺動材43を介して貫通孔6Gに回動自在に支持される断面多角形状の後方側軸41がそれぞれ設けられる。これら両軸40、41は平行に配置される。各取付部材6FL、6FR、6RL、6RRの貫通孔6Gは円孔6Hより進行方向後方側に形成される。すなわち、キャスタ本体10の旋回軸13から上方に突出する制動ロッド22は、各軸40、41に対して進行方向前方側に配置されるようになっている。軸40、41は、所定の強度を確保できるものであれば、断面円形の丸棒状であってもよい。
操作具(操作部)50は、一端が前方側軸40に連結され、左右両側が上に折曲された断面コ字状の操作端51を有し、手や足で操作しやすいようになっている。操作端51は、底部4から外側に突出して露出するようになっている。
両軸40、41間には、これら両軸40、41を運動伝達可能に連結する伝達リンク(制動操作伝達手段)54が設けられる。伝達リンク54は、軸40,41に一端が一体動可能にそれぞれ連結された揺動アーム55、56と、両端がこれら揺動アーム55、56にピンで回動自在に連結されたコネクティングロッド57とを備えて構成される。伝達リンク54は、操作具50の操作により付与された前方側軸40の回動力を後方側軸41に同一方向で伝達するようになっている(図4参照)。
各軸40、41にはそれぞれ、軸40、41の回動に応じて制動ロッド22を下方に動作させる作動部材(制動操作伝達手段)42(42A〜42D)が設けられる。作動部材42は、図3の(A)ないし(C)に示すように、一端筒部44が各軸40、41に挿通され、取付部材6の内側に配置されるようになっている。作動部材42は、他端の揺動端部45が制動ロッド22の上端面21に当接し、軸40、41と一体に揺動して制動ロッド22を押し下げるようになっている。このため、操作具50の操作端51が外力により押し下げられると、前方側軸40が一体動する作動部材42の揺動端部45を上端面21に当接させて押し下げる方向(図3(A)、(B)の軸40の反時計回り方向参照)に回り、この回動力は伝達リンク54を介して後方側軸41に伝達される。回動力が伝達された後方側軸41も一体動する作動部材42の揺動端部45を上端面21に当接させて押し下げる方向に回るようになっている。
こうして、操作具50の操作端51が押し下げ操作されると、各軸40、41が同時に回動し、これら各軸40、41と一体動する作動部材42の揺動端部45を制動ロッド22の上端面21に当てて、さらに、ばね24の弾発力に抗して下方へ押し下げられると、制動ロッド22は下方に押し下げられ、車輪ロック部材30の凹凸部27が車輪11、11の凹凸部17に係合し、キャスタ5の車輪11、11がロックされるようになっている。操作具50の操作端51から押し下げ力が失われると、制動ロッド22はばね24の弾発力により上方へ変位して作動部材42を押し上げ、各軸40、41を逆の方向に回し(図3(A)、(B)の軸40の時計回り方向参照)、操作端51を元の位置に復帰させるようになっている。そして、制動ロッド22が上方端位置に復帰することにより、キャスタ5の車輪11、11の回転ロックが解除されるようになっている。このように、本実施例では、軸40、41の軸芯に対し、制動ロッド22を前方側に配するとともに、操作具50を軸芯から前方側に配置している。このため、軸芯を支点、操作端51を力点、制動ロッド22を作用点とする梃子が形成され、制動ロッド22は支点(軸芯)と力点(操作端51)との間に配置されるので、操作端51のロック操作時(押し下げ操作時)、操作方向と同じ方向に作動部材42の揺動端部45から押圧力を受けるようになっている。
ところで、本実施例に係る作動装置の作動切換機構2は、上述のように、家具3の底部(固定側)4に操作具(操作部)50を有する前方側軸(軸、制動操作伝達手段)40を回動自在に軸支して、一端が前方側軸40に取り付けられた作動部材42の揺動端部45を制動ロッド(切換部材)22の上端面21に当接可能に配置して構成するのに加え、前方側軸40を軸回りの一方向、つまり、外力に抗する方向(図3の(A)の軸40の反時計回り方向)に弾発付勢し、操作具50が外力により弾発付勢力に打ち勝って押圧操作されると、前方側軸40を回動させて所定の回動角度で前方側軸40をロックし、操作具50が再び外力により押圧操作されると、前方側軸40のロックを解除し前方側軸40を元の位置に復帰させる制動切換機構60により構成される。
すなわち、制動切換機構60は、底部4に取り付けられ前方側軸40が貫通する支持部材61と、この支持部材61に臨み一端が前方側軸40に連結されて前方側軸40と一体に回動する揺動部材62と、この揺動部材62の揺動端側に円柱状のピン(係止部材)63を前方側軸40と平行に進退動可能に挿着して支持部材61側に突出させる進退動機構(進退動手段)70と、支持部材61に揺動自在に設けられ、操作端51に外力が加えられると、ピン63に従動して揺動し所定の揺動角度でピン63を係止して復帰を阻止し、操作端51に再び外力が加えられると、ピン63との係合を解除してピン63を揺動部材62側に変位させ元の位置に復帰させる係脱機構(係脱手段)80とを備えて構成される。
支持部材61は、図5および図10(A)に示すように、断面L字状の折曲プレートからなり、家具3の底部4にねじを介して取り付けられる取付部61Aとこの取付部61Aの左右一側縁部から下方に垂直に延びる壁部61Bとを備えて構成される。揺動部材62は、一端筒部62Aが前方側軸40に挿通されてこの軸40に連結される。揺動部材62と支持部材61との間には、ばね46が介装され、前方側軸40を軸回りの一方向に、すなわち、図3の(A)に示す軸40の時計回り方向に弾発付勢している。揺動部材62の揺動端62Bの上面には突出部62Cが形成され、前方側軸40が付勢されると、突出部62Cが支持部材61の取付部61A下面に当接し、前方側軸40はそれ以上軸回り方向に回るのが阻止されるようになっている。
この揺動部材62の、進行方向前方側に延びる揺動端62B側には、前方側軸40と平行に貫通孔64が形成される。この貫通孔64には、貫通孔64の長さより長寸のピン63が脱落を阻止して進退動自在に装着される。ピン63の壁部61B側突出部63Aには、ばね受け65が設けられ、このばね受け65と揺動部材62との間には、ばね(第1のばね、ピン付勢ばね)66が介装され、ピン63を常時壁部61B側に付勢し、壁部側端面63Cを壁部61B側に突出させている。このように、進退動機構70は、揺動部材62の揺動端62B側に前方側軸40と平行に形成された貫通孔64に脱落を阻止して進退動自在に装着したピン63と、このピン63と揺動部材62との間に介装されピン63を支持部材61の壁部61B側に弾発付勢して突出させるばね66とを備えて構成される。
支持部材61の壁部61Bには、揺動部材62の揺動端62Bに向き合って作用プレート71が枢支ピン72により揺動自在に設けられる。作用プレート71と支持部材61との間には、ばね(第2のばね、作用プレート付勢ばね)73が介装され、作用プレート71の上面側一側縁部71Aをピン63の突出部63Aのうち、ばね受け65より壁部61B側の端部(突出端部)63Bに当接させるとともに、壁部61Bに設けられたストッパ74に作用プレート71を当接させて、それ以上の上方への変位を阻止し、上方への揺動位置を規制するようになっている。揺動部材62と支持部材61との間に介装されるばね46は、ばね(作用プレート付勢ばね)73より弾発付勢力を大きく設定している。作用プレート71は、ピン63によりばね73に打ち勝つ力が上面側一側縁部71Aに付与されて押圧されると、揺動してピン63を上面側一側縁部71Aに摺動させて凹陥部75に導くようになっている。作用プレート71は、ピン63により押圧されて図10の(B)に示す枢支ピン72を中心に時計方向に押し下げられると、所定の回動角度でピン63をロックし、ピン63が上方に変位するのを規制し、ロック位置にあるピン63により再び押圧されて、同じ時計方向に押し下げられると、ピン63のロックを解除しピン63を元の位置に復帰させるようになっている。このように、係脱機構80は、揺動部材62に進退動自在に保持されたピン63とこのピン63に従動して揺動する作用プレート71を備えて構成される。
作用プレート71は図7および図8に示すように、概略直角三角形状で厚肉に形成されるとともに、上面側一側縁部71Aの終端縁には、ピン63を受け入れる凹陥部75が形成される(図6および図9参照)。この凹陥部75は、上面側一側縁部71Aの終端を切り込んで形成され、ピン63の突出部63Aのうち、ばね受け65より壁部61B側の端部63Bを受け入れ、受け入れ位置でピン63の端部63Bを係止する欠刻部76(図10の(D)参照)と、受け入れ端77が上面側一側縁部71Aの終端に臨んで外側に突出して形成され、上面側一側縁部71Aに沿って摺動するピン63の端部63Bが上面側一側縁部71Aの終端から離脱すると、この端部63Bを受け入れるく字状に凹陥した引き渡し部78(図10の(C)参照)とを有している。引き渡し部78は上面側一側縁部71Aの終端からピン63の端部63Bが離脱して受け入れ端77に当たると、一旦、この端部63Bを受け入れ端77の内側面に導き入れ、ピン63が復帰方向に戻り離脱し始めると、ピン63の端部63Bを欠刻部76に導くようになっている。引き渡し部78は、受け入れ端77の内側面から連続するく字状凹陥部78Aと、上面側一側縁部71Aの終端から欠刻部76の間に形成され、く字状凹陥部78Aに受け入れたピン63が凹陥部75内で復帰軌跡Tに沿って復帰方向に戻ろうとすると、その方向を変更してピン63を欠刻部76に導く方向変更部78Bとを有して構成される。
また、作用プレート71の揺動部材62に臨む面には、欠刻部76に連続して形成され、欠刻部76に係止されたピン63が外力により前方側軸40の付勢方向と逆方向に変位して欠刻部76を離脱すると、このピン63の端部63Bを案内してピン63を揺動部材62側に押し戻しピン63を作用プレート71の外側に離脱させる離脱案内路81(図10の(E)参照)が形成される。この離脱案内路81は、ピン63の端部63Bが欠刻部76から外力により前方側軸40の付勢方向と逆方向に変位して離脱すると、ピン63の端部63Bの端面63Cを低位床面82に載せ、ピン63の端部63Bを壁面83に沿って傾斜面84から段部85に導く導入案内部82−85と、この段部85に連続しピン63の復帰方向の軌跡T(図10の(E)参照)に合致して形成されピン63を外部に導く案内傾斜部86−87とを有して構成される。案内傾斜部86−87は、段部85に接続され、この段部85と上面側一側縁部71Aのピン63に臨む部分71Aaとの間を緩やかな傾斜面で結ぶ案内傾斜面86とこの案内傾斜面86の枢支ピン72側に沿って形成された壁面87とを有して構成される。
作用プレート71は、叙上の如く構成されているので、図10の(B)に示すように、前方側軸40がばね46により弾発付勢され、操作具50の操作端51に何も外力が加えられない状態では、揺動部材62の上面の突出部62Cが支持部材61の取付部61A下面に当接して揺動部材62は略水平に保持され、ピン63を上面側一側縁部71Aに載せた状態となっている。このとき、制動装置20は、図3の(A)に示すように、制動ロッド22が上方に付勢された非制動状態となっている。
操作端51にばね46の弾発付勢力に打ち勝つ外力が加えられ、前方側軸40が、図10の(B)において反時計回り方向に回動すると、ピン63の端部63Bは、上面側一側縁部71Aに当接して摺動し、作用プレート71を枢支ピン72を中心に時計回り方向に押し下げるようになっている。ピン63がさらに押し下げられ、ピン63の端部63Bが上面側一側縁部71Aの終端から離脱すると、一旦、作用プレート71はばね73により反時計回り方向に復帰して、ピン63の端部63Bを受け入れ端77の内側面からく字状凹陥部78Aに導き入れる(図10の(C)参照)。ピン63がこのく字状凹陥部78Aに導き入れられると、作用プレート71は、圧縮されたばね73によりそれ以上下方への変位が規制され、操作端51に外力が加えられてもそれ以上の変位が規制される。このため、作業者が、操作端51に外力を加えるのを止めると、ピン63は、ばね46により復帰方向に戻ろうとする。このとき、凹陥部75は上側が開いているので、ピン63は復帰方向の軌跡Tに沿って上方へ弧を描いて変位する。そして、ピン63は端部63Bが方向変更部78Bにより欠刻部76に導かれ、上方への変位が規制され、その状態でロックされるようになっている(図10の(D)参照)。このとき、制動装置20は、図3の(B)に示すように、制動ロッド22の上端面21が作動部材42の揺動端部45に押圧された状態で保持され、車輪ロック部材30の凹凸部27が車輪11の凹凸部17に係合して車輪11がロックされるようになっている。そして、操作具50は、ピン63がく字状凹陥部78Aに導き入れられとき、それ以上押し下げることができない押し下げ規制位置に達し、ピン63がく字状凹陥部78Aから欠刻部76に復帰方向に変位した分、操作具50は押し下げ規制位置から上方に戻るようになっている。
ピン63が欠刻部76に係止されたロック状態から、操作端51にばね46の弾発付勢力に打ち勝つ外力が加えられ、再び押し下げ規制位置に達する力が加わると、前方側軸40が、図10の(D)において反時計回り方向に回動すると、ピン63の端部63Bは、端面63Cが低位床面82に載せられ、傾斜面84から段部85に導かれる。このとき、ピン63の端部63Bは壁面83に当たっているので、それ以上下方への変位が規制され、操作端51に外力が加えられてもそれ以上の変位が規制される。このため、作業者が、操作端51に外力を加えるのを止めると、ピン63は、ばね46により復帰方向に戻ろうとする。すると、ピン63は復帰軌跡Tに沿って端面63Cが段部85から案内傾斜面86を、端部63Bが壁面87をそれぞれ摺動して作用プレート71の外に押し出され、元の位置に復帰するようになっている(図10の(B)参照)。このため、作業者は操作端51の押圧操作を繰り返すだけで、ピン63を下方のロック位置にロックして制動装置(作動装置)20を作動させ車輪11をロックさせたり、ピン63のロックを解除して制動装置20の作動を解除させ車輪11のロックを解除させたりすることができるようになっている。
次に、上記実施例に係る作動装置の作動切換機構2の動作について、キャスタ5の制動装置20の制動切換機構60の動作に適用し、制動装置20の制動切換機構60の動作に基づいて説明する。制動装置20の制動切換機構60は、キャスタ5の制動と制動解除の動作を行う制動装置20の制動ロッド22を旋回軸13から上方に突出させ、この制動ロッド22を上下に進退動させて制動装置20の制動をオン・オフさせて切り換えるようになっている。家具3の前方側に設けられた操作具50の操作端51を作業者が足または手で押圧すると、前方側軸40はばね46の弾発付勢力に抗して回動し、揺動部材62と一体動するピン63が作用プレート71の上面側一側縁部71Aを押圧して作用プレート71を下方に揺動させ、ピン63が上面側一側縁部71Aの終端から離脱して引き渡し部78に達すると、ピン63は凹陥部75内で復帰方向に戻り、方向変更部78Aに当たって欠刻部76に導かれ、この欠刻部76に係止され、復帰方向への変位が規制される。このとき、前方側軸40の回動はコネクティングロッド57を通じて後方側軸41にも伝達され、各軸40、41と一体動する作動部材42の揺動端部45は制動ロッド22の上端面21を押し下げて、各キャスタ5A〜5Dの制動装置20を同時に作動させた状態に保持する。このため、すべてのキャスタ5A〜5Dの車輪11、11がロックされる。このように、制動装置20が作動されて車輪11、11がロックされた状態では、操作具50はそれ以上押し下げができない押し下げ規制位置からピン63が復帰方向に戻った分、上方に復帰してその位置が保持される。
操作具50の操作端51に再びばね46の弾発付勢力に打ち勝つ外力が加えられ、押し下げ規制位置まで押し下げられると、前方側軸40が回動し、この回動力がコネクティングロッド57を通じて後方側軸41にも伝達される。ピン63は、軸40、41の回動に伴い揺動部材62と一体動し、作用プレート71の欠刻部76に係止されたロック状態から下方に押し下げられると、端部63Bが離脱案内路81に導かれる。ピン63の端部63Bは、離脱案内路81に導かれると、ピン63の端面63Cが作用プレート71の低位床面82、傾斜面84、段部85の順に導入案内部82−85を通過し、ピン63の端部63Bが壁面83に当たると、操作具50の操作端51は、押し下げ規制位置に達し、それ以上の押し下げが阻止される。このとき、ピン63の端部63Bは復帰方向の軌跡T上にある段部85に端面63Cが押し付けられており、ピン63は前方側軸40とともにばね46の弾発付勢力を受けて、案内傾斜部86−87に沿って案内傾斜面86と壁面87を通過しながら揺動部材62側に押し出され、作用プレート71から離脱し、元の位置に復帰し、軸40、41も操作具50の操作端51も元の上方の位置に復帰する。こうして、作動部材42の揺動端部45も元の位置に復帰し、制動装置20は制動が解除され、車輪11、11のロックが解除される。このように、本実施例に係る制動装置20の制動切換機構60では、作業者は操作具50の操作端51の押圧操作を繰り返すだけで、車輪11、11のロックとロック解除を繰り返すことができ、操作性が向上する。
次に、本発明の第1の実施例に係るキャスタの制動機構102について説明する。本発明の第1の実施例に係るキャスタの制動機構102は、上記実施例に係る制動装置の制動切換機構60が、取付部材6に対し旋回軸13を進行方向前方側に、制動ロッド22を動作させる作動部材42の軸40、41を進行方向後方側に設けているのに対し、進行方向前方側と後方側とで、旋回軸13と作動部材42の軸140、141の位置を異ならせている点、前後の軸140、141間に、一方向の力を受けるとこの力を逆方向に出力しいずれか一方の軸140または141の回動を他方の軸141または140に反転させて伝達する制動操作伝達機構(制動操作伝達手段)157を設けた点、前後の軸140、141にそれぞれ操作部150を設け、前後側のどちらからでも操作できるようにした点が異なっている外は略同一の構成を有している。同一符号は同一又は相当部分を示す。
本実施例に係るキャスタの制動機構102は、図11に示すように、家具3の底部4の四隅には、取付部材106(106FR、106FL、106RR、106RL)を介してキャスタ105(105A〜105D)が内側に後退して取り付けられる。取付部材106は、底部4の前側に2個(取付部材106FR、106FL参照)の対で、後側に2個(取付部材106RR、106RL参照)の対でそれぞれ取り付けられる。前後の異なる対で配置された取付部材106FR、106FLおよび106RR、106RLは、それぞれ前後で互いに向き合って配置されるようになっている。
前側取付部材106FR、106FLには、進行方向Fの前方側にキャスタ105A、105Bの旋回軸13、13がそれぞれ取り付けられ、一方の前側取付部材106FLの後方側に前方側軸140が回動自在に軸支され、前方側軸140に連結された作動部材42が旋回軸13から進退動自在に突出した制動ロッド22を押圧操作するようになっている。また、後側取付部材106RR、106RLには、進行方向Fに対し後退方向Rの側にキャスタ105C、105Dの旋回軸13、13がそれぞれ取り付けられ、一方の後側取付部材106RRの前方側に後方側軸141が回動自在に軸支され、後方側軸141に連結された作動部材42が旋回軸13から進退動自在に突出した制動ロッド22を押圧操作するようになっている。
これら前方側軸140と後方側軸141はそれぞれ、取付部材106FL、106RRから突出して中央側に延長される。各軸140、141の突出側にはそれぞれ、パイプを断面コ字状に折曲されて形成された操作部150、151の一端が連結される。操作部150、151の一方の分岐端152と各軸140、141とがそれぞれ連結される部位と他方の分岐端153の部位とには、操作部150、151の上下方向両揺動端位置をそれぞれ規制し、操作部150、151を各揺動端位置で保持する操作具ロック機構160が設けられる。操作具ロック機構160は、底部4に取り付けられ、内部を各軸140、141が貫通し、操作部150の連結側端部152、152を収容する支持具161を備えている。
ところで、本実施例に係るキャスタの制動機構102は、各軸140、141が支持具161、161を貫通して突出する突出端部140A、141A間に、各軸140、141のうち、一方の軸140または141から操作部150または151による回動力を受けると、この回動力を逆方向に出力し他方の軸141または140に反転させて伝達する制動操作伝達機構(制動操作伝達手段)157を設けて構成される。この制動操作伝達機構157は、各軸140、141の突出端部140A、141A間に逆動装置171を設け、この逆動装置171と各軸140、141とを出力伝達可能に連結して構成される。
逆動装置171は、支持枠172に2つの回動軸173A、173Bを回動自在に軸支し、これら回動軸173A、173Bに互いに噛合する歯車174A、174Bを嵌装してこれら回動軸173A、173Bを支持枠172から突出させ、この支持枠172を家具3の底部4に取り付けて構成される。前方側軸140の突出端部140Aとこの突出端部140Aに臨む一方の回動軸173Aの突出端部175とにはそれぞれ、揺動レバー176、177の一端を連結し、これら揺動レバー176、177の他端にはコネクティングロッド178を回動自在に枢支して接続している。また、後方側軸141の突出端部141Aとこの突出端部141Aに臨む一方の回動軸173Bの突出端部179とにもそれぞれ、揺動レバー180、181の一端を連結し、これら揺動レバー180、181の他端にはコネクティングロッド182を回動自在に枢支して接続している。
本実施例に係るキャスタの制動機構102は、叙上の如く構成されているので、前後いずれかの操作部150(151)を押圧操作すると、一方の軸140(141)が回動されて、作動部材42が旋回軸13から突出した制動ロッド22を押圧操作して車輪11、11をロックし、操作部150(151)は、操作具ロック機構160により下方の揺動端位置で保持されるので、キャスタ105Aの車輪11、11はロック状態のままとなる。一方、操作部150(151)が押圧操作された際、一方の軸140(141)の回動に伴い、揺動レバー176(180)が揺動すると、軸140(141)の回動力はコネクティングロッド178(182)を通じて、逆動装置171の回動軸173A(173B)に伝達され、回動軸173A(173B)は軸140(141)と同一の方向に回動する。そして、回動軸173A(173B)の回動は歯車174A、174Bを通じて他方の回動軸173B(173A)に逆方向で出力され、他方のコネクティングロッド182(178)を通じて他方の軸141(140)に伝達されるようになっている。このように、本実施例に係るキャスタの制動機構102は、いずれか一方の操作部150を操作するだけで、複数のキャスタ105A、105Dを同時にロックさせることができ、操作が簡便化される。
なお、上記実施例に係るキャスタの制動機構102では、逆動装置171と各軸140、141との間を2本のコネクティングロッド178、182により接続しているが、これに限られるものではなく、逆動装置171の2つの回動軸173A、173Bのうちいずれか一方を、各軸140、141のいずれか一方の軸と軸芯同一に連結して構成し、コネクティングロッドを1本で構成するようにしてもよい(図12の(A)、(B)参照)。また、上記実施例に係るキャスタの制動機構102では、前後側のキャスタ105Aと105Dのみを制動操作するようにしているがこれに限られるものではなく、前方側および後方側の各軸を延長し、前方側軸140Xを前方側両取付部材106FR、106FLに、後方側軸141Xを後方側両取付部材106RR、106RLにそれぞれ回動自在に支持し、これら両軸140X、141X間に、制動操作伝達機構157を設け、前方側のキャスタ105A、105Bと後方側のキャスタ105C、105Dを同時に制動させるようにしてもよい(図12の(C)参照)。さらに、本実施例では、操作具ロック機構160により操作部150、151の上下方向両揺動端位置をそれぞれ規制し、操作部150、151を各揺動端位置で保持し、車輪11、11のロックとロック解除を行うようにしているがこれにかぎられるものではなく、この操作具ロック機構160に代えて、上記第1の実施例に係る作動装置の作動切換機構2の一部を構成する制動切換機構60を用いてもよいことはいうまでもない。この場合、前後側のどちらからでも操作することができ、しかも、押圧操作を繰り返すだけで、車輪の制動と制動解除を行うことができる。
次に、本発明の第2の実施例に係るキャスタの制動機構202について説明する。本実施例に係るキャスタの制動機構202は、上記第2の実施例に係るキャスタの制動機構102が、前後の軸140、141間に、一方向の力を受けるとこの力を逆方向に出力しいずれか一方の軸140または141の回動を他方の軸141または140に反転させて伝達する制動操作伝達機構157を設け、この制動操作伝達機構157を、各軸140、141の突出端部140A、141A間に逆動装置171を設け、この逆動装置171と各軸140、141とを出力伝達可能に連結して構成しているのに対し、逆動装置を介さずに、前後の軸240、241間に、一方向の力を受けるとこの力を逆方向に出力しいずれか一方の軸240または241の回動を他方の軸241または240に反転させて伝達する制動操作伝達機構257を設けた点が異なっている。
すなわち、本発明の第2の実施例に係るキャスタの制動機構202は、家具の底部204の四隅には、取付部材206(206FR、206FL、206RR、206RL)を介してキャスタ5(5A〜5D)が内側に後退して旋回自在に取り付けられる。取付部材206は、底部204の進行方向前後側にそれぞれ対で2個ずつ取り付けられ、前後で対に配置される。進行方向前方側両取付部材206FL、206FRには、上記第1の実施例と同様に、これら両取付部材206FL、206FR間を接続する前方側軸240が、進行方向後方側両取付部材206RL、206RRには、これら両取付部材206RL、206RR間を接続する後方側軸241がそれぞれ回動自在に設けられ、これら両軸240,241は平行に配置される。前方側軸240は、キャスタ本体10の旋回軸13から上方に突出する制動ロッド22に対して進行方向後方側に、後方側軸241は、制動ロッド22に対して、進行方向前方側にそれぞれ配置される。
前後の軸240、241にはそれぞれ、前側両取付部材206FL、206FRの間および後側両取付部材206RL、206RRの間に操作具(操作部)250F、250Rが取り付けられる。操作具250F、250Rはそれぞれ、細長い金属製プレートをコ字状に折曲して形成され、延長された開放端が軸240、241に取り付けられるようになっている。折り曲げられた操作端251は、底部204より外側に突出して露出するようになっている。
操作具250F、250Rの開放端(軸側端部)252A、252Bにはそれぞれ、上下の向きを異ならせて上側柄部(柄部)253と下側柄部(柄部)254が形成される。上側柄部253は、底部204に形成されたスロット204A、204Bから上方に突出するようになっている。両操作具250F、250Rは各軸240、241にそれぞれ左右方向位置を合致させ、前後の操作具250F、250Rで向きが異なる柄部253−254、254−253同士が向き合うようにして配置される。
前方側操作具250Fの上側柄部253上端と後方側操作具250Rの下側柄部254下端には、右側リンク(連杆)255の両端が、前方側操作具250Fの下側柄部254下端と後方側操作具250Rの上側柄部253上端には、左側リンク(連杆)256の両端がそれぞれピンを介して回動自在に連結され、両操作具250F、250R間を接続するようになっている。各リンク255、256はスロット204A、204Bを通って傾斜して連結される。すなわち、前後の軸240、241間でなす面を横切って両操作具250F、250R間を接続するようになっている。こうして、これら上側柄部253と下側柄部254と左右のリンク255、256は、一方の操作具250Fにより軸240が一方向の回動力を受けるとこの力を柄部253、254からリンク255、256に伝達して他方の軸241に逆方向の回動力として出力するクランク機構を構成するようになっている。すなわち、制動操作伝達機構257はクランク機構によりいずれか一方の軸の回動を他方の軸に反転させて伝達するようになっている。
前後の軸240、241にはそれぞれ、制動切換機構60が設けられ、作業者は前方側操作具250Fまたは後方側操作具250Rの操作端251の押圧操作を繰り返すだけで、車輪11、11のロックとロック解除を繰り返すことができるようになっている。
なお、上記実施例では、操作具250F、250Rをコ字状に形成しているがこれに限られるものではなく、操作具を一端が軸240、241に連結される一枚板状の揺動アーム部とアーム部の外側端部に形成されたペダル部とから構成し、前後側の揺動アーム部の軸側端部にはそれぞれ、柄部を上下の向きを異ならせて設け、これら柄部を1本のリンクで連結しクランク機構を構成するようにしてもよい。また、柄部を操作具と別体とし、独立に各軸240、241に上下の向きを異ならせて取り付け、リンクで回動自在に連結するようにしてもよい。
次に、本発明の第3の実施例に係るキャスタの制動機構302について説明する。本実施例に係るキャスタの制動機構302は、上記第1第2の各実施例に係るキャスタの制動機構102、202がキャスタの車輪を制動操作する操作部を家具3の底部4の前後方向の2箇所に設けているのに対し、前後方向のうち少なくともいずれか一方だけでなく、家具等の被取付体の回りに設け、どの位置からでも操作部に近づきやすくした点が異なっている。
本実施例に係るキャスタの制動機構302は、図13および図14に示すように、被取付体としての家具303を左右の台枠304A、304Bとこれら台枠304A、304Bを接続する横枠304C、304Dとにより構成される。左右の台枠304A、304Bの前後両端にはそれぞれ、キャスタ305A〜305Dが取付部材306FL、306FR、306RL、306RRを介して設けられる。キャスタ305A〜305Dの制動装置320は、上記実施例に係るキャスタ5A〜5Dの制動装置20とほぼ同じ構造を有し、旋回軸13上に制動ロッド22上端が突出し上下動自在に弾発付勢されて配置される。
後方側の取付部材306RL、306RRにはそれぞれ、各キャスタ305C、305Dの旋回軸13の進行方向F後方側に作動軸307、308がそれぞれ、回動自在に軸支される。各作動軸307、308にはそれぞれ、作動部材342の一端が連結され(図3の(A)、(B)参照)、これら各作動軸307、308の一端部307A、308Aが取付部材306RL、306RRから内側に突出されるようになっている。作動部材342は揺動端部345が制動ロッド22の上端面21に当接し、作動軸307、308と一体に揺動して制動ロッド22を押し下げるようになっている。
後方側横枠304Dには、主操作部350と、この主操作部350の分岐端352、353が支持具361内で後方側左右各軸340A、340Bとそれぞれ連結され、主操作部350の上下方向両揺動端位置をそれぞれ規制し、主操作部350を各揺動端位置で保持する操作具ロック機構360が設けられる。左右の各軸340A、340Bは支持具361、361に回動自在に軸支されるとともに、一端がそれぞれ台枠304A、304Bを貫通して外部に突出して延長されるようになっている。各軸340A、340Bの外部延長端341A、341Bにはそれぞれ、副操作部351A、351Bが設けられる。各軸340A、340Bの台枠304A、304Bと支持具361、361との間と、各作動軸307、308の突出端部307A、308Aとにはそれぞれ、揺動レバー309、309、310、310の一端を連結し、これら揺動レバー309−310、309−310の他端にはコネクティングロッド311、312を回動自在に枢支して接続している。
このように、キャスタの制動機構302の制動操作伝達機構357は、取付部材306RL、306RRに作動軸307、308を回動自在に軸支して突出端部307A、308Aを取付部材306RL、306RRから突出させ、一端が作動軸307、308に連結された作動部材342を制動ロッド(係合部材)22に当接可能に配置して構成されるとともに、台枠(被取付体)304A、304Bに主操作部350を有する軸340A、340Bを回動自在に軸支し、これら軸340A、340Bと作動軸307、308とを運動伝達可能に連結して軸340A、340Bの回動を作動軸307、308に伝達するようになっている。
本実施例に係るキャスタの制動機構302の制動操作伝達機構357は、叙上の如く構成されているので、主操作部350と副操作部351A、351Bとのうちいずれか1に押圧力が加えられると、制動装置320と操作具ロック機構360により車輪を制動状態に保持し、主操作部350と副操作部351A、351Bとのうちいずれか1に元の位置に復帰させる外力が加えられると、車輪の制動が解除されるようになっている。このように、家具303の回りに主操作部350と副操作部351A、351Bとが設けられているので、たとえ家具303の向きが絶えず変わっても、作業者は操作部350、351A、351Bに近づきやすくなり、作業効率が向上する。また、制動装置320の作動軸307、308と操作部350、351A、351Bに連結された制動操作伝達用の軸340A、340Bとを軸芯の異なる2軸から構成しているので、操作部350、351A、351Bをキャスタ305C、305Dから離れた場所に設けることができ、設計の自由度を増大させることができる。
なお、上記実施例に係るキャスタの制動機構302では、主操作部350と副操作部351A、351Bによる制動および制動解除の操作を、操作具ロック機構360により行うようにしているがこれに限られるものではなく、この操作具ロック機構360に代えて、上記第1の実施例に係る作動装置の作動切換機構2の一部を構成する制動切換機構60を用いてもよいことはいうまでもない。この場合、前後側のどちらからでも操作することができ、しかも、押圧操作を繰り返すだけで、車輪の制動と制動解除を行うことができる。また、制動装置320の作動軸307、308と操作部350、351A、351Bに連結された制動操作伝達用の軸340A、340Bとを軸芯の異なる2軸から構成しているがこれに限られるものではなく、家具(被取付体)303の形状に応じて、同一軸芯上に配置してもよいし、同一軸で構成するようにしてもよい。さらに、本実施例では、後方側のキャスタ305C、305Dを制動させるようにしているが、これに限られるものではなく、前後のキャスタ305A、305Bと305C、305Dをロッドで連結し、操作部350、351A、351Bで受けた外力を前後方向他方の側のキャスタの制動装置320に伝達するようにしてもよい。また、上記実施例のように、逆動装置171を備えた制動操作伝達機構157を設け、制動操作の伝達を逆方向に出力して伝えるようにしてもよい。
次に、本発明の第4の実施例に係るキャスタの制動機構402について説明する。本実施例に係るキャスタの制動機構402は、上記実施例に係るキャスタの制動機構302が家具303の台枠304A、304Bの前後方向両端に横枠304C、304Dが連結され、矩形状台車を構成しているのに対し、被取付体403が、病院や美容院などの施設で用いられるH型形状の台車である点が異なっている。
すなわち、本実施例に係るキャスタの制動機構402は、図15ないし図18に示すように、左右の台枠404A、404Bとこれら台枠404A、404Bとの間を内側に後退して連結された横枠404CとによりH型形状の被取付体となっている。左右の台枠404A、404Bの前後両端にはそれぞれ、キャスタ405A〜405Dが取付部材406FL、406FR、406RL、406RRを介して設けられる。キャスタ405A〜405Dの制動装置420は、上記実施例に係るキャスタ5A〜5Dの制動装置20とほぼ同じ構造を有し、旋回軸13上に制動ロッド22上端が突出し上下動自在に弾発付勢されて配置される。
前方側の取付部材406FL、406FRにはそれぞれ、各キャスタ405A、405Bの旋回軸13の進行方向F後方側に作動軸407、408がそれぞれ、回動自在に軸支される。各作動軸407、408にはそれぞれ、作動部材442の一端が連結され(図17参照)、これら各作動軸407、408の両端部407A、407B、408A、408Aが取付部材406RL、406RRから左右両側に突出されるようになっている。作動部材442は揺動端部が制動ロッド22の上端面21に当接し、作動軸407、408と一体に揺動して制動ロッド22を押し下げるようになっている。
横枠404Cには、主操作部450と、この主操作部450の分岐端452、453が支持具461内で軸440とそれぞれ連結され、主操作部450の上下方向両揺動端位置をそれぞれ規制し、主操作部450を各揺動端位置で保持する操作具ロック機構460が設けられる。軸440は支持具461、461に回動自在に軸支されるとともに、両端がそれぞれ台枠404A、404Bの外部に突出して延長されるようになっている。軸440の外部延長端440A、440Bにはそれぞれ、副操作部451A、451Bが設けられる。軸440には、左側副操作部451Aと左側支持具461との間および右側副操作部451Bと右側支持具461との間とにはそれぞれ、揺動レバー409、409の一端が連結される。また、作動軸407、408の外側突出端407A、408Aにはそれぞれ、揺動レバー410、410の一端が連結され、これら軸440側の揺動レバー409、409の他端と作動軸407、408側の揺動レバー410、410の他端とにそれぞれ、コネクティングロッド412、413を回動自在に枢支して接続している。このため、操作部450、451A、451Bが操作されると、その操作の力が軸440の回動力となり、コネクティングロッド412、413を通じて、作動軸407、408に伝達され、キャスタ405A、405Bの制動装置420を動作させるようになっている。これら軸440、揺動レバー409、409、410、410、コネクティングロッド412、413により第1の制動操作伝達機構(制動操作伝達手段)を構成している。
また、本実施例に係るキャスタの制動機構402では、左右それぞれの前後の取付部材406FLと406RL、406FRと406RRに軸支された作動軸407と417、408と418間には、これら左側作動軸407、417と右側作動軸417、418とをそれぞれ、運動伝達可能に連結する伝達リンク454が設けられる。伝達リンク454は、前方側の作動軸407、408の内側突出端407B、408Bに一端が一体動可能にそれぞれ連結された揺動アーム455、456と、後方側の作動軸417、418の内側突出端417B、418Bに一端が一体動可能にそれぞれ連結された揺動アーム457、458と、両端がこれら左側揺動アーム455、457と右側揺動アーム456、458とにそれぞれ、ピンで回動自在に連結されたコネクティングロッド459、460とを備えて構成される。伝達リンク454は、操作部450、451A、451Bの操作により付与された軸440の回動力を前方側の作動軸407、408からコネクティングロッド459、460を通じて後方側の作動軸417、418に伝達するようになっている。この伝達リンク454により第2の制動操作伝達機構(制動操作伝達手段)が構成される。このように、本実施例に係るキャスタの制動機構402では、第1第2の制動操作伝達機構を通じて、操作部450、451A、451Bの操作がすべてのキャスタ405A〜405Dの制動装置420に伝達されるようになっている。
このように、本実施例に係るキャスタの制動機構402では、主操作部450が前方側キャスタ405A、405Bより後方側に後退させた場所に配置させることができるのでコンパクト化をはかることができる。また、副操作部451A、451Bを家具403の左右両側に設けているので、上記実施例と同様に、たとえ家具403の向きが絶えず変わっても、作業者は主操作部450や副操作部451A、451Bに近づきやすくなり、作業効率が向上する。
なお、上記実施例に係るキャスタの制動機構402では、主操作部450と副操作部451A、451Bによる制動および制動解除の操作を、操作具ロック機構460により行うようにしているがこれに限られるものではなく、この操作具ロック機構460に代えて、上記第1の実施例に係る作動装置の作動切換機構2の一部を構成する制動切換機構60を用いてもよい。この場合、前後側のどちらからでも操作することができ、しかも、押圧操作を繰り返すだけで、車輪の制動と制動解除を行うことができる。また、制動装置420の作動軸407、408と操作部450、451A、451Bに連結された制動操作伝達用の軸440を軸芯の異なる2軸から構成しているがこれに限られるものではなく、家具(被取付体)403の形状に応じて、同一軸芯上に配置してもよいし、同一軸で構成するようにしてもよい。さらに、本実施例では、後方側のキャスタ405C、405Dも前方側のキャスタ405A、405Bと同時に制動させるようにしているが、これに限られるものではなく、第2の制動操作伝達機構を除いて、第1の制動操作伝達機構のみを用い、前方側のキャスタ405A、405Bだけを制動させるようにしてもよい。また、また、上記実施例のように、逆動装置171を備えた制動操作伝達機構157を設け、制動操作の伝達を逆方向に出力して伝えるようにしてもよい。