以下、本発明に係る制御装置を車両に搭載した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両は、車載主機としてのエンジン10を備えている。エンジン10は、燃料噴射弁等を備え、燃料噴射弁から噴射されたガソリン又は軽油等の燃料の燃焼により動力を発生する。発生した動力は、エンジン10の出力軸10aから出力される。
車両は、直流電源としてのバッテリ20と、回転電機装置21とを備えている。バッテリ20は、例えば、定格電圧が12Vの鉛蓄電池である。回転電機装置21は、コンデンサ22、交流駆動される回転電機30、インバータ40、界磁通電回路41、及び回転電機30を制御する制御装置であるMGECU60を備えている。本実施形態では、回転電機30として、巻線界磁型の同期機が用いられている。また、本実施形態において、MGECU60は、回転電機30が電動機兼発電機であるISG(Integrated Starter Generator)として機能するように回転電機30を制御する。回転電機装置21は、回転電機、インバータ40、界磁通電回路41及びMGECU60を備える機電一体型駆動装置である。
回転電機30は、ロータ31を備えている。ロータ31は、界磁巻線32を備えている。ロータ31の回転軸は、図示しないプーリ等を介してエンジン10の出力軸10aと動力伝達が可能とされている。回転電機30が発電機として駆動される場合、出力軸10aから供給される回転動力によってロータ31が回転し、回転電機30が発電する。回転電機30の発電電力により、バッテリ20が充電される。一方、回転電機30が電動機として駆動される場合、ロータ31の回転に伴って出力軸10aが回転し、出力軸10aに回転力が付与される。これにより、例えば車両の走行をアシストすることができる。なお、出力軸10aには、変速装置等を介して車両の駆動輪が接続されている。
回転電機30は、ステータ33を備えている。ステータ33は、ステータ巻線を備えている。ステータ巻線は、電気角で互いに120°ずれた状態で配置されたU,V,W相巻線34U,34V,34Wを含む。
インバータ40は、U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpと、U,V,W相下アームスイッチSUn,SVn,SWnとの直列接続体を備えている。U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpと、U,V,W相下アームスイッチSUn,SVn,SWnとの接続点には、U,V,W相巻線34U,34V,34Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線34U,34V,34Wの第2端は、中性点で接続されている。すなわち、本実施形態において、U,V,W相巻線34U,34V,34Wは、星形結線されている。
なお、本実施形態において、各スイッチSUp〜SWnは、NチャネルMOSFETである。NチャネルMOSFETがオン駆動される場合、高電位側端子であるドレイン及び低電位側端子であるソースの間の電流の流通が許可される。一方、NチャネルMOSFETがオフ駆動される場合、ドレイン及びソース間の電流の流通が阻止される。各スイッチSUp,SVp,SWp,SUn,SVn,SWnには、各ボディダイオードDUp,DVp,DWp,DUn,DVn,DWnが逆並列に接続されている。
U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpのドレインには、高電位側電気経路Lpを介してバッテリ20の正極端子が接続されている。U,V,W相下アームスイッチSUn,SVn,SWnのソースには、低電位側電気経路Lnを介してバッテリ20の負極端子が接続されている。各電気経路Lp,Lnは、バスバー等の導電部材である。各上アームスイッチSUp,SVp,SWpのドレインと高電位側電気経路Lpとの接続点のうちバッテリ20の正極端子に最も近い接続点と、バッテリ20の正極端子とを接続する高電位側電気経路Lpには、コンデンサ22の高電位側端子が接続されている。各下アームスイッチSUn,SVn,SWnのソースと低電位側電気経路Lnとの接続点のうちバッテリ20の負極端子に最も近い接続点と、バッテリ20の負極端子とを接続する低電位側電気経路Lnには、コンデンサ22の低電位側端子が接続されている。
界磁通電回路41は、フルブリッジ回路であり、第1上アームスイッチSH1及び第1下アームスイッチSL1の直列接続体と、第2上アームスイッチSH2及び第2下アームスイッチSL2の直列接続体とを備えている。第1上アームスイッチSH1と第1下アームスイッチSL1との接続点には、図示しないブラシを介して界磁巻線32の第1端が接続されている。第2上アームスイッチSH2と第2下アームスイッチSL2との接続点には、図示しないブラシを介して界磁巻線32の第2端が接続されている。なお、本実施形態において、各アームスイッチSH1,SL1,SH2,SL2は、NチャネルMOSFETである。各スイッチSH1,SL1,SH2,SL2には、各ボディダイオードDH1,DL1,DH2,DL2が逆並列に接続されている。
第1,第2上アームスイッチSH1,SH2のドレインには、高電位側電気経路Lpのうちコンデンサ22の高電位側端子との接続点よりもインバータ40側が接続されている。第1,第2下アームスイッチSL1,SL2のソースには、低電位側電気経路Lnのうちコンデンサ22の低電位側端子との接続点よりもインバータ40側が接続されている。
回転電機装置21は、電圧検出部50、相電流検出部51、界磁電流検出部52及び角度検出部53を備えている。電圧検出部50は、コンデンサ22の端子電圧を電源電圧VDCとして検出する。相電流検出部51は、U,V,W相巻線34U,34V,34Wに流れる相電流を検出する。界磁電流検出部52は、界磁巻線32に流れる界磁電流を検出する。角度検出部53は、ロータ31の回転角に応じた信号である角度信号を出力する。各検出部50〜53の出力信号は、MGECU60に入力される。
なお、MGECU60の各機能の一部又は全部は、例えば、1つ又は複数の集積回路等によりハードウェア的に構成されていてもよい。また、MGECU60の各機能は、例えば、非遷移的実体的記録媒体に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータによって構成されていてもよい。
車両は、エンジン10の燃焼制御を行う制御装置であるエンジンECU11と、車両の制御を統括する上位の制御装置である上位ECU12とを備えている。MGECU60、エンジンECU11及び上位ECU12は、CAN等の通信線により情報のやり取りが可能とされている。
エンジンECU11は、エンジン10のアイドリング運転中の燃焼制御として、通常時制御と、アイドルアップ制御とを行う。通常時制御は、出力軸10aの回転速度であるエンジン回転速度Nerを第1指令回転速度Netgt1に制御するための燃焼制御である。アイドルアップ制御は、エンジン回転速度Nerを、第1指令回転速度Netgt1よりも高い第2指令回転速度Netgt2に制御するための燃焼制御である。各指令回転速度Netgt1,Netgt2は、エンジン10の冷却水の温度等に応じて可変設定される。エンジンECU11は、所定の条件が成立したと判定した場合、通常時制御からアイドルアップ制御に切り替える。所定の条件は、例えば、出力軸10aの動力により駆動される車載機器の消費動力が所定動力以上になったとの条件である。この場合の車載機器には、回転電機30も含まれる。
MGECU60は、インバータ40及び界磁通電回路41を構成する各スイッチの駆動信号を生成する。
まず、インバータ40について説明する。MGECU60は、角度検出部53の角度信号を取得し、取得した角度信号に基づいて、インバータ40を構成する各スイッチSUp〜SWnをオンオフする駆動信号を生成する。詳しくは、MGECU60は、回転電機30を電動機として駆動させる場合、バッテリ20から出力された直流電力を交流電力に変換してU,V,W相巻線34U,34V,34Wに供給すべく、各アームスイッチSUp〜SWnをオンオフする駆動信号を生成し、生成した駆動信号を各アームスイッチSUp〜SWnのゲートに供給する。一方、MGECU60は、回転電機30を発電機として駆動させる場合、U,V,W相巻線34U,34V,34Wから出力された交流電力を直流電力に変換してバッテリ20に供給すべく、各アームスイッチSUp〜SWnをオンオフする駆動信号を生成する。
続いて、界磁通電回路41について説明する。MGECU60は、界磁巻線32を励磁すべく、界磁通電回路41を構成する各スイッチをオンオフする。詳しくは、MGECU60は、第1状態と第2状態とが交互に出現するように各スイッチをオンオフする。第1状態は、第1上アームスイッチSH1と第2下アームスイッチSL2とがオンされて、かつ、第2上アームスイッチSH2と第1下アームスイッチSL1とがオフされている状態である。第2状態は、第1上アームスイッチSH1と第2下アームスイッチSL2とがオフされて、かつ、第2上アームスイッチSH2と第1下アームスイッチSL1とがオンされている状態である。
MGECU60は、角度検出部53の角度信号に基づいて、回転電機30の電気角θeと、ロータ31の回転速度Nmとを算出する。
以下、本実施形態では、回転電機30を発電機として駆動させる場合について説明する。図2に、MGECU60が行うPWM発電制御モードのブロック図を示す。なお、本実施形態において、MGECU60のうち、図2に示す処理を行う構成が第2制御部に相当する。
電圧偏差算出部61は、指令発電電圧VD*から、電圧検出部50により検出された電源電圧VDCを減算することにより、電圧偏差ΔVを算出する。指令発電電圧VD*は、インバータ40からバッテリ20に出力する直流電圧の指令値である。指令発電電圧VD*は、例えば、上位ECU12からMGECU60へと入力される。
トルク算出部62は、電圧偏差ΔVを0にフィードバック制御するための操作量として、回転電機30の制御量の指令値を算出する。本実施形態において、制御量はトルクであり、その指令値は指令トルクTrq*である。また、本実施形態において、トルク算出部62で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御である。なお、フィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば比例積分微分制御であってもよい。
2相変換部70は、相電流検出部51により検出された相電流及び電気角θeに基づいて、回転電機30の3相固定座標系におけるU,V,W相電流IU,IV,IWを、2相回転座標系であるdq座標系におけるd,q軸電流Idr,Iqrに変換する。
d軸指令設定部71は、指令トルクTrq*に基づいて、回転電機30のトルクを指令トルクTrq*とするためのd軸指令電流Id*を設定する。具体的には、d軸指令設定部71は、指令トルクTrq*とd軸指令電流Id*とが関係付けられたマップ情報に基づいて、d軸指令電流Id*を設定する。
q軸指令設定部72は、指令トルクTrq*に基づいて、回転電機30のトルクを指令トルクTrq*とするためのq軸指令電流Iq*を設定する。具体的には、q軸指令設定部72は、指令トルクTrq*とq軸指令電流Iq*とが関係付けられたマップ情報に基づいて、q軸指令電流Iq*を設定する。
ステータ制御部73は、d軸電流Idrをd軸指令電流Id*にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vd*を算出する。具体的には、ステータ制御部73は、d軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算した値としてd軸電流偏差ΔIdを算出し、算出したd軸電流偏差ΔIdを0にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vd*を算出する。
ステータ制御部73は、q軸電流Iqrをq軸指令電流Iq*にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vq*を算出する。具体的には、ステータ制御部73は、q軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算した値としてq軸電流偏差ΔIqを算出し、算出したq軸電流偏差ΔIqを0にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vq*を算出する。
なお、本実施形態において、ステータ制御部73で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御である。なお、フィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば比例積分微分制御であってもよい。
d軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*により、dq座標系における電圧ベクトルの指令値である指令電圧ベクトルが定まる。ここで、ステータ巻線に印加される電圧ベクトルは、そのd軸成分がd軸電圧Vdとなり、q軸成分がq軸電圧Vqとなるものである。電圧ベクトルの位相である電圧位相は、例えば、d軸の正方向を基準とし、この基準から反時計回りの方向が正方向として定義されている。
3相変換部74は、d,q軸指令電圧Vd*,Vq*及び電気角θeに基づいて、d,q軸指令電圧Vd*,Vq*を、3相固定座標系におけるU,V,W相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に変換する。本実施形態において、U,V,W相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*は、電気角で位相が120°ずれた正弦波状の信号となる。
ステータ生成部75は、キャリア信号、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*及び電源電圧VDCに基づいて、PWM制御により、インバータ40の各スイッチSUp〜SWnをオンオフするための各駆動信号を生成する。詳しくは、PWM制御は、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*を「VDC/2」で除算した値と、キャリア信号との大小比較に基づいて、各駆動信号を生成するものである。本実施形態において、キャリア信号は、三角波信号である。PWM制御において、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*の振幅を「VDC/2」で除算した値は、キャリア信号の振幅以下である。
界磁指令設定部80は、指令トルクTrq*に基づいて、界磁指令電流If*を設定する。具体的には、界磁指令設定部80は、指令トルクTrq*と界磁指令電流If*とが関係付けられたマップ情報に基づいて、界磁指令電流If*を設定する。
界磁電流制御部81は、界磁電流検出部52により検出された界磁電流Ifrを界磁指令電流If*にフィードバック制御するための操作量として、界磁指令電圧Vf*を算出する。具体的には、界磁電流制御部81は、界磁指令電流If*から界磁電流Ifrを減算した値として界磁電流偏差ΔIfを算出し、算出した界磁電流偏差ΔIfを0にフィードバック制御するための操作量として、界磁指令電圧Vf*を算出する。なお、本実施形態において、界磁電流制御部81で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御である。なお、フィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば比例積分微分制御であってもよい。
界磁生成部82は、界磁指令電圧Vf*を電源電圧VDCで除算した値と、三角波信号であるキャリア信号との大小比較に基づいて、界磁巻線32の印加電圧を界磁指令電圧Vf*に制御するための界磁通電回路41の各スイッチSH1〜SL2の各駆動信号を生成する。
図3に、PWM発電制御モードが実行される場合における1相分のゲート信号及び相電流の推移を示す。図3(a)において、ゲート信号は、Hによって上アームスイッチをオン駆動してかつ下アームスイッチをオフ駆動することを示し、Lによって上アームスイッチをオフ駆動してかつ下アームスイッチをオン駆動することを示す。また、相電流は、インバータ40側からステータ巻線側へと流れる電流方向を正と定義する。
続いて、図4に、MGECU60が行う同期整流制御モードのブロック図を示す。なお、本実施形態において、MGECU60のうち、図4に示す処理を行う構成が第1制御部に相当する。同期整流制御モードでは、回転電機30の発電時において、インバータ40のスイッチに逆並列接続されたボディダイオードに電流が流れようとする期間に、電流が流れようとするダイオードに逆並列接続されたスイッチがオンされる。ボディダイオードに電流が流れようとする期間は、ステータ巻線の発電電圧(逆起電圧)がバッテリ20の端子電圧を超える期間である。同期整流制御モードでは、1電気角周期のうち、ステータ巻線の発電電圧がバッテリ20の端子電圧を超える期間の少なくとも一部において上アームスイッチが1回オン駆動される。これにより、ステータ巻線から出力される交流電流が直流電流に変換される。
同期生成部90は、電気角θe、インバータ40の上,下アームスイッチのデッドタイムDT、及び電圧位相の指令値δに基づいて、インバータ40の各スイッチSUp〜SWnをオンオフするための各駆動信号を生成する。同期生成部90により生成された駆動信号は、各相の1電気角周期において、上アームスイッチ及び下アームスイッチのそれぞれを1回ずつオン駆動させる信号となる。この駆動信号は、各相それぞれで位相が電気角で120°ずれている。
なお、図4において、電圧偏差算出部61、トルク算出部62、界磁指令設定部80、界磁電流制御部81及び界磁生成部82は、図2に示した構成と同じである。このため、PWM発電制御モード及び同期整流制御モードのうち、一方から他方へと切り替えられる場合においても、指令トルクTrq*に基づく界磁電流の制御の連続性が維持される。
図5に、同期整流制御モードが実行される場合における1相分のゲート信号及び相電流の推移を示す。なお、図5(a),(b)は、先の図3(a),(b)に対応している。
続いて、アイドリング運転中における制御モードの切替処理について説明する。この処理は、算出したロータ31の回転速度Nmが高回転側閾値Nth2以上になったと判定された場合、PWM発電制御モードから同期整流制御モードに切り替え、回転速度Nmが、高回転側閾値Nth2よりも小さい低回転側閾値Nth1以下になったと判定された場合、同期整流制御モードからPWM発電制御モードに切り替える処理である。ここで、本実施形態の高回転側閾値Nth2及び低回転側閾値Nth1について説明する。
第1指令回転速度Netgt1に対応するロータ31の回転速度を第1ロータ回転速度Nm1とする。第1ロータ回転速度Nm1は、プーリ比等により定まる出力軸10aからロータ31までの変速比と、第1指令回転速度Netgt1とに基づいて定まる。例えば、第1指令回転速度Netgt1が700rpmであり、変速比が3である場合、第1ロータ回転速度Nm1は2100rpmとなる。
第2指令回転速度Netgt2に対応するロータ31の回転速度を第2ロータ回転速度Nm2(>Nm1)とする。第2ロータ回転速度Nm2は、プーリ比等により定まる出力軸10aからロータ31までの変速比と、第2指令回転速度Netgt2とに基づいて定まる。
第1,第2指令回転速度Netgt1,Netgt2に対するエンジン回転速度Nerの高回転側への最大想定変動量をエンジン変動量ΔNe(>0)とし、エンジン変動量ΔNeに対応するロータ31の回転速度の高回転側への最大想定変動量をロータ変動量ΔNmとする。ロータ変動量ΔNmは、プーリ比等により定まる出力軸10aからロータ31までの変速比と、エンジン変動量ΔNeとに基づいて定まる。例えば、エンジン変動量ΔNeが80rpmであり、変速比が3である場合、ロータ変動量ΔNmは240rpmとなる。
高回転側閾値Nth2は、第1ロータ回転速度Nm1及びロータ変動量ΔNmの加算値よりも大きい値に設定され、例えば、この加算値よりも大きくてかつ第2ロータ回転速度Nm2以下の値に設定されている。本実施形態において、高回転側閾値Nth2は、第2ロータ回転速度Nm2に設定されている。
低回転側閾値Nth1は、高回転側閾値Nth2よりも小さい値に設定され、例えば、高回転側閾値Nth2よりも小さくて、かつ、第1ロータ回転速度Nm1以上の値に設定されている。本実施形態において、低回転側閾値Nth1は、第1ロータ回転速度Nm1に設定されている。
図6に、アイドリング運転中における制御モードの切替処理の手順を示す。この処理は、MGECU60により、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
ステップS10では、エンジンECU11によりアイドルアップ制御が実行されているか否かを判定する。アイドルアップ制御が実行されているか否かは、例えば、エンジンECU11から上位ECU12及び通信線を介して入力される外部信号に基づいて判定されればよい。ちなみに、上位ECU12を介さずにエンジンECU11からMGECU60に入力された外部信号に基づいて、アイドルアップ制御が実行されているか否かが判定されてもよい。また、上位ECU12やエンジンECU11の外部装置からの外部信号によらず、例えば、ロータ31の回転速度Nmに基づいて、アイドルアップ制御が実行されているか否かをMGECU60自身で判定してもよい。この場合、MGECU60は、例えば、ロータ31の回転速度Nmに基づいて、回転速度Nmが第2ロータ回転速度Nm2に制御されていると判定した場合にアイドルアップ制御が実行されていると判定すればよい。
ステップS10においてアイドルアップ制御が実行されていないと判定した場合には、通常時制御が実行されていると判定し、ステップS11に進む。ステップS11では、算出したロータ31の回転速度Nmの変動量が所定量よりも小さいか否かを判定する。ステップS11の処理は、ロータ31と動力伝達可能な出力軸10aの回転速度の変動量が小さいか否かを判定し、制御モードの切り替えを判定するための高回転側閾値Nth2を小さくできる状況であるか否かを判定する処理である。つまり、高回転側閾値Nth2は、低回転側閾値Nth1に対して、ロータ変動量ΔNmを含むマージンを持たせて設定されている。このため、出力軸10aの回転速度の変動量が小さく、ロータ変動量ΔNmが小さい状況であれば、高回転側閾値Nth2を小さくできる。
なお、例えば、エンジン10の暖機が完了したと判定した場合、回転速度Nmの変動量が所定量よりも小さいと判定してもよい。ここでは、例えば、エンジン10の燃焼室での燃焼が開始されてからの経過時間が判定時間以上になったと判定した場合、又はエンジン10の温度又はその相関値(例えば、エンジン10のオイル又は冷却水の温度)を検出する検出部の検出値が所定温度以上になったと判定した場合に暖機が完了したと判定すればよい。
また、例えば、出力軸10aから動力を供給されて駆動可能な回転電機30以外の車載機器の駆動が停止していると判定した場合、回転速度Nmの変動量が所定量よりも小さいと判定してもよい。ここで、この車載機器としては、例えば空調用のコンプレッサが挙げられる。
また、例えば、クランク角度センサ等の出力信号に基づいて速度算出部により算出されたエンジン回転速度Nerから、回転速度Nmの変動量が所定量よりも小さいと判定してもよい。
ステップS11において回転速度Nmの変動量が所定量以上であると判定した場合には、ステップS12に進み、高回転側閾値Nth2を第1閾値Nαに設定する。一方、ステップS11において回転速度Nmの変動量が所定量よりも小さいと判定した場合には、ステップS13に進み、高回転側閾値Nth2を、後述する低回転側閾値Nth1よりも大きい値であってかつ第1閾値Nαよりも小さい第2閾値Nβに設定する。ステップS15の処理によれば、同期整流制御モードが実行される機会を増やすことができ、インバータ40で発生するスイッチング損失を低減することができる。
ステップS12,S13の処理の完了後、ステップS14に進み、算出したロータ31の回転速度Nmが高回転側閾値Nth2以上になっているか否かを判定する。ステップS14において回転速度Nmが高回転側閾値Nth2よりも低いと判定した場合には、ステップS15に進み、算出したロータ31の回転速度Nmが低回転側閾値Nth1以下になっているか否かを判定する。
ステップS15において回転速度Nmが低回転側閾値Nth1以下になっていると判定した場合には、ステップS16に進み、判定フラグFを0にする。判定フラグFは、0によってPWM発電制御モードの実行を指示し、1によって同期整流制御モードの実行を指示する。なお、本実施形態において、判定フラグFの初期値は0とされている。
ステップS14において回転速度Nmが高回転側閾値Nth2以上になっていると判定した場合には、ステップS17に進み、判定フラグFを1にする。ステップS15において回転速度Nmが低回転側閾値Nth1よりも高くなっていると判定した場合には、現在実行されている制御モードが引き続き実行される。
ステップS16,S17の処理が完了した場合、又はステップS15において否定判定した場合には、ステップS18に進む。ステップS18では、判定フラグFが1であるか否かを判定する。ステップS18において判定フラグFが0であると判定した場合には、ステップS19に進み、先の図2に示したPWM発電制御モードの実行を指示する。一方、ステップS18において判定フラグFが1であると判定した場合には、ステップS20に進み、先の図4に示した同期整流制御モードの実行を指示する。なお、本実施形態において、ステップS14〜S20の処理が、制御モードを切り替える切替部に相当する。
ステップS10においてアイドルアップ制御がなされていると判定した場合には、ステップS17に進む。これにより、判定フラグFが1とされる。その結果、ロータ31の回転速度Nmにかかわらず、その後ステップS20において同期整流制御モードの実行が指示される。このため、PWM発電制御モードが実施される場合と比較して、インバータ40で発生するスイッチング損失を低減することができる。
図7に、PWM発電制御モードから同期整流制御モードへの切り替え態様を示し、図8に、同期整流制御モードからPWM発電制御モードへの切り替え態様を示す。図7(a),図8(a)は、MGECU60により算出されたロータ31の回転速度Nmの推移を示し、図7(b),図8(b)は、制御方式の推移を示す。図7に示す例は、通常時制御が実行される場合に制御モードが切り替えられる例である。図8に示す例は、例えば、アイドルアップ制御から通常時制御に切り替えられた後、回転速度Nmが低回転側閾値Nth1以下になったと判定されて制御モードが切り替えられる例である。
図9に、比較例における制御モードの切り替え態様を示す。ここで、比較例とは、ロータ31の回転速度Nmが速度閾値Nthcを超えていると判定された場合に同期整流制御モードが実行され、回転速度Nmが速度閾値Nthc以下になっていると判定された場合にPWM発電制御モードが実行される構成である。図9(a),(b)は、先の図7(a),(b)に対応しており、図9(c)は、各制御モードが実行される場合に発生するインバータ40における主な動作音の周波数の推移を示す。図9(d)は、回転電機30のトルクの推移を示し、図9(e)は、発電に伴いインバータ40からバッテリ20へと流れる出力電流の推移を示す。
算出されたロータ31の回転速度Nmが図9(a)に示すように速度閾値Nthc近傍で変動すると、図9(b)に示すように、PWM発電制御モード及び同期整流制御モードのうち、一方の制御モードから他方の制御モードへと頻繁に切り替えられる事態が発生する。なお、この頻繁な切り替えは、ロータ31の実際の回転速度が変動すること以外に、算出された回転速度Nmにノイズ成分が混入することによっても発生する。
同期整流制御モードが実施される場合におけるインバータ40のスイッチのスイッチング周波数は、PWM発電制御モードが実施される場合におけるインバータ40のスイッチのスイッチング周波数よりも低い。このため、図9(c)に示すように、同期整流制御モードが実施される場合に発生する主な動作音の周波数は、PWM発電制御モードが実施される場合に発生する主な動作音の周波数よりも低くなる。制御モードが頻繁に切り替えられると、主な動作音の周波数が頻繁に切り替わり、回転電機装置21のNVH特性が悪化してしまう。
また、制御モードが頻繁に切り替えられると、図9(d)に示すように、回転電機30のトルク変動が頻繁に発生したり、図9(e)に示すように、出力電流のアンダーシュートやオーバーシュートが発生したりする。オーバーシュートが発生すると、インバータ40からバッテリ20へと過電流が流れ、バッテリ20やインバータ40等の信頼性が低下し、ひいては回転電機装置21の信頼性が低下する懸念がある。
これに対し、本実施形態では、PWM制御モード及び同期整流制御モードの切り替え用閾値Nth1,Nth2にヒステリシスが設定されている。このため、ロータ31の回転速度Nmが変動する場合であっても、制御モードの頻繁な切り替えを抑制することができる。これにより、回転電機装置21のNVH特性及び信頼性を改善することができる。
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・図6のステップS13において、回転速度Nmの変動量が小さいほど、第2閾値Nβが小さい値に設定されてもよい。
・上記実施形態では、同期整流制御モードとPWM発電制御モードとが切り替えられる構成であったがこれに限らない。例えば、同期整流制御モードと、このモードよりもスイッチング周波数の高い過変調制御モードとが切り替えられる構成、又は過変調制御モードとPWM発電制御モードとが切り替えられる構成であってもよい。
・回転電機が電動機として駆動される場合においても、本発明を適用することができる。この場合、例えば、第1制御部のスイッチング制御に相当する矩形波制御モードと、第2制御部のスイッチング制御に相当するPWM制御モードとが切り替えられる。矩形波制御モードは、インバータ40の各相の1電気角周期において、上アームスイッチ及び下アームスイッチがそれぞれ1回ずつオン駆動されるモードである。
・ロータ31の回転速度Nmが高回転側閾値Nth2以上になったと判定された場合に実行されるスイッチング制御のスイッチング周波数が、回転速度Nmが低回転側閾値Nth1以下になったと判定された場合に実行されるスイッチング制御のスイッチング周波数よりも高くされていてもよい。
・界磁通電回路としては、フルブリッジ回路に限らず、例えばハーフブリッジ回路であってもよい。
・インバータ及び界磁通電回路で用いられるスイッチとしては、NチャネルMOSFETに限らない。
・回転電機の制御量としては、トルクに限らず、例えば、回転電機30の発電電力であってもよい。
・回転電機としては、星形結線されるものに限らず、例えば、Δ結線されるものであってもよい。また、回転電機としては、界磁巻線を備える巻線界磁型のものに限らず、例えば、ロータに永久磁石を備える永久磁石型のものであってもよい。