<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御装置を車両に搭載した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、車両は、車載主機としてのエンジン10を備えている。エンジン10は、燃料噴射弁等を備え、燃料噴射弁から噴射されたガソリン又は軽油等の燃料の燃焼により動力を発生する。発生した動力は、エンジン10の出力軸10aから出力される。
車両は、直流電源としてのバッテリ20と、負荷22と、制御システムとを備えている。バッテリ20は、例えば、定格電圧が12Vの鉛蓄電池である。制御システムは、交流駆動される回転電機30を備えている。本実施形態では、回転電機30として、巻線界磁型の同期機が用いられている。また、本実施形態では、回転電機30として、電動機の機能が付加された発電機であるISG(Integrated Starter Generator)が用いられている。なお、回転電機30は、例えば突極機である。
回転電機30は、ロータ31を備えている。ロータ31は、界磁巻線32を備えている。ロータ31の回転軸は、図示しないプーリ等を介してエンジン10の出力軸10aと動力伝達が可能とされている。回転電機30が発電機として駆動される場合、出力軸10aから供給される回転動力によってロータ31が回転し、回転電機30が発電する。回転電機30の発電電力により、バッテリ20が充電される。一方、回転電機30が電動機として駆動される場合、ロータ31の回転に伴って出力軸10aが回転し、出力軸10aに回転力が付与される。これにより、例えば車両の走行をアシストすることができる。なお、出力軸10aには、変速装置等を介して車両の駆動輪が接続されている。
回転電機30は、ステータ33を備えている。ステータ33は、ステータ巻線を備えている。ステータ巻線は、電気角で互いに120°ずれた状態で配置されたU,V,W相巻線34U,34V,34Wを含む。
制御システムは、3相のインバータ40と、界磁通電回路41と、コンデンサ21とを備えている。インバータ40は、U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpと、U,V,W相下アームスイッチSUn,SVn,SWnとの直列接続体を備えている。U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpと、U,V,W相下アームスイッチSUn,SVn,SWnとの接続点には、U,V,W相巻線34U,34V,34Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線34U,34V,34Wの第2端は、中性点で接続されている。すなわち本実施形態において、U,V,W相巻線34U,34V,34Wは、星形結線されている。なお、本実施形態では、各アームスイッチSUp~SWnとして、NチャネルMOSFETが用いられている。各スイッチSUp~SWnには、ボディダイオードDUp~DWnが内蔵されている。NチャネルMOSFETがオンされる場合、高電位側端子であるドレイン及び低電位側端子であるソースの間の電流の流通が許可される。一方、NチャネルMOSFETがオフされる場合、ドレインからソースへの電流の流通が阻止される。
U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpの高電位側端子であるコレクタには、高電位側電気経路Lpを介してバッテリ20の正極端子が接続されている。U,V,W相下アームスイッチSUn,SVn,SWnの低電位側端子であるエミッタには、低電位側電気経路Lnを介してバッテリ20の負極端子が接続されている。各電気経路Lp,Lnは、バスバー等の導電部材である。高電位側電気経路Lpのうち各上アームスイッチSUp,SVp,SWpのコレクタとの接続点よりもバッテリ20の正極端子側には、コンデンサ21の高電位側端子が接続されている。低電位側電気経路Lnのうち各下アームスイッチSUn,SVn,SWnのエミッタとの接続点よりもバッテリ20の負極端子側には、コンデンサ21の低電位側端子が接続されている。
界磁通電回路41は、フルブリッジ回路であり、第1上アームスイッチSH1及び第1下アームスイッチSL1の直列接続体と、第2上アームスイッチSH2及び第2下アームスイッチSL2の直列接続体とを備えている。第1上アームスイッチSH1と第1下アームスイッチSL1との接続点には、図示しないブラシを介して界磁巻線32の第1端が接続されている。第2上アームスイッチSH2と第2下アームスイッチSL2との接続点には、図示しないブラシを介して界磁巻線32の第2端が接続されている。なお、本実施形態では、各アームスイッチSH1,SL1,SH2,SL2として、IGBTが用いられている。また、各アームスイッチSH1,SL1,SH2,SL2には、各ダイオードDH1,DL1,DH2,DL2が逆並列接続されている。
第1,第2上アームスイッチSH1,SH2の高電位側端子であるコレクタには、高電位側電気経路Lpのうちコンデンサ21の高電位側端子との接続点よりもインバータ40側が接続されている。第1,第2下アームスイッチSL1,SL2の低電位側端子であるエミッタには、低電位側電気経路Lnのうちコンデンサ21の低電位側端子との接続点よりもインバータ40側が接続されている。
制御システムは、電圧検出部50、相電流検出部51、界磁電流検出部52及び角度検出部53を備えている。電圧検出部50は、コンデンサ21の端子電圧を電源電圧VDCとして検出する。相電流検出部51は、U,V,W相巻線34U,34V,34Wに流れる相電流を検出する。界磁電流検出部52は、界磁巻線32に流れる界磁電流を検出する。角度検出部53は、ロータ31の回転角に応じた信号である角度信号を出力する。各検出部50~53の出力信号は、制御装置60に入力される。ちなみに、本実施形態において、回転電機30、インバータ40、界磁通電回路41及び制御装置60が一体化されて機電一体型の駆動装置DUとされている。
制御装置60は、記憶部に相当するメモリ60aを備えている。メモリ60aは、非遷移的実体的記録媒体(non-transitory computer readable medium)に相当し、例えば不揮発性のメモリである。
なお、制御装置60の各機能の一部又は全部は、例えば、1つ又は複数の集積回路等によりハードウェア的に構成されていてもよい。また、制御装置60の各機能は、例えば、非遷移的実体的記録媒体に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータによって構成されていてもよい。
制御装置60は、インバータ40及び界磁通電回路41を構成する各スイッチの駆動信号を生成する。
まず、インバータ40について説明する。制御装置60は、角度検出部53の角度信号を取得し、取得した角度信号に基づいて、インバータ40を構成する各スイッチSUp~SWnをオンオフする駆動信号を生成する。駆動信号は、スイッチのオンへの切り替えを指示するオン指令と、オフへの切り替えを指示するオフ指令とのいずれかをとる。制御装置60は、回転電機30を電動機として駆動させる場合、バッテリ20から出力された直流電力を交流電力に変換してU,V,W相巻線34U,34V,34Wに供給すべく、各アームスイッチSUp~SWnをオンオフする駆動信号を生成し、生成した駆動信号を各アームスイッチSUp~SWnのゲートに供給する。一方、制御装置60は、回転電機30を発電機として駆動させる場合、U,V,W相巻線34U,34V,34Wから出力された交流電力を直流電力に変換してバッテリ20及び負荷22の少なくとも一方に供給すべく、各アームスイッチSUp~SWnをオンオフする駆動信号を生成する。
続いて、界磁通電回路41について説明する。制御装置60は、界磁巻線32を励磁すべく、界磁通電回路41を構成する各スイッチをオンオフする。図2に、各スイッチの駆動態様の一例を示す。制御装置60は、図2(a)に示す第1状態と図2(b)に示す第2状態とが交互に出現するように各スイッチをオンオフする。第1状態は、第1上アームスイッチSH1と第2下アームスイッチSL2とがオンされて、かつ、第2上アームスイッチSH2と第1下アームスイッチSL1とがオフされている状態である。第2状態は、第1上アームスイッチSH1と第2下アームスイッチSL2とがオフされて、かつ、第2上アームスイッチSH2と第1下アームスイッチSL1とがオンされている状態である。なお、図2に示した駆動態様は、一例にすぎず、第2状態が出現しない駆動態様等、他の駆動態様であってもよい。また、界磁通電回路42は、フルブリッジ回路に限らず、例えばハーフブリッジ回路であってもよい。
制御装置60は、角度検出部53の角度信号に基づいて、回転電機30の電気角θeと、ロータ31の回転速度Nmとを算出する。
車両は、エンジン10の燃焼制御を行う制御装置であるエンジンECU11と、車両の制御を統括する制御装置である上位ECU12とを備えている。制御装置60、エンジンECU11及び上位ECU12は、CAN等の通信線により情報のやり取りが可能とされている。
エンジンECU11は、エンジン10のアイドリング運転中の燃焼制御として、通常時制御と、アイドルアップ制御とを行う。通常時制御は、出力軸10aの回転速度であるエンジン回転速度Nerを第1指令回転速度Netgt1に制御するための燃焼制御である。アイドルアップ制御は、エンジン回転速度Nerを、第1指令回転速度Netgt1よりも高い第2指令回転速度Netgt2に制御するための燃焼制御である。各指令回転速度Netgt1,Netgt2は、エンジン10の冷却水の温度等に応じて可変設定される。エンジンECU11は、所定の条件が成立したと判定した場合、通常時制御からアイドルアップ制御に切り替える。所定の条件は、例えば、出力軸10aの動力により駆動される車載機器の消費動力が所定動力以上になったとの条件である。この場合の車載機器には、回転電機30も含まれる。
以下、本実施形態では、回転電機30を発電機として駆動させる場合について説明する。図3に、制御装置60が行う正弦波PWM制御モードのブロック図を示す。本実施形態において、制御装置60のうち、図3に示す処理を行う構成が正弦波制御部に相当する。
電圧偏差算出部61は、指令発電電圧VD*から、電圧検出部50により検出された電源電圧VDCを減算することにより、電圧偏差ΔVを算出する。指令発電電圧VD*は、インバータ40からバッテリ20に出力する直流電圧の指令値である。指令発電電圧VD*は、例えば、上位ECU12から制御装置60へと入力される。
トルク算出部62は、電圧偏差ΔVを0にフィードバック制御するための操作量として、回転電機30の制御量の指令値を算出する。本実施形態において、制御量はトルクであり、その指令値は指令トルクTrq*である。また、本実施形態において、トルク算出部62で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御である。なお、フィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば比例積分微分制御であってもよい。
d軸指令設定部71は、指令トルクTrq*に基づいて、回転電機30のトルクを指令トルクTrq*とするためのd軸指令電流Id*を設定する。具体的には、d軸指令設定部71は、指令トルクTrq*とd軸指令電流Id*とが関係付けられたマップ情報に基づいて、d軸指令電流Id*を設定する。q軸指令設定部72は、指令トルクTrq*に基づいて、回転電機30のトルクを指令トルクTrq*とするためのq軸指令電流Iq*を設定する。具体的には、q軸指令設定部72は、指令トルクTrq*とq軸指令電流Iq*とが関係付けられたマップ情報に基づいて、q軸指令電流Iq*を設定する。上記マップ情報は、メモリ60aに記憶されている。
2相変換部70は、相電流検出部51により検出された相電流及び電気角θeに基づいて、回転電機30の3相固定座標系におけるU,V,W相電流IU,IV,IWを、2相回転座標系であるdq座標系におけるd,q軸電流Idr,Iqrに変換する。
ステータ制御部73は、d軸電流Idrをd軸指令電流Id*にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vd*を算出する。具体的には、ステータ制御部73は、d軸指令電流Id*からd軸電流Idrを減算した値としてd軸電流偏差ΔIdを算出し、算出したd軸電流偏差ΔIdを0にフィードバック制御するための操作量として、d軸指令電圧Vd*を算出する。
ステータ制御部73は、q軸電流Iqrをq軸指令電流Iq*にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vq*を算出する。具体的には、ステータ制御部73は、q軸指令電流Iq*からq軸電流Iqrを減算した値としてq軸電流偏差ΔIqを算出し、算出したq軸電流偏差ΔIqを0にフィードバック制御するための操作量として、q軸指令電圧Vq*を算出する。
なお、本実施形態において、ステータ制御部73で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御である。なお、フィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば比例積分微分制御であってもよい。
d軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*により、dq座標系における電圧ベクトルの指令値である指令電圧ベクトルが定まる。ここで、ステータ巻線に印加される電圧ベクトルVtrは、図4に示すように、そのd軸成分がd軸電圧Vdとなり、q軸成分がq軸電圧Vqとなるものである。本実施形態において、電圧ベクトルVtrの位相である電圧位相δは、d軸の正方向を基準とし、この基準から反時計回りの方向が正方向として定義されている。
3相変換部74は、d,q軸指令電圧Vd*,Vq*及び電気角θeに基づいて、d,q軸指令電圧Vd*,Vq*を、3相固定座標系におけるU,V,W相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*に変換する。本実施形態において、U,V,W相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*は、電気角で位相が120°ずれた正弦波状の波形となる。
ステータ生成部75は、キャリア信号、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*及び電源電圧VDCに基づいて、正弦波PWM制御により、インバータ40の各スイッチSUp~SWnをオンオフするための各駆動信号を生成する。詳しくは、ステータ生成部75は、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*のピーク値が電源電圧VDC以下となる場合、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*を「VDC/2」で除算した値と、キャリア信号との大小比較に基づいて、インバータ40の各スイッチSUp~SWnの駆動信号を生成する。本実施形態において、キャリア信号は、三角波信号である。正弦波PWM制御において、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*の振幅を「VDC/2」で除算した値は、キャリア信号の振幅以下である。
本実施形態において、2相変換部70、d,q軸指令設定部71,72、ステータ制御部73、3相変換部74及びステータ生成部75が正弦波制御部に相当する。正弦波制御部によれば、d,q軸指令電圧Vd*,Vq*により定まる指令電圧ベクトルに実際の電圧ベクトルが制御される。
界磁指令設定部80は、指令トルクTrq*、回転速度Nm及び電源電圧VDCに基づいて、界磁指令電流If*を設定する。具体的には、界磁指令設定部80は、指令トルクTrq*、回転速度Nm(回転速度パラメータに相当)及び電源電圧VDCと界磁指令電流If*とが関係付けられたマップ情報であって、正弦波PWM制御で用いられる正弦波マップ情報(第1情報に相当)に基づいて、界磁指令電流If*を設定する。正弦波マップ情報では、図12(b)及び図13(b)に示すように、ロータ31の回転速度Nmが大きいほど界磁指令電流If*が大きくなるように回転速度Nmと界磁指令電流If*とが関係付けられている。正弦波マップ情報は、メモリ60aに記憶されている。
界磁電流制御部81は、界磁電流検出部52により検出された界磁電流Ifrを界磁指令電流If*にフィードバック制御するための操作量として、界磁指令電圧Vf*を算出する。具体的には、界磁電流制御部81は、界磁指令電流If*から界磁電流Ifrを減算した値として界磁電流偏差ΔIfを算出し、算出した界磁電流偏差ΔIfを0にフィードバック制御するための操作量として、界磁指令電圧Vf*を算出する。なお、本実施形態において、界磁電流制御部81で用いられるフィードバック制御は、比例積分制御である。なお、フィードバック制御としては、比例積分制御に限らず、例えば比例積分微分制御であってもよい。
界磁生成部82は、界磁指令電圧Vf*及び電源電圧VDCに基づいて、界磁巻線32の印加電圧を界磁指令電圧Vf*に制御するための界磁通電回路41の各スイッチSH1~SL2の各駆動信号を生成する。
なお、本実施形態において、界磁指令設定部80、界磁電流制御部81及び界磁生成部82が界磁制御部に相当する。
図5に、正弦波PWM制御が実行される場合における1相分の各波形の推移を示す。図5(a),(b)は、インバータ40の上,下アームスイッチの駆動信号の推移を示し、図5(c)は、相電流、相電圧の推移を示す。
続いて、図6に、制御装置60が行う同期整流制御のブロック図を示す。なお、本実施形態において、制御装置60のうち、図6に示す処理を行う構成が同期整流制御部に相当する。
同期整流制御は、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*のピーク値が電源電圧VDCを上回って、かつ、各相巻線34U~34Wの発電電圧のピーク値が電源電圧VDCを上回る場合に実施される。同期整流制御では、インバータ40のスイッチに逆並列接続されたボディダイオードに電流が流れようとする期間に、電流が流れようとするダイオードに逆並列接続されたスイッチがオンされる。各相において、ボディダイオードに電流が流れようとする期間は、各相の発電電圧のピーク値が電源電圧VDCを上回る期間である。同期整流制御では、各相において、1電気角周期のうち、発電電圧が電源電圧VDCを上回る期間の少なくとも一部において上アームスイッチが1回オン駆動される。これにより、各相巻線34U~34Wから出力される交流電流が直流電流に変換される。
同期生成部93は、電気角θe、インバータ40の上,下アームスイッチのデッドタイムDT、及び指令電圧位相δ*に基づいて、インバータ40の各スイッチSUp~SWnをオンオフするための各駆動信号を生成する。指令電圧位相δ*は、回転電機30のトルクを指令トルクTrq*とするための電圧位相δの指令値である。同期生成部93により生成された駆動信号は、各相の1電気角周期において、上アームスイッチ及び下アームスイッチのそれぞれを1回ずつオンさせる信号となる。この駆動信号は、各相それぞれで位相が電気角で120°ずれている。
界磁指令設定部80は、指令トルクTrq*、回転速度Nm及び電源電圧VDCに基づいて、界磁指令電流If*を設定する。具体的には、界磁指令設定部80は、指令トルクTrq*、回転速度Nm及び電源電圧VDCと界磁指令電流If*とが関係付けられたマップ情報であって、同期整流制御で用いられる同期整流マップ情報(第2情報に相当)に基づいて、界磁指令電流If*を設定する。同期整流マップ情報では、図12(b)及び図13(b)に示すように、ロータ31の回転速度Nmが大きいほど界磁指令電流If*が大きくなるように回転速度Nmと界磁指令電流If*とが関係付けられている。同期整流マップ情報は、メモリ60aに記憶されている。
なお、図6において、電圧偏差算出部61、トルク算出部62、界磁電流制御部81及び界磁生成部82は、図3に示した構成と同じである。
図7に、同期整流制御が実行される場合における1相分の各波形の推移を示す。図7(a)~図7(c)は、図5(a)~図5(c)に対応している。図7に、同期整流制御において設定されるデッドタイムをDT1にて示す。
続いて、制御系の応答性について説明する。d,q軸電流Idr,Iqrをd,q軸指令電流Id*,Iq*に制御する制御系を正弦波電流制御系と称し、界磁電流Ifrを界磁指令電流If*に制御する制御系を界磁電流制御系と称すこととする。本実施形態では、d,q軸指令電流Id*,Iq*の変化に対する正弦波電流制御系によるd,q軸電流Idr,Iqrの応答性が、界磁指令電流If*の変化に対する界磁電流制御系による界磁電流Ifrの応答性よりも高くされている。正弦波電流制御系の応答性が界磁電流制御系の応答性よりも高いのは、例えば、界磁巻線32のインダクタンスがステータ巻線のインダクタンスよりも大きいにもかかわらず、バッテリ20によって界磁巻線32に印加可能な電圧が十分でないためである。
ちなみに、制御系の応答性の高低は、例えば以下の(A)~(C)で定めることができる。
(A)閉ループ伝達関数
図8(a)を用いて、界磁指令電流If*を入力とし、界磁電流Ifrを出力とする閉ループ伝達関数Gcf(s)について説明する。G1(s)で表される第1伝達関数101は、界磁電流偏差ΔIfを入力とし、界磁電流偏差ΔIfを0にフィードバック制御するための操作量である界磁巻線32の印加電圧Vfを出力する。第1伝達関数101が界磁電流制御部81に相当する。
界磁巻線32の周波数特性をモデル化したG2(s)で表される第2伝達関数102は、プラントに相当する。第2伝達関数102は、界磁巻線32の印加電圧Vfを入力として、界磁電流Ifrを出力する。
界磁電流制御系の閉ループ伝達関数Gcf(s)は、下式(eq1)で表される。
続いて、図8(b)を用いて、dq軸間の非干渉化がなされている場合において、d軸指令電流Id*を入力とし、d軸電流Idrを出力とする閉ループ伝達関数Gcd(s)について説明する。G3(s)で表される第3伝達関数201は、d軸電流偏差ΔIdを入力とし、d軸電流偏差ΔIdを0にフィードバック制御するための操作量であるd軸電圧Vdを出力する。第3伝達関数201がステータ制御部73に相当する。
ステータ巻線の周波数特性をモデル化したG4(s)で表される第4伝達関数202は、プラントに相当する。第4伝達関数202は、d軸電圧Vdを入力として、d軸電流Idrを出力する。
d軸の正弦波電流制御系の閉ループ伝達関数Gcd(s)は、下式(eq2)で表される。
なお、q軸の正弦波電流制御系は、d軸の正弦波電流制御系と同様であるため、その説明を省略する。
図9に示すように、制御系の閉ループ伝達関数のゲインに関する周波数特性において、ゲインが0dB未満の所定値(例えば-3dB)になる周波数が応答周波数として定義されている。本実施形態では、d,q軸の正弦波電流制御系の閉ループ伝達関数の応答周波数が、界磁電流制御系の閉ループ伝達関数Gcf(s)の応答周波数よりも高い。なお、本実施形態において、矩形波電流制御系の応答周波数は、界磁電流制御系の応答周波数よりも高い。
ちなみに、応答周波数は、例えば、閉ループ伝達関数に基づいて解析的に算出されてもよいし、シミュレーションに基づいて算出されてもよい。また、例えば、応答周波数は、実際の制御システム及び制御装置60を用いて実験的に算出されてもよい。
(B)開ループ伝達関数
開ループ伝達関数のゲイン交差角周波数が高いほど、応答性が高くなる。このため、ゲイン交差角周波数で応答性の高低を定めてもよい。なお、界磁電流制御系を例にして説明すると、この制御系の開ループ伝達関数Gof(s)は、下式(eq3)で表される。
(C)時定数
図10に示すように、ステップ状に変化させられた指令値と実値とに基づいて規定される時定数τが短いほど、応答性が高くなる。このため、時定数τで応答性の高低を定めてもよい。
続いて、エンジン10のアイドリング運転中における制御モードの移行制御処理について説明する。この処理は、制御装置60により実行され、算出したロータ31の回転速度Nmが第2ロータ閾値Nth2以上になったと判定された場合、正弦波PWM制御から同期整流制御に切り替え、回転速度Nmが、第2ロータ閾値Nth2よりも小さい第1ロータ閾値Nth1以下になったと判定された場合、同期整流制御から正弦波PWM制御に切り替える処理である。ここで、本実施形態の第1ロータ閾値Nth1及び第2ロータ閾値Nth2について説明する。
図12を参照して、第1指令回転速度Netgt1に対応するロータ31の回転速度を第1ロータ回転速度Nm1とする。第1ロータ回転速度Nm1は、プーリ比等により定まる出力軸10aからロータ31までの変速比と、第1指令回転速度Netgt1とに基づいて定まる。例えば、第1指令回転速度Netgt1が700rpmであり、変速比が3である場合、第1ロータ回転速度Nm1は2100rpmとなる。
第2指令回転速度Netgt2に対応するロータ31の回転速度を第2ロータ回転速度Nm2(>Nm1)とする。第2ロータ回転速度Nm2は、プーリ比等により定まる出力軸10aからロータ31までの変速比と、第2指令回転速度Netgt2とに基づいて定まる。
通常時制御が行われている場合における第1指令回転速度Netgt1に対するエンジン回転速度Nerの高回転側への最大想定変動量を第1エンジン変動量ΔNe1(>0)とし、第1エンジン変動量ΔNe1に対応するロータ31の回転速度の変動量を第1ロータ変動量ΔNm1とする。すなわち、通常時制御が行われている場合においてロータ31の回転速度Nmが取り得る最大値は「Nm1+ΔNm1」である。第1ロータ変動量ΔNm1は、プーリ比等により定まる出力軸10aからロータ31までの変速比と、第1エンジン変動量ΔNe1とに基づいて定まる。例えば、第1エンジン変動量ΔNe1が80rpmであり、変速比が3である場合、第1ロータ変動量ΔNm1は240rpmとなる。
図13を参照して、アイドルアップ制御が行われている場合における第2指令回転速度Netgt2に対するエンジン回転速度Nerの低回転側への最大想定変動量を第2エンジン変動量ΔNe2(>0)とし、第2エンジン変動量ΔNe2に対応するロータ31の回転速度の変動量を第2ロータ変動量ΔNm2とする。すなわち、アイドルアップ制御が行われている場合においてロータ31の回転速度Nmが取り得る最小値は「Nm2-ΔNm2」である。
第1ロータ閾値Nth1は、第1ロータ回転速度Nm1以上であってかつ第2ロータ回転速度Nm2から第2ロータ変動量ΔNm2を減算した値よりも小さい値に設定されている。本実施形態において、第1ロータ閾値Nth1は、第1ロータ回転速度Nm1及び第1ロータ変動量ΔNm1の加算値よりも高い値に設定されている。第1ロータ閾値Nth1に対応するエンジン回転速度を第1エンジン閾値Eth1と称し、第1ロータ回転速度Nm1及び第1ロータ変動量ΔNm1の加算値に対応するエンジン回転速度を第1エンジン最大値Ne1Hと称すこととする。
第2ロータ閾値Nth2は、第1ロータ回転速度Nm1及び第1ロータ変動量ΔNm1の加算値と第1ロータ閾値Nth1とのそれぞれよりも大きくて、かつ、第2ロータ回転速度Nm2以下の値に設定されている。本実施形態において、第2ロータ閾値Nth2は、第2ロータ回転速度Nm2から第2ロータ変動量ΔNm2を減算した値よりも低い値に設定されている。第2ロータ閾値Nth2に対応するエンジン回転速度を第2エンジン閾値Eth2と称し、第2ロータ回転速度Nm2から第2ロータ変動量ΔNm2を減算した値に対応するエンジン回転速度を第2エンジン最小値Ne2Lと称すこととする。
図11に、アイドリング運転中における移行制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置60により、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
ステップS11では、今回の制御周期において、算出したロータ31の回転速度Nmが第2ロータ閾値Nth2以上になったか否かを判定する。ステップS11で肯定判定されるのは、例えば、エンジン10の燃焼制御が、通常時制御からアイドルアップ制御に切り替えられた場合である。ステップS11において否定判定した場合には、ステップS12に進み、今回の制御周期において、算出したロータ31の回転速度Nmが第1ロータ閾値Nth1以下になったか否かを判定する。ステップS12で肯定判定されるのは、例えば、エンジン10の燃焼制御が、アイドルアップ制御から通常時制御に切り替えられた場合である。
ステップS12において肯定判定した場合には、ステップS13に進み、判定フラグFを0にする。判定フラグFは、0によって正弦波PWM制御の実行を指示し、1によって同期整流制御の実行を指示する。なお、本実施形態において、判定フラグFの初期値は0とされている。
ステップS11において肯定判定した場合には、ステップS14に進み、判定フラグFを1にする。ステップS12において否定判定した場合には、現在実行されている制御が継続される。
ステップS13,S14の処理が完了した場合、又はステップS12において否定判定した場合には、ステップS15に進む。ステップS15では、判定フラグFが1であるか否かを判定する。ステップS15において判定フラグFが0であると判定した場合には、ステップS16に進み、先の図3に示した正弦波PWM制御を実行する。一方、ステップS16において判定フラグFが1であると判定した場合には、ステップS17に進み、先の図6に示した同期整流制御を実行する。
続いて、図12及び図13を用いて、界磁指令電流If*の設定方法について説明する。本実施形態において、界磁指令設定部80は、図12及び図13に示すように、正弦波PWM制御及び同期整流制御のうち、一方の制御から他方の制御への切り替え前後において、界磁指令電流If*を不連続に設定する。図12(a)及び図13(a)は、高電位側電気経路Lpのうちコンデンサ21の高電位側端子との接続点からバッテリ20の正極端子側へと流れる直流電流IDCとエンジン回転速度Nerとの関係を示す。図12(b)及び図13(b)は、界磁指令電流If*とエンジン回転速度Nerとの関係を示し、図12(c)及び図13(c)は、回転電機30の発電トルクTrqrとエンジン回転速度Nerとの関係を示す。
通常時制御からアイドルアップ制御に切り替えられる場合、図12に示すように、正弦波PWM制御から同期整流制御に切り替えられる。この場合、同期整流制御に切り替えられた直後の制御周期において同期整流マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*が、同期整流制御に切り替えられる直前の制御周期において正弦波マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*よりも大きい。すなわち、正弦波PWM制御から同期整流制御に切り替えられる場合において、正弦波マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*の最大値は、同期整流マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*の最小値よりも小さくされている。以下、このように設定される理由について、比較例と対比しつつ説明する。
図14(b)に示すように、正弦波PWM制御から同期整流制御への切り替え前後において界磁指令電流If*が連続するように設定され、制御の切り替え前後において実際の界磁電流が連続にされる構成を比較例とする。比較例では、制御の切り替え前後において回転電機30の発電トルクが大きく減少してしまう。これは、ステータ巻線及びインバータ40を含む電流経路において発生する損失が正弦波PWM制御よりも同期整流制御の方が小さくなり、指令発電電圧VD*とするためにステータ巻線に流れる電流が制御の切り替え前後において減少するためである。正弦波PWM制御により発生する損失よりも同期整流制御により発生する損失の方が小さくなる理由は、例えば、同期整流制御により発生するスイッチング損失が、正弦波PWM制御により発生するスイッチング損失よりも小さいためである。
この点に鑑み、正弦波PWM制御から同期整流制御に切り替えられる場合、同期整流制御に切り替えられた直後の実際の界磁電流が、同期整流制御に切り替えられる直前の実際の界磁電流よりも大きくなるように、図12(b)に示す態様で界磁指令電流If*が設定される。これにより、正弦波PWM制御から同期整流制御に切り替えられる場合における発電トルクの低下を抑制することができ、制御が切り替えられる場合における発電トルクと指令トルクTrq*とのずれを抑制できる。その結果、発電トルクの変動を抑制できる。
一方、アイドルアップ制御から通常時制御に切り替えられる場合、図13に示すように、同期整流制御から正弦波PWM制御に切り替えられる。この場合、正弦波PWM制御に切り替えられた直後の制御周期において正弦波マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*が、正弦波PWM制御に切り替えられる直前の制御周期において同期整流マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*よりも小さい。以下、このように設定される理由について、比較例と対比しつつ説明する。
図15(b)に示すように、同期整流制御から正弦波PWM制御への切り替え前後において界磁指令電流If*が連続するように設定され、制御の切り替え前後において実際の界磁電流が連続にされる構成を比較例とする。比較例では、制御の切り替え前後において回転電機30の発電トルクが大きく増加してしまう。これは、ステータ巻線及びインバータ40を含む電流経路において発生する損失が同期整流制御よりも正弦波PWM制御の方が大きくなり、指令発電電圧VD*とするためにステータ巻線に流れる電流が制御の切り替え前後において増加するためである。
この点に鑑み、同期整流制御から正弦波PWM制御に切り替えられる場合、正弦波PWM制御に切り替えられた直後の実際の界磁電流が、正弦波PWM制御に切り替えられる直前の実際の界磁電流よりも小さくなるように、図13(b)に示す態様で界磁指令電流If*が設定される。これにより、同期整流制御から正弦波PWM制御に切り替えられる場合における発電トルクの増加を抑制することができ、制御が切り替えられる場合における発電トルクと指令トルクTrq*とのずれを抑制できる。その結果、発電トルクの変動を抑制できる。
<第1実施形態の変形例>
・正弦波マップ情報は、ロータ31の回転速度Nmに代えて、エンジン回転速度Nerが大きいほど界磁指令電流If*が大きくなるようにエンジン回転速度Nerと界磁指令電流If*とが関係付けられた情報であってもよい。この場合、界磁指令設定部80は、取得したエンジン回転速度Ner、電源電圧VDC及び指令トルクTrqと、正弦波マップ情報とに基づいて、界磁指令電流If*を設定すればよい。なお、同期整流マップ情報についても同様に、ロータ31の回転速度Nmに代えて、エンジン回転速度Nerが界磁指令電流If*と関係付けられていてもよい。
・回転速度Nm等と界磁指令電流If*とが関係付けられた情報としては、マップ情報に限らず、例えば、回転速度Nm等と界磁指令電流If*とが関係付けられた数式の情報であってもよい。
・第2ロータ閾値Nth2は、例えば、第2ロータ回転速度Nm2に設定されていてもよい。また、第1ロータ閾値Nth1は、第1ロータ回転速度Nm1に設定されていてもよい。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、先の図3のステータ生成部75は、キャリア信号、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*及び電源電圧VDCに基づいて、正弦波PWM制御又は過変調PWM制御により、インバータ40の各スイッチSUp~SWnをオンオフ駆動するための各駆動信号を生成する。
過変調PWM制御について説明すると、ステータ生成部75は、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*のピーク値が電源電圧VDCを上回る場合、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*を「VDC/2」で除算した値と、キャリア信号との大小比較に基づいて、インバータ40の各スイッチSUp~SWnの駆動信号を生成する。過変調PWM制御において、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*の振幅を「VDC/2」で除算した値は、キャリア信号の振幅よりも大きい。図16に、過変調PWM制御が実行される場合における1相分の各波形の推移を示す。図16(a)~図16(c)は、図5(a)~図5(c)に対応している。
一方、先の図6の同期生成部93は、矩形波制御又は同期整流制御を行う。矩形波制御は、各相指令電圧Vu*,Vv*,Vw*のピーク値が電源電圧VDCを上回って、かつ、各相巻線34U~34Wの発電電圧(つまり逆起電圧)のピーク値が電源電圧VDC以下になる場合に実施される。図17に、矩形波制御が実行される場合における1相分の各波形の推移を示す。図17(a)~図17(c)は、図5(a)~図5(c)に対応している。図17に、矩形波制御において設定されるデッドタイムをDT2にて示す。本実施形態において、DT2は、図7に示したDT1よりも短い。DT1は、例えば、正弦波PWM制御、過変調PWM制御及び矩形波制御において設定され得るデッドタイムの範囲の最大値よりも長い時間に設定されている。
本実施形態では、移行制御処理において、正弦波PWM制御から同期整流制御に移行させる場合、正弦波PWM制御、過変調PWM制御、矩形波制御及び同期整流制御の順に切り替えられる。一方、同期整流制御から正弦波PWM制御に移行させる場合、同期整流制御、矩形波制御、過変調PWM制御及び正弦波PWM制御の順に切り替えられる。
図18を用いて、本実施形態に係る移行制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置60により、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。図18において、先の図11に示した処理又はこの処理と対応する処理については、便宜上、同一の符号を付している。
ステップS15において判定フラグFが1であると判定した場合には、ステップS20に進み、第1処理を行う。図19に、第1処理の手順を示す。
ステップS201では、前回の制御周期における制御が正弦波PWM制御であったか否かを判定する。
ステップS201において正弦波PWM制御であったと判定した場合には、ステップS202に進み、過変調PWM制御への切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれるか否かを判定する。この判定方法の一例として、本実施形態では、今回の制御周期において変調率Mrが第1変調率Ma(例えば1)を超えたと判定した場合、切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれると判定する。本実施形態において、変調率Mrは、「Vn/VDC」として算出され、Vnは、電圧ベクトルの大きさである電圧振幅を示す。電圧振幅Vnは、例えば、d軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*に基づいて算出されればよい。
ステップS202において否定判定した場合には、ステップS203に進み、先の図3に示した構成により正弦波PWM制御を行う。一方、ステップS202において肯定判定した場合には、ステップS204に進み、先の図3に示した構成により過変調PWM制御を行う。
ステップS201において否定判定した場合には、ステップS205に進み、前回の制御周期における制御が過変調PWM制御であったか否かを判定する。
ステップS205において過変調PWM制御であったと判定した場合には、ステップS206に進み、矩形波制御への切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれるか否かを判定する。この判定方法の一例として、本実施形態では、今回の制御周期において変調率Mrが、第1変調率Maよりも大きい第2変調率Mb(例えば1.27)を超えたと判定した場合、切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれると判定する。
ステップS206において否定判定した場合には、ステップS204に進む。一方、ステップS206において肯定判定した場合には、ステップS207に進み、過変調PWM制御から矩形波制御に切り替える。矩形波制御は、先の図6に示した構成により行われる。
ステップS205において否定判定した場合には、ステップS208に進み、前回の制御周期における制御が矩形波制御であったか否かを判定する。
ステップS208において矩形波制御であったと判定した場合には、ステップS209に進み、同期整流制御への切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれるか否かを判定する。この判定方法の一例として、本実施形態では、ロータ31の回転速度Nmが閾値速度よりも高いと判定した場合、切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれると判定する。閾値速度は、発電電圧がバッテリ20の出力電圧よりも高くなっているか否かを判定可能な値に設定されている。
ステップS209において否定判定した場合には、ステップS207に進む。一方、ステップS209において肯定判定した場合には、ステップS210に進み、矩形波制御から同期整流制御に切り替える。同期整流制御は、先の図6に示した構成により行われる。
先の図18の説明に戻り、ステップS15において判定フラグFが0であると判定した場合には、ステップS30に進み、第2処理を行う。図20に、第2処理の手順を示す。
ステップS301では、前回の制御周期における制御が同期整流制御であったか否かを判定する。
ステップS301において同期整流制御であったと判定した場合には、ステップS302に進み、矩形波制御への切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれるか否かを判定する。この判定方法の一例として、本実施形態では、ロータ31の回転速度Nmが閾値速度以下である判定した場合、切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれると判定する。
ステップS302において否定判定した場合には、ステップS303に進み、先の図6に示した構成により同期整流制御を行う。一方、ステップS302において肯定判定した場合には、ステップS304に進み、先の図6に示した構成により矩形波制御を行う。
ステップS301において否定判定した場合には、ステップS305に進み、前回の制御周期における制御が矩形波制御であったか否かを判定する。
ステップS305において矩形波制御であったと判定した場合には、ステップS306に進み、過変調PWM制御への切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれるか否かを判定する。この判定方法の一例として、本実施形態では、今回の制御周期において変調率Mrが第2変調率Mb以下になったと判定した場合、切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれると判定する。
ステップS306において否定判定した場合には、ステップS304に進む。一方、ステップS306において肯定判定した場合には、ステップS307に進み、矩形波制御から過変調PWM制御に切り替える。
ステップS305において否定判定した場合には、ステップS308に進み、前回の制御周期における制御が過変調PWM制御であったか否かを判定する。
ステップS308において過変調PWM制御であったと判定した場合には、ステップS309に進み、正弦波PWM制御への切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれるか否かを判定する。この判定方法の一例として、本実施形態では、今回の制御周期において変調率Mrが第1変調率Ma以下になったと判定した場合、切り替えタイミングが今回の制御周期に含まれると判定する。
ステップS309において否定判定した場合には、ステップS307に進む。一方、ステップS309において肯定判定した場合には、ステップS310に進み、過変調PWM制御から正弦波PWM制御に切り替える。
図21~図24に、各制御時においてステータ巻線(各相巻線34U,34V,34W)に印加される電圧ベクトルについて説明する。図21~図24それぞれに示す例では、ステータ巻線に流れる電流の影響を説明するために、便宜上、界磁電流を同一としている。図21~図24において、VINVは、各制御において指令されるd,q軸電圧Vd*,Vq*から定まる指令電圧ベクトルを示し、VKは、界磁電流が流れることによりステータ巻線に誘起される電圧ベクトルを示し、VRは、ステータ巻線の抵抗成分による電圧降下量に対応する電圧ベクトルを示す。また、C1は、変調率Mrが1の場合に指令電圧ベクトルが描く仮想円を示し、C2は、変調率Mrが1.27の場合に指令電圧ベクトルが描く仮想円を示す。
図21に、正弦波PWM制御時における電圧ベクトルを示す。V1は、ステータ巻線に最終的に印加される電圧ベクトルを示し、VINV、VK、VRの合成ベクトルである。図22に、過変調PWM制御時における電圧ベクトルを示す。V2は、ステータ巻線に最終的に印加される電圧ベクトルを示し、VINV、VK、VRの合成ベクトルである。
図23に、矩形波制御時における電圧ベクトルを示す。V3は、ステータ巻線に最終的に印加される電圧ベクトルを示し、VINV、VK、VRの合成ベクトルである。図24に、同期整流制御時における電圧ベクトルを示す。図24において、VDTは、デッドタイムDT1に対応する電圧ベクトルを示す。V4は、ステータ巻線に最終的に印加される電圧ベクトルを示し、VINV、VK、VR、VDTの合成ベクトルである。同期整流制御では、デッドタイムDT1が長いため、VDTの影響を無視できない。
例えば過変調PWM制御から同期整流制御に直接切り替えられると、過変調PWM制御時における電圧ベクトルV2の電圧振幅と同期整流制御時における電圧ベクトルV4の電圧振幅との差が大きいことに起因して、回転電機30の発電トルクの変動が大きくなってしまう。これに対し、本実施形態では、正弦波PWM制御の後、過変調PWM制御から矩形波制御を介して同期整流制御に切り替えられる。これにより、過変調PWM制御時における電圧ベクトルV2の電圧振幅と矩形波制御時における電圧ベクトルV3の電圧振幅との差、及び矩形波制御時における電圧ベクトルV3の電圧振幅と同期整流制御時における電圧ベクトルV4の電圧振幅との差のそれぞれを、過変調PWM制御時における電圧ベクトルV2の電圧振幅と同期整流制御時における電圧ベクトルV4の電圧振幅との差よりも小さくできる。その結果、正弦波PWM制御及び同期整流制御のうち、一方から他方に移行させる場合に生じる電圧振幅の変動を抑制でき、ひいては回転電機30の発電トルクの変動の抑制度合いを高めることができる。
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
界磁指令設定部80は、ロータ31の回転速度Nmが第2ロータ閾値Nth2以上になったと判定した場合における実際の界磁電流Ifrが、同期整流制御に切り替えられた直後の制御周期において同期整流マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If以下であると判定した場合、同期整流制御に切り替えられた直後の制御周期において同期整流マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*を所定値ΔF(>0)増大させる。これは、正弦波PWM制御から同期整流制御に切り替えられる場合における回転電機30の発電トルクの変動を抑制するためのものである。
つまり、発電トルクの変動を抑制するためには、第1実施形態で説明したように、同期整流制御に切り替えられた直後の実際の界磁電流Ifrが、同期整流制御に切り替えられる直前の実際の界磁電流Ifrよりも大きくなるようにすることが要求される。しかし、界磁電流Ifrの応答性がステータ巻線に流れる電流の応答性よりも低いことに起因して、同期整流制御に切り替えられた直後の実際の界磁電流Ifrが、同期整流制御に切り替えられた直後に同期整流マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*以下になることがある。この場合、同期整流制御に切り替えられた直後の実際の界磁電流Ifrを、同期整流制御に切り替えられる直前の実際の界磁電流Ifrよりも大きくすることができず、発電トルクの変動を抑制することができないおそれがある。この問題に対処すべく、界磁指令電流If*を所定値ΔF増大させる。
一方、界磁指令設定部80は、ロータ31の回転速度Nmが第1ロータ閾値Nth1以下になったと判定した場合における実際の界磁電流Ifrが、正弦波PWM制御に切り替えられた直後の制御周期において正弦波マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*以上であると判定した場合、正弦波PWM制御に切り替えられた直後の制御周期において正弦波マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*を所定値ΔF減少させる。これは、同期整流制御から正弦波PWM制御に切り替えられる場合における回転電機30の発電トルクの変動を抑制するためのものである。
つまり、発電トルクの変動を抑制するためには、第1実施形態で説明したように、正弦波PWM制御に切り替えられた直後の実際の界磁電流Ifrが、正弦波PWM制御に切り替えられる直前の実際の界磁電流Ifrよりも小さくなるようにすることが要求される。しかし、界磁電流Ifrの応答性がステータ巻線に流れる電流の応答性よりも低いことに起因して、正弦波PWM制御に切り替えられた直後の実際の界磁電流Ifrが、正弦波PWM制御に切り替えられた直後に正弦波マップ情報に基づいて設定される界磁指令電流If*以上になることがある。この場合、正弦波PWM制御に切り替えられた直後の実際の界磁電流Ifrを、正弦波PWM制御に切り替えられる直前の実際の界磁電流Ifrよりも小さくすることができず、発電トルクの変動を抑制することができないおそれがある。この問題に対処すべく、界磁指令電流If*を所定値ΔF減少させる。
図25に、移行制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置60により、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
ステップS40では、今回の制御周期においてロータ31の回転速度Nmが第2ロータ閾値Nth2以上になったか否かを判定する。
ステップS40において肯定判定した場合には、ステップS41に進み、正弦波PWM制御が実施されていた前回の制御周期において検出された界磁電流Ifrが、同期整流制御に切り替えられる今回の制御周期において同期整流マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*よりも大きいか否かを判定する。
ステップS41において界磁電流Ifrが界磁指令電流If*よりも大きいと判定した場合には、ステップS42に進み、同期整流制御において、同期整流マップ情報に基づいて設定した界磁指令電流If*を界磁電流制御部81においてそのまま用いる。
一方、ステップS41において界磁電流Ifrが界磁指令電流If*以下であると判定した場合には、ステップS43に進む。ステップS43では、同期整流制御において、同期整流マップ情報に基づいて設定した界磁指令電流If*に所定値ΔF加算した値を、界磁電流制御部81において用いる。
なお、ステップS43の処理の後、界磁指令電流If*を、制御周期毎に、同期整流マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*に向かって漸近させればよい。
ステップS40において否定判定した場合には、ステップS44に進み、今回の制御周期においてロータ31の回転速度Nmが第1ロータ閾値Nth1以下になったか否かを判定する。
ステップS44において肯定判定した場合には、ステップS45に進み、同期整流制御が実施されていた前回の制御周期において検出された界磁電流Ifrが、正弦波PWM制御に切り替えられる今回の制御周期において正弦波マップ情報に基づいて設定した界磁指令電流If*よりも小さいか否かを判定する。
ステップS45において界磁電流Ifrが界磁指令電流If*よりも小さいと判定した場合には、ステップS46に進み、正弦波PWM制御において、正弦波マップ情報に基づいて設定した界磁指令電流If*を界磁電流制御部81においてそのまま用いる。
一方、ステップS45において界磁電流Ifrが界磁指令電流If*以上であると判定した場合には、ステップS47に進む。ステップS47では、正弦波PWM制御において、正弦波マップ情報に基づいて設定した界磁指令電流If*から所定値ΔF減算した値を、界磁電流制御部81において用いる。
なお、ステップS47の処理の後、界磁指令電流If*を、制御周期毎に、正弦波マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*に向かって漸近させればよい。
以上説明した本実施形態によれば、正弦波PWM制御及び同期整流制御のうち、一方から他方に切り替えられる場合における発電トルクの変動を抑制することができる。
<第3実施形態の変形例>
・図25のステップS43における所定値ΔFと、ステップS47における所定値ΔFとが異なっていてもよい。この場合、ステップS43における所定値ΔFを第1所定値とし、ステップS47における所定値ΔFを第2所定値とすればよい。
・界磁指令電流If*を所定値ΔF増大させる構成、及び界磁指令電流If*を所定値ΔF減少させる構成のうち、一方の構成が実施されなくてもよい。
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図26及び図27に示すように、制御装置60にローパスフィルタが備えられている。図26,図27において、先の図3,図6に示した構成又はその構成に対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
第1フィルタ部301は、検出された電源電圧VDCにローパスフィルタ処理を施す。ローパスフィルタ処理が施された電源電圧VDCは、電圧偏差算出部61で用いられる。
第2フィルタ部302は、トルク算出部62により算出された指令トルクTrq*にローパスフィルタ処理を施す。ローパスフィルタ処理が施された指令トルクTrq*は、d,q軸指令設定部71,72及び界磁指令設定部80で用いられる。
第3フィルタ部303は、算出されたロータ31の回転速度Nmにローパスフィルタ処理を施す。ローパスフィルタ処理が施された回転速度Nmは、界磁指令設定部80で用いられる。また、ローパスフィルタ処理が施された回転速度Nmは、制御の切り替えのために、第1ロータ閾値Nth1及び第2ロータ閾値Nth2との比較に用いられる。
第4フィルタ部304は、界磁指令設定部80により設定された界磁指令電流If*にローパスフィルタ処理を施す。ローパスフィルタ処理が施された界磁指令電流If*は、界磁電流制御部81で用いられる。
ここで、なまし手段としての各フィルタ部301~304が備えられることから、界磁指令電流If*に対する界磁電流Ifrの応答性が大きく低下する懸念がある。このため、各フィルタ部301~304の時定数を小さくして界磁電流Ifrの応答性を高める必要がある。しかし、この場合、例えば回転速度Nmの変動に起因して、設定される界磁指令電流Ifrが大きく変動し、界磁電流Ifrが大きく変動してしまうおそれがある。
そこで、本実施形態の界磁指令設定部80は、正弦波PWM制御から同期整流制御への切り替えタイミングから第1判定期間に渡って、電源電圧VDC及び回転速度Nmによらず界磁指令電流If*を一定値に維持する。また、界磁指令設定部80は、同期整流制御から正弦波PWM制御への切り替えタイミングから第2判定期間に渡って、電源電圧VDC及び回転速度Nmによらず界磁指令電流If*を一定値に維持する。これにより、界磁電流の応答性を高めつつ、界磁電流の変動を抑制して回転電機30の発電トルクの変動を抑制する。
図28に、移行制御処理の手順を示す。この処理は、制御装置60により、例えば所定の制御周期毎に繰り返し実行される。図28において、先の図25に示した処理又はこの処理に対応する処理については、便宜上、同一の符号を付している。
ステップS50では、第1フラグF1が0であるか否かを判定する。なお、本実施形態において、第1フラグF1の初期値は0とされている。
ステップS50において第1フラグF1が0であると判定した場合には、ステップS51に進み、第2フラグF2が0であるか否かを判定する。なお、本実施形態において、第2フラグF2の初期値は0とされている。
ステップS51において第2フラグF2が0であると判定した場合には、ステップS40に進む。ステップS40において肯定判定した場合には、ステップS52に進み、第1フラグF1を1にする。また、タイマを用いて、ステップS40で肯定判定してからの経過時間CNT1のカウントを開始する。
ステップS52の処理が完了した場合、又はステップS50において第1フラグF1が1であると判定した場合には、ステップS53に進み、経過時間CNT1が第1判定期間Cth1以上になったか否かを判定する。
ステップS53において否定判定した場合には、ステップS54に進み、界磁指令電流If*を、同期整流制御への切り替え直後の制御周期において同期整流マップ情報に基づいて設定した界磁指令電流If*に維持する。
ステップS53において経過時間CNT1が第1判定期間Cth1以上になったと判定した場合には、ステップS55に進み、第1フラグF1及び経過時間CNT1を0にリセットする。また、指令トルクTrq*、電源電圧VDC及び回転速度Nmと、同期整流マップ情報とに基づいて、界磁指令電流If*を設定する。なお、ステップS54で維持された界磁指令電流If*とステップS53の処理で設定した界磁指令電流If*との差の絶対値が所定量よりも大きい場合、現在の界磁指令電流If*を、制御周期毎に、同期整流マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*に向かって漸近させればよい。
ステップS40において否定判定した場合には、ステップS44に進む。ステップS44において肯定判定した場合には、ステップS56に進み、第2フラグF2を1にする。また、タイマを用いて、ステップS44で肯定判定してからの経過時間CNT2のカウントを開始する。
ステップS56の処理が完了した場合、又はステップS51において第2フラグF2が1であると判定した場合には、ステップS57に進み、経過時間CNT2が第2判定期間Cth2以上になったか否かを判定する。
ステップS57において否定判定した場合には、ステップS58に進み、界磁指令電流If*を、正弦波PWM制御への切り替え直後の制御周期において正弦波マップ情報に基づいて設定した界磁指令電流If*に維持する。
ステップS57において経過時間CNT2が第2判定期間Cth2以上になったと判定した場合には、ステップS59に進み、第2フラグF2及び経過時間CNT2を0にリセットする。また、指令トルクTrq*、電源電圧VDC及び回転速度Nmと、正弦波マップ情報とに基づいて、界磁指令電流If*を設定する。なお、ステップS58で維持された界磁指令電流If*とステップS59の処理で設定した界磁指令電流If*との差の絶対値が所定量よりも大きい場合、現在の界磁指令電流If*を、制御周期毎に、正弦波マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*に向かって漸近させればよい。
<第4実施形態の変形例>
・正弦波PWM制御から同期整流制御への切り替えタイミングから所定期間に渡って界磁指令電流If*を一定値に維持する方法としては、タイマを用いる方法に限らない。例えば、図29に示すように、同期整流マップ情報において、第2ロータ閾値Nth2から、第2ロータ閾値Nth2及び第1規定値Δα(>0)の加算値までに渡って界磁指令電流If*を一定値にする方法であってもよい。ここで、第2ロータ閾値Nth2及び第1規定値Δαの加算値は、第2ロータ回転速度Nm2よりも小さい値である。
また、同期整流制御から正弦波PWM制御への切り替えタイミングから所定期間に渡って界磁指令電流If*を一定値に維持する方法としては、タイマを用いる方法に限らない。例えば、図30に示すように、正弦波マップ情報において、第1ロータ閾値Nth1から、第1ロータ閾値Nth1から第2規定値Δβ(>0)を減算した値までに渡って界磁指令電流If*を一定値にする方法であってもよい。ここで、第1ロータ閾値Nth1から第2規定値Δβを減算した値は、第1ロータ回転速度Nm1よりも大きい値である。
・正弦波PWM制御から同期整流制御への切り替えタイミングから所定期間に渡って界磁指令電流If*を一定値に維持する構成、及び同期整流制御から正弦波PWM制御への切り替えタイミングから所定期間に渡って界磁指令電流If*を一定値に維持する構成のうち、一方の構成が実施されなくてもよい。
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、図31(b)に示すように、正弦波マップ情報において、「Nm1+ΔNm1」から第2ロータ閾値Nth2までの過渡領域の界磁指令電流If*が、一点鎖線で示す第7実施形態の界磁指令電流If*よりも大きく設定されている。また、正弦波PWM制御から同期整流制御への切り替え直前の界磁指令電流If*が、切り替え直後の界磁指令電流If*よりも大きく設定されている。また、同期整流制御への切り替え直前の界磁電流Ifrが、切り替え直後の界磁指令電流If*となるように設定されている。図31(a),(b)は、先の図12(a),(b)に対応している。この設定は、界磁電流Ifrの応答性と、通常時制御からアイドルアップ制御に切り替えられる場合のエンジン回転速度Nerの上昇速度(エンジン回転加速度)とを考慮してなされるものである。
つまり、エンジン回転加速度が高いほど、アイドルアップ制御への切り替え指示がなされてから、ロータ31の回転速度Nmが第2ロータ閾値Nth2に到達するまでの時間が短くなる。この場合において、図12(b)のように正弦波マップ情報が設定されると、同期整流制御に切り替えられた直後の実際の界磁電流を、同期整流制御に切り替えられる直前の実際の界磁電流よりも大きくすることができないおそれがある。そこで、図31(b)に示す態様で正弦波マップ情報が設定されることにより、切り替え直後の実際の界磁電流を、切り替え直前の実際の界磁電流よりも大きくする。
なお、正弦波マップ情報において、「Nm1+ΔNm1」から第2ロータ閾値Nth2までの過渡領域の界磁指令電流If*は、アイドルアップ制御に切り替えられる場合において想定される平均的なエンジン回転加速度に対応する値に設定されていればよい。また、同期整流制御への切り替え直前の界磁電流Ifrが、切り替え直後の界磁指令電流If*以下となる場合、先の図25のステップS43の処理が実行されればよい。
一方、本実施形態では、図32(b)に示すように、同期整流マップ情報において、「Nm2-ΔNm2」から第1ロータ閾値Nth1までの過渡領域の界磁指令電流If*が、一点鎖線で示す第7実施形態の界磁指令電流If*よりも小さく設定されている。また、同期整流制御から正弦波PWM制御への切り替え直前の界磁指令電流If*が、切り替え直後の界磁指令電流If*よりも小さく設定されている。また、正弦波PWM制御への切り替え直前の界磁電流Ifrが、切り替え直後の界磁指令電流If*となるように設定されている。図32(a),(b)は、先の図13(a),(b)に対応している。この設定は、界磁電流Ifrの応答性と、アイドルアップ制御から通常時制御に切り替えられる場合のエンジン回転速度Nerの低下速度(エンジン回転減速度)とを考慮してなされるものである。
つまり、エンジン回転減速度が高いほど、通常時制御への切り替え指示がなされてから、ロータ31の回転速度Nmが第1ロータ閾値Nth1に到達するまでの時間が短くなる。この場合において、図13(b)のように同期整流マップ情報が設定されると、正弦波PWM制御に切り替えられた直後の実際の界磁電流を、正弦波PWM制御に切り替えられる直前の実際の界磁電流よりも小さくすることができないおそれがある。そこで、図32(b)に示す態様で同期整流マップ情報が設定されることにより、切り替え直後の実際の界磁電流を、切り替え直前の実際の界磁電流よりも小さくする。
なお、同期整流マップ情報において、「Nm2-ΔNm2」から第1ロータ閾値Nth1までの過渡領域の界磁指令電流If*は、通常時制御に切り替えられる場合において想定される平均的なエンジン回転減速度に対応する値に設定されていればよい。また、正弦波PWM制御への切り替え直前の界磁電流Ifrが、切り替え直後の界磁指令電流If*以上となる場合、先の図25のステップS47の処理が実行されればよい。
<第6実施形態>
以下、第6実施形態について、第5実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態において、界磁指令設定部80は、図33(b)に示すように、ロータ31の回転速度Nmが、「Nm1+ΔNm1」から第2ロータ閾値Nth2になるまでの界磁指令電流If*を、ロータ31の回転速度の上昇速度(回転加速度AP)が大きいほど、正弦波マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*に対して大きく設定する。図33(a),(b)は、先の図12(a),(b)に対応している。
具体的には、界磁指令設定部80は、まず、アイドルアップ制御への切り替え指示がなされた後のロータ31の回転加速度APが大きいほど、第1係数K1(≧1)を大きく設定する。回転加速度APは、回転速度Nmに基づいて算出されればよい。そして、界磁指令設定部80は、回転速度Nmが「Nm1+ΔNm1」から第2ロータ閾値Nth2になるまでの界磁指令電流If*を、正弦波マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*に第1係数K1を乗算した値に設定する。
これにより、通常時制御からアイドルアップ制御に切り替えられる場合におけるエンジン回転加速度がアイドルアップ制御への切り替え毎に異なる場合であっても、同期整流制御への切り替え直後の実際の界磁電流を、切り替え直前の実際の界磁電流よりも大きくすることができる。
一方、界磁指令設定部80は、図34(b)に示すように、ロータ31の回転速度Nmが、「Nm2-ΔNm2」から第1ロータ閾値Nth1になるまでの界磁指令電流If*を、ロータ31の回転速度の低下速度(回転減速度DP)が大きいほど、同期整流マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*に対して小さく設定する。図34(a),(b)は、先の図13(a),(b)に対応している。
具体的には、界磁指令設定部80は、まず、通常時制御への切り替え指示がなされた後のロータ31の回転減速度DPが大きいほど、第2係数K2(0<K2<1)を小さく設定する。回転減速度DPは、回転速度Nmに基づいて算出されればよい。そして、界磁指令設定部80は、回転速度Nmが「Nm2-ΔNm2」から第1ロータ閾値Nth1になるまでの界磁指令電流If*を、同期整流マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*に第2係数K2を乗算した値に設定する。
これにより、アイドルアップ制御から通常時制御に切り替えられる場合におけるエンジン回転減速度が通常時制御への切り替え毎に異なる場合であっても、正弦波PWM制御への切り替え直後の実際の界磁電流を、切り替え直前の実際の界磁電流よりも小さくすることができる。
<第6実施形態の変形例>
ロータ31の回転加速度APが大きいほど、正弦波マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*に対して大きく設定する構成、及びロータ31の回転減速度DPが大きいほど、同期整流マップ情報に基づいて設定する界磁指令電流If*に対して小さく設定する構成のうち、一方の構成が実施されなくてもよい。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記各実施形態の正弦波PWM制御において、各相指令電圧に3次高調波が重畳される処理、又は2相変調が用いられる処理が行われてもよい。
・各指令値がメモリ60aに記憶されている構成に限らない。例えば、取得した指令トルクTrq*、回転速度Nm及び電源電圧VDCに基づいて、制御周期毎に各指令値が算出される構成であってもよい。
・第2実施形態の構成を第3~第6実施形態の構成に適用してもよい。
・回転電機の主制御量としては、トルクに限らない。例えば、図1に示すように、高電位側電気経路Lpのうちコンデンサ21の高電位側端子との接続点からバッテリ20の正極端子側へと流れる直流電流IDCであってもよい。この場合、回転電機30が電動機として駆動されるとき、直流電流IDCを負の値と定義し、回転電機30が発電機として駆動されるとき、直流電流IDCを正の値と定義すればよい。また、例えば、主制御量を回転電機30の消費電力又は発電電力としてもよい。
・回転電機のステータ33は、第1ステータ巻線群及び第2ステータ巻線群を備えていてもよい。各ステータ巻線群は、3相分の巻線を備え、各ステータ巻線群に対応してインバータが設けられている。第1ステータ巻線群と第2ステータ巻線群とのなす角度である空間位相差Δθは、例えば電気角で30°とされていればよい。
・回転電機としては、星形結線されるものに限らず、例えば、Δ結線されるものであってもよい。