JP2019079710A - 正極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
非水電解質二次電池は、一対の電極である正極および負極と、これらの間を絶縁するセパレータと、非水電解質とを備える。非水電解質二次電池用の電極(正極または負極)の構造としては、金属箔等からなる集電体とその上に形成された電極活物質層とを含む構造が知られている。
特許文献1には、正極活物質として用いられるリチウム含有複合酸化物として、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)、および、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(LiNixCoyAl1−x−yO2)(NCA)等が挙げられている(段落0005、0039等)。
結着剤として一般的に使用されるポリフッ化ビニリデン(PVDF)が塩基性化合物であるリチウム水酸化物(LiOH)に触れると、不飽和反応が起こる。そのため、原料として大気中で保存された正極活物質を用いる、あるいは、調製されたペースト状の正極用電極合剤を大気中で保存する場合、ペースト状の正極用電極合剤の粘度が増してゲル化する恐れがある。ゲル化した正極用電極合剤は集電体上への塗工が難しいため正極の安定的な製造が難しい。そのため、正極用電極合剤がゲル化した場合には、製造される正極の品質が良くなく、性能に優れたリチウムイオン二次電池を安定して製造することが難しい。
リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を含む正極活物質と、導電剤と、ポリフッ化ビニリデンと、分散媒とを含むペースト状の正極用電極合剤を調製する工程(A)と、
集電体の少なくとも一方の面上に、前記ペースト状の正極用電極合剤を塗工し乾燥する工程(B)とを有する正極の製造方法に関する。
本発明の正極の製造方法において、前記工程(A)は、前記導電剤とポリフッ化ビニリデンと前記分散媒とを含み、前記正極活物質を含まない予備ペーストを用意し、当該予備ペーストに酸を添加した後、前記正極活物質を添加する工程である。
はじめに、図面を参照して、本発明に係る一実施形態のリチウムイオン二次電池の構成について説明する。
図1Aは本実施形態のリチウムイオン二次電池の模式全体図である。
図1Bは電極積層体の模式断面図である。
図1Cは本発明に係る一実施形態の電極の模式断面図である。この図に示す電極は、リチウムイオン二次電池における正極または負極である。
図1Bに示すように、電極積層体20は、一対の電極21がこれらを絶縁するセパレータ22を介して積層されたものである。一対の電極21は、正極21Aおよび負極21Bである。
正極は、集電体と、集電体の少なくとも一方の面上に形成された正極活物質を含む正極活物質層とを含む。
正極集電体としては、アルミニウム箔等が好ましく用いられる。
本実施形態において、正極活物質層は、正極活物質と導電剤と結着剤と分散媒とを含み、必要に応じて増粘剤を含むペースト状の正極用電極合剤を用いて形成されたものである。各成分はそれぞれ、1種または2種以上用いることができる。
本発明は、正極活物質が余剰Liを含む場合に、好ましく適用することができる。
本発明は例えば、正極活物質がLiNixCoyAl1−x−yO2(リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物、NCA)を含む場合に、好ましく適用することができる。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。
導電剤としては、アセチレンブラック(AB)および黒鉛等の炭素材料等が挙げられる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
分散媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の有機溶媒が好ましい。
なお、上記の各種固体成分は原料段階において、任意の溶媒または分散媒を含む、溶液または分散液の形態で、電極合剤の製造に供される場合がある。この場合、電極合剤中の分散媒には、原料中の溶媒または分散媒が含まれる。
負極は、集電体と、集電体の少なくとも一方の面上に形成された負極活物質を含む負極活物質層とを含む。
負極集電体としては、銅箔等が好ましく用いられる。
負極活物質層は、負極活物質と結着剤と分散媒とを含み、必要に応じて導電剤および/または増粘剤を含むペースト状の負極用電極合剤を用いて形成することができる。各成分はそれぞれ、1種または2種以上用いることができる。
結着剤としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)等が挙げられる。
導電剤としては、アセチレンブラック(AB)および黒鉛等の炭素材料等が挙げられる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
分散媒としては、水等が挙げられる。
なお、上記の各種固体成分は原料段階において、任意の溶媒または分散媒を含む、溶液または分散液の形態で、電極合剤の製造に供される場合がある。この場合、電極合剤中の分散媒には、原料中の溶媒または分散媒が含まれる。
非水電解質としては公知のものが使用でき、液状、ゲル状もしくは固体状の非水電解質が使用できる。
例えば、プロピレンカーボネ−トあるいはエチレンカーボネ−ト等の高誘電率カーボネート溶媒と、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の低粘度カーボネート溶媒との混合溶媒に、リチウム含有電解質を溶解した非水電界液が好ましく用いられる。
混合溶媒としては例えば、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/エチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒が好ましく用いられる。
リチウム含有電解質としては例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2CkF(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPFn{CkF(2k+1)}(6−n)(n=1〜5の整数、k=1〜8の整数)等のリチウム塩、およびこれらの組合せが挙げられる。
セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し、かつリチウムイオンが透過可能な膜であればよく、多孔質高分子フィルムが好ましく使用される。セパレータとしては、PP(ポリプロピレン)製多孔質フィルム、PE(ポリエチレン)製多孔質フィルム、あるいは、PP(ポリプロピレン)−PE(ポリエチレン)の積層型多孔質フィルム等のポリオレフィン製多孔質フィルムが好ましく用いられる。
外装体としては公知のものが使用できる。二次電池の型としては、円筒型、コイン型、角型、あるいはラミネート型(フィルム型とも言う。)等があり、所望の型に合わせて外装体を選定することができる。
本発明の正極の製造方法は、
リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(NCA)を含む正極活物質と、導電剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、分散媒とを含むペースト状の正極用電極合剤を調製する工程(A)と、
集電体の少なくとも一方の面上に、ペースト状の正極用電極合剤を塗工し乾燥する工程(B)とを有する。
正極活物質であるNCA等のリチウム含有複合酸化物が大気中の水分に触れた場合、活物質表面の余剰Liが水分と反応して、塩基性化合物であるリチウム水酸化物(LiOH)が生成される場合がある。このときの反応式は、Li2O+H2O→2LiOHで表される。
したがって、本発明の正極の製造方法では、正極用電極合剤の塩基性化を抑制し、結着剤として使用されるポリフッ化ビニリデン(PVDF)と塩基性化合物であるリチウム水酸化物(LiOH)との反応を抑制し、この反応による粘度上昇とゲル化を抑制することができる。その結果、高品質の正極を安定的に製造することができる。本発明の正極の製造方法を用いることで、高性能のリチウムイオン二次電池を安定的に製造することができる。
リチウム水酸化物(LiOH)の生成を抑制するため、正極用電極合剤は水を含まないことが好ましいが、pH測定では、OHイオンおよびHイオンの存在が必要である。また、一般的に比較的粘度の高いペーストは、そのままpH測定を行うことが難しい。そのため、水を含まない比較的粘度の高いペースト状の正極用電極合剤は、水を添加して希釈してからpH測定を行う必要がある。しかしながら、水を添加すれば、新たなリチウム水酸化物(LiOH)が生成されるので、pHが変化してしまい、正極用電極合剤のpHを正確に測定することができない。
後記[実施例]の項に示すように、調製してから2時間大気中に静置した後(2時間大気曝露後)の正極用電極合剤の塩基度は好ましくは7.7以下、より好ましくは7.6以下である。この場合、大気曝露後の粘度上昇が抑制され、ゲル化が効果的に抑制され、好ましい。2時間大気曝露後の粘度は、好ましくは85000mPa・s以下、より好ましくは80000mPa・s以下である。
本明細書において、塩基度および粘度は、後記[実施例]の項に記載の方法にて求めるものとする。
正極用電極合剤の塩基度および粘度の上昇を効果的に抑制できることから、正極用電極合剤中の酸の添加量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上である。
酸は本来、正極活物質層に必要でない成分であるため、不要な成分を多く配合することは好ましくない。正極用電極合剤中の酸の添加量は、好ましくは3〜5質量%、より好ましくは4〜5質量%である。
正極用電極合剤の固形分率は、70〜90%程度が好ましい。
実施例1および比較例1においては、正極の製造方法を変えてリチウムイオン二次電池を製造した。正極の製造方法以外は、共通条件とした。
(正極用電極合剤の塩基度)
正極用電極合剤の塩基度は、メトロームジャパン製ソルボトロード電極を使用した非水滴定方法により測定したイオンの電離度から算出した。
正極用電極合剤の粘度は、レオメータを用いて測定した。
得られたリチウムイオン二次電池について、充電と放電を1サイクル行い、放電時における電流値と電圧値とを測定した結果に基づいて、初期抵抗値を求めた。初期抵抗値は、放電レート0.3C、1C、3C、および5Cの条件で10秒間放電したときの放電容量から算出した。
正極活物質として、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(LiNixCoyAl1−x−yO2)(式中、xは0.75〜0.95、yは0.05〜0.25、1−x−yは0.01〜0.1)(NCA)を用意した。
導電剤として、アセチレンブラック(AB)を用意した。
結着剤として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用意した。
分散媒として、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用意した。
酸として、安息香酸および無水酢酸を用意した。
(正極用電極合剤の調製と評価)
はじめに、公知方法にて、導電剤(AB)と結着剤(PVDF)と分散媒(NMP)とを含む予備ペーストを調製した。次いで、この予備ペーストに対して、正極活物質(NCA)を添加し、混合した。以上のようにして、固形分70質量%のペースト状の正極用電極合剤を調製した。図2に、比較例1における正極用電極合剤の調製方法を示すフローチャートを示す。
正極用電極合剤中の原料の固形分比は以下の通りとした。
活物質(NCA)/導電剤(AB)/結着剤(PVDF)(質量比)=93/6/1
正極活物質であるリチウム含有複合酸化物(NCA)が大気中の水分に触れることで、活物質表面の余剰Liが水分と反応して、塩基性化合物であるリチウム水酸化物(LiOH)が生成され、塩基度が上昇したと考えられる。また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が塩基性化合物であるリチウム水酸化物(LiOH)に触れることで、不飽和反応が起こり、正極用電極合剤は粘度が増してゲル化したと考えられる。
以下、調製直後(大気曝露なし)の正極用電極合剤を「正極用電極合剤(P1−X)」、2時間大気曝露後の正極用電極合剤を「正極用電極合剤(P1−Y)」と言う。
集電体であるアルミニウム箔の一方の面上に、公知方法にて、調製直後(大気曝露なし)の正極用電極合剤(P1−X)を塗工し、乾燥し、プレス加工して、正極(E1−X)を製造した。
正極用電極合剤として、2時間大気曝露後の正極用電極合剤(P1−Y)を用いた以外は同様にして、正極(E1−Y)を製造した。
負極活物質である黒鉛と、結着剤であるスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)ラテックスと、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)と、分散媒であるイオン交換水とを含むペースト状の負極用電極合剤を調製した。集電体である銅箔の一方の面に対して、公知方法にて、得られた負極用電極合剤を塗工し、乾燥し、プレス加工して、負極を製造した。
PP(ポリプロピレン)多孔質フィルムからなる市販のセパレータを用意した。
エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)=1/1(体積比)を溶媒とし、電解質としてリチウム塩であるLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解して、非水電解液を調製した。
調製直後(大気曝露なし)の正極用電極合剤(P1−X)を用いて得られた正極(E1−X)と上記負極と上記セパレータと市販のラミネート型外装体(8×12cm)とを用い、公知方法により、電池セルを製造した。得られた電池セル内に上記非水電解液を注入して、リチウムイオン二次電池(B1−X)を製造した。
正極として、2時間大気曝露後の正極用電極合剤(P1−Y)を用いて得られた正極(E1−Y)を用いた以外は同様にして、リチウムイオン二次電池(B1−Y)を製造した。
得られたリチウムイオン二次電池(B1−X)、(B1−Y)の初期抵抗をそれぞれ求めた。
調製直後(大気曝露なし)の正極用電極合剤(P1−X)を用いて得られたリチウムイオン二次電池(B1−X)の初期抵抗を基準値100%とした。この基準となるリチウムイオン二次電池(B1−X)の初期抵抗に対する、2時間大気曝露後の正極用電極合剤(P1−Y)を用いて得られたリチウムイオン二次電池(B1−Y)の初期抵抗の比を求めた。評価結果を図4に示す。図4に示すように、2時間大気曝露後の正極用電極合剤(P1−Y)を用いて得られたリチウムイオン二次電池(B1−Y)では、初期抵抗の増加が見られた。リチウムイオン二次電池(B1−Y)の初期抵抗比は130%であった。
(正極用電極合剤の調製と評価)
比較例1と同様の方法にて予備ペーストを調製した。実施例1では、予備ペーストに対して、条件を変えて酸を添加し、混合した。酸を添加混合した後、比較例1と同様の方法にて正極活物質(NCA)を添加し混合して、固形分70質量%のペースト状の正極用電極合剤を調製した。図5に、実施例1における正極用電極合剤の調製方法を示すフローチャートを示す。
酸の種類は、安息香酸と無水酢酸の2条件とした。
正極用電極合剤中の酸の添加量は、1、2、3、4、5質量%の5条件とした。
表1および図6に、酸の種類・添加量と、2時間大気曝露後の正極用電極合剤の塩基度との関係を示す。図6には参考データとして、比較例1における、正極用電極合剤の調製直後(大気曝露なし)塩基度=7.5と2時間大気曝露後の塩基度=8.3を破線で示してある。
図7に、酸の種類と2時間大気曝露後の正極用電極合剤の塩基度と2時間大気曝露後の正極用電極合剤の粘度との関係を示す。比較例1における正極用電極合剤の2時間大気曝露後の粘度が13826mPa・sであったので、図7には参考データとして、この概算値140000mPa・sを破線で示してある。図7にはまた、参考データとして、2時間大気曝露後の粘度の目標値85000mPa・sを破線で示してある
安息香酸または無水酢酸を、3質量%以上または4質量%以上添加することで、2時間大気曝露後の正極用電極合剤の塩基度を7.7以下、好ましくは7.6以下、粘度を85000mPa・s以下、好ましくは80000mPa・s以下とすることができた。
酸添加条件を変えて得られた2時間大気曝露後の複数種の正極用電極合剤を用いて、比較例1と同様にして、正極およびリチウムイオン二次電池の製造を実施した。得られたリチウムイオン二次電池について初期抵抗を求めた。比較例1において2時間大気曝露後の正極用電極合剤(P1−Y)を用いて得られたリチウムイオン二次電池(B1−Y)の初期抵抗を基準値100%としたときの初期抵抗比を求めた。
20 電極積層体
21 電極
21A 正極
21B 負極
22 セパレータ
110 集電体
120 電極活物質層
Claims (1)
- リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を含む正極活物質と、導電剤と、ポリフッ化ビニリデンと、分散媒とを含むペースト状の正極用電極合剤を調製する工程(A)と、
集電体の少なくとも一方の面上に、前記ペースト状の正極用電極合剤を塗工し乾燥する工程(B)とを有する正極の製造方法であって、
前記工程(A)は、前記導電剤とポリフッ化ビニリデンと前記分散媒とを含み、前記正極活物質を含まない予備ペーストを用意し、当該予備ペーストに酸を添加した後、前記正極活物質を添加する工程である、正極の製造方法。
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