JP2019074196A - シール付玉軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸受内部への所定粒径の異物侵入を防ぎつつ、軸受の高速運転に対応可能としながら、シールトルク及びグリースの攪拌抵抗を抑えて、シール付玉軸受の低トルク化を図る。【解決手段】軸受内部空間2と外部とを区切るシール部材6のシールリップ7に突起9を形成する。突起9に対して周方向に摺動するシール摺動面8と、シールリップ7との間には、突起9により、軸受内部空間2と外部とに連通し、かつ所定粒径の異物にとって通過不可な油通路14が生じさせられる。軸受内部空間2に封入されたグリース10の量を軸受全空間体積の1〜10%にする。軸受回転中、外部から供給される潤滑油は、油通路14を通って軸受内部空間2に流入する。突起9とシール摺動面8間でくさび効果が生じ、シールリップ7とシール摺動面8との間が流体潤滑状態となる。【選択図】図1

Description

この発明は、軸受内部にグリースが封入されたシール付玉軸受に関する。
例えば、自動車、各種建設用機械等の車両に搭載されたトランスミッション内にはギアの摩耗粉等の異物が混在する。このため、シール部材により、軸受内部空間への異物侵入を防ぎ、転がり軸受の早期破損を防止することが行われている。
また、転がり軸受の低トルク性が重視される用途では、ころ軸受に比して低トルクで回転する玉軸受が採用されている。
軸受の早期破損を防止することと低トルク性の両立が求められる用途、例えば車両のトランスミッション、デファレンシャル等の回転部を支持する用途では、内外の軌道輪によって形成される環状の軸受内部空間と外部との間をシール部材で区切ったシール付玉軸受が採用されている。その軸受内部空間には、初期潤滑剤としてグリースが封入されている。
一般的なシール部材は、ゴム状材料等で形成されたシールリップを有する。軌道輪、スリンガ等、シール部材に対して周方向に回転する軸受部品には、シールリップを滑り接触させるシール摺動面が形成されている。シールリップとシール摺動面が全周に亘って滑り接触する。
また、シール部材は、取り付け相手部材に嵌る周縁部を有する。その周縁部には、軸受内部空間と外部とに連通するスリットが形成されている。軸受回転中、シールリップとシール摺動面が全周に亘って滑り接触するが、外部から供給される潤滑油がスリットから軸受内部空間へ流入し、グリースが外部へ流出する。
シールリップとシール摺動面が全周で滑り接触すると、シールリップの引き摺り抵抗(シールトルク)が発生し、軸受トルクの一因となる。また、その滑り接触の摩擦は、軸受の温度上昇を促進する。この温度上昇が進むと、軸受内部空間及び外部間の圧力差による吸着作用を招き、その摩擦が大きくなる。
従来、シールトルクを抑えるため、シール摺動面にショットピーニングを施すことにより、最大粗さRy2.5μm以下の微小凹凸を有するシール摺動面とし、その凹部に貯留した潤滑油によりシールリップ及びシール摺動面間の油膜形成を促進することが提案されている(特許文献1)。
特開2007−107588号公報
しかしながら、車両等に対する省エネルギ化の要求は高まるばかりであり、それに組み込まれるシール付玉軸受に対しても一層の低トルク性が要求されている。
特許文献1のようなショットピーニングによる低トルク化は、シールリップとシール摺動面間のすべり面積を低減させることでもたらされているが、その低減に限界があるので、達成し得る低トルク化が限られていた。
また、軸受運転の初期は、潤滑油の温度が比較的低いため、潤滑油の粘度が比較的高く、油膜を形成し易い潤滑条件にあるが、運転継続で油温が上昇して粘度が低下すると、油膜が切れ易い潤滑条件となる。軸受を高速運転する程、シールリップに対するシール摺動面の相対的な周速が大となり、シールリップ及びシール摺動面間の摩擦に伴う発熱が大となるので、油温上昇やシールリップの摩耗が進み易くなる。このため、シール付玉軸受の高速運転や許容回転速度には、潤滑条件から限界がある。電気自動車(EV)では、駆動系の回転部を支持するシール付玉軸受の高速運転の要求が強いが、ショットピーニングによる低トルク化では要求に応えきれない。
シール部材と、これに対して周方向に回転する軸受部品との間に締め代を設定せず、シール部材を軸受部品に対して完全に非接触とすれば、シールトルクを無くすことは可能である。その代わり、シール部材及び軸受部品間の隙間の大きさについて所定粒径の異物侵入を防止できるような各種誤差の管理が難しくなる。
また、軸受内部空間では、玉や保持器によってグリースが攪拌される。そのグリースの攪拌抵抗も軸受トルクの一因となる。このため、シール付玉軸受の低トルク化には、グリースの攪拌抵抗を抑えることが好ましい。
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、軸受内部への所定粒径の異物侵入を防ぎつつ、軸受の高速運転に対応可能としながら、シール付玉軸受の低トルク化を図ることである。
上記の課題を達成するため、この発明は、内輪と、前記内輪との間に環状の軸受内部空間を形成する外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介在する複数の玉と、前記複数の玉を保持する保持器と、前記軸受内部空間と外部との間を区切るシール部材と、前記シール部材に設けられたシールリップと、前記シールリップに対して周方向に摺動するシール摺動面と、前記シールリップの少なくとも周方向一箇所に形成され、前記軸受内部空間及び外部間に亘って連通する油通路を前記シール摺動面及び当該シールリップ間に生じさせる突起と、前記軸受内部空間に封入されたグリースと、を備え、前記シールリップには、当該シールリップ及び前記シール摺動面間を流体潤滑状態にすることが可能な態様で前記突起が形成されており、前記グリースの量が軸受全空間体積の1〜10%であるシール付玉軸受に構成したものである。ここで、軸受全空間体積は、内輪と外輪とシール部材によって囲まれた軸受内部空間の体積から全ての玉及び保持器の体積を差し引いた体積のことをいう。
上記構成によれば、シール摺動面及びシールリップ間において突起による油通路が生じ、油通路内の潤滑油が軸受回転に伴ってシール摺動面及びシールリップ間にくさび効果で引きずり込まれ、この間での油膜形成を促進する。このため、シールリップ及びシール摺動面間が流体潤滑状態となる。流体潤滑状態では、シールトルクを実質的に零に近づけ、シールリップが実質的に摩耗せず、シールリップ及びシール摺動面間の摺動による発熱を抑えることができる。したがって、シールリップに対するシール摺動面の相対的な周速として許容し得る速度も高くなり、従来では達成できなかったシール付玉軸受の高速運転の要求にも応えることが可能となる。また、油通路を通過可能な異物の粒径は、突起の高さに基づいて定めることができる。従い、侵入を防止すべき粒径を任意に定め、その所定粒径の異物が油通路から侵入しないようにすることが可能である。さらに、軸受内部空間と外部との間の通油性が油通路によって向上するため、転がり軸受の温度上昇が抑制され、ひいては、吸着作用も防止される。また、軸受内部空間と外部との間の通油性が向上すれば、初期潤滑剤として軸受内部空間に封入すべき初期封入グリースの量が少なくなる。その初期封入グリースの量を軸受全空間体積の1〜10%に抑えることにより、グリースの攪拌抵抗が抑えられる。
好ましくは、前記シール摺動面の算術平均粗さRaが1.0μm以下であるとよい。ここで、算出平均粗さRaは、日本工業規格のJIS B 0601:2013において規定された算術平均粗さRaのことをいう。シール摺動面の算術平均粗さRaが1.0μm以下であれば、良好な流体潤滑状態を実現することができる。
上述のように、この発明は、上記構成の採用により、軸受内部空間への所定粒径の異物侵入を防ぎつつ、軸受の高速運転に対応可能としながら、シールトルク及びグリースの攪拌抵抗を抑えて、シール付玉軸受の低トルク化を図ることができる。
この発明の実施形態に係るシール付玉軸受を示す断面図 図1の図中右側のシール部材のシールリップ付近の拡大図 図2のIII−III線の拡大断面図 実施形態に係るシールリップを軸方向から示す部分正面図 実施形態における流体潤滑モードの検討結果を示す潤滑領域図 図1のシール付玉軸受を備えるトランスミッションの一例を示す断面図
この発明の一例としての実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すこのシール付玉軸受100は、内輪1と、内輪1との間に環状の軸受内部空間2を形成する外輪3と、内輪1と外輪3との間に介在する複数の玉4と、これら複数の玉4を保持する保持器5と、軸受内部空間2と外部との間を区切る一対のシール部材6と、シール部材6に設けられたシールリップ7と、シールリップ7に対して周方向に摺動するシール摺動面8と、シールリップ7に形成された複数の突起9と、軸受内部空間2に封入されたグリース10(図中にドット模様で示す。)と、を備える。
以下、シール付玉軸受100の設計上の回転中心である軸受中心軸に沿った方向を「軸方向」という。軸方向に直交する方向を「径方向」という。軸受中心軸回りの円周方向を「周方向」という。
内輪1と外輪3は、それぞれ鋼製の軌道輪からなる。内輪1は、外側に軌道溝11を有する。外輪3は、内側に軌道溝12を有する。軸受内部空間2は、同軸に配置された内輪1の外周と外輪3の内周とによって規定される環状空間である。複数の玉4は、内側の軌道溝11と外側の軌道溝12との間に介在しながら公転する。保持器5は、複数の玉4を周方向に等配する環状の軸受部品になっている。内輪1、外輪3、複数の玉4及び保持器5は、単列の深溝玉軸受を構成している。
内輪1は、回転軸200に取り付けられ、回転軸200と一体に回転する。回転軸200は、例えば、車両のトランスミッション又はデファレンシャルの回転部として設けられる。外輪3は、ハウジング、ギア等、前記回転軸からの荷重を負荷させる部材に取り付けられる。
外輪3の内周の端部に、シール部材6を保持するシール溝13が形成されている。シール部材6は、その外周縁をシール溝13に圧入することにより、外輪3に取り付けられる。
シール部材6のシールリップ7は、シール部材6の内周側で舌片状に突き出ている。シールリップ7は、ラジアルリップになっている。ここで、ラジアルリップは、軸方向に沿ったシール摺動面又は軸方向に対して45°以内の鋭角の勾配をもったシール摺動面と密封作用を奏するシールリップであって、当該シール摺動面との間に径方向の締め代をもったもののことをいう。
シール摺動面8は、内輪1の外周に形成されている。シール摺動面8は、周方向全周に連続する円筒面状になっている。
図1のシール部材6のシールリップ7付近を図2に拡大して示す。図1、図2に示すように、シールリップ7の突起9は、軸受内部空間2及び外部間に亘って連通する油通路14をシール摺動面8及びシールリップ7間に生じさせる。
シールリップ7に複数の突起9を形成しておけば、シールリップ7とシール摺動面8間のすべり面積が低減する。ここで、シールリップ7とシール摺動面8間の摩擦トルクTは下の式1のように表されるので、すべり面積が低減すると、摩擦トルクTが低減することが分かる。
Figure 2019074196
シール部材6は、金属板製の芯金15と、芯金の少なくとも内径部に付着した加硫ゴム材16により形成されている。芯金15は、周方向全周に連続する環状に形成されたプレス加工部品になっている。加硫ゴム材16は、加硫成形されたゴム部になっている。シールリップ7は、加硫ゴム材16により形成されている。加硫ゴム材としては、例えば、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、NBR(ニトリル・ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等が挙げられる。さらに他の加硫ゴム材として、例えば、FKM(フッ素ゴム)、シリコンゴム等が挙げられる。
シール部材6は、例えば、芯金15を型に入れて加硫ゴム材16を加硫成形することにより、一体の部品として製造される。その加硫成形時に突起9がシールリップ7に形成される。加硫ゴム材16は、芯金15の全体に付着させてもよいし、芯金15の内径部のみに付着させてもよい。
軸受内部空間2に対してシール部材6を境界とした外部側には、ギアの摩耗粉、クラッチの摩耗粉、微小砕石等、シール付玉軸受100の組み込み先に応じた異物が存在する。このような粉状の異物は、潤滑油や雰囲気の流れによってシール部材6付近に到達し得る。シール部材6は、外部から軸受内部空間2への異物侵入を防止する。
軸受内部空間2に封入されたグリース10は、シール付玉軸受100の使用開始まで軸受内部空間2内で内輪1、外輪3等の鋼製部品を防錆することと、その使用開始当初、外部から潤滑油がシール付玉軸受100に供給されるまで内輪1、外輪3、各玉4、保持器5、各シール部材6を潤滑することとを目的とした初期潤滑剤である。
グリース10としては、耐フレッティング性が良好で、防錆性能に優れたものを採用することが好ましい。具体的には、基油が鉱油系、増ちょう剤がウレア等の非石けん系、添加剤としてスルフォネート系の防錆剤およびフェノール系の酸化防止剤が含まれたグリース、例えば、パイロックユニバーサルN6C(商品名;JXエネルギー製)が挙げられる。グリース10の基油の動粘度は、40℃で100mm/s以下である。
シール付玉軸受100の回転中、外部から潤滑油が跳ね掛け、オイルバス等の適宜の手段により供給される。その潤滑油は、シールリップ7とシール摺動面8との間から軸受内部空間2に入り込む。また、軸受内部空間2内の潤滑油やグリース10は、シールリップ7とシール摺動面8との間から外部へ排出される。
図2中のIII−III線の断面図を図3に示す。この断面は、シールリップ7とシール摺動面8との間における隙間(油通路14を含む)について、設計上、シール摺動面8との直交方向に最も狭いところでの様子を示すものである。また、シールリップ7を軸受内部空間側から軸方向に視たときの外観を図4に示す。図4は、図1に示すシール部材6の単独かつ自然な状態におけるシールリップ7の外形を描いたものである。ここで、自然な状態は、単独の状態にあるシール部材に外力が作用していない、すなわち当該シール部材が外力によって変形していない状態のことをいう(以下、この状態のことを単に「自然状態と呼ぶ」。)。
図2〜図4に示すように、シールリップ7の突起9は、シール摺動面8との直交方向、すなわちシール摺動面8に接する接線に垂直な法線方向に高さをもっている。シール摺動面8が軸受中心軸を中心とした円筒面状なので、これとの直交方向は、径方向に相当する。
シールリップ7及びシール摺動面8間に径方向の締め代が設定されている。この締め代により、シール摺動面8に径方向に押し付けられたシールリップ7が外部側へ曲がったゴム状弾性の変形を生じ、シールリップ7の緊迫力を生む。シール部材6の取り付け誤差、製造誤差等は、シールリップ7の曲がり具合の変化によって吸収される。
図4に示すように、シールリップ7は、自然状態においてシールリップ7の内径を規定する先端17を有する。図2〜図4に示すように、突起9は、周方向と直交する向きに延びている。突起9は、シールリップ7の先端17まで及んでおり、シール摺動面8との間に径方向の締め代をもった範囲の概ね全域に亘って延びている。
突起9は、シールリップ7の先端17に向かって次第に低くなる形状となっている。このように、突起9がシールリップ7の先端17に向かって次第に低くなる形状であれば、先端17上のパーティングラインにおいてバリを発生しにくくすることができる。
突起9は、周方向幅wの両端から周方向幅wの中央に向かって次第にシール摺動面8に接近するR形状になっている。このR形状は、突起9の放射方向の全長に亘って与えられている。このため、突起9とシール摺動面8とが摺動接触し得る領域は、突起9の周方向幅wの中央を通る仮想アキシアル平面Pax上に線状で存在する。突起9のR形状の曲率中心は、仮想アキシアル平面Pax上にある。突起9の曲率半径Rや曲率中心については、突起9をシールリップ7の先端17に向かって次第に低くするため、シールリップ7の先端17に向かって次第に曲率半径Rの寸法を拡大し、かつ曲率中心を外部側へ移している。
突起9は、周方向に一定の間隔dで並んでいる。シールリップ7を軸方向から視た外観で考えると、複数の突起9が、間隔dに対応の一定のピッチ角度θで周方向に配置された放射状となって現れている。なお、放射中心は、図外のシール部材6の中心軸(軸受中心軸に一致)上にある。
放射状に配置された突起9間の間隔d及び突起9の周方向幅wは、シールリップ7が各突起9上でのみシール摺動面8と摺動接触し得るものとなり、各突起9間に油通路14が常に生じさせられるように設定されている。すなわち、シール部材6の取り付け時、シール摺動面8に接触する突起9がシールリップ7の緊迫力に抗して突っ張ることにより、突起9を境とした周方向両側において軸受内部空間2及び外部間に亘って連通する油通路14が生じる。
油通路14を通過可能な粒径は、突起9のシール摺動面8との直交方向の高さhに基づいて定めることができる。従い、侵入を防止すべき粒径を任意に定め、その所定粒径の異物が油通路14から軸受内部空間2へ侵入しないようにすることが可能である。
軸受の早期破損原因となるような摩耗粉は、粒径50μm(0.05mm)を超えるような異物である。突起9の高さhを0.07mm以下に設定しておけば、そのような摩耗粉が通過できない油通路14を生じさせることができる。なお、粒径50μmを超える異物の通過を防止するため、突起9の高さhは0.04mm以下に設定することが好ましいが、公差を考慮して、0.07mm以下と設定している。また、突起9の高さhを0.07mmに設定することで、油通路14の通油性を良好にすることができる。
突起9及びシール摺動面8間に生じる隙間は、油通路14に周方向に近い側が大、突起9に周方向に近い側が小となるくさび状に形成されている。突起9の表面は、前述のくさび状に対応の曲面となっている。図3に示すように、内輪1の回転に伴い、シール摺動面8がシールリップ7に対して周方向に回転するとき(同図中に回転方向を矢線Aで示す。)、油通路14内の潤滑油(図中にドット模様で示す。)は、シール摺動面8の回転に伴ってシール摺動面8及び突起9間に引きずり込まれ、この間での油膜形成を促進する。このため、シールリップ7とシール摺動面8間の摩擦係数(μ)が低下し、シールトルクが低減する。さらに、軸受内部空間2及び外部間の通油性は、多数の油通路14によって向上する。このため、シール付玉軸受100の温度上昇が抑制され、ひいては、シールリップ7の吸着作用も防止される。
本願発明者が上述の通油性を確認する試験を実施したところ、100mlの潤滑油がシールリップ7とシール摺動面8間を貫通するのに必要な時間は、500秒以下であった。一方、従来品(シールリップとシール摺動面が周方向全周で接触し、シール部材の外径部の一箇所に通油用の小さなスリットを形成したもの)でも同様の試験を実施したが、100mlの潤滑油がシールリップとシール摺動面間を貫通するのに必要な時間は、3700秒を超えた。すなわち、シール付玉軸受100では、従来品の約8倍の通油性を実現することができる。
このように良好な通油性がある場合、外部からシール付玉軸受100の側面に供給される潤滑油で軸受内部空間2内を速やかに潤滑することができる。このため、軸受内部空間2に当初に封入するグリース10の量を軸受全空間体積の1%以上10%以下の範囲に抑えることが可能となる。この軸受全空間体積は、一対のシール部材6によって外部と区切られた軸受内部空間2の体積から、全ての玉4および保持器5の体積を差し引いた体積に相当する。軸受全空間体積の10%以下という少量のグリース10が軸受内部空間2に封入された状態からシール付玉軸受100の使用が開始されるので、シール付玉軸受100の回転中、グリース10が玉4や保持器5によって攪拌され難くなり、グリース10の攪拌抵抗が抑えられる。
このシール付玉軸受100は、車両のトランスミッション内の回転部を支持する用途を想定している。車両のトランスミッション内に存在するシール付玉軸受への給油は、一般に、ギアの回転による跳ね掛け、オイルバス、ノズル噴射等の適宜の方式で行われる。よって、シール付玉軸受の内輪もしくは外輪に固定されるシール部材のシールリップ周辺には、潤滑油が存在している。給油される潤滑油は、トランスミッション内に存在するギア等の他の潤滑部分でも共通に用いられるものである。その潤滑油は、オイルポンプで循環されており、その循環経路に設けられたオイルフィルタによって濾過される。
本願の発明者は、車両で使用された潤滑油を車両の走行距離別に回収し、それら使用済み潤滑油に混ざっている異物の数、異物の粒径の分布、異物の材料を調べた。潤滑油は、オーマチックトランスミッション(AT)又はマニュアルトランスミッション(MT)の車両8台、無段変速機(CVT)の車両10台から回収した。回収対象とした車両のメーカー、車種、走行距離はばらばらである。ギアが多用されるAT/MTの方がCVTよりも異物の粒径、異物の数ともに多い傾向が認められたが、変速機形式を問わず、異物の粒径の分布としては、50μm以下のものが99.9%以上を占めた。粒径50μmを超える異物の数は、走行距離が大きくなっても、AT/MTの場合で1000個未満、CVTの場合で200個未満であった。このことは、近年、オイルフィルタの性能が向上し、潤滑油中の異物が微細化している(つまり大きな粒径の異物がオイルフィルタで取り除かれる)ことを示している。なお、この分布の測定には、ハイアックロイコ社製の型番8000Aの測定器にて、微粒きょう雑物質量法を用いた。
一方、軸受内部の潤滑油が異物を含む場合に、その異物の粒径と軸受寿命との関係について調査を行なったところ、粒径の大きな異物が多くなる程に軸受寿命が低下する傾向は存在するが、近年のトランスミッション内の環境のように粒径50μm以上の異物が少々存在する程度であれば、シールが無い状態で異物が軸受内に入っても、転がり軸受の寿命比(実際寿命の計算寿命に対する比)が、自動車のトランスミッションでの実用に十分耐えうる値(例えば7〜10倍程度)を示すことが分かった。
つまり、車両のトランスミッションやデファレンシャル等の駆動系の回転部支持に用いられるシール付玉軸受に対し、オイルフィルタで濾過される潤滑油を給油する場合、粒径50μmを超えるような大きな異物が軸受内部へ侵入することをシール部材で防止する限り、潤滑油に含まれる粒径50μm以下の異物が軸受内部に侵入することを許容しても軸受寿命に問題を起こさない、といえる。そして、これを許容するのならば、シールリップとシール摺動面間での潤滑油の流通を潤沢に確保し、前述のくさび効果と相俟ってシールリップとシール摺動面間を流体潤滑状態にすることが実現可能である。
そこで、図2、図3に示す突起9の高さhは、シール摺動面8と摺動接触し得る範囲内において最も高い位置で0.07mmに設定されている。この位置は、各突起9とシール摺動面8との間に設定された締め代が最大となるところでもある。軸受運転中、油通路14の径方向の大きさは、突起9の高さhよりも大きくなることはなく、実質的に0.07mmを超えない。このため、粒径50μmを超える異物が外部の潤滑油に含まれていたとしても、その異物が油通路14を通過することは略起こらない、と考えられる。
突起9とシール摺動面8との間のくさび状の隙間におけるくさび角度は狭小側に向かって次第に小さくなることから、突起9とシール摺動面8とが摺動接触し得る線状領域(仮想アキシアル平面Pax上)に近いところ程、くさび効果が強く生じる。したがって、その線状領域での油膜の油圧をより効果的に高め、突起9をシール摺動面8から完全に離れさせ、その線状領域での油膜を厚く生じさせ、突起9とシール摺動面8との間の潤滑状態を流体潤滑状態にすることが容易になる。
ここで、突起9とシール摺動面8との間を完全に分離させる油膜があれば、突起9に対してシール摺動面8が直接に接触しない状態で摺動する流体潤滑状態となる。このような油膜を各突起9とシール摺動面8との間で保つことにより、シールリップ7とシール摺動面8との間を流体潤滑状態にすることができる。
その流体潤滑状態を容易に実現するため、シールリップ7とシール摺動面8との間の締め代に基づくシールリップ7の緊迫力をなるべく弱く設定する方がよい。このため、シールリップ7のうち、外部側への曲げ変形を与える腰部をなるべく薄く形成している。
また、シール摺動面8の算術平均粗さRaを小さくする方が、流体潤滑状態とするのに必要な油膜の厚さが小さくさなる。このため、シール摺動面8の算術平均粗さRaは、1.0μm以下とされている。具体的には、シール摺動面8の算術平均粗さRaは、0.01μm以上1.0μm以下に設定されている。
また、周方向に隣り合う突起9間の間隔dが小さい程、つまり突起9の数が多い程、シールリップ7に対してシール摺動面8が相対的に周方向に回転したとき、1回転当りの突起9の通過回数が多くなり、シール摺動面8の周方向全周に亘って油膜が連続する状態に保たれ、各突起9との間のくさび効果が途絶えることなく生じ易くなるので、流体潤滑状態を保ち易くなる。
また、突起9の曲率半径Rが大きい方が、くさび効果が発生し易くなる。シール付玉軸受100の実使用環境下に近い温度80℃におけるトルクについて、様々な突起9の曲率半径Rの寸法でシール付玉軸受100のトルク測定試験を行ったところ、突起9の曲率半径Rが1.5mmのときは、曲率半径Rが0.2mm又は0.8mmのときと比較してトルクが最小の値となった。突起9の曲率半径Rが1.8mmのときも、0.2mm又は0.8mmのときと比較してトルクが小さくなった。くさび効果を発生し易く、かつ、低トルクを実現するため、公差を考慮して、突起9の曲率半径Rは、1.5mm以上2.0mm以下の値が好ましい。
突起9とシール摺動面8間の油膜厚さが薄すぎると摩擦係数μが増大し、逆に厚すぎると異物の侵入抑制効果を悪化させる可能性が出てくるので、シール摺動面8の最大高さ粗さRzを上回る油膜厚さで適切に設定すればよい。ここで、最大高さ粗さRzは、JIS規格のB0601:2013で規定された最大高さ粗さのことをいう。
通常、シール摺動面8の最大高さ粗さRzの値は、シール摺動面8の算術平均粗さRaの約4倍になる。すなわち、シール摺動面8の算術平均粗さRaが1.0μmの場合、油膜厚さが4.0μmを超えれば流体潤滑状態になると考えられる。
本願発明者は、突起9の高さhが0.07mmの前提で、突起9間の間隔dが0.3mm以上2.6mm以下、突起9の周方向幅wが0.2mm以上1.0mm以下、かつ突起9の曲率半径Rが0.15mm以上2.0mm未満の範囲で突起9とシール摺動面8間の理論油膜厚さを計算した。その計算は、シールリップ7に対してシール摺動面8が相対的に周方向に回転する速度(周速)を0.02〜20.2m/sの範囲で行なった。また、その計算は、潤滑油として、CVTのプーリとベルトの潤滑を行うCVTFを想定し、油温30℃の場合と、油温120℃の場合とで行なった。その結果、これらの使用条件であれば、計算上、Greenwood−Johnsonの決めた無次元数である粘性パラメータgVと弾性パラメータgEに基づく線接触の場合の潤滑領域図において、等粘度-剛体領域(R−Iモード)又は等粘度-弾性体領域(E−Iモード,ソフトEHL)のいずれかの潤滑モードに分布することが分かった。さらに、本願発明者は、突起9間の間隔dと、突起9及びシール摺動面8間の理論油膜厚さとの関係を計算で求め、また、突起9の曲率半径Rと、突起9及びシール摺動面8間の理論油膜厚さとの関係を計算で求めた。理論油膜厚さは、R−IモードにおいてMartinの最小膜厚計算式を用い、E−IモードにおいてHerrebrughの最小膜厚計算式を用いた。
上述の計算の結果、突起9間の間隔dが2.6mmより小さい場合に油膜が厚くなる傾向があることが分かった。したがって、突起9間の間隔dは、2.6mm以下に設定することが好ましい。なお、突起9間の間隔dが0.3mm未満になると、シールリップ7を金型で成形することが困難になるので、間隔dを0.3mm以上に設定することが好ましい。
また、突起9の曲率半径Rが大きくなる程、理論油膜厚さも大きくなる傾向があることが分かった。突起9の曲率半径Rが0.15mm以上の場合、計算上、5μm以上の油膜を形成可能であることが分かった。突起9の高さhを0.07mmに設定する場合、金型で成形することを考慮すると、突起9の曲率半径Rを0.15mm以上2.0mm未満に設定することが好ましい。また、突起9の高さhを0.07mmに設定する場合、突起9の周方向幅wが曲率半径Rに依存するので、突起9の周方向幅wを0.2mm以上1.0mm以下に設定することが好ましい。
これまでの計算結果等を踏まえ、シール付玉軸受100では、図2〜図4に示すような突起9の高さhが0.07mmに設定され、突起9間の間隔dが0.3mm以上2.6mm以下に設定され、突起9の周方向幅wが0.2mm以上1.0mm以下に設定され、かつ突起9の曲率半径Rが0.15mm以上2.0mm未満の範囲に設定されており、これにより、シール摺動面8の周速0.2m/s以上においてシールリップ7及びシール摺動面8間を流体潤滑状態にすることが可能な態様で複数の突起9がシールリップ7に形成されている。なお、その周速0.2m/s未満のときは、突起9とシール摺動面8間が境界潤滑状態になる。周速0.2m/sは、車両のトランスミッションにおいて停止から速やかに到達する速度であるから、軸受運転時間の略全時間においてシールリップ7及びシール摺動面8間を流体潤滑状態にすることができる。
また、流体潤滑状態を実現できるか否かは、油膜パラメータΛ>3を満足するか否かの理論計算で検討してもよい。油膜パラメータΛは、下の式2で求められる。
Figure 2019074196
合成粗さRrms[μm]は、下の式3で求められる。
Figure 2019074196
最小膜厚hmin[μm]は、潤滑モードに応じた式で求められる。例えば、E−Iモードでは、下の式4に示すHerrebrughの最小膜厚計算式で求められる。
Figure 2019074196
大気圧下での流体の粘度η[Pa・s]は、下の式5で求められる。
Figure 2019074196
平均速度u[m/s]は、下の式6で求められる。
Figure 2019074196
シール付玉軸受100では、シール部材6が内輪1に対して静止する外輪3に固定されるため、u=0である。その外輪3に対して内輪1が回転することによるシール摺動面8の1分当たりの回転速度をN[min−1]とすると、式6を下の式7に変換してu[m/s]を求めることができる。
Figure 2019074196
等価曲率半径R[m]は、下の式8で求められる。
Figure 2019074196
単位長さ当りの荷重W[N/m]は、下の式9で求められる。
Figure 2019074196
弾性パラメータgEは、下の式10で求められる。
Figure 2019074196
等価縦弾性係数E’は、下の式11で求められる。
Figure 2019074196
油膜パラメータΛによる検討を幾つかの条件で例示する。この検討の各条件において想定した内輪1、潤滑油の仕様は、次の通りである。
・内輪のシール摺動面の半径:32.135mm
・内輪のヤング率:210GPa
・内輪のポアソン比:0.3
・潤滑油の動粘度(40℃):26mm/s
・潤滑油の動粘度(100℃):6.22mm/s
・潤滑油の密度:840kg/m
・潤滑油の粘度の圧力係数:9.6×10−9Pa−1
・突起のピッチ角度:2°
・シールリップの全周緊迫力:1N
・シールリップのヤング率:3.28×10−3GPa
・シールリップのポアソン比:0.4999
この検討の各条件における突起諸元、運転条件、最小膜厚を下の表1に示し、各条件における潤滑モードの計算結果を図5に示す。
Figure 2019074196
上述の条件1〜7の最小膜厚において、油膜パラメータΛ>3を満足すれば、流体潤滑状態であると見做せる。そこで、合成粗さRrmsについて検討する。この検討において、突起9の算術平均粗さRaは、加硫成型で得られる一般的な値を想定して0.11μmとする。シール摺動面8の算術平均粗さRaが1.0μmである場合、式3で求まる合成粗さRrmsは、1.26μmとなる。条件1〜5において合成粗さRrmsが1.26μmの場合、式2で求まる油膜パラメータΛは3.03以上になる。条件6、7において合成粗さRrmsが1.26μmの場合、式2で求まる油膜パラメータΛは、条件6のときに0.78、条件7のときに0.66になる。すなわち、条件1〜5では、シールリップ7とシール摺動面8との間が流体潤滑状態となるが、条件6〜7では流体潤滑状態とならないことが分かる。例えば、シール摺動面8の算術平均粗さRaを0.238μm以下にすれば、条件6においても油膜パラメータΛを3以上にすることができる。
このシール付玉軸受100は、上述のようなものであり、軸受寿命に悪影響を及ぼすような粒径の異物の軸受内部空間2への侵入をシール部材6によって防ぎつつ、シールリップ7及びシール摺動面8間の摺動の摩擦係数μを流体潤滑によって極限まで低減し、ひいては、シールトルクを顕著に低減して軸受回転トルクの低トルク化を著しく図ることができる(図1、図3参照)。
さらに、シール付玉軸受100は、従来であればシールリップの摩耗やシールリップ及びシール摺動面間の摺動による発熱の問題が起こるようなシール摺動面8の周速(例えば30m/s以上)で運転される場合において、シールリップ7及びシール摺動面8間を直接接触のない流体潤滑状態とすることが可能なため、シールリップ7の摩耗を実質的に無くすと共に前述の発熱も抑えることができる。このため、シール付玉軸受100は、従来達成できなかった高速運転の要求にも対応することが可能である。
さらに、シール付玉軸受100は、軸受内部空間2と外部との間の通油性がシールリップ7とシール摺動面8間の油通路14によって向上するため、初期潤滑剤として軸受内部空間2に封入すべきグリース10の量を少なくし、軸受全空間体積の1〜10%に抑えているので、軸受回転中、玉4や保持器5によって攪拌されるグリース10の攪拌抵抗が抑えられる。
さらに、シール付玉軸受100は、シール摺動面8の算術平均粗さRaが1.0μm以下であるので、合成粗さRrmsの値を抑え、良好な流体潤滑状態を実現することができる。
したがって、シール付玉軸受100は、良好な流体潤滑状態によるシールトルクの極限の低減と、グリース10の攪拌抵抗の抑制とによって、低トルク化を図ることができる。軸受内部空間2に封入されたグリース10の量とシール摺動面8の算術平均粗さRaとの関係について評価した結果を下の表2に示す。
Figure 2019074196
表2の評価は、シール付玉軸受100の低トルク性能を四段階に分けて評価したものである。グリース10の量が軸受全体積の1〜10%かつシール摺動面8の算術平均粗さRaが1.0μm以下のとき、最も優れた低減性能が得られた。グリース10の量が軸受全体積の10%を超えると、シール摺動面8の算術平均粗さRaを1.0μm以下にしても、低トルク性能に限界があった。これは、シールトルクの低減が限界に達し、グリース10の攪拌抵抗がトルクの主因となるためと考えられる。
なお、シール付玉軸受100は、突起9がR形状に形成されているので、シール部材6を外輪3に取り付ける際に突起9がシール摺動面8に擦られても、突起9が周方向に曲がってしまう懸念がなく、取り付け時にシールトルクの低減性能を損なう恐れがない。例えば、突起を尖った形状にした場合、シール部材の取り付け時にシール摺動面に擦られる多数の突起が周方向のどちら側に曲がるか分からず、シール摺動面との相対回転方向に対して適切なくさび状の隙間となる方へ全ての突起が曲がるように取り付けることは極めて困難である。不適切な向きに曲がった突起のところではくさび効果を満足に得ることができず、シールトルクの低減性能を損なうことになる。
また、シール付玉軸受100は、シールリップ7の突起9によって油通路14を形成しているので、シール摺動面8を周方向全周で同じ断面形状にすることができ、軌道輪にシール摺動面8を形成することが簡単である。
図6に、車両のトランスミッションの回転部を支持する転がり軸受として、この発明に係るシール付玉軸受を使用した例を示す。図示のトランスミッションは、段階的に変速比を変化させる多段変速機になっており、その回転部(例えば入力軸S1および出力軸S2)を回転可能に支持するシール付玉軸受として、上述のシール付玉軸受100を備えている。
図示のトランスミッションは、エンジンの回転が入力される入力軸S1と、入力軸S1と平行に設けられた出力軸S2と、入力軸S1から出力軸S2に回転を伝達する複数のギア列G1〜G4と、各ギア列G1〜G4と入力軸S1または出力軸S2との間に組み込まれた図示しないクラッチとを有し、そのクラッチを選択的に係合させることで使用するギア列G1〜G4を切り替え、これにより、入力軸S1から出力軸S2に伝達する回転の変速比を変化させるものである。
出力軸S2の回転は出力ギアG5に出力され、その出力ギアG5の回転がデファレンシャル等に伝達される。入力軸S1と出力軸S2は、それぞれシール付玉軸受100で回転可能に支持されている。また、図示のトランスミッションは、ギアの回転に伴う潤滑油のはね掛けにより、又はハウジングHの内部に設けられたノズル(図示省略)からの潤滑油の噴射により、はね掛け又は噴射された潤滑油が各シール付玉軸受100の側面にかかるようになっている。各シール付玉軸受100においてシールトルク及びグリースの攪拌抵抗の低減による低トルク化が達成されているので、動力損失を低減することができる。特に、近年では、自動車の省燃費化の要求が強い。本実施形態に係るシール付玉軸受100をトランスミッションの回転部を支持するために用いて、当該トランスミッションの動力損失を低減することによって、自動車の省燃費化の要求に応えることができる。
上述の実施形態では、突起がR形状のものを示したが、突起は、シール摺動面との相対的な周速が一定以上のときに流体潤滑状態とすることが可能なくさび効果を得られるように適宜の形状にすればよく、例えば、R面取り、C面取り等の面取り形状を採用することができる。
また、上述の実施形態では、突起を周方向に均一配置した例を示したが、不均一に配置することも可能である。
また、上述の実施形態では、シール部材を芯金と加硫ゴム材とから構成したものを例示したが、この発明は、単材により形成されるシール部材にも適用することも可能である。この場合、シールリップに所要の締め代を設定可能であればよく、例えば、シール部材の材料として、ゴム材又は樹脂材を用いることができる。
また、上述の実施形態では、シールリップをラジアルリップとしたが、この発明は、アキシアルリップに適用することも可能である。ここで、アキシアルリップは、径方向に沿ったシール摺動面又は径方向に対して45°未満の鋭角の勾配をもったシール摺動面と密封作用を奏するシールリップであって、当該シール摺動面との間に軸方向の締め代をもったもののことをいう。
また、上述の実施形態では、内輪回転、ラジアル軸受を例示したが、この発明は、外輪回転、スラスト軸受に適用することも可能である。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 内輪
2 軸受内部空間
3 外輪
4 玉
5 保持器
6 シール部材
7 シールリップ
8 シール摺動面
9 突起
10 グリース
14 油通路
100 シール付玉軸受
200 回転軸(回転部)
S1 入力軸(回転部)
S2 出力軸(回転部)

Claims (2)

  1. 内輪と、
    前記内輪との間に環状の軸受内部空間を形成する外輪と、
    前記内輪と前記外輪との間に介在する複数の玉と、
    前記複数の玉を保持する保持器と、
    前記軸受内部空間と外部との間を区切るシール部材と、
    前記シール部材に設けられたシールリップと、
    前記シールリップに対して周方向に摺動するシール摺動面と、
    前記シールリップの少なくとも周方向一箇所に形成され、前記軸受内部空間及び外部間に亘って連通する油通路を前記シール摺動面及び当該シールリップ間に生じさせる突起と、
    前記軸受内部空間に封入されたグリースと、
    を備え、
    前記シールリップには、当該シールリップ及び前記シール摺動面間を流体潤滑状態にすることが可能な態様で前記突起が形成されており、
    前記グリースの量が軸受全空間体積の1〜10%であるシール付玉軸受。
  2. 前記シール摺動面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である請求項1に記載のシール付玉軸受。
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