JP2019073809A - 熱成型性を有する生分解性長繊維不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温での延展性、高熱安定性、成型加工特性に優れる長繊維不織布に関する。【解決手段】生分解性樹脂を含むポリエステル系樹脂からなる長繊維で構成され、目付20〜300g/m2であり、動的粘弾性評価の温度依存性試験において90℃〜140℃の温度領域での貯蔵弾性率が10〜500MPaであり、かつ損失正接(tanδ)の極大値が0.5以下であることを特徴とする生分解性長繊維不織布。【選択図】図1

Description

本発明は、高温での延展性、高熱安定性、成型加工特性に優れる生分解性長繊維不織布に関する。
従来、不織布からなる成型体は知られており、各種分野に使用され、広く用途が展開されている。成型体は不織布を熱成型することで得ることができるが、熱成型において、破れが無く、延伸斑が少なく、成型金型の形に沿った形のきれいな成型体を得ることは難しい。
特許文献1には、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル共重合体から成る生分解性長繊維不織布を得る方法が開示されており、ポリ乳酸系重合体が海部を、脂肪族ポリエステル共重合体が島部を形成する海島型複合長繊維を構成し、島部を形成する脂肪族ポリエステル共重合体を繊維表面に露出させることにより、熱接着性を向上させ、成形性のある不織布を得ているが、熱成型において、破れが無く、延伸斑が少なく、成型金型の形に沿った形のきれいな成型体をより短時間で得るには不十分なものである。
また、以下の特許文献2及び特許文献3には、ポリ乳酸又はポリブチレンサクシネートからなる生分解性成形用不織布を得る方法が開示されているが、構成繊維同士が部分的に熱圧着されて形成されていることから、圧着部と非圧着部の界面を起点に不織布の破壊が発生し、熱成型において、破袋せず、成型深さが深い成型体を得ることが難しい。
特許第5486331号公報 特許第3432340号公報 特開2000−136479号公報
前記した従来技術の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、高温での延展性、高熱安定性、成型加工特性に優れる長繊維不織布に関する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、成型前の不織布の特性に注目し、生分解性樹脂を含むポリエステル系重合体からなる長繊維不織布において、動的粘弾性評価の温度依存性試験において、90℃〜140℃の温度領域での貯蔵弾性率が常に10〜500MPaであり、損失正接(tanδ)の極大値を0.5以下とすることで、熱成型の際、破れが無く、延伸斑が少なく、形のきれいな成型体をより短時間で得ることができ、熱成型時に取り扱い性が良好であり、不織布が複雑な成型形状に追随でき、意匠性に優れる成型体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]生分解性樹脂を含むポリエステル系樹脂からなる長繊維で構成され、目付20〜300g/mであり、動的粘弾性評価の温度依存性試験において90℃〜140℃の温度領域での貯蔵弾性率が10〜500MPaであり、かつ損失正接(tanδ)の極大値が0.5以下であることを特徴とする生分解性長繊維不織布。
[2]10〜70℃における貯蔵弾性率が200MPa以上である、[1]に記載の生分解性長繊維不織布。
[3]30〜140℃における貯蔵弾性率の温度に対する変化が3〜50MPa/℃である、[1]又は[2]に記載の生分解性長繊維不織布。
[4]前記ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸系重合体を含む脂肪族ポリエステル樹脂からなる、[1]〜[3]のいずれかに記載の生分解性長繊維不織布。
[5]前記脂肪族ポリエステル樹脂が、脂肪族ポリエステル共重合体を全樹脂質量に対して、0.5〜30質量%さらに含む、[4]に記載の生分解性長繊維不織布。
本発明の長繊維不織布は、熱成型の際、破れが無く、延伸斑、成型容量の斑が少なく、形のきれいな成型体をより短時間で得ることができ、また、熱成型の際、取り扱い性が良好となり、さらに、熱成後に余熱による収縮が起こりにくいため、例えば、食品容器に好適に用いることができる。
実施例1及び比較例1にて製造された生分解性繊維不織布の動的粘弾性曲線を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は、熱環境下での伸度及び寸法変化率を適切にし、高い成型加工特性を発現することができる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は、成型加工特性を有する。従来、成型加工特性を有する長繊維不織布の製造においては、紡糸直後の糸の特性に着目し、伸度を発現させ、不織布の熱圧着加工等の問題を改善するものであった。これに反し、本実施形態の生分解性長繊維不織布では、成型に用いる長繊維不織布そのものの特性に着目し、高い成型加工特性を有する不織布を得ることがでる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布を構成するポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂及びポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、芳香族エステル樹脂、脂肪族エステル樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂を主体とする共重合体(すなわち、これらの樹脂のモノマーをモノマー単位として最も多く、好ましくは50質量%以上含む共重合体)又は混合物(すなわち、これらの樹脂を質量基準で最も多く、好ましくは50質量%以上含む混合物)も好適に用いられる。
ポリエステル系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、20〜120g/10分であることが好ましく、より好ましくは30〜70g/10分である。MFRが20〜120g/10分であれば、樹脂を良く延伸することができ、繊維の配向性を好適に付与することができる。MFRが20g/10分以下では、溶融粘性が低く、紡糸工程において糸切れが発生しやすくなる。他方、MFRが120g/10分以上であっても、溶融粘性が低くなりすぎるため、紡糸工程において単糸切れが発生しやすくなる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布を構成するポリエステル系樹脂としては、生分解性を有する樹脂を含有することで、不織布にコンポスト性能を付与することができる。コンポスト性が求められる育苗用ポッドなどの農業用資材や食品向けの抽出用フィルターなどに適した素材となる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布を構成する樹脂として生分解性樹脂を用いる場合、該生分解性樹脂が生分解性を発現できれば特に制限はされないが、機械的強度、熱的安定性、ひいては製造時の樹脂の価格や供給安定性の観点からポリ乳酸系重合体を用いることが望ましい。
ポリ乳酸系重合体(以下、PLAともいう。)としては、D−乳酸の重合体、L−乳酸の重合体、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、及びD−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体からなる群から選ばれる重合体、又は該重合体の2種以上のブレンド体が挙げられる。ポリ乳酸重合体のD/L比は、紡糸性、不織布特性を阻害しない範囲で設定できるが、全ポリ乳酸重合体中のD体比率は、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0.1〜10筆量%、さらに好ましくは0.1〜6質量%である。D体比率がこれらの範囲内であると、紡糸性がよく、安定して不織布を得ることができ、また、融点、結晶性等が適当な範囲となり、所望の特性の不織布を得やすい。
本実施形態の生分解性長繊維不織布を構成する樹脂として、前記ポリ乳酸系重合体に加え、脂肪族ポリエステル共重合体を、全樹脂質量を基準として、0.5〜30質量%さらに含むものであることができる。脂肪族ポリエステル共重合体の添加量は、樹脂の総量を100質量%としたとき、0.5〜30質量%であり、好ましくは3〜27質量%、より好ましくは5〜25質量%である。添加量が0.5質量%以上であれば、不織布の結晶性を調整しやすく、熱特性が良好となる。他方、添加量が30質量%以下であれば結晶化が速くなり、紡糸時に繊維同士が又は繊維が設備に接着密着することがないため、安定生産が可能となる。
脂肪族ポリエステル共重合体としては、例えば、ポリ(α-ヒドロキシ酸)又はこれらを主たる繰り返し単位要素とする共重合体、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)の如きポリ(ω-ヒドロキシアルカノエート)、ポリ-3-ヒドロキシプロピオネート、ポリ-3-ヒドロキシヘプタノエート、ポリ-3-ヒドロキシオクタノエートの如きポリ(β-ポリヒドロキシアルカノエート)、あるいはこれらを構成する繰り返し単位要素とポリ-3-ヒドロキシバリレートやポリ-4-ヒドロキシブチレートを構成する繰り返し単位要素との共重合体が挙げられる。また、グリコールとジカルボン酸との縮重合体からなるポリアルキレンジカルボキシレート、例えば、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレート、又はこれらを構成する繰り返し単位要素とするポリアルキレンジカルボキシレート共重合体が挙げられる。
さらに、これらの生分解性を有する個々の重合体を複数種選択し、これらをブレンドしたものが挙げられる。脂肪族ポリエステル共重合体としては、ポリ乳酸との相溶性、紡糸性の観点から、ポリブチレンサクシネート(以下、PBSともいう。)が好ましい。
脂肪族ポリエステル共重合体のMFRは、紡糸工程の延伸性が良好となる100g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは20〜80g/10分、さらに好ましくは30〜70g/10分である。また、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル共重合体との溶融流量比は、0.2〜1.5の範囲であることが必要である。すなわち、0.2≦[脂肪族ポリエステル共重合体の溶融流量/ポリ乳酸系重合体の溶融流量]≦1.5であり、好ましくは0.3〜1.4である。溶融流量比がこれらの範囲内であると紡糸性が良好であり、かつ、脂肪族ポリエステル共重合体の分散性が良好となるために安定した熱接着性が得られる。
本実施形態においては、成型された生分解性長繊維不織布の熱特性評価として、動的粘弾性の温度依存性評価における貯蔵弾性率及び、損失正接に着目し、このパラメータを最適化することで、成型用不織布としての良好な延展性、耐熱安定性を得るに至った。
延展性に優れる不織布を得るためには、樹脂の非晶部分の運動性や配向を制御することが重要とされてきた。そのために、従来は紡糸直後の繊維の結晶化度、配向度を低くするなどの手法がとられてきた。しかしながら、実際の成型時には、常温での搬送や、予熱時や熱成型による加熱など、様々な温度環境で下にて不織布が使われており、これらの物性値で適性を一義に評価することは難しかった。
そこで、温度変化に対する樹脂の剛軟性を評価する動的粘弾性の温度依存評価における貯蔵弾性率、及び損失正接を用いて成型工程での適性を評価し、不織布の製造条件を最適化することで、延展性、熱安定性に優れた不織布を得るに至った。
以下詳細について述べる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は、動的粘弾性の温度依存性評価おける、90℃〜140℃の温度領域での貯蔵弾性率が常に10〜500MPaであり、好ましくは20〜300MPa、より好ましくは20〜200MPa、特に好ましくは25〜150MPaである。90℃〜140℃における貯蔵弾性率をこの範囲内とすることで、熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく、部分的に不織布が伸ばされるような伸度斑が少なく、形がきれいな意匠性に優れる成型体を得ることができる。他方、貯蔵弾性率がこの範囲を下回る場合、成型時の熱により不織布の機械的強度が低くなりすぎているため、金型の形状や加熱の温度斑などによる延伸斑が発生しやすくなる。他方、貯蔵弾性率がこの範囲を上回る場合、成型時に熱を与えてもなお機械的強度が高いため、金型で延伸した際に布帛が破断しやすくなる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は、動的粘弾性の温度依存性評価における、10℃〜70℃の温度領域での貯蔵弾性率が常に200MPa以上であり、好ましくは250MPa以上、より好ましくは300MPa以上である。10℃〜70℃における貯蔵弾性率をこの範囲内とすることで、成型工程において、不織布が破断や変形をすることなく、良好に不織布を搬送することが出来る。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は、動的粘弾性評価の温度依存性試験における損失正接(tanδ)の極大値は0.5以下であり、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下である。動的粘弾性の温度依存性試験で得られるtanδの極大値の大きさは、分子の自由度を示しており、値が大きい程分子の可動領域が広い。即ち、任意温度でのtanδが0.5以上となると、その温度での分子の自由度が大きく、布帛が熱的に不安定となり、熱収縮などを誘発する。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は、動的粘弾性評価の温度依存性試験における貯蔵弾性率の温度に対する変化が3〜50MPa/℃であることが好ましい。より好ましくは5〜35MPa/℃、更に好ましくは10〜25MPa/℃である。貯蔵弾性率の温度に対する変化が上記範囲内であれば、熱成型時に成型型に対する追従性が適度となり、成型斑や破袋が無く成型することが出来る。貯蔵弾性率の温度に対する変化が上記範囲より小さい場合、成型時にシートの剛性が高いため成型型への追従性が悪く、シート割れによる破袋が発生する。他方、貯蔵弾性率の温度に対する変化が上記範囲より大きい場合、成型時の変形に対して追従性が良くなり過ぎ、過延伸による目開きや破袋が発生する。
なお、貯蔵弾性率の温度に対する変化は動的粘弾性の温度依存性試験を行った際のn番目とn+1番目の貯蔵弾性率の差(Δ貯蔵弾性率)を同じくn番目とn+1番目の温度変化の差(Δ温度)で除した下記の数式:
貯蔵弾性率の温度に対する変化=|Δ貯蔵弾性率|/|Δ温度|
にて算出することが出来る。
貯蔵弾性率の温度に対する変化は、温度変化に対する貯蔵弾性率の変化の加速度合いを示すため、例えば、熱成型時の熱金型に接した際の不織布の温度変化に対する貯蔵弾性率の変化度合い、即ち金型への追従性を評価することが可能となる。
特に成型工程においては、生産性向上を目的として成型を多列で行うため、設備的に列方向での加熱斑等の精度斑が生じやすい。このため、不織布の動的粘弾性の温度依存性評価における貯蔵弾性率、損失正接、貯蔵弾性率の温度に対する変化率を上記記載の範囲内とすることで、成型時の破袋や成型斑の抑制が可能となり、品質的に安定した生産を行うことが可能となる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は、120℃におけるMD方向の伸度が、50%以上であることが好ましい。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は、成形加工の際、加熱時伸長性を有することが必要であり、そこで、例えば、不織布は低延伸糸からなり、繊維が加熱時に伸びるか、又は不織布の構成繊維がズレを起こすことが必要である。従って、本発明の長繊維不織布の加熱時伸長性は、温度120℃における伸度が好ましくは50%〜500%、より好ましくは180%〜400%、さらに好ましくは、200%〜350%である。伸度が50%〜500%の範囲内であれば、成型性が良好であり、伸度が大きいほど、成型深さの深い深絞り成型も容易になる。
動的粘弾性における貯蔵弾性率、貯蔵弾性率の温度に対する変化率の最大値、損失正接の極大値、及び120℃における伸度といった各々の特性を、本発明の構成要件の範囲内とするための具体的な方法としては、例えば、生分解性長繊維不織布の樹脂種類、樹脂の混合比率、紡糸時の樹脂温度、吐出量、速度、雰囲気温度、冷却等の紡糸条件、仮圧着や熱圧着時のロール温度、圧力、速度、エージング等の条件、保管条件等で調整することよるものであることができる。具体的に、例えば、紡糸時の紡糸速度を高くしすぎず、高すぎない温度で熱圧着を行うこと、紡糸時の雰囲気温度を低くしすぎない状態で不織布ウェブを得て、後掲(たとえば、段落0035)されるような熱圧着を行うこと、等によって、不織布に適度な接着点を持たせつつ高い伸度を有する不織布を得ることができる。
本実施形態の不織布は、タテ引裂き強度を目付で除した値が好ましくは0.002〜0.5N/(g/m)であり、より好ましくは0.005〜0.2N/(g/m)である。タテ引裂き強度は、繊維の強伸度と繊維同士の接着強度と大きく相関する。タテ引裂き強度が小さすぎる場合、繊維の強伸度が小さいか、繊維同士の接着が強すぎることがある。他方、タテ引裂き強度が大きすぎる場合、繊維の強伸度が大きいか、繊維同士の接着が弱すぎることがある。延伸性が良好な不織布を得るためには繊維の強伸度と繊維同士の接着強度を両立する必要があり、タテ引裂き強度を目付で除した値が0.002〜0.5N/(g/m)だと延伸性が良好な不織布を得ることができる。また、引裂き強度に影響する繊維の強度や繊維同士の接着力は、紡糸速度や樹脂温度等の紡糸条件、エンボス加工、カレンダー加工等、熱圧着加工時の加工温度、加工速度、エージング条件等により、適切な範囲とすることができる。
タテ引裂き強度を目付で除した値が大きすぎない場合(0.5N/(g/m)以下)、生分解性長繊維不織布を構成する繊維同士が適度に接着されており、成型後も繊維同士が適度に接着性を有するので、成型した後でも繊維が浮きにくく、ケバが生じにくい。さらに、タテ引裂き強度を目付で除した値が大きすぎない場合、適度な剛性を有し、工程張力下でも適度な張りを有し、不織布を工程に通すことが容易となり好適である。他方、タテ引裂き強度を目付で除した値が低すぎない場合(0.002N/(g/m)以上)、繊維同士が適度に接着しており、繊維強度も低すぎず、長繊維不織布が適度な伸度及び強度を有し、取扱いが容易となる。
また、ヨコ引裂き強度についても、長繊維不織布を構成する繊維同士が適度に接着されている範囲で設定すること、タテ引裂き強度とともに、適度な剛性を有し、不織布を工程に通すことができる範囲で設定することが好ましい。
本実施形態の生分解性長繊維不織布の目付は、20〜300g/mであり、好ましくは50〜250g/mである。目付が20g/m以上であれば、強度が十分となり、他方、300g/m以下であれば、成型加工時に成型加工設備に大きな負担をかけずに加工できる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布の形状としては、例えば、SS、SMS、SMMS、SMSMなどの多層積層不織布の内の一層であってもよい。ここで、Sは、スパンボンド法の長繊維不織布、Mは、メルトブロー法の極細不織布を意味する。また、長繊維不織布を基材として、短繊維不織布層を積層してもよい。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は、公知のスパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ法、サーマルボンド法、エアーレイ法、柱状流交絡、機械交絡などで得られる。不織布の強度の観点から、スパンボンド法で得られる長繊維不織布であることが好ましい。
動的粘弾性評価における貯蔵弾性率、損失正接、及び120℃における引張伸度を上記範囲内にするための具体的な方法に特に制約はないが、発明者らは紡糸して得られた布帛の熱圧着方法、及び熱圧着にて得られた不織布中の繊維の複屈折率を最適な値とすることで、本発明に至った。
本実施形態の生分解性長繊維不織布(不織布からサンプリングした長繊維不織布を構成する長繊維で、すなわち、不織布を構成する長繊維の紡糸直後の複屈折率ではない)の複屈折率は、好ましくは0.002〜0.10であり、より好ましくは0.005〜0.10であり、さらに好ましくは0.010〜0.025である。複屈折率が高すぎない(0.10以下)場合、高伸度の繊維を得ることができ、複屈折率が低すぎない(0.002以上)場合、熱環境下での安定性を有することができる。本実施形態の生分解性長繊維不織布の複屈折率は、長繊維不織布の特性であり、長繊維不織布を構成する熱圧着前、紡糸直後の長繊維の複屈折率は、紡糸性、熱圧着性、不織布の伸度発現、等を阻害しない範囲であれば、特に限定しない。また、長繊維不織布の樹脂種類、樹脂の混合比率、紡糸時の樹脂温度、吐出量、速度、雰囲気温度、冷却等の紡糸条件、仮圧着や熱圧着時のロール温度、圧力、速度、エージング等の条件、保管条件等を調整することでも所望の複屈折率を得ることが出来る。
本実施形態の生分解性長繊維不織布(不織布からサンプリングした長繊維不織布を構成する長繊維)の結晶化度は、好ましくは30〜70%、より好ましくは35〜62%、さらに好ましくは38〜57%である。結晶化度が低すぎない場合、成型加工時に成型型から布が外れた際に収縮して成型体の形が歪にならず、他方、結晶化度が高すぎない場合、成型加工時に破袋せずに加工できる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布(不織布からサンプリングした長繊維不織布を構成する長繊維)の平均繊維径は、1〜40μmであることが好ましく、より好ましくは10〜40μm、さらに好ましくは15〜35μmである。目付と平均繊維径によって、通液性と内容物保持性を適宜選定でき、平均繊維径が小さすぎない場合、容器として内容物を保持することができ(粉漏れ性が良好であり)、平均繊維径が大きすぎない場合、通液速度が遅すぎない。
本実施形態の生分解性長繊維不織布を構成する長繊維の形状は、特に限定しないが、丸型、扁平型、C型、Y型、V型などの異形断面などが用いられ、好ましくは丸型断面であり、さらに、海島構造や芯鞘構造、割繊構造であってもよい。
本実施形態の生分解性長繊維不織布を構成する長繊維は、少なくともポリ乳酸系重合体を含むことが好ましく、脂肪族ポリエステル共重合体をさらに含む低延伸複合繊維であることができる。ポリ乳酸系重合体繊維と脂肪族ポリエステル共重合体との低延伸複合繊維は、紡糸工程の結晶配向度が低く押さえられており、結晶化度が低く、延伸性が良好であり、高伸度、高延伸が可能である。紡糸速度500〜3000m/分の低紡糸速度で得られた繊維が好ましく用いられ、より好ましくは紡糸速度600〜2700m/分、さらに好ましくは700〜2500m/分が用いられる。一般に、紡糸速度が速い場合、紡糸直後の糸は、結晶性、配向性が高いものとなり、紡糸速度が遅い場合、結晶性が低く、配向性が低いものとなる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布を構成する長繊維の製造においては、目的に応じて、不織布を構成する繊維に、他の樹脂、脂肪族ポリエステル共重合体以外の共重合体、難燃剤、無機充填剤、柔軟剤、可塑剤、顔料、耐電防止剤などを、さらに1種又は2種以上添加してもよい。
本実施形態の長繊維不織布の製造における熱圧着は、エンボス加工を行ってもよいが、熱延伸性を大きくし易いため、仮熱圧着をした不織布ウェッブの繊維の表面で点接着により一体化されていることが好ましい。仮熱圧着の方法に特に制限はされないが、好ましくは、少なくとも一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いる方法、表面が平坦な一対のフラットロールを用いる方法等が挙げられ、また、ニードルパンチ法やスパンレース法等、不織布を接合させる方法を用いることもできる。
点接着により一体化された不織布を得る場合、2段階で仮熱圧着と熱接着を行うことにより、長繊維不織布における繊維結合は、軽度な熱接着に留まり、繊維表面での点状接着が主体となり、仮熱圧着でエンボス柄が付いたとしても、2段階目の面的に抑制された熱接着により、エンボス柄の周辺でミクロに熱収縮が発現し、エンボス柄がはずれるか又は弱くなるとともに、長繊維不織布全体の目付けムラが軽減される。
仮圧着におけるエンボス加工と熱圧着を組みわせる場合、エンボス加工による圧着は、熱延伸時に応力が集中しすぎないため、強すぎないことが好ましい。エンボス加工における圧着面積比率は、特に制限されないが、高頻度で弱い接着であることが好ましい。圧着面積比率は、不織布全面積に対して3〜50%が好ましく、より好ましくは5〜40%である。
2段階目の熱接着は、不織布を面的に抑制する熱接着方法であれば、特に制限されないが、好ましくはフェルトカレンダー加工、エアスルー加工を用いる。
また、長繊維不織布の熱接着に用いられる一般的な加工方法としてのエンボス加工を行った場合、繊維同士が、熱圧着で強固に圧着されているため、圧着部では、繊維形状は維持されておらず、繊維は潰された形状であり、繊維同士が互いに融着してフィルム状を呈し、エンボス柄を形成している状態である。結晶化が進み過ぎ、フィルム化した部分を含む不織布を熱環境下で延伸しようとした場合は、高い伸度が出にくい場合がある。また、エンボス加工によって作製された長繊維不織布を用いた成型体においては、フィルム化した部分を含むため、通液性が必要な用途において通液性が悪くなり、不都合となる場合がある。
本実施形態の生分解性長繊維不織布を仮接着する場合においては、まず、少なくとも一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、ロール温度25〜100℃、好ましくは35〜80℃の温度にて線圧50〜1000N/cm、好ましくは200〜700N/cmの下で熱接着することにより仮熱圧着された長繊維不織布を得る。次いで、仮熱圧着された長繊維不織布を、フェルトカレンダーロールを用いて、ロール温度50〜160℃、好ましくは80〜150℃の温度にて熱接着することにより、繊維同士の交絡点において繊維の表面が溶融して、互いに点状で接着し、その接着部の存在する頻度を大きくすることができる。さらに、この点状の接着は、通常の熱接着と比べて、弱い接合であるため、小さな応力で、均一に延伸加工ができるので、大きな延伸を伴う熱成形に適する。
本実施形態の生分解性長繊維不織布を得る方法としては、定長熱セットを行うことが好ましい。本発明の紡糸直後の不織布ウェブは、熱圧着の際、張力を加えた状態で熱を加えることで、不織布の表面性が良く、熱伸長性のある不織布を得て、成型加工時も破れ、形がきれいな成型体を得るために好ましい。定長熱セットを行う方法としては、一般的な方法を用いてよく、熱風乾燥、ピンテンター乾燥、熱板、カレンダー加工、フェルトカレンダー加工、エアスルー加工、熱プレス等を用いてよい。定長熱セットを行う温度範囲としては、不織布を構成する樹脂が装置に付着することなく、不織布の繊維が適度に接着された状態を得られる温度であれば、特に限定しないが、好ましくは50℃〜160℃、より好ましくは70℃〜160℃、さらに好ましくは120℃〜150℃である。定長熱セットを行う温度が高すぎない場合、装置に不織布由来の汚れが付きにくく、取扱い性、生産性良く不織布を得ることができる。他方、低すぎない場合、不織布の繊維が適度に接着された状態を得ることができる。
従来、熱成型性を有する不織布としては、紡糸直後の繊維の結晶化度、配向度を低くすることで熱時伸度を得ていた。しかしながら、紡糸直後の繊維の結晶化度、配向度を低い状態とすることは、熱に対する不安定性を残した状態であり、不織布を形成する際、熱圧着の状態を所望するような態様にすることが難しかった。例えば、エンボスによる熱圧着を行った場合、エンボス部では結晶部分が多い状態となり、他方、非エンボス部では非結晶部が多い状態となり、熱成型時、エンボス部と非エンボスの境界部やエンボス部が破壊されやすく、熱成型時に破れず、形のきれいな成型体を得ることが難しいことがあった。また、結晶化度、配向度を低く設定する方法としては、紡糸条件を調整することも行われるが、紡糸速度を低くし繊維に延伸がかからないようにした場合、結晶化度、配向度が低い不織布ウェブとなるが、結晶化度、配向度が低い状態で熱圧着を行うと、結晶化が進み過ぎて、成型性に優れる不織布を得ることができないことがあった。したがって、本実施形態においては、不安定な不織布の状態での加工をより安定化させるために、熱圧着、フェルトカレンダー加工、エアスルー加工、エージング等を行うことが好ましい。
従来から、熱成型性を得るための方法としては、上記の特許文献1〜3や特公平01−047581号公報に記載されるように、紡糸時に配向結晶を抑える必要があり、紡速を遅くし、非結晶部を多く有する構造とすることが行われてきた。しかしながら、非結晶部を多く有する不織布は、熱の影響を受けやすい状態であり、熱環境下で寸法安定性のないことが多かった。特にポリ乳酸重合体の場合、ポリエステルと比較した場合、融点が低く、融点とガラス転移温度との差が小さく、結晶化時間が遅いため、熱成型時に、十分な時間・熱をかける必要がある。しかしながら、不織布の熱安定性を高めるため、エンボス加工等を行おうとすると、熱収縮を起こし、所望するような不織布を作製することが難しい状態にあった。
それゆえ、寸法安定性のある本実施形態の生分解性長繊維不織布は、張力のある状態で熱を加えることができる定長熱セットを行うことが好ましい。
尚、ポリ乳酸とポリエステルの一般的な樹脂特性は以下の通りである。ポリ乳酸、ポリエステルの順に、融点:170℃、260℃、再結晶化温度:70℃、120℃、ガラス転移温度55〜60℃、70〜80℃、比熱:1.38J/g・K、1.00〜1.15J/g・K、熱伝導率0.13W/m・K、0.2〜0.33W/m・K、半結晶化時間:500〜900秒、50〜100秒。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は、熱成形で一体加工して、成形体とすることができる。成形体の形状について特に制限はなく、半円形、円柱形、楕円、三角形、四角形など使用目的に応じて選択することが好ましい。成型に使う元の不織布の面積に対し、より容量の大きな成型体を得たい場合、成型前後の不織布の表面積の増加がより大きくなるような成型金型を適宜選定すればよい。
本実施形態の生分解性長繊維不織布の成型性は、展開比で表すことができる。展開比とは、成型時の成型深さを成型前のシートの長径で割って求められる次式:
展開比=(成型時の成型深さcm)/(成型前のシートの長径cm)
で定義される。
本実施形態の生分解性長繊維不織布において、成型する際の展開比の範囲は、0.01〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.85、更に好ましくは0.05〜0.73である。上記の範囲よりも展開比が大きい場合、過延伸により破袋が発生する。また、破袋しない場合でもシートが目開きするため、成型体に内容物を充填した際に内容物が漏出する。他方、上記範囲より展開比が小さい場合、容器に所望の量内容物を充填ことができず、工程不良が発生する。
本実施形態の生分解性長繊維不織布は動的粘弾性の温度依存性評価における損失正接を定義することで、熱的安定性を付与しているため、成型直後に余熱よる成型体の収縮も抑制することが出来る。したがって、成型直後の寸法変化が少ないため、長繊維不織布を成型する工程と、成型体に内容物を充填する工程を同一にすることができ、更には成型不良を低減し、成型体の寸法斑も低減することができる。
本実施形態の生分解性長繊維不織布の成型の程度は、成型指数でも表すことができる。成型指数とは、成型体の表面積を、成型体に用いられた成型前の平面状の不織布の面積(容器形状の場合は開口部面積)で割って求められる次式:
成型指数=(成型体の表面積cm)/(成型前の不織布の面積cm
で定義される値である。
本実施形態の生分解性長繊維不織布から構成される成型体の成型指数は破袋せずに成型できる範囲として、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.1〜20、さらに好ましくは1.5〜10、最も好ましくは2.5〜6である。成型指数が大きい場合、不織布が大きく伸ばされていることを示す。他方、成型指数が小さい場合、不織布の伸びが少ない、もしくは成型後に収縮し、成型体の容量が小さくなっていることを示す。この長繊維不織布は、不織布が高い延展性を有しており、成型直後の寸法安定性も優れていることから、成型指数の大きな成型品を作製することができる。成型指数が大きすぎる場合、過延伸による破袋は起こらないものの、成型体の目開きが発生し、内容物が漏出する。成型指数が小さすぎる場合、容器に所望の量内容物を充填ことができず、工程不良が発生する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
まず、測定法、評価法等を説明する。
(1)平均繊維径(μm)
繊維ウェブ、不織布等の試料の両端部5cmを除いて、布帛の幅10cm毎の区域からそれぞれ適当な本数の繊維を採取し、マイクロスコープで繊維の直径を各30点測定して、該測定値の平均値を算出した。
(2)目付(g/m
JIS L−1913に従って、総面積が1500cm(例えば、幅20cmx長さ25cm 3枚)となるように試料を切り取り、単位当たりの質量に換算して求めた。
(3)複屈折率(Δn)
OLYMPUS社製のBX53を使用して、干渉縞法によって繊維の側面から観察した平均屈折率の分布を測定することができる。この方法は円形断面を有する繊維に適用できる。繊維の屈折率は繊維軸に対して平行な電場ベクトルを持つ偏光に対する屈折率n||と、繊維軸に対し垂直な電場ベクトルを持つ偏光に対する屈折率n⊥によって特徴づけられ、複屈折率はΔn=(n||−n⊥)で表わされる。
繊維に偏光を照射すると、互いに直角に振動する2つの偏光に分かれる。繊維は軸の方向によって屈折率が異なるため2つの光の進む距離に差が生じる。これがレタデーションであり、Rで表わされ、繊維断面の直径をd0とすると、複屈折率と次式:
R=d0(n||−n⊥)=d0Δn
の関係がある。
光学的にフラットなスライドガラス及びカバーガラスを使用し、試料から採取した繊維を、繊維に不活性な封入剤中に浸漬する。測定部で繊維同士が重なりあわない繊維部分を、その繊維軸が偏光顕微鏡の光軸及び干渉縞に対して垂直となるようにする。この干渉縞のパターンを測定し、レタデーションを求め、繊維の複屈折率を測定し、10点の平均値を測定した。
(4)120℃における伸度(%)
試料の両端5cmを除き、幅3cm、長さ10cm試料を切り取り、引張試験機で、つかみ間隔2cm、引張速度200mm/分、120℃の温度で各5点タテ方向を測定し、平均値を算出した。なお、恒温槽内に試料を設置1分経過後、チャンバー温度が120℃になっていることを確認して計測を開始した。
(5)タテ引裂き強度を目付で除した値(N/m
試料の両端5cmを除き、幅10cm、長さ6.5cm試料を3枚切り出し、エルメンドルフ形引裂度試験機を用いて、タテ引裂き強度(N)を測定し、平均値を求めた。これを目付で除して算出した。
(6)貯蔵弾性率の温度依存性評価
幅5mm、長さ25mmの試料を切り出し、ティ・エイ・インスツルメント・ジャパン社製DMA2980を用いて、フィルム/ファイバー用クランプを使用し、初期荷重0.010N、周波数1Hz、歪み1%、30℃〜140℃まで、昇温速度3℃/分、把持長10mmにて測定を行った。
ここで貯蔵弾性率の温度に対する変化は動的粘弾性の温度依存性試験を行った際の貯蔵弾性率の変化を温度変化の値で除した下記の数式:
貯蔵弾性率の温度に対する変化=Δ貯蔵弾性率|/Δ温度
にて算出することが出来る。
具体的には、出力された30〜140℃の各温度における貯蔵弾性率を1℃おきに記録し、各々の数値を除することでその値を算出した。たとえば図1に示す実施例1の場合、50℃の時の貯蔵弾性率は538.6MPa、51℃の時の貯蔵弾性率は534.8MPaであるため、動的粘弾性の変化は3.8MPaとなる。この計算を30〜140℃まで繰り返し行い、その中での最大値を表1に示す。
(7)10〜70℃の貯蔵弾性率の最小値及び損失正接の極大値
貯蔵弾性率の温度依存性評価結果で得られた貯蔵弾性率の数値から、10〜140℃の温度範囲内での最大値と最小値を読み取った結果、10〜70℃の温度範囲内での最小値を表1に示す。また、上記の貯蔵弾性率の温度依存性評価結果で得られた損失正接の数値の極大値の結果を表1に示す。
(8)成型性
<成型性(展開比)>
長繊維不織布を成形機にセットし、熱風温度100℃で予熱して、直径12cmの成型金型でプレス成型を実施した時の成型体の深さを測定し、下記式:
展開比=(成型時の成型深さcm)/(成型前のシートの長径cm)
により展開比を算出した。
展開比の評価基準は以下の評価基準にて実施した。
○:展開比0.3、0.7で成型した際、共に破袋せず成型可能。
△:展開比0.3、0.7で成型した際、展開比0.3のみ成型可能。
×:展開比0.3、0.7で成型した際、共に破袋し、成型不可。
<成型性(熱収縮性)>
長繊維不織布を成形機にセットし、熱風温度100℃で予熱して、120℃の円筒成形金型(直径4.4cm、高さ3.2cm)を用いて2秒間でプレス成形を実施し、粒子径100μmのモデル粒子を11g充填し、PLAシートを蓋材としてヒートシールにて封止し、成型体を100個作製した。
モデル粒子が漏れずに封止できたものを良品とし、良品が100個中80個以上であれば熱収縮性が良好とし、○と判定した。一方良品が100個中80個未満であれば熱収縮性が不良とし、×と判定した。
<成型性(成型指数)>
長繊維不織布を成形機にセットし、熱風温度100℃で予熱して、120℃の円筒成形金型(直径4.4cm、高さ1.3cm及び3.2cm)を用いて2秒間でプレス成形を実施した時の成型体の様子を観察し、以下の評価基準で評価した。尚、成型指数は、成型体の表面積を成型体に用いられた成型前の平面状の不織布の面積(容器形状の場合は開口部の面積)で割って求められる次式:
成型指数=(成型体の表面積cm)/(成型前の不織布の面積cm
で定義される値である。
○:破れがなく、成形性良好、高さ1.3cmの金型において成型指数1.9以上、高さ3.2cmの金型において成型指数3.4以上の成型体が得られた。
△:破れは無いが、成型体の表面に斑がある、延伸斑がある、糸ケバが目立つ等の問題がある。
×:破れが発生し、成形性不良、高さ1.3cmの金型において成型指数1.9以上、高さ3.2cmの金型において成型指数3.4以上の成型体が得られなかった等の問題がある。
(9)コンポスト処理試験
コンポスト処理試験機を用いて、60℃の一定環境下で4週間後の試料片の状態を目視で観察し、下記の評価基準で判定した:
○:試料片が小片化した。
×:試料の外観変化が見られなかった。
〔実施例1〕
温度210℃でMFR値が30g/10分、D体比率1.4%のポリ乳酸に、ポリブチレンサクシネート(融点110℃)を10質量%添加し、スパンボンド法により、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度220℃、紡速1000m/分で、フィラメント群を移動捕集面に向けて押出し、長繊維ウェブ(円形断面)を調製した。
次いで、一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、仮圧着を行った。用いたエンボスロールは、圧着面積比率(表1のエンボス率)が14%であり、上・下ロール温度45℃の条件下でロール線圧300N/cmで仮圧着した。
次いで、この仮圧着ウェブを、30℃で保管後72時間後、フェルトカレンダー(ドラム直径2,500mm、温度135℃、加工速度10m/分)で熱処理を行い、長繊維不織布を得た(目付250g/m、繊維径30μm)。
〔実施例2〜5〕
樹脂温度及び紡速を変化させ、生分解性長繊維不織布の目付を、それぞれ、150、90、25、及び70g/mとした以外は、実施例1と同様にして、長繊維不織布を製造した。
〔実施例6〜9〕
実施例6〜9においては、紡速及び樹脂温度を変化させた以外は実施例2と同様にして生分解性長繊維不織布を得た。得られた不織布の繊維径はそれぞれ、28、26.5、18、及び34μmであった。
〔実施例10〕
使用した樹脂の吐出量を変え、樹脂温度及び紡速を変化させたこと以外は、実施例2と同様にして、長繊維不織布を製造した。得られた生分解性長繊維不織布の繊維径は26.5μmであった。
〔実施例11〕
使用した樹脂の吐出量を変え、紡速を変化させたこと以外は、実施例6と同様にして、長繊維不織布を製造した。得られた生分解性長繊維不織布の繊維径は22μmであった。
〔実施例12〕
使用した樹脂の吐出量を変え、紡速を2695m/min.とし、樹脂温度及び製造された生分解性長繊維不織布のフェルトカレンダー処理を行った時の温度を150℃としたこと以外は、実施例6と同様にして、長繊維不織布を製造した。得られた生分解性長繊維不織布の繊維径は12μmであった。
〔実施例13、14〕
実施例13及び14で使用した樹脂中のポリブチレンサクシネートの添加をそれぞれ25、5質量%とし、紡速を変化させたこと以外は、実施例2と同様にして、長繊維不織布を製造した。得られた両方の不織布の目付は90g/m2とした。
〔実施例15、16〕
実施例15、16で製造した生分解性長繊維不織布を圧着する際のフェルトカレンダー温度をそれぞれ110、120℃としたこと以外は、実施例6と同様にして、長繊維不織布及び成型体を製造した。
〔実施例17〕
使用した樹脂の樹脂温度を220℃、フェルトカレンダーによる加工速度を20m/min.としたこと以外は請求項6と同様の方法で長繊維不織布を製造した。
〔実施例18〕
D体比率7%のポリ乳酸樹脂を用いたこと以外は実施例2と同様の方法で長繊維不織布を製造した。
〔比較例1〕
フェルトカレンダーで熱処理しなかったこと以外は、実施例2と同様にして長繊維不織布を製造した。成型の際に寸法変化率が大きく、成型性が悪かった。
〔比較例2〕
紡速を変え、得られた長繊維不織布の繊維径25μmとしたこと以外は、比較例1と同様にして長繊維不織布を製造した。
〔比較例3〕
温度210℃でMFR値が30g/10分のポリ乳酸を芯成分、温度210℃でMFR値が60g/10分のポリ乳酸を芯成分に用い、鞘芯比を1:1とし、スパンボンド法により、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度220℃、紡速1136m/分で、フィラメント群を移動捕集面に向けて押出し、長繊維ウェブ(円形断面)を調製した。
次いで、一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、仮圧着を行った。用いたエンボスロールは、圧着面積比率が20%(であり、上・下ロール温度100℃の条件下でロール線圧300N/cmで熱圧着することで、長繊維不織布を製造した。
〔比較例4〕
温度210℃でMFR値が30g/10分、D体比率1.4%のポリ乳酸を、スパンボンド法により、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度220℃、紡速4042m/分で、フィラメント群を移動捕集面に向けて押出し、長繊維ウェブ(円形断面)を調製した。次いで、一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、部分熱圧着を行った。用いたエンボスロールは、圧着面積比率が14%であり、上下ロール温度125℃の条件下でロール線圧400N/cmにて部分圧着し、長繊維不織布を製造した。
〔比較例5〕
温度300℃下のMFR値が25g/10分のポリエチレンテレフタレート(PET)をスパンボンド法により、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度290℃で、フィラメント群を移動捕集面に向けて押し出し、目付150g/mのポリエチレンテレフタレート繊維ウェブ(融点260℃、紡糸速度1800m/分、平均繊維径22μm、円形断面)を調製した。
次いで、一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、部分熱圧着を行った。用いたエンボスロールは、圧着面積比率が14%であり、上下ロール温度65℃の条件下でロール線圧400N/cmにて部分圧着した。
次いで、この部分圧着ウェブを30℃で保管1時間後にフェルトカレンダー(ドラム直径2,500mm、温度130℃、加工速度20m/分)で熱処理を行い、ポリエチレンテレフタレート長繊維不織布を得た。
実施例、比較例の結果を以下の表1に示す。また、参考として、図1に実施例1、比較例1の動的粘弾性の温度依存性評価の測定結果を示す。尚、表1に記載の貯蔵弾性率の温度に対する変化の最小値は実施例1〜14及び比較例1〜5のすべてについて3MPa/℃以上であった。
Figure 2019073809
Figure 2019073809
本発明の生分解性長繊維不織布は、優れた成形性を有し、かつ高伸度であり、複雑な形状の容器を形成することができるため、生活資材向け容器や工業資材向け容器、車両内装材・外装材、防音材、吸音材、部品搬送トレー、青果物トレー、食品容器、育苗ポッド、フィルター用途などの幅広い分野に好適に利用可能である。更に、生分解性やコンポスト性が要求される分野においても好適に利用可能である。
1 実施例1
2 比較例1

Claims (5)

  1. 生分解性樹脂を含むポリエステル系樹脂からなる長繊維で構成され、目付20〜300g/mであり、動的粘弾性評価の温度依存性試験において、90℃〜140℃の温度領域での貯蔵弾性率が10〜500MPaであり、かつ損失正接(tanδ)の極大値が0.5以下であることを特徴とする生分解性長繊維不織布。
  2. 10〜70℃における前記貯蔵弾性率が200MPa以上である、請求項1に記載の生分解性長繊維不織布。
  3. 30〜140℃における前記貯蔵弾性率の変化が3〜50MPaである、請求項1又は2に記載の生分解性長繊維不織布。
  4. 前記ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸系重合体を含む脂肪族ポリエステルからなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生分解性長繊維不織布。
  5. 前記脂肪族ポリエステル樹脂が、脂肪族ポリエステル共重合体を全樹脂質量に対して、0.5〜30質量%さらに含む、請求項4に記載の生分解性長繊維不織布。
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