JP2019073407A - ガラスロービング及びガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

ガラスロービング及びガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法 Download PDF

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晃 國友
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Abstract

【課題】各ガラス単繊維の長さの違いに起因して、最終製品としてのガラス繊維強化樹脂成形体の表面に現れる膨れの発生を防止し、外観品質に優れたガラス繊維強化樹脂成形体を得ることができるガラスロービング及びガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法を提供する。【解決手段】有機皮膜12によって被覆された複数のガラス単繊維11を集束してなるガラスストランド10を巻取り形成されたガラスロービング1であって、ガラス単繊維11は、酸化物換算でアルカリ金属元素の含有量が5質量%未満のガラスからなり、前記ガラスストランド10の強熱減量X%は、下式(1)の範囲であり、前記有機皮膜12のスチレン溶解性Y%は、下式(2)を満たすことを特徴とする。0.2≦X≦0.7 (1)、Y≦100X+20 (2)。【選択図】図2

Description

本発明は、ガラスロービング、及び当該ガラスロービングを構成するガラスストランドを強化繊維として備えるガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法の技術に関する。
従来より、ガラスストランドによって強化された熱硬化性樹脂成形体(以下、「ガラス繊維強化樹脂成形体」と記載する)の成形方法の一つとして、引抜成形法が知られている。
引抜成形法は、主に以下の手順に従い実施される。
即ち、先ず連続するガラスストランドが巻き取られてなるガラスロービングを用意し、ガラスロービングよりガラスストランドを引き出し、引き出したガラスストランドを、未硬化(液体状態)の熱硬化性樹脂を満たした槽に浸漬する。
そして、熱硬化性樹脂が含浸したガラスストランド(樹脂含浸ガラスストランド)を、加熱した引抜金型の通路に引き通すことにより、熱硬化性樹脂を加熱硬化させ、ガラス繊維強化樹脂成形体を成形する。
一方、引抜成形法に用いられるガラスロービングは、主に以下の手順に従い製作される(例えば、「特許文献1」を参照)。
即ち、先ず加熱された溶融炉内に所定のガラス原料を投入し、当該溶融炉にて溶融された溶融ガラスを、白金製のブッシングに設けられた数十〜数千個のノズルより引き出して、直径数μm〜二十数μmのガラス単繊維を得る。
続いて、引き出された複数のガラス単繊維の表面に、有機成分を含むサイジング剤(集束剤)を塗布し、これらのガラス単繊維を引き揃えながら、1本のガラスストランドに集束する。
そして、集束したガラスストランドを、回転するコレットに綾掛けしながら巻き取り、巻き取ったガラスストランドの巻回体を乾燥させる。これにより、サイジング剤に含まれる水分が蒸発して各ガラス単繊維の表面に有機皮膜が形成され、当該有機皮膜により複数のガラス単繊維は1本のガラスストランドとして強固に集束する。
その後、巻き取られたガラスストランドの巻回体の最内層及び最外層より数層のガラスストランドを各々引き出して除去することにより、ガラスロービングを得る。
特表2005−529047号公報
ところで、前述した製作手順に従いガラスロービングを製作する上で、ガラスストランドを構成する複数のガラス単繊維においては、全てのガラス単繊維の長さを同等にすることが困難である。
一方、例えば、ロッド状のガラス繊維強化樹脂成形体を引抜成形法によって成形する場合、スチレンを含む未硬化(液体状態)の熱硬化性樹脂にガラスストランドを浸漬させると、当該スチレンによって、各ガラス単繊維の表面に形成された有機皮膜が溶解され、ガラスストランドが解繊しやすくなる。
このようなことから、上記のガラスストランドを構成する複数のガラス単繊維の長さが同等でないと、引抜金型の通路にガラスストランドを引き通した際、長いガラス単繊維がガラスストランドの外表面から突出し、突出したガラス単繊維が加熱硬化後に膨れとなって、ガラス繊維強化樹脂成形体の表面に現れ、当該ガラス繊維強化樹脂成形体の外観品質の低下を引き起こす要因となっていた。
なお、ガラスロービングの製造工程において、複数のガラス単繊維の長さの違いを極力小さくすることが、ガラス繊維強化樹脂成形体の表面の膨れの発生を防止するための有効な手段として考えられるが、技術的困難性が高く、他の方法によりこのような問題を解決する必要がある。
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、ガラス繊維強化樹脂成形体の表面の膨れの発生を防止し、外観品質に優れたガラス繊維強化樹脂成形体を得ることができるガラスロービング及びガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、本発明に係るガラスロービングは、有機皮膜によって被覆された複数のガラス単繊維を集束してなるガラスストランドを巻取り形成されたガラスロービングであって、前記ガラス単繊維は、酸化物換算でアルカリ金属元素の含有量が5質量%未満のガラスからなり、前記ガラスストランドの強熱減量X%は、下式(1)の範囲であり、前記有機皮膜のスチレン溶解性Y%は、下式(2)を満たすことを特徴とする。
0.2≦X≦0.7 (1)
Y≦100X+20 (2)
このような構成からなるガラスロービングは、例えばロッド状の熱硬化性樹脂成形体(ガラス繊維強化樹脂成形体)を成形する引抜成形法において、未硬化の熱硬化性樹脂にガラスストランドを浸漬しても有機皮膜が溶解しにくい。
そのため、当該ガラスストランドが解繊することを抑制し、各ガラス単繊維の長さの違いに起因するガラス単繊維の突出の発生を防止することができる。
その結果、表面の膨れの発生を防止し、ガラス繊維強化樹脂成形体の外観品質の向上を図ることができる。
また、本発明に係るガラスロービングにおいて、前記有機皮膜のスチレン溶解性Y%は、下式(3)を更に満たすことが好ましい。
100X≦Y (3)
これにより、ガラス繊維強化樹脂成形体の強度(最大曲げ強度や弾性率等)が低下しにくい。
また、本発明に係るガラスロービングにおいて、前記有機皮膜は、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
本発明におけるガラスロービングにおいて、有機皮膜がエポキシ樹脂を含有すると、ガラス繊維樹脂成形体の膨れの発生を効率的に抑制できる。
また、本発明に係るガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法は、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のガラスロービングを構成する前記ガラスストランドを強化繊維として備えるガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法であって、前記ガラス繊維強化樹脂成形体は、引抜成形法によって成形されることを特徴とする。
ここで、例えば熱硬化性樹脂からなるガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法としては、主に引抜成形法やフィラメントワインディング法等が挙げられるが、当該フィラメントワインディング法においては、未硬化の熱硬化性樹脂に浸漬させたガラスストランドを、円筒形状のマンドレルに巻き付けることによって成形するため、当該ガラスストランドに生じた解繊による悪影響はあまり見られない。
一方、引抜成形法においては、未硬化の熱硬化性樹脂に浸漬させたガラスストランドを、加熱された引抜金型の貫通通路内に引き通すことによって成形するため、前述したように、当該ガラスストランドに生じた解繊による影響は、成形品(ガラス繊維強化樹脂成形体)に膨れを発生させ、品質低下を引き起こす要因となる。
本発明におけるガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法は、このようなガラスストランドに生じた解繊による影響を受けやすい引抜成形法であっても、外観性に優れた成形品を得ることができ、当該成形品の品質向上を図ることができるものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係るガラスロービング及びガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法によれば、各ガラス単繊維の長さの違いに起因して、ガラス繊維強化樹脂成形体の膨れの発生を抑制し、外観品質に優れたガラス繊維強化樹脂成形体を得ることができる。
本発明の一実施形態におけるガラスロービングを示した斜視図である。 ガラスロービングを構成するガラスストランドの断面形状を示した断面模式図である。 ガラスロービング及びガラス繊維強化樹脂成形体の製造工程を示した模式図である。
次に、本発明を実施するための形態について、図1乃至図3を用いて説明する。
[ガラスロービング1の構成]
先ず、本発明を具現化するガラスロービング1の構成について、図1及び図2を用いて説明する。
本実施形態におけるガラスロービング1は、複数のガラス単繊維を集束させた1本のガラスストランドが巻き取られた、所謂ダイレクトワインドロービング(DWR:Direct Winding Roving)であって、図1に示すように、連続する紐状のガラスストランド10が、幾層にも重なるようにして巻き取られてなる中空円筒形状の巻回体として構成される。
なお、ガラスロービング1の構成については、本実施形態に示されるようなDWRに限定されるものではなく、例えば、1本のガラスストランドを巻回体として一旦巻き取り乾燥させて、その後、数個〜数十個の巻回体より引き出されたガラスストランドを1本に引き揃えて、再度中空円筒気状に巻き取ることにより製作される合糸ロービングにより構成されることとしてもよい。
ガラスストランド10は、図2に示すように、有機皮膜12・12・・・によって外表面を覆われた複数のガラス単繊維11・11・・・からなり、これら複数のガラス単繊維11・11・・・は、互いに当該有機皮膜12・12・・・によって結着し、集束している。
ここで、本実施形態におけるガラスストランド10は、繊維径が6μm以上24μm未満であり、且つ総本数が2000本以上8000本以下である複数のガラス単繊維11・11・・・からなる。
なお、複数のガラス単繊維11・11・・・の繊維径及び総本数の組み合わせについては、特に限定されるものではないが、例えば、繊維径が17μmであって総本数が2000本のガラス単繊維からなる1200texのガラスストランド、繊維径が17μmであって総本数が4000本のガラス単繊維からなる2400texのガラスストランド、または繊維径が23μmであって総本数が2000本のガラス単繊維からなる2400texのガラスストランドなどが、広く一般的に用いられている。
ガラス単繊維11は、酸化物換算でアルカリ金属元素の含有量が、5質量%未満のガラスからなる。
この理由は、酸化物換算でアルカリ金属元素の含有量が、5質量%以上のガラスからなると、未硬化(液体状態)の熱硬化性樹脂にガラスストランド10を浸漬させ、熱硬化性樹脂を固化させ、時間が経過するにつれて、ガラス中のアルカリ金属成分が熱硬化性樹脂へ溶出し、ガラスストランド10の有機皮膜と熱可塑性樹脂との接着性低下に起因する強度低下が生じやすいからである。
なお、ガラスは、酸化物換算でアルカリ金属元素の含有量が、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
また、ガラスは、酸化物換算でアルカリ金属元素の含有量が、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。
なお、本明細書において、「アルカリ金属元素」とは、Li、Na、及びKであり、酸化物換算でのアルカリ金属元素の含有量は、LiO、NaO、及びKOの合量である。
このようなガラスとしては、例えば、Eガラス、Dガラス、及びSガラスなどが挙げられる。
特に、Eガラスは安価であり、且つ機械的強度に優れた熱硬化性樹脂成形体を得やすいため好ましい。また、Sガラスは、Eガラスに比べてより一層機械的強度に優れた熱硬化性樹脂成形体を得やすいために好ましい。
有機皮膜12としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリ酢酸ビニル、及びポリフェニレンスルフィド樹脂の群から選択される1種以上の熱可塑性樹脂、または、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、エポキシ樹脂、及びポリウレタン樹脂の群から選択された1種以上の熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
ここで、本実施形態においては、ガラスストランド10の強熱減量X(単位%)が下式(1)の範囲にあり、有機皮膜12のスチレン溶解性Y(単位%)が下式(2)を満たすように、ガラスロービング1が構成されている。
Y≦100X+20 (1)
0.2≦X≦0.7 (2)
なお、強熱減量Xは、JIS R3420(2013年)に従い、測定することができる。
また、スチレン溶解性Yは、以下の手順に従い、測定することができる。
まず、測定対象とするガラスストランドを5m分2本用意し、1本目の未処理のガラスストランドの強熱減量K1を測定する。次に、2本目のガラスストランドを500gのスチレンに25℃で30分間浸漬処理した後に、スチレンを完全に乾燥させる。そして、乾燥後のガラスストランドの強熱減量K2を測定する。
こうして得られた1本目の未処理のガラスストランドの強熱減量K1に対する、2本目の処理済みのガラスストランドの強熱減量K2の減少率(K1−K2)/K1×100を、スチレン溶解性Yとする。
このような構成を有することにより、例えば後述するように、ロッド状のガラス繊維強化樹脂成形体101(図3を参照)を成形する引抜成形法において、スチレンを含有する未硬化の熱硬化性樹脂31にガラスストランド10(以下、適宜「ガラスストランド群10A」と記載する)を浸漬しても、有機皮膜12が溶解しにくくなる。
よって、このような構成により、未硬化の熱硬化性樹脂31に含浸された当該ガラスストランド10(以下、適宜「樹脂含浸ガラスストランド群10B」と記載する)が解繊するのを抑制することができ、各ガラス単繊維11の長さの違いに起因するガラス単繊維11の突出の発生を防止することができる。
その結果、ガラス繊維強化樹脂成形体101の表面の膨れの発生を防止し、外観品質の向上を図ることができる。
また、ガラスストランド10の強熱減量X(単位%)は、
0.3≦X≦0.6 (2−2)
の範囲にあることが好ましい。
これにより、ガラスストランド10(ガラスストランド群10A)が、熱硬化性樹脂31に含浸させる前に解繊することを抑制することができる。
また、ガラスロービング1よりガラスストランド10(ガラスストランド群10A)を引き出しやすい。
また、本実施形態においては、有機皮膜12のスチレン溶解性Y(単位%)が、下式(3)を満たすことが好ましい。
100X≦Y (3)
これにより、ガラス繊維強化樹脂成形体101の強度(最大曲げ強度や弾性率等)が低下しにくい。
これは、スチレン溶解性Yが式(3)を満たしていると、未硬化(液体状態)の熱硬化性樹脂31にガラスストランド10(ガラスストランド群10A)を浸漬させる際に、熱硬化性樹脂31が当該ガラスストランド10内に含浸しやすくなるためである。
また、有機皮膜12は、前述したように、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含有することが好ましく、本実施形態においては、特にエポキシ樹脂を含有することがより好ましい。
有機皮膜12がエポキシ樹脂を含有すると、スチレン溶解性Yの上昇を抑制でき、ガラス繊維強化樹脂成形体101の膨れの発生を、より効率的に抑制できる。
[ガラスロービング1の製造方法]
次に、ガラスロービング1の製造方法について、図3を用いて説明する。
先ず、前工程において、所定のガラス原料をガラス溶融炉(図示せず)内に投入し、当該ガラス原料を溶融することにより、溶融ガラスを生成する。
続いて、生成された溶融ガラスを白金製のブッシング20の底部に設けられた複数のノズル20a・20a・・・から引き出す。
これにより、複数の糸状のガラス単繊維11・11・・・を得る。
ここで、本実施形態においては、2000個以上8000個以下のノズル20a・20a・・・が、ブッシング20の底部に設けられており、これらのノズル20a・20a・・・の個数に対応して、2000本以上80000本以下のガラス単繊維11・11・・・・が各々成形される。
また、ガラス単繊維11の繊維径は、後述するコレット23への巻取り速度(即ち、複数のガラス単繊維11・11・・・の紡糸速度)や溶融ガラスの粘度などを変更することにより調整可能である。本実施形態においては、前述したように、各ガラス単繊維11の繊維径が6μm以上24μm未満の範囲内となるように、巻取り速度(紡糸速度)及び溶融ガラスの粘度が調整された状態にて、複数のガラス単繊維11・11・・・が引き揃えられる。
次に、サイジング剤(集束剤)は、塗布ローラー21を用いて、成形された複数のガラス単繊維11・11・・・の外表面に、各々均等に塗布される。
ここで、サイジング剤(集束剤)は、後に乾燥されて、その固形成分が各ガラス単繊維11の表面を覆いつつ、複数のガラス単繊維11・11・・・を互いに結着させる有機皮膜12(図2を参照)を形成する。
サイジング剤(集束剤)は、例えば、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリ酢酸ビニル、及びポリフェニレンスルフィド樹脂の群から選択された1種以上の熱可塑性樹脂、または、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、エポキシ樹脂、及びポリウレタン樹脂の群から選択された1種以上の熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
また、サイジング剤(集束剤)には、潤滑剤、ノニオン系の界面活性剤、及び帯電防止剤などの各成分を添加することが可能であり、これらの成分の配合比については、必要に応じて適宜設定すればよい。
本実施形態においては、上述の式(1)及び(2)を満たすようにサイジング剤をガラス単繊維の外表面に塗布することにより、ガラス繊維強化樹脂成形体101に発生する加熱硬化後の膨れの発生を抑制し、当該ガラス繊維強化樹脂成形体101の外観品質の低下を防止することを可能としている。
スチレン溶解性の調整は、例えば、スチレン溶解性に対する寄与度の高い皮膜成分である、ポリ酢酸ビニルやポリウレタン樹脂の添加量を調整したり、その種類(分子量、直鎖または分岐の有無)を変更することでスチレン溶解性を調整することができる。
例えば、分子量が大きくなることによりスチレン溶解性が低くなる。また、直鎖であればスチレン溶解性が高くなる。
複数のガラス単繊維11・11・・・の各々の外周面にサイジング剤(集束剤)を塗布し、これら複数のガラス単繊維11・11・・・を集束シュー22によって引き揃えながら集束させる。
これにより、連続する紐状のガラスストランド10が成形される。
次に、成形されたガラスストランド10を、回転するコレット23に綾を掛けながら巻き取り、中空円筒形状の巻回体1Aを得る。
その後、得られた巻回体1Aを、およそ100℃〜150℃の温度範囲にて1時間〜24時間程度乾燥させ、その後、コレット23より抜脱する。
これにより、各ガラス単繊維11の外周面においては、サイジング剤(集束剤)の固形成分が乾燥して有機被膜12が成形され、複数のガラス単繊維11・11・・・からなるガラスストランド10が巻き取られてなるガラスロービング1が得られる。
以上のような手順に従い成形されたガラスロービング1は、中空円筒形状に巻き取られた状態によって保管され、その後、必要に応じて使用することができる。
なお、ガラスロービング1は、防塵及び汚れの防止や、繊維表面の保護などを目的として、有機フィルム材、例えばシュリンク包装やストレッチフィルムなど、用途に応じた包装により包装して保管することができる。
また、このような中空円筒形状のガラスロービング1であれば、複数のガラスロービング1・1・・・を複数段に積層させた状態にてまとめて保管することもできる。
[ガラス繊維強化樹脂成形体101の製造方法]
次に、前述したガラスロービング1を用いて、例えばロッド状のガラス繊維強化樹脂成形体101を成形する場合の製造方法について、図3を用いて説明する。
ガラス繊維強化樹脂成形体101は、例えば連続する複数(本実施形態においては3本)のガラスストランド10・10・10によって強化されたロッド状の熱硬化性樹脂成形体であって、引抜成形法からなる成形工程S100によって製造される。
成形工程S100は、主に含浸工程S101、加熱工程S102、及び切断工程S103により構成される。
そして、加熱工程S102と切断工程S103との間には引抜装置50が配設されており、後述するように、当該引抜装置50によって加熱硬化された樹脂含浸ガラスストランド群10B(樹脂成形体10C)を引抜くことにより、複数のガラスロービング1・1・1よりガラスストランド10・10・10が各々引き出されてガラスストランド群10Aを構成し、その後、樹脂貯留槽30、引抜金型40、引抜装置50、及び切断装置60と順に当該ガラスストランド群10Aが搬送されることとなり、最終製品としてのロッド状のガラス繊維強化樹脂成形体101が形成される。
含浸工程S101は、複数のガラスロービング1・1・1より各々引き出された連続する複数本のガラスストランド10・10・10を互いに引き揃えてガラスストランド群10Aを形成し、当該ガラスストランド群10Aを未硬化(液体状態)の熱硬化性樹脂31に浸漬させて樹脂含浸ガラスストランド群10Bを形成する工程である。
これにより、ガラスストランド群10Aには未硬化の熱硬化性樹脂31が含浸され、樹脂含浸ガラスストランド群10Bが形成される。
未硬化の熱硬化性樹脂31は、樹脂貯留槽30に貯留されている。
ここで、樹脂貯留槽30内には、ガラス繊維強化樹脂成形体101のマトリックス樹脂となる未硬化の熱硬化性樹脂31を含むスチレン溶液が貯留されている。熱硬化性樹脂31は、例えばビニルエステル樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂などが好ましい。スチレン溶液中の熱硬化性樹脂31の含有量は、40%前後であることが好ましい。
また、スチレン溶液には、硬化剤や離型剤等が含有されていてもよく、また、硬化促進剤、反応性希釈剤、着色剤、充填剤、増粘剤及び低収縮剤などが含有されていてもよい。
なお、樹脂貯留槽30より引き出された樹脂含浸ガラスストランド群10Bにおいては、スチレン溶液(未硬化の熱硬化性樹脂31)中のスチレンによって、複数のガラス単繊維11・11・・・の表面を覆う有機皮膜12・12・・・の一部が、溶解された状態となっている。
しかしながら、本実施形態においては、前述の式(1)及び(2)のような範囲の強熱減量X、スチレン溶解性Yとすることにより、当該熱硬化性樹脂31中に含まれたスチレンによって溶解された後であっても、有機皮膜12が溶解されにくい。そのため、樹脂含浸ガラスストランド群10Bが解繊しにくく、長さの異なるガラス単繊維11を含むガラスストランド群10Aであっても、当該樹脂含浸ガラスストランド群10Bの外表面におけるガラス単繊維11の突出の発生を抑制できる。
加熱工程S102は、樹脂含浸ガラスストランド群10Bを加熱硬化して樹脂成形体10Cを得る工程である。
加熱工程S102は、貫通通路40aを有した引抜金型40により実行される。
引抜金型40には図示せぬ加熱ヒーターが備えられており、当該加熱ヒーターによって、引抜金型40は、常時所定の加熱温度にて維持された状態となっている。
また、貫通通路40aの断面形状は、最終的に得られる樹脂成形体10Cの形状等に基づき設定されており、例えば本実施形態においては、円形状に設定されている。
なお、貫通通路40aの内周面には、流動パラフィン、溶剤系ワックス、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール溶液などの離型剤が塗布されていてもよい。
ここで、引抜金型40の下流側には引抜装置50が配設されており、当該引抜装置50は、例えば上下方向に対向して配置される一対の無端状コンベア51・51などにより構成される。
そして、樹脂貯留槽30より引き出された樹脂含浸ガラスストランド群10Bは、一対の無端状コンベア51・51に挟持された状態にて引抜装置50によって引抜かれることにより、引抜金型40へと導かれ、貫通通路40a内を通過した後、再び当該引抜金型40の外部へと引き出される。
これにより、樹脂含浸ガラスストランド群10Bは、貫通通路40aの断面形状に外形を規制されつつ、加熱硬化されることとなり、連続する樹脂成形体10Cが成形される。
切断工程S103は、成形された樹脂成形体10Cを、最終製品として所定の長さに切断する工程である。
切断工程S103は、例えば円盤形状のブレード61や、軸心を中心にして当該ブレード61を回転駆動させる駆動モータ62などからなる切断装置60により実行される。
そして、引抜金型40より引き出され、引抜装置50を通過した樹脂成形体10Cは、高速回転する切断装置60のブレード61によって所定の位置にて切断される。
これにより、ロッド状のガラス繊維強化樹脂成形体101が得られ、成形工程S100は終了する。
以上のように、本実施形態におけるガラス繊維強化樹脂成形体101の製造方法は、前述したガラスロービング1を構成するガラスストランド10を強化繊維として備えるガラス繊維強化樹脂成形体101の製造方法であって、ガラス繊維強化樹脂成形体101は、引抜成形法によって成形されることを特徴とする。
ここで、例えばロッド状の熱硬化性樹脂からなるガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法としては、一般的に引抜成形法やフィラメントワインディング法等が挙げられるが、当該フィラメントワインディング法においては、未硬化の熱硬化性樹脂に浸漬させたガラスストランドを、円筒形状のマンドレルに巻き付けるけることによって成形するため、当該熱硬化性樹脂のスチレン溶解性によってガラスストランドに生じた解繊による影響はあまり見られない。
一方、引抜成形法においては、本実施形態に示すように、未硬化の熱硬化性樹脂31に浸漬させたガラスストランド10(樹脂含浸ガラスストランド群10B)を、加熱された引抜金型40の貫通通路40a内に引き通すことによって成形するため、前述したように、当該熱硬化性樹脂31のスチレン溶解性によってガラスストランド10(樹脂含浸ガラスストランド群10B)に生じた解繊による影響は、ガラス繊維強化樹脂成形体101の表面に膨れを発生させ、品質低下を引き起こす要因となる。
本実施形態におけるガラス繊維強化樹脂成形体101の製造方法は、このようなガラスストランド10(樹脂含浸ガラスストランド群10B)に生じた解繊による悪影響を受けやすい引抜成形法であっても、外観性に優れた成形品を得ることができ、当該成形品の品質向上を図ることができるものである。
次に、本発明を具現化するガラスロービングについて、発明の有効性を判断するために、以下のような実験を行った。
先ず始めに、引抜成形法に用いられる本発明のガラスロービングのサンプルとして、実施例1、2、3及び比較例1に係る樹脂含浸ガラスストランドを用意した。
ここで、これらのサンプル(実施例1、2、3及び比較例1)は、ともに以下に示す手順に従い、製作した。
まず、Eガラス(酸化物換算でアルカリ金属元素を2質量%含有)からなるガラス単繊維の繊維径及び集束本数が異なる種々のガラスストランドからなるガラスロービングを用意し、これらのガラスロービングよりガラスストランドを各々引き出し、3m/分の速度で走行させながら、固形成分換算で、ラジカル開始剤パーカドックスC−50L(化薬アグゾ製)を2質量%、不飽和ポリエステル樹脂N−350L(ジャパンコンポジット製)を98質量%含む未硬化(液体状態)の熱硬化性樹脂を40質量%含むスチレン溶液中に、これらのガラスストランドを各々浸漬させた。
続いて、前記スチレン溶液中に浸漬させたガラスストランド(樹脂含浸ガラスストランド)を、直径が2.0mmであるノズル内に通過させ、当該ノズルを通過した後に各ガラスストランド(樹脂含浸ガラスストランド)から飛び出したガラス単繊維(即ち、樹脂ガラスストランドの外表面のガラス単繊維の突出)が3分間の内で何回発生したかを目視により確認し、確認された回数を含浸不良回数として記録した。
ここで、実施例1においては、ガラス単繊維の繊維径が17μmであり、且つ集束本数が2000本である、番手が1200texのガラスストランドが巻回されたガラスロービングを用い、当該ガラススロービングには、ガラスストランドの強熱減量が0.3%であり、且つ有機皮膜のスチレン溶解性が45%となる、ポリエステル成分を含有したサイジング剤を用いた。なお、エポキシ樹脂をサイジング剤に含有させ、その量を調整することによりスチレン溶解性を調整した。
また、実施例2においては、繊維径、集束本数、及び番手が実施例1と同じガラスロービングを用い、当該ガラススロービングにはガラスストランドの強熱減量が0.6%であり、且つ有機皮膜のスチレン溶解性が70%となる、ポリエステル成分を含有したサイジング剤を用いた。なお、エポキシ樹脂をサイジング剤に含有させ、その量を調整することによりスチレン溶解性を調整した。
さらに、実施例3においては、ガラス単繊維の繊維径が23μmであり、且つ集束本数が2000本である、番手が2400texのガラスストランドが巻回されたガラスロービングを用い、当該ガラススロービングには、ガラスストランドの強熱減量が0.5%であり、且つ有機皮膜のスチレン溶解性が70%となる、ポリエステル成分を含有したサイジング剤を用いた。なお、エポキシ樹脂をサイジング剤に含有させ、その量を調整することによりスチレン溶解性を調整した。
一方、比較例1においては、繊維径、集束本数、及び番手が実施例1と同じガラスロービングを用い、当該ガラススロービングには、ガラスストランドの強熱減量が0.3%であり、且つ有機皮膜のスチレン溶解性が80%である、ポリエステル成分を含有したサイジング剤を用いた。
なお、実施例1、2、3におけるサイジング剤(集束剤)においては、他の比較例1におけるサイジング剤(集束剤)と異なり、エポキシ樹脂を含有することとした。
こうして得られた結果を、[表1]によって示す。
Figure 2019073407
[表1]に示すように、比較例1における樹脂含浸ガラスストランドにおいては、5回もの含浸不良回数が確認されたものの、実施例1、2、3における樹脂含浸ガラスロービングにおいては、ともに2回の含浸不良回数しか確認されなかった。
また、各々のサンプルに対して、サイジング剤(集束剤)の強熱減量及びスチレン溶解性の関係を確認すると、実施例1、2、3における樹脂含浸ガラスロービングにおいては、ともに前述した上式(1)(2)の関係式を満たすものの、比較例1における樹脂含浸ガラスロービングにおいては、前述した上式(2)の関係式を満たしていなかった。
なお、比較例1におけるサイジング剤(集束剤)においては、前述したように、他の実施例1、2、3におけるサイジング剤(集束剤)と異なり、エポキシ樹脂が含有されておらず、特に強熱減量が同等な実施例1と比較して、スチレン溶解性が高くなっている。
以上のことから、前述した上式(1)(2)の関係式を満たすガラスロービングが得られるようなサイジング剤を使用することにより、樹脂含浸ガラスストランドの表面のガラス単繊維の突出を抑制し、ガラス繊維強化樹脂成形体に発生する加熱硬化後の膨れをより効果的に防止することが可能であることが確認できた。
1 ガラスロービング
10 ガラスストランド
10A ガラスストランド群(ガラスストランド)
10B 樹脂含浸ガラスストランド群(ガラスストランド)
10C 樹脂成形体(ガラスストランド)
11 ガラス単繊維
12 有機皮膜
101 ガラス繊維強化樹脂成形体
X 強熱減量
Y スチレン溶解性

Claims (4)

  1. 有機皮膜によって被覆された複数のガラス単繊維を集束してなるガラスストランドを巻取り形成されたガラスロービングであって、
    前記ガラス単繊維は、酸化物換算でアルカリ金属元素の含有量が5質量%未満のガラスからなり、
    前記ガラスストランドの強熱減量X%は、下式(1)の範囲であり、
    前記有機皮膜のスチレン溶解性Y%は、下式(2)を満たす、
    ことを特徴とするガラスロービング。
    0.2≦X≦0.7 (1)
    Y≦100X+20 (2)
  2. 前記有機皮膜のスチレン溶解性Y%は、下式(3)を更に満たす、
    ことを特徴とする、請求項1に記載のガラスロービング。
    100X≦Y (3)
  3. 前記有機皮膜は、
    エポキシ樹脂を含有する、
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガラスロービング。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のガラスロービングを構成する前記ガラスストランドを強化繊維として備えるガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法であって、
    前記ガラス繊維強化樹脂成形体は、引抜成形法によって成形される、
    ことを特徴とするガラス繊維強化樹脂成形体の製造方法。
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