JP2004122683A - 繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】繊維強化熱硬化性樹脂を用いたフィラメントワインディング法により作製された円環は、切断面に強化繊維の浮きが生じたり、強化繊維が端部で切断されて強化繊維の強度が十分に活用されないばかりか、巻き締めテープを使用するため、表面に凹凸が発生しやすくなり、そのままでは回転モーメントのバランスが悪く、表面研磨による仕上げ工程が必要であるなど手間のかかるものであった。
【解決手段】繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法であって、円環の幅に幅を揃えた扁平な矩形のダイスから押し出したテープ状繊維強化熱可塑性樹脂を耳付きのマンドレルにリボン巻きする。
【選択図】図1
【解決手段】繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法であって、円環の幅に幅を揃えた扁平な矩形のダイスから押し出したテープ状繊維強化熱可塑性樹脂を耳付きのマンドレルにリボン巻きする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法にかかわるものであって、フライホイールやメカニカルジャイロのローターなど高速回転に供される軽量で回転モーメントのバランスに優れる円環の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化熱硬化性樹脂複合材料(FRP)を円環成形する方法としては、フィラメントワインディング法がよく知られている。このフィラメントワインディング法では円環の円周方向に強度が必要な場合、マンドレルに円周方向に互いの繊維軸が平行になるように密に巻いていくフープ巻きと呼ばれる方法で円筒が作製される。その工程は次のようなものである。
1.クリル等から強化繊維を供給し、樹脂浴で必要な未硬化の熱硬化性樹脂を付着させる。
2.このプリプレグをマンドレルにデリバリアイを通してマンドレル円周方向に密に巻回する。
3.所定の厚みまでプリプレグを巻回した後に含浸を促進するために熱収縮性のテープやシートを巻回する。
4.これをオートクレーブに投入し、所定の温度、圧力を掛けて養生し、樹脂を硬化させる。
5.表面の平滑性を得るために研磨を行う。
6.この様にしていられた円筒をマンドレルから脱型した後に、所定の幅に切断して円環を得る。
また、近年では繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)を用いた成形材料も用いられるようになってきた。この様な材料をFRTPの場合もFRPの場合と比較してマンドレルへ巻きつける際に樹脂を溶融させる必要があることと、オートクレーブ中での養生が不要なことを除けば、円環の作製手順はほぼ同様であった。
この様にFRPやFRTPの円環を得るには、種々の工程を経る必要があるばかり、最後に切断工程を伴うために繊維の破断が生じたり、切断時にクラックが入るなど円環の強度低下を引き起こす原因となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような従来の方法では、工程が長く繊維破断やクラックによる円環の強度低下の要因が排除できないという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述のFRPやFRTPのフィラメントワインディング法の問題点を解決するために鋭意努力した結果、下記の構成により問題を解決できることを見出した。
即ち、本発明は、
1)あらかじめ円環の幅に幅を揃えたテープ状繊維強化熱可塑性樹脂を耳付きのマンドレルにリボン巻きすることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法。
2)テープ状繊維強化熱可塑性樹脂を円環の幅に幅を揃えた扁平な矩形のダイスから押し出し、耳付きのマンドレルにリボン巻きすることを特徴とする請求項1記載の繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法。
【0005】
以下に本発明を詳述する。
本発明に必要な技術の要素としては、1)強化繊維間への熱可塑性樹脂の含浸性に優れ、樹脂付着量が均一で、強化繊維の分散が良好な幅の変動が小さいテープ状成形用材料を提供することと、2)リボン巻き可能な耳付きのマンドレルにテープ状成形材料に均一に緊張力を付与しながら巻回することを挙げる事が出来る。
まず、含浸性に優れ、均一な樹脂付着が可能で、強化繊維の分散が良好な幅変動が小さいテープ状成形材料を提供する方法について述べる。
最初に強化繊維間への熱可塑性樹脂の含浸性を良好にするには、次のような方策を挙げる事が出来る。
1.事前に強化繊維を十分に開繊すること。
2.強化繊維が熱可塑性樹脂に接触する前に予熱すること。
3.開繊した強化繊維の片側から熱可塑性樹脂を圧入すると共に、強化繊維中を熱可塑性樹脂が貫通するまで熱可塑性樹脂に圧力を掛けること。
【0006】
1.の強化繊維の開繊方法としては、従来のバー開繊や、エアー開繊、振動付与による開繊などが知られているが、設備が安価で、効果も優れるバー開繊を選択することが好ましい。この様な開繊を行うことで、熱可塑性樹脂の含浸を容易にし、含浸性に優れたテープ状成形材料を得ることが出来る。
2.の強化繊維の加熱は、遠赤外過熱や、ヒータなどによる接触加熱などが考えられるが、設備の効率化を考えるとバー開繊においてバーを加熱して開繊と予熱を併せて行うことが好ましい。強化繊維が熱可塑性樹脂と接触する際に、強化繊維が冷えていると、樹脂の温度が低下して接触面で熱可塑性樹脂の粘度が高くなり、含浸を阻害する。よって、この予熱は熱可塑性樹脂の融点近傍まで強化繊維の温度を上昇させるものであることが好ましい。
3.の片側開放系による熱可塑性樹脂の圧入は例えば、曲面を有するダイを用いて実現することが出来る。曲面上の切ったスリットから熱可塑性樹脂を吐出して、強化繊維の一面に樹脂を付着させ、その後、曲面上を緊張力を保持したまま強化繊維を曲面に押し付けながら引き取ることで熱可塑性樹脂は強化繊維間に満遍なく含浸する。
【0007】
これらの工程を経ることにより、熱可塑性樹脂が強化繊維間に均一に含浸した成形材料を得ることが出来る。
次に樹脂の付着量を均一にするには、公知のダイスを用いてダイスで余剰な樹脂をそぎ落とすことにより実現できる。このダイス断面は矩形、円形を問わないが、本発明の主眼から、矩形であることが好ましい。ダイスの形状はダイス入り口から徐々に断面積が減少し、最終断面積を一定距離保持したまま出口にいたるような形状が好ましい。ダイス入り口が「ラッパ口」であることの効果は、樹脂を包含して見かけ体積が膨張した強化繊維を無理なく収束すると共に、徐々に樹脂のせん断圧力を高めていくことで含浸を促進しボイドを無くすことにより均一化できることにある。さらに出口形状の設計が重要であり、ダイス温度における樹脂の密度、強化繊維の繊度の変動などを加味して設計を行う必要がある。
【0008】
更に、強化繊維の分散性は、上述の開繊の状態とダイスの形状によって決定される。強化繊維の開繊はテンション斑があると開繊に斑が生じて分散性が悪くなる。ダイス出口の加工精度、特に面精度が悪くなると分散性が悪くなる。強化繊維の種類とダイスの材質によっては、操業時にダイスが磨耗して面精度に影響を与える。
テープ状成形材料の幅については、ダイスの形状と成形物の緊張力、ダイス出口からマンドレルまでの距離でほぼ決定される。ダイスの形状は最も寄与率が高く、この加工精度は重要である。更に、粘度が高い熱可塑性樹脂の場合は、引き抜くための緊張力が高くなり、糸が集束する傾向を示すためダイスに近い位置でマンドレルに巻回することが好ましい。このマンドレルの位置は、強化繊維に含浸した熱可塑性樹脂の温度がその融点または軟化点より20℃以上高い温度であることが更に好ましい。
【0009】
この様にして作製された繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を巻回するマンドレルは、1)耳付であること、2)膨張/収縮が可能な構造となっていることが必要である。
まず、円環の幅を決定するために耳付きとしてこの両耳の間に上記繊維熱可塑性樹脂成形材料を巻回する必要がある。これによって、幅精度が良好な円環を得ることが出来る。
また、マンドレルは円周方向に膨張・収縮するものであることが好ましい。これは、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の成形収縮を吸収して脱型を容易にするためである。具体的には、薄いジュラルミンの円筒に内圧を掛けて膨張させたままで繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を巻回し、固化後に圧力を抜くことによって達成することが出来る。
【0010】
これらの手法を用いることにより、工程を短縮することができる。
この様な製造方法に供することが出来る強化繊維としては、次のようなものを挙げる事が出来る。例えば、無機繊維であれば、炭素繊維やガラス繊維、金属繊維などを用いることが出来る。軽量で高剛性/高強度が必要な場合は炭素繊維が好ましい。電気絶縁性が必要な場合はガラス繊維が好ましい。回転モーメントを大きくして回転の安定性を重視する場合には金属繊維が好ましい。また、有機繊維であれば、ポリエステル系、ポリオレフィン系などの汎用有機繊維、ポリアラミド繊維やポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などの高強度繊維を用いることが好ましい。これらの高強度繊維は比重あたりの弾性率や強度が高いため、軽量化が可能で回転モーメントを低減することが出来る。これらの繊維には、樹脂との濡れや接着性を改善する目的で収束剤が塗布されていることが好ましく、組み合わせる樹脂との接着性を考慮して、熱可塑性樹脂を主成分とする収束剤であることが更に好ましい。
【0011】
また、上述の繊維と組み合わせる樹脂は、熱可塑性樹脂であれば、いずれでもよいが軽量で絶縁性が必要な場合はポリオレフィン系の樹脂が好ましく、耐熱性と強度が要求される場合はポリアミド系やポリエステル系の樹脂が好ましい。ポリプロピレンやポリエチレンを用いる場合は強化繊維との接着性を改善するために酸変性などが行われていることが好ましい。また、これらの樹脂に耐光性や熱劣化、使用時の耐侯性を向上させる目的で劣化防止剤などが添加されていることが好ましい。
以上述べたような製造方法ならびに製造装置を用いることで、切断面がなく、回転モーメントのバランスに優れた繊維強化熱可塑性樹脂円環を得ることが出来る。
【0012】
【実施例】
(実施例1)
株式会社クラレ製エチレンビニルアルコール共重合体「エバール」(105B)を、東洋紡株式会社製ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維「ザイロン」(AS、繊度1110dtex)に以下のようにして含浸した後に賦形を行った。
強化繊維を横取り強制解舒して、φ100mmのステンレス製円柱5本に交互に接触させて開繊させた後に、半径50mmの1/4円を有する曲面状のダイに接触させ、強化繊維の進行方向に対して、下面から10°の位置に設けたスリットから樹脂を吐出して強化繊維に樹脂を含浸した。その後、幅20mm、高さ0.10mmの矩形ダイスから引き抜き、ダイスから距離300mmに中心軸を有する内径φ100mmの耳付きマンドレルに巻きつけた。このマンドレルは表面にシリコン離型剤を塗布した0.2mm厚みのSUS製で、ユニバーサルジョイントを用いて内面に温度50℃のオイルを圧力2Mpaで送り込む事により膨張させている。耳部は耳高さが20mmとなる厚み1mmのSUS性の平板である。巻き始めから巻き終わりまでに要した時間は20分であった。倦回した後に圧力を抜き、温度を下げたマンドレルから円環を無理なく脱型することが出来た。得られた円環は、内径100mm±0.01、外径104mm±0.01の精度を持ち、内径は32Sの表面粗さをゆうするものであった。また端部に繊維が浮くことなく、繊維の破断も認められなかった。この円環を16分割して得られた小片の重量のばらつきは1%以下であり、回転モーメントのバランスに優れたものであった。
【0013】
(比較例1)
株式会社日本ユピカの不飽和ポリエステルを東洋紡株式会社製ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維「ザイロン」(AS、繊度1110dtex)にバス内で含浸した後に余剰の樹脂をしごき落として、巻き角度30度でフィラメントワインディング成形を行った。その後、まき締めテープを巻きつけた後にオートクレーブ内で8時間の養生を行い、マンドレルを脱型した後に、バンドソーを用いて幅20mmの円環を得た。この円環は内径100mm±0.01であったが、外径は104mm±0.3と精度の悪いものであった。また、端部には繊維が露出しているのが観察され、一部繊維が脱落している箇所も見受けられた。また重量のばらつきは5%にも達し、回転モーメントのバランスに優れるものではなかった。
【0014】
【発明の効果】
本発明によると、切断面端面に強化繊維が露出せず、回転モーメントのバランスに優れた繊維強化熱可塑性樹脂円環を得ることができ、得られた円環は、フライホイールやメカニカルジャイロのローターなど高速回転に供される軽量で回転モーメントのバランスに優れたものとなすことを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に係る製造装置の概略図。
【符号の説明】
1 強化繊維、2 クリルスタンド、3 エクストルーダー、4 ギアポンプ、5 開繊装置、6 曲面ダイ、7 樹脂浴、8 ダイスリット、9 マンドレル、10 圧力ポンプ
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法にかかわるものであって、フライホイールやメカニカルジャイロのローターなど高速回転に供される軽量で回転モーメントのバランスに優れる円環の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化熱硬化性樹脂複合材料(FRP)を円環成形する方法としては、フィラメントワインディング法がよく知られている。このフィラメントワインディング法では円環の円周方向に強度が必要な場合、マンドレルに円周方向に互いの繊維軸が平行になるように密に巻いていくフープ巻きと呼ばれる方法で円筒が作製される。その工程は次のようなものである。
1.クリル等から強化繊維を供給し、樹脂浴で必要な未硬化の熱硬化性樹脂を付着させる。
2.このプリプレグをマンドレルにデリバリアイを通してマンドレル円周方向に密に巻回する。
3.所定の厚みまでプリプレグを巻回した後に含浸を促進するために熱収縮性のテープやシートを巻回する。
4.これをオートクレーブに投入し、所定の温度、圧力を掛けて養生し、樹脂を硬化させる。
5.表面の平滑性を得るために研磨を行う。
6.この様にしていられた円筒をマンドレルから脱型した後に、所定の幅に切断して円環を得る。
また、近年では繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)を用いた成形材料も用いられるようになってきた。この様な材料をFRTPの場合もFRPの場合と比較してマンドレルへ巻きつける際に樹脂を溶融させる必要があることと、オートクレーブ中での養生が不要なことを除けば、円環の作製手順はほぼ同様であった。
この様にFRPやFRTPの円環を得るには、種々の工程を経る必要があるばかり、最後に切断工程を伴うために繊維の破断が生じたり、切断時にクラックが入るなど円環の強度低下を引き起こす原因となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような従来の方法では、工程が長く繊維破断やクラックによる円環の強度低下の要因が排除できないという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述のFRPやFRTPのフィラメントワインディング法の問題点を解決するために鋭意努力した結果、下記の構成により問題を解決できることを見出した。
即ち、本発明は、
1)あらかじめ円環の幅に幅を揃えたテープ状繊維強化熱可塑性樹脂を耳付きのマンドレルにリボン巻きすることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法。
2)テープ状繊維強化熱可塑性樹脂を円環の幅に幅を揃えた扁平な矩形のダイスから押し出し、耳付きのマンドレルにリボン巻きすることを特徴とする請求項1記載の繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法。
【0005】
以下に本発明を詳述する。
本発明に必要な技術の要素としては、1)強化繊維間への熱可塑性樹脂の含浸性に優れ、樹脂付着量が均一で、強化繊維の分散が良好な幅の変動が小さいテープ状成形用材料を提供することと、2)リボン巻き可能な耳付きのマンドレルにテープ状成形材料に均一に緊張力を付与しながら巻回することを挙げる事が出来る。
まず、含浸性に優れ、均一な樹脂付着が可能で、強化繊維の分散が良好な幅変動が小さいテープ状成形材料を提供する方法について述べる。
最初に強化繊維間への熱可塑性樹脂の含浸性を良好にするには、次のような方策を挙げる事が出来る。
1.事前に強化繊維を十分に開繊すること。
2.強化繊維が熱可塑性樹脂に接触する前に予熱すること。
3.開繊した強化繊維の片側から熱可塑性樹脂を圧入すると共に、強化繊維中を熱可塑性樹脂が貫通するまで熱可塑性樹脂に圧力を掛けること。
【0006】
1.の強化繊維の開繊方法としては、従来のバー開繊や、エアー開繊、振動付与による開繊などが知られているが、設備が安価で、効果も優れるバー開繊を選択することが好ましい。この様な開繊を行うことで、熱可塑性樹脂の含浸を容易にし、含浸性に優れたテープ状成形材料を得ることが出来る。
2.の強化繊維の加熱は、遠赤外過熱や、ヒータなどによる接触加熱などが考えられるが、設備の効率化を考えるとバー開繊においてバーを加熱して開繊と予熱を併せて行うことが好ましい。強化繊維が熱可塑性樹脂と接触する際に、強化繊維が冷えていると、樹脂の温度が低下して接触面で熱可塑性樹脂の粘度が高くなり、含浸を阻害する。よって、この予熱は熱可塑性樹脂の融点近傍まで強化繊維の温度を上昇させるものであることが好ましい。
3.の片側開放系による熱可塑性樹脂の圧入は例えば、曲面を有するダイを用いて実現することが出来る。曲面上の切ったスリットから熱可塑性樹脂を吐出して、強化繊維の一面に樹脂を付着させ、その後、曲面上を緊張力を保持したまま強化繊維を曲面に押し付けながら引き取ることで熱可塑性樹脂は強化繊維間に満遍なく含浸する。
【0007】
これらの工程を経ることにより、熱可塑性樹脂が強化繊維間に均一に含浸した成形材料を得ることが出来る。
次に樹脂の付着量を均一にするには、公知のダイスを用いてダイスで余剰な樹脂をそぎ落とすことにより実現できる。このダイス断面は矩形、円形を問わないが、本発明の主眼から、矩形であることが好ましい。ダイスの形状はダイス入り口から徐々に断面積が減少し、最終断面積を一定距離保持したまま出口にいたるような形状が好ましい。ダイス入り口が「ラッパ口」であることの効果は、樹脂を包含して見かけ体積が膨張した強化繊維を無理なく収束すると共に、徐々に樹脂のせん断圧力を高めていくことで含浸を促進しボイドを無くすことにより均一化できることにある。さらに出口形状の設計が重要であり、ダイス温度における樹脂の密度、強化繊維の繊度の変動などを加味して設計を行う必要がある。
【0008】
更に、強化繊維の分散性は、上述の開繊の状態とダイスの形状によって決定される。強化繊維の開繊はテンション斑があると開繊に斑が生じて分散性が悪くなる。ダイス出口の加工精度、特に面精度が悪くなると分散性が悪くなる。強化繊維の種類とダイスの材質によっては、操業時にダイスが磨耗して面精度に影響を与える。
テープ状成形材料の幅については、ダイスの形状と成形物の緊張力、ダイス出口からマンドレルまでの距離でほぼ決定される。ダイスの形状は最も寄与率が高く、この加工精度は重要である。更に、粘度が高い熱可塑性樹脂の場合は、引き抜くための緊張力が高くなり、糸が集束する傾向を示すためダイスに近い位置でマンドレルに巻回することが好ましい。このマンドレルの位置は、強化繊維に含浸した熱可塑性樹脂の温度がその融点または軟化点より20℃以上高い温度であることが更に好ましい。
【0009】
この様にして作製された繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を巻回するマンドレルは、1)耳付であること、2)膨張/収縮が可能な構造となっていることが必要である。
まず、円環の幅を決定するために耳付きとしてこの両耳の間に上記繊維熱可塑性樹脂成形材料を巻回する必要がある。これによって、幅精度が良好な円環を得ることが出来る。
また、マンドレルは円周方向に膨張・収縮するものであることが好ましい。これは、繊維強化熱可塑性樹脂成形材料の成形収縮を吸収して脱型を容易にするためである。具体的には、薄いジュラルミンの円筒に内圧を掛けて膨張させたままで繊維強化熱可塑性樹脂成形材料を巻回し、固化後に圧力を抜くことによって達成することが出来る。
【0010】
これらの手法を用いることにより、工程を短縮することができる。
この様な製造方法に供することが出来る強化繊維としては、次のようなものを挙げる事が出来る。例えば、無機繊維であれば、炭素繊維やガラス繊維、金属繊維などを用いることが出来る。軽量で高剛性/高強度が必要な場合は炭素繊維が好ましい。電気絶縁性が必要な場合はガラス繊維が好ましい。回転モーメントを大きくして回転の安定性を重視する場合には金属繊維が好ましい。また、有機繊維であれば、ポリエステル系、ポリオレフィン系などの汎用有機繊維、ポリアラミド繊維やポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などの高強度繊維を用いることが好ましい。これらの高強度繊維は比重あたりの弾性率や強度が高いため、軽量化が可能で回転モーメントを低減することが出来る。これらの繊維には、樹脂との濡れや接着性を改善する目的で収束剤が塗布されていることが好ましく、組み合わせる樹脂との接着性を考慮して、熱可塑性樹脂を主成分とする収束剤であることが更に好ましい。
【0011】
また、上述の繊維と組み合わせる樹脂は、熱可塑性樹脂であれば、いずれでもよいが軽量で絶縁性が必要な場合はポリオレフィン系の樹脂が好ましく、耐熱性と強度が要求される場合はポリアミド系やポリエステル系の樹脂が好ましい。ポリプロピレンやポリエチレンを用いる場合は強化繊維との接着性を改善するために酸変性などが行われていることが好ましい。また、これらの樹脂に耐光性や熱劣化、使用時の耐侯性を向上させる目的で劣化防止剤などが添加されていることが好ましい。
以上述べたような製造方法ならびに製造装置を用いることで、切断面がなく、回転モーメントのバランスに優れた繊維強化熱可塑性樹脂円環を得ることが出来る。
【0012】
【実施例】
(実施例1)
株式会社クラレ製エチレンビニルアルコール共重合体「エバール」(105B)を、東洋紡株式会社製ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維「ザイロン」(AS、繊度1110dtex)に以下のようにして含浸した後に賦形を行った。
強化繊維を横取り強制解舒して、φ100mmのステンレス製円柱5本に交互に接触させて開繊させた後に、半径50mmの1/4円を有する曲面状のダイに接触させ、強化繊維の進行方向に対して、下面から10°の位置に設けたスリットから樹脂を吐出して強化繊維に樹脂を含浸した。その後、幅20mm、高さ0.10mmの矩形ダイスから引き抜き、ダイスから距離300mmに中心軸を有する内径φ100mmの耳付きマンドレルに巻きつけた。このマンドレルは表面にシリコン離型剤を塗布した0.2mm厚みのSUS製で、ユニバーサルジョイントを用いて内面に温度50℃のオイルを圧力2Mpaで送り込む事により膨張させている。耳部は耳高さが20mmとなる厚み1mmのSUS性の平板である。巻き始めから巻き終わりまでに要した時間は20分であった。倦回した後に圧力を抜き、温度を下げたマンドレルから円環を無理なく脱型することが出来た。得られた円環は、内径100mm±0.01、外径104mm±0.01の精度を持ち、内径は32Sの表面粗さをゆうするものであった。また端部に繊維が浮くことなく、繊維の破断も認められなかった。この円環を16分割して得られた小片の重量のばらつきは1%以下であり、回転モーメントのバランスに優れたものであった。
【0013】
(比較例1)
株式会社日本ユピカの不飽和ポリエステルを東洋紡株式会社製ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維「ザイロン」(AS、繊度1110dtex)にバス内で含浸した後に余剰の樹脂をしごき落として、巻き角度30度でフィラメントワインディング成形を行った。その後、まき締めテープを巻きつけた後にオートクレーブ内で8時間の養生を行い、マンドレルを脱型した後に、バンドソーを用いて幅20mmの円環を得た。この円環は内径100mm±0.01であったが、外径は104mm±0.3と精度の悪いものであった。また、端部には繊維が露出しているのが観察され、一部繊維が脱落している箇所も見受けられた。また重量のばらつきは5%にも達し、回転モーメントのバランスに優れるものではなかった。
【0014】
【発明の効果】
本発明によると、切断面端面に強化繊維が露出せず、回転モーメントのバランスに優れた繊維強化熱可塑性樹脂円環を得ることができ、得られた円環は、フライホイールやメカニカルジャイロのローターなど高速回転に供される軽量で回転モーメントのバランスに優れたものとなすことを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に係る製造装置の概略図。
【符号の説明】
1 強化繊維、2 クリルスタンド、3 エクストルーダー、4 ギアポンプ、5 開繊装置、6 曲面ダイ、7 樹脂浴、8 ダイスリット、9 マンドレル、10 圧力ポンプ
Claims (2)
- あらかじめ円環の幅に幅を揃えたテープ状繊維強化熱可塑性樹脂を耳付きのマンドレルにリボン巻きすることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法。
- テープ状繊維強化熱可塑性樹脂を円環の幅に幅を揃えた扁平な矩形のダイスから押し出し、耳付きのマンドレルにリボン巻きすることを特徴とする請求項1記載の繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002292636A JP2004122683A (ja) | 2002-10-04 | 2002-10-04 | 繊維強化熱可塑性樹脂円環の製造方法 |
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JP (1) | JP2004122683A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009524536A (ja) * | 2006-01-27 | 2009-07-02 | ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム | コンポジットリングを製造するための方法 |
JP2010514592A (ja) * | 2006-12-27 | 2010-05-06 | ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン | 複合リングの製造方法および装置 |
JP2016504220A (ja) * | 2012-12-20 | 2016-02-12 | ジーケーエヌ ハイブリッド パワー リミテッド | 磁気装荷型複合ロータおよびその製造方法 |
-
2002
- 2002-10-04 JP JP2002292636A patent/JP2004122683A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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