即ち、基板対基板接続用のコネクタを構成するソケットコネクタとプラグコネクタとを例に説明すると、ソケットコネクタにプラグコネクタを対向位置させて、ソケットコネクタの挿入口にプラグコネクタを挿入する嵌合作業は、一対の基板によってソケットコネクタとプラグコネクタが隠されてしまうことから、双方のコネクタを目視できない状態で行わなければならない。なぜならそれらのコネクタが基板間に位置するため目視できないからである。そのため従来の基板対基板接続用のコネクタは、ソケットコネクタとプラグコネクタを嵌合接続する位置合わせが困難であり、このため作業が非効率となり、作業を急ぎ無理に嵌合させようとするとコネクタを破損してしまうおそれがある。
なお、こうした嵌合作業の困難性は、基板対基板接続用のコネクタに固有の問題ではなく、ハウジングの挿入口から嵌合室に接続対象物を挿入して嵌合作業を行うコネクタに共通する課題である。なぜなら、コネクタの小型化によって挿入口の開口面積が小さくなればなるほど、目視可能な状態で嵌合作業をしても接続対象物の挿入口に対する位置合わせは困難だからである。
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。その目的は、コネクタを小型化しても嵌合作業を容易に行えるようにすることにある。
上記目的を達成すべく本発明は以下の特徴を有するものとして構成される。
即ち、本発明は、基板の表面に向かう方向を挿入方向として接続対象物を挿入する挿入口と、前記挿入口から前記接続対象物を挿入する嵌合室とを有するハウジングと、前記嵌合室の内部で前記接続対象物と導通接続する端子とを備えるコネクタについて、前記ハウジングは、前記挿入口に対する前記接続対象物の挿入を誘導する挿入誘導面を有し、前記挿入誘導面は、前記挿入口の口縁から前記嵌合室の内部に向かう内側誘導面と、前記内側誘導面の外側に設けた中間誘導面と、前記中間誘導面の外側に設けた外側誘導面とを有し、且つ前記内側誘導面と前記中間誘導面の形状が異なるとともに前記中間誘導面と前記外側誘導面の形状が異なることを特徴とする。
本発明のコネクタは、挿入口に対する接続対象物の挿入を誘導する挿入誘導面を有するため、挿入口に対する接続対象物の挿入位置がずれていても、挿入誘導面によって位置ずれを解消しながら接続対象物を挿入口に誘導することができ、これにより接続対象物を挿入口から嵌合室へと正しく挿入することができる。
前記挿入誘導面は、具体的には、挿入口の口縁から嵌合室の内部に向かう内側誘導面と、内側誘導面の外側に設けた中間誘導面と、中間誘導面の外側に設けた外側誘導面とを有するように構成できる。そして前記内側誘導面と前記中間誘導面は前記形状が互いに異なり、前記中間誘導面と前記外側誘導面は前記形状が互いに異なるように構成できる。これによれば、連続する2つの面の形状が異なるため、挿入誘導面に接続対象物を載置して移動させると、形状が異なる一方の面から他方の面に移動するときに、作業者が手元の感覚で接続対象物の姿勢の変化を把握しながら、接続対象物を挿入口に誘導させることができる。また、挿入誘導面は、挿入口の口縁に設ける内側誘導面のみならず、内側誘導面の外側に位置する中間誘導面と、さらに中間誘導面の外側に外側誘導面とを有するため、ハウジングの挿入口周辺の広い範囲で接続対象物の挿入を誘導することができる。よって本発明のコネクタならばコネクタ全体を小型化しても接続対象物の嵌合作業を容易に行うことができる。
内側誘導面の形状と中間誘導面の形状とが異なり、中間誘導面の形状と外側誘導面の形状とは異なるが、ここでいう「形状が異なる」とは、少なくともそれらの各面の「表面形状」が異なる場合、また接続対象物の挿入方向と直交する基準線に対するそれらの各面の「角度」や基板の実装面と平行な基準線に対するそれらの各面の「角度」が異なる場合を含む。したがって、内側誘導面、中間誘導面、外側誘導面は、何れかの前記基準線に対する角度が異なる傾斜面または水平面等として構成することができ、また表面形状が異なる平坦面、湾曲面(凸状の湾曲面、凹状の湾曲面)または段付き面等として構成することができる。
前記本発明については、前記内側誘導面の前記形状と、前記中間誘導面の前記形状と、前記外側誘導面の前記形状がすべて異なるように構成できる。
本発明によれば、内側誘導面と中間誘導面と外側誘導面の前記形状がすべて異なるので、各面と接触した接続対象物の姿勢を前記形状の違いによって異ならせることができる。したがって、接続対象物を外側誘導面と挿入口との間で移動させることで生じる接続対象物の姿勢の変化を把握しながら、接続対象物を挿入口に誘導することができる。
前記本発明については、前記内側誘導面の前記形状と前記中間誘導面の前記形状との相違および前記中間誘導面の前記形状と前記外側誘導面の前記形状との相違が、前記挿入方向と直交する基準線に対する角度であるように構成できる。
本発明によれば、内側誘導面と中間誘導面との形状における相違が前記基準線に対する角度であり、中間誘導面と外側誘導面との形状における相違が前記基準線に対する角度であるため、二面角の違いにより接続対象物の姿勢の変化を容易に把握することができる。
前記本発明については、前記中間誘導面の前記角度が、前記内側誘導面の前記角度および前記外側誘導面の前記角度に対して小さくなるように構成できる。
例えば、中間誘導面の前記角度が外側誘導面の前記角度より大きいと、接続対象物を外側誘導面から中間誘導面に移動したときに、接続対象物の姿勢が大きく傾いてしまい、挿入口に近づくにつれて徐々に姿勢を矯正していくことができず、接続対象物を挿入口に円滑に誘導することが難しくなってしまう。また、中間誘導面の前記角度が内側誘導面の前記角度より大きいと、中間誘導面と内側誘導面との境界に内角が鈍角の凹みができてしまい、そこに接続対象物が移動する際に引っかかり、接続対象物を円滑に挿入口に誘導するのが難しくなる。これに対して本発明によれば、外側誘導面の前記角度が中間誘導面の前記角度よりも大きいため、外側誘導面よりも挿入口に近い内側に接続対象物を容易に誘導することができる。また、中間誘導面の前記角度よりも内側誘導面の前記角度が大きいため、接続対象物を中間誘導面から挿入口に直結する内側誘導面へと円滑に誘導することができる。よって本発明のコネクタによれば、外側誘導面から挿入口へと接続対象物を円滑に誘導することができる。
前記本発明については、前記中間誘導面が前記基板と平行な平坦面であるように構成できる。
本発明によれば、中間誘導面が基板と平行な平坦面であるため、中間誘導面を基板と平行な基準線に対して傾斜する傾斜面とした場合と比べて、基板と平行な水平方向で接続対象物の移動可能な距離を大きくすることができ、中間誘導面における挿入口に対する接続対象物の位置のずれの許容範囲(誘導領域)を広げることができる。また、中間誘導面は基板面に対して平行な平坦面であるため、接続対象物を傾斜のない姿勢に矯正してから、正しい姿勢で円滑に挿入口に誘導することができる。さらに、例えば中間誘導面を基板に対して傾斜する傾斜面とした場合には、中間誘導面に高さが生じるためハウジングについても高さ方向で大型化してしまう。しかしながら本発明では、中間誘導面が基板と平行であり、基板からの高さが一定になるため、高さ方向でのハウジングの大型化を抑制できる。なお、本発明における「基板と平行な平坦面」とは、基板面と接続対象物の挿入方向と直交する基準線とが平行である場合には、「前記挿入方向と直交する基準線に沿う平坦面」として把握することができる。
前記本発明については、前記外側誘導面と前記内側誘導面が、前記角度が異なる傾斜面として形成されており、前記外側誘導面の前記角度は、前記内側誘導面の前記角度よりも小さく構成できる。
例えば、外側誘導面を傾斜面とし、外側誘導面の外縁から内縁(中間誘導面との境界側)にかけての接続対象物の水平方向への移動距離を一定の長さに設定した場合、外側誘導面の前記角度を大きくすればするほど、外側誘導面の内縁側に対して外縁側が高くなり、ハウジングが高さ方向で大型化してしまう。これに対して本発明によれば、外側誘導面の前記角度が内側誘導面の前記角度よりも小さいため、外側誘導面の外縁側から内縁側にかけて接続対象物の移動距離を確保しながらも、外側誘導面によってハウジングが高さ方向で大型化するのを抑制することができる。また、本発明によれば、外側誘導面の前記角度が内側誘導面の前記角度よりも小さいため、接続対象物を傾斜の緩やかな外側誘導面の上を移動させることで先ず大まかに挿入口側へ誘導してから、外側誘導面よりも傾斜角の大きい内側誘導面では速やかに接続対象物を挿入口から嵌合室へと落とし込むように挿入することができる。
前記本発明については、前記ハウジングが周壁と、前記周壁から外向きに突出する突出部とを有し、前記突出部の上面に前記外側誘導面を有するように構成できる。
例えば、周壁の上端面に外側誘導面を形成すると、接続対象物の挿入方向に対する直交方向に沿う周壁の厚みを厚くすることで外側誘導面を形成しなければならないが、そうするとハウジングが当該直交方向で大型化してしまう。しかしながら本発明では、外側誘導面を周壁から突出する突出部の上面に設けるため、周壁の厚みを増大することなく挿入口から離れる方向に外側誘導面を拡張することができ、接続対象物の位置ずれの許容範囲を広げることができる。
前記本発明については、前記周壁の上面に前記中間誘導面を有するように構成できる。
一般的にコネクタのハウジングを構成する周壁の上面は特段の機能を有するものではないが、本発明によれば周壁の上面を中間誘導面として有効活用することができるので、周壁の厚みを増大したり周壁からの突出部を設けたりするハウジングの大型化に依存しなくても中間誘導面を設けることができる。
前記本発明については、前記基板に固定する固定ハウジングをさらに備えており、前記ハウジングは、前記固定ハウジングに対して移動可能な可動ハウジングであり、前記端子は、前記固定ハウジングに対する固定部と、前記可動ハウジングに対する固定部と、前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングを移動可能に支持するばね部とを有するように構成できる。
固定ハウジングと可動ハウジングとを有し、端子のばね部によって可動ハウジングを固定ハウジングに対して移動可能に支持する従来技術のコネクタ(フローティングコネクタ)では、可動ハウジングの挿入口に対して接続対象物が位置ずれしている場合、接続対象物を挿入口に挿入しなければ、端子のばね部の弾性変形によって可動ハウジングを移動させて接続対象物の位置ずれを吸収することができない。つまり、接続対象物が挿入口に進入するまでは、ばね部による可動ハウジングの移動(変位)に頼らずに接続対象物を挿入口に誘導しなければならない。そのため可動ハウジングの挿入口にはその口縁に嵌合室に通じる誘導傾斜面が設けられるが、接続対象物を誘導傾斜面まで誘導することはできない。したがってコネクタを小型化すればするほど、接続対象物の挿入口に対する位置合わせは困難となり、嵌合作業は非効率となり、嵌合作業を無理に行おうとするとばね部が塑性変形してしまうおそれがある。これに対して本発明によれば、挿入誘導面によって可動ハウジングの挿入口まで接続対象物を無理なく容易に誘導できるため、コネクタを小型化しても接続対象物の挿入口に対する位置合わせを容易に行うことができ、嵌合作業を効率的に行うことができる。
前記本発明については、前記ばね部が前記可動ハウジングと前記固定ハウジングの間に位置しており、前記突出部が前記ばね部の上方を覆う形状に構成できる。
本発明によれば、突出部が可動ハウジングと固定ハウジングの間に配置されているばね部の上方を覆う形状であるため、ばね部に対する外部からの異物の接触を防ぎ、ばね部を保護することができる。
前記本発明については、前記可動ハウジングが前記嵌合室と連通する溝状の端子収容部を有しており、前記端子収容部が前記溝状の底面を形成する底面壁を有し、前記底面壁の前記底面は、前記端子収容部の前記嵌合室からの溝深さが前記嵌合室の奥側よりも前記挿入口側で深くなるように傾斜する形状であり、前記底面壁と前記嵌合室の間には前記端子の接点部との当接を回避する退避空間部を有するように構成できる。
例えば、溝状の端子収容部の底面壁を鉛直方向に沿って形成した場合には、接続対象物の押圧接触を受けて端子収容部の内部に変位する端子の接点部が底面壁に対して接触しないように、底面壁の底面全体をできるだけ嵌合室から離して深く形成しなければならず、そうすると可動ハウジングが接続対象物の挿入方向に対する直交方向で大型化してしまう。これに対して前記本発明によれば、端子収容部の底面壁の底面が傾斜しており、底面壁と嵌合室との間に退避空間部が形成されているため、前述のように可動ハウジングを大型化しなくても底面壁に対して端子の接点部が接触しないようにすることができる。
前記本発明については、前記底面壁の外面が前記基板側から外方に向けて傾斜する外側傾斜面を有しており、前記ばね部が前記外側傾斜面に沿って伸長する傾斜片部を有するように構成できる。
フローティングコネクタの端子に設けるばね部として、例えば鉛直方向に沿って平行に伸長する一対の縦片と、縦片の端部間を繋ぐ円弧状の屈曲部とを有する逆U字状のばね部が知られている。そのばね部は、ばね長が短いと、ばねが硬くなり可動ハウジングを柔軟に支持することが困難になる。そのため一対の縦片をそのまま長さ方向に沿って伸ばしてばね長を長くすると、コネクタが特に高さ方向で大型化してしまう問題がある。これに対して本発明によれば、ばね部が、可動ハウジングの底面壁の外面の傾斜面に沿って斜めに伸長する傾斜片部を有するので、高さ方向にばね部を伸ばすことなくばね長を長くすることができ、可動ハウジングも柔軟に支持することができる。
前記本発明については、前記基板に対して前記固定ハウジングを固定する固定金具をさらに備えており、前記固定金具は、少なくとも前記挿入口を覆う保護キャップの装着部を有するように構成できる。
例えば、固定ハウジング自体に保護キャップの装着部を設けると、固定ハウジングが大型化し、また保護キャップの着脱によって固定ハウジングの装着部が損傷するおそれがある。これに対して本発明によれば、固定ハウジングに装着部を設ける必要がなく、固定金具が金属製の剛体であるため、保護キャップを確実に装着することができ、保護キャップを着脱しても固定金具が破損することもない。
前記本発明については、前記可動ハウジングが外周面から外方に突出する変位規制突起を有しており、前記固定金具が前記変位規制突起と当接して前記可動ハウジングの移動を止める当接部を有するように構成できる。
本発明によれば、固定金具に可動ハウジングの移動を規制する当接部を設けるので、固定ハウジングにそうした当接部を設けなくてもよく、固定金具を可動ハウジングの変位規制に有効利用できる。
前記本発明については、前記固定金具に取付ける前記保護キャップをさらに備えるように構成できる。
本発明によれば、保護キャップを備えるので、搬送時や実装時等に、異物が嵌合室に侵入して付着したり、端子が損傷したりするのを防止できる。
さらに、前記目的を達成する他の本発明は以下の特徴を有するものとして構成される。
即ち、本発明は、接続対象物を挿入する嵌合室を有する可動ハウジングと、前記可動ハウジングを配置する収容室を有する枠状の固定ハウジングと、前記可動ハウジングを前記固定ハウジングに対して移動可能に支持するばね部を有する端子とを備えるコネクタについて、前記可動ハウジングは、前記固定ハウジングの上面の少なくとも一部を覆うように外向きに突出する突出部を有し、前記突出部は、前記固定ハウジングの前記上面を覆う位置から前記嵌合室側に向けて下り、前記接続対象物の前記嵌合室側に向かう移動を誘導する傾斜面を有する。
前記傾斜面は、前記可動ハウジングを挿入する前記収容室の内縁を跨ぐように形成されている。また、前記傾斜面は、前記接続対象物の前記嵌合室への挿入を誘導する挿入誘導面として形成されている。さらに、前記ばね部は、前記可動ハウジングと前記固定ハウジングの間に位置しており、前記突出部は、前記ばね部の上方を覆う形状である。
本発明によれば、挿入誘導面によって接続対象物の挿入位置のずれを解消することができ、接続対象物の嵌合作業を容易に行うことができるので、コネクタを小型化することができる。
以下、本発明のコネクタの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、本発明のコネクタを基板対基板接続用コネクタであってフローティング機能を有するソケットコネクタ1に適用する例を示すが、本発明のコネクタはそれに限定されるものではない。
本明細書、特許請求の範囲に記載されている「第1」「第2」という用語は、発明や実施形態の異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣を示すために用いるものではない。また本明細書、特許請求の範囲では、説明の便宜上、ソケットコネクタ1の幅方向・左右方向をX方向、奥行き方向・前後方向をY方向、高さ方向・上下方向をZ方向として説明するが、それらはソケットコネクタ1の実装方法や使用方法を限定するものではない。
ソケットコネクタ1
ソケットコネクタ1は、「接続対象物」であるプラグコネクタ2と嵌合接続することで、ソケットコネクタ1を実装する第1の基板P1の回路とプラグコネクタ2を実装する第2の基板P2の回路とを電気的に導通接続する(図8)。即ち、ソケットコネクタ1とプラグコネクタ2は、いずれも基板対基板接続用コネクタとして機能するものである。
ソケットコネクタ1は、ハウジング3と、複数の端子4と、固定金具5とを備える。ハウジング3は、第1の基板P1に実装する固定ハウジング6と、端子4によって固定ハウジング6に対して移動可能に支持される可動ハウジング7とで構成される。即ち、ソケットコネクタ1は、固定ハウジング6に対して可動ハウジング7がX方向、Y方向およびZ方向を組み合わせた三次元方向に移動可能なフローティングコネクタとして構成されている。
固定ハウジング6
固定ハウジング6は、枠状の周壁8にて形成されている。周壁8は、ソケットコネクタ1に並列に配置した複数の端子4の端子配列方向(X方向)に沿って伸長する一対の第1の側壁8aと、一対の第1の側壁8aの対向する端部間を繋ぐように伸長する一対の第2の側壁8bとを有する。このような周壁8の内側には可動ハウジング7の収容室8cが形成されている(図5、図6)。
一対の第1の側壁8aのそれぞれには、固定ハウジング6の高さ方向Zに沿って伸長し、前記端子配列方向(X方向)に沿って並列に配置された複数の端子固定部8a1が形成されている(図1、図6)。各端子固定部8a1には端子4の一端側が圧入され、それにより端子4の一端側が固定ハウジング6に固定される。第1の側壁8aの内側面には、端子固定部8a1の上端部から第1の側壁8aの上端部にかけて傾斜する内側傾斜面8a2が形成されている。内側傾斜面8a2を形成することで、内側傾斜面8a2と後述する端子4のばね部4cとの間には、隙間空間でなる接触逃げ部8a3が形成され、第1の側壁8aによってばね部4cの変位量が阻害されないようにしている。
一対の第2の側壁8bのそれぞれには、後述する可動ハウジング7の変位規制突起9b1を配置する凹部8b1が形成されている(図1、図4、図5)。また、第2の側壁8bには固定金具5を圧入により固定する固定部8b2が形成されており、これによって固定ハウジング6が固定金具5により強固に保持される(図4)。
可動ハウジング7
可動ハウジング7は、枠状の周壁9を有する。周壁9は、複数の端子4の端子配列方向(X方向)に沿って伸長する一対の第1の側壁9aと、一対の第1の側壁9aの対向する端部間を繋ぐように伸長する一対の第2の側壁9bとを有する(図5、図6)。周壁9の内側にはプラグコネクタ2の嵌合室9cが形成されており(図1)、嵌合室9cの開口はプラグコネクタ2の挿入口9c1となっている。
一対の第1の側壁9aは、それぞれ可動ハウジング7における端子収容壁としての機能を有しており、可動ハウジング7の長手方向に沿う中心線に対して対称形状に形成されている。第1の側壁9aには、それぞれ後述する端子4の可動ハウジング用固定部4dを板幅方向(X方向)で圧入固定する複数の端子固定部9a1と、嵌合室9cに連通する複数の端子保持溝9a2とが端子配列方向Xで並んで形成されている。
「端子収容部」としての端子保持溝9a2は、一対の対向する側面壁9a3と、嵌合室9c側と反対側位置にて一対の側面壁9a3間を繋ぐ底面壁9a4と、後述する端子4の接点部4fが嵌合室9cと端子保持溝9a2との間で移動するのを許容する開口9a5と、第1の基板P1と対向するスリット状の基板側開口9a6とが形成されている。
底面壁9a4は、垂直方向に伸長する下側縦面9a7と、嵌合室9cからの離間距離が高さ方向Zで次第に長くなるように傾斜する内側傾斜面9a8と、内側傾斜面9a8から高さ方向Zに伸長する上側縦面9a9によって形成されている。内側傾斜面9a8は、プラグコネクタ2の押圧接触を受けて底面壁9a4に向けて変位する端子4の接点部4fが底面壁9a4と接触しないようにするために、接点部4fの変位方向へ傾斜するように形成されている。こうした内側傾斜面9a8を有する底面壁9a4と嵌合室9cとの間は接点部4fとの当接を回避する退避空間部9a10となっている。底面壁9a4の内側傾斜面9a8の部分に対応する可動ハウジング7の外面部分には外側傾斜面9a11が形成されており、その技術的意義については後述する。
一対の第2の側壁9bには、前述した固定ハウジング6の凹部8b1に挿入される変位規制突起9b1が形成されている。変位規制突起9b1は、第2の側壁9bの側方に突出する柱状突起として形成されている。変位規制突起9b1の上には、固定金具用挿入溝9b2が形成されている(図5)。変位規制突起9b1は、Y方向およびZ方向の下向きで凹部8b1と対向して当接可能であり、Z方向の上向きで後述する固定金具5の「当接部」としての横片部5cと対向して当接可能であるため、それらの各方向での対向部分との当接によって可動ハウジング7の過剰な変位を規制している。
挿入誘導面10
可動ハウジング7には挿入誘導面10が形成されている。具体的には、挿入誘導面10は、周壁9の上面と、周壁9の外周面9dの上端から外向きフランジ状に突出する突出部9eとに形成されている。本実施形態の挿入誘導面10は、内側誘導面10aと、中間誘導面10bと、外側誘導面10cとで構成されている。これらの複数の面10a、10b、10cで構成される挿入誘導面10は、接続対象物であるプラグコネクタ2の嵌合室9cへの挿入方向(Z方向)に対する交差方向に伸長する連続する面として形成されている。挿入誘導面10が、嵌合室9cに通じる内側誘導面10aのみならず、その外周に中間誘導面10bと外側誘導面10cとがさらに連続する面として形成することで、挿入口9c1周辺の広い範囲でプラグコネクタ2の挿入を誘導することができ、嵌合作業を容易に行うことができる。
内側誘導面10a、中間誘導面10b、外側誘導面10cは、プラグコネクタ2の嵌合室9cへの挿入方向(Z方向)に対して直交する線(基準線L(図6))に対してなす角度がすべて異なるように形成されている。換言すれば、ソケットコネクタ1を実装する第1の基板P1の表面(実装面)と平行な線(基準線L)に対してなす角度が異なるように形成されている。なお、これらの「基準線L」は、本実施形態では水平線と同じである。
内側誘導面10aは、周壁9の上面に形成されている。具体的には嵌合室9cの挿入口9c1の口縁に形成されている。内側誘導面10aは、ソケットコネクタ1の長手方向(X方向)に沿う一対の長手内側誘導面10a1と、ソケットコネクタ1の短手方向(Y方向)に沿う一対の短手内側誘導面10a2とを有している。内側誘導面10aの前記基準線Lに対して傾斜する角度θ1(図6)は、内側誘導面10aが挿入口9c1から嵌合室9cにプラグコネクタ2を落とし込んで誘導する部分であるため、中間誘導面10bの基準線Lに対する角度(0度)、外側誘導面10cの角度θ2よりも大きく形成されている。内側誘導面10aが鋭角の急斜面であるため、X方向およびY方向への移動距離が短く、これによりスムーズにプラグコネクタ2を嵌合室9cに落とし込むことができる。また、内側誘導面10aは平坦面として形成されており、湾曲面で形成する場合と比べて傾斜に緩急がない。このためプラグコネクタ2を一定の傾斜面に沿ってスムーズに嵌合室9cに移動させることができる。
中間誘導面10bは、周壁9の上面に形成されている。具体的には、内側誘導面10aの上縁から屈曲して伸長する面として形成されている。中間誘導面10bは、ソケットコネクタ1の長手方向に沿う長手中間誘導面10b1と、ソケットコネクタ1の短手方向に沿う短手中間誘導側面10b2とを有する。中間誘導面10bは、前記基準線Lに対してなす角度が0度であって、内側誘導面10a、外側誘導面10cよりも角度が小さい。基準線Lに対する角度が0度であるため、中間誘導面10bは傾きのない水平面として形成されている。中間誘導面10bが水平面であるため、ここに載置したプラグコネクタ2は、基準線Lに対する傾きの無い姿勢になる。プラグコネクタ2とそれを実装した第2の基板P2の傾きの無い姿勢は、嵌合作業を行う作業者の手元の感覚としても把握しやすい。そして傾きの無い姿勢から第2の基板P2(プラグコネクタ2)を移動させることで、プラグコネクタ2が傾斜面に乗り上げる感覚が得られれば、挿入口9c1とは反対側の外側誘導面10cに移動させていることを手元の感覚で把握でき、移動方向を逆方向に修正すべきことが分かる。他方、傾きの無い姿勢から第2の基板P2を移動させることで、プラグコネクタ2が斜めに落ち込んだりまたは傾きの無いまま落ち込んだりすれば、内側誘導面10aに向けて移動させていることが手元の感覚で把握でき、嵌合室9cに挿入できることが分かる。
外側誘導面10cは、周壁9の上面と周壁9から突出する突出部9eの上面に形成されている。具体的には、外側誘導面10cは、ソケットコネクタ1の長手方向に沿う長手外側誘導面10c1と、ソケットコネクタ1の短手方向に沿う短手外側誘導面10c2とを有しており、このうち短手外側誘導面10c2は嵌合室9cの側に向けて下る傾斜面の形状であって突出部9eの上面に形成されており、長手外側誘導面10c1は突出部9eよりも内側の周壁9の上面に形成されている。長手外側誘導面10c1と短手外側誘導面10c2は、いずれも中間誘導面10bの外縁から屈曲して伸長する面として形成されている。外側誘導面10cが前記基準線Lに対してなす角度θ2(図6)は、中間誘導面10bの基準線Lに対する角度(0度)よりも大きく、内側誘導面10aの角度θ1よりも小さい。即ち外側誘導面10cは内側誘導面10aよりも緩斜面として形成されている。このため、ここに載置したプラグコネクタ2は、傾いた姿勢の状態で外側誘導面10cに沿って移動させることで、隣接する傾きの無い中間誘導面10bに誘導することができる。
内側誘導面10a、中間誘導面10b、外側誘導面10cは、以上のように基準線Lに対する角度がすべて異なっている。したがってプラグコネクタ2をソケットコネクタ1(可動ハウジング7)に載置すれば、作業者はプラグコネクタ2を実装した第2の基板P2の姿勢によって、プラグコネクタ2のおよその位置を手元の感覚で把握することができる。プラグコネクタ2が挿入誘導面10に接触する態様としては、例えば外側誘導面10cにのみ当接する場合、外側誘導面10cと中間誘導面10bに当接する場合、中間誘導面10bにのみ当接する場合、内側誘導面10aにのみ当接する場合と、様々であるが、それぞれの各場合でプラグコネクタ2が取る姿勢は異なる。したがって、プラグコネクタ2が最初に挿入誘導面10に接触した位置から基準線Lに沿う様々な方向(X方向、Y方向)に第2の基板P2を移動させることで、前述した中間誘導面10bでの水平姿勢を得て、そこから内側誘導面10aを通じて落とし込むように第2の基板P2を移動させることで、ソケットコネクタ1とプラグコネクタ2が直接見えなくても、手元の感覚を通じて正しくそれらを嵌合させることができる。
以上のような挿入誘導面10は、可動ハウジング7の上面形状に沿う枠状に形成されており、本実施形態では四角枠状に形成されている。したがって、プラグコネクタ2が挿入口9c1を中心として放射方向(X方向およびY方向)のどの方向に位置ずれしても、挿入誘導面10に当接させることができるので、確実にプラグコネクタ2を挿入口9c1に誘導することができる。
端子4
複数の端子4は、すべて同じ形状に形成されており、導電性の金属片を屈曲して形成されている。各端子4は、第1の基板P1にはんだ付けされる基板接続部4aと、固定ハウジング6の端子固定部8a1に圧入により固定される固定ハウジング用固定部4bと、逆U字状に伸長するばね部4cと、可動ハウジング7の端子固定部9a1に板幅方向(X方向)で圧入により固定される可動ハウジング用固定部4dと、U字状に伸長する弾性腕4eと、弾性腕4eの上端から嵌合室9cに向けて山状に屈曲する接点部4fとを有している。
ばね部4cは、固定ハウジング6に対して可動ハウジング7を幅方向(X方向)、奥行き方向(Y方向)、高さ方向(Z方向)を組み合わせた三次元方向に変位可能に支持するばねとして形成されている。ばね部4cは、固定ハウジング用固定部4bに繋がる外側伸長部4c1と、屈曲部4c2と、内側傾斜片部4c3とを有する。
外側伸長部4c1は、固定ハウジング6の第1の側壁8aの内側傾斜面8a2に形成された接触逃げ部8a3と対向位置しており、可動ハウジング7がY方向で外側に弾性変形しても、内側傾斜面8a2と接触しないようにされている。また、屈曲部4c2の湾曲部分のうち可動ハウジング7側の半分が、可動ハウジング7の突出部9eによって覆われており、外部から異物(導体や塵埃等)が接触しないように保護されている。内側傾斜片部4c3は、一定の隙間を介して可動ハウジング7の外側傾斜面9a11に沿って傾斜して伸長する。したがって、可動ハウジング7がY方向で外側に弾性変形しても、内側傾斜片部4c3は外側傾斜面9a11と接触することがなく、ばね部4cの自然な弾性変形を阻害しないようにしている。
弾性腕4eは、U字状の下側屈曲部4e1と、下側屈曲部4e1から上方に伸長する伸長部4e2とを有している。伸長部4e2は可動ハウジング7の端子保持溝9a2の内部に配置されている。伸長部4e2の上側は退避空間部9a10と隣接している。このため接点部4fがプラグコネクタ2と押圧接触して端子保持溝9a2の内部に進入しても、伸長部4e2は退避空間部9a10に向けて変位するだけで、底面壁9a4の底面と接触することはない。これにより接点部4fは、弾性腕4eと接点部4fのばね構造に基づく接触圧でプラグコネクタ2と押圧接触することができる。
固定金具5
固定金具5は、固定ハウジング6の一対の第2の側壁8bにそれぞれ設けられる。各固定金具5は、基板固定部5aと、第2の側壁8bの固定部8b2に圧入固定する圧入部5bと、第2の側壁8bの長さ方向(Y方向)に沿って伸長する横片部5cとを有する。
横片部5cは、可動ハウジング7の固定金具用挿入溝9b2に隙間を介して挿入される。また、横片部5cには図10で示すように保護キャップ11の係止片11aを係止する。即ち横片部5cは保護キャップ11の「装着部」として機能する。したがって、固定ハウジング6に「装着部」を設ける必要がなく、固定金具5が金属製の剛体であるため、保護キャップ11を確実に装着することができ、保護キャップ11を着脱しても固定金具5が破損することはない。そしてソケットコネクタ1が保護キャップ11を備えることで、搬送時や実装時等に、異物が嵌合室9cに侵入して付着したり、端子4が損傷したりするのを防止できる。また保護キャップ11は、第1の基板P1への実装時にソケットコネクタ1を自動機で移送する際の吸着箇所として利用することができる。
また、横片部5cは、可動ハウジング7の変位規制突起9b1と対向位置しており、可動ハウジング6が高さ方向(Z方向)の上向きに過剰に変位するのを停止させる「当接部」として機能する。したがって、固定ハウジング6に「当接部」を設ける必要がなく、固定金具5を可動ハウジング6の変位規制に有効利用することができる。
ソケットコネクタ1とプラグコネクタ2との嵌合接続
次に、以上のようなコネクタ構造のソケットコネクタ1とプラグコネクタ2との嵌合接続について説明する。
先ずプラグコネクタ2のコネクタ構造を簡単に説明する。プラグコネクタ2は、第2の基板P2に実装され、図7で示すようにハウジング2aと複数の端子2bとを有する。ハウジング2aは、嵌合室9cに挿入する板状の嵌合接続部2a1を有しており、嵌合接続部2a1の長手方向(Y方向)に沿う一方側の表面と他方側の表面には、それぞれハウジング2aの高さ方向(Z方向)に伸長する端子保持溝2a2が幅方向(Y方向)に沿って並列に形成されている。各端子保持溝2a2には、端子2bの接点部2b1が配置される。
このようなプラグコネクタ2をソケットコネクタ1と嵌合接続する際には、図8で示すように、プラグコネクタ2を実装した第2の基板P2を裏返しにして、プラグコネクタ2をソケットコネクタ1に対向位置させる。そして第2の基板P2を第1の基板P1に近づけることで、プラグコネクタ2がソケットコネクタ1と接触する。このときプラグコネクタ2のハウジング2aの先端面2a3が、挿入口9c1を含む挿入誘導面10の誘導領域10Rで位置ずれして接触していれば、挿入誘導面10によってプラグコネクタ2を挿入口9c1に誘導することができる。但し、先端面2a3が挿入誘導面10から外れてしまっても、第2の基板P2をX方向およびY方向に移動させて挿入誘導面10の誘導領域10Rに位置させればよい。
先端面2a3が可動ハウジング7と接触する際の最も理想的な位置は、X方向およびY方向で内側誘導面10aの内側位置、即ち挿入口9c1の内側位置である。しかしながら、基板対基板接続用のソケットコネクタ1とプラグコネクタ2は小型化する傾向にあり、第1の基板P1と第2の基板P2の間に挟まれていて外部からソケットコネクタ1とプラグコネクタ2を見えない状態で、作業者が正確に位置合わせをするのは極めて困難である。そして多くの場合、先端面2a3は、X方向およびY方向の平面方向で位置ずれするだけでなく、X方向、Y方向、Z方向の軸周りにも回転すること、即ちプラグコネクタ2の姿勢が斜めに傾斜することも多い。
ここで図9は可動ハウジング7の上面に対する先端面2a3の接触位置を二点鎖線で示している。例えば先端面2a3が接触位置C1で挿入誘導面10と接触する場合、先端面2a3は外側誘導面10cと中間誘導面10bとに順次接触する。これは先端面2a3の接触時の姿勢が水平でも傾斜していても同じである。先端面2a3の姿勢は外側誘導面10cと中間誘導面10bとの接触によって矯正されるからである。すると、先端面2a3は傾斜する外側誘導面10cを滑り、その全面が中間誘導面10bと接触する接触位置C2に誘導することができる。先端面2a3が平坦で水平面の中間誘導面10bと接触すると、プラグコネクタ2と第2の基板P2は傾斜の無い姿勢へと矯正され、作業者は手元の感覚でその姿勢の変化を知ることができる。あとは第2の基板P2をX方向およびY方向に移動させると、先端面2a3の中間誘導面10bとの接触面積が減少する一方で挿入口9c1を覆う面積が多くなれば、中間誘導面10bによる支持バランスが崩れて、先端面2a3の一部または全面が内側誘導面10aから挿入口9c1の内側に落ち込むので、それによって嵌合接続部2a1の全体を嵌合室9cに挿入することができる。
また、例えば先端面2a3が、Z方向軸周りに回転して、図9で示す接触位置C3で挿入誘導面10と接触するような場合も、接触位置C1で接触する場合と同じようにプラグコネクタ2は誘導される。即ち、先端面2a3が外側誘導面10cと中間誘導面10bに接触すると、先端面2a3は外側誘導面10cを滑り、接触位置C4で示すように中間誘導面10bと接触して、プラグコネクタ2と第2の基板P2が傾斜の無い姿勢へと矯正される。その状態で第2の基板P2をX方向およびY方向に移動させて、接触位置C5の位置に移動すると、中間誘導面10bによる支持バランスが崩れて、先端面2a3が内側誘導面10aを介して挿入口9c1に落ち込み、それによって嵌合接続部2a1の全体を嵌合室9cに挿入することができる。
ソケットコネクタ1の作用効果
以上のようにソケットコネクタ1によれば、挿入口9c1に対するプラグコネクタ2の挿入位置がずれていても、挿入誘導面10によって位置ずれを解消しながら挿入口9c1に誘導することができ、これによりプラグコネクタ2の嵌合接続部2a1を挿入口9c1から嵌合室9cへと正しく挿入することができる。したがってこのように嵌合作業を容易に行えるため、ソケットコネクタ1とプラグコネクタ2を小型化することができる。また、既に説明した他にも、ソケットコネクタ1は以下の作用効果を奏することができる。
ソケットコネクタ1の挿入誘導面10は、内側誘導面10aと中間誘導面10bと外側誘導面10cの基準線Lに対する角度がすべて異なるので、プラグコネクタ2の先端面2a3が接触したときの姿勢を異ならせることができる。
外側誘導面10cの基準線Lに対する角度θ2は、水平で平坦な中間誘導面10bの基準線Lに対する角度(0度)よりも大きいため、外側誘導面10cよりも挿入口9c1に近い内側にプラグコネクタ2を容易に誘導することができる。また、中間誘導面10bの基準線Lに対する角度(0度)よりも内側誘導面10aの角度θ1が大きいため、プラグコネクタ2を中間誘導面10bから挿入口9c1に直結する内側誘導面10aへと円滑に誘導することができる。
中間誘導面10bが第1の基板P1と平行な平坦面であるため、中間誘導面10bを傾斜面とする場合と比べて、水平方向へのプラグコネクタ2の移動可能な距離を大きくすることができ、中間誘導面10bでのプラグコネクタ2の位置のずれの許容範囲(誘導領域)を広げることができる。また、中間誘導面10bが傾斜面であると、中間誘導面10bの内縁側と外縁側とで高さが生じるため、可動ハウジング7が高さ方向(Z方向)で大型化する。しかしながら前記実施形態では、中間誘導面10bが水平面であるため、可動ハウジング7の大型化を抑制できる。
前記実施形態では、外側誘導面10cの傾斜角度θ2が内側誘導面10aの傾斜角度θ1よりも小さいため、外側誘導面10cの外縁側から内縁側にかけてプラグコネクタ2の移動距離を確保しながらも、外側誘導面10cによって可動ハウジング7が高さ方向(Z方向)で大型化するのを抑制することができる。また、外側誘導面10cの傾斜角度θ2が内側誘導面10aの傾斜角度θ1よりも小さいため、プラグコネクタ2を傾斜の緩やかな外側誘導面10cの上を移動させることで先ず大まかに挿入口9c1側へ誘導してから、外側誘導面10cよりも傾斜角度の大きい内側誘導面10aを通じて速やかにプラグコネクタ2を挿入口9c1から嵌合室9cへと落とし込むように挿入することができる。
前記実施形態では、外側誘導面10cのうち短手外側誘導面10c2を突出部9eの上面に設けるため、周壁9の厚みを増大することなく挿入口9c1から離れる方向に外側誘導面10cを拡張することができ、プラグコネクタ2の位置ずれの許容範囲を広げることができる。
前記実施形態では、周壁9の上面に中間誘導面10bと長手外側誘導面10c1を有するので、周壁9の上面を有効活用することができ、周壁9の厚みを増大するような可動ハウジング7の大型化に依存しなくても中間誘導面10bを設けることができる。
変形例
前記実施形態によるソケットコネクタ1については、変形例による実施が可能であるため、その一例について説明する。
前記実施形態では、長手外側誘導面10c1を周壁9の上面に設ける例を示したが、突出部9eの上面に形成したり、突出部9eの上面と周壁9の上面に亘って形成してもよい。また、前記実施形態では、短手外側誘導面10c2を突出部9eの上面に設ける例を示したが、周壁9の上面に亘って形成してもよい。さらに前記実施形態では長手外側誘導面10c1を短手外側誘導面10c2よりも傾斜方向で短く形成する例を示したが、同じとしてもよく、逆に短手外側誘導面10c2を短くしてもよい。
前記実施形態では、中間誘導面10bを周壁9の上面に設ける例を示したが、突出部9eの上面に亘って形成してもよい。
前記実施形態では、外側誘導面10cの傾斜角度θ2を内側誘導面10aの傾斜角度θ1よりも小さくする例を示したが、外側誘導面10cの傾斜角度を大きくしたり、傾斜角度を同じとしてもよい。また、前記実施形態では、中間誘導面10bを非傾斜面とする例を示したが、内側誘導面10aに向けて下る傾斜面として形成してもよい。
前記実施形態では、内側誘導面10a、中間誘導面10b、外側誘導面10cのすべてを平坦面として形成する例を示したが、湾曲面として形成してもよい。
前記実施形態では、ソケットコネクタ1がフローティングコネクタである例を示したが、フローティング機能を有しないソケットコネクタに、可動ハウジング7の挿入誘導面10と同様の構成を設けるようにしてもよい。