以下、本発明を適用した画像形成装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。また、図3は、画像形成装置1における両面印刷用の搬送経路を抽出して示す。
本実施の形態の画像形成装置1は、長尺紙LSまたは用紙S(非長尺紙)を記録媒体として使用し、これら長尺紙LSまたは用紙S上に画像を形成する装置である。
本実施の形態において、長尺紙LSは、一般に良く用いられるA4サイズ、A3サイズ等の用紙よりも搬送方向の長さが長い枚葉紙であり、機内の給紙トレイユニット51a〜51cに収容できない長さを有する。かかる長尺紙LSのサイズすなわち搬送方向の長さ等の寸法は、画像形成装置1のメモリ等に定義データとして格納されている。以下、単に「用紙」という場合、長尺紙LSおよび用紙Sの両方が含まれ得る。
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に二次転写することにより、トナー像を形成する。
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60および制御部100等を備える。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙にトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度(線速度)で回転させる。
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるクリーニング部材としてのドラムクリーニングブレード(以下、単にクリーニングブレードと称する)416等を有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをクリーニングブレード416によって除去する。
中間転写ユニット42は、像担持体としての中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部60に向けて搬送される。
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(いわゆるベルト式の二次転写ユニット)を採用してもよい。
定着部60は、用紙の定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙の裏面(定着面の反対の面)側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙を狭持して搬送する定着ニップが形成される。
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。また、定着器Fには、エアを吹き付けることにより、定着面側部材から用紙Sを分離させるエア分離ユニット(図示略)が配置されている。
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量(剛度)やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー、用紙の両面に画像形成するための両面搬送経路等を有する。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
次に、搬送経路部53について詳述する。
搬送経路部53は、用紙が片面に画像を形成される際に搬送される経路であって、画像形成部40で画像が形成される用紙が搬送される主搬送路530を備える。主搬送路530は、レジストローラー対53aと画像形成部40の二次転写ニップと定着部60とを経由して用紙を搬送する経路である。また、搬送経路部53は、用紙の表裏を反転させる反転搬送路533を備える。
搬送経路部53は、外部給紙口2aから給紙された長尺紙LS等の用紙を主搬送路530に搬送する外部給紙搬送路531と、給紙トレイユニット51a〜51cから給紙された用紙Sを主搬送路530に搬送する給紙搬送路532を備える。
主搬送路530は、装置本体2の内部で給紙トレイユニット51a〜51cの上方に設けられ、装置本体2の一方の側部から他方の側部へ延在する。主搬送路530は、一方の端部が外部給紙搬送路531及び給紙搬送路532と繋がる。また、主搬送路530は、他方の端部が、装置本体2の他方の側部に設けられた排出部52の排出口と繋がる。
外部給紙搬送路531は、一方の端部が外部給紙口2aと繋がり、他方の端部が主搬送路530と繋がる。給紙搬送路532は、装置本体2内の一方の側部の近傍に設けられ、給紙トレイユニット51a〜51cから主搬送路530へ上下方向に延在する。給紙搬送路532は、装置本体2の一方の側部に設けられた開閉扉(図示略)が開かれることで、給紙搬送路532の経路の一部が外方に露出され、ジャム処理等が可能になる。給紙搬送路532は、上方の端部が主搬送路530と繋がり、下方の端部が給紙トレイユニット51a〜51cと繋がる。
反転搬送路533は、装置本体2の内部で給紙トレイユニット51a〜51cと主搬送路530の間に設けられ、装置本体2の他方の側部から一方の側部へ延在する。反転搬送路533は、主搬送路530を搬送される用紙の搬送方向において、定着部60より下流側で主搬送路530から下方へ分岐する第1の還流搬送路533aと、画像形成部40の二次転写ニップより上流側で主搬送路530と合流する第2の還流搬送路533bを備える。
反転搬送路533は、一方の端部が第1の還流搬送路533a及び第2の還流搬送路533bと繋がる。ここで、第1の還流搬送路533a及び第2の還流搬送路533bと繋がる反転搬送路533の一方の端部は、両面印刷時において用紙の進行方向(搬送方向)の正逆が切り替わるスイッチバックポイントSBPとなる。以下、反転搬送路533において、第1の還流搬送路533aから用紙が搬送される矢印aで示す搬送方向を正方向と称し、第2の還流搬送路533bへ用紙が搬送される矢印bで示す搬送方向を逆方向と称する。
また、反転搬送路533は、スイッチバックポイントSBPに対して、正方向の搬送方向における下流側に、スイッチバックローラーとしての搬送ローラー53bを備える。搬送ローラー53bは、図示しないモーターの駆動力が伝達され、正方向と逆方向の双方に用紙を搬送する。
さらに、反転搬送路533の正方向の搬送方向における搬送ローラー53bの下流側は、上方に折り返すように湾曲する湾曲搬送路533cを有している。湾曲搬送路533cは、主搬送路530に合流され反転搬送路533と主搬送路530とを繋ぐ(バイパスする)両面経路である。
湾曲搬送路533cは、用紙(主として長尺紙LS)を両面印刷するために使用される両面経路であり、正方向に搬送される用紙の搬送方向におけるレジストローラー53aの上流側で主搬送路530と合流する。本例では、湾曲搬送路533cは、主搬送路530と第2の還流搬送路533bとの合流箇所より上流側で合流する。また、湾曲搬送路533cは、用紙が主搬送路530の図中左方向に搬送される向きで主搬送路530と合流する。湾曲搬送路533cには、主として長尺紙LSを搬送するための搬送ローラー53cが設けられている。搬送ローラー53cは、搬送ローラー53bとは別個の駆動源(モーター)により駆動されるものであり、長尺紙LSの両面印刷を行う場合に搬送ローラー53bの搬送力を補う役割を担う。
このように、本実施の形態では、スイッチバックされる前の搬送方向における搬送経路の下流側を装置本体2内に折り返すように設けることで、画像形成装置1(装置本体2等)の大型化を防止しながら、反転搬送路533の経路長を従来よりも長くすることができる。また、反転搬送路533の湾曲搬送路533cを主搬送路530における画像形成部40の上流側に繋げる構成とすることで、搬送方向のサイズがより長い長尺紙LSを両面印刷できるようになる。
図1中に点線で示すように、定着部60、切断部80、主搬送路530の大部分、反転搬送路533、およびこれら搬送路に配置されたローラー等は、自動両面反転搬送ユニット(Auto Duplex Unit:ADU)の構成部分として、装置本体2に対して手前側に引き出し可能となっている。
一例では、装置奥側に板状のフレーム(図示略)が設けられ、かかるフレームに上記の構成部品が取り付けられる。そして、例えばジャム処理時にADUの操作レバー(図示略)を引き出すことで、上記のフレームと構成部品が引き出される。
また、本実施の形態では、反転搬送路533を構成する一対の用紙ガイド部材のうちの一部のガイド534は、装置本体2側に固定されている本体側下ガイド534である。このようにガイド部材の一部を装置本体2側に固定する(残す)ように構成することで、両面印刷時に反転搬送路533でジャムが発生した場合にADUを引き出すことにより、当該ジャムした用紙が、ADUの下側から視認できる状態となる。したがって、両面印刷時におけるジャム処理性の向上が図られる。
かくして、画像形成装置1では、スイッチバック動作の前後で長尺紙LSを湾曲搬送路533cに通すことにより、搬送方向のサイズがより長い長尺紙LSの両面印刷を行うことができる。また、本実施の形態によれば、両面搬送の経路が略環状になっていることから、ジャム処理時にADUを引き出した際に長尺紙LSが内側のガイド部材に巻き付くように保持される。したがって、本実施の形態によれば、かかるジャム紙の除去作業時に、用紙破損(ギロチン等)を防ぎつつ用紙を取り出し易いメリットがある。
次に、湾曲搬送路533cを用いて長尺紙LSの両面印刷を行う場合を説明する。以下は、反転搬送路533での正方向への搬送において、湾曲搬送路533cを通って主搬送路530まで搬送される長さを有する長尺紙LSを搬送する場合の例である。
長尺紙LSは、装置本体2の外部給紙口2aから外部給紙搬送路531を経由して、主搬送路530を正方向(図1の左方向)に搬送される。この後、長尺紙LSは、画像形成部40および定着部60を通過することにより、上側の第1面にトナー像が転写および定着され、主搬送路530から第1の還流搬送路533aを経由して反転搬送路533に搬送される。長尺紙LSは、反転搬送路533を矢印aで示す正方向に搬送されると、搬送方向の先端が湾曲搬送路533cに入るように、制御部100によって搬送ローラー53bが駆動制御される。この後、長尺紙LSの先端は、湾曲搬送路533cを形成する用紙ガイドに接触し、かかる用紙ガイドの湾曲形状に沿って移動(上昇)し、搬送ローラー53cに突入する。
制御部100は、長尺紙LSの先端が搬送ローラー53cに突入する際に搬送ローラー53cの回転を開始するように駆動源に駆動信号を出力し、搬送ローラー53bおよび53cの両方によって長尺紙LSを正方向に搬送する。ここで、制御部100は、搬送ローラー53bおよび搬送ローラー53cの周速度が同一になるように各々の駆動源に駆動信号を出力する。この後、長尺紙LSは、搬送ローラー53bおよび53cの両方で搬送されながら、湾曲搬送路533cを通って主搬送路530に入る。
制御部100は、長尺紙LSの搬送方向の後端がスイッチバックポイントSBPを通過すると、搬送ローラー53cを長尺紙LSから離間(退避)させるとともに、搬送ローラー53bの回転方向を切り替えて搬送方向を反転させるスイッチバックの動作を実行する。
かかる搬送制御により、長尺紙LSは、進行方向が反転して逆方向に搬送され、搬送方向の後端は主搬送路530を逆方向(図1における右方向)に移動し、搬送方向の先端は、反転搬送路533から第2の還流搬送路533bを経由して主搬送路530に搬送される。
この後、長尺紙LSは、第2の還流搬送路533bを経て、画像形成面である第1面が下側を向いて主搬送路530に搬送され、上側を向いた第2面にトナー像が転写および定着される。両面にトナー画像が形成された長尺紙LSは、主搬送路530から排紙部52に排紙されるように、制御部100によって搬送制御される。
ところで、上述のようにADUの内部で発生したジャムに対するジャム処理性の向上が図られた構成であっても、印刷ジョブ実行時に発生し得るあらゆるジャムに対する処理性向上を図るには、自ずと限界がある。典型的には、ADUの外部で長尺紙LSのジャムが発生した場合や、用紙がADUと装置本体側に跨がった状態でジャムが発生した場合に、以下のような問題が生じる。
図3は、排紙ローラー52aの搬送方向下流側の排出口(図示せず)の付近でジャムが発生した場合を例示し、かかるジャム発生により印刷ジョブが即断され、用紙(長尺紙LS)がADUと装置本体側とに跨がった状態で搬送停止された事例を示す。なお、図3では定着器Fや切断部80等の図示を省略している。
ここで、図3に示す状態からADUを装置の手前側に引き出すと、長尺紙LSの排出口付近の部位がジャムしているため、当該ジャムした用紙(長尺紙LS)がADUの壁面等によって引き裂かれ、用紙がちぎれる現象(所謂ギロチン)が発生する虞がある。上述のように、用紙のちぎれは、該用紙の破片や粉等が機内に残った場合に、後の印刷画像の劣化や装置の故障等の原因となる虞がある。
このため、ギロチンの発生を防ぎながら用紙を装置外に除去するためには、ADUを引き出すことなしに、作業者が長尺紙LSを図中の左側に引っ張って取り出す必要があり、かかるジャム処理の作業労力等が大きくなる問題が生じる。
言い換えると、ADUと装置本体側とに跨がった状態で用紙のジャムが発生すると、ギロチン防止の観点からは、ジャム処理の際にADUを引き出すことが出来なくなる。この場合、ジャム処理時における作業効率等の点のみならず、ADUの利点(本来の役割等)が十分に発揮されないという点でも問題がある。加えて、非長尺紙である用紙Sと比較して、長尺紙LSは、搬送方向の長さが長くなるほど、ジャムの発生時に、ADUと装置本体側とに跨がった状態になりやすい問題がある。
そこで、本実施の形態では、図1および図4に示すように、用紙の搬送経路に切断部80を設けた。切断部80は、用紙の搬送方向と交差する方向(この例では直交方向)に沿って用紙を切断するカッター、このカッターを図中の両矢印方向すなわち上下方向に往復移動させるソレノイド等の駆動源、などを有する。そして、制御部100は、用紙のジャムが発生した場合、当該用紙の位置に応じて、かかる用紙をカッターで切断するように、駆動源(ソレノイド等)に制御信号を出力して、切断部80の動作を制御する。
本実施の形態において、切断部80のカッターは、用紙のジャムしている部分と、ジャムしていない残部と、を分けるように当該用紙を切断する役割を有する。この例では、切断部80のカッターは、ADU内に設けられており、ADUの側壁の近傍の搬送経路上で上下方向に往復移動できるように配置されている。具体的には、カッターは、通常状態(初期位置)では、搬送経路を用紙が通過できるように、搬送経路の上方にカッターが位置する。これに対し、ジャム発生時に後述する所定条件を満たす場合、制御部100の制御に基づき、カッターは、搬送経路を塞ぐように下方に移動する。この動作により、搬送経路上の用紙がカッターによって切断される。この後、制御部100の制御に基づき、カッターが再び初期位置に戻ることで、搬送経路を用紙が通過できるようになる。
かくして、制御部100は、用紙のジャムが発生した場合、当該用紙をADU側(装置本体2から出し入れ可能な第1経路側)の部位と、装置本体2に固定されている経路側(第2経路側)の部位とに分断するように、切断部80の動作を制御する。かかる制御により、切断部80のカッターは、用紙のジャムしている部分と、ジャムしていない部分(以下、用紙残部という。)と、を分けるように当該用紙を切断する。このように用紙を切断することにより、ADUを装置本体2から引き出した場合の用紙のちぎれ(ギロチン等)を防止することができ、ジャム処理性の向上が図られる。
また、図4に示す構成例では、切断部80(カッター)よりも搬送方向下流側でジャムが発生した場合、かかるジャム紙をカッターで切断することにより、切断後のジャム紙の上流側の残部(ADU内の用紙残部)を搬送することができる。さらに、かかる用紙残部を搬送しながらカッターで切断することにより、ジャムが発生した用紙を、複数回切断して、排紙部52側に積み重ねるように排出することができる(図5参照)。このような処理を行うことにより、ジャム発生時に作業者が行うべき作業労力が大幅に軽減される。
次に、図6を参照して、画像形成装置1の他の構成例について説明する。
図5で上述したように、用紙残部を切断部80で複数回切断して排紙部52側に積層する処理を行う場合、排紙部52側の構成によっては積層可能な数が制限される場合があり、長尺紙LSの長さが長いほど、かかる制限を受けやすくなる。加えて、ジャムの発生した位置や用紙詰まりの状態などによっては、カッターで切断されて装置外の方向に排出された用紙残部が当該用紙のジャム部分と干渉する等により、積載すること自体難しい事例も発生し得る。
そこで、図6に示す他の構成例では、排紙部52にパージ経路PPを設けている。このパージ経路PPは、排紙部52の排紙ローラー52aが配置された排紙経路とは別の経路であり、切断部80(カッター)の下流側から排紙経路の上方に分岐するように設けられている。かかる分岐点には、用紙の搬送方向を、排紙経路とパージ経路PPとのいずれかに切り替えるための切り替えゲート(図示略)が設けられている。また、パージ経路PPを構成する用紙ガイドには、用紙残部を装置外に排出するための排紙ローラー52bが設けられている。切り替えゲートおよび排紙ローラー52bの動作は、制御部100により制御される。
かかる構成において、制御部100は、ジャムが発生した用紙に対して、カッターで1回だけ切断するように切断部80を制御した後、2回目以降の切断を行うことなく、用紙残部をパージ経路PPを通して排出するように、切り替えゲートおよび排紙ローラー52bを制御する。
このような構成およびジャム処理によれば、図6に示すように、カッターで切断された長尺紙LSのジャム箇所を含む一部LS−aに対して、切断された長尺紙LSの他の一部(用紙残部)LS−bを積載せずに装置外に排出することができる。
以下、図7に示すジャム処理時のフローチャートを参照して、長尺紙LSのジャムが発生した場合に制御部100により実行されるジャム処理の一例を説明する。図7に示すフローチャートは、上述したパージ経路PP等を設けない構成例を前提とする。
制御部100は、ジャム検知信号を入力した後のステップS110において、当該印刷ジョブを停止(即断)するように、動作中の各部(画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60など)を制御する。
続くステップS120において、制御部100は、ジャムとなった用紙の位置情報を取得する。ここで、用紙の位置情報として、ジャムにより停止している用紙の現在位置を示す情報が含まれる。この例では、用紙の現在位置を示す情報として、該用紙の端部(搬送方向の先端および後端)位置を示す情報が含まれる。かかる位置情報は、装置内における不図示の位置センサーから取得する、あるいは用紙の搬送タイミングから算出する等の公知の手法により取得できる。
また、用紙の現在位置を示す情報として、当用紙のジャムした位置、すなわち当該用紙が機械に詰まっている位置を示す情報(以下、ジャム位置情報という)が含まれる。かかるジャム位置情報は、公知の手法で取得でき、例えば、用紙搬送用の種々の駆動源(搬送ローラーを駆動するモーター、用紙の搬送経路を切り替えるソレノイド、など)の内、トルク値や電流値などが急上昇したものからジャム位置を特定することができる。
続くステップS130において、制御部100は、ジャムとなった用紙が長尺紙LSであるか否かを判定する。
ここで、制御部100は、ジャムとなった用紙が長尺紙LSではないと判定した場合(ステップS130、NO)、後述するステップS140以下の処理を行わずに処理を終了する。この場合、制御部100は、ジャムした用紙が非長尺紙(用紙S)であり、ギロチン発生を回避しつつ除去作業が可能であるとみなして、通常のジャム処理の動作を実行する。かかる通常のジャム処理の動作により、例えば、ジャムが発生した旨の警告画面が表示部21に表示され、該画面において上述したジャム位置情報に基づくジャム位置が表示され、操作部21の操作により、用紙を除去するために作業者が行うべき作業手順等が表示部21に表示される。
他方、制御部100は、ジャムとなった用紙が長尺紙LSであると判定した場合(ステップS130、YES)、ステップS140に移行する。
ステップS140において、制御部100は、上述したジャム位置情報を参照して、当該長尺紙LSのジャムした位置が切断部80のカッターよりも下流にあるか否かを判定する。
ここで、制御部100は、長尺紙LSのジャムした位置が切断部80のカッターよりも下流にないと判定した場合(ステップS140、NO)、後述するステップS150以下の処理を行わずに処理を終了する。この場合、制御部100は、切断部80のカッターで切断する用紙部分がないものとみなして、上述したような通常のジャム処理の動作を実行する。
他方、制御部100は、当該長尺紙LSのジャムした位置が切断部80のカッターよりも下流にあると判定した場合(ステップS140、YES)、ステップS150に移行する。
ステップS150において、制御部100は、カッターにより1回目の切断動作を行うように切断部80を制御する。かかる切断動作により、当該長尺紙LSにおけるジャム位置を含む部位(搬送方向の先端側)と、ジャム位置を含まない残りの部位とが切り離され、後者すなわちジャム位置を含まない長尺紙LSの部位(用紙残部)の搬送が可能となる。
続くステップS160において、制御部100は、用紙残部が所定長さ以上であるか否かを判定する。この例では、所定長さは、用紙搬送方向における切断部80の上流側の直近に配置された搬送ローラーから切断部80の下流側の直近に配置された搬送ローラーまでの搬送路の長さに設定されている。用紙残部の長さ情報は、上述したような公知の手法で取得できる。
ここで、制御部100は、用紙残部が所定長さに満たないと判定した場合(ステップS160、NO)、後述するステップS170の処理を行わずに処理を終了する。この場合、制御部100は、ADU内に用紙残部がない、或いはADU内の用紙残部をこれ以上搬送できない(すなわち用紙残部がカッターの位置に来ない)ものとみなして、処理を終了する。このとき、制御部100は、ADU内に用紙残部がない場合、例えば、「ジャムとなった用紙は切断して全て排出されました」などのメッセージを表示部21に表示する。これに対し、ADU内に用紙残部がある場合、制御部100は、例えば、「ADUを引き出して排出部付近にある用紙残部を取り出してください」などの作業を促すメッセージを表示部21に表示する。
他方、制御部100は、用紙残部が所定長さ以上であると判定した場合(ステップS160、YES)、ステップS170に移行する。
ステップS170において、制御部100は、用紙残部を搬送しながらカッターで切断するように、切断部80および用紙残部の位置にある搬送ローラーを制御する。かかる処理により、用紙残部を搬送方向における切断部80の下流側に移動させる動作を行いつつ、ジャムが発生した長尺紙LSに対する2回目以後の切断が実行される。
ステップS170における切断までの用紙残部の搬送量(搬送距離)、言い換えると用紙残部におけるカッターから下流への突出量は、任意の距離(長さ)に設定することができ、例えばジャム処理しやすい長さ(A4などの定型の長さ)とするとよい。
制御部100は、ステップS170における切断処理の後、ステップS160に戻り、用紙残部が所定長さに満たない(ステップS160、NO)と判定されるまで、上述したステップS170の処理を繰り返す。かかる処理により、ジャムとなった長尺紙LSの用紙残部が順次機外に排出される(図5参照)。
このような一連の処理を実行する本実施の形態によれば、ADUを引き出した際のギロチン発生を防止しつつ、長尺紙LSのジャム処理を行うことができる。また、本実施の形態によれば、ADU内に存在する用紙残部を最小化して、ジャム処理の労力を大幅に軽減することができる。さらに、本実施の形態によれば、ADU内の用紙残部を無くすことにより、ADUの引き出し作業を要すること無く、ジャムした長尺紙LSを自動で機外に排出することができる。
なお、図6で例示したパージ経路PPを付加する構成の場合、上述したステップS160およびステップS170は、以下の処理に変えればよい。
すなわち、1回目の切断動作を行った後のステップS160において、制御部100は、上述した切り替えゲートの向きを切り替えて、用紙残部の排出方向をパージ経路PPに向ける。続くステップS170において、制御部100は、用紙残部をパージ経路PPに通すように、ADU内の搬送ローラーおよびパージ経路PP中の排紙ローラー52bを駆動制御する(図6参照)。
かかる処理を行うことにより、ADU内の用紙残部をパージ経路PPを通して機外に排出し、ADUを引き出すことなく長尺紙LSのジャム処理を行うことができる。
上述した実施の形態では、切断部80のカッターをADUの内部(ADUの壁面の近傍)に配置した例を説明したが、他の例として、カッターをADUの外部に配置してもよい。他方、上述したギロチン発生を回避する観点からは、カッターは、ADUと装置本体側の境界的な位置に設けることが望ましい。
上述した実施の形態では、切断部80を排紙部52側に設けた構成例について説明した。他の例として、切断部80は、給紙経路側に設けてもよい。この場合のジャム処理動作の一例として、給紙装置内でジャムが発生した場合に上述のような切断動作を行う。かかる切断動作により、長尺紙LSのジャム部分が給紙装置内に残り、ジャムしていない用紙残部が画像形成装置1内に残る。したがって、ジャム発生後のジョブ停止状態から、用紙残部を装置外に排出することができる。
このように、画像形成装置1によれば、ジャム発生時に当該ジャムした用紙を切断(分断)することにより、用紙のちぎれ(ギロチン発生)を回避しつつADUを引き出すことができ、さらにはADUを引き出すことなしにジャムした用紙の残部を排出することも可能になる。したがって、本実施の形態によれば、ジャム処理時の作業労力が格段に軽減され、ジャム処理性の向上が実現される。
上記実施の形態および変形例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。