JP2019065178A - 防曇塗料及び積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】防曇性及び耐クラック性に優れた防曇塗料及び積層体を提供することである。【解決手段】セルロース骨格を有するバインダーと、金属酸化物粒子と、水と、水以外の溶剤と、を含有し、金属酸化物粒子の固形質量Aと、バインダーの固形質量Bとは、下記関係式(1)を満たし、水以外の溶剤が占める割合が、水と水以外の溶剤との合計量に対して30質量%以上90質量%以下である、防曇塗料、及び積層体である。0.06≦B/A≦2.00 関係式(1)【選択図】なし

Description

本開示は、防曇塗料及び積層体に関する。
屋内又は屋外に設置されて長期間にわたって使用される装置、建材等は、様々な環境に曝されるため、徐々に埃、塵、砂利等が堆積したり、風雨時の雨水に濡れたりする等して、予定されている機能及び性能が損なわれる場合がある。例えば、自動車のヘッドランプ等の車両灯具においては、灯室内に高湿度の空気が入り込み、外気や降雨等によってレンズが冷やされ、内面に水分が結露することによって曇りが生じることがある。このような曇りは、車両灯の輝度を低下させる原因となり、またレンズ面の美観を損なわせることによりユーザーの不快感を引き起こす場合がある。
このような曇りを防止するための防曇剤等が開示されている。
例えば、2%水溶液の粘度が1000cps以下でかつ炭素原子数が2以上のアルコキシ基を有するアルコキシセルロースまたはヒドロキシアルコキシセルロースとコロイドを形成する無機酸化物を主要成分とする防曇剤組成物が開示されている(例えば、引用文献1参照)。
また、塩基性触媒を用いて形成されたコロイダルシリカゾル(A)と親水性ポリマー(B)とを必須成分として含有することを特徴とする防曇塗料が開示されている(例えば、引用文献2参照)。
また、コロイド粒子の形状が鎖状のシリカゾル(A)を含有することを特徴とする防曇剤組成物が開示されている(例えば、引用文献3参照)。
また、基材表面に、吸水性有機高分子と無機物質よりなる吸水性有機無機複合被膜を被覆し、その表面を撥水性加工してなることを特徴とする防曇性被膜形成基材が開示されている(例えば、引用文献4参照)。
また、水98.0〜99.8重量%、水溶性セルロース0.01〜0.40重量%および平均粒径3〜50nmのコロイダルシリカ0.16〜1.99重量%からなり、アルカリ成分の濃度が50ppm以下である防曇剤が開示されている(例えば、引用文献5参照)。
また、シロキサンバインダーと、シリカ粒子と、を含有し、表面における表面積差ΔSと表面粗さRaとが予め定められた関係を満たす親水性膜が開示されている(例えば、引用文献6参照)。
また、ハウジング内の光源、該光源からの光を透過するレンズ及びハウジング内の気圧変動を調整するための通気孔を有する車両用灯具において、レンズの内面に水溶性高分子を三次元的に架橋した架橋体で構成され、1.5〜25mg/cmの吸水量を有する防曇塗膜が形成されていることを特徴とする車両用灯が開示されている(例えば、引用文献7参照)。
特開昭63−132989号公報 特開2005−314495号公報 特開2000−336347号公報 特開2001−152137号公報 特開2000−154374号公報 特開2016−164265号公報 特開2009−54348号公報
防曇剤等から形成される防曇層は、防曇性及び耐久性の観点から、ある程度以上の厚さを有することが好ましい。しかしながら、既存の防曇剤等を用いて単純に防曇層の層厚を厚くする場合、基材と層との密着性が低下する、あるいは防曇層にひび割れ(クラック)が起きるなどの問題が生じ、防曇層が良好な防曇性を保持することが困難であった。
また、上記特許文献1〜特許文献7は、防曇性と耐クラック性(クラックの生じ難さ)とを両立する防曇層を開示していない。
上記に鑑み、本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、防曇性及び耐クラック性に優れた防曇塗料を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、防曇性及び耐クラック性に優れた積層体を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> セルロース骨格を有するバインダーと、金属酸化物粒子と、水と、水以外の溶剤と、を含有し、金属酸化物粒子の固形質量Aと、バインダーの固形質量Bとは、下記関係式(1)を満たし、水以外の溶剤が占める割合が、水と水以外の溶剤との合計量に対して30質量%以上90質量%以下である、防曇塗料。
0.06≦B/A≦2.00 関係式(1)
<2> 金属酸化物粒子が、シリカ粒子である、<1>に記載の防曇塗料。
<3> 金属酸化物粒子が、鎖状シリカ粒子である<1>又は<2>に記載の防曇塗料。
<4> 金属酸化物粒子の平均一次粒径が、10nm以上20nm以下である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の防曇塗料。
<5> バインダーの重量平均分子量が、100,000以上1,000,000以下である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の防曇塗料。
<6> バインダーの官能基のcLogP値が、−0.15以下である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の防曇塗料。
<7> 基材と、基材上の少なくとも一部に設けられた防曇層とを有し、防曇層が、セルロース骨格を有するバインダーと、金属酸化物粒子とを含有し、金属酸化物粒子の固形質量Aと、バインダーの固形質量Bとは、下記関係式(1)を満たし、防曇層が金属酸化物粒子の堆積した構造を有し、かつ、防曇層の内部に空隙を有し、防曇層の層厚が2μmである場合の防曇層のヘイズが1.5以下である、積層体。
0.06≦B/A≦2.00 関係式(1)
<8> 基材が、樹脂基材である、<7>に記載の積層体。
<9> 樹脂基材が、アクリル樹脂基材、又はポリカーボネート基材である、<8>に記載の積層体。
<10> 防曇層の厚さが、2μm以上20μm未満である、<7>〜<9>のいずれか1つに記載の積層体。
本発明の一実施形態によれば、防曇性及び耐クラック性に優れた防曇塗料が提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、防曇性及び耐クラック性に優れた積層体が提供される。
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
本開示において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、重合体中の各構造単位の量は、重合体中に各構造単位に該当する構造単位が複数存在する場合は、特に断らない限り、重合体中に存在する複数の構造単位の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本開示における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、「防曇性」とは、防曇層が曇ることを防ぐ性能をいう。ここで、本開示にいう「曇り」には、水蒸気による曇り、シリコーンガスによる曇り、及びヘイズ値が高いこと(透明性が低いこと)が含まれる。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示における「固形分」の語は、溶剤を除く成分を意味し、溶剤以外の低分子量成分などの液状の成分も本開示における「固形分」に含まれる。
本開示において「溶媒」とは、水、有機溶剤、及び水と有機溶剤との混合溶媒を包含する意味で用いられる。
本開示において、重量平均分子量(Mw)は、他に断りが無い限り、以下の条件で行われるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって得られる値である。GPCによる測定は、測定装置として、HLC−8120GPC及びSC−8020(いずれも東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super HM−H(6.0mmID×15cm、東ソー(株))を2本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いることにより測定する。測定条件としては、試料濃度を0.5質量%、流速を0.6ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、示唆屈折計(RI)検出器を用いて行うことができる。検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、及び「F−700」の10サンプルから作製されたものを用いることができる。
以下、本開示を詳細に説明する。
<防曇塗料>
本開示に係る防曇塗料は、セルロース骨格を有するバインダーと、金属酸化物粒子と、水と、水以外の溶剤と、を含有し、金属酸化物粒子の固形質量Aと、バインダーの固形質量Bとは、下記関係式(1)を満たし、水以外の溶剤が占める割合が、水と水以外の溶剤との合計量に対して30質量%以上90質量%以下である。
0.06≦B/A≦2.00 関係式(1)
防曇剤等から形成される防曇層は、防曇性及び耐久性の観点から、ある程度以上の厚さを有することが好ましい。しかしながら、既存の防曇剤等を用いて単純に防曇層の層厚を厚くする場合、基材と層との密着性が低下する、防曇層にひび割れ(クラック)が起きるなどの問題が生じ、防曇層において良好な防曇性を保持することが困難であった。また、上記特許文献1〜特許文献7においても、防曇性と耐クラック性(クラックの生じ難さ)とを両立する防曇層は開示されるに至っていない。
これに対し、本開示の防曇塗料及び積層体によれば、防曇性及び耐クラック性に優れた防曇層を形成する防曇塗料及びそのような防曇層を有する積層体を提供することができる。その詳細は明らかではないものの、以下のように推察される。すなわち、セルロース骨格を有するバインダーと、金属酸化物粒子とが、上記関係式(1)を満たして存在することにより、防曇塗料から防曇層内に空隙が形成され、吸水性が向上し、防曇効果が高まる。また、セルロース骨格を有するバインダーを使用することにより、セルロース主鎖が有する損失弾性、及びセルロース側鎖に起因する損失弾性(温度/tanδ曲線の副分散ピークとして現れる)が強いため、加熱成層時の応力を外部へ拡散しやすく、耐クラック性が高まり、防曇層について2.0μm以上の厚層化が可能であると考えられる。また、関係式(1)が0.06≦B/A≦2.00を満たすことにより、セルロース骨格を有するバインダーの偏析が生じ難くなり、金属酸化物粒子同士及び/又は金属酸化物粒子と基材との結合性が高まり、高透明性と密着性が両立することができ、防曇性及び耐クラック性に寄与すると考えられる。更に、水以外の溶剤が占める割合が、水と水以外の溶剤との合計量に対して30質量%以上90質量%以下であることにより、防曇塗料の塗装性、及び基材と防曇層との間の密着性が改善して耐クラック性の向上に寄与し、かつ、セルロース骨格を有するバインダーの溶解性が良好になることにより透明性が高くなることで防曇性に寄与することができる。これらにより、本開示の防曇塗料は、防曇層を形成した場合に、防曇性及び耐クラック性に優れたものとなると考えられる。
(セルロース骨格を有するバインダー)
本開示に係る防曇塗料は、セルロース骨格を有するバインダーを含有する。本開示において、セルロース骨格を有するバインダーとは、下記式(a)で表わされる多糖類構造を有するバインダー、及びその誘導体を指す。
式(a)中、R、R、及びR、は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜10の炭化水素基、又は炭素数が1〜10のカルボン酸基であり、nは、200〜6,000である。
セルロース骨格を有するバインダーの重量平均分子量は、100,000以上1,000,000以下であることが好ましく、200,000〜800,000であることがより好ましい。セルロース骨格を有するバインダーの重量平均分子量が上記範囲であることにより、吸水時に防曇層の成分の溶出が抑制されて耐水垂れ性が向上し、また混合溶媒への溶解性も良好であるため高透明性も呈することができる。
セルロース骨格を有するバインダーの重量平均分子量は、既述の重量平均分子量の測定方法に従って測定できる。
セルロース骨格を有するバインダーの官能基のcLogP値は、−0.15以下であることが好ましく、−0.6以下であることがより好ましい。セルロース骨格を有するバインダーの官能基のcLogP値が上記範囲であることにより、セルロース骨格を有するバインダーの親水性が高まり、防曇塗料及び防曇塗料から形成される防曇層の防曇性が良化する。
ここで、セルロース骨格を有するバインダーの官能基のcLogP値は、コンピュータ計算により算出してもよく、Biobyte Corp.社の数値を用いた、CambridgeSoft社製「ChemDraw」に搭載されたLogP予測機能を用いて得られる値である。
セルロース骨格を有するバインダーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、ニトロセルロース、クロスカルメロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、及びこれらの塩、等が挙げられる。
セルロース骨格を有するバインダーは、市販品であってもよく、例えば、カルボキシメチルセルロース(例えば、ダイセルファインケム株式会社製、カルボキシメチルセルロース1110、1120、1130、1140、1150、1160、1170、1180、1190、1220、1240、1250、1260、1330、1350、1380、1390、2200、2260、2280など)、ヒドロキシエチルセルロース(例えば、ダイセルファインケム株式会社製、ヒドロキシエチルセルロースSP200、SP400、SP500、SP600、SP850、SP900など)などが挙げられる。
セルロース骨格を有するバインダーは、防曇塗料に、1種のみ含まれてよく、又は2種以上含まれていてもよい。
防曇塗料におけるセルロース骨格を有するバインダーの含有量は、防曇塗料の全固形分に対して3質量%〜67質量%が好ましく、より好ましくは5質量%〜60質量%であり、更に好ましくは7質量%〜50質量%である。金属酸化物粒子の含有量が上記範囲であることで、優れた防曇性が発揮され、かつ、耐クラック性を向上させることができる。
また、防曇塗料に含まれるバインダー全量に占めるセルロース骨格を有するバインダーの含有量は、バインダー全量に対し、好ましくは50質量%〜100質量%、より好ましくは70質量%〜100質量%、更に好ましくは90質量%〜100質量%、最も好ましくは95質量%〜100質量%である。
(金属酸化物粒子)
本開示の防曇塗料は、金属酸化物粒子を含有する。
金属酸化物粒子は、透明性が高く、光透過性を有する粒子であることが好ましい。
光透過性が良好な金属酸化物粒子としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、Ti、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Te等の原子を含む酸化物粒子が挙げられる。
金属酸化物粒子の金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれるものとする。
金属酸化物粒子としては、酸化ケイ素(シリカ)粒子、酸化アルミニウム(アルミナ)粒子、酸化チタン粒子、チタン複合酸化物粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子、インジウム/スズ酸化物粒子、アンチモン/スズ酸化物粒子等が好ましく、シリカ粒子、アルミナ粒子がより好ましく、シリカ粒子がさらに好ましい。シリカ粒子は、他の金属酸化物粒子に比べて屈折率が低いため、膜中の空隙と金属酸化物粒子界面での光の屈折が生じにくく低ヘイズとなりやすいため、好ましい。
好ましい金属酸化物粒子であるシリカ粒子の種類は、特に限定されるものではない。シリカ粒子としては、例えば、中空シリカ粒子、多孔質シリカ粒子、無孔質シリカ粒子等が挙げられる。
シリカ粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円状、鎖状等のいずれの形状であってもよい。好ましくは、シリカ粒子の形状は、鎖状である。防曇層主成分のシリカ粒子自体の形状が鎖状であることにより、厚層化が可能となり、吸水時にシリカが欠落し難くなることで水垂れがより効果的に抑制される。
シリカ粒子は、表面がアルミ化合物等で処理されたシリカ粒子であってもよい。
金属酸化物粒子の平均一次粒径は、10nm以上20nm以下であることが好ましく、12nm以上18nm以下であることが好ましい。金属酸化物粒子の平均一次粒径が10nm以上20nm以下であることにより、二次粒径の粗大化が抑制され、また防曇層を形成する際の溶媒揮発による毛管力が強くないため、防曇塗料及び防曇塗料から形成される防曇層の高透明性及び防曇層形成時の耐クラック性が良化する。
金属酸化物粒子の平均一次粒径は、動的光散乱法又はレーザー回折法による粒度分布測定により測定される値である。
金属酸化物粒子は、市販品を用いてもよい。市販品は、分散物の形態をとることがある。
金属酸化物粒子の市販品の例としては、シリカ粒子としては、スノーテックス(登録商標)OXS(pH2.0〜4.0、球状、粒径4nm〜6nm、固形分10質量%、日産化学工業(株)製)、スノーテックスOS(pH2.0〜4.0、球状、粒径8nm〜11nm、固形分20質量%、日産化学工業(株)製)、スノーテックスO−40(pH2.0〜4.0、球状、粒径20nm〜25nm、固形分40質量%、日産化学工業(株)製)、スノーテックスOL(pH2.0〜4.0、球状、粒径40nm〜50nm、固形分20質量%、日産化学工業(株)製)、スノーテックスOYL(pH2.0〜4.0、球状、粒径50nm〜80nm、固形分20質量%、日産化学工業(株)製)、スノーテックスOUP(pH2.0〜4.0、鎖状、一次粒子径10nm〜20nm、二次粒子径40nm〜100nm、固形分15質量%、日産化学工業(株)製)、スノーテックスO(粒径20nm、固形分20質量%、日産化学工業(株)製)、スノーテックスC(pH8.5〜9.0、球状、粒径10nm〜15nm、固形分20質量%、日産化学工業(株)製)、スノーテックスAK(pH4.0〜6.0、球状、粒径10nm〜15nm、固形分18質量%、日産化学工業(株)製)、スノーテックスST−S(粒径8nm〜11nm、固形分30質量%、日産化学工業(株)製)、スノーテックスST−50(粒径20nm〜25nm、固形分48質量%、日産化学工業(株)製)、オルガノシリカゾルIPA−ST(イソプロパノール分散液、粒径10nm〜15nm、固形分30質量%、以上、日産化学工業(株)製)、NALCO(登録商標)8699(無孔質シリカ粒子の水分散物、平均一次粒子径:3nm、固形分:15質量%、NALCO社製)、NALCO(登録商標)1130(無孔質シリカ粒子の水分散物、平均一次粒子径:8nm、固形分:30質量%、NALCO社製)などが挙げられる。
金属酸化物粒子の市販品の例としては、アルミナ粒子として、アルミナゾルAS−520(pH3〜5、粒径15nm〜30nm、固形分20質量%、日産化学工業(株)製)、酸化アルミニウムナノ粒子/ナノパウダー(例えば、SkySpring Nanomaterials社製、Aluminum Oxide Nanoparticles/Nanopowder1319NH、1318DL、1317NH、1320DL、1329DX、1321DL、1324DL、1328QI、1330DL、1331DL、1338GJ、1340DLなど)などが挙げられる。
金属酸化物粒子の市販品の例としては、酸化チタン粒子としては、酸化チタンナノ粒子/ナノパウダー(例えば、SkySpring Nanomaterials社製、Titanium Oxide Nanoparticles/Nanopowder7910DL、7918DL、7920DL、7921DL、7910SCDL、7920SCDLなど)などが挙げられる。
金属酸化物粒子は、防曇塗料に、1種のみ含まれてよく、又は2種以上含まれていてもよい。2種以上を含む場合、金属の種類は同じであっても異なっていてもよく、粒径は同じであっても異なっていてもよい。
防曇塗料における金属酸化物粒子の含有量は、防曇塗料の全固形分に対して30質量%〜95質量%が好ましく、より好ましくは35質量%〜90質量%であり、更に好ましくは40質量%〜85質量%である。金属酸化物粒子の含有量が上記範囲であることで、膜中の空隙率が高まり、吸水による防曇性が良化する。
(水)
防曇塗料は、水を含有する。水を含有することにより、透明性及び基材密着性を向上させることができる。
また、水としては、不純物がより少ないという観点から、イオン交換水、純水、蒸留水等が好ましい。
水が占める割合は、水と水以外の溶剤との合計量に対して10質量%以上70質量%以下であり、好ましくは15質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上50質量%以下である。水と、水以外の溶剤とが上記範囲であることにより、積層体とした場合に、防曇塗料から形成される防曇層と基材との密着性、防曇塗料の塗装性、及びセルロース骨格を有するバインダーを溶解させて防曇塗料及び防曇層の透明性を高くすることができる。
(水以外の溶剤)
防曇塗料は、水以外の溶剤を含む。
水以外の溶剤としては、例えば、ケトン系溶剤、グリコール系溶剤、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エーテル系溶剤等が挙げられる。
水以外の溶剤が占める割合は、水と水以外の溶剤との合計量に対して30質量%以上90質量%以下であり、好ましくは40質量%以上85質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上80質量%以下である。水と、水以外の溶剤とが上記範囲であることにより、積層体とした場合に、防曇塗料から形成される防曇層と基材との間の界面混合効果が期待でき、防曇層の密着性を高め、防曇塗料の塗装性を良好にし、かつセルロース骨格を有するバインダーの溶解性を高めることで防曇塗料及び防曇層の透明性を高くすることに寄与することができる。
水以外の溶剤としては、ケトン系溶剤が好ましく、水とケトン系溶剤との合計量に対して1質量%以上40質量%以下で含有することで、防曇層と基材との間の界面混合効果による密着性向上の効果が高く、防曇層の耐クラック性の改善に有効である。
−ケトン系溶剤−
ケトン系溶剤は、防曇塗料と基材との間の界面を混合させることにより、防曇塗料から形成される防曇層と基材との密着性を向上させることに寄与し得る。
ケトン系溶剤としては、特に限定されず、アセトン、ジアセトンアルコール、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。
ケトン系溶剤は、より透明性に優れる防曇層を形成することができるという観点から、SP値(溶解度パラメーター)が10.0MPa1/2以上のケトン系溶剤であることが好ましい。なお、ケトン系溶剤のSP値の上限は、特に限定されず、例えば、基材への塗布性、例えば、ハジキ等の面状故障が生じ難いという観点から、13.0MPa1/2以下であることが好ましい。
SP値が10.0MPa1/2以上のケトン系溶剤の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。下記の具体例の後ろのカッコ内の数値は、SP値(単位:MPa1/2)を示す。
アセトン(10.0)、ジアセトンアルコール(10.2)、アセチルアセトン(10.3)、シクロペンタノン(10.4)。
上記のSP値は、分子凝集エネルギーの平方根で表される値で、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147〜p154(1974)に記載の方法で計算される値である。
−グリコール系溶剤−
防曇塗料は、グリコール系溶剤を含むことができる。
防曇塗料がグリコール系溶剤を含むことで、塗装適性がより良好となる。また、防曇塗料が、グリコール系溶剤を更に含むことで、防曇塗料の粘度が高まり、塗装の際に防曇塗料の液垂れが生じ難くなる。
グリコール系溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
これらの中でも、グリコール系溶剤としては、基材への塗布性、例えば、レベリング等の面状を良化し得るという観点から、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
−アルコール系溶剤−
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブタノール、2−ブタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ベンジルアルコール、2−メチル−2−ブタノール等が挙げられる。
−グリコールエーテル系溶剤−
グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−イソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノへキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。
−エーテル系溶剤−
エーテル系溶剤としては、イソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等が挙げられる。
本開示の防曇塗料が含みうる水以外の溶剤としては、上記の例示に限定されない。
防曇塗料は、水以外の溶剤を1種のみ含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
(関係式(1))
本開示の防曇塗料において、金属酸化物粒子の固形質量をA、セルロース骨格を有するバインダーの固形質量をBとした場合、下記関係式(1)が満たされる。
0.06≦B/A≦2.00 関係式(1)
上記B/Aが関係式(1)を満たすことにより、セルロース骨格を有するバインダーの偏析が少なくなり、また金属酸化物粒子同士及び金属酸化物粒子と基材との結合性が高まることで防曇塗料の高透明性と密着性とが両立する。
また、上記B/Aが0.06以上であることにより、防曇層を厚くした場合における耐クラック性が良好となる。
また、上記B/Aが2.00以下であることによりヘイズ値が低くなり、防曇性が良好となる。
関係式(1)は、好ましくは0.10≦B/A≦1.50であり、より好ましくは0.15≦B/A≦1.00である。
(その他の成分)
本開示に係る防曇塗料は、必要に応じて、上記にて説明した成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、セルロース骨格を有するバインダー以外のバインダー、防曇塗料の粘度を調整する粘度調整剤、界面活性剤、pH調整剤、及びその他の成分(密着助剤、帯電防止剤など)等が挙げられる。
−セルロース骨格を有するバインダー以外のバインダー−
本開示に係る防曇塗料は、セルロース骨格を有するバインダー以外のバインダーを含有することができる。セルロース骨格を有するバインダー以外のバインダーは、親水性ポリマーから選ばれることが好ましい。具体的には、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
本開示に係る防曇塗料は、セルロース骨格を有するバインダー以外のバインダーとして、2種以上の互いに異なるポリマーユニットを含む共重合体を含有することができる。2種以上の互いに異なるポリマーユニットを含む共重合体としては、ポリエステルユニット、ポリウレタンユニット、アクリル系ユニット、リエチレンユニット、ポリプロピレンユニット、ポリスチレンユニット、ポリ塩化ビニルユニット、ポリカーボネートユニット、ポリイミドユニット、ポリサルファイドユニット、シリコーンユニット、等から選ばれる2種以上のポリマーユニットを含む共重合体が挙げられる。
2種以上のポリマーユニットの結合は、特に主鎖/側鎖の制限はない。従って、2種以上のポリマーユニットを含む共重合体は、ブロック重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
2種以上のポリマーユニットを含む共重合体としては、市販品を用いてもよい。
市販品としては、高松油脂(株)製のペスレジンWAC−17XC、ペスレジンA−125S(いずれも商品名)、楠本化成(株)製NeoPacシリーズ:R−9699、R−9029、E−123、E125(いずれも商品名)等が挙げられる。
なお、既述のいずれのポリマーを用いる場合であっても、ポリマーに適切な官能基を導入することで、防曇層の物性を制御することもできる。
セルロース骨格を有するバインダー以外のバインダーは、アルコキシシリル基、シラノール基、及び親水性基から選択される少なくとも1種の官能基を含むことが好ましい。
例えば、既述の各ポリマーに、アルコキシシリル基、シラノール基などを導入すること、スルホキシ基、カルボキシ基等の親水性基を導入すること等の手段により、防曇層に含まれるシリカ粒子と特定バインダーとの親和性及び防曇層の親水性をより高めることができる。
−粘度調整剤−
本開示の防曇塗料は、粘度調整剤を更に含んでいてもよい。防曇塗料が粘度調整剤を含むと、防曇塗料の粘度が高まり、塗布の際に液垂れが生じ難くなり、塗装適性が向上する。
また、粘度調整剤は、吸水性有機高分子として機能するものであってもよい。
粘度調整剤としては、特に限定されず、公知の増粘剤、粘度の高い溶剤等が挙げられる。粘度調整剤は、防曇塗料を基材に付与する方法に応じて、適宜選択することができる。
増粘剤としては、特に限定されず、防曇塗料に含まれる溶媒の種類に応じて、適宜選択することが好ましい。増粘剤としては、比較的少量の使用で増粘効果が得られるという観点から、重量平均分子量が3,000以上10,000,000以下の増粘剤が好ましい。
増粘剤の重量平均分子量は、既述の重量平均分子量と同様の方法により測定することができる。
増粘剤としては、具体的には、(株)成和化成製のSEPIGEL 305、ビックケミー社製のDISPERBYK(登録商標)410、411、415、420、425、428、430、431、7410ET、7411ES、7420ES、大阪有機化学工業(株)製のコスカットGA468、タンパク質系材料(カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等)、アルギン酸系材料(アルギン酸ソーダ等)、ポリビニル系材料(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合物等)、ポリエーテル系材料(プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物等)、無水マレイン酸共重合体系材料(ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステル−無水マレイン酸のハーフエステル等)などが挙げられる。また、増粘剤としては、上記以外にも、ポリアマイドワックス塩、ゼンタンガム、分子末端若しくは側鎖に極性基を有するオリゴマー又はポリマー等が挙げられる。
本開示の防曇塗料が粘度調整剤として増粘剤を更に含む場合、増粘剤を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
本開示の防曇塗料が粘度調整剤として増粘剤を含む場合、防曇塗料中の増粘剤の含有量は、防曇塗料の全質量に対して、0.01質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
粘度調整剤としては、形成される防曇層中に粘度調整剤成分が残存しない点において、粘度の高い溶剤が好ましい。
本明細書において、「粘度の高い溶剤」とは、例えば、25℃における粘度が30mPa/s以上の溶剤をいう。
なお、本明細書における粘度は、東機産業(株)製B型粘度計(型式:TVB−10)を用いて測定した値である。
本開示の防曇塗料が粘度調整剤を更に含む場合、増粘剤と粘度の高い溶剤とを併用して粘度を調整してもよい。本開示の防曇塗料の最適な粘度は、基材への塗布方法によって異なるが、例えば、スプレー塗布の場合には、防曇塗料の粘度は、2mPa/s以上200mPa/s以下であることが好ましく、3mPa/s以上100mPa/s以下であることがより好ましく、4mPa/s以上50mPa/s以下であることが更に好ましい。
−界面活性剤−
本開示の防曇塗料は、界面活性剤を含むことが好ましい。
本開示の防曇塗料は、界面活性剤を含むことで、汚染物質の付着防止性、すなわち、防汚性に優れる防曇層を形成することができる。
なお、ここでいう界面活性剤には、既述の帯電防止剤として挙げた、界面活性を示し、かつ、帯電防止機能を有する化合物(すなわち、イオン性の界面活性剤)は含まれない。
本開示の防曇塗料では、帯電防止剤が界面活性を示すか示さないかに関わらず、帯電防止剤と界面活性剤とを併用してもよい。
帯電防止剤が界面活性を示さない化合物である場合には、水洗浄性の観点から、防曇塗料は、界面活性剤を含むことが好ましい。帯電防止剤が界面活性を示す化合物である場合には、防汚性をより向上させる観点から、防曇塗料は、帯電防止剤とは別に界面活性剤を含むことが好ましい。
本開示の防曇塗料は、界面活性剤を含むことにより、形成される防曇層の防汚性が高まるのみならず、例えば、防曇層を塗布により形成する場合の塗布性が高まる。詳細には、本開示の防曇塗料が界面活性剤を含むと、防曇塗料の表面張力が低下するため、防曇塗料から形成される防曇層の均一性がより高まる。
−非イオン性界面活性剤−
界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤が挙げられる。
帯電防止剤としてイオン性の界面活性剤を用いる場合、防曇塗料中にイオン性の界面活性剤が過剰に存在すると、系内の電解質量が増えてシリカ粒子の凝集を招きやすいことから、非イオン性界面活性剤を併用することが好ましい。但し、非イオン性界面活性剤は、必ずしもイオン性の界面活性剤と併用する必要はなく、界面活性剤として非イオン性界面活性剤を単独で含んでもよい。
非イオン性界面活性剤としては、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエステル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエステル・モノアルキルエーテル等が挙げられる。非イオン性界面活性剤の具体的な例としては、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノセチルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエステル、ポリエチレングリコールモノステアリルエステル等が挙げられる。
本開示の防曇塗料が非イオン性界面活性剤を含む場合、非イオン性界面活性剤としては、親水性及び防汚性により優れる防曇層を形成するという観点から、HLB値(親水親油バランス)が15より大きい非イオン性界面活性剤(以下、「特定非イオン性界面活性剤」ともいう。)が好ましい。
本開示の防曇塗料が特定非イオン性界面活性剤を含むと、形成される防曇層の親水性がより向上し、疎水性成分である汚染物質(例えば、シリコーン)の付着防止性が良好となる。
特定非イオン性界面活性剤のHLB値は、15.5以上であることが好ましく、16以上であることがより好ましく、17以上であることが更に好ましく、18以上であることが特に好ましい。
特定非イオン性界面活性剤のHLB値の上限は、特に限定されず、例えば、20以下が好ましい。
界面活性剤のHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)とは、界面活性剤の親水親油バランスを意味する。
本明細書における界面活性剤のHLB値は、グリフィン法(全訂版 新・界面活性剤入門、p128)により以下の式(I)で定義され、算術により求められる値である。
界面活性剤のHLB値=(親水基部分の分子量/界面活性剤の分子量)×20・・・(I)
特定非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン誘導体、ポリオキシアルキレンアリールエーテルのホルマリン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルのホルマリン縮合物、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
これらの中でも、特定非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが特に好ましい。
特定非イオン性界面活性剤におけるポリオキシアルキレンアルキルエーテルのアルキル基としては、例えば、炭素数が1〜36の直鎖型アルキル基又は炭素数が3〜36の分岐型のアルキル基が挙げられる。
また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのオキシアルキレン部は、親水性に特に優れる防曇層を形成することができるという観点から、ポリオキシエチレンであることが好ましい。また、特定非イオン性界面活性剤が有するポリオキシエチレン構造単位数は、6以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることが更に好ましく、20以上であることが特に好ましい。また、ポリオキシエチレン構造単位数は、例えば、溶解性の観点から、100以下とすることができる。
特定非イオン性界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである場合、下記の式(II)で表される界面活性剤が好ましい。
RO−(C0)m−H・・・(II)
式(II)中、mは、6〜100の整数を表す。Rは、炭素数1〜36の直鎖型アルキル基又は炭素数3〜36の分岐型アルキル基を表す。
特定非イオン性界面活性剤としては、市販品を用いることができる。特定非イオン性界面活性剤の市販品の例としては、日本エマルジョン(株)のEMALEX 715(HLB値:15.6)、EMALEX 720(HLB値:16.5)、EMALEX 730(HLB値:17.5)、EMALEX 750(HLB値:18.4)(いずれも商品名、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、花王(株)のレオドールTW−P120(商品名、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、HLB値:15.6)、三洋化成工業(株)のPEG2000(商品名、HLB値:19.9)等が挙げられる。
本開示の防曇塗料が非イオン性界面活性剤を含む場合、非イオン性界面活性剤を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
本開示の防曇塗料が非イオン性界面活性剤(好ましくは、特定非イオン性界面活性剤)を含む場合、防曇塗料中の非イオン性界面活性剤の含有量は、防曇塗料の全固形分に対して、0.01質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。上記範囲であると、形成される防曇層の親水性が良好となり、疎水性成分である汚染物質(例えば、シリコーン)の付着防止性が良好となる。
−イオン性界面活性剤−
界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤が挙げられる。
イオン性界面活性剤としては、リン酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有するイオン性界面活性剤(以下、「特定イオン性界面活性剤」ともいう。)が好ましい。
本開示の防曇塗料が特定イオン性界面活性剤を含むと、特定イオン性界面活性剤が有するリン酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方の官能基が酸吸着性基として機能し、既述のシリカ粒子の表面に吸着する。この吸着により、シリカ粒子の分散安定性が向上する。また、この吸着により、シリカ粒子の表面への疎水性成分の吸着が抑制されるため、シリカ粒子に起因する良好な親水性が損なわれず、良好な防汚性が保持される。
特定イオン性界面活性剤は、シリカ粒子との吸着性を考慮すると、アニオン性界面活性剤であることが好ましく、疎水性基として、炭素数1〜36の炭化水素基、シクロへキシル基、シクロブチル基等の脂肪族環状炭化水素基、及び、スチリル基、ナフチル基、フェニル基、フェニレンエーテル基等の芳香族炭化水素基から選ばれる疎水性基を有し、かつ、酸吸着性基として、リン酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する化合物であることがより好ましい。なお、既述の疎水性基は、更に、置換基を有していてもよい。
特定イオン性界面活性剤は、酸吸着基として、リン酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基のみを有していることが好ましい。すなわち、特定イオン性界面活性剤は、スルホン酸基、硫酸基等のリン酸基及びカルボキシ基以外の酸吸着基を有していないことが好ましい。
リン酸基を有する特定イオン性界面活性剤としては、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
カルボキシ基を有する特定イオン性界面活性剤としては、N−アシルアミノ酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族ジカルボン酸塩、重量平均分子量が25,000未満のポリカルボン酸系共重合体、重量平均分子量が25,000未満のマレイン酸系共重合体等が挙げられる。
特定イオン性界面活性剤の酸価は、シリカ粒子の分散安定性及び疎水性成分の吸着抑制性の観点から、180mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以下であることがより好ましい。
特定イオン性界面活性剤の酸価の下限は、特に限定されず、例えば、3mgKOH/gであることが好ましい。
本明細書における特定イオン性界面活性剤の酸価は、指示薬の滴定により測定することができる。具体的には、JIS(日本工業規格)K 0070に記載の方法に従い、特定イオン性界面活性剤の固形分1g中の酸成分を中和する水酸化カリウムのmg数を測定して算出することにより求められる値である。
特定イオン性界面活性剤としては、市販品を用いることができる。特定イオン性界面活性剤の市販品の例としては、BYK社製のDISPERBYK(登録商標)−2015(酸吸着性基:カルボキシ基、酸価:10mgKOH/g、固形分:40質量%)、DISPERBYK(登録商標)−180(酸吸着性基:リン酸基、酸価:94mgKOH/g)、エボニック社のTEGO(登録商標)Dispers660C(酸吸着性基:リン酸基、酸価:30mgKOH/g)、BYK(登録商標)−P104(酸吸着性基:カルボキシ基、酸価:180mgKOH/g)等が挙げられる。
本開示の防曇塗料がイオン性界面活性剤を含む場合、イオン性界面活性剤を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
本開示の防曇塗料がイオン性界面活性剤(好ましくは、特定イオン性界面活性剤)を含む場合、防曇塗料中のイオン性界面活性剤の含有量は、防曇塗料の全固形分に対して、0.05質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上15質量%以下であることが更に好ましい。上記範囲であると、シリカ粒子の凝集防止効果、及び疎水性成分の吸着防止効果がより良好となり、イオン性界面活性剤を含むことによる親水性防曇層の防汚性向上効果が得やすくなる。
<防曇塗料の調製方法>
本開示の防曇塗料は、セルロース骨格を有するバインダーと、金属酸化物粒子と、水と水以外の溶剤の混合溶媒と、必要に応じて、既述の任意成分とを、任意の混合器で混合することにより調製することができ、この場合、金属酸化物粒子の固形質量をA、セルロース骨格を有するバインダーの固形質量をBとした場合のB/Aは、0.06≦B/A≦2.00の関係式(1)を満たし、かつ、混合溶媒のうち水以外の溶剤が占める割合は30質量%以上90質量%以下であるように調製する。
混合器としては、例えば、スタティックミキサー、任意のプロペラを用いたスルーワンモーター、自転式及び公転式の撹拌混合器等が挙げられる。
(積層体)
本開示の積層体は、基材と、基材上の少なくとも一部に設けられた防曇層とを有し、防曇層が、セルロース骨格を有するバインダーと、金属酸化物粒子とを含有し、金属酸化物粒子の固形質量Aと、バインダーの固形質量Bとは、下記関係式(1)を満たし、防曇層が金属酸化物粒子の堆積した構造を有し、かつ、防曇層の内部に空隙を有し、防曇層の層厚が2μmである場合の防曇層のヘイズが1.5以下である。
0.06≦B/A≦2.00 関係式(1)
(基材)
本開示の積層体は、基材を有する。積層体は、基材上の少なくとも一部に防曇層が設けられている。防曇層は、基材の一部に設けられていても、全面に設けられていてもよい。また、防曇層は、基材に直接接していても、いなくともよいが、本開示の積層体は、防曇層の基材密着性に優れるため、基材に直接接していることが好ましい。
基材の材料としては、特に限定されず、ガラス、樹脂(プラスチックを含む)、金属、セラミックス等の各種材料から適宜選択して用いることができ、好ましくは樹脂である。例えば、自動車のライトの保護材、及び監視カメラの保護材には、樹脂基材が用いられることが多い。
基材の材料が樹脂である場合、基材としては、光及び熱に対する耐久性に優れ、かつ、防曇層との間で、基材の透明性を維持しつつ、密着性に優れた積層体を形成できるという観点から、アクリル樹脂基材、ポリカーボネート基材又はポリエチレンテレフタレート基材であることが好ましく、密着性により優れた積層体を形成できるという観点から、アクリル樹脂基材又はポリカーボネート基材であることがより好ましく、ポリカーボネート基材又はポリメチルメタクリレート基材が特に好ましい。
また、基材の材料としては、複数の材料から形成される複合材料を用いることもできる。例えば、基材の材料は、ガラス及び樹脂材料を含み、ガラスと樹脂材料とが混在して複合化した複合材、複数種の樹脂材料が混練又は貼合された樹脂複合材等であってもよい。
基材の厚さや形状は、特に限定されず、適用対象に応じて、適宜設定される。
また、基材の表面には、必要に応じ、表面処理が施されていてもよい。表面処理方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
(防曇層)
本開示の積層体は、基材上の少なくとも一部に設けられた防曇層を有する。防曇層は、基材の一部に設けられていても、全面に設けられていてもよい。また、防曇層は、基材に直接接していても、いなくともよいが、本開示の積層体は、防曇層の基材密着性に優れるため、基材に直接接していることが好ましい。
防曇層は、金属酸化物粒子の堆積した構造を有し、かつ、防曇層の内部に空隙を有し、防曇層の層厚が2μmである場合の防曇層のヘイズは1.5以下である。
本開示において、「金属酸化物粒子の堆積した構造」とは、金属酸化物粒子が、セルロース骨格を有するバインダーを介して、基材に対して垂直方向に複数個存在する構造を意味する。金属酸化物粒子の堆積した構造としては、例えば、六方最密充填構造、面心立方格子構造、体心立方格子構造、単純立方格子構造、ダイヤモンド構造、及びこれらの構造に類似する構造が挙げられる。これらの構造は、防曇層全体にわたって同じであってよく、局部的に異なっていてもよい。
防曇層が「金属酸化物粒子の堆積した構造」を有することは、SEM(Scanning Electron Microscope)による防曇層の断面観察により、確認することができる。
本開示において、「防曇層が内部に空隙を有する」とは、防曇層の空隙率が5%以上であることを意味する。耐汚染性及び水垂れ跡抑制性の観点から、空隙率は10%以上50%以下であることが好ましい。
空隙率は、自動ポロシメータ((株)島津製作所製、オートポアIV 9520)を用いて測定される値である。
防曇層の厚さは、2μm以上30μm以下が好ましく、2μm以上20μm未満がより好ましく、2μm以上10μm未満が更に好ましい。防曇層の厚さが上記範囲であることにより、耐クラック性に優れる。
−セルロース骨格を有するバインダー−
積層体の防曇層が含有するセルロース骨格を有するバインダーは、防曇塗料の項に記載した「セルロース骨格を有するバインダー」と同じであり、好ましい範囲も同様である。
−金属酸化物粒子−
積層体の防曇層が含有する金属酸化物粒子は、防曇塗料の項に記載した「金属酸化物粒子」と同じであり、好ましい範囲も同様である。
−関係式(1)−
積層体の防曇層が含有する金属酸化物粒子の固形質量とセルロース骨格を有するバインダーの固形質量とに関する関係式(1)は、防曇塗料の項に記載した「関係式(1)」と同じであり、好ましい範囲も同様である。
−ヘイズ−
本開示の積層体において、防曇層の層厚が2μmである場合の防曇層のヘイズは1.5以下である。好ましくは、防曇層の層厚が2μmである場合の防曇層のヘイズは1.0以下であり、より好ましくは、防曇層の層厚が2μmである場合の防曇層のヘイズは0.7以下であり、更に好ましくは、防曇層の層厚が2μmである場合の防曇層のヘイズは0.5以下である。ヘイズが上記範囲であることにより、防曇性が高められる。
層厚は、光干渉型膜厚計にて測定でき、例えば浜松ホトニクス社製Optical GaugeシリーズC13027等が用いられる。
ヘイズは、積層体について、ヘイズメーター(型番:NDH 5000、日本電色工業(株)製)を用いて得られる測定値である。
(積層体の用途)
本開示の積層体は、種々の用途に用いることができる。具体的には、例えば、監視カメラ、照明、センサー灯具等を保護するための保護材(いわゆる、保護カバー);自動車、二輪車等の車両の車庫の屋根材;道路標識等の標識;高速道路路肩設置用、鉄道用等の防音壁;自動車、二輪車等の車両のボディー;自動車の窓ガラス、ミラー、ライトの保護材(例えば、レンズ)などに対して、防曇性等の機能を付与するために、好適に用いることができる。
これらの中でも、本開示の積層体は、自動車のライト(ヘッドライト、テールランプ、ドアミラーウィンカーライト等)の保護材、及び監視カメラの保護材に対して、より好適に用いることができる。
一般に、自動車は、ライトとライトを保護するためのレンズとを含んで構成されるライトユニットを備えている。このライトユニットにおいて使用される、ガラスやプラスチック等の透明基材は、基材を挟んで内面と外面の温湿度の差により、一方の表面が露点以下になった場合、又は、基材に対して急激な温湿度変化が起こった場合(沸騰水蒸気が基材に接触した場合や、低温部から高温多湿の環境に移った場合等)に雰囲気中の水分が水滴として付着し、基材表面は結露する。その結果、結露した水滴により光の散乱が起こる、いわゆる「曇り」が発生することがある。このような「曇り」がヘッドライトやリアライトで生じた場合、外観が著しく損なわれる。このような曇りは、保護カバーを有する監視カメラ(すなわち、ハウジング一体型監視カメラ)の保護カバーでも生じ、この場合は視認性や安全性が著しく損なわれる。本開示の積層体は、透明性に優れることから、自動車のライト及び監視カメラの外観、機能及び性能を損なわず、かつ、耐汚染性及び基材密着性に優れることから、優れた防曇性を長期間にわたって保つことができる。
(積層体の製造方法)
本開示の積層体の製造方法は、本開示の積層体を製造できればよく、特に限定されるものではない。
本開示の積層体の製造方法は、本開示の防曇塗料を基材上に塗布し、乾燥する方法であることが好ましい。
また、本開示の積層体は、例えば、基材上に、防曇塗料を付与することにより防曇層を形成することを含む方法により好適に製造することができる。
基材上に、防曇塗料を付与する方法としては、特に限定されず、好ましくは塗布法である。基材上に、防曇塗料を塗布する塗布法としては、特に限定されず、スプレー塗布、刷毛塗布、ローラー塗布、バー塗布、ディップ塗布(所謂、浸漬塗布)等の公知の塗布法を適用することができる。これらの中でも、塗布法としては、曲面、凹凸等の様々な表面形状を有する立体構造体へ塗布する場合には、スプレー塗布が好ましい。
防曇塗料をスプレー塗布により基材に塗布する場合、基材のセット方法は、特に限定されない。基材の形状に応じて、基材の向きを、塗布方向に対して、水平方向、垂直方向等、適宜変更しながら塗布することができる。塗布層厚をより均一にするためには、スプレーノズルと基材との距離が等間隔となる位置にスプレーノズルを配置して基材に塗布することが好ましく、また、スプレーノズルと基材との距離を10mm以上1,000mm以下とすることが好ましい。
防曇塗料の塗布装置への供給方式は、圧送型、吸上型、及び重力型のいずれの方式を用いることもできる。
スプレーノズルのノズル口径は、0.1mmφ以上1.8mmφ以下であることが好ましく、エア圧は、0.02MPa以上0.60MPa以下であることが好ましい。このような条件で塗布することで、塗布層厚をより均一にすることができる。なお、スプレー塗布によって、更に好適な塗布層を形成するためには、エア量、防曇塗料の噴出量、パターン開き等の調整が必要である。
防曇塗料をスプレー塗布により基材に塗布する場合、エア量は5L(リットル)/分以上600L/分以下であることが好ましく、塗料噴出量は5L/分以上600L/分以下であることが好ましく、パターン開きは40mm以上450mm以下であることが好ましい。
スプレー塗布においては、塗布時の環境も塗布層の形成に影響する。温度条件としては15℃以上35℃以下であることが好ましく、湿度条件としては80%RH以下であることが好ましい。
清浄度は、特に限定されないが、例えば、塗布環境中の微粒子(即ち、パーティクル)による面状故障を抑制する観点から、クラス10,000以上の清浄度が好ましく、クラス1,000以上の清浄度であることがより好ましい。
防曇塗料の塗布量は、特に限定されず、防曇塗料中の固形分の濃度、所望の層厚等に応じて、操作性等を考慮し、適宜設定することができる。例えば、防曇塗料の塗布量は、1mL/m以上400mL/m以下であることが好ましく、2mL/m以上100mL/m以下であることがより好ましく、4mL/m以上40mL/m以下であることが更に好ましく、6mL/m以上20mL/m以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、塗布精度が良好となる。
本開示の積層体の製造方法は、基材上に付与した防曇塗料を乾燥することを含むことが好ましい。
防曇塗料の乾燥は、加熱装置を用いて行なってもよい。加熱装置としては、目的の温度に加熱することができれば、特に限定されることなく、公知の加熱装置をいずれも用いることができる。加熱装置としては、オーブン、電気炉等の他、製造ラインに合わせて独自に作製した加熱装置を用いることができる。
防曇塗料の乾燥条件は、特に限定されず、塗布層の硬化性も考慮し、適宜設定することができる。
防曇塗料の乾燥は、予め定められた設定温度を一定に保った恒温条件にて行ってもよいし、段階的に温度条件を変えて行ってもよい。
前者の場合における防曇塗料の乾燥条件としては、防曇塗料を、表面温度を20℃以上150℃以下にして1分間〜60分間加熱する乾燥条件が好ましく、表面温度を40℃以上150℃以下にして1分間〜60分間加熱する乾燥条件がより好ましく、表面温度を60℃以上150℃以下にして1分間〜60分間加熱する乾燥条件が更に好ましい。
後者の場合における防曇塗料の乾燥は、予備乾燥と本乾燥とに分けて行うことが好ましい。予備乾燥の条件としては、表面温度を20℃以上60℃以下にして5秒間〜10分間加熱する条件が好ましい。
なお、表面温度は、赤外線温度計等により測定することができる。
防曇塗料の乾燥を、乾燥風を吹き付けることにより行う場合、乾燥風の風量は、基材に到達した場合の最適温度を考慮して、適宜設定することができる。しかし、乾燥ムラを考慮すると、可能な限り風量を抑えることが好ましく、無風、即ち、基材に直接乾燥風が当たらない条件で乾燥を行うことがより好ましい。
なお、防曇塗料を塗布した基材は、基材の形状に応じて、台座の上に直置き(即ち、平置き)して乾燥してもよいし、立てかけて乾燥してもよいし、吊るして乾燥してもよい。
塗布に使用した後のスプレーガンの部品、塗布装置等の洗浄は、シンナー等の溶剤、水、アルコール、界面活性剤などを使用してもよい。また、スケール等が付着した汚れ、残存した防曇塗料等を効果的に洗浄するためには、酸性又はアルカリ性の水溶液を用いて洗浄することが好ましく、pH3.0以下の水溶液又はpH8.0以上の水溶液を用いて洗浄することがより好ましい。洗浄液の温度は、常温以上が好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
防曇塗料の保管容器は、特に限定されず、一斗缶、ローヤル缶等の金属製容器であってもよいし、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製の容器であってもよい。
防曇塗料の保管温度は、0℃以上50℃以下であることが好ましい。
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」とは、特に断りのない限り、「質量%」を意味する。
<実施例1>
(防曇塗料1の調製)
下記成分を混合し、防曇塗料1を得た。
エタノール(EtOH;溶媒):28.88質量部
水(溶媒):23.81質量部
ジアセトンアルコール(DAA;溶媒):4.11質量部
ヒドロキシエチルセルロースSP400(ダイセルファインケム(株)製/セルロース骨格を有するバインダー/重量平均分子量25万):1.14質量部
スノーテックスOUP(日産化学工業(株)製/固形分濃度15%/シリカ粒子):42.35質量部
上記で得た防曇塗料1を、基材であるPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂、商品名:コモグラス(登録商標)CG P、厚さ:1mm、大きさ:10cm×10cm、(株)クラレ製)上に、スプレーガン(形式:W−101−101G、アネスト岩田(株))を用いて塗布した。塗布後、防曇塗料を塗布した基材を、25℃にて1分間静置した。静置後、塗布した防曇塗料を80℃で20分間加熱して乾燥させて、基材上に防曇層を有する積層体を作製した。
<実施例2>及び<実施例102>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を0.47質量部に変更し、スノーテックスOUPを44.80質量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料2を得た。
上記で得た防曇塗料2を用いて実施例1と同様の手順で、実施例2及び実施例102の積層体を得た。
<実施例3>及び<実施例103>
防曇塗料1のスノーテックスOUPをスノーテックスO(日産化学工業(株)製/固形分濃度20%/シリカ粒子)31.76質量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料3を得た。
上記で得た防曇塗料3を用いて実施例1と同様の手順で、実施例3及び実施例103の積層体を得た。
<実施例4>及び<実施例104>
防曇塗料1のスノーテックスOUPをスノーテックスOXS(日産化学工業(株)製/固形分濃度10%/シリカ粒子)63.52質量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料4を得た。
上記で得た防曇塗料4を用いて実施例1と同様の手順で、実施例4及び実施例104の積層体を得た。
<実施例5>及び<実施例105>
防曇塗料1のスノーテックスOUPをスノーテックスO−40(日産化学工業(株)製/固形分濃度40%/シリカ粒子)15.88量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料5を得た。
上記で得た防曇塗料5を用いて実施例1と同様の手順で、実施例5及び実施例105の積層体を得た。
<実施例6>及び<実施例106>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を、重量平均分子量9万のヒドロキシエチルセルロース(SANHEC−L(三晶(株)製))に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料6を得た。
上記で得た防曇塗料6を用いて実施例1と同様の手順で、実施例6及び実施例106の積層体を得た。
<実施例7>及び<実施例107>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を、重量平均分子量120万のヒドロキシエチルセルロース(SANHEC−HH(三晶(株)製))に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料7を得た。
上記で得た防曇塗料7を用いて実施例1と同様の手順で、実施例7及び実施例107の積層体を得た。
<実施例8>及び<実施例108>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を、cLogP値−0.15のヒドロキシエチルセルロース(AV−15F(住友精化(株)製))に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料8を得た。
上記で得た防曇塗料8を用いて実施例1と同様の手順で、実施例8及び実施例108の積層体を得た。
<実施例9>及び<実施例109>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を4.80質量部に変更し、スノーテックスOUPを16.00質量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料9を得た。
上記で得た防曇塗料9を用いて実施例1と同様の手順で、実施例9及び実施例109の積層体を得た。
<実施例10>及び<実施例110>
防曇塗料1のスノーテックスOUPを、スノーテックスST−S(日産化学工業(株)製/固形分濃度30%/シリカ粒子)21.18量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料10を得た。
上記で得た防曇塗料10を用いて実施例1と同様の手順で、実施例10及び実施例110の積層体を得た。
<実施例11>及び<実施例111>
防曇塗料1のスノーテックスOUPを、スノーテックスST−50(日産化学工業(株)製/固形分濃度48%/シリカ粒子)13.24量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料11を得た。
上記で得た防曇塗料11を用いて実施例1と同様の手順で、実施例11及び実施例111の積層体を得た。
<実施例12>及び<実施例112>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を、重量平均分子量10万のヒドロキシエチルセルロース(SP200(ダイセルファインケム(株)製))に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料12を得た。
上記で得た防曇塗料12を用いて実施例1と同様の手順で、実施例12及び実施例112の積層体を得た。
<実施例13>及び<実施例113>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を、重量平均分子量100万のヒドロキシエチルセルロース(SP500(ダイセルファインケム(株)製))に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料13を得た。
上記で得た防曇塗料13を用いて実施例1と同様の手順で、実施例13及び実施例113の積層体を得た。
<実施例14>及び<実施例114>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を、cLogP値−0.20のヒドロキシエチルセルロース(SZ−25F(住友精化(株)製))に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料14を得た。
上記で得た防曇塗料14を用いて実施例1と同様の手順で、実施例14及び実施例114の積層体を得た。
<実施例15>及び<実施例115>
防曇塗料1の最終防曇塗料の溶媒比率を水/エタノール/ジアセトンアルコール=70/25/5の質量比に調製した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料15を得た。
上記で得た防曇塗料15を用いて実施例1と同様の手順で、実施例15及び実施例115の積層体を得た。
<実施例16>及び<実施例116>
防曇塗料1の最終防曇塗料の溶媒比率を水/エタノール/ジアセトンアルコール=10/75/15の質量比に調製した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料16を得た。
上記で得た防曇塗料16を用いて実施例1と同様の手順で、実施例16及び実施例116の積層体を得た。
<実施例17>及び<実施例117>
防曇塗料1の最終防曇塗料の溶媒比率を水/1−メトキシ−2−プロパノール(MFG)/ジアセトンアルコール=50/47/3の質量比に調製した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料17を得た。
上記で得た防曇塗料17を用いて実施例1と同様の手順で、実施例17及び実施例117の積層体を得た。
<実施例18>及び<実施例118>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を0.41質量部に変更し、スノーテックスOUPを45.28質量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料18を得た。
上記で得た防曇塗料18を用いて実施例1と同様の手順で、実施例18及び実施例118の積層体を得た。
<実施例19>及び<実施例119>
防曇塗料1のスノーテックスOUPを、Aluminum Oxide Nanoparticles1330DL(SkySpring Nanomaterials社製/固形分濃度100%/アルミナ粒子)6.35質量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料19を得た。
上記で得た防曇塗料19を用いて実施例1と同様の手順で、実施例19及び実施例119の積層体を得た。
<実施例20>及び<実施例120>
防曇塗料1のスノーテックスOUPを、Titanium Oxide Nanoparticles(anatase)7910DL(SkySpring Nanomaterials社製/固形分濃度100%/チタニア粒子)6.35質量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料20を得た。
上記で得た防曇塗料20を用いて実施例1と同様の手順で、実施例20及び実施例120の積層体を得た。
<実施例21>及び<実施例121>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を、ヒドロキシプロピルセルロース(LH−31(信越化学工業(株)製)、cLogP=−0.30、重量平均分子量10万)に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料21を得た。
上記で得た防曇塗料21を用いて実施例1と同様の手順で、実施例21及び実施例121の積層体を得た。
<実施例22>及び<実施例122>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を、メチルセルロース(メトローズSM(信越化学工業(株)製)、cLogP=−0.07、重量平均分子量14万)に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、防曇塗料22を得た。
上記で得た防曇塗料22を用いて実施例1と同様の手順で、実施例22及び実施例122の積層体を得た。
<比較例1>及び<比較例101>
特開2000―154374の実施例1に記載されているように調製して比較防曇塗料1を得た。
上記で得た比較防曇塗料1を用いて実施例1と同様の手順で、比較例1及び比較例101の積層体を得た。
<比較例2>及び<比較例102>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を0.34質量部に変更し、スノーテックスOUPを45.71質量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、比較防曇塗料2を得た。
上記で得た比較防曇塗料2を用いて実施例1と同様の手順で、比較例2及び比較例102の積層体を得た。
<比較例3>及び<比較例103>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を4.88質量部に変更し、スノーテックスOUPを15.48質量部に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、比較防曇塗料3を得た。
上記で得た比較防曇塗料3を用いて実施例1と同様の手順で、比較例3及び比較例103の積層体を得た。
<比較例4>及び<比較例104>
防曇塗料1のヒドロキシエチルセルロースSP400を、重量平均分子量13.3万のポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール#563900、シグマアルドリッチ社製)に変更した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、比較防曇塗料4を得た。
上記で得た比較防曇塗料4を用いて実施例1と同様の手順で、比較例4及び比較例104の積層体を得た。
<比較例5>及び<比較例105>
防曇塗料1の最終防曇塗料の溶媒比率を水/エタノール/ジアセトンアルコール=75/20/5の質量比に調製した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、比較防曇塗料5を得た。
上記で得た比較防曇塗料5を用いて実施例1と同様の手順で、比較例5及び比較例105の積層体を得た。
<比較例6>及び<比較例106>
防曇塗料1の最終防曇塗料の溶媒比率を水/エタノール/ジアセトンアルコール=100/0/0の質量比に調製した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、比較防曇塗料6を得た。
上記で得た比較防曇塗料6を用いて実施例1と同様の手順で、比較例6及び比較例106の積層体を得た。
<比較例7>及び<比較例107>
防曇塗料1の最終防曇塗料の溶媒比率を水/エタノール/ジアセトンアルコール=5/95/0の質量比に調製した以外は、防曇塗料1と同様の手順で、比較防曇塗料7を得た。
上記で得た比較防曇塗料7を用いて実施例1と同様の手順で、比較例7及び比較例107の積層体を得た。
<参考例1>及び<参考例101>
特開2016―164265の実施例1に記載されているように調製して、参考防曇塗料1を得た。
上記で得た参考防曇塗料1を用いて実施例1と同様の手順で、参考例1及び参考例101の積層体を得た。
<参考例2>及び<参考例102>
特開2009―054348の実施例1に記載されているように調製して、参考防曇塗料2を得た。なお、溶媒としては、イソプロピルアルコール(IPA)、エチルメチルケトン(MEK)、及びソルフィット(登録商標)を用いた。
上記で得た参考防曇塗料2を用いて実施例1と同様の手順で、参考例2及び参考例102の積層体を得た。
<実施例201>〜<実施例206>
実施例1と同様の手順に従い、防曇層の厚さを変更し、実施例201〜206の積層体を得た。
<実施例207>〜<実施例212>
実施例2と同様の手順に従い、防曇層の厚さを変更し、実施例207〜212の積層体を得た。
<実施例213>〜<実施例218>
実施例9と同様の手順に従い、防曇層の厚さを変更し、実施例213〜218の積層体を得た。
[評価]
上記にて調製した防曇塗料及び作製した積層体を用いて、以下の性能評価を行った。結果を表1に示す。
1.防曇性(初期)
40℃の湯浴を準備し、雰囲気温度25℃、相対湿度50%の条件下で、積層体の5cm四方の範囲にのみ、湯浴の水面との距離を5cmに保った状態で湯浴の蒸気を1分間当てた。その後目視により外観を観察することで、防曇性を評価した。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」が実用上許容されるレベルである。
A:曇りが認められず、積層体を通して観察できる透過像に歪みが全くない。
B:曇りが認められず、積層体を通して観察できる透過像にわずかに歪みがある。
C:曇りが認められず、積層体を通して観察できる透過像に歪みがある。
D:曇りが認められる。
2.防曇性(耐汚染性)
スクリュー管瓶110mLにシリコーンオイルTSF458−100(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)3mLを封入し、積層体の防曇層面をスクリュー管内部側に向けて密封した。この密封したスクリュー瓶を、130℃に保ったホットプレートの上に乗せ、24時間放置した。放置後、積層体を取り出し、防曇層の防曇性を、上記防曇性評価と同様の方法により評価した。防曇性(耐汚染性)の評価は、以下の評価基準に従って行った。
放置後の積層体の防曇性がよいほど、シリコーンガスに対する耐汚染性に優れる積層体であることを意味する。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」が実用上許容されるレベルである。
A:曇りが認められず、積層体を通して観察できる透過像に歪みが全くない。
B:曇りが認められず、積層体を通して観察できる透過像にわずかに歪みがある。
C:曇りが認められず、積層体を通して観察できる透過像に歪みがある。
D:曇りが認められる。
3.防曇性[ヘイズ(透明性)]
ヘイズメーター(型番:NDH 5000、日本電色工業(株)製)を用いて、積層体のヘイズ(Haze)を測定し、得られた測定値を、透明性を評価する指標とした。基材による差異を除去するため、へイズ値は積層体での測定値から基材のみのヘイズ値を引くことで算出した。測定は、積層体の基材面、すなわち積層体の防曇層が形成されている面とは反対側の面を光源に向けて測定した。
本評価試験において、ヘイズの測定値は低いほど、透明性に優れる積層体であることを意味する。また、積層体の透明性が優れるということは、防曇層の透明性が優れることを意味する。
なお、参考例1のヘイズは、0.2μmの層厚で測定して得られた値である。また、比較例1のヘイズは、0.5μmの層厚で測定して得られた値である。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」が実用上許容されるレベルである。
A:ヘイズが0.8%未満である。
B:ヘイズが0.8%以上1.2%未満である。
C:ヘイズが1.2%以上1.6%未満である。
D:ヘイズが1.6%以上2.0%未満である。
4.耐水垂れ性
60℃の湯浴を準備し、雰囲気温度25℃、相対湿度50%の条件下で、積層体の5cm四方の範囲にのみ、湯浴の水面との距離を5cmに保った状態で湯浴の蒸気を2分間当てた。その後積層体を垂直に保持し、水滴を自重で落下させた。その後自然乾燥させた後、目視により外観を観察することで、水垂れ性を評価した。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」が実用上許容されるレベルである。
A:水垂れ跡が全く認められない。
B:水垂れ跡の輪郭がわずかに認められる。
C:水垂れ跡の輪郭が認められる。
D:水垂れ跡が輪郭とともに水滴の跡として認められる。
5.基材と防曇層との密着性(基材密着性)
基材と防曇層との密着性は、防曇層に対して、JIS(日本工業規格)K5600(クロスカット法)に準拠したクロスハッチテストを行い、以下の評価基準に従って評価した。このクロスハッチテストでは、カット間隔を2mmとし、2mm角の正方形の格子を25個形成した。
下記の評価基準において、「A」、「B」、及び「C」が実用上許容されるレベルである。
A:剥がれが全く認められなかった。
B:カット線上のみ剥がれが認められた。
C:1つ以上5つ以下の格子の剥がれが認められた。
D:5つ以上の格子の剥がれが認められた。
6.防曇層保水量
60℃に保った温水浴の水面から5cmの高さの所に、積層体の防曇層が下になるように設置し、曇り又は水垂れ跡が発生する直前まで温水浴からのスチームを当てた。スチームを当てる前の積層体の質量、及びスチームを当てた後の積層体の質量を測定し、測定した質量から以下の計算式にて保水量を求めた。
保水量(mg/cm)=(M−M)/S
ここで、Mはスチームを当てる前の積層体の質量(mg)、Mはスチームを当てた後の積層体の質量(mg)、Sはスチームを当てた積層体の防曇層の面積(cm)である。
実施例及び比較例について上記評価項目1〜6についての評価結果を表1に示す。
表中、「B/A比」におけるAは、金属酸化物粒子の固形質量を表し、Bは、セルロース骨格を有するバインダーの固形質量を表す
この結果、実施例1〜22は、評価項目1〜6の全てが実用上許容されるレベルにあったことが示された。
他方、比較例1、3、及び5〜7は、実用上許容されないレベルの評価項目を含むことが示された。
7.耐クラック性
積層体の防曇層におけるクラックの発生について、積層体の防曇層の厚さを変更した実施例及び比較例について、目視及び/又は顕微鏡で外観を観察することで評価した(耐クラック性)。顕微鏡観察は、レーザー顕微鏡VK−X250(株式会社キーエンス製)を用いて倍率50倍にて観察を行った。
下記の評価基準において、「A」及び「B」が実用上許容されるレベルである。
A:クラックが顕微鏡及び目視で見えない。
B:クラックが目視では見えないが顕微鏡で見える。
C:クラックが目視で見える。
上記耐クラック性の評価結果を表2に示す。
この結果、実施例101〜122はいずれも、評価項目7について実用上許容されるレベルにあったことが示された。
他方、比較例101、102、104、105及び106は、評価項目7について実用上許容されないレベルを含むことが示された。
次に、積層体における防曇層の層厚を変更した場合における、評価項目1〜6の評価結果を表3に示す。
この結果、実施例201〜218は、測定した防曇層の層厚の範囲において、評価項目1〜6の評価が実用上許容されるレベルにあったことが示された。

Claims (10)

  1. セルロース骨格を有するバインダーと、金属酸化物粒子と、水と、水以外の溶剤と、を含有し、
    前記金属酸化物粒子の固形質量Aと、前記バインダーの固形質量Bとは、下記関係式(1)を満たし、
    前記水以外の溶剤が占める割合が、水と水以外の溶剤との合計量に対して30質量%以上90質量%以下である、防曇塗料。
    0.06≦B/A≦2.00 関係式(1)
  2. 前記金属酸化物粒子が、シリカ粒子である、請求項1に記載の防曇塗料。
  3. 前記金属酸化物粒子が、鎖状シリカ粒子である、請求項1又は請求項2に記載の防曇塗料。
  4. 前記金属酸化物粒子の平均一次粒径が、10nm以上20nm以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の防曇塗料。
  5. 前記バインダーの重量平均分子量が、100,000以上1,000,000以下である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の防曇塗料。
  6. 前記バインダーの官能基のcLogP値が、−0.15以下である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の防曇塗料。
  7. 基材と、前記基材上の少なくとも一部に設けられた防曇層とを有し、
    前記防曇層が、セルロース骨格を有するバインダーと、金属酸化物粒子とを含有し、
    前記金属酸化物粒子の固形質量Aと、前記バインダーの固形質量Bとは、下記関係式(1)を満たし、
    前記防曇層が前記金属酸化物粒子の堆積した構造を有し、かつ、前記防曇層の内部に空隙を有し、
    前記防曇層の層厚が2μmである場合の前記防曇層のヘイズが1.5以下である、積層体。
    0.06≦B/A≦2.00 関係式(1)
  8. 前記基材が、樹脂基材である、請求項7に記載の積層体。
  9. 前記樹脂基材が、アクリル樹脂基材、又はポリカーボネート基材である、請求項8に記載の積層体。
  10. 前記防曇層の厚さが、2μm以上20μm未満である、請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の積層体。
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