JP2016164265A - 親水性膜及びその製造方法、積層体、監視カメラ用保護材、監視カメラ、並びに防曇性膜用組成物 - Google Patents

親水性膜及びその製造方法、積層体、監視カメラ用保護材、監視カメラ、並びに防曇性膜用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐傷性及び親水性に優れた親水性膜及びその製造方法、積層体、監視カメラ用保護材、監視カメラ、並びに防曇性に優れた膜が形成される防曇性膜用組成物を提供する。
【解決手段】シロキサンバインダーと、シリカ粒子と、を含有し、表面における表面積差ΔSと表面粗さRaとが下記式1の関係を満たす親水性膜及びその製造方法、積層体、監視カメラ用保護材、監視カメラ、並びに防曇性膜用組成物。
ΔS≦0.5Ra ・・・式1
式1中、ΔSは下記式2で求められる百分率である。
ΔS=[(S−S)/S]×100 ・・・式2
式2中、Sは親水性膜の垂線方向から見た投影面積を表し、SはSで表す投影面積における親水性膜の表面の実表面積を表す。
【選択図】なし

Description

本発明は、親水性膜及びその製造方法、積層体、監視カメラ用保護材、監視カメラ、並びに防曇性膜用組成物に関する。
屋内又は屋外に設置されて長期間にわたって使用される装置又は建材などは、様々な環境に曝されて使用されるため、徐々に埃、塵又は砂利などが堆積したり、風雨時の雨水に濡れる等して、予定されている機能、及び性能が損なわれる場合がある。
例えば、近年、住宅の防犯用途、又は商用ビルもしくは屋外のセキュリティシステムとして、監視カメラが広く利用されている。監視カメラは、電荷結合素子(CCD)カメラ等の撮像装置と保護カバーとを備えた固定型装置であり、一旦設置されると長期間に亘り使用されることが通例である。保護カバーは、撮影を可能にする光透過性を有しつつ、雨水又は砂利等から撮像装置を保護する役割を果たしている。
監視カメラの保護カバーは、撮像装置を保護しつつも、常に安定した画像の撮影を可能とするため、長期間にわたって清掃の要らないメンテナンスフリーであることが要求される。ところが、一般に監視カメラのように屋外に設置されて使用される装置は、長期使用に伴って、機器の表面に水滴、又は埃、塵もしくは砂などが付着し、徐々に光透過性を損なう傾向にある。監視カメラの場合、保護カバーの表面に埃、塵又は砂などが堆積しやすく、堆積物のサイズ又は量によっては、光透過性が著しく低下するばかりか、期待される画像が記録できなくなる懸念も生じる。
そのため、屋外の環境に曝される機器表面には、水又は、埃、塵もしくは砂などの付着を防ぐための技術が検討されている。
この点は、監視カメラのほか、照明等の機器、標識などに加え、自動車又は自転車等の車庫の屋根、道路用等の防音壁などの建材についても、屋外に設置して使用される点で同様である。
上記に関連する技術として、例えば、水接触角が5乃至30度であり、且つ表面の中心線平均粗さRaが0.01乃至0.06μmであり、主成分をシリコーンとした無機系材料の親水コートを、樹脂基板の外表面に有するカメラカバーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このカメラカバーは、水滴及び汚れの付着を防止し、画像の鮮明性を確保することができるとされている。
また、オルガノシリカゾルと有機溶剤とホウ酸とを含有する有機基材用防曇防汚剤が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この有機基材用防曇防汚剤は、親水性、硬度、有機基材に対する密着強度及び耐水性が高く防汚防曇性能に優れる無機硬化塗膜を付与するとされている。
これらの他にも、テトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物の加水分解体、シラノール基と相互作用可能な金属化合物、アルキレンオキサイドユニットを有し、HLB(Hydrophile Lipophile Balance)が10〜15であるノニオン系界面活性剤、酸性コロイダルシリカ、ならびに親水性有機溶剤からなる水性親水化処理剤が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、シリコーンレジンを主成分とする無機塗料中に、末端反応性基を有するシラン変性界面活性剤を含有する親水性無機塗料の硬化被膜を備えた親水性塗装物が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特許第5250685号公報 特開2013−203774号公報 特開2006−52352号公報 特開2000−212511号公報
屋外に設置されて風雨等の様々に変化する環境下に曝される装置、部材、又は建材等は、汚れが付着するにしたがって所期の機能が低下する傾向があるため、一定の期間をおいて定期的に清掃又は部品交換を行うことが慣習とされてきた。
上記の特許文献1に記載のカメラカバー等は、清掃等によりカバー表面を拭いた場合、カバーの表面に傷がつきやすく、清掃後に親水性を維持できないことがあった。
また、監視カメラは高所に設置されることも多く、専用の器具を用いて設置されることがある。設置の際、器具が保護材等に接触した場合、保護材等の表面を傷つけてしまうことがある。上記の特許文献1に記載のカメラカバー等は、耐傷性が充分でないため、設置の際にカメラカバー等に傷がつきやすい傾向にあった。これらの点は、上記の特許文献2に記載の防曇防汚剤で被覆された有機基材、上記の特許文献3に記載の親水性膜及び特許文献4に記載の親水性塗装物においても同様の傾向がある。
本発明は、上記の状況に鑑みなされたものであり、耐傷性及び親水性に優れた親水性膜及びその製造方法、積層体、監視カメラ用保護材、監視カメラ、並びに防曇性に優れた膜が形成される防曇性膜用組成物を提供することを目的とし、この目的を達成することを課題とする。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> シロキサンバインダーと、シリカ粒子と、を含有し、表面における表面積差ΔSと表面粗さRaとが下記式1の関係を満たす親水性膜。
ΔS≦0.5Ra ・・・式1
式1中、ΔSは下記式2で求められる百分率である。
ΔS=[(S−S)/S]×100 ・・・式2
式2中、Sは親水性膜の垂線方向から見た投影面積を表し、SはSで表す投影面積における親水性膜の表面の実表面積を表す。
<2> 表面粗さRaが100nm以下である<1>に記載の親水性膜。
<3> 表面粗さRaが10nm以下である<1>又は<2>に記載の親水性膜。
<4> 表面積差ΔSが0.1%以上である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の親水性膜。
<5> さらに帯電防止剤を含有する<1>〜<4>のいずれか1つに記載の親水性膜。
<6> 帯電防止剤の少なくとも1種が、イオン性の界面活性剤である<5>に記載の親水性膜。
<7> さらに界面活性剤を含有する<1>〜<6>のいずれか1つに記載の親水性膜。
<8> 界面活性剤が、ノニオン性の界面活性剤である<7>に記載の親水性膜。
<9> シロキサンバインダーは、下記一般式(1)で表される化合物から形成されるシロキサンバインダーである<1>〜<8>のいずれか1つに記載の親水性膜。
一般式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6の1価の有機基を表す。nは、2〜20の整数を表す。
<10> シリカ粒子の平均一次粒子径が、2nm以上100nm以下である<1>〜<9>のいずれか1つに記載の親水性膜。
<11> シロキサンバインダーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子と、を含有する塗布液を基材に塗布する塗布工程と、塗布工程により基材上に塗布された塗布膜を20℃以上150℃以下の温度で乾燥する乾燥工程と、を有し、シロキサンバインダーに対するシリカ粒子の比率が質量基準で0.1〜1.8であり、表面における表面積差ΔSと表面粗さRaとが下記式1の関係を満たす親水性膜を製造する親水性膜の製造方法。
ΔS≦0.5Ra ・・・式1
式1中、ΔSは下記式2で求められる百分率である。
ΔS=[(S−S)/S]×100 ・・・式2
式2中、Sは親水性膜の垂線方向から見た投影面積を表し、SはSで表す投影面積における親水性膜の表面の実表面積を表す。
<12> さらに、水と、シロキサンオリゴマーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子と、を混合することで塗布液を調製する調製工程を有する<11>に記載の親水性膜の製造方法。
<13> 調製工程は、さらにシロキサンオリゴマーの縮合反応を促進する触媒を混合することで塗布液を調製する<12>に記載の親水性膜の製造方法。
<14> 基材と、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の親水性膜と、を有する積層体。
<15> <14>に記載の積層体を備えた監視カメラ用保護材。
<16> 積層体における基材の形状は、半球形状、半楕円体形状、平面形状、角柱形状又は円柱形状である<15>に記載の監視カメラ用保護材。
<17> 屋外に設置される監視カメラに用いられる<15>又は<16>に記載の監視カメラ用保護材。
<18> <15>〜<17>のいずれか1つに記載の監視カメラ用保護材を備えた監視カメラ。
<19> シロキサンバインダーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子とを有し、シロキサンバインダーに対するシリカ粒子の比率が質量基準で0.1〜1.8である防曇性膜用組成物。
<20> さらに分散剤を含有する<19>に記載の防曇性膜用組成物。
<21> さらに増粘剤を含有する<19>又は<20>に記載の防曇性膜用組成物。
本発明によれば、耐傷性及び親水性に優れた親水性膜及びその製造方法、積層体、監視カメラ用保護材、監視カメラ、並びに防曇性に優れた膜が形成される防曇性膜用組成物が提供される。
以下、本発明の親水性膜及びその製造方法、積層体、監視カメラ用保護材、監視カメラ、並びに防曇性膜用組成物について詳細に説明する。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
<親水性膜>
本発明の親水性膜は、シロキサンバインダーと、シリカ粒子と、を含有し、表面における表面積差ΔSと表面粗さRaとが下記式1の関係を満たす。
ΔS≦0.5Ra ・・・式1
式1中、ΔSは下記式2で求められる百分率である。
ΔS=[(S−S)/S]×100 ・・・式2
式2中、Sは親水性膜の垂線方向から見た投影面積を表し、SはSで表す投影面積における親水性膜の表面の実表面積を表す。SとSとの単位は同一の単位(例えば、μm)であればよい。
本発明において、親水性膜とは、水接触角が40°以下の膜をいう。
水接触角は、接触角計M553G−XM(株式会社シロ産業製)を用い、親水性膜の表面に純水を1μl滴下してθ/2法により求め、5回測定して得た値の算術平均値とする。
表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、JIS B0601:2001に準拠し測定される値である。
は原子間力顕微鏡(AFM)により測定される値である。
[表面積差ΔS]
本発明の親水性膜の表面積差ΔSは、上記の式2により表される。
表面積差ΔSは、数値が0%に近づくほど、SとSとの数値に差が少ないことを示す。すなわち、ΔSが0%に近づくほど、親水性膜の表面は凹凸が小さく平坦になることを示す。
で表される実表面積とは、原子間力顕微鏡(AFM)により測定される、凹凸表面に沿った総面積を指す。Sで表される投影面積とは、親水性膜の垂線方向から投影して親水性膜表面の凹凸を無視したxy軸2次元方向における見た目の面積を指す。具体的には、SはSを測定する際のxy軸における測定範囲(親水性膜の垂線方向から見た投影面積)の値を用いることができる。
表面積差ΔSは、シリカ粒子の平均一次粒子径、シロキサンバインダーに対するシリカ粒子の比率、膜形成時の乾燥条件(具体的には、乾燥温度、乾燥時間)により、所定の範囲に調節することができる。
表面積差ΔSは、0.1%以上であることが好ましい。表面積差ΔSが0.1%以上の状態とは、シリカ粒子の一部が親水性膜の表面に露出した状態である。膜の表面がこの状態であることで、シリカ粒子の有する親水性及び耐傷性を効果的に発現することができる。
表面積差ΔSは、上記と同様の点から0.1%以上50%以下がより好ましく、0.1%以上5%以下が更に好ましい。
[表面粗さRa]
表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツルメンツ社製、SPA−400)を用いて、JIS B0601:2001に準拠し測定することができる。
表面粗さRaは、耐傷性の観点から、100nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。
[表面積差ΔSと表面粗さRaとの関係]
本発明の親水性膜は、表面積差ΔSと表面粗さRaとが下記式1の関係を満たす。
ΔS≦0.5Ra ・・・式1
表面積差ΔSと表面粗さRaとが式1の関係を満たすことで、耐傷性と親水性とが優れた膜となる。
上記の式1において、例えば、表面粗さRaが10nmであると仮定した場合、表面積差ΔSは5%以下となる。すなわち、同じ表面粗さを有する表面の場合、凹凸が少ない方が耐傷性と親水性の両立には、効果的であることを示している。
[水接触角]
親水性膜の水接触角は、30°以下であることが好ましく、25°以下であることがより好ましく、15°以下がさらに好ましい。水接触角が上記範囲であると、親水性膜の表面がより親水性に優れたものなる。水接触角は、前述の通りである。
本発明の親水性膜が上記の効果を奏し得る理由については明らかではないが、以下のように推測される。
本発明の親水性膜は、表面積差ΔSと表面粗さRaとが上記の式1の関係を満たすことで、親水性膜は凹凸が小さい表面となる。そのため、親水性膜表面に、例えば、砂利などの汚染物質が付着したまま擦られた場合、親水性膜と汚染物質とが接触する面積が大きくなり、接触したときの応力が分散される。また、凹凸が小さいため汚染物質の堆積も抑えられる。その結果、親水性膜は傷が付きにくく汚れにくい膜となる(つまり耐傷性及び防汚性に優れる)と考えられる。
また、本発明は、シロキサンバインダーとシリカ粒子とを含む(好ましくは、シロキサンバインダーがシロキサンオリゴマーの縮合反応により形成される)ため、形成された膜におけるシリカ粒子の表面には高密度のシラノール基が存在する。そのため、形成された親水性膜は親水性に優れると考えられる。
従来、膜における親水性等の物性は、例えば、表面粗さRaの数値が大きいほど親水性等が顕著に現れ(例えば、Wenzelの式など)、逆に表面粗さRaの数値が小さい(表面が平坦化する)ほど親水性等に劣ると考えられていた。
しかし、本発明の親水性膜は、上記の構成とすることで、表面粗さRaの数値が小さくとも優れた親水性が得られると考えられる。
以上のことから、本発明の親水性膜は耐傷性及び親水性に優れると考えられる。
[シロキサンバインダー]
本発明の親水性膜は、シロキサンバインダーの少なくとも1種を含有する。
親水性膜がシロキサンバインダーを含有することで、親水性膜はシリカ粒子を保持することができ、耐傷性と親水性とを両立することができる。
シロキサンバインダーは、シロキサンオリゴマーを縮合反応させて得られる化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明におけるシロキサンオリゴマーとしては、1種のシラン化合物を用いて得られた部分加水分解縮合物、及び2種以上のシラン化合物を用いて得られた部分共加水分解縮合物を用いることができる。以下、これらの化合物を「部分(共)加水分解縮合物」と称することがある。
なお、シラン化合物とは、加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物であり、シリル基は加水分解してシラノール基となり、シラノール基は脱水縮合してシロキサン結合が生成する。
この場合、部分(共)加水分解縮合物としては、上記したようなシラン化合物の2量体(シラン化合物2モルに水1モルを作用させてアルコール2モルを脱離させ、ジシロキサン単位とした化合物)〜100量体、好ましくは2量体〜50量体、更に好ましくは2量体〜20量体とした化合物が好適に使用でき、2種以上のシラン化合物を原料とする部分(共)加水分解縮合物を使用することも可能である。
なお、このような部分(共)加水分解縮合物はシリコーンアルコキシオリゴマーとして市販されている化合物を使用してもよく(例えば、信越化学工業(株)などから市販されている。)、また、常法に基づき、加水分解性シラン化合物に対し当量未満の加水分解水を反応させた後に、アルコール、及び塩酸等の副生物を除去することによって製造したものを使用してもよい。
本発明において、シロキサンオリゴマーは、分子末端にアルコキシシリル基を有することが好ましい。分子末端にアルコキシシリル基を有するシロキサンオリゴマーとしては、分子中にアルコキシシリル基を4つ有する4官能のシロキサンオリゴマーを始め、3官能または2官能のシロキサンオリゴマーを使用することができる。
これらのシロキサンオリゴマーの中でも、縮合反応の反応性の観点から、4官能のシロキサンオリゴマーが好ましい。
4官能のシロキサンオリゴマーの中でも、一般式(1)で表される化合物(以下、「特定シロキサン化合物」ともいう。)が好ましい。
つまり、本発明の親水性膜は一般式(1)で表される化合物から形成されるシロキサンバインダーの少なくとも1種を含有することが好ましい。
親水性膜は、一般式(1)で表される化合物から形成されるシロキサンバインダーを含むことで、表面の親水性をより高めることができる。
一般式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6の1価の有機基を表す。nは2〜20の整数を表す。
、R、R、及びRにおける炭素数1〜6の1価の有機基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよく、環状であってもよい。1価の有機基としては、アルキル基、及びアルケニル基等が挙げられ、アルキル基であることが好ましい。
、R、R、又はRがアルキル基を表す場合のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert―ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
特定シロキサン化合物においてR〜Rの1価の有機基、好ましくはアルキル基の炭素数を1〜6とすることにより、特定シロキサン化合物は加水分解性が良好となる。なお、加水分解性がより良好であるという観点からは、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(1)におけるnは、2〜20の整数である。nを2〜20の範囲とすることにより、特定シロキサン化合物を含む親水性膜用の塗布液(例えば親水性膜を塗布により形成する場合は親水性膜形成用塗布液;以下同様。)の粘度を適切な範囲とすることができる。また、特定シロキサン化合物の反応性を好ましい範囲に制御することができる。nとしては、3〜12であることが好ましく、5〜10であることがより好ましい。
なお、nが20以下であると、塗布液の粘度が高くなり過ぎず、均一性の高い親水性膜が塗布形成される。一方、nが2以上であると、シロキサン化合物の反応性が制御し易く、例えば表面の親水性に優れた親水性膜が塗布形成される。
以下に、特定シロキサン化合物の例を、一般式(1)におけるR〜R、及びnにより記載する。但し、本発明は、これらの例示化合物に限定されるものではない。
シロキサンオリゴマーは、水と共存することで、少なくとも一部が加水分解される。シロキサンオリゴマーの加水分解物は、シロキサンオリゴマーと水とが反応することで、シロキサンオリゴマーのケイ素原子に結合したアルコキシ基の少なくとも一部がヒドロキシ基に置換された化合物であり、親水性基であるヒドロキシ基に起因して、例えば塗布及び乾燥を経て形成される親水性膜は表面親水性が良好な膜となる。
加水分解反応に際して、必ずしもシロキサンオリゴマーが有する全てのアルコキシ基が反応する必要はないが、例えば親水性膜形成用塗布液の塗布、及び乾燥により得られる塗膜の親水性がより良好になるという観点からは、より多くのアルコキシ基が加水分解されていることが好ましい。
加水分解に際して必要な水の量は、シロキサンオリゴマーが有するアルコキシ基と等しいモル量であるが、加水分解反応を効率よく進行させるという観点からは、大過剰の水で加水分解を行うことが好ましい。
本発明の親水性膜に含有されるシロキサンバインダーは、上述のように、シロキサンオリゴマーの加水分解物が持つヒドロキシ基の少なくとも一部が互いに結合し、シロキサンオリゴマーが縮合して得られる。
親水性膜には、シロキサンバインダーが1種のみ含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
シロキサンオリゴマーの重量平均分子量は、300〜1500の範囲が好ましく、500〜1200の範囲がより好ましい。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定できる。具体的には、HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー株式会社製)を用い、カラムとして、TSKgel、SuperHM−H(東ソー株式会社製、6.0mmID×15cm)を2本用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて測定できる。また、条件としては、試料濃度を0.5質量%、流速を0.6ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、示差屈折計(RI)検出器を用いて行なうことができる。検量線は、東ソー社製「polystyrene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製されたものを用いることができる。
シロキサンバインダーの親水性膜中における含有量としては、親水性膜の全固形分に対して、1質量%〜80質量%が好ましく、3質量%〜75質量%がより好ましく、5質量%〜70質量%がさらに好ましい。シロキサンバインダーの含有量が上記範囲であると、親水性膜の表面の水接触角が低く抑えられ、汚れ難く、汚れた場合にも汚れを容易に除去し得る膜となる。
[シリカ粒子]
本発明の親水性膜は、シリカ粒子の少なくとも1種を含有する。
シリカ粒子は、親水性膜の耐傷性を高めつつ、さらに親水性を発揮させる機能を有する。すなわち、シリカ粒子は硬いフィラーとしての役割を担い、かつ、粒子表面のヒドロキシ基が作用して親水性に寄与する。
シリカ粒子としては、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。
ヒュームドシリカは、ケイ素原子を含む化合物を気相中で酸素及び水素と反応させることによって得ることができる。原料となるケイ素化合物としては、例えば、ハロゲン化ケイ素(例えば塩化ケイ素等)等が挙げられる。
コロイダルシリカは、原料化合物を加水分解及び縮合するゾルゲル法により合成することができる。コロイダルシリカの原料化合物としては、例えば、アルコキシケイ素(例えばテトラエトキシシラン等)、ハロゲン化シラン化合物(例えばジフェニルジクロロシラン等)等が挙げられる。
シリカ粒子の形状は、特に限定はなく、球状、板状、針状、数珠状、又はこれらの2種類以上が合体した形状が挙げられる。なお、ここでいう球状とは、真球状の他、回転楕円体、及び卵形等の形状である場合も含む。
シリカ粒子の例としては、エボニック デグサ社製のAEROSIL(登録商標)シリーズ、日産化学工業社製のスノーテックス(登録商標)シリーズ(例えばスノーテックスOなど)、及びナルコケミカル社製のナルコ(Nalco)(登録商標)シリーズ(例えばNalco8699など)が挙げられる。
シリカ粒子は、親水性膜の表面積差ΔSと表面粗さRaとが上記の式1の関係を満たす範囲に調整しやすい観点から、平均一次粒子径が100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、15nm以下であることが特に好ましい。また、シリカ粒子の平均一次粒子径の下限は、特に限定されないが、上記と同様の観点から2nm以上が好ましい。
また、シリカ粒子は、サイズ又は形状が異なるものが混合されていてもよい。
シリカ粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡により観察し、得られた写真から300個以上の粒子について粒子の投影面積を測定し、投影面積から円相当径を求めることにより求められる。なお、シリカ粒子の形状が球状ではない場合には、その他の方法、例えば動的光散乱法を用いて求められる。
シリカ粒子の含有量としては、親水性膜の全固形分に対して、5質量%〜95質量%が好ましく、10質量%〜90質量%がより好ましく、20質量%〜85質量%がさらに好ましい。シリカ粒子の含有量が上記範囲内であると、硬度、耐傷性、及び耐衝撃性に優れつつも、親水性を有する親水性膜を形成することができる。
また、シリカ粒子の含有量は、前述のシロキサンバインダーの含有量に対して一定の比率の範囲であることが好ましい。すなわち、親水性膜中における、シロキサンバインダーに対するシリカ粒子の比率が、質量基準で0.1〜1.8であることが好ましく、0.1〜1.5であることがより好ましく、0.1〜1.2であることがさらに好ましい。
シロキサンバインダーに対するシリカ粒子の比率が、上記の範囲であると、親水性膜の表面積差ΔSと表面粗さRaとの関係を上記の式1を満たす範囲に調整しやすい。
親水性膜は、シロキサンバインダー及びシリカ粒子以外にも、帯電防止剤、界面活性剤、シロキサンオリゴマーの縮合反応を促進する触媒及び他の成分を含んでもよい。
[帯電防止剤]
本発明の親水性膜は、帯電防止剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。帯電防止剤の含有により親水性膜に帯電防止性が付与され、帯電防止剤をシロキサンバインダー及びシリカ粒子と共に含有していることで、汚染物質に対する付着防止効果が大きく、防汚性が飛躍的に向上する。
帯電防止剤は、帯電防止機能を有する化合物から適宜選択することができ、界面活性を示す化合物又は界面活性を示さない化合物のいずれでもよい。帯電防止剤としては、例えば、イオン性の界面活性剤、金属酸化物粒子などが挙げられる。
イオン性の界面活性剤は、親水性膜を例えば塗布により形成する場合に、塗膜の膜面付近に偏析しやすい性質があるため、少量の添加で効果が期待できる。また、金属酸化物粒子は、親水性膜に帯電防止性を与えるために比較的多量の添加が必要とされる場合があるが、無機物であるため、親水性膜の耐傷性を高める点で適している。
イオン性の界面活性剤の例としては、アルキル硫酸塩(例:ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、アルキルスルホコハク酸塩(例:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等)、アルキルリン酸塩(例:ドデシルリン酸ナトリウム等)などのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤;及びアルキルカルボキシベタインなどの両性型界面活性剤を挙げることができる。
なお、イオン性の界面活性剤は、膜中に過剰に加えられると、系内の電解質量が増えてシリカ粒子の凝集を招くことが知られているため、イオン性の界面活性剤をシリカ粒子と併用する組成は避けられてきた。しかしながら、イオン性の界面活性剤は、汚染物質に対する防汚機能を発現するとの知見が得られ、本発明はかかる知見に基づくものであり、親水性膜に帯電防止剤としてイオン性の界面活性剤を含有することは好ましい態様である。イオン性の界面活性剤を含むことで、親水性膜の防汚性及び水洗浄性がより高められる。
金属酸化物粒子としては、特に限定されないが、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ粒子、スズドープ酸化インジウム粒子、酸化亜鉛粒子などが挙げられる。
また、金属酸化物粒子は、サイズ、形状、又は素材が異なるものが混合されて使用されていてもよい。粒子の形状は、特に限定されず、球状であっても、板状であっても、針状であってもよい。
金属酸化物粒子は、屈折率が大きく、粒径が大きい場合には、透過光の過度の散乱による損失が発生しやすいため、平均一次粒子径が100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、粒子形状が球状又は断面楕円等の略球状である場合は、分散した粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた写真から300個以上の粒子について粒子の投影面積を測定し、投影面積から円相当径を求めることにより求められる。なお、金属酸化物粒子の形状が球状ではない場合、その他の方法、例えば動的光散乱法を用いて求められる。
帯電防止剤としてイオン性の界面活性剤を用いる場合、イオン性の界面活性剤の含有量としては、親水性膜の全固形分に対して、50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。イオン性の界面活性剤の含有量が上記範囲内であると、シリカ粒子の凝集を抑えつつ、親水性膜の防汚性を高めることができる。また、イオン性の界面活性剤の含有量は、イオン性の界面活性剤を含めることによる親水性膜の防汚性の向上効果の観点から、0.05質量%以上であることが好ましい。
帯電防止剤として金属酸化物粒子を用いる場合、金属酸化物粒子の含有量としては、親水性膜の全固形分に対して、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。金属酸化物粒子の含有量が上記範囲内であると、親水性膜を塗布により形成する場合の成膜性を損なうことなく、効果的に帯電防止性を付与することができる。また、金属酸化物粒子の含有量は、金属酸化物粒子を含めることによる親水性膜の防汚性の向上効果の観点から、1質量%以上であることが望ましい。
[界面活性剤]
本発明の親水性膜は、さらに界面活性剤を含有することが好ましい。親水性膜において、シロキサンバインダー及びシリカ粒子とともに界面活性剤が含有されることで、汚染物質(特に砂利等)の付着防止能を発現し防汚性に優れる。
なお、ここでいう界面活性剤には、前述の帯電防止剤として挙げた帯電防止機能を有する化合物(例えば、イオン性の界面活性剤など)は含まない。
界面活性剤は、帯電防止剤が界面活性を有する有しないに関わらず、帯電防止剤と界面活性剤とを併用してもよい。帯電防止剤が界面活性を示さない化合物である場合は、水洗浄性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。帯電防止剤が界面活性を示す化合物である場合は、防汚性をより向上させる観点から帯電防止剤とは別に界面活性剤を含有することが好ましい。
親水性膜が界面活性剤を含有することにより、親水性膜の防汚性が高まるのみならず、親水性膜を例えば塗布により形成する場合の塗布性を高めることができ、塗布に用いる塗布液の表面張力も低下して塗布膜の均一性がより高められる。
界面活性剤としては、例えば、ノニオン性の界面活性剤などが挙げられる。
前述の帯電防止剤としてイオン性の界面活性剤を用いる場合、イオン性の界面活性剤は、前述のように膜中に過剰に加えられると、系内の電解質量が増えてシリカ粒子の凝集を招きやすいことから、ノニオン性の界面活性剤を併用することが好ましい。但し、ノニオン性の界面活性剤は、必ずしもイオン性の界面活性剤と併用する必要はなく、界面活性剤としてノニオン性の界面活性剤を単独で含有してもよい。
ノニオン性の界面活性剤としては、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエステル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエステル・モノアルキルエーテルなどが挙げられる。ノニオン性の界面活性剤の具体的な例としては、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノセチルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエステル、ポリエチレングリコールモノステアリルエステルなどが挙げられる。
界面活性剤の親水性膜における含有量は、親水性膜の全固形分に対して、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。
また、界面活性剤の含有量は、親水性膜の全固形分に対して、50.0質量%以下が好ましく、40.0質量%以下がより好ましく、30.0質量%以下がさらに好ましい。界面活性剤の含有量が30.0質量%以下であると、界面活性剤が膜面に偏析する現象が抑えられ、膜の硬さを良好に維持する点で有利である。
[シロキサンオリゴマーの縮合反応を促進する触媒]
本発明の親水性膜は、シロキサンオリゴマーの縮合反応を促進する触媒(縮合促進触媒)の少なくとも1種を含有していてもよい。なお、縮合促進触媒の奏する効果については後述する。
縮合促進触媒としては、特に制限はなく、例えば、酸触媒、アルカリ触媒、有機金属触媒などが挙げられる。
酸触媒の例としては、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸、クロロ酢酸、蟻酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸などが挙げられる。
アルカリ触媒の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。
有機金属触媒の例としては、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどのアルミキレート化合物;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)などのジルコニウムキレート化合物;チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)などのチタンキレート化合物;及びジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエートなどの有機スズ化合物;等が挙げられる。
これらの触媒の中でも、酸触媒としては硝酸が好ましく、アルカリ触媒としては水酸化ナトリウムが好ましく、有機金属触媒としてはアルミキレート化合物又はジルコニウムキレート化合物が好ましい。これらの触媒の中でも、さらに好ましくは、有機金属触媒であり、特に好ましくはアルミキレート化合物である。
縮合促進触媒の親水性膜中における含有量は、親水性膜の全固形分に対して、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.2質量%〜15質量%がより好ましく、0.3質量%〜10質量%がさらに好ましい。縮合促進触媒の含有量が上記範囲内であると、耐傷性を有する親水性膜を形成しやすい。また、親水性膜の形成性にも優れる。
[他の成分]
本発明の親水性膜は、上記の成分に加えて、必要に応じて、更に他の成分として、シロキサンバインダー以外のバインダー成分(バインダー添加成分)などの添加剤を含有することができる。
バインダー添加成分としては、例えば、ポリウレタン、アクリル系樹脂、ポリりん酸塩、メタりん酸塩等の、末端に極性基(例えば、水酸基、カルボキシ基、りん酸基、スルホン酸基、アミノ基など)を有するバインダー成分が挙げられる。
親水性膜に上記のバインダー添加成分が含有されることで、親水性膜と基材(特に、ポリカーボネート基材)との密着性が向上する。
上記のバインダー添加成分の中でも、親水性膜と基材との密着性の観点から、末端に水酸基、カルボキシ基、又はりん酸基を有するバインダー添加成分が好ましく、ポリウレタン、アクリル系樹脂、及びポリりん酸塩がより好ましい。
ポリウレタンとしては、特に限定されないが、例えば、ポリオール骨格とポリイソシアネート骨格とで構成されるソフトセグメント/ハードセグメント構造を有するポリウレタンなどが挙げられる。
ポリウレタンは、市販のものを使用してもよく、例えば、三井化学株式会社製のタケラック(登録商標)Wシリーズ、WSシリーズ、WDシリーズ、三洋化成工業株式会社製のパーマリン(登録商標)シリーズ、ユーコート(登録商標)シリーズ、ユープレン(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸の単独重合体(ポリアクリル酸)、アクリル酸及びそのエステルなどのアクリル酸誘導体、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸誘導体などが挙げられる。
これらのアクリル系樹脂の中でもポリアクリル酸が好ましく、重量平均分子量が、2000〜500万のポリアクリル酸が好ましく、1万〜200万のポリアクリル酸がより好ましく、25万〜100万のポリアクリル酸がさらに好ましい。
ポリりん酸塩としては、例えば、ポリりん酸ナトリウム、ポリりん酸カリウム等が挙げられる。
なお、重量平均分子量は、前述の方法により測定することができる。
親水性膜におけるバインダー添加成分の含有量は、親水性膜の全固形分に対して、0.001質量%〜0.1質量%が好ましく、0.001質量%〜0.01質量%がより好ましく、0.002質量%〜0.008質量%がさらに好ましい。バインダー添加成分の含有量が上記範囲内であると、基材との密着性に優れた親水性膜を形成しやすい。
本発明の親水性膜は、固形分の主要成分としてケイ素と酸素とを含んでおり、炭素の含有量が少ないことも一つの特徴であるといえる。炭素の含有量を少なくすることにより、例えば、親水性膜形成用塗布液を用いて塗膜を形成し乾燥させて形成された親水性膜は、屋外の風雨等に曝される様々な環境下に置かれた場合でも、光、及び熱による膜への影響を最小限に留めることが可能である。
本発明の親水性膜は、全固形分中に占める炭素の割合が3質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の親水性膜に炭素を含む有機化合物が含まれる場合、炭素を含む有機化合物は重量平均分子量の低い化合物であることが好ましい。具体的には、親水性膜において、重量平均分子量が1100以上の有機化合物の含有量は、親水性膜の全固形分に対して、0.2質量%以下であることが好ましく、0質量%、すなわち不可避不純物を除いては含まれないことが更に好ましい。
重量平均分子量1100以上の有機化合物の含有量が上記範囲であると、親水性膜中における固形分の相溶性がより良好になり、親水性膜形成用塗布液を用いて塗膜を形成する際の成膜性をより向上させ得る。
なお、「重量平均分子量が1100以上の有機化合物」には、前述のシロキサンバインダーは含まれない。
また、重量平均分子量は前述の方法により測定できる。
本発明の親水性膜の厚みとしては、20nm以上600nm以下の範囲が好ましく、50nm以上350nm以下の範囲がより好ましく、100nm以上250nm以下の範囲が更に好ましい。
[親水性膜の物性]
本発明の親水性膜は、耐傷性及び親水性に優れる。これにより、親水性膜は、屋外に設置されるもの(例えば、監視カメラ、照明を保護するための保護材、車庫の屋根材、標識用の保護材、壁材など)の保護材として好適であり、親水性膜を付設することで、汚染物質の付着が抑制される。また、親水性膜は親水性が良好であるので、表面に汚染物質が付着した場合には、汚染物質を洗い流す(例えば水洗する)ことにより容易に除去することができ、例えば僅かな汚染物質も雨天時の雨水等により洗い流され易いという効果も奏される。
また、親水性膜は耐傷性に優れるため、汚染物質を拭き取る際に膜に傷が付くことを抑制することができる。
以下に、本発明の親水性膜の物性を挙げる。
[表面抵抗]
親水性膜の表面抵抗値としては、1×1012Ω/square以下であることが好ましく、1×1011Ω/sq以下であることがより好ましく、1×1010Ω/square以下であることがさらに好ましい。親水性膜の表面抵抗が上記範囲内であると、親水性膜の防汚性がより優れた膜となる。
表面抵抗値は、ハイレスタMCP−HT450(三菱化学アナリテック社製)を用いて測定される。
[積分球透過率]
本発明の親水性膜は、光透過性に優れていることが好ましく、かかる観点より親水性膜の積分球透過率(波長(λ)=300nm〜1200nmにおける積分球透過率の平均値)が95%以上であることが好ましい。
ここでの積分球透過率は、300nm〜1200nmの波長領域において波長5nmごとに積分球透過率を測定し、測定値を平均して得られる平均値(波長(λ)=300nm〜1200nmにおける積分球透過率の平均値)として求められる値である。
積分球透過率は、95.5%以上であることがより好ましい。
親水性膜の積分球透過率は、親水性膜が形成されていない基材及び親水性膜が形成された基材の積分球透過率を、硫酸バリウム白板をリファレンスとして測定し、親水性膜が形成された基材の積分球透過率から、親水性膜が形成されていない基材の積分球透過率を差し引くことで、基材に対する光透過率向上分を算出する。
積分球透過率は、積分球付の透過型分光光度計を用いて測定される。具体的には、例えば、紫外可視赤外分光光度計(UV−3600、株式会社島津製作所製)に積分球付属装置(ISR−2200、株式会社島津製作所製)を接続した装置、又は、紫外可視赤外分光光度計(UV−3600、株式会社島津製作所製)に多用途大型試料室(MPC−3100、株式会社島津製作所製)を接続した装置、等により、波長300nm〜1400nmの光を用いて測定される。
測定により得られる透過率向上分が多いほど、透明性(低反射性)に優れていることを示し、光透過率向上分(波長(λ)=400nm〜1400nm)は、1%以上が好ましく、1.5%以上がより好ましく、1.8%以上が特に好ましい。
なお、光透過率向上分は、400nm〜1400nmの波長領域における平均値として求められる。
[透過率]
親水性膜の透過率(λ=300nm〜1200nmでの平均値)は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。親水性膜の透過率は、親水性膜が形成された基材の積分球透過率を、親水性膜が形成されていない基材の積分球透過率をリファレンスとして測定することで求めた。
透過率は、自記分光光度計(UV2400−PC、株式会社島津製作所製)により測定される値である。
<親水性膜の製造方法>
本発明の親水性膜の製造方法は、シロキサンバインダーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子と、を含有する塗布液を基材に塗布する塗布工程と、塗布工程により基材上に塗布された塗布膜を20℃以上150℃以下の温度で乾燥する乾燥工程と、を有する。
また、本発明の親水性膜の製造方法は、さらに塗布液を調製する調製工程を有することが好ましい。
なお、本発明の製造方法において製造される親水性膜は、シロキサンバインダーに対するシリカ粒子の比率が質量基準で0.1〜1.8であり、表面において表面積差ΔSと表面粗さRaとが下記式1の関係を満たす。
ΔS≦0.5Ra ・・・式1
式1中、ΔSは下記式2で求められる百分率である。
ΔS=[(S−S)/S]×100 ・・・式2
式2中、Sは親水性膜の垂線方向から見た投影面積を表し、SはSで表す投影面積における親水性膜の表面の実表面積を表す。
[調製工程]
本発明の親水性膜の製造方法は、塗布液を調製する調製工程を有することが好ましい。
本発明の親水性膜の製造方法に用いる塗布液は、シロキサンバインダーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子と、を含有する塗布液から適宜選択することができるが、以下に示す調製工程において調製された塗布液を用いることが好ましい。
調製工程では、水と、シロキサンオリゴマーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子と、を混合することで塗布液を調製する。また、調製工程は、さらにシロキサンオリゴマーの縮合反応を促進する触媒(縮合促進触媒)を混合することで塗布液を調製することが好ましい。
塗布液の調製は、例えば、シロキサンオリゴマーと水とを接触させてシロキサンオリゴマーの加水分解物を含む混合液を調製した後、この混合液に平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子を添加する方法が挙げられる。
シロキサンオリゴマーの加水分解反応は、室温(25℃)でも進行するが、反応促進のために、シロキサンオリゴマーと水とを接触させて混合液を調製した後、得られた混合液を30℃〜50℃程度に加温してもよい。加水分解反応の反応時間は長い方がより反応が進むため好ましい。このため、十分に加水分解反応を進行させるという観点からは、加温状態で1時間〜36時間、反応させることも好ましい。
また、シロキサンオリゴマーの加水分解反応を促進する触媒を、混合液中に共存させることで、半日程度でも親水性に必要なシロキサンオリゴマーの加水分解物を得ることが可能である。
シロキサンオリゴマーの加水分解反応は可逆反応である。そのため、混合液から水が除かれると、シロキサンオリゴマーの加水分解物は、ヒドロキシ基間における縮合反応が開始、進行する。したがって、シロキサンオリゴマーと、好ましくは大過剰の水と、を含有する混合液中において、加水分解反応させてシロキサンオリゴマーの加水分解物を得た場合、加水分解物を単離せずに混合液のまま、シリカ粒子を添加して塗布液の調製することが好ましい。
塗布液において、シロキサンオリゴマーの加水分解物の縮合反応が進行するため、塗布液にはシロキサンバインダーが含まれている。
シロキサンオリゴマーの添加量としては、塗布液の全質量に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、0.5質量%〜20質量%がさらに好ましい。
シリカ粒子の添加量は、塗布液の全質量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。シリカ粒子が塗布液中に占める割合が上記範囲内であると、シリカ粒子の液中での分散性が高められ、凝集などを防ぐ点で有利である。
塗布液は、シリカ粒子の凝集を抑制する観点から、分散剤を含んでいてもよい。
分散剤としては特に限定されず、公知の分散剤を用いることができる。分散剤としては、シリカ粒子の特性に応じて、構造上の立体障害及び電気的反発などの作用を考慮して適宜選択することが好ましく、シリカ粒子表面を十分に被覆し、シリカ粒子を分散又は保護する観点から、重量平均分子量が1,000以上の分散剤であることが好ましい。
分散剤としては、例えば、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株))等のカチオン系界面活性剤;
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商(株))等のアニオン系界面活性剤;
EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100、SNディスパーサント5040,5033,5034,5468,5020(いずれもサンプノコ(株)製)、(いずれもサンノプコ(株)製)、ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000、41000などの各種ソルスパース分散剤(Lubrizol社製)等の高分子分散剤;
アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(ADEKA(株)製)及びイオネットS−20(三洋化成工業(株)製)、DISPERBYK 101,103,106,108,109,110,111,112,116,118,130,140,142,162,163,164,166,167,170,171,174,176,180,182,184,190,191,194N,2000,2001,2010,2015,2050,2055,2150,2152,2155,2164(ビックケミー社製)などの分散剤;
アロンT−50,A−6012,A−6017,AT−40H,A−6001,A−30SL,A−6114,A−210,SD−10,A−6712,A−6330,CMA−101,ジュリマー(登録商標)AC−10NPD(いずれも東亞合成(株)製)及びNuosperse FX−605,FX−609,FX−600,FX−504(Elementis社製)などの各種ポリカルボン酸系分散剤が挙げられる。また、分散剤としては、上記以外にもアクリル系共重合体などの分子末端若しくは側鎖に極性基を有するオリゴマー又はポリマーが挙げられる。
分散剤は、1種単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
塗布液中の分散剤の含有量は、シリカ粒子の全固形分に対して、1質量%〜500質量%の範囲が好ましく、10質量%〜100質量%の範囲がより好ましい。
また、分散剤は、塗布液の調製において最後に添加されてよく、予めシリカ粒子と混合及び攪拌した混合液を用意して、この混合液を塗布液に添加することで添加されてもよい。
塗布液は、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤は、塗布方法に応じて粘度を増大させる増粘剤を添加することができる。
増粘剤としては特に限定されず、公知の増粘剤を用いることができる。増粘剤としては、塗布液の溶媒に応じて適宜使用することが好ましく、少量の添加で増粘させる効果が高い点から、重量平均分子量が3,000以上10,000,000以下の増粘剤であることが好ましい。
増粘剤としては、例えば、SEPIGEL 305、NS、EG、FL、SEPIPLUS265、S、400、SEPINOV EMT10、P88、SEPIMAX ZEN(成和化成社製)、アロンA−10H、A−20P−X、A−20L、A−30、A−7075、A−7100、A−7185、A−7195、A−7255、B−300K、B−500K、ジュリマー(登録商標)AC−10LHPK、AC−10SHP、レオジック260H、845H、ジュンロンPW−120(東亞合成社製)、DISPERBYK 410、411、415、420、425、428、430、431、7410ET、7411ES、7420ES、OPTIFLO−L1400(ビックケミー社製)、コスカットGA468(大阪有機化学工業社製)、無機系材料(ケイ酸塩(水溶性ケイ酸アルカリ)、モンモリロナイト、有機モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等)、繊維素誘導体系材料(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース等)、タンパク質系材料(カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等)、アルギン酸系材料(アルギン酸ソーダ等)ポリビニル系材料(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合物等)、ポリアクリル酸系材料(ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸−(メタ)アクリル酸共重合物等)、ポリエーテル系材料(プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物等)、無水マレイン酸共重合体系材料(ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステル−無水マレイン酸のハーフエステル等)が挙げられる。増粘剤としては、上記以外にも、ポリアマイドワックス塩、アセチレングリコール、ゼンタンガム、分子末端若しくは側鎖に極性基を有するオリゴマー又はポリマーが挙げられる。
増粘剤は、1種単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
また、粘度の高い溶媒を増粘剤として用いてもよい。
塗布液の粘度は、塗布方式に応じて適宜選択できる。例えば、塗布方式がスプレー塗布の場合、塗布液の粘度は、5cP(5mPa・s)以上200cP(200mPa・s)以下が好ましく、10cP(10mPa・s)以上100cP(100mPa・s)以下がより好ましい。
増粘剤の塗布液中における含有量は、塗布液の全質量に対して、0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%〜5質量%がより好ましく、0.5質量%〜2質量%がさらに好ましい。
塗布液には、さらに必要に応じて、縮合促進触媒、帯電防止剤、界面活性剤、及びバインダー添加成分を添加することができる。
塗布液が、シロキサンオリゴマーと縮合促進触媒とを含むことで、シロキサンオリゴマーの縮合反応が促進し、シロキサンバインダーの形成が促進される。これにより、親水性膜が耐傷性により優れた膜となる。
縮合促進触媒としては、前述の親水性膜における縮合促進触媒と同じであり、好ましい態様も同じである。
塗布液への縮合促進触媒の添加量は、塗布液の全固形分に対して、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.2質量%〜15質量%がより好ましく、0.3質量%〜10質量%がさらに好ましい。縮合促進触媒の含有量が上記範囲内であると、耐傷性を有する親水性膜を形成しやすい。また、親水性膜の形成性にも優れる。
なお、縮合促進触媒は、シロキサンオリゴマーの加水分解に対しても有用である。ここで、シロキサンオリゴマーのケイ素に結合したアルコキシ基の加水分解反応と縮合反応とは平衡関係にあり、系内の水分が多いと反応が加水分解の方向に進み、系内の水分が少ないと反応が縮合の方向に進む。アルコキシ基の縮合反応を促進する触媒は、両方向の反応を促進するため、系内に水分の多い状態では加水分解反応を促進することができる。触媒の存在により、シロキサンオリゴマーの加水分解をより穏やかな条件でより確実に進めることが可能となる。
この際、シロキサンオリゴマーの加水分解反応に用いた触媒をそのまま系内に留めて親水性膜形成用塗布液の含有成分とし、そのままシロキサンオリゴマーの縮合用触媒として使用すると効率がよい。
塗布液は帯電防止剤を含んでいてもよい。塗布液が帯電防止剤を含むことで、帯電防止性を付与した親水性膜を形成することができ、形成された親水性膜は、膜への汚染物質の付着が抑制されるため防汚性が向上する。
帯電防止剤としては、前述の親水性膜における帯電防止剤と同じであり、好ましい態様も同じである。
帯電防止剤としてイオン性の界面活性剤を用いる場合、イオン性界面活性剤の塗布液中における含有量は、塗布液の全質量に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。イオン性の界面活性剤の塗布液中に占める割合が上記範囲内であると、シリカ粒子の凝集を抑えつつ、親水性膜の防汚性を高められる。
なお、帯電防止剤として金属酸化物粒子を用いる場合、金属酸化物粒子の塗布液中における含有量は、塗布液の全質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。金属酸化物粒子の塗布液中に占める割合が上記範囲内であると、金属酸化物粒子の液中での分散性が高められ、凝集などを防ぐ点で有利である。
塗布液が界面活性剤を含むことで、塗布液の基材への濡れ性が向上する。
界面活性剤としては、前述の親水性膜における界面活性剤と同じであり、好ましい態様も同じである。
界面活性剤の塗布液中の含有量は、塗布液の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であると、基材への濡れ性により優れる。また、界面活性剤の含有量は、塗布液の全固形分に対して、15質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
塗布液はバインダー添加剤を含んでいてもよい。塗布液がバインダー添加成分を含むことで、基材への密着性を向上させた親水性膜を形成することができる。
バインダー添加成分としては、前述の親水性膜におけるバインダー添加成分と同じであり、好ましい態様も同じである。
バインダー添加成分の塗布液中における含有量は、塗布液の全固形分に対して、0.001質量%〜0.1質量%が好ましく、0.001質量%〜0.01質量%がより好ましく、0.002質量%〜0.008質量%がさらに好ましい。
上記において、帯電防止剤、界面活性剤及びバインダー添加成分を加える場合、これらの一部又は全部を、シロキサンオリゴマーの加水分解物を得る工程で加えるようにしてもよい。
塗布液は、光重合開始剤及び熱重合開始剤を含有しないことが好ましい。光重合開始剤及び熱重合開始剤をしないことで、親水性膜の形成時に光照射又は熱処理を省くことができる。また、塗布液の貯蔵安定性の観点からは、光重合開始剤及び熱重合開始剤を含有しないことが好ましい。
塗布液の調製条件については、特に制限はないが、pH及び共存成分の濃度に起因したシリカ粒子の凝集を抑える観点から、シリカ粒子は、塗布液を調製する過程の後半に加えられることが好ましく、最後に加えられることがより好ましい。ここで、シリカ粒子を分散液(具体的には、シリカ粒子を予め水性溶媒に分散した分散液、又は市販のシリカ粒子分散液)として用いる場合は、分散液のpHと塗布液に用いる溶媒のpHとを、共に酸性とするか、又は共に塩基性として、シリカ粒子の分散液と塗布液の溶媒とのpHを同じか若しくは近い値に調整することが好ましい。
[塗布工程]
本発明の親水性膜の製造方法は、シロキサンバインダーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子と、を含有する塗布液を基材に塗布する塗布工程を有する。
塗布液を基材に塗布する塗布法としては、特に制限はなく、例えば、スプレー塗布、刷毛塗布、ローラー塗布、バー塗布、ディップ塗布(浸漬塗布)等の公知の方法を適用することができる。
塗布液の塗布量は、特に限定されるものではなく、塗布液中の固形分の濃度、所望の膜厚等に応じて、操作性等を考慮し、適宜設定することができる。塗布液の塗布量は、0.1mL/m〜1000mL/mであることが好ましく、0.5mL/m〜500mL/mであることがより好ましく、1mL/m〜200mL/mであることがさらに好ましい。塗布液の塗布量が、上記の範囲内であると、塗布精度が良好となり、表面積差ΔSと表面粗さRaを調節しやすい。
[乾燥工程]
本発明の親水性膜の製造方法は、塗布工程により基材上に塗布された塗布膜を20℃以上150℃以下の温度で乾燥する乾燥工程を有する。
乾燥工程では、塗布液を塗布して形成された塗布膜を20℃以上150℃の温度に加熱して乾燥することにより、基材上に、表面積差ΔSと表面粗さRaとが上記式1の関係を満たす膜が形成されるため、形成された親水性膜は耐傷性及び親水性に優れる。
塗布膜の乾燥は、加熱装置を用いて行なってもよい。加熱装置としては、目的の温度に加熱することができれば、特に限定されることなく、公知の加熱装置をいずれも用いることができる。加熱装置としては、オーブン、電気炉等の他、製造ラインに合わせて独自に作製した加熱装置を用いることができる。
塗布膜の乾燥は、例えば、上記の加熱装置を用いて、塗布膜の表面温度が20℃以上150℃以下の温度となるように行うことができる。乾燥時間は、例えば、加熱時間を1分間〜60分間程度とすることができる。
塗布膜の乾燥条件としては、塗布膜を、表面温度20℃以上150℃以下にして1分間〜60分間加熱する乾燥条件が好ましく、表面温度40℃以上150℃以下にして1分間〜60分間加熱する乾燥条件がより好ましく、表面温度60℃以上150℃以下にして1分間〜30分間加熱する乾燥条件がさらに好ましく、表面温度90℃以上150℃以下にして1分間〜10分間加熱する乾燥条件がとくに好ましい。
塗布膜の乾燥は、塗布膜の表面形状を維持する観点から、高温短時間で行われることが好ましい。
なお、表面温度は赤外線温度計などにより測定することができる。
乾燥後の塗布膜は、膜厚が20nm以上であることが好ましい。膜厚が20nm以上であると、乾燥後の塗布膜は耐傷性により優れる。
乾燥後の塗布膜は、膜厚が20nm以上600nm以下であることがより好ましく、50nm以上350nm以下が更に好ましく、100nm以上250nm以下が特に好ましい。
<防曇性膜用組成物>
本発明の防曇性膜用組成物は、シロキサンバインダーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子と、を含有し、シロキサンバインダーに対するシリカ粒子の比率が質量基準で0.1〜1.8である。
防曇性膜用組成物は、前述のシロキサンバインダー及び前述のシリカ粒子を含有するため、親水性に優れた膜を形成することができる。形成された膜が親水性に優れることで、膜の表面に付着した水の接触角が下がりやすいため、微少な水滴が膜の表面に付着することで発生する膜の曇りが抑制される。すなわち、形成された膜は防曇性に優れる。
防曇性膜用組成物は、さらに分散剤を含有することが好ましい。また、防曇性膜用組成物は、さらに増粘剤を含有することが好ましい。
防曇性膜用組成物は、監視カメラ、照明、及びセンサー灯具等を保護するための保護材(いわゆる保護カバー)、自動車及び自転車などの車両用の車庫の屋根材、道路標識等の標識用の保護材、高速道路路肩設置用又は鉄道用などの防音壁、自動車及び二輪車など車両のボディー、ガラス、ミラー、及びヘッドライトの透明性の保護材の用途に好適に用いられる。
中でも、撮像装置を保護する監視カメラ用の保護材(いわゆるカメラカバー)、及び自動車の保護材(例えば、自動車のヘッドライトカバー)の用途に好適に適用することができる。
防曇性膜用組成物の調製方法は、前述の親水性膜の製造方法における調製工程の塗布液と同じ方法を用いることができる。
また、防曇性膜の製造方法は、前述の親水性膜の製造方法と同じ方法を用いることができる。
乾燥後の防曇性膜は、膜厚が20nm以上であることが好ましい。膜厚が20nm以上であると、乾燥後の防曇性膜は耐傷性により優れる。
乾燥後の防曇性膜は、膜厚が20nm以上1000nm以下であることがより好ましく、50nm以上800nm以下が更に好ましく、100nm以上600nm以下が特に好ましい。
<積層体>
本発明の積層体は、基材と、前述の本発明の親水性膜と、を少なくとも有する。
積層体は、前述の本発明の親水性膜を有するため、耐傷性及び親水性に優れる。
[親水性膜]
積層体における親水性膜は、前述の本発明の親水性膜であり、好ましい態様は前述の通りである。
[基材]
本発明の積層体を形成する基材としては、特に制限はなく、ガラス、樹脂材料(プラスチックス材料)、金属、セラミックス等の各種材料より適宜選択して用いることができる。
基材として、ガラスは広く用いられており、本発明の積層体を形成する基材として好適である。基材としてガラスを用いる場合、ケイ素上のヒドロキシ基の縮合がガラス表面のヒドロキシ基との間でも生じることにより、基材との密着性により優れた膜が形成される。
また、基材として、樹脂材料も好適であり、例えば監視カメラ用保護材などの基材には樹脂材料が用いられることが多い。樹脂材料の中では、光、熱に対する耐久性に優れる点で、ポリカーボネート及びポリメチルメタクリレートが好ましい。
基材は、複合材料であってもよい。基材としては、例えばガラス及び樹脂材料を含み、ガラスと樹脂材料とが混在して複合化した複合材、又は複数種の樹脂材料が混練又は貼合された樹脂複合材等のいずれでもよい。
基材の厚みについては、特に制限はなく、用途や使用目的等に合わせて適宜選択すればよく、例えば0.05mm〜10mmとすることができる。
本発明の積層体は、監視カメラ、照明、及びセンサー灯具等を保護するための保護材(いわゆる保護カバー)、自動車や自転車などの車両用の車庫の屋根材、道路標識等の標識用の保護材、高速道路路肩設置用又は鉄道用などの防音壁、自動車、二輪車など車両用のボディー、ガラス、並びにミラー、及びヘッドライトの透明性の保護材の用途に好適に用いられる。
中でも、撮像装置を保護する監視カメラ用の保護材(いわゆるカメラカバー)の用途に好適に適用することができる。
<監視カメラ用保護材>
本発明の監視カメラ用保護材は、少なくとも前述の本発明の積層体を備えている。
積層体は、前述の本発明の親水性膜を有するため耐傷性及び親水性に優れる。したがって、本発明の監視カメラ用保護材は、例えば屋外の過酷な環境下に長期間曝されやすく、長期間にわたって優れた光透過性、透明性を保ち、長期耐久性が求められる監視カメラの撮像装置及びその撮像面を保護する保護材として有用である。
積層体における基材の形状としては、半球形状、半楕円体形状(いわゆるドーム形状を含む)、平面形状、角柱形状、又は円柱形状が好ましい。ここで、楕円体とは、楕円を、xy平面、yz平面、zx平面に関して対称なように三次元へ拡張した形状を指す。
また、基材のサイズには、特に制限はなく、用途や使用目的等に合わせて適宜選択すればよい。例えば半球形状の場合、開口面の円の直径で例えば10mm〜1000mmの範囲であってもよい。
基材の材質としては、前述の本発明の積層体における基材と同じものを用いることができる。基材の材質の中でも、本発明の親水性膜との密着性の観点から、樹脂材料が好ましく、ポリカーボネート及びポリメチルメタクリレートがより好ましい。
<監視カメラ>
本発明の監視カメラは、撮像装置を保護するための、前述の本発明の監視カメラ用保護材を備えている。そのため、本発明の監視カメラは、耐傷性及び親水性に優れる。したがって、本発明の監視カメラは、例えば屋外の過酷な環境下に長期間曝されやすく、長期間にわたって優れた光透過性、透明性を保ち、長期耐久性が求められる監視カメラとして有用である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
−塗布液の調製−
エタノール81.07gに対して、シロキサンオリゴマー(表1の化合物1;一般式(1)で表される化合物(n=5))3.06gおよびアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)の1質量%イソプロパノール溶液(シロキサンオリゴマーの縮合反応を促進する触媒)0.94gを添加して混合した。
得られた溶液に対してポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(エチレンオキサイド部の繰り返し数15;ノニオン性の界面活性剤)0.057gを溶解させた水溶液114.80gを徐々に加え、室温で12時間以上攪拌した。これにより、シロキサンオリゴマーを加水分解させることで、塗布母液B1を調製した。
次いで、19.99gの塗布母液B1に対して、エタノール7.36g、水12.58g、及びポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(エチレンオキサイド部の繰り返し数15;ノニオン性の界面活性剤)0.0056gを加えた。その後、更に、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(帯電防止剤であるイオン性の界面活性剤)0.0011gを添加して希釈した。この溶液に更に、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)の1質量%イソプロパノール溶液(シロキサンオリゴマーの縮合反応を促進する触媒)0.85gおよびシリカ粒子1(スノーテックス(登録商標)O、平均一次粒子径:10nm〜15nm、日産化学工業社製)を固形分として1.4gを加えて、塗布液を調製した。なお、塗布液中においても、シロキサンオリゴマーの加水分解物の縮合反応が進行するため、塗布液にはシロキサンバインダーが含まれている。
−カメラカバーの作製−
次に、調製した塗布液1を、アクリル板(平面形状)〔板サイズ:300mm×450mm、厚み:1mm、株式会社菅原工芸製;基材〕の片面にスプレー塗布することで塗膜を形成後、65℃2分間乾燥させ、厚み130mm(0.13μm)の親水性膜を得た。スプレー塗布には、スプレー噴霧装置(プレバル、プレシジョンバルブ社製)を用いた。ここで、親水性膜中に含まれるシロキサンオリゴマーの縮合が進行し、親水性膜には、シロキサンバインダーが含まれている。なお、親水性膜中におけるシロキサンバインダーに対するシリカ粒子の比率は質量基準で0.5である。
以上のようにして、親水性膜を有するアクリル板である監視カメラ用カメラカバー(積層体)を作製した。
−評価−
作製した監視カメラ用カメラカバーを用い、下記の測定又は評価を行った。評価結果は、下記表2に示す。
(1)表面粗さRa及び表面積差ΔS
表面粗さRa及び表面積差ΔSは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)により表面形状を測定することで3次元データを求め算出した。なお、ΔSの算出には下記の式2を用いた。
ΔS=[(S−S)/S]×100 ・・・式2
式2中、Sは親水性膜の垂線方向から見た投影面積を表し、SはSで表す投影面積における親水性膜の表面の実表面積を表す。
具体的には、上記親水性膜が形成された積層体を1cm×1cmの大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンした。スキャンの際、親水性膜表面の凹凸を、Z方向のピエゾの変位でとらえた。測定は、表面の5μm×5μmの範囲を512点×512点行った。測定された結果から、3次元データを得た。なお、カンチレバーにより実測された実表面積をSとし、測定範囲の面積(5μm×5μm)をSとした。
表面積差ΔSと表面粗さRaとの関係は、上記で得られた数値を用いて求めた。表2中ではΔS/Raで表し、ΔS/Raの値が0.5以下であることで式1を満たす。
(2)耐傷性
スチールウール型番#0000を1cmの大きさに切り取り、積層体の親水性膜側に重ね、スチールウールの上から所定の荷重をかけて10回擦り下記の評価基準にしたがって評価した。評価基準のA〜Eのうち、A及びBを許容範囲とした。
〈評価基準〉
A:30g荷重でも親水性膜にキズが付かなかった。
B:20g荷重で親水性膜にキズが付いた。
C:10g荷重で親水性膜にキズが付いた。
D:5g荷重で親水性膜にキズが付いた。
E:1g荷重で親水性膜にキズが付いた。
(3)水接触角
接触角計M553G−XM(株式会社シロ産業製)を用い、親水性膜の表面に純水を1μl滴下してθ/2法により接触角[°]を測定し、5回測定して得た値の平均値を水接触角とした。
水接触角は、40°以下を許容値とした。
(4)防汚性
天然黄土顔料(ホルベイン社製)を、カメラカバーの親水性膜の表面に一様に散布して付着させた後、カメラカバーの裏面を叩き、付着した天然黄土顔料を落とす作業を5回繰り返した。その後、作業を5回繰り返した後の親水性膜の写真を撮り、10mm×10mmの範囲において、画像解析ソフトImageFactory(Imsoft社製)による二値化画像解析により天然黄土顔料の付着面積を求め、汚れの程度を下記の評価基準にしたがって評価した。評価基準のA〜Eのうち、A及びBを許容範囲とした。
<評価基準>
A:親水性膜の表面には天然黄土顔料が付着せず、無色透明である。
B:親水性膜の表面に天然黄土顔料が付着し、付着面積が全面積の10%以下である。
C:親水性膜の表面に天然黄土顔料が付着し、付着面積が全面積の10%を超え50%以下である。
D:親水性膜の表面に天然黄土顔料が付着し、親水性膜の透明性は維持されているものの、付着面積が全面積の50%を超えている。
E:親水性膜の表面の全面に天然黄土顔料が付着し、一部又は全部が不透明である。
(実施例2〜実施例14、比較例1〜比較例4及び比較例6〜比較例7)
実施例1において、各種成分、基材及び乾燥条件を表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして親水性膜を作製した。さらに実施例1と同様にして監視カメラ用カメラカバー(積層体)を作製し、測定及び評価した。測定及び評価の結果は、表2に示す。
(比較例5)
塗布液として中国自動車工業株式会社製EXCELPUREを用いた以外は、実施例1と同様にして親水性膜を作製した。さらに実施例1と同様にして監視カメラ用カメラカバー(積層体)を作製し、測定及び評価した。測定及び評価の結果は、表2に示す。
(表2の説明)
〜シリカ粒子について〜
・シリカ粒子1 … スノーテックス(登録商標)O、平均一次粒子径:10nm〜15nm、日産化学工業社製
・シリカ粒子2 … スノーテックス(登録商標)OXS、平均一次粒子径:4nm〜6nm、日産化学工業社製
・シリカ粒子3 … スノーテックス(登録商標)OS、平均一次粒子径:8nm〜11nm、日産化学工業社製
・シリカ粒子4 … スノーテックス(登録商標)N40、平均一次粒子径:20nm〜30nm、日産化学工業社製
・シリカ粒子5 … スノーテックス(登録商標)OYL、平均一次粒子径:50nm〜80nm、日産化学工業社製
〜基材について〜
・アクリル板 … 平面形状、板サイズ:300mm×450mm、厚み:1mm、株式会社菅原工芸製
・ドーム基板 … 半楕円体形状(ドーム形状)、最大外径:150mm、最大高さ:130mm、厚み:3mm、ポリメチルメタクリレート成形部材、株式会社菅原工芸製の監視カメラカバーKタイプ(透明)
表2に示されるように、実施例では、いずれの監視カメラ用カメラカバーも無色透明であり、良好な耐傷性及び親水性を示した。
これに対して、比較例1〜比較例7では、監視カメラ用カメラカバーの表面は、耐傷性及び親水性がいずれも劣っていた。
(実施例15)
−ヘッドライトカバーへの塗布−
実施例1のカメラカバーの作製に用いた塗布液と同じ塗布液(防曇性膜用組成物)を、スプレー装置(アストロプロダクツ社製のAP HLVP電動スプレーガン(型番:AP050525))により、シックスセンス社製の80系エスクァイア用ヘッドライトカバーの内側の面に噴射して、厚み(乾燥後の膜厚)が500nmの防曇性膜が形成されたヘッドライトカバーを作製した。
防曇性膜用組成物を塗布する際のスプレー装置の条件及び塗布条件は以下のように設定した。
〈条件〉
・スプレー装置の条件
ノズルの径:φ1.8mm
吹き付けパターン:真円形
吐出量:500ml/分
・塗布条件
スプレー装置のノズルと基材表面との距離:50mm
−評価−
(5)外観評価
上記で作製したヘッドライトカバーの内側の表面(防曇性膜を有する面)を目視で観察し、下記の評価基準に従い防曇性膜の外観を評価した。評価結果を下記表3に示す。
〈評価基準〉
A:液垂れの跡がない。
B:液垂れの跡がある。
(6)塗布性
上記の防曇性膜用組成物の塗布を合計で1000回行い、100回塗布するごとにノズルの先端を観察し、詰まりの発生の有無を確認した。ノズルの先端の詰まりの発生の有無及び詰まりが発生した塗布回数から下記の評価基準に従い塗布性を評価した。評価結果を下記表3に示す。
〈評価基準〉
A:1000回塗布してもノズルの先端に詰まりが発生しなかった。
B:塗布300回目にノズルの先端に詰まりが発生した。
(7)防曇性
上記で作製したヘッドライトカバーの内側の表面(防曇性膜を有する面)に、60℃に暖めた温水から出る蒸気を、2分間当て、その後目視により外観を観察することで、防曇性を評価した。なお、蒸気を当てる際、温水の水面と塗布面との距離は50mmとした。また、比較として、防曇性膜用組成物を塗布していないヘッドライトカバー(未塗布品)についても同様の操作を行った。
(実施例16〜実施例21)
実施例15において、塗布液1kgに下記表3に示すように増粘剤及び分散剤を添加した以外は、実施例15と同様にして、防曇性膜用組成物を調製し、さらにヘッドライトカバーを作製し、各種評価を行った。評価結果を下記表3に示す。
表3に示されるように、分散剤及び増粘剤を混合した塗布液では、より塗布性に優れることが確認された。
また、防曇性の評価の結果、実施例15〜実施例21のヘッドライトカバーは塗布面に曇りが発生せず、優れた防曇性を示した。一方、未塗布品は曇りが発生し、防曇性に劣っていた。

Claims (21)

  1. シロキサンバインダーと、シリカ粒子と、を含有し、表面における表面積差ΔSと表面粗さRaとが下記式1の関係を満たす親水性膜。
    ΔS≦0.5Ra ・・・式1
    式1中、ΔSは下記式2で求められる百分率である。
    ΔS=[(S−S)/S]×100 ・・・式2
    式2中、Sは親水性膜の垂線方向から見た投影面積を表し、SはSで表す投影面積における親水性膜の表面の実表面積を表す。
  2. 前記表面粗さRaが100nm以下である請求項1に記載の親水性膜。
  3. 前記表面粗さRaが10nm以下である請求項1又は請求項2に記載の親水性膜。
  4. 前記表面積差ΔSが0.1%以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の親水性膜。
  5. さらに帯電防止剤を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の親水性膜。
  6. 前記帯電防止剤の少なくとも1種が、イオン性の界面活性剤である請求項5に記載の親水性膜。
  7. さらに界面活性剤を含有する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の親水性膜。
  8. 前記界面活性剤が、ノニオン性の界面活性剤である請求項7に記載の親水性膜。
  9. 前記シロキサンバインダーは、下記一般式(1)で表される化合物から形成されるシロキサンバインダーである請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の親水性膜。

    一般式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6の1価の有機基を表す。nは、2〜20の整数を表す。
  10. 前記シリカ粒子の平均一次粒子径が、2nm以上100nm以下である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の親水性膜。
  11. シロキサンバインダーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子と、を含有する塗布液を基材に塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程により基材上に塗布された塗布膜を20℃以上150℃以下の温度で乾燥する乾燥工程と、
    を有し、シロキサンバインダーに対するシリカ粒子の比率が質量基準で0.1〜1.8であり、表面における表面積差ΔSと表面粗さRaとが下記式1の関係を満たす親水性膜を製造する親水性膜の製造方法。
    ΔS≦0.5Ra ・・・式1
    式1中、ΔSは下記式2で求められる百分率である。
    ΔS=[(S−S)/S]×100 ・・・式2
    式2中、Sは親水性膜の垂線方向から見た投影面積を表し、SはSで表す投影面積における親水性膜の表面の実表面積を表す。
  12. さらに、水と、シロキサンオリゴマーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子と、を混合することで前記塗布液を調製する調製工程を有する請求項11に記載の親水性膜の製造方法。
  13. 前記調製工程は、さらに前記シロキサンオリゴマーの縮合反応を促進する触媒を混合することで塗布液を調製する請求項12に記載の親水性膜の製造方法。
  14. 基材と、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の親水性膜と、を有する積層体。
  15. 請求項14に記載の積層体を備えた監視カメラ用保護材。
  16. 前記積層体における基材の形状は、半球形状、半楕円体形状、平面形状、角柱形状又は円柱形状である請求項15に記載の監視カメラ用保護材。
  17. 屋外に設置される監視カメラに用いられる請求項15又は請求項16に記載の監視カメラ用保護材。
  18. 請求項15〜請求項17のいずれか1項に記載の監視カメラ用保護材を備えた監視カメラ。
  19. シロキサンバインダーと、平均一次粒子径が2nm以上100nm以下のシリカ粒子と、を含有し、シロキサンバインダーに対するシリカ粒子の比率が質量基準で0.1〜1.8である防曇性膜用組成物。
  20. さらに分散剤を含有する請求項19に記載の防曇性膜用組成物。
  21. さらに増粘剤を含有する請求項19又は請求項20に記載の防曇性膜用組成物。
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