JP2019064867A - 酸化黒鉛の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高品質な酸化黒鉛やその誘導体を簡便に製造することができる方法を提供する。【解決手段】酸化黒鉛を製造する方法であって、該製造方法は、黒鉛を酸化する工程、及び、該酸化工程で得られる酸化黒鉛が分散してなる水系分散液とアミンとを混合した後、ろ過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出からなる群より選択される少なくとも1種の方法により酸化黒鉛を精製する工程を含むことを特徴とする酸化黒鉛の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、酸化黒鉛の製造方法に関する。より詳しくは、触媒、電池やキャパシタの電極活物質、熱電変換材料、導電性材料、発光材料、潤滑油用添加剤、高分子(樹脂)用添加剤、透過膜材料、抗菌材料、撥水材料、吸着材料等として好適に用いることができる、酸化黒鉛やその誘導体の製造方法に関する。
酸化黒鉛は、sp結合で結合した炭素原子が平面的に並んだ層状構造をもつ黒鉛を酸化し、酸素含有官能基を付与したものであり、その特異な構造や物性のために数多くの研究がなされている。酸化黒鉛やその誘導体は、触媒、電池やキャパシタの電極活物質、熱電変換材料、導電性材料、発光材料、潤滑油用添加剤、高分子用添加剤、透過膜材料、抗菌材料、撥水材料、吸着材料等の種々の用途に用いることが期待されている。
酸化黒鉛の製造方法としては、黒鉛を酸溶媒中で強力な酸化剤と作用させることで酸化黒鉛を合成する方法が一般的であり、酸化剤として硫酸と過マンガン酸カリウムを用いるHummers法が知られている(非特許文献1参照)。またその他の方法として、硝酸と塩素酸カリウムを用いるBrodie法、酸化剤として硫酸、硝酸と塩素酸カリウムを用いるStaudenmaier法等が知られている。
酸化黒鉛誘導体の製造方法としては、例えば、pHが2〜10の表面酸化グラファイト材料の水分散液とカチオン性有機化合物とを混合し、それぞれのカチオン同士をイオン交換してグラファイト材料を有機化する工程を含む有機化グラファイト材料の製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
また黒鉛を酸化した後、生成した酸化黒鉛を溶液中から精製する方法として、酸化黒鉛含有組成物に、水に対する溶解度が0.01%以上であって、かつ、水と任意には混和しない溶媒を添加した後、酸化黒鉛含有組成物を分離することが開示されている(特許文献2参照)。
特開2009−242209号公報 国際公開第2017/082263号
William S. Hummers, et.al, Journal of American Chemical Society, 1958, 80, 1339
上記のとおり、酸化黒鉛やその誘導体の製造方法として種々の方法が知られているが、酸化工程で酸化黒鉛を得た後、酸化黒鉛を溶液中から精製することが一般的であり、通常は遠心分離を繰り返して行ったり、反応液をろ過したりする。前者の場合、工程が煩雑になるとともに廃液の量が多くなるといった課題があり、後者の場合、フィルターが目詰まりしやすいという課題があった。いずれの場合も、精製に手間がかかるため、高コスト化し、特に工業的に酸化黒鉛やその誘導体を製造する場合に効率的な生産の面から改善の余地があった。これに対して、特許文献2に記載の方法は、酸化黒鉛の分離をより効率的に行うことが可能となり、高品質な酸化黒鉛やその誘導体を簡便に得ることができるものである。一方、更なる酸化黒鉛やその誘導体の好適な製造方法を開発し、そのバリエーションを増やすことは、酸化黒鉛やその誘導体を工業的に製造する場合にその選択の幅を拡げることになり、大きな技術的意義がある。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものでもあり、高品質な酸化黒鉛やその誘導体を簡便に製造することができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、高品質な酸化黒鉛やその誘導体を簡便に製造することができる方法について種々検討し、酸化工程で得られる酸化黒鉛が分散してなる水系分散液からの酸化黒鉛の精製の際に、水系分散液とアミンとを混合し、その後、ろ過、デカンテーション、遠心分離、又は、分液抽出によって酸化黒鉛を精製すると、アミンの作用によって酸化黒鉛が凝集し、分散性の低い大きな凝集体となるため、例えば水系分散液に対して1、2回の遠心分離を行うことで酸化黒鉛を充分に分離することができたり、水系分散液をろ過してもフィルターの目詰まりが起こりにくい等、精製に要する時間が非常に短くなり、酸化黒鉛を効率的に精製できるようになることを見出した。本発明者らは、このような精製方法により、高品質な酸化黒鉛やその誘導体を低コストで簡便に製造することが可能となることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、酸化黒鉛を製造する方法であって、該製造方法は、黒鉛を酸化する工程、及び、該酸化工程で得られる酸化黒鉛が分散してなる水系分散液とアミンとを混合した後、ろ過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出からなる群より選択される少なくとも1種の方法により酸化黒鉛を精製する工程を含むことを特徴とする酸化黒鉛の製造方法である。
本発明はまた、酸化黒鉛誘導体を製造する方法であって、該製造方法は、黒鉛を酸化する工程、該酸化工程で得られる酸化黒鉛が分散してなる水系分散液とアミンとを混合した後、ろ過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出からなる群より選択される少なくとも1種の方法により酸化黒鉛を精製する工程、及び、該精製工程で精製される酸化黒鉛と、酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物とを反応させて酸化黒鉛誘導体を得る工程を含むことを特徴とする酸化黒鉛誘導体の製造方法でもある。
なお、特許文献2には、上述したように、黒鉛を酸化した後、得られた酸化黒鉛含有組成物に、水に対する溶解度が0.01%以上であって、かつ、水と任意には混和しない溶媒を添加した後、酸化黒鉛含有組成物を分離することが開示されているが、この溶媒としてアミンを用いることの記載は無い。
本発明の酸化黒鉛やその誘導体の製造方法により、高品質な酸化黒鉛やその誘導体を低コストで簡便に得ることができる。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において段落に分けて記載される個々の本発明の好ましい特徴を2つ以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態である。
<酸化黒鉛の製造方法>
酸化黒鉛は、グラフェン、黒鉛(グラファイト)等の黒鉛質の炭素材料を酸化することにより酸素が結合したもの(該炭素材料に酸素が結合したもの)であり、該酸素は黒鉛質の炭素材料に対しカルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の置換基として存在している。
上記酸化黒鉛は、グラフェンの炭素に酸素が結合した酸化グラフェンであることが好ましい。
なお、一般的にグラフェンとは、sp結合で結合した炭素原子が平面的に並んだ1層からなるシートをいい、グラフェンシートが多数積層されたものはグラファイトといわれるが、本発明における酸化グラフェンには、炭素原子1層のみからなるシートだけではなく、2層〜100層程度積層した構造を有するものも含まれる。該酸化グラフェンは、炭素原子1層のみからなるシートであるか、又は、2層〜20層程度積層した構造を有するものであることが好ましい。
上記酸化黒鉛は、更に、硫黄含有基、窒素含有基等の官能基を有していてもよいが、全構成元素に対する炭素、水素、及び、酸素の構成元素としての含有率が97モル%以上であることが好ましく、99モル%以上であることがより好ましく、酸化黒鉛が炭素、水素、及び、酸素のみを構成元素とするものであることが更に好ましい。
以下では、先ず、本発明の酸化黒鉛の製造方法における精製工程に関し、酸化工程で得られる酸化黒鉛が分散してなる水系分散液とアミンとの混合、並びに、ろ過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出からなる群より選択される少なくとも1種の方法による酸化黒鉛の精製について順に説明する。次いで、精製工程前の黒鉛を酸化する工程、精製工程後の酸化黒鉛誘導体を得る工程(本発明の酸化黒鉛誘導体の製造方法)について順に説明する。
(精製工程)
〔水系分散液とアミンとの混合〕
本発明では、酸化工程で得られる酸化黒鉛が分散してなる水系分散液とアミンとを混合する。
混合方法は、特に限定されず、公知の方法で適宜行うことが可能であるが、例えば、撹拌や超音波処理を行ったり、公知の分散機を用いたりして固形分を均一に分散させることが好ましい。
なお、水系分散液とアミンとを混合する際には、例えば、水系分散液にアミンを添加してもよく、アミンに水系分散液を添加してもよく、反応容器に対して水系分散液とアミンとを同時に添加してもよい。
上記アミンは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンのいずれか1種以上であり、また、水溶性、非水溶性のいずれであってもよい。酸化黒鉛は酸性であり、塩基性のアミンと中和反応する。より詳しくは、酸化黒鉛は、非水溶性(疎水性)アミンとは疎水的相互作用し、水溶性アミン(水系分散液でアンモニウムイオンとなる)とは静電的相互作用し、いずれも凝集する。これにより、ろ過等の精製工程を効率的に行うことができ、酸化黒鉛の製造を低コスト化できる。
上記アミンは、脂肪族アミンであってもよく、芳香族アミンであってもよいが、例えば脂肪族アミンであることが好ましい。
上記脂肪族アミンとしては、特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、エイコシルアミン、2−オクチルドデシルアミン、ドコシルアミン、2−オクチルテトラデシルアミン、テトラコシルアミン、2−オクチルヘキサデシルアミン、ヘキサコシルアミン、オクタコシルアミン、トリアコンチルアミン、ドトリアコンチルアミン、テトラトリアコンチルアミン、ヘキサトリアコンチルアミン等のモノアミン化合物、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン化合物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の高次アミン化合物等の1級アミン化合物、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロプルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン等の2級アミン化合物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン等の3級アミン化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
なお、上記アミンを、後述する酸化黒鉛誘導体を得る工程において酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物としてそのまま使用することが可能である。
上記精製工程において水系分散液と混合するアミンの量は適宜設定すればよいが、酸化黒鉛を含む水系分散液中の酸化黒鉛100質量%に対して10〜1000質量%であることが好ましい。本発明では、このように特許文献2に記載の製造方法で使用する溶媒と比較して少量のアミンを用いても、酸化黒鉛を充分に凝集させ、精製工程を効率的に進めることができる。また、アミンの量を1000質量%以下とすることで、混合物(ウェットケーキ)の膨潤を充分に抑制することができる。アミンの量は、より好ましくは、酸化黒鉛を含む水系分散液中の酸化黒鉛100質量%に対して20〜700質量%であり、更に好ましくは30〜600質量%であり、特に好ましくは40〜500質量%である。
上記水系分散液は、酸化工程直後の反応組成物であってもよく、その後の濃縮工程で反応組成物から硫酸を除去したり、酸化反応停止(クエンチ)工程で反応組成物に水を添加したりした液であってもよいが、例えば酸化反応停止工程で反応組成物に水を添加した液であることが好ましい。
なお、水系分散液は、分散媒として水を含有していれば良く、その他に水と混和する有機溶媒を更に含有していてもよいが、酸化黒鉛の凝集し易さの観点から、有機溶媒を含有しないことが好ましい。
本発明の酸化黒鉛の製造方法において、上記水系分散液は、水系分散液100質量%に対して水濃度が20質量%以上であることが好ましい。
上記水濃度は、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、35質量%以上であることが特に好ましい。
このような水濃度の範囲内とすることで、酸化工程等で用いた硫酸存在下であっても、アミンが酸化黒鉛と相互作用して凝集するという意外な作用がより充分に発現し、本発明の効果がより顕著なものになる。
また上記水濃度は、例えば、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
本発明の酸化黒鉛の製造方法において、上記水系分散液は、水系分散液100質量%に対して硫酸イオンを1質量%以上含有することが好ましい。
上記硫酸イオンの含有量は、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、該硫酸イオンの含有量は、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
上記硫酸イオンの含有量又は濃度は、硫酸由来の硫酸イオンと、硫酸塩由来の硫酸イオンとの合計量又は合計濃度である。
更に、上記水系分散液は、pHが2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。pHは、その下限値は特に限定されないが、通常−1以上である。
本発明では、酸化工程等で用いた硫酸等の強酸存在下でも、アミンが酸化黒鉛と相互作用して凝集するという意外な作用が発現し、本発明の効果を発揮できる。
〔ろ過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出からなる群より選択される少なくとも1種の方法による酸化黒鉛の精製〕
上記精製工程において酸化黒鉛を含む水系分散液とアミンとを混合した後、酸化黒鉛を精製する工程は、ろ過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出からなる群より選択される少なくとも1種の方法により行われる。これらの方法を用いることで、酸化黒鉛を効率的に短時間で精製することができる。また、その結果、酸化黒鉛の精製の際に、酸化黒鉛が有する反応性の酸素含有官能基が還元及び/又は不活化されてしまうことを充分に防止でき、高品質な酸化黒鉛を得ることができる。なお、本明細書中、精製工程とは、酸化黒鉛が分散してなる水系分散液から固形不純物(例えば、過マンガン酸塩等の酸化剤等)及び/又は酸化反応時の溶媒(硫酸等の強酸等)を除く工程を言う。
これらの方法の中でも、より好ましくはろ過、分液抽出であり、更に好ましくはろ過である。上記精製工程によれば、アミンの作用により水系分散液中で酸化黒鉛粒子の凝集が促進され、酸化黒鉛粒子が大きな凝集体となり、その結果、水系分散液をろ過してもフィルターの目詰まりが起こりにくく、ろ過に要する時間が非常に短い。このため、酸化黒鉛を精製する方法としてろ過を用いることで、高品質の酸化黒鉛を非常に簡便に得ることができる。
また酸化黒鉛を簡便に得る観点からは、上記精製工程は、上述したうちの2種以下の方法により行われることが好ましく、1種の方法により行われることがより好ましい。また、上記方法は繰り返してもよいが、繰り返すことなく1工程で完了することが好ましい。
上記精製工程は、空気中で行ってもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また、加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下のいずれで行ってもよい。
本発明の製造方法は、ろ過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出からなる群より選択される少なくとも1種の方法により酸化黒鉛を精製した後、水洗等のその他の精製工程や剥離工程等のその他の工程を含んでいてもよいが、簡便に酸化黒鉛を得る観点からはその他の精製工程は行わないことが好ましい。剥離工程は、酸化黒鉛の層を剥離する工程であり、超音波処理やホモジナイザー処理等によって行うことができる。また、該剥離工程は、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒中で好適に行うことができる。
(黒鉛を酸化する工程)
上記黒鉛を酸化する工程は、黒鉛が酸化されることになる限り、その方法は特に制限されず、上述したHummers法、Brodie法、Staudenmaier法等のいずれの方法における黒鉛の酸化方法を用いてもよく、Hummers法における酸化方法を採用した、黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程であってもよい。
上述した黒鉛を酸化する方法では、上記酸化工程は、酸を用いて黒鉛を酸化する。
上記酸化工程が酸を用いて黒鉛を酸化する場合、本発明の製造方法は、精製工程に供される水系分散液中に酸が残留するが、該酸が残留していても、アミンが酸化黒鉛と相互作用して凝集するという意外な作用が発現する。その結果、高品質な酸化黒鉛を簡便に製造することができる。
中でも、上記酸化工程が、黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記酸化工程が黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程である場合、硫酸の使用量は、黒鉛に対する硫酸の質量比(硫酸/黒鉛)が25〜60となる量であることが好ましい。該質量比が25以上であることにより、酸化反応中に反応組成物(混合液)の高粘度化を充分に防止して酸化黒鉛を効率的に製造することができる。また、該質量比が60以下であることにより、廃液量を充分に少なくすることができる。
上記酸化工程に用いる黒鉛は、平均粒子径が3μm以上、80μm以下であることが好ましい。このような平均粒子径のものを用いることで、酸化反応をより効率的に進めることができる。黒鉛の平均粒子径は、より好ましくは3.2μm以上、70μm以下である。
上記平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定した体積基準の平均粒子径を採用することが好ましい。
上記酸化工程に用いる黒鉛の形状は特に制限されず、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。なお、平均粒子径が上述のような範囲の粒子は、例えば、粒子を粉砕機等により粉砕する方法や、粒子をふるい等にかけて粒子径を選別する方法、これら方法の組み合わせのほか、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、所望の粒子径の粒子を得る方法等により製造することが可能である。
上記黒鉛と硫酸とを含む混合液中における黒鉛の含有量は、混合液100質量%に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以上であることが特に好ましい。該黒鉛の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが更に好ましく、6質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の製造方法における酸化工程に用いる黒鉛は、1種のみであってもよく、上記平均粒子径、形状等のいずれかにおいて異なる2種以上のものを用いてもよい。
上記酸化工程が黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程である場合、上記酸化工程で添加する過マンガン酸塩としては、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸銀、過マンガン酸亜鉛、過マンガン酸マグネシウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸バリウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できるが、中でも過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムが好ましく、過マンガン酸カリウムがより好ましい。
上記酸化工程が黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程である場合、上記酸化工程における上記過マンガン酸塩の全添加量は、上記混合液中の黒鉛量100質量%に対し、50〜500質量%であることが好ましい。これにより、酸化黒鉛を安全かつ効率的に製造することができる。なお、酸化剤の全添加量を変化させることで、酸化黒鉛に導入される酸素原子の量を調節することができる。
上記酸化工程が黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程である場合、上記酸化工程では、過マンガン酸塩を一括で添加してもよく、複数回に分けて添加してもよく、また連続的に添加しても良いが、複数回に分けて添加するか連続的に添加することが好ましい。これにより、酸化反応が急激に進行することを抑えて反応の制御をよりしやすくすることができる。
上記過マンガン酸塩を複数回に分けて添加する場合、1回当たりの添加量は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
上記酸化工程が黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程である場合、上記酸化工程では、上記混合液の温度を10〜50℃の範囲内に維持しながら過マンガン酸塩を添加することが好ましい。このような温度範囲に維持することで、酸化反応を制御しながら充分に進行させることができる。
また上記酸化工程が黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程である場合、上記酸化工程は、上記混合液の温度変化を30℃以下に維持しながら過マンガン酸塩を添加する工程であることが好ましい。これにより、より安定的に酸化工程を行うことができる。
上記酸化工程が黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程である場合、上記酸化工程では、安定的に酸化工程を行う観点から、過マンガン酸塩を10分〜10時間の間にわたって添加することが好ましい。
上記酸化工程は、公知の撹拌機等を用いて撹拌しながら行うことが好ましい。
上記酸化工程は、例えば空気中、又は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。また、上記酸化工程は、その圧力条件は特に限定されず、加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下のいずれであってもよいが、例えば常圧条件下で行うことが好ましい。
上記酸化工程は、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。
上記混合液は、黒鉛、硫酸、及び、必要に応じてその他の成分を混合して得ることができる。上記混合は、公知の方法で適宜行うことが可能であるが、例えば、超音波処理を行ったり、公知の分散機を用いたりして黒鉛を均一に分散させることが好ましい。
本発明の酸化黒鉛の製造方法は、上述した黒鉛を酸化する工程と、酸化工程で得られる酸化黒鉛が分散してなる水系分散液から酸化黒鉛を精製する工程との間に、熟成工程、酸化反応停止工程、濃縮工程等のその他の工程を含んでいてもよい。上述したように、例えば、酸化反応停止工程で反応組成物に水を添加した液を精製工程で水系分散液として用いることが好ましい。
上記熟成工程において、酸化工程で得られた反応組成物を熟成させる温度及び時間は適宜選択すればよいが、反応組成物を0〜90℃の温度に維持することが好ましい。
また熟成させる時間は、0.1〜24時間であることが好ましい。
上記酸化反応停止工程は、空気中で行ってもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また真空中で行っても良い。
上記酸化反応停止工程は、例えば、反応組成物の温度を5〜15℃に設定し、反応組成物に水を添加し、次いで還元剤として過酸化水素水を添加して行うことができる。また、反応組成物を、5〜25℃に設定した、水又は過酸化水素水に添加して行ってもよい。
上記酸化反応停止工程の時間は、例えば0.01〜5時間とすることができる。
上記濃縮工程により反応組成物から酸や水を適度に除去することで、酸や水の量を好適な範囲内に調節することができる。この工程は、遠心分離、水等を加え再分散、ろ過、減圧濃縮等の方法を使用して行うことができる。また、これらの工程は繰り返してもよいが、繰り返すことなく1工程で完了することが好ましい。
<酸化黒鉛誘導体の製造方法>
本発明は、酸化黒鉛誘導体を製造する方法であって、該製造方法は、黒鉛を酸化する工程、該酸化工程で得られる酸化黒鉛が分散してなる水系分散液とアミンとを混合した後、ろ過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出からなる群より選択される少なくとも1種の方法により酸化黒鉛を精製する工程、及び、該精製工程で精製される酸化黒鉛と、酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物とを反応させて酸化黒鉛誘導体を得る工程を含むことを特徴とする酸化黒鉛誘導体の製造方法でもある。
本発明の製造方法によれば、酸化黒鉛誘導体を簡便に低コストで得ることができる。また、反応性の酸素含有官能基の数をより充分に維持した酸化黒鉛を酸化黒鉛誘導体を得る工程にて用いることができ、得られる酸化黒鉛誘導体が、所望の官能基を有する基が充分に導入された高品質のものとなる。
(酸化黒鉛誘導体を得る工程)
上記酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物は、例えば、アルコール、シラン化合物、脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、イソシアネート化合物、及び、アミンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、中でもアミンを含むことがより好ましい。なお、シラン化合物は、酸化黒鉛の酸素含有官能基との反応性を良好なものとする観点から、珪素原子と直接結合したシロキシ基及び/又はアルコキシ基を有することが好ましい。
酸化黒鉛誘導体の生成は、赤外線吸収スペクトルを測定することにより確認される。
上記酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物は、酸化黒鉛誘導体の非極性分散媒中での分散性をより向上する観点からは、炭化水素基を有することが好ましい。炭化水素基は、炭素数が5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、7以上であることが更に好ましく、8以上であることが特に好ましい。また、該炭化水素基は、酸化黒鉛誘導体の非極性分散媒中での分散速度を充分に速いものとし、また、酸化黒鉛誘導体を好適に製造する観点からは、炭素数が50以下であることが好ましく、36以下であることがより好ましく、24以下であることが更に好ましい。
上記炭化水素基は、直鎖であることが好ましい。炭化水素基が直鎖であると、直鎖の炭化水素基が酸化黒鉛に導入されやすいため、本発明の製造方法がより効率的なものとなる。
上記炭化水素基は、分岐鎖であることもまた好ましい。上記炭化水素基が分岐鎖であると、酸化黒鉛誘導体の非極性分散媒中での分散性がより向上する。また、原料である化合物が常温(25℃)で液体となる傾向にあり、その場合は、誘導体製造時のハンドリングも容易である。
上記酸化黒鉛誘導体を得る工程において、酸化黒鉛が酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物と反応して修飾される反応と、酸化黒鉛自身の還元反応とが同時進行して競合するところ、還元反応を充分に抑制して酸化黒鉛を修飾する反応を優位的に進める観点からは、上記酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物がアミンを含むことが好ましい。また、アミンは、脂肪族アミンであることがより好ましい。脂肪族アミンとしては特に限定されないが、例えば精製工程において上述したものを好適に使用することができる。
上記酸化黒鉛誘導体を得る工程において、精製工程で得られる酸化黒鉛に、酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物、及び、必要に応じてその他の成分(例えば溶媒)を混合して混合液を得ることができるが、上記精製工程で水系分散液と混合したアミンの少なくとも一部を、上記酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物として用いることが好ましい。これにより、混合したアミンが不純物ではなくなる。
上記酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物の総使用量は、混合液中の酸化黒鉛量100質量%に対し、300〜10000質量%であることが好ましい。該酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物を大過剰に用いることにより、酸化黒鉛誘導体を効率的に製造することができる。また、これにより、還元反応を抑制して酸化黒鉛の修飾反応を優位に進めることができる。
該総使用量は、350質量%以上であることがより好ましく、400質量%以上であることが更に好ましく、450質量%以上であることが一層好ましく、500質量%以上であることが特に好ましい。また、該総使用量は、8000質量%以下であることがより好ましく、6000質量%以下であることが更に好ましく、3000質量%以下であることが一層好ましく、1000質量%以下であることが特に好ましい。
上記精製工程で水系分散液と混合したアミンの少なくとも一部を、酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物としてそのまま用いる場合、精製工程で混合するアミンと、酸化黒鉛誘導体を得る工程で混合するアミンとの合計量が、上記総使用量の範囲内となるようにすることが好ましい。
酸化黒鉛誘導体を得る工程でアミンを混合する場合において、精製工程で混合するアミンと、酸化黒鉛誘導体を得る工程で混合するアミンとの質量比は、例えば1/99〜90/10とすることが好ましく、3/97〜50/50とすることがより好ましく、5/95〜30/70とすることが更に好ましい。
なお、酸化黒鉛と酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物との反応では、公知の触媒を適宜使用してもよいが、酸化黒鉛やアミンを触媒として用いることも可能である。
上記酸化黒鉛誘導体を得る工程における反応温度は、反応が進行する限り特に限定されないが、100℃以上とすることが好ましい。反応温度を100℃以上とすることにより、還元反応を充分に抑制して修飾反応を優位的に進めることができる。また、酸化黒鉛誘導体から共有結合性の硫黄を除去することもできる。該反応温度は、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。
また、副反応を抑制する観点からは、反応温度を200℃以下とすることが好ましい。
上記酸化黒鉛誘導体を得る工程における反応時間は、例えば1時間以上であることが好ましく、3時間以上であることがより好ましく、5時間以上であることが更に好ましい。該反応時間は、還元反応を充分に抑制しつつ修飾反応を優位的に進める観点からは、120時間以下であることが好ましく、100時間以下であることがより好ましく、80時間以下であることが更に好ましい。
上記反応工程は、公知の撹拌機等を用いて撹拌しながら行うことができる。
上記反応工程は、例えば空気中、又は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。また、上記反応工程は、その圧力条件は特に限定されず、加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下で行うことができるが、例えば常圧条件下で行うことが好ましい。
上記反応工程は、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒中で好適に行うことができる。
本発明の酸化黒鉛誘導体の製造方法は、上記酸化工程と上記酸化黒鉛誘導体を得る工程との間に、上記した特定の精製工程以外の精製工程や乾燥工程を含んでいてもよいが、含まないことが好ましく、これにより簡便に酸化黒鉛誘導体を得ることができ、特に本発明の製造方法を工業的に行った場合にメリットが大きい。
また本発明の酸化黒鉛誘導体の製造方法は、上記酸化黒鉛誘導体を得る工程の後、更にその他の精製工程や濃縮工程、乾燥工程を更に含んでいてもよい。その他の精製工程としては、水洗やその後のろ過等が挙げられる。
本発明の製造方法により得られる酸化黒鉛誘導体は、酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物由来の官能基(好ましくは、炭化水素基をもつ官能基)を有する。該官能基は、特に限定されず、アルコキシカルボニル基(−COOR)、アルコキシル基(−OR)等の酸素含有基;硫黄含有基;アルキルアミノ基(−NHR、−NRR’)、アルキルアミド基(−CONHR、−CONRR’)等の窒素含有基;リン含有基等が挙げられるが、アルコキシカルボニル基(−COOR)、アルコキシル基(−OR)等の酸素含有基、アルキルアミノ基(−NHR、−NRR’)、アルキルアミド基(−CONHR、−CONRR’)等の窒素含有基であることが好ましい。なお、上記R及びR’は、同一又は異なって、有機基を表し、中でも、炭化水素基を表すことが好ましい。
(本発明の酸化黒鉛誘導体)
本発明の酸化黒鉛誘導体は、酸化黒鉛の炭素原子に、酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物由来の基をもつ官能基が結合した構造を有する。本発明の酸化黒鉛誘導体は、例えば、末端に炭化水素基をもつ官能基を有することが好ましい。本発明の製造方法により得られる、炭化水素基をもつ官能基を有する酸化黒鉛誘導体は、炭化水素基同士の相互作用により、結晶性が高いものとなる。なお、上記製造方法では、炭化水素基の炭素数が多いほど、得られる酸化黒鉛誘導体の結晶性がより高いものとなる傾向があるが、炭化水素基の炭素数が少なくても、酸化黒鉛に導入される炭化水素基の数を充分に多いものとすることができ、高品質の酸化黒鉛誘導体を得ることができる。
なお、本発明の酸化黒鉛誘導体の生成は、赤外線吸収スペクトルを測定することにより確認される。
本発明は、硫黄含有率が0.1質量%以下である酸化黒鉛誘導体でもある。例えば未精製の酸化黒鉛層間に酸化黒鉛の製造上必須である硫酸が存在するところ、これを本発明の酸化黒鉛誘導体の製造方法で用いるアミンにより中和して除去することができる。また、上述したように、酸化黒鉛誘導体を得る工程において高温で反応させることで、共有結合性の硫黄を除去することができる。
本発明の酸化黒鉛誘導体は、硫黄含有率が0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましい。
本発明における酸化黒鉛誘導体は、窒素含有率が0.1質量%以上であることが好ましい。該窒素含有率は、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましい。本発明の製造方法により得られる酸化黒鉛誘導体は、窒素を含有することが1つの特徴である。
上記硫黄含有率や窒素含有率は、X線光電子分光分析(XPS)により測定することができる。
上記酸化黒鉛誘導体は、平均粒子径が0.01μm以上、100μm以下であることが好ましい。
上記平均粒子径は、0.1μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、3μm以上であることが更に好ましい。該平均粒子径は、60μm以下であることがより好ましい。
上記平均粒子径は、レーザー顕微鏡による目視観察(個数基準)により測定することができる。
上記酸化黒鉛誘導体の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。なお、平均粒子径が上述のような範囲の粒子は、例えば、粒子をボールミル等により粉砕し、該粉砕により得られた粗粒子を分散剤に分散させて所望の粒子径にした後に乾固する方法や、粒子をふるい等にかけて粒子径を選別する方法、これら方法の組み合わせのほか、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、所望の粒子径の(ナノ)粒子を得る方法等により製造することが可能である。
本発明の酸化黒鉛や酸化黒鉛誘導体は、触媒、電池やキャパシタの電極活物質、熱電変換材料、導電性材料、発光材料、潤滑用添加剤、高分子用添加剤、透過膜材料、抗菌材料、撥水材料、吸着材料等として好適に用いることができる。
なお、上記電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池、固体高分子型燃料電池、金属−空気電池等が挙げられる。
上記熱電変換材料が用いられる熱電変換装置としては、例えば、地熱・温泉熱発電機、太陽熱発電機、工場や自動車等の廃熱発電機、体温発電機等の発電機や、該発電機を電源の少なくとも一つとして用いた各種電気製品、電動機、人工衛星等が挙げられる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
<XPS(X線光電子分光分析)の評価方法>
XPS測定は、光電子分光装置(JPS−9000MX、日本電子株式会社製)を用いて行い、C1s、O1s、N1s、S2pの分析を行いそれぞれの合計が100%として各元素の比率を測定した。
<酸化黒鉛水系分散液の合成>
(合成例1)
酸化黒鉛を以下の工程で合成した。反応容器にあらかじめ黒鉛(伊藤黒鉛株式会社製Z−5F)15g、硫酸(和光純薬工業社製)640gを入れ、30℃に調整しながら過マンガン酸カリウム(和光純薬工業社製)45gを入れた。投入後、30分、35℃に昇温し2時間反応させた。反応後反応液を水1070ml、30%過酸化水素水(和光純薬工業社製)42mlを加え反応停止させ、酸化黒鉛水系分散液1(水総質量1812g、原料黒鉛換算濃度0.83%、水濃度61%、硫酸イオン濃度36%)を得た。
(合成例2)
上記製法で得られた酸化黒鉛水系分散液1から10gとり、さらに水を350g加え酸化黒鉛水系分散液2とした(硫酸イオン濃度1%)。
<精製効率の評価>
(実施例1)
上記製法で得られた酸化黒鉛水系分散液1(100g)に原料黒鉛に対し0.5質量当量の2−エチルヘキシルアミン(和光純薬工業社製)を投入し凝集させた。数分撹拌の後、ろ過したところ、ろ過性は非常に良好(30分以内にろ過が完了)であった。
(実施例2)
酸化黒鉛水系分散液1(100g)の代わりに酸化黒鉛水系分散液2(100g)を用いた以外は実施例1に記載の方法と同様にろ過性を確認したところ、ろ過性は良好であった。
(実施例3)
アミンとして原料黒鉛に対し0.5質量当量の2−エチルヘキシルアミン(和光純薬工業社製)の代わりに同当量のエチレンジアミン(和光純薬工業社製)を用いた以外は実施例1に記載の方法と同様にろ過性を確認したところ、ろ過性は良好であった。
(実施例4)
酸化黒鉛水系分散液1(100g)の代わりに酸化黒鉛水系分散液2(100g)を用いた以外は実施例3に記載の方法と同様にろ過性を確認したところ、ろ過性は良好であった。
(実施例5)
アミンとして原料黒鉛に対し0.5質量当量の2−エチルヘキシルアミン(和光純薬工業社製)の代わりに同当量のヘキサメチレンジアミン(和光純薬工業社製)を用いた以外は実施例1に記載の方法と同様にろ過性を確認したところ、ろ過性は良好であった。
(実施例6)
酸化黒鉛水系分散液1(100g)の代わりに酸化黒鉛水系分散液2(100g)を用いた以外は実施例5に記載の方法と同様にろ過性を確認したところ、ろ過性は良好であった。
(比較例1)
用いる凝集剤として原料黒鉛に対し0.5質量当量の2−エチルヘキシルアミン(和光純薬工業社製)の代わりに同当量の1−ブタノール(和光純薬工業社製)を用いた以外は実施例1に記載の方法と同様にろ過性を確認したところ、ろ過性は非常に悪く、ろ紙が詰まり、ろ過不可能であった。
(比較例2)
酸化黒鉛水系分散液1(100g)の代わりに酸化黒鉛水系分散液2(100g)を用いた以外は比較例1に記載の方法と同様にろ過性を確認したところ、ろ過性は非常に悪く、ろ紙が詰まり、ろ過不可能であった。
(比較例3)
酸化黒鉛水系分散液1(100g)に1−ブタノールを原料黒鉛に対し30質量当量投入し凝集させた。数分撹拌の後、ろ過したところ、ろ過性は非常に良好(30分以内にろ過が完了)であった。
1−ブタノールにより凝集させるには非常に多量の1−ブタノールが必要であることが分かる。
<酸化黒鉛誘導体の合成>
(実施例7)
実施例1と同様の操作で得られた酸化黒鉛含有ウエットケーキ(原料黒鉛1g相当分)にN−メチルピロリドン(和光純薬工業社製)200g、2−エチルヘキシルアミン5gを加え、ホモジナイザー処理により酸化黒鉛を分散させた。その後撹拌しながら120℃で5時間反応させた。反応後、水を200g投入しろ過したのち、ろ過ウエットケーキを水、メタノールで洗浄し、乾燥させることで酸化黒鉛誘導体Aを1.5g得た。得られた酸化黒鉛誘導体Aは2−プロパノール等の有機溶媒に非常に良好に分散した。またXPS測定により求められたC,O,N,S量はそれぞれ85.93%、8.56%、5.51%、0%であった。
(実施例8)
実施例2と同様の操作で得られた酸化黒鉛含有ウエットケーキ(原料黒鉛1g相当分)を使用した以外は実施例7に記載の方法と同様にして、酸化黒鉛誘導体Bを1.5g得た。得られた酸化黒鉛誘導体Bは2−プロパノール等の有機溶媒に非常に良好に分散した。
(比較例4)
比較例3と同様の操作で得られた酸化黒鉛含有ウエットケーキ(原料黒鉛1g相当分)を使用した以外は実施例7に記載の方法と同様にして、酸化黒鉛誘導体Cを1.4g得た。得られた酸化黒鉛誘導体Cは2−プロパノール等の有機溶媒に非常に良好に分散した。しかしながら実施例7と比較して反応性が低いため、得られた酸化黒鉛誘導体の量が少なかった。またXPS測定により求められたC,O,N,S量はそれぞれ86.45%、10.21%、3.11%、0.24%であった。反応性が低いため実施例7と比較してN量が少なく、未除去のS量も多いことが分かる。
上述した実施例はろ過により酸化黒鉛を精製するものであるが、酸化黒鉛がアミンにより凝集し、分散性の低い大きな凝集体となれば、ろ過に限られず、デカンテーション、遠心分離、分液抽出も効率的に行うことができることは明らかである。

Claims (8)

  1. 酸化黒鉛を製造する方法であって、
    該製造方法は、黒鉛を酸化する工程、及び、
    該酸化工程で得られる酸化黒鉛が分散してなる水系分散液とアミンとを混合した後、ろ過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出からなる群より選択される少なくとも1種の方法により酸化黒鉛を精製する工程を含むことを特徴とする酸化黒鉛の製造方法。
  2. 前記水系分散液は、水系分散液100質量%に対して硫酸イオンを1質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の酸化黒鉛の製造方法。
  3. 前記水系分散液は、水系分散液100質量%に対して水濃度が20質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化黒鉛の製造方法。
  4. 酸化黒鉛誘導体を製造する方法であって、
    該製造方法は、黒鉛を酸化する工程、
    該酸化工程で得られる酸化黒鉛が分散してなる水系分散液とアミンとを混合した後、ろ過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出からなる群より選択される少なくとも1種の方法により酸化黒鉛を精製する工程、及び、
    該精製工程で精製される酸化黒鉛と、酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物とを反応させて酸化黒鉛誘導体を得る工程を含むことを特徴とする酸化黒鉛誘導体の製造方法。
  5. 前記酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物は、アミンを含むことを特徴とする請求項4に記載の酸化黒鉛誘導体の製造方法。
  6. 前記精製工程で水系分散液と混合したアミンの少なくとも一部を、前記酸化黒鉛の酸素含有官能基と反応する化合物として用いることを特徴とする請求項5に記載の酸化黒鉛誘導体の製造方法。
  7. 硫黄含有率が0.1質量%以下であることを特徴とする酸化黒鉛誘導体。
  8. 窒素含有率が0.1質量%以上であることを特徴とする請求項7に記載の酸化黒鉛誘導体。
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