化粧板
以下、図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る化粧板10について説明する。図1は、化粧板10の平面図であり、図2は、図1中の符号Rで示される領域の拡大図であり、図3は、図2のA−A線断面図であり、図4は、図2のB−B線断面図である。
図1〜図4に示すように、化粧板10は、互いに直交する第1方向X、第2方向Y及び厚み方向Zを有する。本実施形態では、第1方向Xが化粧板10の長手方向に相当し、第2方向Yが化粧板10の短手方向に相当するが、第1方向Xが化粧板10の短手方向に相当し、第2方向Yが化粧板10の長手方向に相当してもよい。
図1〜図4に示すように、化粧板10は、第1面S10と、第1面S10の反対側に位置する第2面T10とを有する。
図3及び図4に示すように、化粧板10は、コア層1と、コア層1上に設けられた化粧シート2と、化粧シート2上に設けられた表面層3とを備える。
コア層
コア層1は、化粧板の分野で一般的に使用されているコア層と同様に構成することができる。コア層1は、例えば、多孔質基材と、多孔質基材の空隙に充填された熱硬化性樹脂の硬化物とを有する。
多孔質基材としては、例えば、繊維シート等が挙げられる。繊維シートとしては、例えば、紙、不織布、織布等が挙げられる。紙としては、例えば、チタン紙、薄葉紙、クラフト紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、紙にポリ塩化ビニル樹脂をゾルコート又はドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反、上質紙、コート紙、パーチメント紙、和紙等が挙げられる。その他の繊維シートとしては、例えば、ガラス繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機繊維で構成されるシート;ポリエステル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維で構成されるシート等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化性ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
コア層1の前駆層としては、例えば、熱硬化性樹脂含浸シートを使用することができる。コア層1は、例えば、熱硬化性樹脂含浸シートを加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させることにより形成することができる。熱硬化性樹脂含浸シートとしては、例えば、メラミン化粧板のコア紙として汎用されているフェノール樹脂含浸紙等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂含浸シートをその他の層(例えば、化粧シート2等)と共に熱圧成形する工程において硬化させることができる。
フェノール樹脂含浸紙は、例えば、コア紙として坪量150g/m2以上250g/m2以下のクラフト紙にフェノール樹脂を含浸率45%以上60%以下となるように含浸し、100℃以上140℃以下で乾燥させることにより製造することができる。市販のフェノール樹脂含浸紙を使用してもよい。
熱硬化性樹脂含浸シートは、ガラスクロス又はガラス不織布を基材とするプリプレグであってもよい。プリプレグは、例えば、熱硬化性樹脂をガラスクロス又はガラス不織布に含浸させることにより製造することができる。
コア層1の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは300μm以上1750μm以下、さらに好ましくは300μm以上1400μm以下である。
化粧板10は、必要に応じて、コア層1の一方の面又は両方の面に積層された補強層を有していてもよい。例えば、コア紙の黒褐色の色調が化粧板10の表面から透視されることを隠蔽するために、チタン白顔料を混抄したチタン紙からなるバリアー紙を、コア層1と支持層21との間に積層することができる。また、熱圧成形の際に生じる化粧板10の反りを相殺するために、チタン紙からなるバランス紙等を、コア層1の裏面(コア層1の第2面T10側の面)に積層することができる。これらの補強層は、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含む未硬化状態の樹脂組成物を含浸した上で、その他の層(例えば、コア層1、化粧シート2等)と共に熱圧成形することにより、その他の層と一体化することができる。
化粧シート
図3及び図4に示すように、化粧シート2は、第1面S21及び第1面S21の反対側に位置する第2面T21を有する支持層21と、支持層21の第1面S21の一部に設けられた離型層22とを備える。
支持層
図3及び図4に示すように、支持層21は、紙質基材211と、支持層21の第1面S21を形成する被覆層212と、紙質基材211と被覆層212との間に位置する装飾層213とを備える。
紙質基材
紙質基材211は、化粧板又は化粧紙の分野において一般的に使用されている原紙の中から適宜選択することができる。紙質基材211としては、例えば、チタン紙、薄葉紙、クラフト紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等が挙げられる。
紙質基材211の坪量は適宜調整することができるが、好ましくは30g/m2以上200g/m2以下、さらに好ましくは40g/m2以上150g/m2以下である。
紙質基材211の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは30μm以上200μm以下、さらに好ましくは50μm以上170μm以下である。
紙質基材211は、無機成分を含むことが好ましい。紙質基材211に含まれる無機成分は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。無機成分を含む紙質基材211は、例えば、抄造工程において、紙の原料に無機成分を配合し、紙に無機成分を抄き込むことにより製造することができる。
無機成分は、化粧板又は化粧紙の分野において一般的に使用されている無機成分の中から適宜選択することができる。無機成分としては、例えば、無機充填剤(無機フィラー)、無機顔料等が挙げられる。
無機充填剤としては、例えば、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。
無機成分は、例えば、無機粒子である。無機粒子の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上10μm以下である。なお、平均粒径は、レーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
無機成分は、好ましくは酸化チタンである。酸化チタンを含む紙は、チタン紙と呼ばれる。紙質基材211に含まれる酸化チタンの量を増加させるほど、紙質基材211に対する電離放射線硬化性樹脂及びメラミン樹脂の未硬化物の浸透性を向上させることができる。
紙質基材211に含まれる無機成分の量は、無機成分の種類等に応じて適宜調整することができる。紙質基材211に含まれる酸化チタンの量は、紙質基材211の総質量を基準として、好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上40質量%以下である。なお、紙質基材211の総質量は、紙質基材211の乾燥時の総質量(すなわち、紙質基材211中の固形分の総質量)を意味する。
被覆層
被覆層212は、装飾層213上に設けられており、支持層21の第1面S21を形成している。被覆層212は、支持層21の第1面S21の一部を形成していてもよいが、支持層21の第1面S21の全体を形成していることが好ましい。
被覆層212は、カゼインを、被覆層212の総質量を基準として35質量%以上85質量%以下の量で含む。これにより、紙質基材211に対するメラミン樹脂の未硬化物の浸透を阻害することなく、紙質基材211に対する電離放射線硬化性樹脂の浸透を抑制することができる。被覆層212に含まれるカゼインの量は、被覆層212の総質量を基準として、好ましくは40質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上60質量%以下である。なお、被覆層212の総質量は、被覆層212の乾燥時の総質量(すなわち、被覆層212中の固形分の総質量)を意味する。
カゼインとしては、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン又はそれらの混合物を使用することができる。
被覆層212は、アクリル樹脂エマルジョン(水性アクリル樹脂)の乾燥物を含むことが好ましい。被覆層212に含まれるアクリル樹脂エマルジョンの乾燥物の量は、被覆層212の総質量を基準として、好ましくは15質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下、さらに一層好ましくは40質量%以上60質量%以下である。なお、被覆層212の総質量は、被覆層212の乾燥時の総質量(すなわち、被覆層212中の固形分の総質量)を意味する。
アクリル樹脂エマルジョンに含まれるアクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマー類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ)ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルモノマー類、スチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等の芳香族系モノマー類、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の二塩基酸ジエステルモノマー類、アクリロニトリル、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル等のモノマー類又はこれらの混合物を共重合して得られる樹脂が挙げられる。
モノマー類の混合物の共重合は、例えば、乳化重合により実施することができる。モノマー類の混合物を乳化重合することにより、アクリル樹脂エマルジョンを得ることができる。乳化重合は、例えば、乳化剤の存在下、水中で行うことができる。乳化剤としては、例えば、オレイン酸カリウム、ラウリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン性乳化剤、及び、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸アンモニウム、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等の反応性乳化剤が挙げられる。乳化重合における重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、パーオキシエステル類等の過酸化物等の水溶性重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤と併用してもよい。分子量調整のために、n−ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤を使用してもよい。
アクリル樹脂エマルジョンに含まれるアクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは50000以上300000以下、さらに好ましくは50000以上200000以下である。なお、「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に用いて測定される値である。
アクリル樹脂エマルジョンに含まれるアクリル樹脂の量は、アクリル樹脂エマルジョンの総質量を基準として、好ましくは15質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下、さらに一層好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
アクリル樹脂エマルジョンに含まれる水性溶媒としては、例えば、水、アルコール系溶媒等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。水性溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アクリル樹脂エマルジョンのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−30℃以上70℃以下、さらに好ましくは−30℃以上50℃以下である。アクリル樹脂エマルジョンとしては、Tgが−30℃以上10℃以下のアクリル樹脂エマルジョン(A)と、Tgが10℃以上50℃以下のアクリル樹脂エマルジョン(B)との混合物を使用することが好ましい。アクリル樹脂エマルジョン(A)は、主として粘度調整に関与し、アクリル樹脂エマルジョン(B)は、主として被膜形成に関与する。なお、アクリル樹脂エマルジョン(A)及び(B)は、それぞれ単独で使用してもよい。アクリル樹脂エマルジョン(A)とアクリル樹脂エマルジョン(B)との混合比(アクリル樹脂エマルジョン(A)の質量:アクリル樹脂エマルジョン(B)の質量)は、好ましくは2:1〜1:15、さらに好ましくは2:1〜1:10である。なお、Tgは、モノマー混合物中の各モノマーのホモポリマーのTgと組成比から計算によって求めることができる。
被覆層212の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは1μm以上20μm以下、さらに好ましくは1μm以上5μm以下である。
装飾層
装飾層213は、紙質基材211上に設けられており、紙質基材211と被覆層212との間に位置している。なお、装飾層213は必要に応じて設けられる層であり、本発明には、装飾層213が省略された実施形態も包含される。装飾層213が省略された実施形態において、被覆層212は、紙質基材211上に設けられる。
装飾層213は、化粧板10に装飾性(意匠性)を付与する。装飾層213は、例えば、着色層、絵柄層又はこれらの組み合わせである。
着色層は、化粧板10に所望の色を付与する。着色層は、例えば、紙質基材211の第1面S21側の表面全体に形成された全面ベタ層である。着色層の色は、通常、不透明色であるが、紙質基材211等の下地の色又は模様を活かす場合には、透明色であってもよい。また、紙質基材211等の下地の色又は模様を活かす場合には、着色層を形成しなくてもよい。
絵柄層は、化粧板10に所望の模様を付与する。絵柄層は、例えば、紙質基材211の第1面S21側の表面の一部又は全体あるいは着色層の第1面S21側表面の一部又は全体に形成された印刷層である。模様層を構成する模様としては、例えば、年輪断面の春材領域及び秋材領域、導管部等から構成される木目模様、レザー(皮シボ)模様、大理石、花崗岩、砂岩等の石材表面の石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
本実施形態における装飾層213は、図1に示すように、化粧板10に木目模様を付与する。
装飾層213の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは0.1μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下である。
離型層
離型層22は、支持層21の第1面S21の一部に設けられている。支持層21の第1面S21のうち、離型層22が設けられる領域は、連続した1つの領域であってもよいし、不連続な複数の領域であってもよい。離型層22は、連続した1つの層で構成されていてもよいし、不連続な複数の層で構成されていてもよい。離型層22が連続した1つの層で構成される場合、離型層22の厚みは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。離型層22が不連続な複数の層で構成される場合、各層の厚みは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。離型層22が不連続な複数の層で構成される場合、ある層の厚みと別の層の厚みは同一であってもよいし、異なっていてもよい。離型層22の厚みは適宜調整することができるが、好ましくは0.1μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下である。
離型層22は、支持層21の第1面S21に所定のパターン(模様状)で形成されていることが好ましく、装飾層213が形成する絵柄模様のうち視覚的に凹部又は低光沢(艷消)としたい領域と位置同調したパターンで形成されていることがさらに好ましい。離型層22が形成するパターンとしては、例えば、装飾層213が木目模様の場合は木目板の導管部、春材領域等の凹部又は低光沢領域、石目模様の場合はトラバーチン大理石板の凹陥部、花崗岩板の劈開面の凹部等の石板表面凹凸、布目模様の場合は布表面テクスチャア、レザー模様の場合は皮シボの皺形状、タイル貼模様や煉瓦積模様の場合は目地凹部、其の他、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝、文字、記号、幾何学模様等のパターンが挙げられる。
離型層22は、電離放射線硬化性樹脂を含む組成物(離型層形成用組成物)の硬化により形成された層であり、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む。なお、離型層形成用組成物としては、通常、電離放射線硬化性樹脂を含む液状組成物が使用される。
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線としては、例えば、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等が挙げられるが、好ましくは、紫外線、電子線等である。
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合、エポキシ基等を分子中に有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー等の1種以上を使用することができる。特に、多官能モノマー及びオリゴマーの1種以上を使用することが好ましい。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂、シロキサン等のケイ素樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
重合性モノマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。特に、多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用してもよい。
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系等が挙げられる。また、重合性オリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーとしては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、離型層形成用組成物を支持層21に塗布する際、離型層形成用組成物が支持層21へ浸み込みにくいので、離型層形成用組成物の塗膜を形成しやすい。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、離型層形成用組成物の粘度を、塗布に適した粘度に調整しやすい。
なお、「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に用いて測定される値である。
電離放射線硬化性樹脂は、重量平均分子量が500以上である多官能モノマー及びオリゴマーから選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような多官能モノマー又はオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂が挙げられる。
離型層形成用組成物は、必要に応じて、電離放射線硬化性樹脂の硬化反応に関与する成分、例えば、光重合開始剤(増感剤)を含んでもよい。例えば、紫外線の照射により電離放射線硬化性樹脂を硬化させる場合、離型層形成用組成物は光重合開始剤(増感剤)を含むことが好ましい。なお、電離放射線硬化性樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するので、電子線の照射により電離放射線硬化性樹脂を硬化させる場合、離型層形成用組成物は光重合開始剤(増感剤)を含まなくてもよい。
電離放射線硬化性樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種を使用することができる。また、電離放射線硬化性樹脂がカチオン重合性官能基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種を使用することができる。
離型層形成用組成物に含まれる光重合開始剤の量は特に限定されないが、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、通常0.1質量部以上10質量部以下である。
離型層22は、必要に応じて、溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)、熱硬化性樹脂等を含んでもよい。
離型層形成用組成物に溶剤乾燥型樹脂を添加することにより、離型層22を形成する際に、離型層形成用組成物の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。溶剤乾燥型樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用することができ、熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
離型層22は、シリコーン系離型剤を含んでもよい。離型層22に含まれるシリコーン系離型剤は、離型層形成用組成物に添加されるシリコーン系離型剤(シリコーンオイル)に由来する。離型層形成用組成物に添加されるシリコーン系離型剤は、反応性シリコーン系離型剤であってもよいし、非反応性シリコーン系離型剤であってもよい。離型層形成用組成物に添加されるシリコーン系離型剤が反応性シリコーン系離型剤である場合、シリコーン系離型剤は、離型層22のその他の成分(例えば、硬化性樹脂の硬化物等)と結合した状態で離型層22に含まれ得る。シリコーン系離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とし、側鎖及び/又は末端に有機基が導入された変性シリコーンである。有機機が導入される末端は、片方の末端であってもよいし、両方の末端であってもよい。
反応性シリコーン系離型剤は、側鎖及び/又は末端に有機基が導入された変性シリコーンのうち、導入する有機基の性質によって反応性を有するものをいう。反応性シリコーン系離型剤としては、例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、異種官能基変性シリコーン等が挙げられる。より具体的には、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、メルカプト変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、カルビノール変性ポリジメチルシロキサン、フェノール変性ポリジメチルシロキサン、メタクリル変性ポリジメチルシロキサン、異種官能基変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。反応性シリコーン系離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
非反応性シリコーン系離型剤は、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイル基、アリル基等の反応性官能基を有しないシリコーンであれば特に制限されない。非反応性シリコーン系離型剤としては、例えば、ポリシロキサンからなるシリコーンのほか、ポリエーテル変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、フロロアルキル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、高級脂肪酸アミド変性シリコーン、フェニル変性シリコーン等が挙げられる。より具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン、フロロアルキル変性ポリジメチルシロキサン、長鎖アルキル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸アミド変性ポリジメチルシロキサン、フェニル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。非反応性シリコーン系離型剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
シリコーン系離型剤として、ポリエーテル変性シリコーンを使用することが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンは、主鎖がポリシロキサンであり、1個以上のポリオキシアルキレン基を置換基として有するものである。主鎖は環を形成していてもよい。
ポリエーテル変性シリコーンにおけるポリオキシアルキレン基の結合位置は、任意の適切な結合位置であり得る。例えば、ポリオキシアルキレン基は、主鎖の両末端に結合されていてもよいし、主鎖の片末端に結合されていてもよいし、側鎖に結合されていてもよい。ポリエーテル変性シリコーンは、ポリオキシアルキレン基が側鎖に結合された側鎖型ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
側鎖型ポリエーテル変性シリコーンは、例えば、一般式(1)で表される。
一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を表し、R1は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R2は水素原子又は炭素数1〜15のアルキル基を表し、R3は−(C2H4O)a−(C3H6O)b−で表されるポリオキシアルキレン基であり、aは1〜50であり、bは0〜30であり、mは1〜7000であり、nは1〜50である。
一般式(1)中、Rは、好ましくはメチル基である。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、信越シリコーン(株)製の商品名「KF−6011」(HLB:14.5)、「KF−6011P」(HLB:14.5)、「KF−6012」(HLB:7.0)、「KF−6013」(HLB:10.0)、「KF−6015」(HLB:4.5)、「KF−6016」(HLB:4.5)、「KF−6017」(HLB:4.5)、「KF−6017P」(HLB:4.5)、「KF−6043」(HLB:14.5)、「KF−6004」(HLB:9.0)、「KF351A」(HLB:12)、「KF352A」(HLB:7)、「KF353」(HLB:10)、「KF354L」(HLB:16)、「KF355A」(HLB:12)、「KF615A」(HLB:10)、「KF945」(HLB:4)、「KF−640」(HLB:14)、「KF−642」(HLB:12)、「KF−643」(HLB:14)、「KF−644」(HLB:11)、「KF−6020」(HLB:4)、「KF−6204」(HLB:10)、「X22−4515」(HLB:5)等の側鎖型(直鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越シリコーン(株)製の商品名「KF−6028」(HLB:4.0)、「KF−6028P」(HLB:4.0)等の側鎖型(分岐鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越シリコーン(株)製の商品名「KF−6038」(HLB:3.0)等の側鎖型(分岐鎖タイプ、アルキル共変性タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
表面層
図2〜図4に示すように、表面層3は、支持層21の第1面S21の残部に設けられており、離型層22の一部又は全体を囲繞する。支持層21の第1面S21の残部は、支持層21の第1面S21のうち、離型層22が形成されていない領域を意味する。支持層21の第1面S21のうち、表面層3が形成される領域は、第1面S21の残部の全体であってもよいし、第1面S21の残部の一部であってもよい。支持層21の第1面S21のうち、表面層3が形成される領域は、連続した1つの領域であってもよいし、不連続な複数の領域であってもよい。表面層3は、連続した1つの層で構成されていてもよいし、不連続な複数の層で構成されていてもよい。表面層3が連続した1つの層で構成される場合、表面層3の厚みは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。表面層3が不連続な複数の層で構成される場合、各層の厚みは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。表面層3が不連続な複数の層で構成される場合、ある層の厚みと別の層の厚みは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
支持層21の第1面S21のうち、表面層3が形成される領域の面積(Sa)と、離型層22が形成される面積(Sb)との比(Sa:Sb)は、好ましくは3:7〜9:1、さらに好ましくは5:5〜8:2である。面積比が上記範囲内であると、化粧板10によって表現される凹凸形状の意匠感がより鮮明となる。
図2〜図4に示すように、表面層3は、離型層22の表面S22を露出させる開口部30を有する。支持層21の第1面S21は、被覆層212により形成されているので、離型層形成用組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の紙質基材211への浸透が抑制される。したがって、離型層形成用組成物の塗膜の厚み及び離型層22の厚みを所望の範囲に調整することができる。これにより、表面層3の前駆層CLのうち、離型層22を被覆する部分CL1の厚みを所望の範囲に調整することができ、工程(5)において、離型層22を被覆する部分CL1が剥離されずに離型層22上に残存することを防止することができる。
表面層3の開口部30は、平面視において、離型層22と位置同調している。本発明において、「位置同調」とは、平面視において、表面層3の開口部30の少なくとも一部が、離型層22の少なくとも一部と重なっていることを意味する。表面層3の開口部30は、平面視において離型層22と重ならない部分を有していてもよいが、表面層3の開口部30の全体が、離型層22の少なくとも一部と重なっていることが好ましい。離型層22は、平面視において表面層3の開口部30と重ならない部分を有していてもよい。
なお、本発明において、「平面視」とは、対象となる部材又は部分を、化粧板10の厚み方向Zから観察することを意味する。例えば、図3及び図4において、同図に向かって上方から下方を見降ろすことを意味する。また、「平面視」は、対象となる部材又は部分がその他の部材又は部分に隠れて実際には観察できない場合であっても観察できるものとして取り扱う仮想的な概念である。すなわち、「平面視」は、対象となる部材又は部分を、化粧板10の厚み方向Zに対して垂直な仮想平面に投影することに相当する。
図2〜図4に示すように、表面層3の開口部30は、化粧板10の第1面S10に凹部4を形成しており、凹部4の底面は、離型層22の表面S22により形成されている。
凹部4の深さは、好ましくは0.1μm以上50μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上30μm以下である。凹部4の深さが上記範囲内であると、化粧板10が表現する凹凸形状の意匠感が鮮明となる。
凹部4の深さは、化粧板10の第1面S10のうち、離型層22が形成されていない領域(表面層3が形成されている領域)と、離型層22が形成されている領域との高低差として測定される。測定は、株式会社小坂研究所製 三次元表面粗さ測定器SE−30Kを使用して、JIS B 0601:2013に規定された方法に従って実施される。表面の最大高さ粗さ(Rz)を高低差のパラメ−タ−として使用し、10箇所の平均値を「高低差」とする。
図2〜図4に示すように、化粧板10の第1面S10のうち、凹部4に隣接する領域(表面層3の表面S3により形成される領域)は、相対的に凸部となっており、化粧板10の第1面S10には、凹凸形状が形成されている。化粧板10の第1面S10のうち、凹部4の底面(離型層22の表面S22)により形成される領域は相対的に粗面となり、入射光に対して拡散反射性を有する低光沢領域となる一方、化粧板10の第1面S10のうち、凹部4に隣接する領域(表面層3の表面S3により形成される領域)は相対的に鏡面となり、入射光に対して鏡面反射性を有する高光沢領域となる。これにより、化粧板10は、凹凸形状に基づいて、グロスマット調の意匠感を表現することができる。特に、化粧板10の凹凸形状(即ち、高光沢領域及び低光沢領域)を、装飾層213の絵柄模様と位置同調させることにより、化粧板10は、優れたグロスマット調の意匠感を表現することができる。例えば、装飾層213が木目模様を形成する場合、凹部4を、木目模様中の導管部(即ち、導管の切断面開口部によって形成される線条の溝部)と、両者の平面視での位置が一致するように位置同調させるとともに、凹部4に隣接する領域を、木目模様中の導管部以外の領域と、両者の平面視での位置が一致するように位置同調させることにより、木目模様中の導管部が相対的に凹部の外観を呈し、これにより、化粧板10は、本物の木目模様と同様の表面凹凸形状の意匠感(質感)を表現することができる。
化粧板10の第1面S10には、凹部4以外の凹部が形成されていてもよい。例えば、表面層3の表面S3に凹部が形成されていてもよい。
表面層3は、メラミン樹脂を含む組成物(メラミン樹脂組成物)の硬化により形成された層であり、メラミン樹脂の硬化物を含む。なお、メラミン樹脂組成物としては、通常、メラミン樹脂を含む液状組成物が使用される。
表面層3の厚みは、離型層22の厚みとの関係で適宜調整することができるが、好ましくは1μm以上500μm以下、さらに好ましくは1μm以上300μm以下である。
化粧板10において、化粧シート2の紙質基材211の空隙には、メラミン樹脂の硬化物が充填されており、表面層3に含まれるメラミン樹脂の硬化物は、紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の硬化物と一体化している。これにより、支持層21と表面層3との接合強度を向上させることができ、化粧板10の使用時において、表面層3が支持層21から剥離しにくくなる。特に、支持層21の第1面S21は、被覆層212により形成されているので、メラミン樹脂組成物に含まれるメラミン樹脂の紙質基材211への浸透は阻害されない。したがって、紙質基材211の空隙に十分な量のメラミン樹脂が含浸させることができる結果、表面層3に含まれるメラミン樹脂の硬化物を、紙質基材211の空隙に充填された十分な量のメラミン樹脂の硬化物と一体化させることができる。これにより、支持層21と表面層3との接合強度を向上させることができ、化粧板10の使用時において、表面層3が支持層21から剥離しにくくなる。
その他の層
化粧板10は、必要に応じて、接着剤層、プライマー層等のその他の層を備えていてもよい。
接着剤層
化粧板10は、必要に応じて、接着剤層を有していてもよい。接着剤層は、例えば、ある層と別の層と間に、これらの層の密着性を高めるために形成することができる。接着剤層は、透明性接着剤層であることが好ましい。「透明性」には、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも包含される。
接着剤は特に限定されず、化粧板の分野で公知の接着剤を適宜選択して使用することができる。接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。接着剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も使用可能である。
接着剤層の厚みは特に限定されないが、通常0.1μm以上30μm以下、好ましくは1μm以上20μm以下である。
プライマー層
化粧板10は、ある層と別の層との間、コア層1の第2面T10側の面等に、必要に応じて、プライマー層を有していてもよい。コア層1の第2面T10側の面にプライマー層を設けると、例えば、化粧板10と被着材とを積層して、化粧部材を製造する際に有用である。被着材としては、例えば、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等が挙げられる。具体的には、木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として使用される木質部材;鉄、アルミニウム等の板材や鋼板、立体形状物品、あるいはシート等として使用される金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として使用される窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品、あるいはシート等として使用される樹脂部材等が挙げられる。また、これらの部材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
被着材は、用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床等の建築物の内外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具を用途とする場合は、木質部材、金属部材、樹脂部材、これらの組み合わせた部材が好ましい。被着材の厚みは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、通常0.1mm以上5mm以下、好ましくは0.1mm以上3mm以下である。
プライマー層は、公知のプライマー剤を所望の面等に塗布することにより形成することができる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜調整することができる。
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1g/m2以上100g/m2以下、好ましくは0.1g/m2以上50g/m2以下である。プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01μm以上10μm以下、好ましくは0.1μm以上1μm以下である。
化粧板10は、鮮明な凹凸形状が賦形されており、グロスマット調の凹凸形状を含む凹凸形状の意匠感を表現することができるので、意匠性の高い化粧板である。化粧板10は、所定の成形加工等を施し、各種用途に用いることができる。例えば、化粧板10を木質基材、金屬基材、非金屬無機質基材、樹脂基材等の基材上に積層し、壁、天井、床等の建築物の内装、車輛、船舶等の乗物の内裝、家具又は弱電又はOA機器のキャビネット等に利用することができる。木質基材として、具体的には、杉、檜、欅、松、樫、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、集成材、チップボード、又はチップボードが積層された複合基材等が挙げられる。金屬基材としては、鉄、銅、アルミニウム、チタニウム等の金屬単体、或いはこれら金屬の1種以上を含む合金からなる基材等が挙げられる。非金屬無機材料基材としては、珪酸カルシウム、石膏、セメント、陶磁器等の窯業系材料、或いは花崗岩、石灰岩等の石材からなる基材等が挙げられる。樹脂基材としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等からなる基材等が挙げられる。
化粧板の製造方法
以下、図面に基づいて、化粧板10の製造方法の一実施形態について説明する。図5〜図7は、化粧板10の製造方法の一実施形態を説明するための説明図である。なお、図6は、図5の続きであり、図7は、図6の続きである。
本実施形態に係る化粧板10の製造方法は、
(1)化粧シート2を準備する工程
(2)化粧シート2に未硬化メラミン樹脂組成物を含浸させ、紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の未硬化物と、支持層21の第1面S21の残部及び離型層22を被覆する未硬化メラミン樹脂層L1とを備える含浸化粧シートM1を形成する工程、
(3)含浸化粧シートM1をコア層1の前駆層L2上に積層する工程、
(4)紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の未硬化物及び未硬化メラミン樹脂層L1を硬化させる工程、並びに、
(5)未硬化メラミン樹脂層L1の硬化により形成された表面層3の前駆層CLのうち、離型層22を被覆する部分CL1を剥離し、支持層21の第1面S21の残部に表面層3を形成する工程
を含む。
以下、各工程について説明する。
工程(1)
工程(1)は、化粧シート2を準備する工程である。化粧シート2は、以下の工程(1−1)〜(1−3)を含む方法により製造することができる。
工程(1−1)
工程(1−1)は、図5(a)に示すように、紙質基材211上に装飾層213を形成する工程である。装飾層213が省略された実施形態では、工程(1−1)は省略される。紙質基材211上に装飾層213を形成する前に、紙質基材211の表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の処理を施してもよい。これにより、装飾層213の密着性を高めることができる。
装飾層213の形成法としては、例えば、コーティング法、印刷法等が挙げられる。コーティング法としては、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等が挙げられる。印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。
装飾層213の形成に使用されるインキは、例えば、溶剤又は分散媒と、着色剤、バインダー樹脂等の成分との混合物である。インキは、その他の成分として、着色剤、体質顔料、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を含んでもよい。インキは、シートのVOC(揮発性有機化合物)を低減する観点から、水性組成物であってもよい。
インキに含まれる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。着色剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキに含まれるバインダー樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキに含まれる溶剤又は分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
装飾層213は、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法等の方法により形成してもよい。また、装飾層213がアルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属層(金属薄膜)である場合、蒸着法、スパッタリング法、エッチング法等の方法により装飾層213を形成することができる。
装飾層213の塗工時の厚み(乾燥前の厚み)は、好ましくは1μm以上300μm以下、さらに好ましくは1μm以上200μm以下であり、装飾層213の乾燥後の厚みは、好ましくは0.1μm以上30μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下である。
工程(1−2)
工程(1−2)は、図5(b)に示すように、装飾層213上に被覆層212を形成する工程である。工程(1−2)において、第1面S21及び第1面S21の反対側に位置する第2面T21を有する支持層21であって、紙質基材211と、支持層21の第1面S21を形成する被覆層212と、紙質基材211と被覆層212との間に位置する装飾層213とを備える支持層21が形成される。
被覆層212の形成法としては、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等のコーティング法が挙げられる。
被覆層212の形成に使用される組成物(被覆層形成用組成物)は、例えば、カゼイン、アクリル樹脂エマルジョン(水性アクリル樹脂)等の成分の混合物である。
被覆層212の塗工時の厚み(乾燥前の厚み)は、好ましくは1μm以上300μm以下、さらに好ましくは1μm以上200μm以下であり、被覆層212の乾燥後の厚みは、好ましくは0.1μm以上30μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上20μm以下である。
工程(1−3)
工程(1−3)は、図5(c)に示すように、支持層21の第1面S21の一部に離型層22を形成する工程である。工程(1−3)において、支持層21と、支持層21の第1面S21の一部に形成された離型層22とを備える化粧シート2が形成される。
離型層22を形成するための組成物(離型層形成用組成物)は、電離放射線硬化性樹脂を含む。支持層21の第1面S21は、被覆層212により形成されているので、離型層形成用組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂の紙質基材211への浸透が抑制される。したがって、離型層形成用組成物の塗膜の厚み及び離型層22の厚みを所望の範囲に調整することができる。これにより、表面層3の前駆層CLのうち、離型層22を被覆する部分CL1の厚みを所望の範囲に調整することができ、工程(5)において、離型層22を被覆する部分CL1が剥離されずに離型層22上に残存することを防止することができる。
離型層形成用組成物は、シリコーン系離型剤(シリコーンオイル)を含んでもよい。シリコーン系離型剤は、離型層形成用組成物の硬化時に、離型層22の表面に配向するので、離型層22に離型性が付与される。これにより、工程(5)において、表面層3の前駆層CLのうち、離型層22を被覆する部分CL1を剥離する際、当該部分CL1の剥離性を向上させることができる。
離型層22は、例えば、支持層21の第1面S21の一部に、離型層形成用組成物を所定の模様状に印刷し、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。離型層22の形成に使用される印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。離型層形成用組成物は、印刷法以外の方法を使用して、支持層21の第1面S21の一部に塗布してもよく、塗布方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂を硬化させるための電離放射線として紫外線を使用する場合には、紫外線源として、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を使用することができる。紫外線の波長は、例えば190nm以上380nm以下である。離型層形成用組成物を硬化させるための電離放射線として電子線を使用する場合には、電子線源として、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器を使用することができる。電子線のエネルギーは、通常100keV以上1000keV以下、好ましくは100keV以上300keV以下である。電子線の照射量は、好ましくは2Mrad以上15Mrad以下である。
離型層形成用組成物は、体質顔料を含むことが好ましい。これにより、離型層形成用組成物にチキソトロピー性を付与することができ、版を使用して離型層形成用組成物を印刷する際に、離型層形成用組成物の模様形状を維持させることができる。体質顔料としては、例えば、シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらのうち、材料設計の自由度が高く、意匠性、白さ及びインキとしての塗工安定性に優れた材料であるシリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。
離型層形成用組成物に含まれる体質顔料の量は、離型層形成用組成物に含まれる樹脂100質量部に対して、通常0.1質量部以上20質量部以下、好ましくは0.5質量部15質量部以下、さらに好ましくは2質量部以上15質量部以下であり、さらに一層好ましくは5質量部以上15質量部以下である。体質顔料の含有量を上記範囲とすることにより、離型層形成用組成物に十分なチキソトロピー性を付与することができるとともに、隆起形状及び微細凹凸面の発現を付与する効果が得られる。
離型層形成用組成物は、無色であってもよいし、着色されていてもよい。着色する場合には、装飾層で使用する着色剤と同様のものを使用することができる。
離型層形成用組成物は、粘度を調整する目的で溶媒を含んでもよい。溶媒としては、水;トルエン、キシレン等の炭化水素化合物;メタノール、エタノール、メチルグリコール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;テロラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。離型層形成用組成物中の溶媒の量は、離型層形成用組成物に求められる粘度に応じて適宜設定することができる。
離型層形成用組成物には、望まれる物性に応じて、公知の添加剤を適宜配合することができる。添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤等が挙げられる。
離型層22は、支持層21の第1面S21に所定のパターンで形成することが好ましい。離型層22のパターンは、化粧板10の第1面S10のうち、凹部又は低光沢(艷消)領域となる領域に対応することが好ましい。離型層22のパターンとしては、例えば、木目板の導管部、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝、文字、記号、幾何学模様等が挙げられる。
離型層22の塗工時の厚み(乾燥前の厚み)は、好ましくは1μm以上200μm以下、さらに好ましくは1μm以上100μm以下であり、離型層22の乾燥後の厚みは、好ましくは1μm以上40μm以下、さらに好ましくは1μm以上20μm以下である。
工程(2)
工程(2)は、図5(d)に示すように、化粧シート2に未硬化メラミン樹脂組成物を含浸させ、紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の未硬化物と、支持層21の第1面S21の残部(支持層21の第1面S21のうち、離型層22が形成されていない領域)及び離型層22を被覆する未硬化メラミン樹脂層L1とを備える含浸化粧シートM1を形成する工程である。
未硬化メラミン樹脂組成物は、メラミン樹脂の未硬化物を含む。未硬化メラミン樹脂層は、未硬化メラミン樹脂組成物により形成される層であり、メラミン樹脂の未硬化物を含む。メラミン樹脂の未硬化物は、メラミンとホルムアルデヒドとを中性又はアルカリ性条件下で反応させて得られる熱硬化性樹脂であり、メラミンとホルムアルデヒドとの反応生成物(初期縮合物)は、メチロールメラミン類(モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン)を含む。
支持層21の第1面S21は、被覆層212により形成されているので、未硬化メラミン樹脂組成物に含まれるメラミン樹脂の未硬化物の紙質基材211への浸透が阻害されない。したがって、紙質基材211の空隙に十分な量のメラミン樹脂の未硬化物が含浸させることができる結果、表面層3に含まれるメラミン樹脂の硬化物を、紙質基材211の空隙に充填された十分な量のメラミン樹脂の硬化物と一体化させることができる。これにより、支持層21と表面層3との接合強度を向上させることができ、化粧板10の使用時において、表面層3が支持層21から剥離しにくくなる。
未硬化メラミン樹脂組成物は、粘度を調整する目的で溶媒を含んでもよい。溶媒としては、水;トルエン、キシレン等の炭化水素化合物;メタノール、エタノール、メチルグリコール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;テロラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。メラミン樹脂組成物中の溶媒の量は、メラミン樹脂組成物の粘度に応じて適宜設定することができる。
未硬化メラミン樹脂組成物には、望まれる物性に応じて、公知の添加剤を適宜配合することができる。添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤等が挙げられる。
化粧シート2に未硬化メラミン樹脂組成物を含浸させる際、未硬化メラミン樹脂組成物は、例えば、支持層21の第1面S21側から供給される。供給された未硬化メラミン樹脂組成物のうち、一部は紙質基材211に含浸し、紙質基材211に含浸されない残部は、支持層21の第1面S21の残部及び離型層22を被覆する。なお、未硬化メラミン樹脂組成物は、離型層22には含浸されず、離型層22を被覆する。未硬化メラミン樹脂組成物の紙質基材211への含浸を促進するために、支持層21の第1面S21側からの未硬化メラミン樹脂組成物の供給に加えて、支持層21の第2面T21側からの未硬化メラミン樹脂組成物の供給を行ってもよい。支持層21の第2面T21側からの未硬化メラミン樹脂組成物の供給のみを行ってもよい。支持層21の第2面T21側からの未硬化メラミン樹脂組成物の供給のみが行われる場合も同様に、供給された未硬化メラミン樹脂組成物のうち、一部は、紙質基材211に含浸し、紙質基材211に含浸されない残部は、支持層21の第1面S21の残部及び離型層22を被覆する。未硬化メラミン樹脂組成物の供給方法としては、例えば、未硬化メラミン樹脂組成物への浸漬;キスコーター、コンマコーター等のコーターによる塗布;スプレー装置、シャワー装置等による吹き付け等が挙げられる。
未硬化メラミン樹脂層L1の厚みは、離型層22の厚みとの関係で適宜調整することができるが、塗工時の厚み(乾燥前の厚み)は、好ましくは1μm以上800μm以下、さらに好ましくは1μm以上500μm以下であり、乾燥後の厚みは、好ましくは1μm以上500μm以下、さらに好ましくは1μm以上300μm以下である。
未硬化メラミン樹脂組成物を紙質基材211に含浸させると、未硬化メラミン樹脂組成物は紙質基材211の空隙に充填される。紙質基材211の空隙に充填される未硬化メラミン樹脂組成物の充填率は、化粧板10に求められる性能、紙質基材211の空隙率等に応じて適宜調整することができる。未硬化メラミン樹脂組成物の充填率は、好ましくは30%以上200%以下、さらに好ましくは50%以上150%以下である。なお、樹脂組成物の充填率は、下記式により算出される。
充填率(%)=[(樹脂組成物を含浸させた後の紙質基材の重量−樹脂組成物を含浸させる前の紙質基材の重量)/樹脂組成物を含浸させる前の紙質基材の重量]×100
工程(3)
工程(3)は、図6(e)に示すように、含浸化粧シートM1をコア層1の前駆層L2上に積層する工程である。工程(3)において、中間体M2が形成される。
図6(e)に示すように、含浸化粧シートM1は、支持層21の第2面T21がコア層1の前駆層L2側に位置するように、コア層1の前駆層L2上に積層される。
工程(4)
工程(4)は、紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の未硬化物及び未硬化メラミン樹脂層L1を硬化させる工程である。
未硬化メラミン樹脂層L1の硬化により表面層3の前駆層CLが形成され、コア層1の前駆層L2の硬化によりコア層1が形成される。
工程(4)は、以下のように行うことができる。
まず、図6(f)に示すように、未硬化メラミン樹脂層L1上に剥離用フィルムPFを積層し、中間体M3を形成する。
剥離用フィルムPFとしては、例えば、易接着性樹脂フィルムを使用することができる。易接着性樹脂フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂フィルム等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂等のフィルムの単体、又は、これらのフィルムの積層体が挙げられる。
易接着性樹脂フィルムの表面には、易接着性樹脂の塗布によって易接着層が形成されていてもよい。易接着層の形成前に、易接着層の接着性を向上させるために、易接着性樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の処理を施してもよい。
易接着層(プライマー層、アンカー層と呼ばれることもある)に含まれる樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
剥離用フィルムPFとしては、剥離対象である樹脂皮膜(表面層3の前駆層CLのうち、離型層22を被覆する部分CL1)との剥離重さが調整された剥離用フィルムを使用することが好ましい。例えば、メラミン樹脂の熱硬化皮膜が剥離対象である場合には、剥離重さを0.1N/インチ以上10N/インチ以下に調整することが好ましい。剥離重さが0.1N/インチ未満ではメラミン樹脂の熱硬化皮膜を剥離することが難しく、剥離重さが10N/インチを超えると剥離用フィルムが破断したり、剥離対象である樹脂皮膜以外の樹脂被膜も剥離されたりおそれがある。剥離重さが0.1N/インチ以上10N/インチ以下に調整された剥離用フィルムを使用することにより、剥離対象である樹脂皮膜を簡単に除去することができる。
剥離重さは、株式会社オリエンテック製テンシロン万能材料試験機RTC−1250Aを使用して測定される値であり、具体的な測定方法は次の通りである。後述する中間体M4において、剥離用フィルムPFに1インチの巾に切り込みを入れ、剥離用フィルムPFの一部を1インチの巾で剥がし、図8のように剥離用フィルムPFの一部を剥がした中間体M4の一端(下部)を試験機に固定する。180°剥がした剥離用フィルムPFを上部の方向(矢印方向)に100mm/分のスピードで剥離したときの重さを測定し、これを「剥離重さ」とする。
剥離重さが0.1N/インチ以上10N/インチ以下に調整された剥離用フィルムとしては、例えば、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成された硬化樹脂層とを有するフィルムを使用することができる。このフィルムは、硬化樹脂層側の面がメラミン樹脂層L1と接するように使用されることが好ましい。基材フィルムは特に限定されず、例えば、紙、不織布、熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。基体フィルムは、熱可塑性樹脂シートが好ましく、耐熱性の観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂シートが特に好ましい。基材フィルムの厚みは特に限定されず、通常10μm以上200μm以下である。また、硬化樹脂層は、離型層形成用組成物の硬化により形成された硬化樹脂層であることが好ましい。これにより、メラミン樹脂の熱硬化皮膜との剥離重さを0.1N/インチ以上10N/インチ以下に調整することが容易となる。離型層形成用組成物については、上記の説明が適用される。離型層形成用組成物は、剥離重さを調整する等の目的で、適宜、体質顔料等の成分を含んでいてもよい。硬化樹脂層の厚みは、通常1μm以上30μm以下である。
次いで、図6(g)に示すように、中間体M3を2枚の鏡面加工金属板MP1,MP2の間に挟み、加圧及び加熱し、紙質基材211の空隙に充填されたメラミン樹脂の未硬化物及び未硬化メラミン樹脂層L1を硬化させる。未硬化メラミン樹脂層L1の硬化により表面層3の前駆層CLが形成され、コア層1の前駆層L2の硬化によりコア層1が形成される。剥離用フィルムPFは、この段階で表面層3の前駆層CLと接着する。
鏡面加工金属板MP1,MP2によって加えられる圧力は、通常0.1kg/cm2以上200kg/cm2以下である。加熱温度は、通常100℃以上200℃以下、加熱時間は、通常1秒以上120分以下である。
これにより、図7(h)に示すように、コア層1と、コア層1上に設けられた支持層21と、支持層21の第1面S21の一部に形成された離型層22と、支持層21の第1面S21の残部及び離型層22を被覆する表面層3の前駆層CLと、表面層3の前駆層CL上に積層された剥離用フィルムPFとを備える中間体M4が形成される。
図7(h)に示すように、表面層3の前駆層CLは、離型層22を被覆する部分CL1と、離型層22を被覆しない部分CL2とを有する。離型層22を被覆する部分CL1は、離型層22の表面S22上に、離型層22を被覆するように形成されている。離型層22を被覆しない部分CL2は、支持層21の第1面S21上に、離型層22を囲繞するように形成されている。
工程(5)
工程(5)は、未硬化メラミン樹脂層L1の硬化により形成された表面層3の前駆層CLのうち、離型層22を被覆する部分CL1を剥離し、支持層21の第1面S21の残部に表面層3を形成する工程である。
工程(5)では、図7(i)に示すように、表面層3の前駆層CLのうち、離型層22を被覆する部分CL1を剥離して、支持層21の第1面S21の残部に表面層3を形成する。表面層3の前駆層CLのうち、離型層22を被覆する部分CL1は、表面層3の前駆層CLの残部CL2よりも剥離されやすい。このため、離型層22を被覆する部分CL1は、剥離用フィルムPFに接着したまま、剥離用フィルムPFとともに剥離される。一方、表面層3の前駆層CLの残部CL2は、支持層21の第1面S21の残部に残り、表面層3が形成される。離型層22を被覆する部分CL1が除去されることにより、表面層3の開口部30が形成されるとともに、離型層22の表面S22が、表面層3の開口部30を通じて露出し、化粧板10の第1面S10に凹部4が形成される。これにより、図7(j)に示すように、化粧板10が製造される。
離型層22に含まれるシリコーン系離型剤は、離型層22に離型性を付与するので、工程(5)において、離型層22を被覆する部分CL1が剥離されやすい。離型層22及び表面層3の両者がシリコーン系離型剤を含む場合は、この効果が大きくなる。
離型層22を被覆する部分CL1を剥離する方法は、剥離用フィルムを使用した方法に限定されない。例えば、表面層3の前駆層CLの表面に、マスキングフィルム等の保護フィルム、セロハンテープ、ガムテープ等の粘着テープ、賦型シート等を貼り付け、その後に該フィルムを剥がすと同時に剥離させる方法;粘着テープ、粘着ゴムローラー、粘着ゴムシート等で剥離する方法;表面層3の前駆層CLに、予め溶剤に溶解させた塩化ゴム系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂液を塗工し、乾燥した後、剥離する方法;表面層3の前駆層CLに、ホットメルト接着剤を塗工した後、低温下で剥離する方法;表面層3の前駆層CLに、樹脂板又は金属板を貼り付けた後、剥離する方法等が挙げられる。
上記方法により製造される化粧板10は、表面に凹凸形状を有する。したがって、化粧板10は、凹凸形状に基づいて、凹凸形状の意匠感を表現することができる。特に、上記製造方法の結果物である化粧板において、化粧板10の第1面S10のうち、凹部4の底面(離型層22の表面S22)により形成される領域は相対的に粗面となり、入射光に対して拡散反射性を有する低光沢領域となる一方、化粧板10の第1面S10のうち、凹部4に隣接する領域(表面層3の表面S3により形成される領域)は相対的に鏡面となり、入射光に対して鏡面反射性を有する高光沢領域となる。これにより、化粧板10は、凹凸形状に基づいて、グロスマット調の意匠感を表現することができる。例えば、化粧板10は、凹部4がマット感を呈し、凸部がグロス感を呈するようなグロスマット調の凹凸形状を含む凹凸形状による外観を発現することができる。特に、凹凸形状を、平面視において装飾層213の絵柄模様と同調させることにより、化粧板10は、優れた凹凸形状の意匠感を表現することができる。例えば、装飾層213が木目模様を形成する場合、凹部4を、木目模様の導管部と、両者の平面視における位置が一致するように、位置同調させることにより、化粧板10は、本物の木目模様と同様のグロスマット調の意匠感(質感)を含む外観を表現することができる。凹凸の差(凹部4の深さ)を大きくすることにより、凹凸形状の意匠感をより鮮明とすることができる。
〔実施例1〕
(1)離型層形成用組成物の調製
電離放射線硬化性モノマー(東亞合成株式会社製アロニックスM400)60質量部、反応性シリコーン(信越化学株式会社製X−22−164B)0.6質量部、及びメチルエチルケトン(丸善石油化学株式会社製)40質量部を混合し、離型層形成用組成物を調製した。混合は、プロセスホモジナイザーPH91(株式会社エスエムテー社製)を使用して、回転数2000rpmで1時間撹拌することにより実施した。
(2)剥離用フィルムの製造
厚み50μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(登録商標)A4100)の易接着性面に、電離放射線硬化性モノマー(東亞合成株式会社製アロニックス(登録商標)M350)100質量部、反応性シリコーン(信越化学株式会社製X−22−164B)2質量部、シリカ(富士シリシア化学株式会社製サイリシア450)8質量部、及び酢酸エチル50質量部を含む塗工液を、5g/m2(乾燥時)の量で塗布し、165kVの加速電圧にて5Mradの電子線を照射して硬化させることにより、硬化樹脂層を有する剥離用フィルムを製造した。
(3)化粧シートの製造
[印刷紙の形成]
グラビア印刷法を使用して、建材用チタン原紙上に印刷インキ(DICグラフィックス株式会社製オーデSPTI)を印刷し、厚み3μmの木目柄状の絵柄層を有する印刷紙を製造した。チタン原紙としては、KJ特殊紙株式会社製PM−67P又はKSH−801Pを使用した。PM−67Pに含まれる灰分(無機成分)の量は23質量%であり、KSH−801Pに含まれる灰分(無機成分)の量は35質量%である。灰分の量は、酸化チタンの量とほぼ等しい。
[被覆層の形成]
カゼイン(BASFジャパン(株)社製ミルクカゼイン)、Tg=−20℃のアクリル樹脂エマルジョン(BASFジャパン(株)社製アクロナールA754、固形分:48%、水性溶媒:水)、及びTg=30℃のアクリル樹脂エマルジョン(アイカ工業(株)社製ウルトラゾールA25、固形分:48%、水性溶媒:水)を混合して、被覆層形成用組成物を調製した。被覆層形成用組成物の組成(固形分基準)は、カゼイン40質量%、Tg=−20℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分量15質量%、及びTg=30℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分量45質量%である。印刷紙の絵柄層形成面の全体に、被覆層形成用組成物を塗布した後、乾燥させて、厚み1μmの被覆層を形成した。被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。
[離型層の形成]
上記(1)で製造した離型層形成用組成物を、被覆層上に、幅30μm(一定)、長さ50mmの絵柄状で印刷し、165kVの加速電圧にて3Mradの電子線照射を行うことにより、厚み2μmの離型層を形成した。これにより、絵柄層を有する印刷紙と、印刷紙の絵柄層形成面の全体に形成された被覆層と、被覆層の表面の一部に設けられた離型層とを備える化粧シートを製造した。
(4)化粧板の製造
[含浸化粧シートの製造]
上記(3)で製造した化粧シートに対し、メラミン樹脂の未硬化物(水溶性メチロールメラミン樹脂、日本カーバイド工業社製ニカレジンS−260)60質量部、水35質量部、及びイソプロピルアルコール5質量部を含む液状の未硬化メラミン樹脂組成物を、含浸用の含浸装置を用いて未硬化メラミン樹脂組成物が80g/m2(乾燥時)の割合となるように含浸し、乾燥させて、含浸化粧シートを製造した。
[表面層の形成]
含浸化粧シートを、クラフト紙にフェノール樹脂液を含浸させて製造した、坪量245g/m2のフェノール樹脂含浸コア紙(太田産業株式会社製太田コア)3枚の上に積層し、更に含浸化粧シート上に上記(2)で製造した剥離用フィルムを、剥離用フィルムの硬化樹脂層が含浸化粧シートの印刷面と接するように積層した。
形成された積層体を2枚の鏡面板で挟み、熱プレス機を用いて圧力100kg/cm2で、成型温度150℃で10分間の条件にて加熱成型し、未硬化メラミン樹脂組成物を熱硬化させることにより、メラミン樹脂の硬化物を含む硬化樹脂層を形成した。
メラミン樹脂の硬化物を含む硬化樹脂層から剥離フィルムを剥離することにより、硬化樹脂層のうち、離型層を被覆する部分を除去し、被覆層の表面の残部(被覆層の表面のうち、離型層が設けられていない部分)に表面層を形成した。
(5)被覆層の評価
[チタン紙へのメラミン樹脂の未硬化物の含浸に対する被覆層の作用]
被覆層が、チタン原紙へのメラミン樹脂の未硬化物の含浸を阻害するか否かを、メラミン樹脂の未硬化物の含浸速度及び表面層の接合強度の点から評価した。
・メラミン樹脂の未硬化物の含浸速度
メラミン樹脂の未硬化物(水溶性メチロールメラミン樹脂、日本カーバイド製ニカレジンS−260)を樹脂重量の82.0%当量の水に溶解させ、未硬化メラミン樹脂組成物を調製した。上記(3)で製造した印刷紙から作製した直径2.5cmの円形状の試験片に対し、絵柄層形成面側から未硬化メラミン樹脂組成物200mLを供給し、浸透させた。試験片の裏面(絵柄層形成面の反対側の面)の状態を目視で確認し、未硬化メラミン樹脂組成物の供給開始から裏面全体が濡れ色になるまでの時間(秒)を測定した。
以下の基準を使用して、S、A又はBの場合は、被覆層が、チタン原紙へのメラミン樹脂の未硬化物の含浸を阻害しないと評価し、C又はDの場合は、被覆層が、チタン原紙へのメラミン樹脂の未硬化物の含浸を阻害すると評価した。評価結果は、表1に示す通りである。
S:裏面全体が濡れ色になるまでの時間が20秒未満。
A:裏面全体が濡れ色になるまでの時間が20秒以上30秒未満。
B:裏面全体が濡れ色になるまでの時間が30秒以上40秒未満。
C:裏面全体が濡れ色になるまでの時間が40秒以上120秒未満。
D:裏面全体が濡れ色になるまでの時間が120秒以上。
さらに、チタン原紙中の無機分の量に応じて、チタン紙へのメラミン樹脂の未硬化物の含浸に対する被覆層の作用に差が生じるか否かを評価した。
未硬化メラミン樹脂組成物の供給開始から裏面全体が濡れ色になるまでの時間(秒)に関し、無機分が少ない原紙(酸化チタン含有量23%)と、無機分が多い原紙(酸化チタン含有量35%)との差を計算した。
以下の基準を使用して、A又はBの場合は、チタン原紙中の無機分の量に応じて、チタン紙へのメラミン樹脂の未硬化物の含浸に対する被覆層の作用に差が生じないと評価し、Cの場合は、チタン原紙中の無機分の量に応じて、チタン紙へのメラミン樹脂の未硬化物の含浸に対する被覆層の作用に差が生じると評価した。評価結果は、表1に示す通りである。
A:差が5秒未満。
B:差が5秒以上10秒未満。
C:差が10秒以上。
・表面層の接合強度
化粧板の表面層の表面に、2mm間隔で碁盤目状に切れ目を入れ、2cm×2cmの領域に、100個の微小領域(2mm×2mm)を形成した。100個の微小領域にセロテープを貼り、十分に密着させた後に急速剥離を実施した。これを同じ位置で10回繰り返した後、100個の微小領域のうち、剥離した微小領域の数を計測した。
以下の基準を使用して、A又はBの場合は、表面層の接合強度が十分である(すなわち、チタン原紙の全体に十分な量のメラミン樹脂の未硬化物が含浸している)と評価し、Cの場合は、表面層の接合強度が不十分である(すなわち、チタン原紙の全体に十分な量のメラミン樹脂の未硬化物が含浸していない)と評価した。評価結果は、表1に示す通りである。
A:剥離した微小領域の数がゼロ。
B:剥離した微小領域の数が10個以下。
C:剥離した微小領域の数が11個以上。
[チタン紙への電離放射線硬化性樹脂の含浸に対する被覆層の作用]
被覆層が、チタン原紙への電離放射線硬化性樹脂の含浸を抑制するか否かを、凹凸形状に基づいて表現される化粧板のグロスマット調の意匠感、及び、離型層上に残存する硬化樹脂膜の有無及びその程度の点から評価した。
具体的には、剥離フィルムの剥離後、化粧板の表面の状態を目視で確認し、以下の基準を使用して、A又はBの場合は、被覆層が、チタン原紙への電離放射線硬化性樹脂の含浸を抑制すると評価し、Cの場合は、被覆層が、チタン原紙への電離放射線硬化性樹脂の含浸を抑制しないと評価した。評価結果は、表1に示す通りである。
A:被覆層を設けなかった比較例4と比較して、導管部のグロス/マット効果が十分に確認され、かつ導管部の表面樹脂残りがないもの。
B:被覆層を設けなかった比較例4と比較して、導管部のグロス/マット効果が確認され、かつ導管部の表面樹脂残りが少ないもの。
C:被覆層を設けなかった比較例4と比較して、導管部のグロス/マット効果及び導管部の樹脂残りが同等であるもの。
なお、無機分が少ない原紙(酸化チタン含有量23%)を使用して製造した化粧板は、無機分が少ない原紙(酸化チタン含有量23%)を使用して製造した比較例4の化粧板と比較し、無機分が多い原紙(酸化チタン含有量35%)を使用して製造した化粧板は、無機分が多い原紙(酸化チタン含有量35%)を使用して製造した比較例4の化粧板と比較した。
〔実施例2〕
実施例2は、被覆層形成用組成物の組成(固形分基準)を、カゼイン50質量%、Tg=−20℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分12.5質量%、及びTg=30℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分37.5質量%に変更した点を除き、実施例1と同様である。実施例2における被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。
〔実施例3〕
実施例3は、被覆層形成用組成物の組成(固形分基準)を、カゼイン60質量%、Tg=−20℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分10質量%、及びTg=30℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分30質量%に変更した点を除き、実施例1と同様である。実施例3における被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。
〔実施例4〕
実施例4は、被覆層形成用組成物の組成(固形分基準)を、カゼイン70質量%、Tg=−20℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分7.5質量%、及びTg=30℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分22.5質量%に変更した点を除き、実施例1と同様である。実施例4における被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。
〔実施例5〕
実施例5は、被覆層形成用組成物の組成(固形分基準)を、カゼイン80質量%、Tg=−20℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分5質量%、及びTg=30℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分15質量%に変更した点を除き、実施例1と同様である。実施例5における被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。
〔比較例1〕
比較例1は、被覆層形成用組成物の組成(固形分基準)を、カゼイン0質量部、Tg=−20℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分25質量部、及びTg=30℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分75質量部に変更した点を除き、実施例1と同様である。比較例1における被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。
〔比較例2〕
比較例2は、被覆層形成用組成物の組成(固形分基準)を、カゼイン20質量部、Tg=−20℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分20質量部、及びTg=30℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分60質量部に変更した点を除き、実施例1と同様である。比較例2における被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。
〔比較例3〕
比較例3は、被覆層形成用組成物の組成(固形分基準)を、カゼイン100質量部、Tg=−20℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分0質量部、及びTg=30℃のアクリル樹脂エマルジョンの固形分0質量部に変更した点を除き、実施例1と同様である。比較例3における被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。
〔比較例4〕
比較例4は、被覆層を形成しなかった点を除き、実施例1と同様である。
〔比較例5〕
比較例5は、被覆層形成用組成物として、固形分基準で油性セルロース100質量%を含む組成物(DICグラフィック社製MPF)を使用した点を除き、実施例1と同様である。比較例5における被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。
〔比較例6〕
比較例6は、被覆層形成用組成物として、固形分基準で油性セルロース50質量%及び油性アクリル樹脂50質量%を含む組成物(DICグラフィック社製SET−OP)を使用した点を除き、実施例1と同様である。比較例6における被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。
〔比較例7〕
比較例7は、被覆層形成用組成物として、固形分基準で油性アクリル樹脂100質量%を含む組成物(昭和インク工業社製FW)を使用した点を除き、実施例1と同様である。比較例7における被覆層の組成(固形分基準)は、表1に示す通りである。