JP2019064021A - 耐候性積層体 - Google Patents
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Abstract
Description
該表面保護層が、
(a)ナノシェルに内包された光安定剤を含有する、又は
(b)光安定剤及び分散剤を含有し、該光安定剤及び分散剤の少なくとも一方がナノシェルに内包されたものである、
耐候性積層体。
[2]被着材と上記[1]に記載の耐候性積層体とを備え、該被着材、前記基材及び前記表面保護層を順に有する耐候性部材。
本発明の耐候性積層体は、基材と、該基材の少なくとも一部を被覆する表面保護層とを有し、該表面保護層が、(a)ナノシェルに内包された光安定剤を含有する(以下、「態様(a)」と称する場合がある。)、又は(b)光安定剤及び分散剤を含有し、該光安定剤及び分散剤の少なくとも一方がナノシェルに内包されたものである(以下、「態様(b)」と称する場合がある。)、という特徴を有するものである。本発明においては、上記の態様(a)又は(b)を採用することにより、表面保護層中の光安定剤の分散性が向上し、ブリードアウト、二次凝集、分離沈降等により光安定剤が表面保護層中から喪失しにくく、あるいは機能不全を生じにくくなるため、光安定剤が有効に機能し、優れた耐候性が得られる。また、二次凝集、分離沈降等が生じにくくなることから、表面保護層の優れた機械的強度、透明性、耐久性等も得られる。
図3には、シート状の基材11の一方の面の全面を被覆する表面保護層12を有する耐候性積層体10が示されている。また、図4には、シート状の耐候性積層体のより好ましい態様の一例として、シート状の基材11、装飾層15、接着層16、樹脂層17、プライマー層18及び表面保護層12を順に有し、該表面保護層12が光安定剤及び分散剤を含有する耐候性積層体10が示されている。
以下、これらの図面を参考に、本発明の耐候性積層体の詳細について更に説明する。
態様(a)は、表面保護層がナノシェルに内包された光安定剤を含有する形態である。態様(a)を有する典型的な耐候性積層体は、図1に示されている。
ナノシェルに内包された光安定剤を用いることで、表面保護層中における光安定剤の分散性が向上し、ブリードアウト、二次凝集、分離沈降等により光安定剤が表面保護層中から喪失しにくく、あるいは機能不全を生じにくくなるため、光安定剤が有効に機能し、優れた耐候性が得られる。また、光安定剤がナノシェルに内包された形態であることで、二次凝集、分離沈降等が生じにくくなることから、表面保護層の優れた機械的強度、透明性、耐久性等も得られる。
Dnp:数平均分子量
di:ヒストグラムのi番目の直径
ni:頻度
本発明において、ナノシェルの形態としては、リン脂質からなる単層膜であることがより好ましい。リン脂質からなるナノシェルとすることで、上記の表面保護層を形成する樹脂との相溶性が向上するため、光安定剤の分散性の点で有利である。また、ナノシェルが単層膜であることで、平均一次粒子径がより小さいものとなるため、ナノシェルを形成するリン脂質による分散性向上との相乗効果により、表面保護層中における光安定剤の分散性が向上し、光安定剤が有効に機能し、優れた耐候性が得られる。また、二次凝集が生じにくくなることから、優れた耐候性が得られ、また表面保護層の優れた機械的強度、耐久性、透明性等も得られる。
ここで、Bangham法は、クロロホルム、メタノール等の溶媒に、リン脂質を加えて溶解した後、エバポレータを用いて溶媒を除去してリン脂質からなる薄膜を形成し、上記塩光安定剤(分散液の状態としたものでもよい。)を加えた後、ミキサーを用いて、例えば、1000〜2500rpm程度の高速回転で撹拌することで、水和し、分散させて、光安定剤をナノシェルに内包する方法である。エクストルージョン法は、外部摂動として用いたミキサーに代えてフィルターを通過させる方法である。水和法は、Bangham法において、ミキサーを用いずに、穏やかに攪拌し、分散させて、光安定剤をナノシェルに内包する方法である。逆相蒸発法は、リン脂質をジエチルエーテル、クロロホルム等の溶媒に溶解し、上記光安定剤(分散液の状態としたものでもよい。)を加えてW/Oエマルジョンを作り、該エマルジョンから減圧下において溶媒を除去し、水を添加して、光安定剤をナノシェルに内包する方法である。また、凍結融解法は、外部摂動として冷却、加熱の少なくともいずれかを行う方法であり、冷却、加熱を繰り返すことによって光安定剤をナノシェルに内包する方法である。
本発明においては、上記範囲のように樹脂分よりも多量の光安定剤を用いた場合であっても、該光安定剤をナノシェルに内包された形態とすることにより、分散性が向上し、ブリードアウト、二次凝集、分離沈降等により光安定剤が表面保護層中から喪失しにくく、あるいは機能不全を生じにくくなるため、光安定剤が有効に機能し、優れた耐候性が得られる。また、光安定剤がナノシェルに内包された形態であることで、二次凝集、分離沈降等が生じにくくなることから、表面保護層の優れた機械的強度、透明性、耐久性等も得られる。
分散剤としては、上記のナノシェルを形成し得る材料として例示した、高分子界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーンオイル、ワックス、変性樹脂等が挙げられる。これらの分散剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
態様(b)は、表面保護層が、光安定剤及び分散剤を含有し、該光安定剤及び分散剤の少なくとも一方がナノシェルに内包されたものである、という形態である。態様(b)としては、具体的には、ナノシェルに内包されない光安定剤とナノシェルに内包された分散剤とを含む態様、ナノシェルに内包された光安定剤とナノシェルに内包された分散剤とを含む態様、及びナノシェルに内包された光安定剤とナノシェルに内包されない分散剤とを含む態様、が挙げられる。
態様(b)を有する典型的な耐候性積層体は、図2に示されている。
ナノシェルに内包された光安定剤とナノシェルに内包された分散剤とを両方含む場合は、表面保護層内の光安定剤の分散がより促進されるため、耐候性、また表面保護層の機械的強度、透明性、耐久性等はより向上する。一方、この場合は、過剰性能となり、コスト高につながる可能性もある。
また、ナノシェルに内包された光安定剤とナノシェルに内包されない分散剤とを含む場合は、分散剤の効果により、ナノシェルに内包された光安定剤の分散性がより向上し、ブリードアウト、二次凝集、分離沈降等により光安定剤が表面保護層中から喪失しにくく、あるいは機能不全を生じにくくなるため、光安定剤が有効に機能し、極めて優れた耐候性が得られる。また、二次凝集、分離沈降等が生じにくくなることから、表面保護層の優れた機械的強度、透明性、耐久性等も得られる。
本発明においては、要求性能、コスト等を総合的に考慮して、最適な形態を選択すればよい。
また、ナノシェルに内包された分散剤が含まれている場合、ナノシェルに内包されていない分散剤が含まれていてもよい。この場合の、表面保護層に含まれる分散剤の全量に対する、ナノシェルに内包されていない分散剤の割合は、耐候性、機械的強度及び透明性の観点から、0〜30質量%が好ましく、0〜15質量%がより好ましく、0〜5質量%が更に好ましく、特に0質量%であることが好ましい。
表面保護層は、耐候性積層体の最表面に設けられる層であり、耐候性積層体の耐候性とともに、耐汚染性、耐擦傷性、耐薬品性等の表面特性を向上させるために設けられる。
表面保護層は、一般的には樹脂(有機高分子)が用いられ、熱可塑性樹脂、各種硬化形態の硬化性樹脂のいずれも用いることができる。特に、耐候性積層体に高度の耐汚染性、耐擦傷性等の表面特性を求める場合は、硬化性樹脂と、ナノシェルに内包された光安定剤とを少なくとも含有する樹脂組成物の硬化物、又は硬化性樹脂と光安定剤及び分散剤とを少なくとも含有する樹脂組成物であって、該光安定剤及び分散剤の少なくとも一方がナノシェルに内包されたものである樹脂組成物の硬化物からなる層であることが好ましい。
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、2液硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂が挙げられ、より優れた表面特性を得る観点から、2液硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂であることが好ましい。
主剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のポリオール;アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等の官能基として水酸基を有するポリオール;等が好ましく挙げられる。これらは単独又は複数種を混合して使用できる。
また、硬化性樹脂組成物は、添加剤として、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、ブロッキング防止剤、滑剤、溶剤等を添加することができる。中でも、耐候性向上のために、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤等の耐候剤等を含有することが好ましく、これらの耐候剤は、ナノシェルに内包されたものであってもよい。
本発明の耐候性積層体は、基材を有する。
基材の形状としては、所望に応じて適宜選択すればよく、例えば図1及び2に示されるような直方体等の立体形状、図3及び4に示されるシート状のいずれであってもよい。基材が立体形状、すなわち耐候性積層体が立体形状を呈する場合は、該耐候性積層体をそのまま外装用部材等の各種部材として利用することが可能である。また、基材がシート状、すなわち耐候性積層体がシート状を呈する場合は、該耐候性積層体を被着材に貼着したものを、外装用部材等として利用することが可能である。
例えば、それほど高い意匠性が求められず、低コストが求められるような場合は、基材として立体形状のものを選択し、これに表面保護層を設けた立体形状の耐候性積層体とすればよい。一方、より高い意匠性が求められる場合、装飾層等の形成しやすさを考慮すると、基材としてシート状のものを選択し、シート状の耐候性積層体とすればよい。このように、本発明においては、所望に応じて、また要求性能、コスト等を総合的に考慮して、耐候性積層体の最適な形態を選択すればよい。
これらの材料は、単独で使用してもよいが、例えば、紙同士の複合体等のように、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
また、基材には、上記の光安定剤、分散剤、これらのナノシェルに内包されたもの、等が含まれていてもよい。これらの剤の含有量は、上記表面保護層における、これらの剤の含有量と同じである。
また、基材と各層との密着性の向上等を図るために、プライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様を予め形成したものであってもよい。
本発明の耐候性積層体は、意匠性を向上させる観点から、装飾層を有することができる。装飾層は、例えば、図4に示されるように、基材と表面保護層との間に設けることができる。
装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層(いわゆるベタ着色層)であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよいし、またこれらを組み合わせたものであってもよい。例えば、基材、被着材の地色を着色隠蔽する場合には、ベタ着色層とすることで、着色隠蔽しつつ、意匠性を向上させることができるし、更に意匠性を向上させる観点から、ベタ着色層と絵柄層とを組み合わせてもよいし、一方、基材、被着材の地模様を生かす場合は、ベタ着色層とせずに絵柄層のみを設ければよい。
バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン−アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン−アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン−アクリル共重合体)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
樹脂層は、装飾層の保護、加工特性と、耐傷性及び耐候性の向上の観点から、所望に応じて設けられる層であり、耐候性積層体がシート状である場合、好ましく設けられる層である。
樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が好ましく挙げられる。
樹脂層は透明であっても不透明でもよく、装飾層が設けられている場合は、装飾層をより鮮明に視認できるようにする観点から、透明であることが好ましい。ここで、透明とは、無色透明の他、着色透明及び半透明も含むものである。また、着色されている場合、用いられる着色剤としては、上記の装飾層に用いられる着色剤と同様のものが好ましく挙げられる。
また、樹脂層と他の層との密着性の向上等を図るために、樹脂層の片面又は両面にプライマー層を形成する等の処理を施してもよい。
プライマー層は、主に各層の密着性の向上を図るために設けられる層である。図4では、樹脂層と表面保護層との間にプライマー層を有する耐候性積層体が示されている。
本発明の耐候性積層体において、プライマー層は、例えば、基材と表面保護層との間、基材の表面保護層を設ける面とは反対側の面(以下、「裏面」とも称する。)、樹脂層と表面保護層との間等に設けることができる。本発明の耐候性積層体がシート状である場合、耐候性積層体を被着材に貼着して耐候性部材とする場合に、該耐候性積層体と被着材との密着性を向上させることができるため、特に基材の表面保護層を設ける面とは反対側の面(裏面)にプライマー層を設けることが好ましい。
また、プライマー層には、上記の光安定剤、分散剤、これらのナノシェルに内包されたもの、等が含まれていてもよい。これらの剤の含有量は、上記表面保護層に含まれる含有量として記載した含有量の範囲から適宜選定すればよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤等の耐候剤を添加することができ、これらの耐候剤はナノシェルに内包されたものであってもよい。
本発明の耐候性積層体は、必要に応じて接着層を有することができる。本発明の耐候性積層体が樹脂層と装飾層とを有する場合、これらの層の密着性を向上させるときに、接着層は有効である。接着層を構成する接着剤としては、通常化粧シートで用いられる接着剤を制限なく用いることができる。
本発明の耐候性積層体は、凹部を有してもよい。凹部を有することで、耐候性積層体の質感(触感)の向上に伴う高級感が得られ、意匠性が向上する。
凹部は、本発明の耐候性積層体の最表面(表面保護層)に少なくとも存在していればよく、凹部の深さは表面保護層内に留まるものであってもよいし、また基材まで至るものがあってもよい。優れた質感(触感)を得る観点から、表面保護層内に留まるものだけでなく、基材まで至るもの、所望に応じて設けられる樹脂層、装飾層まで至るものが組み合わされていることが好ましい。
本発明の耐候性積層体の製造方法について、本発明の耐候性積層体として好ましい態様の一つである、シート状であって、基材、装飾層、接着層、樹脂層、プライマー層、及び表面保護層を順に有する耐候性積層体(図4に示される耐候性積層体)を例にとって、その製造方法を説明する。
まず、基材を用意し、該基材の一方の面に、装飾層を形成する。また、これとは別に樹脂層を用意し、該樹脂層の上に、プライマー層を形成し、更に硬化性樹脂組成物を塗布した未硬化層に、加熱又は電離放射線を照射して硬化させて、表面保護層を形成する。次いで、該装飾層及び樹脂層の少なくとも一方の面に接着剤を塗布し、装飾層と樹脂層とが対向するようにして貼着することにより、基材、装飾層、接着層、樹脂層、プライマー層、及び表面保護層を順に有する耐候性積層体を製造することができる。
また、基材を用意し、該基材の一方の面に、装飾層を形成した後、樹脂層を形成する樹脂組成物を用いて、樹脂層を押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーション等の方法により接着及び圧着させて積層して形成し、次いで、該樹脂層の上に、硬化性樹脂組成物を塗布した未硬化層に、加熱又は電離放射線を照射して硬化させて、表面保護層を形成することによっても、基材、装飾層、接着層、樹脂層、プライマー層、及び表面保護層を順に有する耐候性積層体を製造することができる。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
本発明の耐候性部材は、被着材と上記の本発明の耐候性積層体とを備え、該被着材、前記基材及び前記表面保護層を順に有する、というものである。図5に、本発明の耐候性部材の好ましい態様の一例の断面を示す模式図を示す。図5に示される本発明の耐候性部材20は、被着材21、接着剤層22、及び本発明の耐候性部材10を順に有しており、被着材21、接着剤層22、基材11、及び表面保護層12を順に有している。
被着材としては、上記の基材が立体形状の場合に用い得るものとして例示した、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品等が好ましく挙げられる。また、基材がシート状の場合に用い得るものとして例示した各種基材を形成する各種素材からなるものを用いることもできる。
被着材は、上記の中から用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床等の建築物の内装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材を用途とする場合は、木質部材、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましく、外壁、玄関ドア、屋根等の外装用部材、窓枠、扉等の建具を用途とする場合は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものが好ましい。
被着材と耐候性積層体とは、優れた接着性を得るため、接着剤層を介して貼り合わせられることが好ましい。すなわち、本発明の耐候性部材は、少なくとも被着材、接着剤層、基材シート、及び装飾層を順に有する部材であることが好ましい。
また、接着剤層には、粘着剤を用いることもできる。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して用いることができる。
接着剤層の厚さは特に制限はないが、優れた接着性を得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
本発明の耐候性部材は、被着材と本発明の耐候性積層体とを積層する工程を経て製造することができる。
本工程は、被着材と、本発明の耐候性積層体とを積層する工程であり、被着材の装飾を要する面と、該耐候性積層体の基材側の面とを対向させて積層する。被着材と耐候性積層体との積層する方法としては、例えば、接着剤を間に介して耐候性積層体を板状の被着材に加圧ローラーで加圧して積層するラミネート方法、接着剤を間に介して耐候性積層体を供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、被着材を構成する複数の側面に順次耐候性積層体を加圧接着して積層していくラッピング加工、また、固定枠に固定した耐候性積層体が軟化する所定の温度になるまでシリコーンゴムシートを介してヒーターで加熱し、加熱され軟化した耐候性積層体に真空成形金型を押し付け、同時に真空成形金型から真空ポンプ等で空気を吸引し耐候性積層体を真空成形金型に密着させる真空成形加工等が好ましく挙げられる。
本発明の耐候性部材は、様々な用途に用いることができ、上記の本発明の耐候性積層体を用い得る用途として例示した用途が挙げられる。
(1)耐候性の評価
各実施例及び比較例で得られた耐候性積層体について、サンシャインウェザーメーター(「WEL−300」、スガ試験機株式会社製)を用いて、ブラックパネル温度63℃、120分中18分降雨の条件下で6000時間放置する耐候試験を行った。耐候試験後の耐候性積層体の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、本明細書において、表中に以下基準とともに、「+」が記載される場合、「+」は「より優れているが、一段階上の評価には至らない」ことを示すものとする。例えば、「B+」であれば、「B」よりも優れているが、「A」には至らないことを示す。
A:外観変化は確認されなかった。
B:極軽微な色調変化及び艶変化の少なくともいずれかが確認された。
C:軽微な色調変化及び艶変化の少なくともいずれかがが確認された。
D:顕著な色調変化、艶変化、各層間の浮き、割れの少なくともいずれかが確認された。
(2)機械的強度の評価(マルテンス硬度による評価)
各実施例及び比較例で得られた耐候性積層体、上記(1)耐候性の評価における耐候試験後の耐候性積層体について、マルテンス硬度を以下の方法により測定した。
超微小硬度計(微小硬さ試験機、「ピコデンターHM−500」、フィッシャー・インスツルメント社製)を用いて、室温(23℃)において、荷重を連続的に増加させながらピラミッド形状のダイヤモンド圧子をサンプル(表面保護層の面)に押し込み、押込み深さが2μmに到達したときの試験荷重F(N)を測定し、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm2)を計算し、試験荷重F(N)を表面積Aで割ることにより、マルテンス硬度を算出した。耐候試験前のマルテンス硬度と耐候試験後のマルテンス硬度とのマルテンス硬度の変動率((耐候試験後のマルテンス硬度−耐候試験前のマルテンス硬度)/耐候試験前のマルテンス硬度×100(%))について、以下の基準で評価した。変動率が小さいほど、機械的強度に優れているといえる。
A:マルテンス硬度の変動率は40%未満だった。
B:マルテンス硬度の比率は40%以上80%未満だった。
C:マルテンス硬度の比率は80%以上だった。
(3)透明性の評価
各実施例及び比較例で得られた耐候性積層体を目視観察し、透明性について以下の基準で評価した。
A:ヘイズ感(曇り)は全くなかった。
B:ヘイズ感(曇り)はほとんどなかった。
C:ヘイズ感(曇り)は若干あるものの、実用上問題なかった。
D:ヘイズ感(曇り)があった。
両面コロナ放電処理を施したチタン白顔料を含むポリプロピレン樹脂シート(厚さ:60μm)を基材とし、該基材の一方の面に2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂をバインダーとする印刷インキをグラビア印刷法で塗布して木目模様の装飾層(厚さ:3μm)を設け、他方の面に2液硬化型ウレタン−硝化綿混合樹脂組成物を塗布して裏面プライマー層(厚さ:2μm)を形成した。
装飾層の上に、透明のポリウレタン樹脂系接着剤を塗布して接着層(乾燥後の厚さ:3μm)を形成し、透明なポリプロピレン樹脂をTダイ押出機により加熱溶融押出しして、透明な樹脂層(厚さ:80μm)を形成した。
次いで、樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、下記のポリカーボネート系ウレタン−アクリル共重合体及びアクリルポリオール樹脂の混合物100質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)5質量部とを混合した樹脂組成物を、グラビア印刷法で塗布してプライマー層(乾燥後の厚さ:4μm)を形成した。
さらに、プライマー層上に、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をロールコート法により塗布して未硬化樹脂層を形成し、電子線(加圧電圧:175KeV、5Mrad(50kGy))を照射して未硬化樹脂層を硬化させて、表面保護層(厚さ:5μm)を得た。その後、表面保護層側からエンボス加工を施して、最大深さ50μmの凹部を有する木目導管模様を形成し、耐候性積層体を得た。得られた耐候性積層体について、上記の方法により耐候性を評価した結果を、第1表に示す。
電離放射線硬化性樹脂:ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:4,000、官能基数:3)100質量部
紫外線吸収剤A:ヒドロキシフェニルトリアジン化合物(「TINUVIN479」,BASF社製)1質量部
光安定剤:10質量部(ナノシェルに内包されたビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ナノシェル:リン脂質(ホスファチジルコリン)からなる単層膜、平均一次粒子径:30nm)
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物において、光安定剤を以下の光安定剤とし、更に分散剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、耐候性積層体を作製した。得られた耐候性積層体について、上記の方法により耐候性を評価した結果を、第1表に示す。
光安定剤:10質量部(ナノシェルに内包されたビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ナノシェル:リン脂質(ホスファチジルコリン)からなる単層膜、平均一次粒子径:30nm)
分散剤:10質量部(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物において、光安定剤を以下のナノシェルに内包されていない光安定剤とし、更に分散剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、耐候性積層体を作製した。得られた耐候性積層体について、上記の方法により耐候性を評価した結果を、第1表に示す。
光安定剤:10質量部(ビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート)
分散剤:10質量部(ナノシェルに内包されたメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ナノシェル:リン脂質(ホスファチジルコリン)からなる単層膜、平均一次粒子径:30nm)
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物において、光安定剤を以下の光安定剤とし、更に分散剤を添加した電離放射線硬化性樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、耐候性積層体を作製した。得られた耐候性積層体について、上記の方法により耐候性を評価した結果を、第1表に示す。
光安定剤:10質量部(ナノシェルに内包されたビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ナノシェル:リン脂質(ホスファチジルコリン)からなる単層膜、平均一次粒子径:30nm)
分散剤:10質量部(ナノシェルに内包されたメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ナノシェル:リン脂質(ホスファチジルコリン)からなる単層膜、平均一次粒子径:30nm)
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物において、光安定剤を以下のナノシェルに内包されていない光安定剤とした以外は、実施例1と同様にして、耐候性積層体を作製した。得られた耐候性積層体について、上記の方法により耐候性を評価した結果を、第1表に示す。
光安定剤:10質量部(ビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート)
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物において、光安定剤を以下のナノシェルに内包されていない光安定剤とした以外は、実施例1と同様にして、耐候性積層体を作製した。得られた耐候性積層体について、上記の方法により耐候性を評価した結果を、第1表に示す。
光安定剤:10質量部(ビス(1−オクチルオシキ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート)
分散剤:10質量部(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
註)表中の「ナノ」はナノシェルに内包されたもの、「非ナノ」はナノシェルに内包されていないものを意味する。
実施例1と2との対比から、分散剤を用いることで耐候性、機械的強度及び透明性が向上することが確認された。これは、分散剤の効果により、光安定剤の分散性が向上し、また二次凝集等が生じにくくなるためである。実施例1と3との対比から、光安定剤としてナノシェルに内包されたものを用いなくても、分散剤としてナノシェルに内包されたものを用いることで、該分散剤の効果により、実施例1と同等の耐候性、機械的強度及び透明性を発現し得ることが確認された。また、実施例1〜3と実施例4との対比から、光安定剤及び分散剤としてナノシェルに内包されたものを用いることにより、極めて優れた耐候性、機械的強度及び透明性が得られることが確認された。
光安定剤としてナノシェルに内包されていないものを用いた比較例1では、ブリードアウトが発生し、優れた耐候性は得られず、比較例1において更にナノシェルに内包されていない分散剤を用いた比較例2では、比較例1に比べて耐候性、機械的強度及び透明性の点で向上傾向はみられたが、実施例の耐候性積層体の性能には及ばなかった。
また、実施例と比較例との対比から、比較例では光安定剤がブリードアウトしてしまい優れた耐候性が得られなかったが、これと同量の光安定剤を用いる実施例では、ブリードアウトが発生せず、優れた耐候性が得られている。よって、本発明によれば、ナノシェルに内包された光安定剤、分散剤を用いることにより、より多量の光安定剤を用いても該光安定剤のブリードアウトが発生することなく、耐候性を向上することができるようになった、といえる。
11.基材
12.表面保護層
13.光安定剤
14.分散剤
15.装飾層
16.接着層
17.樹脂層
18.プライマー層
Claims (12)
- 基材と、該基材の少なくとも一部を被覆する表面保護層とを有し、
該表面保護層が、
(a)ナノシェルに内包された光安定剤を含有する、又は
(b)光安定剤及び分散剤を含有し、該光安定剤及び分散剤の少なくとも一方がナノシェルに内包されたものである、
耐候性積層体。 - 前記(b)において、分散剤がナノシェルに内包されたものである請求項1に記載の耐候性積層体。
- 前記(b)において、光安定剤及び分散剤がナノシェルに内包されたものである請求項1又は2に記載の耐候性積層体。
- 前記光安定剤が、ラジカル捕捉剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐候性積層体。
- 前記ラジカル捕捉剤が、ヒンダードアミン系光安定剤である請求項4に記載の耐候性積層体。
- 前記分散剤が、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーンオイル、高分子界面活性剤、脂肪酸金属塩、ワックス及び変性樹脂から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐候性積層体。
- 前記ナノシェルが、リン脂質からなる単層膜である請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐候性積層体。
- 前記ナノシェルの一次粒子径が、300nm以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐候性積層体。
- シート状である請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐候性積層体。
- 前記表面保護層が、シート状である基材の少なくとも一方の面の全面を被覆する請求項9に記載の耐候性積層体。
- 前記基材と前記表面保護層との間に装飾層を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の耐候性積層体。
- 被着材と請求項1〜11のいずれか1項に記載の耐候性積層体とを備え、該被着材、前記基材及び前記表面保護層を順に有する耐候性部材。
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JP2007119623A (ja) * | 2005-10-28 | 2007-05-17 | Masamitsu Nagahama | 塗料、塗料の製造方法、粒状物の使用 |
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JP2017043099A (ja) * | 2015-08-26 | 2017-03-02 | 凸版印刷株式会社 | 化粧シート |
JP2018089970A (ja) * | 2016-11-29 | 2018-06-14 | 凸版印刷株式会社 | 化粧シート及び化粧シートの製造方法 |
-
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