以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図10に、本発明に係る支持構造物及び椅子、並びに、支持構造物の製造方法の実施形態の一例を示す。本実施形態では、本発明に係る手法や構造が椅子の座を構成する臀部支持構造物1に適用された場合を例に挙げて説明する。
本発明の説明における「平面視/平面図」は、臀部支持構造物1が座を構成するものとして椅子に取り付けられた状態における各構成部材の「平面視/平面図」を意味する。また、本発明の説明における「上」や「下」並びに「前」や「後」は、臀部支持構造物1が座を構成するものとして椅子に取り付けられた状態における各構成部材の「上」や「下」並びに「前」や「後」を意味し、これら「上」や「下」並びに「前」や「後」は椅子の座としての臀部支持構造物1に座った着座者を基準として定義される。
本実施形態の支持構造物(具体的には、臀部支持構造物1)は、椅子の着座者の身体を支える支持面を構成する膜状部材2と当該膜状部材2の周縁を保持する支持部材3とを有し、膜状部材2の全周縁端(即ち、膜状部材2の全周に亙る周縁の端)が支持部材3の内部に位置していると共に、膜状部材2と支持部材3とが一回の成形で一体成形される際に支持部材3を成形するための成形型である第一の型10の成形溝12及び第二の型20の成形溝22(尚、これら成形溝12,22によってキャビティ19が形成される)の内部に膜状部材2の周縁を止(とど)めるための膜押圧部材としての膜押圧部32が存在していた膜押圧部材穴隙3aが支持部材3に形成されているようにしている。
また、本実施形態の支持構造物の製造方法は、椅子の着座者の身体を支える支持面を構成する膜状部材2と当該膜状部材2の周縁を保持する支持部材3とを有する臀部支持構造物1を製造する際に、支持部材3を成形するための成形型である第一の型10の成形溝12及び第二の型20の成形溝22(尚、これら成形溝12,22によってキャビティ19が形成される)の内部に膜状部材2の全周縁端(即ち、膜状部材2の全周に亙る周縁の端)が位置すると共に膜状部材2の周縁が膜押圧部材としての膜押圧部32によって前記成形溝12,22の内部に止(とど)められた状態で膜状部材2と支持部材3とが一回の成形で一体成形されるようにしている。
臀部支持構造物1は、着座者の身体(特に、臀部)を支える支持面を構成する膜状部材2と、当該膜状部材2の周縁を保持し支持する支持部材3とを有する。なお、図1では、膜状部材2を半透明で表すようにしている。
支持部材3は、合成樹脂製であると共に、平面視において概ね矩形の枠状に形成される。
支持部材3の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂またはポリエステルといった熱可塑性合成樹脂、或いは、熱硬化性合成樹脂が用いられ得る。支持部材3は、全体が単一材質であるものとして形成されるようにしても良く、また、強度が必要とされる箇所に部分的にグラスファイバーや炭素繊維などの補強材/強化材が充填されたものとして形成されるようにしても良い。
膜状部材2としては、弾性を有すると共に着座者を支持可能な張地(例えば、織物,編み物)が用いられ得る。
膜状部材2の材質は、弾性を発揮して着座者の体重を支持可能であると共に支持部材3との一体化(即ち、一体成形)が可能であれば特定の材質に限定されるものではなく、膜部材(例えば、織物,編み物)を形成・構成し得るものとして用いられ得るいずれの材質であっても良い。膜状部材2として、具体的には例えば、ポリエステル製のメッシュシートが用いられ得る。
膜状部材2の周縁には、臀部支持構造物1の成形に用いられる射出成形型へと当該膜状部材2をセットする際の位置決めや当該膜状部材2の弛み防止を企図して前記射出成形型に係止させるために、相互に適当な間隔が空けられて複数の係止孔2aが形成される。
膜状部材2と支持部材3とは、支持部材3が射出成形されることにより、枠状の支持部材3と膜状部材2の周縁部とが一体化されて支持部材3の内側に膜状部材2が張設された状態で一体として形成される。そして、膜状部材2の周縁部が支持部材3によって保持されて着座者を支持するための張力が維持される。
膜状部材2と支持部材3との一体化を伴う臀部支持構造物1の形成は、概要としては、射出成形のための第一の型10に膜状部材2がセットされた状態で第一の型10へと第二の型20が組み合わせられ、第一の型10に形成された成形溝12と第二の型20に形成された成形溝22とによって構成されるキャビティ19へと支持部材3の材料が流し込まれて当該材料が固化することにより、膜状部材2の周縁に支持部材3が一体的に形成されることによって行われる。
射出成形型は、第一の型10,第二の型20,及び押さえ具30を有するものとして構成される。
第一の型10と第二の型20とについて、これら二つの型が組み合わされた際に当接したり対向したりする各々の面のことをそれぞれの「対向面」と呼ぶ。なお、射出成形が行われる際には、第一の型10の「対向面」は膜状部材2や支持部材3のうちの下側の面に相当する面や部位と対向したり当接したりし、第二の型20の「対向面」は膜状部材2や支持部材3のうちの上側の面に相当する面や部位と対向したり当接したりする。
第一の型10は、対向面に膜状部材設置台部11を有すると共に当該膜状部材設置台部11を取り囲むように形成された成形溝12を有し、さらに、当該成形溝12内に複数の係止ピン13及び膜状部材押圧台部15を備えると共に、成形溝12と連通するように形成された複数の貫通孔14を有する。
第一の型10の膜状部材設置台部11は、射出成形が行われる際に膜状部材2がセット(別言すると、設置,載置)されるための構造として、第一の型10の対向面の中央の領域に設けられる。
膜状部材設置台部11の表面の形状(言い換えると、対向面の形状)は、臀部支持構造物1として製造される膜状部材2の形状(別言すると、臀部支持構造物1における座面の形状)に合わせた形状の曲面に形成される。
第一の型10の成形溝12は、支持部材3のうちの上面及びその近傍を除く部分の形状を成形するための構造として、膜状部材設置台部11を取り囲むように設けられる。
成形溝12は、支持部材3のうちの上面及びその近傍を除く部分の形状に相当する縦断面(別言すると、開口面に対する直交断面)を有する凹部として形成される。
第一の型10の係止ピン13は、膜状部材2の周縁を成形溝12内に於いて係止して膜状部材設置台部11への膜状部材2のセット(設置)を容易にすると共に膜状部材2の周縁端を成形溝12内に確実に位置させるための構造/仕掛けとして、成形溝12内に設けられる。
係止ピン13は、単なる棒状の態様(具体的には例えば、凹凸の無い滑らかな側周面の円柱状)に形成される。
第一の型10の成形溝12内の複数の係止ピン13と膜状部材2の周縁の複数の係止孔2aとは、膜状部材2が膜状部材設置台部11に設置された状態においてそれぞれの位置が一致するように設けられたり形成されたりする。
第一の型10の貫通孔14は、成形溝12の底部に相当する部分に、対向面視において細長状の孔として複数個形成される。
細長孔状の貫通孔14のそれぞれは、膜状部材設置台部11を取り囲むように形成された成形溝12の対向面視における形状に各々の長手方向が沿うように形成される。したがって、複数の貫通孔14は、全体として、第一の型10の膜状部材設置台部11を断続的に取り囲むように形成される。
貫通孔14は、対向面視において、隣り合う係止ピン13同士の間に形成される。
第一の型10の膜状部材押圧台部15は、膜状部材2の周縁を成形溝12内に於いて保持して膜状部材2の周縁端を成形溝12内に確実に位置させるために用いられる構造/仕掛けとして、成形溝12内に設けられる。
膜状部材押圧台部15は、具体的には、対向面視において貫通孔14と膜状部材設置台部11との間に、貫通孔14と隣接して(言い換えると、貫通孔14に沿って)、細長状の、対向面の形状が平坦面若しくはなだらかな曲面の台座として複数個形成される。
細長台座状の膜状部材押圧台部15のそれぞれは、貫通孔14に沿って形成され、したがって貫通孔14と同様に、膜状部材設置台部11を取り囲むように形成された成形溝12の対向面視における形状に各々の長手方向が沿うように形成され、そして、複数の膜状部材押圧台部15は、全体として、第一の型10の膜状部材設置台部11を断続的に取り囲むように形成される。
第二の型20は、対向面に、膜状部材当接部21を有すると共に、当該膜状部材当接部21を取り囲むように形成された成形溝22を有する。
第二の型20の膜状部材当接部21は、射出成形が行われる際に、第一の型10の膜状部材設置台部11にセット(別言すると、設置)されている膜状部材2へと面的に当接して当該膜状部材2を膜状部材設置台部11へと押し付けるための構造として、第二の型20の対向面の中央の領域に設けられる。
膜状部材当接部21の表面の形状(言い換えると、対向面の形状)は、第一の型10の膜状部材設置台部11の表面(言い換えると、対向面)と重なって表面同士が適合する曲面に形成される。
第二の型20の成形溝22は、支持部材3のうちの上面及びその近傍の部分の形状を成形するための構造として、膜状部材当接部21を取り囲むように設けられる。
成形溝22は、支持部材3のうちの上面及びその近傍の部分の形状に相当する縦断面(別言すると、開口面に対する直交断面)を有する凹部として形成される。
第一の型10の成形溝12と第二の型20の成形溝22とは、第一の型10と第二の型20とが組み合わされた状態で相互に対向する位置に形成され、これら二つの成形溝12,22によって支持部材3を形成するために当該支持部材3の材料が流し込まれるキャビティ19が構成される。
押さえ具30は、本体部31と、当該本体部31から起立する透き歯状に(別言すると、空隙歯列として)形成される複数の膜押圧部32とを有する。なお、押さえ具30は、例えば、第一の型10や第二の型20と同様の材料/材質によって形成され得るものであり、また、十分な耐熱性と強度とを発揮し得るものであれば第一の型10や第二の型20とは異なる材料/材質によっても形成され得る。
押さえ具30は、複数の膜押圧部32のそれぞれが第一の型10の成形溝12に形成されている複数の貫通孔14の各々に差し込まれて成形溝12へと進入した状態で、第一の型10と組み合わされて用いられる。
第一の型10の成形溝12内の複数の貫通孔14と押さえ具30の複数の膜押圧部32とは、各膜押圧部32が貫通孔14の各々へと差し込まれるようにするため、第一の型10と押さえ具30とが組み合わされて用いられる状態においてそれぞれの位置が一致するように形成されたり設けられたりする。
したがって、複数の膜押圧部32は、全体として、第一の型10と押さえ具30とが組み合わされて用いられる状態において第一の型10の膜状部材設置台部11を断続的に取り囲むように形成される。
各膜押圧部32は、本体部31から起立する部分である胴部32aと、当該胴部32aの先端部が鉤形に屈曲して形成される膜押圧爪32bとを有する。
各膜押圧爪32bは、胴部32aから、第一の型10の膜状部材押圧台部15の上方へとせり出すように突出する(つまり、膜状部材設置台部11の側へと屈曲して膜状部材押圧台部15の側へと突き出る)ものとして形成される。
ここで、膜状部材2の平面視における輪郭形状と、複数の膜押圧部32の胴部32aによって取り囲まれる領域の輪郭形状とが、一致する若しくは概ね一致するように調整される。さらに、膜状部材2の平面視における外形線(別言すると、周縁端)が、第一の型10の成形溝12内に位置する(言い換えると、存在する)ように調整される。
押さえ具30は、図示していない駆動機構により、第一の型10の貫通孔14からの膜押圧部32の突出の程度が変化するように、延いては第一の型10の膜状部材押圧台部15の対向面に対する膜押圧部32の膜押圧爪32bの離隔の程度が変化するように、第一の型10に対して相対的に移動可能であるように構成される。
臀部支持構造物1の製造方法の具体的な内容を以下に説明する。
ここで、本発明の説明では、第一の型10に対する押さえ具30の移動の向きについて、図1や図6乃至図10における上向きのことを「膜押圧部32が突き出る向き」と言うと共に下向きのことを「膜押圧部32が引き込む向き」と言う。
臀部支持構造物1の製造方法の手順としては、まず、膜状部材押圧台部15の対向面と膜押圧部32の膜押圧爪32bとが離隔してこれらの間に隙間が生じるように、第一の型10に対する押さえ具30の相対位置が膜押圧部32が突き出る向きに駆動機構(図示していない)によって調節される。
第一の型10の膜状部材設置台部11に膜状部材2が広げられてセット(別言すると、設置)され、当該膜状部材2の周縁に形成されている複数の係止孔2aのそれぞれへと係止ピン13を差し込ませるようにして当該膜状部材2の周縁が第一の型10に係止される(具体的には、複数の係止孔2aのそれぞれが各係止ピン13に係止される)。
このとき、膜状部材押圧台部15と膜押圧部32の膜押圧爪32bとの間には上述のように駆動機構による調節によって隙間が生じており、当該隙間へと膜状部材2の周縁が入り込ませられる。
第一の型10の膜状部材設置台部11に広げられて設置された膜状部材2の周縁が係止ピン13に係止されたり膜状部材押圧台部15と膜押圧部32の膜押圧爪32bとの間の隙間へと入り込ませられたりした状態で、第一の型10に対する押さえ具30の相対位置が膜押圧部32が引き込む向きに駆動機構によって調節され、膜押圧部32の膜押圧爪32bによって膜状部材2の周縁が膜状部材押圧台部15へと押さえ付けられて止(とど)められる。
これにより、膜状部材2の周縁が、膜押圧爪32bによって膜状部材押圧台部15の対向面へと押さえ付けられて止(とど)められる(言い換えると、膜状部材押圧台部15と膜押圧爪32bとの間に挟まれて係止されて固定される)。
膜状部材設置台部11に膜状部材2が広げられてセット(設置)され且つ当該膜状部材2の周縁が係止孔2aを介して係止ピン13に係止されていると共に膜押圧爪32bによって押さえ付けられ止(とど)められて固定されている状態の第一の型10へと、図示していない駆動機構により、第二の型20が合わせられて密着させられる(言い換えると、合体させられる)。
このとき、第一の型10の成形溝12と第二の型20の成形溝22とによって形成/構成されるキャビティ19内に、係止ピン13及び膜押圧部32(特に、膜押圧爪32b)が存在し、また、膜状部材2の平面視における輪郭全周分の周縁(特に、外形端)が位置する。
ここで、本発明では、第一の型10の成形溝12と第二の型20の成形溝22とによって形成/構成されるキャビティ19内に膜状部材2の縁や縁端が位置する(言い換えると、存在する)ことを、膜状部材2の縁や縁端が成形溝12,22を区画する面、即ちキャビティ19の内周面と接触している態様も含めて、「膜状部材2の縁/縁端が成形溝12,22の内部に位置/存在する」と言い表す。
なお、キャビティ19内の各係止ピン13及び各膜押圧部32と第二の型20(具体的には、成形溝22を区画する面、即ち、キャビティ19の内周面)との間には空隙が生じるように各係止ピン13,各膜押圧部32,及び成形溝22に纏わる寸法が調整される。
第一の型10と第二の型20とが組み合わせられた状態で、支持部材3の材料(例えば、溶融状態の樹脂)がキャビティ19へと流し込まれる。なお、支持部材3の材料を流し込むための流路が、成形溝12,22と連通する貫通孔として、第一の型10と第二の型20とのうちの少なくとも一方に設けられる(図示していない)。
支持部材3の材料がキャビティ19へと流し込まれる際に、膜状部材2の周縁は係止孔2aを介して係止ピン13に係止された上で膜状部材押圧台部15と膜押圧爪32bとの間に挟まれて固定されているので、流し込まれる材料によって膜状部材2が移動してしまったり膜状部材2の周縁がめくれてしまったりすることがなく、膜状部材2の平面視における輪郭全周分の周縁(特に、外形端)がキャビティ19内の所定位置に位置したままの状態が確実に維持される。
そして、キャビティ19へと流し込まれた材料が固化した後に、第二の型20が第一の型10から引き離され、膜状部材2の周縁に沿って枠状の支持部材3が一体的に形成された状態の臀部支持構造物1が第一の型10から取り外される。
臀部支持構造物1が第一の型10から取り外される際には、膜状部材押圧台部15の対向面と膜押圧部32の膜押圧爪32bとが離隔してこれらの間に隙間が生じるように、第一の型10に対して押さえ具30が膜押圧部32が突き出る向きに移動させられる。
ここで、第一の型10から取り外された臀部支持構造物1の支持部材3の下面には、成形時に膜押圧部32の膜押圧爪32bや膜状部材押圧台部15が存在すると共に成形後に臀部支持構造物1が第一の型10から取り外される際に膜押圧爪32bが通過するための空間/空洞である膜押圧部材穴隙3aが、成形時に第一の型10のうち成形溝12を区画する部位の一部が存在していた空間/空洞である成形型穴隙3bと一体のものとして(言い換えると、連通するものとして)形成されている(図10;尚、同図(A)においては、成形時における膜押圧部32の胴部32a及び膜押圧爪32bを仮想物として表していると共に、第一の型10のうちの成形溝12を区画する部位の一部を当該一部自体の図示は省略しつつ当該一部が存在する空間を括弧を付した符号10として表している)。
なお、膜押圧部材穴隙3aは、支持部材3を成形する際に膜状部材2の周縁を第一の型10の膜状部材押圧台部15へと押し付ける膜押圧部32の膜押圧爪32bや前記膜状部材押圧台部15が存在していた空隙であるとも言える。
そして、支持部材3の、膜押圧部材穴隙3a内に、膜状部材2の周縁端が存在する(別言すると、位置する)。
ここで、本発明では、膜押圧部材穴隙3aは支持部材3に形成されて当該支持部材3の一部を構成する部位であると捉え、膜状部材2の縁や縁端が膜押圧部材穴隙3aに存在/位置することを「膜状部材2の縁/縁端が支持部材3の内部に存在/位置する」と言い表す。
また、係止ピン13が設けられている部位では、成形時に係止ピン13が存在する空間/空洞である係止部材穴隙が、成形時に第一の型10のうち成形溝12を区画する部位の一部が存在していた空間/空洞である成形型穴隙3bと一体のもの(言い換えると、連通するもの)として形成されている。
以上により、膜状部材2の周縁に沿って枠状の支持部材3が一体的に形成されている(言い換えると、膜状部材2と支持部材3とが一体化された)一体成形品として臀部支持構造物1が製造される。
なお、膜状部材2への、着座者の身体を支える支持面を構成するものとして必要とされる弾性力を発揮させる張力の付与は、第一の型10へと膜状部材2を設置する際に予張力を与えておくようにしたり、一体成形後にヒートセットによって与えるようにしたり、或いは、第一の型10への設置の際の予張力の付与と一体成形後のヒートセットによる付与とを併用するようにしたりする。なお、ヒートセットとは、加熱した熱源を膜状部材2に当接或いは接近させることで膜状部材2を熱収縮させることによって予張力を付与することをいう。
なお、膜状部材2と支持部材3とを一体化して一体成形する方法は、上述の射出成形法に限られるものではなく、圧縮成形法や注型法などの他の方法であっても良い。
以上のように構成された支持構造物及び椅子並びに支持構造物の製造方法によれば、膜状部材2の周縁を膜押圧爪32bによって第一の型10の膜状部材押圧台部15へと押し付けて止(とど)めるようにしているので、枠体である支持部材3の内部に膜状部材2の周縁端を確実に存在させて(別言すると、位置させて)膜状部材2の周縁端が支持部材3の外側に出てしまうことを防止することができる。このため、不良の無い臀部支持構造物1を確実に製造することが可能になる。
以上のように構成された支持構造物及び椅子並びに支持構造物の製造方法によれば、また、枠体である支持部材3の内部に膜状部材2の周縁端が確実に存在/位置するので、支持部材3の外側に出てしまう膜状部材2を覆うための二次成形を行うことなく一回の成形で臀部支持構造物1を完成させるようにすることもでき、且つ、支持部材3の成形後に当該支持部材3の外側の膜状部材2の周縁端部を切断する作業工程が必要とされることなく膜状部材2と枠状の支持部材3とを一体成形して臀部支持構造物1を完成させることができる。このため、余計な手間・工程を経ることなく効率的に良好な臀部支持構造物1を製造することが可能になる。
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では本発明に係る手法や構造が椅子の座を構成する臀部支持構造物1に適用されるようにしているが、本発明の適用対象は、椅子の座としての臀部支持構造物に限定されるものではなく、椅子の背凭れとしての背面部支持構造物や、椅子の肘乗せとしての腕部支持構造物や、椅子のヘッドレストとしての頭部支持構造物などでも良く、着座者の身体を支える支持面を有する種々の構造が含まれる。
また、上述の実施形態では膜状部材2の全周縁(即ち、膜状部材2の全周に亙る周縁)が支持部材3によって保持されるようにしているが、膜状部材の周縁のうちの少なくとも一部が支持部材によって保持されている態様であれば本発明は適用可能である。具体的には例えば、平面視において概ね矩形の枠状に形成された支持部材のうちの前後方向若しくは左右方向において対向する二辺のみにおいて膜状部材が保持される(従って、支持部材のうちの残りの二辺によっては膜状部材は拘束されない)ようにしたり、平面視において概ねコ字形やU字形に形成された支持部材の三辺若しくは対向する二辺のみにおいて膜状部材が保持されるようにしたりしても良い。
また、上述の実施形態では膜状部材2と支持部材3とが全周縁に亙って(言い換えると、切れ目無く連続して)一体的に成形されるようにしているが、膜状部材の周縁のうちの少なくとも一部において膜状部材と支持部材とが一体的に成形されている態様であれば本発明は適用可能である。そして、上述のことも踏まえると、本発明は、膜状部材の周縁のうち、支持部材によって保持される部分であり、さらに、膜状部材と支持部材とが一体的に成形される部分に対して適用可能である。
また、上述の実施形態では貫通孔14及び膜状部材押圧台部15が成形溝12の対向面視における形状に各々の長手方向が沿うように形成されると共に全体として膜状部材設置台部11を断続的に取り囲むように形成されるようにしているが、貫通孔14(加えて、膜押圧部32の胴部32a)や膜状部材押圧台部15の形態は上述の実施形態における形態には限定されない。
また、上述の実施形態では第一の型10の成形溝12内には何も設けられていないが、膜状部材2の支(つか)え/突っ支いとして機能して成形溝12内に於ける膜状部材2の位置を安定させるための構造/仕掛けとして膜状部材支持部16が成形溝12内に設けられるようにしても良い(図11)。
膜状部材支持部16は、具体的には、対向面視において膜状部材押圧台部15と膜状部材設置台部11との間に、これら膜状部材押圧台部15及び膜状部材設置台部11とは離間して(言い換えると、膜状部材押圧台部15との間及び膜状部材設置台部11との間のそれぞれに、支持部材3の材料が流れ込むキャビティ19の一部としての溝が設けられて)細長状の突部として複数個形成される。
膜状部材支持部16について、膜状部材押圧台部15と膜状部材設置台部11との間に形成されるとは、近傍(更に言えば、直近)の膜押圧部32や膜状部材押圧台部15よりも対向面視において膜状部材設置台部11寄りの位置(言い換えると、膜状部材2及び支持部材3の平面視において近傍(直近)の膜押圧部32や膜状部材押圧台部15よりも内側)に形成されるという意味である。
具体的には、膜状部材設置台部11から見た膜状部材押圧台部15と膜状部材支持部16とが視線方向において重なっていても重なっていなくてもどちらでも良く、したがって対向面視において隣り合う膜状部材押圧台部15同士の間で且つこれら隣り合う膜状部材押圧台部15同士を結ぶラインよりも膜状部材設置台部11寄りの位置に膜状部材支持部16が形成されても良い。
膜状部材支持部16は、本実施形態では、支持部材3のうちの前辺に相当する部分(即ち、臀部支持構造物1の前端部)のみに対して設けられる。
しかしながら、膜状部材支持部16が設けられる箇所/範囲は、支持部材3のうちの前辺に相当する部分に限られるものではなく、左右の側辺に相当する部分に設けられるようにしたり、後辺に相当する部分に設けられるようにしたりしても良い。
付け加えると、膜状部材支持部16は、枠状の支持部材3を構成する各辺のうちの一部の辺のみに設けられるようにしても良く、或いは、枠状の支持部材3を構成する各辺の全ての辺に(言い換えると、枠状の支持部材3の全周に亙って)設けられるようにしても良い。
膜状部材支持部16は、また、枠状の支持部材3を構成する辺の各々において、各辺のうちの一部分のみに設けられるようにしても良く、或いは、各辺の全体(別言すると、全長)に亙って設けられるようにしても良い。
膜状部材支持部16は、さらに、枠状の支持部材3を構成する辺の各々において、連続的に一つ(別言すると、一体)設けられるようにしても良く、或いは、断続的に複数個設けられるようにしても良い。
膜状部材支持部16の形状は、成形溝12内に於いて膜状部材2を支(ささ)えて当該膜状部材2の成形溝12内に於ける位置を安定させ得るものであれば特定の形態に限定されるものではなく、図に示す例のように成形溝12の対向面視における形状に各々の長手方向が沿う細長状の台座として設けられるようにしても良く、或いは、例えば棒状の柱体として設けられるようにしても良い。
臀部支持構造物1が製造される際(特に、支持部材3の材料がキャビティ19へと流し込まれる際)に、成形溝12内に設けられている膜状部材支持部16が、成形溝12内に於ける膜状部材2の位置を安定させる仕組みとして機能する。
具体的には、膜状部材支持部16が無い場合には、膜状部材設置台部11に膜状部材2が設置されると共に第一の型10と第二の型20とが組み合わされた状態で支持部材3の材料がキャビティ19へと流し込まれると、膜状部材2(特に、縁の端を除く、膜状部材2の平面視において縁の端よりも内側の部分)が膜状部材設置台部11の方へと寄ってしまい、更には膜状部材2が膜状部材設置台部11へと張り付いてしまう場合がある(図12)。
そして、膜状部材2(特に、縁の端を除く、膜状部材2の平面視において縁の端よりも内側の部分)が膜状部材設置台部11の方へと寄ってしまった場合には、臀部支持構造物1として形成された状態の膜状部材2が所望の形状ではない形状に張設されてしまったり前記膜状部材2に皺や弛みが生じてしまったりなどすることが考えられ、また、臀部支持構造物1として形成された状態の膜状部材2(特に、縁の端を除く、膜状部材2の平面視において縁の端よりも内側の部分)が支持部材3の表面(特に、上面や側面)に露出してしまうことも考えられる。
一方、成形溝12内に膜状部材支持部16が設けられた場合には、支持部材3の材料がキャビティ19へと流し込まれた際に膜状部材2が膜状部材設置台部11の方へと寄ろうとしても、膜状部材支持部16が障害物(別言すると、支(つか)え,突っ支い)になって膜状部材設置台部11の方へと近寄ることができない(図13)。このため、膜状部材2の周縁部は成形溝12内に於いて位置が安定して成形溝12内に膜状部材2(特に、縁の端を除く、膜状部材2の平面視において縁の端よりも内側の部分)の周縁端が確実に位置するようになる。
なお、製造される臀部支持構造物1において、膜状部材支持部16が設けられている部位には、成形時に膜状部材支持部16が存在する空間/空洞である支持部穴隙3cが、成形時に第一の型10のうち成形溝12を区画する部位の一部が存在していた空間/空洞である成形型穴隙3bと一体のもの(言い換えると、連通するもの)として形成される(図14)。
また、成形時に膜状部材支持部16が存在する空間/空洞である支持部穴隙3cを挟んで対向する一対のリブ3d,3eが形成される。具体的には、成形型穴隙3bと支持部穴隙3cとの間に下向きに突出する第一のリブ3dが形成され、支持部穴隙3cと膜状部材設置台部11との間に下向きに突出する第二のリブ3eが形成される。これら一対のリブ3d,3eは、支持部穴隙3cを挟んで形成される二重のリブであるとも言える。なお、これら一対のリブ3d,3eは、本発明に特有の製造方法・構成の結果として形成されるものであり、補強のためだけに形成されるものではない。
また、上述の形態では膜状部材支持部16が第一の型10の一部として(別言すると、一体のものとして)形成されるようにしているが、膜状部材支持部16は第一の型10とは別体のものとして設けられるようにしても良い。具体的には例えば、上述の実施形態における膜状部材支持部16の代わりに、当該膜状部材支持部16の位置・部分にインサート部材17が設置されるようにしても良い。この場合は、第一の型10の膜状部材押圧台部15と膜状部材設置台部11との間にインサート部材17が設置された状態で膜状部材設置台部11に膜状部材2がセットされて成形が行われ(図15)、臀部支持構造物1が第一の型10から取り外される際にインサート部材17も支持部材3と一緒に(言い換えると、支持部材3と一体になって)取り外される。この場合には、また、インサート部材17を挟んで対向する一対のリブ3d,3eが形成される。具体的には、成形時に第一の型10のうち成形溝12を区画する部位の一部が存在していた空間/空洞である成形型穴隙3bとインサート部材17との間に下向きに突出する第一のリブ3dが形成され、インサート部材17と膜状部材設置台部11との間に下向きに突出する第二のリブ3eが形成される。これら一対のリブ3d,3eは、インサート部材17を挟んで形成される二重のリブであるとも言える。
ここで、係止ピン13,膜押圧部32,並びに膜状部材支持部16若しくはインサート部材17の位置関係について、具体例を挙げると、例えば、相互に隣り合う膜押圧部32同士の間に係止ピン13が設けられ、また、近傍(更に言えば、直近)の係止ピン13よりも対向面視において膜状部材設置台部11寄りの位置(言い換えると、膜状部材2及び支持部材3の平面視において近傍(直近)の係止ピン13よりも内側)に膜状部材支持部16/インサート部材17が設けられたり、近傍(更に言えば、直近)の膜押圧部32よりも対向面視において膜状部材設置台部11寄りの位置(言い換えると、膜状部材2及び支持部材3の平面視において近傍(直近)の膜押圧部32よりも内側)に膜状部材支持部16/インサート部材17が設けられたりすることが考えられる。
ただし、係止ピン13,膜押圧部32,並びに膜状部材支持部16若しくはインサート部材17の位置関係は上述の具体例に限定されるものではなく、他の態様で各部・部材13,32,16,17が配設されるようにしても良い。
なお、相互に隣り合う膜押圧部32同士の間に係止ピン13が設けられたり、係止ピン13よりも内側の近傍に膜状部材支持部16/インサート部材17が設けられたり、或いは、膜押圧部32よりも内側の近傍に膜状部材支持部16/インサート部材17が設けられたりすることにより、これらがより良く協調・協働して膜状部材2と支持部材3との一体成形が一層適切に行われる。特に、膜状部材2の仮止めの仕組みとして係止ピン13は有用・有効である一方で当該係止ピン13の設置箇所には膜押圧部32を設けることができないところ、膜押圧部32が無い箇所では支持部材3の材料の流入圧力によって膜状部材2がキャビティ19内で動いてしまうのに対し、係止ピン13の近傍に膜状部材支持部16/インサート部材17を設けることによって膜状部材2の位置を安定させることができるので膜状部材2と支持部材3との一体成形を一層適切に行うことが可能になる。
以上のように構成された膜状部材支持部16が成形溝12内に設けられるようにしたりインサート部材17が成形溝12内に設置されるようにしたりした場合には、これら膜状部材支持部16やインサート部材17を支(つか)え/突っ支いとして機能させて成形溝12内に於ける膜状部材2の位置を安定させることによって膜状部材2の周縁部を支持部材3の内部に確実に存在させて(別言すると、位置させて)膜状部材2の周縁部(特に、縁の端を除く、膜状部材2の平面視において縁の端よりも内側の部分)が支持部材3の表面(特に、上面や側面)に露出してしまうことを防止することができるので、不良の無い臀部支持構造物1を確実に製造することが可能になる。