以下、本発明に係るカテーテル組立体について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
図1に初期状態を示すカテーテル組立体10は、患者(生体)に輸液や輸血等を行う場合に適用され、患者の体内に穿刺及び留置されて薬液等の導入部を構築する。カテーテル組立体10は、末梢静脈カテーテルとして構成され得る。カテーテル組立体10は、末梢静脈カテーテルよりも長さが長いカテーテル(例えば、中心静脈カテーテル、PICC、ミッドラインカテーテル等)として構成されてもよい。また、カテーテル組立体10は、静脈用カテーテルに限らず、末梢動脈カテーテル等の動脈用カテーテルとして構成されてもよい。
図1に示すように、カテーテル組立体10は、カテーテル12と、カテーテル12の基端に設けられた中空のカテーテルハブ14と、カテーテルハブ14に設けられて血液の逆流を防止するための止血弁16と、使用前の初期状態でカテーテル12の内腔13、カテーテルハブ14の内腔15及び止血弁16に抜去可能に貫通配置された内針18と、内針18の基端に設けられた針ハブ20とを備える。カテーテル組立体10は、初期状態で、カテーテル12及び内針18を径方向に重ねた多重管構造(多重管部)を形成している。
カテーテル12は、軸方向に沿って外径及び内径が一定のストレート部22と、ストレート部22から先端方向に延出するとともに先端方向に向かって外径及び内径が縮径するテーパ状の縮径部24とを有する。ストレート部22の内周面と内針18の外周面との間には、血液が流通可能な程度の空間(血液流路26)が形成されている。初期状態で、縮径部24の内周面は、内針18の外周面と全周に亘って液密に密着している。
カテーテル12は、その一部又は全部が透明に構成されている。これにより、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時にカテーテル12を通して血液を目視することができる。よって、カテーテル12が血管300(図4参照)を確保したか否かを容易に確認することができる。
カテーテル12の構成材料としては、樹脂材料、特に、軟質樹脂材料が好適である。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物等が挙げられる。
カテーテル12の長さは、特に限定されず、用途や諸条件等に応じて適宜設定される。カテーテル12の長さは、例えば、8〜500mm程度に設定され、あるいは10〜400mm程度に設定され、あるいは12〜300mm程度に設定される。
カテーテルハブ14は、カテーテル12の基端に固定されている。カテーテルハブ14の基端は、初期状態で、針ハブ20が離脱可能にしている。カテーテルハブ14の基端は、図示しない他のデバイス(輸液ライン等)と接続可能なポート部を構成する。カテーテルハブ14は、その一部又は全部が透明に構成されている。これにより、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時にカテーテルハブ14を通して血液を目視することができる。よって、カテーテル12が血管300を確保したか否かを容易に確認することができる。
カテーテルハブ14の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。
上記のように構成されるカテーテルハブ14は、カテーテル12が血管300内に挿入された状態で患者の皮膚302(図4参照)上に露出され、テープ等により貼り付けられてカテーテル12とともに留置される。
図2に示すように、止血弁16は、カテーテルハブ14の内腔15に設けられている。止血弁16は、弾性変形可能に構成されている。止血弁16の構成材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。
止血弁16の外周面は、止血弁16の弾性力によってカテーテルハブ14の内周面に全周に亘って液密に接触している。これにより、止血弁16は、カテーテルハブ14に対して保持される。
止血弁16には、カテーテル組立体10を組み立てる前の状態で、貫通孔28(スリット)が予め形成されている。そして、カテーテル組立体10を組み立てる際に、止血弁16の貫通孔28に内針18が通される。ただし、止血弁16には、カテーテル組立体10を組み立てる前の状態で、貫通孔28が形成されていなくてもよい。この場合、カテーテル組立体10を組み立てる際に、内針18を止血弁16に刺し通すことにより止血弁16に貫通孔28が形成される。
止血弁16の貫通孔28の内周面は、初期状態で止血弁16の弾性力によって内針18の空気抜き流路36を除く外周面の一部と液密に接触している。止血弁16は、カテーテルハブ14の内腔15を前後方向に第1空間15aと第2空間15bとに仕切る。第1空間15aは、初期状態で血液流路26に連通している。
図1において、内針18は、生体の皮膚を穿刺可能な剛性を有する中空管に構成されている。内針18の全長は、カテーテル12の全長よりも長い。内針18の先端は、内針18の軸線に対して傾斜して切断されている。そのため、内針18には、内針18の軸線に対して傾斜した先端面29が設けられている。また、内針18の最先端には、鋭利な針先30が設けられている。内針18の内部には、内針18の軸方向に貫通するルーメン19が設けられている。
図1に示す初期状態で、内針18の先端面29は、カテーテル12よりも先端方向に露出し、内針18の基端はカテーテル12の基端よりも基端方向に位置している。
図2に示すように、内針18には、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に止血弁16の前方空間32と止血弁16の後方空間34とを互いに連通させる空気抜き流路36を内針18と止血弁16との間に形成するための流路形成部38が設けられている。ここで、前方空間32は、血液流路26と第1空間15aとからなる空間である。後方空間34は、第2空間15bである。
図2及び図3に示すように、流路形成部38は、内針18の外周面に形成された短溝40aである。短溝40aは、内針18の軸線に沿って直線状に延在している。短溝40aの全長は、止血弁16の内針18の軸線方向に沿った長さよりも長い。
図5Aに示すように、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時において、短溝40aのうち内針18の先端方向の端(短溝40aの一端)は前方空間32に位置し、短溝40aのうち内針18の基端方向の端(短溝40aの他端)は後方空間34に位置する。短溝40aの一端は、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に止血弁16の近傍(止血弁16よりも僅かに先端方向にずれた箇所)に位置している。
図3において、短溝40a(空気抜き流路36)の流路断面積(横断面積)は、空気の流通を許可する一方で血液の流通を阻止することができる程度の大きさに設定されている。ここで、血液の流通を阻止するとは、血液が完全に流れないこと、血液が空気に対して流れ難いことの両方を含む。血液が空気に対して流れ難いとは、血液の流通速度が空気の流通速度よりも小さいことをいう。このような短溝40aの流路断面積は、例えば、0.0008mm2以上0.006mm2以下に設定するのが好ましい。
また、短溝40aの横断面が四角形状である場合には、短溝40aの幅Wは、0.02mm以上0.12mm以下、短溝40aの深さDは、0.02mm以上0.12mm以下に設定するのが好ましい。ただし、短溝40aの横断面は、四角形状に限定されず、半円形状、三角形状等の他の形状であってもよい。
短溝40aの内面には、撥水処理が施されていてもよいし、血液が接触すると膨潤して流路断面積を狭くする又は短溝40aを完全に閉塞する材料がコーティングされていてもよい。これにより、短溝40aに対する血液の流通をより確実に阻止することができる。短溝40aは、内針18の外周面に対して転造加工、レーザ加工、プレス加工、放電加工等を施すことによって形成することができる。
図1に示すように、内針18の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料、硬質樹脂、セラミックス等が挙げられる。
針ハブ20は、内針18の基端に固定された中空状部材であり、内針18のルーメン19と連通する内腔21を有する。初期状態で、針ハブ20の先端は、カテーテルハブ14の基端に嵌合している。針ハブ20は、カテーテルハブ14から基端方向に離脱可能である。針ハブ20を構成する樹脂材料は、特に限定されるものではないが、例えば、カテーテルハブ14で挙げた材料を適宜選択し得る。
針ハブ20は、その一部又は全部が透明に構成されている。これにより、針ハブ20の内腔21へのフラッシュバック時に針ハブ20を通して血液を目視することができる。よって、内針18が血管300を確保したか否かを容易に確認することができる。
次に、上記のように構成されたカテーテル組立体10の作用について説明する。
図1に示すカテーテル組立体10の使用においては、図4に示すように、カテーテル組立体10を患者の皮膚302に穿刺する穿刺操作が行われる。穿刺操作において、ユーザ(医師、看護師等)は、カテーテル組立体10の先端部を患者に押し当てるようにして、穿刺目標の血管300に向かって皮膚302に穿刺する。これにより、内針18及びカテーテル12の各先端部が皮膚302に穿刺され、針先30を血管300内に位置させる。
この際、ユーザは、内針18のルーメン19を介して針ハブ20の内腔21に血液が流入したこと(針ハブ20の内腔21へのフラッシュバック)を目視で確認する。次に、ユーザは、針ハブ20の位置を固定しつつ、カテーテル12を前進させることにより、カテーテル12を血管300内の目標位置まで挿入する。
そうすると、カテーテル12の縮径部24が内針18の外周面から離間する。そのため、血管300内の血液は、カテーテル12の先端開口から血液流路26に流入する。この時、図5Aに示すように、止血弁16の前方空間32に存在している空気は、血液によって基端方向に押されて短溝40aに流入し、止血弁16と内針18との間に形成されている空気抜き流路36を介して後方空間34(第2空間15b)に導かれる(図5A参照)。
これにより、血液流路26に流入した血液は、カテーテルハブ14の内腔15に円滑に導かれる。この際、ユーザは、血液流路26を介してカテーテルハブ14の内腔15(第1空間15a)に血液が流入したこと(カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック)を目視で確認する。なお、第2空間15bに導かれた空気は、カテーテルハブ14と針ハブ20との間に形成された隙間を介してカテーテルハブ14の外部に流出する。
次に、ユーザは、カテーテル12の位置を保持しつつ、針ハブ20を基端方向に引っ張る。これにより、内針18がカテーテル12から基端方向に抜去される。そうすると、図5Bに示すように、止血弁16が弾性変形することにより内針18が貫通していた貫通孔28が閉塞される。すなわち、空気抜き流路36がカテーテルハブ14の内腔15に存在しなくなる。そして、カテーテル12は患者に留置される。
この場合、本実施形態に係るカテーテル組立体10は、以下の効果を奏する。
カテーテル組立体10では、内針18には、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に止血弁16の前方空間32と止血弁16の後方空間34とを互いに連通させる空気抜き流路36を内針18と止血弁16との間に形成するための流路形成部38が設けられている。
これにより、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に空気抜き流路36を介して止血弁16の前方空間32の空気を止血弁16の後方空間34に逃がすことができるため、血液をカテーテルハブ14の内腔15に円滑に導くことができる。これにより、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバックを確実に行うことができる。また、内針18を止血弁16から抜去した状態で空気抜き流路36がカテーテルハブ14の内腔15に存在しなくなるため、空気抜き流路36に血液が残留することを防止できる。
流路形成部38は、内針18の外面に形成された短溝40aであるため、簡単な構成で空気抜き流路36を形成することができる。
流路形成部38である短溝40aは、初期状態で前方空間32から後方空間34まで連続して延在している。これにより、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に内針18と止血弁16との間に空気抜き流路36を確実に形成することができる。
短溝40aは、内針18の軸線に沿って直線状に延在しており、短溝40aの全長は、止血弁16の内針18の軸線方向に沿った長さよりも長い。これにより、短溝40aの構成を簡素化することができる。また、短溝40aを曲線状に延在させた構成と比較して、前方空間32の空気を後方空間34に早く逃がすことができる。よって、前方空間32に血液を一層円滑に導くことができる。
短溝40aのうち内針18の先端方向の端は、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に止血弁16よりも先端方向且つ止血弁16の近傍に位置している。これにより、短溝40aの全長を比較的短くすることができるため、内針18の製造コストの低廉化を図ることができる。また、内針18の抜去後に短溝40aに付着する血液の量を少なくすることができる。
図6に示すように、流路形成部38は、長溝40bであってもよい。長溝40bは、内針18の軸線方向に沿って直線状に延在するとともに内針18の外周面に形成されている。
長溝40bは、内針18の先端側に位置する第1溝部42と、第1溝部42から基端方向に延在した第2溝部44とを有する。第1溝部42のうち内針18の先端方向の端は、内針18の先端面29の近傍に位置している。第1溝部42のうち内針18の基端方向の端は、初期状態でストレート部22の内方に位置している。第1溝部42は、血液が流通可能に構成されている。
第2溝部44は、第1溝部42の基端に連通している。第2溝部44の流路断面積及び形状は、上述した短溝40aと同様に構成されている。すなわち、第2溝部44の流路断面積は、空気の流通を許可する一方で血液の流通を阻止することができる程度の大きさに設定されている。換言すれば、第2溝部44の流路断面積は、第1溝部42の流路断面積よりも小さい。
このような長溝40bによれば、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。また、内針18を止血弁16から抜去する直前まで前方空間32の空気を後方空間34に逃がすことができる。さらに、超音波ガイド下による血管穿刺を行う場合、内針18の長溝40bによって内針18を容易に確認することができる。
また、第1溝部42に血液が流通可能であるため、内針18及びカテーテル12の各先端部を血管300に穿刺した際に、カテーテル12を内針18に対して前進させる前の状態で、血管内の血液を第1溝部42から血液流路26内に導くことができる。
長溝40bの流路断面積及び大きさは、その全長に亘って上述した短溝40aと同様に形成してもよい。
図7Aに示すように、流路形成部38は、凸部40cであってもよい。凸部40cは、内針18の外面に設けられて止血弁16のうち内針18が貫通する貫通孔28の内面に接触することによって空気抜き流路36を形成する。凸部40cの突出長Lは、空気抜き流路36の流路断面積が適度な大きさ(空気の流通を許可する一方で血液の流通を阻止することができる程度の大きさ)になるように設定される。具体的には、凸部40cの突出長Lは、0.05mm以上0.2mm以下に設定するのが好ましい。
凸部40cは、横断面が四角形状に形成されている。ただし、凸部40cの横断面の形状は、任意に設定することができる。内針18に対する凸部40cが設けられる軸線方向の範囲は、上述した短溝40aと同様である。このような凸部40cによれば、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
図7Bに示すように、流路形成部38は、多孔質部材40dであってもよい。多孔質部材40dは、空気の流通を許可する一方で血液の流通を阻止することができる材料により構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ラテックスゴム、イソプレンゴム、セラミックス、ステンレス鋼等が挙げられる。内針18の軸線方向における多孔質部材40dの位置は、上述した短溝40aと同様である。後述する多孔質部材40da、40db、についても同様である。
多孔質部材40dは、その外面が内針18の外周面に面一になるように内針18の壁部内に埋設されている。このような多孔質部材40dによれば、多孔質部材40dの内部を介してカテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に前方空間32の空気を後方空間34(第2空間15b)に逃がすことができる。従って、多孔質部材40dは、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。また、多孔質部材40dは血液を通しにくいため、内針抜去後、輸液セット等を接続するまでの時間が空いてしまっても、カテーテルハブ14の基端から血液が漏れにくくなる。
流路形成部38は、内針18の外周面に固着された多孔質部材40daであってもよいし(図7C参照)、一部が内針18の外周面から突出するように内針18の壁部内に埋め込まれた多孔質部材40dbであってもよい(図7D参照)。これら多孔質部材40da、40dbは、上述した多孔質部材40dと同様の構成材料によって構成される。後述する多孔質部材40g、40ga〜40gd、40j、40ja、40m、40ma、40n、40o、40p、40pa、40q、40sについても同様である。
流路形成部38は、図8に示すように様々な形態を採り得る。図8に示すように、セルA1の流路形成部38は、内針18の外周面に設けられて螺旋状に延在した凹部(螺旋溝40e)である。セルA2の流路形成部38は、内針18の外周面に設けられて互いに反対方向に延在した2つの螺旋溝40ea、40eb(右巻きの螺旋溝40eaと左巻の螺旋溝40eb)である。
セルB1の流路形成部38は、内針18の外周面に設けられて螺旋状に延在した凸部(螺旋凸部40f)である。セルB2の流路形成部38は、内針18の外周面に設けられて互いに反対方向に延在した2つの螺旋凸部40fa、40fb(右巻きの螺旋凸部40faと左巻の螺旋凸部40fb)である。
セルC1の流路形成部38は、内針18の外周面に設けられて螺旋状に延在した多孔質部材40gである。セルC2の流路形成部38は、内針18の外周面に設けられて互いに反対方向に延在した2つの螺旋状の多孔質部材40ga、40gb(右巻きの螺旋の多孔質部材40gaと左巻の螺旋の多孔質部材40gb)である。これら多孔質部材40g、40ga、40gbは、その外面が内針18の外周面に面一になるように内針18の壁部内に埋設されている。
セルC3の流路形成部38は、内針18の外周面に固着されて螺旋状に延在した多孔質部材40gcである。セルC4の流路形成部38は、内針18の外周面に固着されて互いに反対方向に延在した2つの螺旋状の多孔質部材40gd、40ge(右巻きの螺旋の多孔質部材40gdと左巻の螺旋の多孔質部材40ge)である。
セルDの流路形成部38は、内針18の外周面に設けられて内針18の軸線方向に沿って波状に延在した凹部(波状溝40h)である。セルEの流路形成部38は、内針18の外周面に設けられて内針18の軸線方向に沿って波状に延在した凸部40c(波状凸部40i)である。
セルF1の流路形成部38は、内針18の外周面に設けられて内針18の軸線方向に沿って波状に延在した多孔質部材40jである。多孔質部材40jは、その外面が内針18の外周面に面一になるように内針18の壁部内に埋設されている。セルF2の流路形成部38は、内針18の外周面に固着されて内針18の軸線方向に沿って波状に延在した多孔質部材40jaである。
セルGの流路形成部38は、内針18の外周面に設けられた環状の凹部(環状凹部40k)が内針18の軸線方向に複数連なった構成を備える。環状凹部40kの流路断面積は、上述した短溝40aの流路断面積と同様に構成されている。環状凹部40kの数は、任意に設定可能である。セルHは、内針18の外周面に設けられた環状の凸部(環状凸部40l)が内針18の軸線方向に複数連なった構成を備える。環状凸部40lの数は、任意に設定可能である。
セルI1の流路形成部38は、内針18の外周面に設けられた環状の多孔質部材40mが内針18の軸線方向に複数連なった構成を備える。環状の多孔質部材40mは、その外面が内針18の外周面に面一になるように内針18の壁部内に埋設されている。セルI2の流路形成部38は、内針18の外周面に固着された環状の多孔質部材40maが内針18の軸線方向に複数連なった構成を備える。流路形成部38は、図7A〜図8に示したものを任意に組み合わせて構成してもよい。
内針18の軸線方向における図8に示す流路形成部38の位置は、上述した短溝40aと同様である。ただし、内針18の軸線方向における螺旋溝40e、40ea、40eb、波状溝40h、環状凹部40kの位置は、上述した長溝40bと同様であってもよい。多孔質部材40gc、40gd、40ge、40ja、40maは、その一部が内針18の外周面から突出するように内針18の壁部内に埋め込まれていてもよい。このような図8に示す流路形成部38は、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
図9Aに示すように、流路形成部38は、内針18の外周面に嵌合された管状の多孔質部材40nであってもよい。止血弁16の貫通孔28の内面は、多孔質部材40nの外周面に液密に接触している。このような多孔質部材40nによれば、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に多孔質部材40nの内部を介して前方空間32の空気を後方空間34(第2空間15b)に逃がすことができる。従って、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
図9Bに示すように、流路形成部38は、内針18の前方部分50と内針18の後方部分52とを互いに連結する管状の多孔質部材40oであってもよい。すなわち、多孔質部材40oは、内針18の中間部分を構成する。多孔質部材40oの先端は内針18の前方部分50の基端部に連結し、多孔質部材40oの基端は内針18の後方部分52の先端部に連結している。
内針18の前方部分50の前方ルーメン51と後方部分52の後方ルーメン53とは、多孔質部材40oの内腔55を介して互いに連通している。そのため、内針18及びカテーテル12の各先端部を血管300に穿刺した際に、血液を内針18のルーメン19を介して針ハブ20の内腔21に流入させることができる。このような多孔質部材40oによれば、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に多孔質部材40oの内部を介して前方空間32の空気を後方空間34(第2空間15b)に逃がすことができる。従って、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
図10Aに示すように、流路形成部38は、内針18の前方部分50と内針18の後方部分52とを互いに連結する柱状の多孔質部材40pであってもよい。すなわち、多孔質部材40pは、内針18の中間部分を構成する。
多孔質部材40pの先端は内針18の前方部分50の基端開口に嵌入し、多孔質部材40pの基端は内針18の後方部分52の先端開口に嵌入している。そのため、前方部分50の前方ルーメン51と後方部分52の後方ルーメン53とは、多孔質部材40pによって互いに仕切られている。多孔質部材40pの外周面と内針18の外周面とは面一である。
このような多孔質部材40pによれば、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に多孔質部材40pの内部を介して前方空間32の空気を後方空間34(第2空間15b及び内針18の後方部分52の後方ルーメン53)に逃がすことができる。従って、多孔質部材40pは、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
図10Bに示すように、流路形成部38は、上述した多孔質部材40pの外径を全長に亘って一定に形成した多孔質部材40paであってもよい。多孔質部材40paの外径は、その全長に亘って内針18の外径よりも小さい。この場合、多孔質部材40pを容易に製造することができる。
図11Aに示すように、流路形成部38は、内針18のルーメン19内に配置された柱状の多孔質部材40qと、内針18の外周面と内周面とを貫通する長孔40rとであってもよい。多孔質部材40qは、内針18のルーメン19の一部を閉塞するように設けられている。長孔40rは、内針18の軸線方向に沿って延在するとともに多孔質部材40qが位置する範囲内に設けられている。多孔質部材40qの全長は、長孔40rの全長よりも長い。
この場合、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に長孔40r及び多孔質部材40qの内部を介して前方空間32の空気を後方空間34(第2空間15b及び内針18のルーメン19のうち多孔質部材40qよりも基端側の空間)に逃がすことができる。従って、長孔40r及び多孔質部材40qは、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
図11Bに示すように、流路形成部38は、内針18の後方部分を構成する柱状の多孔質部材40sであってもよい。多孔質部材40sの先端は、内針18の前方部分50の基端開口に嵌入している。多孔質部材40sは、初期状態で止血弁16の貫通孔28を貫通している。多孔質部材40sの基端は、針ハブ20の先端に接続されている。
このような多孔質部材40sによれば、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に多孔質部材40sの壁部内を介して前方空間32の空気を後方空間34(第2空間15b)に逃がすことができる。従って、多孔質部材40sは、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
図12に示すように、流路形成部38は、内針18の外周面に設けられたエンボス部40tであってもよい。エンボス部40tは、内針18の外周面に形成された1つの連続し窪み部60と突出部62とを有する。この場合、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時にエンボス部40tの窪み部60を介して前方空間32の空気を後方空間34(第2空間15b)に逃がすことができる。従って、エンボス部40tは、上述した短溝40aと同様の効果を奏することができる。
図13Aに示すように、流路形成部38は、内針18の外周面と内周面とを貫通する側孔40uであってもよい。側孔40uは、内針18の軸線方向に沿って延在している。側孔40uにおける内針18の軸線方向に沿った長さは、止血弁16の軸線方向に沿った長さよりも長い。側孔40uは、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に、第1空間15aと第2空間15bとに連通している。
具体的には、側孔40uの第1空間15aに対する開口面積は、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に空気の流通を許可する一方で血液の流通を阻止することができる程度の大きさに設定されている。
内針18のルーメン19のうち側孔40uよりも先端側には、血液の基端方向への流通を阻止するための閉塞部材64が設けられている。
この場合、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に側孔40uを介して前方空間32の空気を止血弁16の後方空間34(第2空間15bと内針18のルーメン19のうち止血弁16よりも基端側の空間)に逃がすことができる。従って、側孔40uは、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
図13Bに示すように、流路形成部38は、側孔40uの基端位置を止血弁16の貫通孔28に位置させた側孔40uaであってもよい。側孔40uaは、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に第2空間15bに連通していない。この場合、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に側孔40uaを介して前方空間32の空気を後方空間34(内針18のルーメン19のうち止血弁16よりも後方の空間)に逃がすことができる。従って、側孔40uaは、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
図13A及び図13Bに示すカテーテル組立体10では、内針18のルーメン19のうち側孔40u、40uaよりも基端側には、空気の流通を許可する一方で血液の流通を阻止する部材を設けてもよい。また、閉塞部材64に代えて内針18のうち側孔40uよりも先端側の壁部の一部を潰すことによって、内針18のルーメン19における側孔40u、40uaよりも基端方向の空間への血液の流入を阻止してもよい。
図14に示すように、流路形成部38は、内針18の外周側に設けられた筒状部材40vであってもよい。筒状部材40vの内周面と内針18の外周面との間には、空気が流通する一方で血液の流通が阻止される程度の隙間Sが形成されている。
筒状部材40vの外周面には、内針18の軸線方向に沿って延在した溝66が形成されている。溝66の流路断面積は、上述した短溝40aの流路断面積と同様に構成されている。筒状部材40vの外周面には、初期状態で止血弁16の内周面が液密に接触している。
このような形態では、止血弁16と筒状部材40vとの間の溝66の一部と、筒状部材40vと内針18との間の隙間Sとが空気抜き流路36として機能する。
止血弁16は、カテーテルハブ14の内周面に固定されたストッパ部材70によってカテーテルハブ14に対する基端方向への変位が規制されている。ストッパ部材70は、中空状に構成されている。ストッパ部材70の内腔71には、中空状のプラグ72が配設されている。プラグ72は、カテーテルハブ14の基端に他の図示しないデバイス(輸液ライン等)が接続された際に、止血弁16の貫通孔28を開放させて第1空間15aと他のデバイスとを互いに連通させるためのものである。
内針18の外周面には、環状の突起74が設けられている。突起74は、初期状態で血液流路26内に位置している。突起74の突出長は、内針18の抜去時にストッパ部材70に引っ掛かる程度の大きさに設定されている。
突起74の形状は、環状に限定されず、内針18の抜去時に筒状部材40vに引っ掛かるものであれば、どのようなものであってもよい。
この場合、図15に示すように、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に溝66及び隙間Sを介して前方空間32の空気を後方空間34(第2空間15b)に逃がすことができる。従って、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
また、図16に示すように、内針18を矢印A方向に抜去する際、内針18に設けられた突起74が筒状部材40vの先端面に接触するため、筒状部材40vが内針18とともに止血弁16から抜去される。この際、止血弁16は、ストッパ部材70によってカテーテルハブ14に対する基端方向の変位が規制されているため、筒状部材40vを止血弁16から円滑に抜去することができる。
図17Aに示すように、流路形成部38は、止血弁16の貫通孔28の内周面に設けられた凸部40wと凹部40xとであってもよい。凸部40wの壁面は、止血弁16から内針18が抜去された状態で凹部40xの壁面に液密に接触する。図17Aの例では、凸部40w及び凹部40xのそれぞれは、半円形状に形成されている。ただし、凸部40w及び凹部40xの形状は、任意に変更可能である。
このような形態では、図17Bに示すように、止血弁16の貫通孔28に内針18を貫通させた状態で、凸部40wの両側と凹部40xに空気抜き流路36が形成される。この空気抜き流路36の流路断面積は、空気の流通を許可する一方で血液の流通を阻止することができる程度の大きさに設定されている。この場合、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
図18に示すように、変形例に係るカテーテル組立体10Aでは、止血弁16は、カテーテルハブ14の基端面に設けられている。この場合であっても、図19に示すように、カテーテルハブ14の内腔15へのフラッシュバック時に流路形成部38(例えば、短溝40a)を介して前方空間32の空気を後方空間34(カテーテルハブ14の外側の空間)に逃がすことができる。
上述した多孔質部材40n〜40p、40pa、40q、40sの外周面には、図8に示した形態が組み合わされていてもよい。この場合であっても、上述した短溝40aと同様の効果を奏する。
カテーテル組立体10は、内針18の誤刺防止機構及び内針18のたわみ防止機構を備えていてもよい。また、カテーテル組立体10は、内針18を血管300に穿刺する際に内針18のルーメン19内にガイドワイヤが挿通されてもよい。さらに、カテーテル組立体10は、カテーテル12を血管300に挿入し易くするための挿入補助チューブを備えていてもよい。この挿入補助チューブは、内針18とカテーテル12との間に配設される。
カテーテル組立体10は、カテーテルハブ14に代えて図20に示すカテーテルハブ80を備えていてもよい。このカテーテルハブ80は、中空状のハブ本体82と、ハブ本体82に設けられた中空状の保護部84とを有する。ハブ本体82は、上述したカテーテルハブ14と同様の材料で構成されている。ハブ本体82は、ユーザが把持するための把持部82aと、把持部82aの先端に一体的に設けられて保護部84が装着された装着部82bとを含む。装着部82bの肉厚は、把持部82aの肉厚よりも薄い。すなわち、装着部82bと把持部82aとの境界部の外面には段差部86が形成されている。段差部86には、ストレインリリーフ部の基端面が当接する。装着部82bの先端には、カテーテル12の基端を支持する縮径部88が設けられている。縮径部88の内面には、カテーテル12の基端面が当接する支持突起90が突出している。支持突起90は、縮径部88の周方向の全長に亘って円環状に延在している。
保護部84は、カテーテル12のキンクを抑制するためのストレインリリーフ部である。保護部84は、ハブ本体82よりも柔軟な材料で構成されている。保護部84の構成材料は、任意に設定可能であるが、例えば、ポリウレタンやゴム等の樹脂材料を好適に用いることができる。保護部84の基端側は、装着部82bの外面の全体を覆うようにカテーテルハブ80に対して固定されている。この際、保護部84の基端側の外面は、把持部82aの外面に対して面一になっている。保護部84は、カテーテル12の基端側を囲繞している。保護部84のうちカテーテル12を囲繞する範囲は、任意に設定可能である。このようなカテーテルハブ80を用いた場合、カテーテル12のキンクを好適に抑制することができる。
本発明に係るカテーテル組立体は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。