以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、複数の構成要素の各々に同一符号のみを付する。
<1.変速機の概略>
本実施形態に係る変速機1の概略について説明する。
(構成)
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る変速機1の概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係る変速機1の概略構成の一例を示すスケルトン図である。図2は、本実施形態に係る変速機1の概略構成の一例を示す断面図である。
変速機1は、動力を伝達する複数の回転要素と、当該回転要素と他の要素との連結状態を切り替え可能な複数の連結機構とを備え、入力される動力を当該複数の連結機構の連結状態に応じた変速段で変速して出力する変速機である。例えば、変速機1は、車両に搭載され、エンジン3から出力される動力を車両の駆動輪へ伝達する動力伝達系に適用される。具体的には、変速機1は、図1に示されるように、トルクコンバータ2を介してエンジン3と接続され、エンジン3から出力される動力がトルクコンバータ2を介して変速機1の入力軸111へ伝達される。
トルクコンバータ2は、例えば、エンジン3のクランクシャフト31にフロントカバー23を介して連結されるポンプインペラ22と、ポンプインペラ22に対向するとともに入力軸111に連結されるタービンライナ21とを備える。トルクコンバータ2内には作動油が供給されており、作動油を介して、ポンプインペラ22からタービンライナ21にエンジン3から出力される動力が伝達される。また、トルクコンバータ2内には、エンジン3のクランクシャフト31と入力軸111とを直結するロックアップクラッチ24が設けられている。
ロックアップクラッチ24が開放されている状態(換言すると、トルクコンバータ2のロックアップが解除されている状態)では、エンジン3から出力される動力は作動油を介して変速機1側へ伝達される。それにより、エンジン3の回転変動に起因する捩り振動が変速機1へ直接的に伝達されることが抑制される。一方、ロックアップクラッチ24が締結されている状態(換言すると、トルクコンバータ2がロックアップされている状態)では、エンジン3から出力される動力が直接的に変速機1側へ伝達される。それにより、エンジン3の回転変動に起因する捩り振動が変速機1へ直接的に伝達される。
変速機1は、例えば、図1に示されるように、入力軸111と、出力軸112と、フロントプラネタリギヤPG1と、ミッドプラネタリギヤPG2と、リヤプラネタリギヤPG3と、リバースブレーキB1と、フロントブレーキB2と、フォワードブレーキB3と、インプットクラッチC1と、ハイ&ローリバースクラッチC2と、ダイレクトクラッチC3と、第1ワンウェイクラッチF1と、第2ワンウェイクラッチF2とを備える。
入力軸111は、動力が入力される軸である。例えば、入力軸111には、上述したように、エンジン3から出力される動力が入力される。
出力軸112は、伝達される動力を出力する軸である。例えば、出力軸112は、変速機1を主変速機とした場合における副変速機及びディファレンシャル装置を介して駆動輪と接続される。この場合、出力軸112から出力される動力は、副変速機により変速された後、ディファレンシャル装置を介して駆動輪へ伝達される。
フロントプラネタリギヤPG1、ミッドプラネタリギヤPG2及びリヤプラネタリギヤPG3は、ケース120内に設けられ、動力を伝達する回転要素としてサンギヤ、キャリア及びリングギヤを備える遊星歯車機構である。ケース120内において、3つの遊星歯車機構は、フロントプラネタリギヤPG1、ミッドプラネタリギヤPG2及びリヤプラネタリギヤPG3の順に同心に配置される。
各遊星歯車機構は、具体的には、シングルピニオン式の遊星歯車機構である。各遊星歯車機構のサンギヤ、キャリア及びリングギヤの回転数は、共線図上において直線上に並ぶ関係にある。キャリアが固定されている場合におけるリングギヤの回転数のサンギヤの回転数に対する比を遊星歯車機構のギヤ比とした場合、遊星歯車機構のギヤ比はサンギヤの歯数をリングギヤの歯数で除して得られる値となる。各遊星歯車機構において、リングギヤの歯数及びサンギヤの歯数を適宜設定することによって、各遊星歯車機構のギヤ比を所望のギヤ比に設定することができる。それにより、変速機1における各変速段についての変速比を所望の値に設定することができる。
フロントプラネタリギヤPG1は、フロントサンギヤS1と、フロントサンギヤS1に対して外周側に同心に配置されるフロントリングギヤR1と、フロントサンギヤS1及びフロントリングギヤR1と噛み合う複数のピニオンギヤを自転及び公転自在に支持するフロントキャリアCA1とを備える。
ミッドプラネタリギヤPG2は、ミッドサンギヤS2と、ミッドサンギヤS2に対して外周側に同心に配置されるミッドリングギヤR2と、ミッドサンギヤS2及びミッドリングギヤR2と噛み合う複数のピニオンギヤを自転及び公転自在に支持するミッドキャリアCA2とを備える。
リヤプラネタリギヤPG3は、リヤサンギヤS3と、リヤサンギヤS3に対して外周側に同心に配置されるリヤリングギヤR3と、リヤサンギヤS3及びリヤリングギヤR3と噛み合う複数のピニオンギヤを自転及び公転自在に支持するリヤキャリアCA3とを備える。
変速機1において、遊星歯車機構の回転要素のうちの一部の回転要素は、他の要素と連結されている。なお、当該他の要素は、遊星歯車機構の回転要素の他に、入力軸111及び出力軸112を含み得る。
フロントキャリアCA1は、リヤリングギヤR3と連結されている。ゆえに、フロントキャリアCA1及びリヤリングギヤR3の回転数は一致する。
フロントリングギヤR1は、入力軸111と連結されている。ゆえに、フロントリングギヤR1及び入力軸111の回転数は一致する。
ミッドキャリアCA2は、出力軸112と連結されている。ゆえに、ミッドキャリアCA2及び出力軸112の回転数は一致する。
ミッドリングギヤR2は、リヤキャリアCA3と連結されている。ゆえに、ミッドリングギヤR2及びリヤキャリアCA3の回転数は一致する。
リバースブレーキB1、フロントブレーキB2、フォワードブレーキB3、インプットクラッチC1、ハイ&ローリバースクラッチC2、ダイレクトクラッチC3、第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2は、遊星歯車機構の回転要素と他の要素との連結状態を切り替え可能な連結機構である。
各ブレーキは、遊星歯車機構の回転要素とケース120との連結状態を切り替え可能である。ブレーキとしては、例えば、互いに押圧されることにより係合される複数の摩擦プレートを含む湿式多板ブレーキが用いられる。この場合、ブレーキは、具体的には、複数の摩擦プレートと、当該複数の摩擦プレートが固定されるブレーキドラム及びブレーキハブとを含んで構成され得る。ブレーキへ供給される油圧が制御されることによって、ブレーキは締結され、又は開放される。ブレーキが締結されることによって、遊星歯車機構の回転要素とケース120とが連結された状態となり、遊星歯車機構の回転要素がケース120に対して固定される。具体的には、ブレーキにおける複数の摩擦プレートが互いに押圧されて係合されることによって、当該ブレーキが締結される。一方、ブレーキが開放されることによって、遊星歯車機構の回転要素とケース120との連結が解除された状態となり、遊星歯車機構の回転要素のケース120に対する固定が解除される。
リバースブレーキB1は、リヤキャリアCA3とケース120との連結状態を切り替え可能である。リバースブレーキB1が締結されることによって、リヤキャリアCA3がケース120に対して固定される。一方、リバースブレーキB1が開放されることによって、リヤキャリアCA3のケース120に対する固定が解除される。
フロントブレーキB2は、フロントサンギヤS1とケース120との連結状態を切り替え可能である。フロントブレーキB2が締結されることによって、フロントサンギヤS1がケース120に対して固定される。一方、フロントブレーキB2が開放されることによって、フロントサンギヤS1のケース120に対する固定が解除される。
また、フロントサンギヤS1とケース120との間には、フロントブレーキB2に並列に第2ワンウェイクラッチF2が設けられる。第2ワンウェイクラッチF2は、一方向にのみ動力を伝達可能である。第2ワンウェイクラッチF2が作動する場合、フロントサンギヤS1がケース120に対して固定される。一方、第2ワンウェイクラッチF2が非作動である場合、フロントサンギヤS1のケース120に対する固定が解除される。
フォワードブレーキB3は、ミッドサンギヤS2とケース120との連結状態を切り替え可能である。フォワードブレーキB3が締結されることによって、ミッドサンギヤS2がケース120に対して固定される。一方、フォワードブレーキB3が開放されることによって、ミッドサンギヤS2のケース120に対する固定が解除される。
各クラッチは、遊星歯車機構の回転要素と他の回転要素との連結状態を切り替え可能である。なお、当該他の回転要素は、遊星歯車機構の回転要素の他に、入力軸111を含み得る。クラッチとしては、例えば、互いに押圧されることにより係合される複数の摩擦プレートを含む湿式多板クラッチが用いられる。この場合、クラッチは、具体的には、複数の摩擦プレートと、当該複数の摩擦プレートが固定されるクラッチドラム及びクラッチハブとを含んで構成され得る。クラッチへ供給される油圧が制御されることによって、各クラッチは締結され、又は開放される。クラッチが締結されることによって、遊星歯車機構の回転要素と他の回転要素とが連結された状態となり、遊星歯車機構の回転要素と他の回転要素との間で回転数が一致する。具体的には、クラッチにおける複数の摩擦プレートが互いに押圧されて係合されることによって、当該クラッチが締結される。一方、クラッチが開放されることによって、遊星歯車機構の回転要素と他の回転要素との連結が解除された状態となり、遊星歯車機構の回転要素と他の回転要素との間での動力の伝達が遮断される。
インプットクラッチC1は、フロントリングギヤR1及び入力軸111とミッドリングギヤR2との連結状態を切り替え可能である。インプットクラッチC1が締結されることによって、フロントリングギヤR1及び入力軸111とミッドリングギヤR2との間で回転数が一致する。一方、インプットクラッチC1が開放されることによって、フロントリングギヤR1及び入力軸111とミッドリングギヤR2との間での動力の伝達が遮断される。
ハイ&ローリバースクラッチC2は、ミッドサンギヤS2とリヤサンギヤS3との連結状態を切り替え可能である。ハイ&ローリバースクラッチC2が締結されることによって、ミッドサンギヤS2とリヤサンギヤS3との間で回転数が一致する。一方、ハイ&ローリバースクラッチC2が開放されることによって、ミッドサンギヤS2とリヤサンギヤS3との間での動力の伝達が遮断される。
また、ミッドサンギヤS2とリヤサンギヤS3との間には、ハイ&ローリバースクラッチC2に並列に第1ワンウェイクラッチF1が設けられる。第1ワンウェイクラッチF1は、一方向にのみ動力を伝達可能である。第1ワンウェイクラッチF1が作動する場合、ミッドサンギヤS2とリヤサンギヤS3との間で回転数が一致する。一方、第1ワンウェイクラッチF1が非作動である場合、ミッドサンギヤS2とリヤサンギヤS3との間での動力の伝達が遮断される。
ダイレクトクラッチC3は、リヤサンギヤS3とリヤキャリアCA3との連結状態を切り替え可能である。ダイレクトクラッチC3が締結されることによって、リヤサンギヤS3とリヤキャリアCA3との間で回転数が一致する。一方、ダイレクトクラッチC3が開放されることによって、リヤサンギヤS3とリヤキャリアCA3との間での動力の伝達が遮断される。
以下、図2を参照して、変速機1における各構成要素のより具体的な配置について説明する。なお、以下では、各遊星歯車機構の軸方向を単に軸方向とも称し、各遊星歯車機構の径方向を単に径方向とも称する。また、軸方向について、出力軸112に対して入力軸111が設けられる側を入力側とも称し、入力軸111に対して出力軸112が設けられる側を出力側とも称する。
入力軸111は、フロントサンギヤS1の内周側に挿通され、フロントプラネタリギヤPG1とミッドプラネタリギヤPG2との間において、径方向外側に延在してフロントリングギヤR1と接続される。
ミッドリングギヤR2に対して外周側には筒体部132が配置され、筒体部132は入力軸111と接続される。筒体部132とミッドリングギヤR2との間には、筒体部132の内周部をクラッチドラムとしミッドリングギヤR2の外周部をクラッチハブとして複数の摩擦プレートが設けられる。当該複数の摩擦プレートを含んでインプットクラッチC1が構成される。インプットクラッチC1を駆動するピストン部152は、ミッドプラネタリギヤPG2に対して入力側に並設される。
フロントプラネタリギヤPG1に対して入力側には筒体部131が配置され、筒体部131はフロントサンギヤS1と接続される。ケース120には、筒体部131に対して外周側に配置される筒体部137が形成される。筒体部137と筒体部131との間には、筒体部137の内周部をブレーキドラムとし筒体部131の外周部をブレーキハブとして複数の摩擦プレートが設けられる。当該複数の摩擦プレートを含んでフロントブレーキB2が構成される。フロントブレーキB2を駆動するピストン部151は、フロントブレーキB2に対して入力側に並設される。
また、ケース120には、フロントサンギヤS1に対して内周側に配置される筒体部138が形成される。第2ワンウェイクラッチF2は、フロントサンギヤS1と筒体部138との間に設けられる。
フロントキャリアCA1の入力側は、フロントリングギヤR1及び筒体部132の外周側を経由してリヤリングギヤR3と接続される。
ミッドリングギヤR2の出力側は、リヤキャリアCA3の入力側と接続される。
ミッドキャリアCA2の入力側は、フロントプラネタリギヤPG1とミッドプラネタリギヤPG2との間を経由して出力軸112と接続される。
ミッドサンギヤS2は、出力軸112に対して外周側に配置されリヤサンギヤS3の内周側に挿通される中空軸113の端部と接続される。
第1ワンウェイクラッチF1は、リヤサンギヤS3と中空軸113との間に設けられる。
リヤプラネタリギヤPG3より出力側において中空軸113に対して外周側には筒体部135が配置され、筒体部135は中空軸113と接続される。また、筒体部135に対して外周側には筒体部134が配置され、筒体部134はリヤサンギヤS3の出力側と接続される。筒体部134と筒体部135との間には、筒体部134の内周部をクラッチドラムとし筒体部135の外周部をクラッチハブとして複数の摩擦プレートが設けられる。当該複数の摩擦プレートを含んでハイ&ローリバースクラッチC2が構成される。ハイ&ローリバースクラッチC2を駆動するピストン部154は、筒体部135に対して出力側に並設される。
筒体部134に対して外周側には筒体部190が配置され、筒体部190はリヤキャリアCA3の出力側と接続される。具体的には、リヤキャリアCA3の出力側には径方向に延在する延在部170が設けられ、延在部170の外周部と筒体部190の入力側の端部とが接続される。筒体部190は、筒体部134の外周側から出力側へ向けて延在する。筒体部190における入力側の部分と筒体部134との間には、筒体部190の内周部をクラッチドラムとし筒体部134の外周部をクラッチハブとして複数の摩擦プレートが設けられる。当該複数の摩擦プレートを含んでダイレクトクラッチC3が構成される。ダイレクトクラッチC3を駆動するピストン部153は、ピストン部154に対して出力側に並設される。
本実施形態に係る変速機1では、動力伝達系の大型化を抑制しつつ捩り振動を減衰させるために、複数の連結機構のうちの少なくとも1つにおける複数の摩擦プレートのうちの少なくとも1つの被押圧部には、当該摩擦プレートにおける他の部分に対して当該摩擦プレートの回転方向に搖動可能な振り子部が形成される。例えば、変速機1において、ダイレクトクラッチC3におけるリテーニングプレート180の被押圧部に振り子部が形成される。リテーニングプレート180は、複数の摩擦プレートのうち当該複数の摩擦プレートの連設方向について最も端部側に位置するプレートである。ダイレクトクラッチC3のリテーニングプレート180については、後述にて詳細に説明する。
ケース120と筒体部190における出力側の部分との間には、ケース120の内周部をブレーキドラムとし筒体部190の外周部をブレーキハブとして複数の摩擦プレートが設けられる。当該複数の摩擦プレートを含んでリバースブレーキB1が構成される。リバースブレーキB1を駆動するピストン部155は、ピストン部153に対して出力側に並設される。
ピストン部155より出力側において中空軸113に対して外周側には筒体部136が配置され、筒体部136は中空軸113と接続される。ケース120と筒体部136との間には、ケース120の内周部をブレーキドラムとし筒体部136の外周部をブレーキハブとして複数の摩擦プレートが設けられる。当該複数の摩擦プレートを含んでフォワードブレーキB3が構成される。フォワードブレーキB3を駆動するピストン部156は、筒体部136に対して出力側に並設される。
(動作)
次に、図3を参照して、本実施形態に係る変速機1の動作について説明する。図3は、本実施形態に係る変速機1における各変速段についての各連結機構の締結状態を示す説明図である。
変速機1では、各連結機構の締結状態が切り替えられることによって、変速段が切り替えられる。それにより、変速機1の変速比が変速段に応じた変速比へ切り替えられる。各連結機構の締結状態は、例えば、車両に搭載される制御装置によって車両の走行状態に応じて制御される。
図3において、○印は対応するクラッチ又はブレーキが締結されることを示し、◎印は変速機1が動力を伝達する駆動時にのみ対応するワンウェイクラッチがトルク伝達に関与することを示し、◇印はコースト走行時にのみ対応するワンウェイクラッチがトルク伝達に関与することを示し、△印はコースト走行時にのみ対応するクラッチ又はブレーキがトルク伝達に関与することを示している。
前進第1速段(1st)では、フォワードブレーキB3が締結され、第1ワンウェイクラッチF1が作動する。それにより、ミッドサンギヤS2及びリヤサンギヤS3がケース120に対して固定される。また、第2ワンウェイクラッチF2が作動することにより、フロントサンギヤS1がケース120に対して固定される。ゆえに、入力軸111へ入力された動力は、フロントリングギヤR1、フロントキャリアCA1、リヤリングギヤR3、リヤキャリアCA3、ミッドリングギヤR2及びミッドキャリアCA2を順に伝達され、出力軸112へ出力される。
前進第2速段(2nd)では、前進第1速段(1st)に対して、ダイレクトクラッチC3が締結され、第1ワンウェイクラッチF1が非作動になる。それにより、リヤサンギヤS3がリヤキャリアCA3と一体的に回転する。ゆえに、入力軸111へ入力された動力は、前進第1速段(1st)と比較して増速されて出力軸112へ出力される。
前進第3速段(3rd)では、前進第2速段(2nd)に対して、フォワードブレーキB3が開放され、ハイ&ローリバースクラッチC2が締結される。それにより、ミッドサンギヤS2がリヤサンギヤS3と一体的に回転する。ゆえに、入力軸111へ入力された動力は、前進第2速段(2nd)と比較して増速されて出力軸112へ出力される。
前進第4速段(4th)では、前進第3速段(3rd)に対して、インプットクラッチC1が締結され、第2ワンウェイクラッチF2が非作動になる。それにより、ミッドリングギヤR2及びミッドサンギヤS2の回転数が入力軸111の回転数と一致する。ゆえに、入力軸111及び出力軸112の回転数が一致し、変速比が1.0となる。
前進第5速段(5th)では、前進第4速段(4th)に対して、ダイレクトクラッチC3が開放され、フロントブレーキB2が締結される。それにより、リヤサンギヤS3とリヤキャリアCA3との間での動力の伝達が遮断され、フロントサンギヤS1がケース120に対して固定される。ゆえに、入力軸111へ入力された動力は、前進第4速段(4th)と比較して増速されて出力軸112へ出力される。
後進段(Rev)では、リバースブレーキB1が締結される。それにより、リヤキャリアCA3がケース120に対して固定される。また、第1ワンウェイクラッチF1が作動することにより、ミッドサンギヤS2及びリヤサンギヤS3が一体的に回転する。また、第2ワンウェイクラッチF2が作動することにより、フロントサンギヤS1がケース120に対して固定される。ゆえに、入力軸111へ入力された動力は、回転方向が逆転されて、出力軸112へ出力される。
このように、変速機1は、前進5段及び後進1段を実現可能である。
<2.ダイレクトクラッチのリテーニングプレート>
続いて、本実施形態に係る変速機1におけるダイレクトクラッチC3のリテーニングプレート180について説明する。
(構成)
まず、図4及び図5を参照して、本実施形態に係るダイレクトクラッチC3のリテーニングプレート180の構成について説明する。図4は、本実施形態に係るダイレクトクラッチC3のリテーニングプレート180の周囲の構成の一例を示す断面図である。具体的には、図4は、図2の部分拡大図に相当する。図5は、本実施形態に係るダイレクトクラッチC3のリテーニングプレート180の構成の一例を示す正面図である。具体的には、図5は、リテーニングプレート180を軸方向の出力側から見た図である。
リテーニングプレート180は、例えば、本体部181と、振り子部183と、ピン185とを備える。本体部181は環状であり、外周部において筒体部190と固定される。本体部181の外周部には軸方向の出力側へ突出する環状突出部182が設けられる。振り子部183は、環状突出部182より内周側に設けられる。
振り子部183には、リテーニングプレート180の回転方向に間隔を空けて設けられる円弧状の一対の溝部184が設けられる。溝部184は、具体的には、図5に示されるように、周方向中央側が周方向端部側と比較して径方向内側へ近づくように湾曲する円弧状に形成される。一方、本体部181には、一対の溝部184と対応する位置に一対の貫通穴186が設けられる。本体部181の一対の貫通穴186及び振り子部183の一対の溝部184に一対のピン185が挿通されることによって、振り子部183が本体部181に対して取り付けられる。ピン185の両端部189は、両端部189の間の部分と比較して大きい直径を有する。それにより、振り子部183がリテーニングプレート180から外れ落ちることが抑制される。具体的には、振り子部183における溝部184の軸方向の出力側の端部には他の部分と比較して拡径した拡径部188が形成され、ピン185の軸方向の出力側の端部189は拡径部188の内周側に設けられる。それにより、ピン185の出力側の端面は、振り子部183の出力側の端面より入力側に位置し得る。
振り子部183は、円弧状の一対の溝部184に挿通される一対のピン185によって、リテーニングプレート180における他の部分としての本体部181に対して搖動自在に支持される。それにより、振り子部183は、リテーニングプレート180における他の部分としての本体部181に対してリテーニングプレート180の回転方向に搖動可能となる。
なお、図5では、1つの振り子部183が示されているが、振り子部183は、リテーニングプレート180において複数設けられてもよい。その場合、例えば、複数の振り子部183は、リテーニングプレート180の回転方向に間隔を空けて設けられる。
リテーニングプレート180は、上述したように、ダイレクトクラッチC3のクラッチドラムとしての筒体部190の内周部に固定される。ここで、筒体部190の内周部には、図4に示されるように、リテーニングプレート180の他に複数の摩擦プレート161が固定される。リテーニングプレート180及び複数の摩擦プレート161は、軸方向に間隔を空けて並設される。例えば、図4では、リテーニングプレート180に対して出力側に並設される摩擦プレート161aと、摩擦プレート161aに対して出力側に並設される摩擦プレート161bとが示されている。
一方、ダイレクトクラッチC3のクラッチハブとしての筒体部134の外周部には、複数の摩擦プレート162が固定される。複数の摩擦プレート162は、軸方向に間隔を空けて並設される。例えば、図4では、複数の摩擦プレート162のうち最も入力側に位置する摩擦プレート162aと、摩擦プレート162aに対して出力側に並設される摩擦プレート162bとが示されている。筒体部134側の摩擦プレート162は、具体的には、摩擦プレート162の外周部が本体部181の環状突出部182の内周部より径方向外側に位置するように、径方向に延在する。
また、筒体部190側の摩擦プレート161と筒体部134側の摩擦プレート162とは、交互に並設される。例えば、図4に示されるように、摩擦プレート162aがリテーニングプレート180と摩擦プレート161aとの間に設けられ、摩擦プレート162bが摩擦プレート161aと摩擦プレート161bとの間に設けられる。
リテーニングプレート180における出力側の部分は摩擦プレート162aと対向するので、リテーニングプレート180において振り子部183が形成される部分が摩擦プレート162aにより押圧される被押圧部に相当する。このように、振り子部183は、リテーニングプレート180の被押圧部に形成される。具体的には、振り子部183が摩擦プレート162aにより押圧された状態において、ピン185の出力側の端面が摩擦プレート162aの入力側の端面と当接せずに振り子部183の出力側の端面が摩擦プレート162aの入力側の端面と当接し得る。それにより、振り子部183が摩擦プレート162aにより押圧された場合において、ダイレクトクラッチC3を介した動力の伝達が適切に実現される。また、振り子部183が摩擦プレート162aにより押圧された状態において、本体部181の環状突出部182の出力側の端面が摩擦プレート162aの入力側の端面と当接し得る。それにより、振り子部183が摩擦プレート162aにより押圧された場合において、本体部181における環状突出部182より内周側の部分が過剰に変形することが抑制される。
(動作)
次に、図6を参照して、本実施形態に係るダイレクトクラッチC3のリテーニングプレート180の動作について説明する。図6は、本実施形態に係るダイレクトクラッチC3が開放されている状態におけるダイレクトクラッチC3のリテーニングプレート180の様子の一例を示す正面図である。
ダイレクトクラッチC3が開放されている場合、リテーニングプレート180の振り子部183が振り子部183と対向する摩擦プレート162aにより押圧されていない状態となる。ゆえに、振り子部183が本体部181に対してリテーニングプレート180の回転方向に搖動可能となる。ここで、エンジン3の回転変動に起因する捩り振動が筒体部190を介してリテーニングプレート180の本体部181に伝達される場合、振り子部183が本体部181に対して相対的に回転方向に移動し得る。例えば、図6に示されるように、ピン185が相対的に溝部184に沿って移動するように、振り子部183が本体部181に対して相対的に回転方向に移動し得る。その場合、ピン185が相対的に溝部184の周方向中央側から周方向端部側へ移動することによって、振り子部183が径方向について内側へ移動し得る。ここで、振り子部183に対して作用する遠心力によって、振り子部183の本体部181に対する相対的な回転方向への移動が戻される。それにより、捩り振動が減衰される。
このように、ダイレクトクラッチC3が開放されている場合において、本体部181に対してリテーニングプレート180の回転方向に搖動可能な振り子部183がペンデュラムダンパとも称される振り子式の動吸振器として機能する。
一方、ダイレクトクラッチC3が締結されている場合、リテーニングプレート180の振り子部183が振り子部183と対向する摩擦プレート162aにより押圧される状態となる。ゆえに、振り子部183の本体部181に対するリテーニングプレート180の回転方向への搖動は規制される。それにより、ダイレクトクラッチC3を介した動力の伝達が、ダイレクトクラッチC3に振り子部183が形成されない場合と同様に実現される。
(補足)
なお、上記では、振り子部が形成される摩擦プレートの一例としてリテーニングプレート180の構成について具体的に説明したが、振り子部が形成される摩擦プレートの構成はこのような例に限定されない。例えば、摩擦プレートにおける振り子部の数、配置及び形状は、特に限定されない。
また、上記では、ダイレクトクラッチC3のリテーニングプレート180に振り子部が形成される例を説明したが、振り子部が形成される摩擦プレートはこのような例に限定されない。例えば、ダイレクトクラッチC3におけるリテーニングプレート180と異なる摩擦プレートに振り子部が形成されてもよく、ダイレクトクラッチC3と異なる連結機構における摩擦プレートに振り子部が形成されてもよい。また、複数の連結機構において振り子部が形成されてもよく、各連結機構において複数の摩擦プレートに振り子部が形成されてもよい。換言すると、変速機1における複数の連結機構のうちの少なくとも1つにおける複数の摩擦プレートのうちの少なくとも1つの被押圧部に、当該摩擦プレートにおける他の部分に対して当該摩擦プレートの回転方向に搖動可能な振り子部が形成されればよい。
また、変速機1において、複数の連結機構のうち、高い変速段において開放される連結機構に優先して振り子部が形成されてもよい。例えば、ダイレクトクラッチC3は、変速機1における変速段のうち最も高い変速段である前進第5速段(5th)において開放される。ゆえに、ダイレクトクラッチC3に、前進第5速段(5th)より低い変速段において開放される他の連結機構と比較して、優先して振り子部が形成されてもよい。
ここで、フォワードブレーキB3は、ダイレクトクラッチC3と同様に、変速機1における変速段のうち最も高い変速段である前進第5速段(5th)において開放される。ゆえに、フォワードブレーキB3に優先して振り子部が形成されてもよい。図7は、フォワードブレーキB3に振り子部が形成される場合において当該振り子部が形成される摩擦プレートの周囲の構成の一例を示す断面図である。
フォワードブレーキB3のブレーキドラムとしてのケース120の内周部には、リテーニングプレート280及び複数の摩擦プレート261が固定される。例えば、図7では、リテーニングプレート280に対して出力側に並設される摩擦プレート261aと、摩擦プレート261aに対して出力側に並設される摩擦プレート261bとが示されている。一方、フォワードブレーキB3のブレーキハブとしての筒体部136の外周部には、複数の摩擦プレート262が固定される。例えば、図7では、複数の摩擦プレート262のうち最も入力側に位置する摩擦プレート262aと、摩擦プレート262aに対して出力側に並設される摩擦プレート262bとが示されている。
摩擦プレート262aはリテーニングプレート280と摩擦プレート261aとの間に設けられ、摩擦プレート262bは摩擦プレート261aと摩擦プレート261bとの間に設けられる。フォワードブレーキB3において、例えば、複数の摩擦プレート262のうち最も入力側に位置する摩擦プレート262aに振り子部203が形成され得る。摩擦プレート262aは、ミッドサンギヤS2と接続される筒体部136に固定される。このように、ブレーキに振り子部が形成される場合、当該振り子部は、具体的には、遊星歯車機構の回転要素側の摩擦プレートに形成される。ケース120側の摩擦プレート261は、具体的には、摩擦プレート261の内周部が摩擦プレート262aにおける後述される本体部201の環状突出部202の外周部より径方向内側に位置するように、径方向に延在する。
摩擦プレート262aは、例えば、本体部201と、振り子部203と、ピン205とを備える。本体部201は環状であり、内周部において筒体部136と固定される。本体部201の内周部には軸方向の出力側へ突出する環状突出部202が設けられる。振り子部203は、環状突出部202より外周側に設けられる。
振り子部203には、摩擦プレート262aの回転方向に間隔を空けて設けられる円弧状の一対の溝部204が設けられる。溝部204は、具体的には、上述した溝部184と同様に、周方向中央側が周方向端部側と比較して径方向内側へ近づくように湾曲する円弧状に形成される。ダイレクトクラッチC3に振り子部が形成される場合と同様に、本体部201の一対の貫通穴206及び振り子部203の一対の溝部204に一対のピン205が挿通されることによって、振り子部203が本体部201に対して取り付けられる。ピン205の両端部209は、両端部209の間の部分と比較して大きい直径を有する。それにより、振り子部203が摩擦プレート262aから外れ落ちることが抑制される。具体的には、振り子部203における溝部204の軸方向の出力側の端部には他の部分と比較して拡径した拡径部208が形成され、ピン205の軸方向の出力側の端部209は拡径部208の内周側に設けられる。また、本体部201における貫通穴206の軸方向の入力側の端部には他の部分と比較して拡径した拡径部207が形成され、ピン205の軸方向の入力側の端部209は拡径部207の内周側に設けられる。それにより、ピン205の出力側の端面は振り子部203の出力側の端面より入力側に位置し、ピン205の入力側の端面は本体部201の入力側の端面より出力側に位置し得る。
また、振り子部203は、円弧状の一対の溝部204に挿通される一対のピン205によって、摩擦プレート262aにおける他の部分としての本体部201に対して搖動自在に支持される。それにより、振り子部203は、摩擦プレート262aにおける他の部分としての本体部201に対して摩擦プレート262aの回転方向に搖動可能となる。
フォワードブレーキB3が開放されている場合において、摩擦プレート262aの振り子部203が振り子部203と対向する摩擦プレート261aにより押圧されていない状態となる。ゆえに、振り子部203が本体部201に対して摩擦プレート262aの回転方向に搖動可能となり、ペンデュラムダンパとも称される振り子式の動吸振器として機能する。一方、フォワードブレーキB3が締結されている場合、摩擦プレート262aの振り子部203が振り子部203と対向する摩擦プレート261aにより押圧される状態となる。ゆえに、振り子部203の本体部201に対する摩擦プレート261aの回転方向への搖動は規制されるので、フォワードブレーキB3を介した動力の伝達が、フォワードブレーキB3に振り子部203が形成されない場合と同様に実現される。
具体的には、振り子部203が摩擦プレート261aにより押圧された状態において、ピン205の出力側の端面が摩擦プレート261aの入力側の端面と当接せずに振り子部203の出力側の端面が摩擦プレート261aの入力側の端面と当接し得る。それにより、振り子部203が摩擦プレート261aにより押圧された場合において、フォワードブレーキB3を介した動力の伝達が適切に実現される。また、振り子部203が摩擦プレート261aにより押圧された状態において、本体部201の環状突出部202の出力側の端面が摩擦プレート261aの入力側の端面と当接し得る。それにより、振り子部203が摩擦プレート261aにより押圧された場合において、本体部201における環状突出部202より外周側の部分が過剰に変形することが抑制される。
また、変速機1において、複数の摩擦プレートのうち、大きい質量を有する摩擦プレートの被押圧部に優先して振り子部が形成されてもよい。例えば、リテーニングプレートは、他の摩擦プレートと比較して大きな質量を有する。ゆえに、複数の摩擦プレートのうち、リテーニングプレートの被押圧部に優先して振り子部が形成されてもよい。
<3.変速機の効果>
続いて、本実施形態に係る変速機1の効果について説明する。
本実施形態に係る変速機1では、複数の連結機構のうちの少なくとも1つは、互いに押圧されることにより係合される複数の摩擦プレートを含む。また、当該複数の摩擦プレートのうちの少なくとも1つの被押圧部には、当該摩擦プレートにおける他の部分に対して当該摩擦プレートの回転方向に搖動可能な振り子部が形成される。それにより、振り子部が形成される連結機構が開放されている場合において、振り子部をペンデュラムダンパとも称される振り子式の動吸振器として機能させることができる。ゆえに、当該連結機構が開放されている場合において、エンジン3の回転変動に起因して変速機1へ伝達される捩り振動を減衰させることができる。それにより、捩り振動に起因して車室内へ伝達される騒音を低減することができる。
ここで、エンジン3の回転変動に起因して発生する捩り振動の程度は、エンジン回転数が低いほど大きくなりやすい。ゆえに、エンジン回転数が比較的低い場合には、トルクコンバータ2のロックアップを解除することにより、捩り振動が変速機1へ直接的に伝達されることが抑制される。本実施形態では、変速機1へ伝達される捩り振動を減衰させることができるので、トルクコンバータ2のロックアップが許可されるエンジン回転数の下限値を低下させることができる。それにより、トルクコンバータ2がロックアップされた状態となるエンジン回転数の領域を拡大することができるので、燃費を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、連結機構における摩擦プレートの被押圧部に形成される振り子部がペンデュラムダンパの質量体として機能する。ゆえに、動力伝達系にダンパ装置を追加的に設けることなく、捩り振動を減衰させることができる。それにより、動力伝達系の大型化が抑制されるので、車両における他の機器を搭載するスペースが不足することや車両全体の重量が増大することを抑制することができる。
このように、本実施形態に係る変速機1によれば、動力伝達系の大型化を抑制しつつ、捩り振動を減衰させることができる。
また、本実施形態に係る変速機1では、振り子部には、摩擦プレートの回転方向に間隔を空けて設けられる円弧状の一対の溝部が設けられ得る。また、振り子部は、一対の溝部に挿通される一対のピンによって、摩擦プレートにおける他の部分に対して搖動自在に支持され得る。それにより、振り子部を摩擦プレートにおける他の部分に対して当該摩擦プレートの回転方向に搖動可能にすることが効果的に実現される。
また、本実施形態に係る変速機1では、複数の連結機構のうち、高い変速段において開放される連結機構に優先して振り子部が形成され得る。変速機1における変速比は変速段が高いほど低いので、各変速段について車速が同一である場合におけるエンジン回転数は変速段が高いほど低くなる。ゆえに、変速段が高いほど捩り振動の問題が顕著になりやすい。さらに、各変速段についてエンジントルクが同一である場合における駆動輪へ伝達される駆動トルクは変速段が高いほど小さくなるので、エンジン回転数の上昇速度は、変速段が高いほど遅くなりやすい。それにより、エンジン回転数が比較的低く捩り振動の程度が比較的大きくなりやすい状態は、変速段が高いほど長く継続しやすい。ゆえに、このような理由からも変速段が高いほど捩り振動の問題が顕著になりやすい。ここで、高い変速段において開放される連結機構に優先して振り子部を形成することによって、高い変速段において生じ得る捩り振動を優先的に減衰させることができる。ゆえに、捩り振動をより効果的に減衰させることができる。
また、本実施形態に係る変速機1では、複数の摩擦プレートのうち、大きい質量を有する摩擦プレートの被押圧部に優先して振り子部が形成され得る。本実施形態では、上述したように、連結機構における摩擦プレートの被押圧部に形成される振り子部がペンデュラムダンパの質量体として機能する。ゆえに、大きい質量を有する摩擦プレートの被押圧部に優先して振り子部することによって、ペンデュラムダンパの質量体に相当する振り子部の質量を大きくすることができる。それにより、捩り振動を減衰させる効果を向上させることができる。
<4.むすび>
以上説明したように、本実施形態に係る変速機1では、複数の連結機構のうちの少なくとも1つは、互いに押圧されることにより係合される複数の摩擦プレートを含む。また、当該複数の摩擦プレートのうちの少なくとも1つの被押圧部には、当該摩擦プレートにおける他の部分に対して当該摩擦プレートの回転方向に搖動可能な振り子部が形成される。それにより、振り子部が形成される連結機構が開放されている場合において、振り子部をペンデュラムダンパとも称される振り子式の動吸振器として機能させることができる。ここで、連結機構における摩擦プレートの被押圧部に形成される振り子部がペンデュラムダンパの質量体として機能する。よって、動力伝達系の大型化を抑制しつつ、捩り振動を減衰させることができる。
上記では、変速機1が車両に搭載される例について説明したが、変速機1が搭載される装置は係る例に限定されない。変速機1は、動力伝達系を有する装置であれば車両以外の他の装置に搭載されてもよい。
また、上記では、変速機1が3つの遊星歯車機構と3つのブレーキと3つのクラッチと2つのワンウェイクラッチとを備える例について説明したが、変速機1は入力される動力を複数の連結機構の連結状態に応じた変速段で変速して出力するものであればよく、このような例に限定されない。例えば、変速機1が備える遊星歯車機構及び連結機構の数は、変速機1と異なってもよい。また、変速機1により実現可能な変速段の数は、変速機1を構成する遊星歯車機構及び連結機構の数や遊星歯車機構及び連結機構の接続関係に応じて適宜異なってもよい。ゆえに、変速機1により実現可能な変速段は、前進5段及び後進1段でなくともよい。
また、上記では、各図面を参照して、変速機1における各構成要素について説明したが、各構成要素の形状及び各構成要素間の位置関係は各図面に対応する例に限定されず、図面に示した形状及び位置関係は一例に過ぎない。また、各構成要素は、一体として形成されてもよく、複数の部材によって形成されてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。