JP2011001964A - 摩擦係合装置の潤滑構造 - Google Patents

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武史 鳥居
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Abstract

【課題】摩擦係合装置の回転方向や回転速度になどの作動状況に応じて潤滑油量を自動的に調整し、必要時の供給量を十分に確保するとともに、不要時の供給量を減らして引摺りトルクを低減し動力伝達効率を高め、かつ部品点数およびコストが従来と変わらない摩擦係合装置の潤滑構造を提供する。
【解決手段】ハウジングに回転可能に支承されたドラム状回転部材の内周側から外周側へ径方向に貫通して摩擦係合要素に潤滑油を供給する潤滑油孔を有する摩擦係合装置の潤滑構造であって、前記ドラム状回転部材(ブレーキハブ4)の筒状部41には、スプラインを形成するために内径側から外径側に向かって複数の溝(スプライン溝42)が軸線方向に形成され、前記潤滑油孔5は、前記溝42の底部に溝幅の中心CLから周方向にずれた位置(遅角側位置P1)で前記筒状部41を半径方向に貫通して形成されている。
【選択図】図5

Description

本発明は、自動変速機に組み込まれて用いられる摩擦ブレーキや摩擦クラッチなどの摩擦係合装置を潤滑する潤滑構造に関する。
近年、車両に搭載される自動変速機において、変速の円滑化のために変速段の多段化が求められる一方で、小形軽量化の要請も厳しくなってきている。このような要請に応えるため、自動変速機の各構成要素を半径方向内外にオーバラップさせて配置することが多々行われている。さらに、動力伝達経路を切り換えるための摩擦係合装置として、摩擦板を摩擦係合させるとともに発熱や磨耗を抑制するために潤滑油を供給する湿式摩擦ブレーキや湿式摩擦クラッチが一般的に用いられている。さらに、半径方向外側に配置された摩擦係合装置に対して、半径方向内側から効率よく潤滑油を供給する各種の潤滑構造が開発されている。
この種の摩擦係合装置の潤滑構造の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1の図6および図7に示されるように、摩擦係合装置であるブレーキは、円筒部および板状側板からなるブレーキハブを備え、円筒部に形成されたスプライン溝の外周側に摩擦板がスプライン係合されている。一方、ケース側には固定側摩擦板が設けられ、両摩擦板の係脱によりブレーキハブを係止および解放するように構成されている。そして、ブレーキハブの板状側板に半径方向の凹部が設けられ、円筒部に潤滑油孔が設けられて、遠心力の作用により潤滑油が内周側の構成要素から凹部および潤滑油孔を経て両摩擦板を潤滑するようになっている。
また、特許文献2には、特許文献1に類似した構成に加えて潤滑油の供給を制限する供給油量可変機構を備えた多板ブレーキ潤滑構造が開示されている。詳述すると、この多板ブレーキは、外周側に複数の摩擦板を配置したドラム状回転部材を備え、ドラム状回転部材には半径方向に貫通する潤滑油孔が形成され、さらに、ドラム状回転部材の回転速度が大きいときに油流を制限し、回転速度が小さいときに油流を許容する供給油量可変機構を備えている。供給油量可変機構としては、潤滑油孔の内周面側の開口を開閉する機構として、弾性部材とウェイトとを組み合わせたバルブが例示されている。
特開平10−184860号公報 特開2007−127237号公報
ところで、特許文献1および2に限らず一般的に摩擦係合装置では、回転速度の異なる2つの摩擦部材を摩擦係合させて制動するあるいは同期させるときに発生する熱ストレスなどを抑制するために潤滑油が必要なのであって、係合して同期回転しているときおよび解放されて離間しているときには潤滑油は必要でない。特許文献1において、潤滑油孔はブレーキハブの円筒部のスプライン溝の溝幅の中央に形成されており、両摩擦板の間が離間しているときにも潤滑油が供給される。すると潤滑油は、両摩擦板の間でその粘性により引摺りトルクを発生させ、動力伝達効率を低下させる。さらに過大な潤滑油が供給されると、摩擦板に加わるせん断力が増加して剥離が生じるおそれもある。
この対策としてバルブに例示される供給油量可変機構を備えた特許文献2の潤滑構造では、高速回転時の潤滑油の供給を制限して引摺りトルクを低減することができる。しかしながら、ドラム状回転部材の潤滑油孔は多数設けられることが一般的であるため、供給油量可変機構を設けることにより部品点数が増加して構造が複雑化し、製造に手間がかかって、コストが大幅に増加してしまう。
また、それぞれの摩擦係合装置は、自動変速機の構成によって定まる特定変速段への切り換え操作時にのみ実動するのが通例であり、一般的には低速段における摩擦係合時のトルクが大きく、熱ストレスも大きくなって、潤滑油の必要性が大きくなる。さらに、ドラム状回転部材の回転方向が、変速段によって正逆両方向に回転し、回転方向に依存して潤滑油の必要性が変化する摩擦係合装置もある。
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、摩擦係合装置の回転方向や回転速度になどの作動状況に応じて潤滑油量を自動的に調整し、必要時の供給量を十分に確保するとともに、不要時の供給量を減らして引摺りトルクを低減し動力伝達効率を高め、かつ部品点数およびコストが従来と変わらない摩擦係合装置の潤滑構造を提供することを課題とする。
上記課題を解決する請求項1に係る摩擦係合装置の潤滑構造の発明は、ハウジングに回転可能に支承されたドラム状回転部材と、該ドラム状回転部材に係脱される摩擦係合要素とを備え、前記ドラム状回転部材の内周側から外周側へ径方向に貫通して前記摩擦係合要素に潤滑油を供給する潤滑油孔を有する摩擦係合装置の潤滑構造であって、前記ドラム状回転部材の筒状部には、スプラインを形成するために内径側から外径側に向かって複数の溝が軸線方向に形成され、前記潤滑油孔は、前記溝の底部に溝幅の中心から周方向にずれた位置で前記筒状部を半径方向に貫通して形成されていることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記摩擦係合装置は自動変速機の摩擦ブレーキであり、前記ドラム状回転部材は前記摩擦係合要素である摩擦板とスプライン係合するブレーキハブまたは内周側で連結部材とスプライン係合し外周面で前記摩擦係合要素である摩擦バンドと係脱するブレーキドラムであることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記摩擦係合装置は自動変速機の多板摩擦クラッチであり、前記ドラム状回転部材は前記摩擦係合要素である摩擦板とスプライン係合するクラッチハブであることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記ドラム状回転部材は正逆双方向に回転可能であり、前記潤滑油孔は、より多くの前記潤滑油が前記摩擦係合要素に必要とされる回転方向を基準として前記溝幅の中心から遅角側位置に形成されていることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項2において、前記ブレーキハブは第1速で逆転し、第2速で前記摩擦板により係止され、第3速で正転し、前記潤滑油孔は前記第1速の逆転方向を基準として前記溝幅の中心から後方側にずれた遅角側位置に形成されていることを特徴とする。
請求項1に係る発明では、回転しているドラム状回転部材に半径方向内側から供給された潤滑油は、複数の溝に流入し、回転による慣性力の作用を受けて溝幅の中心から周方向後方側にずれた遅角側位置に偏って貯留される。貯留された潤滑油は、遠心力の作用により溝の底部に形成された潤滑油孔を流出して外周側の摩擦係合要素に達し、潤滑作用を果たす。このとき、潤滑油の偏り具合は回転速度の増加につれて顕著となる。また、双方向に回転するドラム状回転部材では、正転および逆転に従って遅角側位置が反転する。したがって、多くの潤滑油が摩擦係合要素に必要とされる回転速度および回転方向の状況下において、潤滑油が貯留されている位置、すなわち溝幅の中心から周方向にずれた遅角側位置に潤滑油孔を形成することで、潤滑油量を十分に確保できる。また、回転速度や回転方向の変化によって潤滑油が必要でなくなったときには、複数の溝の溝幅の中心から周方向後方側にずれた遅角側位置に偏って貯留された潤滑油は、溝の軸線方向両端部から流出するので、潤滑油孔から摩擦係合要素側に流出する潤滑油量が自動的に減少し、引摺りトルクが低減されて動力伝達効率が高まる。
本発明では、潤滑油孔の位置を周方向にずらして形成するだけで、潤滑油量を回転速度や回転方向に依存して変化させることができるので、特許文献2の供給油量可変機構と異なり部品を追加する必要がなく低コストにすることができる。
また、請求項2および3に記載したように、本発明は自動変速機の摩擦ブレーキや多板摩擦クラッチに適用でき、自動変速機の部品点数を増やすことなく低コストで動力伝達効率を高くすることができる。
請求項4に係る発明では、双方向に回転するドラム状回転部材において、より多くの潤滑油が摩擦係合要素に必要とされる回転方向を基準として、潤滑油孔が遅角側位置に形成されている。したがって、より多くの潤滑油が必要とされる回転方向に回転しているときに、より多くの潤滑油量が供給されて、合理的な潤滑構造とすることができる。
請求項5に係る発明では、多板摩擦ブレーキのブレーキハブが第1速で逆転し、第2速で摩擦板によりハウジングに固定され、第3速で正転する構成において、潤滑油孔が第1速の逆転方向を基準として遅角側位置に形成されている。したがって、始動後徐々に加速するシフトアップ変速操作のときに、第1速におけるブレーキハブの逆転時に慣性の作用で多量の潤滑油が遅角側位置に貯留されて潤滑油孔から摩擦板に供給され、第2速に変速するときの摩擦板の摩擦係合による係止動作を良好に潤滑できる。ここで特に、始動時の第1速や第2速ではトルクが大きいので、摩擦係合時に発生する大きな熱ストレスの影響を低減でき、効果的である。さらに、第3速ではブレーキハブは正転するので潤滑油の貯留位置が潤滑油孔から隔たり、摩擦板に供給される潤滑油量が自動的に減少し、引摺りトルクが低減されて動力伝達効率が高まる。
本発明の実施形態の潤滑構造を適用した自動変速機の全体構成を説明するスケルトン図である。 (1)は図1の自動変速機の作動表であり、(2)は速度線図である。 実施形態のブレーキの潤滑構造を説明する自動変速機の部分断面図である。 図3の矢印A方向からみたブレーキハブの円筒部の潤滑油孔を説明する部分斜視図である。 実施形態のブレーキの潤滑構造の作用を説明するブレーキハブの部分断面図であり、(1)は逆転状態、(2)は正転状態を示している。 従来構成における作用を説明するブレーキハブの部分断面図であり、同様に(1)は逆転状態、(2)は正転状態を示している。 別の実施形態であるバンドブレーキの潤滑構造を説明する自動変速機の部分断面図である。
まず、本発明の実施形態の潤滑構造を適用した自動変速機の全体構成について、図1および図2を参考にして説明する。図1は、自動変速機9の全体構成を説明するスケルトン図であり、図2(1)は自動変速機9の作動表、(2)は速度線図である。この自動変速機9は、エンジンに接続されて回転駆動力が入力される入力軸91を備え、入力軸91に続いてトルクコンバータ92および自動変速機構93が連結され、最終的に出力軸94から前進8速後進2速のいずれかに変速された回転駆動力を出力するように構成されている。
トルクコンバータ92は、ポンプインペラ921、タービンランナ922、ロックアップクラッチ923などで構成されている。ポンプインペラ921は、入力軸91に接続されている。タービンランナ922は、作動流体を介してポンプインペラ921の回転駆動力が伝達されるものであり、自動変速機構93の入力軸931に接続されている。また、ロックアップクラッチ923は、入力軸91と自動変速機構93の入力軸931とを直接的に係脱するように配設されている。
自動変速機構93は、入力軸931、ダブルピニオン型プラネタリギヤ932、ラビニヨ型プラネタリギヤ933などで構成されている。自動変速機構93の入力軸931は、入力軸91と同一軸線上に配設されており、トルクコンバータ92のタービンランナ922またはロックアップクラッチ923から回転駆動力が入力されるように接続されている。ダブルピニオン型プラネタリギヤ932は、3つの回転要素として、固定されたサンギヤS1、入力軸931が接続されるとともにダブルピニオンを支承したキャリヤC1、およびリングギヤR1を有している。ラビニヨ型プラネタリギヤ933は、4つの回転要素として、2つのサンギヤS2、S3、キャリヤC23、リングギヤR23を有している。さらに、サンギヤS2およびリングギヤR23に噛合するロングピニオンLPと、別のサンギヤS3に噛合するショートピニオンSPとを有し、キャリヤC23はロングピニオンLPとショートピニオンSPとを噛合させつつ支承している。
また、ラビニヨ型プラネタリギヤ933のキャリヤC23は、ブレーキB−2に接続されてハウジング99に係脱可能であり、クラッチC−2に接続されて入力軸931にも係脱可能とであるとともに、第2ブレーキB−2と並列に配置されたワンウェイクラッチF−1を介してハウジング99に連結され、逆転を阻止されている。サンギヤS2には連結部材CONが結合されて一体的に回転し、連結部材CONはブレーキB−1に接続されてハウジング99に係脱可能となっている。さらに、連結部材CONは、クラッチC−3に接続されてダブルピニオン型プラネタリギヤ932のリングギヤR1に係脱可能であるとともに、クラッチC−4に接続されてキャリヤC1にも係脱可能となっている。
上述のように構成された自動変速機9では、4個のクラッチC−1〜C−4、2個のブレーキB−1、B−2、およびワンウェイクラッチF−1を図2(1)に示される作動表中の丸印で係合するように作動させることにより、(2)の速度線図に白抜き丸印で示される変速比の前進8速(1ST〜8TH)および後進2速(REV1、REV2)の各変速段を形成できる。
本発明の実施形態の潤滑構造1は、ブレーキB−1に適用されている。ブレーキB−1は多板形で、摩擦係合時に潤滑油による潤滑作用が必要な、いわゆる湿式の摩擦係合装置である。図3は、実施形態のブレーキB−1の潤滑構造1を説明する自動変速機9の部分断面図である。図3の下方には自動変速機9の中心軸線が配されており、半径方向外周側に配設されたブレーキB−1および内周側に配設されたクラッチC−4を始めとする各構成要素は概ね軸対象の構造となっている。
図示されるように、ブレーキB−1とクラッチC−4との間には、内側から順番にクラッチドラム2、中間ドラム3、ブレーキハブ4が配設されている。この三部材2、3、4は、ハウジング99に回転可能に支承されており、それぞれが円筒部21、31、41を有している。各円筒部21、31、41には、内径側から外径側に向かって複数のスプライン溝22、32、42が軸線方向に形成されている。各スプライン溝22、32、42は半径方向に互いに係合しており、三部材2、3、4が一体的に回転することで、図1のスケルトン図における連結部材CONが構成されている。
ブレーキハブ4は、ブレーキB−1を構成するドラム状回転部材であり、また図3中の右方延長側の内周に配されたクラッチC−3のクラッチドラムを兼ねている。ブレーキハブ4の円筒部41のスプライン溝42は、内周側で前述の中間ドラム3に係合し、外周側で摩擦係合要素である5枚の摩擦板43と係合している。一方、外側のハウジング99には5枚のプレート44が保持され、摩擦板43とプレート44とが軸線方向に互い違いに重なるように配置されている。また、摩擦板43およびプレート44の図中左方にピストン45が配設されており、ピストン45の左方とハウジング99との間にはシリンダ室46が形成されている。さらに、ハウジング99に設けられたばね取付座47に付勢ばね48が配設されて、ピストン45を常時左方に付勢している。
そして、シリンダ室46に油圧が加えられると、付勢ばね48に打ち勝ってピストン45が右方に駆動されて摩擦板43およびプレート44に圧縮荷重を加え、摩擦係合を行うようになっている。この摩擦係合により、ブレーキハブ4は制動されてハウジング99に係止される。また、シリンダ室46の油圧が除かれると、ピストン45は付勢ばね48により左方に駆動されて摩擦板43とプレート44との間を解離するようになっている。
また、ブレーキハブ4の円筒部41のスプライン溝42には、潤滑油孔5が形成されている。図4は、図3の矢印A方向からみたブレーキハブ4の円筒部41の潤滑油孔5を説明する部分斜視図である。図示されるように、潤滑油孔5は、各スプライン溝42の底部に溝幅の中心線CLから周方向にずれた図中右手前側の位置で筒状部41を半径方向に貫通して形成されている。この潤滑油孔5の位置は、後述するように、逆転方向を基準として後方側にずれた遅角側位置となっている。さらに、潤滑油孔5は、隣接するスプライン溝42において軸線方向の位置が変化するように形成され、全周でみると3箇所の位置51、52、53に周期的に形成されている。このように、潤滑油孔5は、円筒部41の全周に、かつ軸線方向の位置が変化するように多数形成されており、5枚の摩擦板43およびプレート44に潤滑油を供給する好適な形態となっている。
次に、図3に戻り、ブレーキハブ4の内周側の油路構造について説明する。ブレーキハブ4の内側の中間ドラム3は、円筒部31のスプライン溝32の底部を半径方向に貫通する潤滑油孔33を有している。さらにその内側のクラッチドラム2は、円筒部21のスプライン溝22の内周側にクラッチC−4を構成する5枚のプレート25を保持しており、また、スプライン溝22の底部を半径方向に貫通する潤滑油孔23を有している。中間ドラム3の潤滑油孔33およびクラッチドラム2の潤滑油孔23は、ブレーキハブ4の潤滑油孔5と、半径方向内外に重なる位置に設けられている。つまり、クラッチC−4の潤滑を終えた潤滑油が、遠心力にしたがって半径方向外向きに流出し、容易にブレーキハブ4の円筒部41の内周側に達するようになっている。
次に、実施形態のブレーキB−1の潤滑構造1の作用について説明する。前述したように、ブレーキB−1のブレーキハブ4は連結部材CONを構成する一部材であり、連結部材CONの回転方向は、連結されたサンギヤS2の回転方向として図2(2)の速度線図に示されている。つまり、ブレーキハブ4およびサンギヤS2は、図2(2)中のX点で示されるように第1速(1ST)で逆転し、Y点で示されるように第2速(2ND)および第8速(8TH)で固定され、その他の変速段で正転する。図5は、実施形態の潤滑構造1の作用を説明するブレーキハブ4の部分断面図であり、(1)は逆転状態、(2)は正転状態を示している。また図6は、従来構成における作用を説明するブレーキハブの部分断面図であり、同様に(1)は逆転状態、(2)は正転状態を示している。
ここで、自動変速機1を始動して徐々に加速するシフトアップ変速操作を考える。まず、第1速では、図5(1)に示されるようにブレーキハブ4が図中反時計回りに逆転する。すると、慣性の作用により、溝幅の中心線CLから後方側にずれた遅角側位置P1に潤滑油Jが貯留される。この遅角側位置P1には丁度潤滑油孔5が形成されているので、遠心力の作用により、多量の潤滑油が太い矢印F1で示されるようにブレーキハブ4の内周側から外周側に流出して摩擦板43とプレート44の間に供給される。次に、第2速への変速操作が始まると、ブレーキB-1を係止するために、図3のピストン45が右方に駆動されて摩擦板43およびプレート44に圧縮荷重を加える。このとき、両者43、44の間には既に十分な潤滑油が供給されているので、摩擦係合による係止動作が良好に潤滑される。ここで特に、第1速から第2速の変速ではステップが大きいので、摩擦係合時に発生する大きな熱ストレスの影響を低減でき、効果的である。
さらに、第3速への変速操作が始まると、図3のピストン45が左方に復帰されて摩擦板43とプレート44の間が解離され、図5(2)に示されるようにブレーキハブ4が時計回りに正転する。このとき、遅角側位置P1はスプライン溝42内で反転し、やはり潤滑油Jが貯留される。しかしながら、潤滑油孔5の位置は変わらず進角側位置P2となるため、潤滑油Jの貯留位置から隔たる。したがって、潤滑油Jは、スプライン溝42の軸線方向両端部から流出して、潤滑油孔5から流出する潤滑油量が細い矢印F2で示されるように自動的に減少する。これにより、摩擦板43とプレート44の間の潤滑油量が減少して間隙が確保され、第3速以降では潤滑油の粘性による引摺りトルクが低減されて動力伝達効率が高まる。
なお、第8速への変速操作においては正転状態からブレーキB-1を係止する必要があるが、このときは第2速への変速と比較して発熱量が小さい。したがって、多くの潤滑油量は不要で、第1速から第2速への変速操作時と同様の作用を必要としない。
上述の実施形態に対し従来構成では図6に示されるように、ブレーキハブ4のスプライン溝42の溝幅の中心線CL上に潤滑油孔8が設けられていた。したがって、遅角側位置P1に貯留された潤滑油Jは、ブレーキハブ4の逆転および正転に関わらず、中太の矢印F3で示されるように概ね同量が流出していた。本実施形態では、潤滑油孔5の位置を周方向にずらして形成することにより、より多くの潤滑油がブレーキB−1に必要とされる逆転方向で、より多くの潤滑油が供給される構成を実現している。
また、図5を図6と比較すれば明らかなように、本実施形態は潤滑油孔5の位置を従来から変更したものであり、製造工程上の打ち抜き加工の位置を変更するだけでよく、装置の部品点数およびコストは従来と変わらない。
次に、別の実施形態であるバンドブレーキの潤滑構造を、図7を参考にして説明する。図7は、バンドブレーキ6の潤滑構造10を説明する自動変速機の部分断面図である。このバンドブレーキ6は、先に説明した多板摩擦ブレーキB−1の替わりに使用できる摩擦係合装置であり、ブレーキドラム60およびバンド65などで構成されている。図7に示されるように、ブレーキドラム60はドラム状回転部材に相当し、その円筒部41に形成されたスプライン溝42は、内周側で中間クラッチドラム3に係合している。また、円筒部41の外周側には、係合面61が形成されている。一方、外側のハウジング99には、ブレーキドラム60の係合面61の外側を周回するバンド65が保持されている。バンド65は、油圧サーボ機構により半径方向内向きに締め付けられて係合面61に摩擦係合し、ブレーキドラム60を係止するようになっている。ブレーキドラム60のスプライン溝42には、図3〜図5で説明した潤滑油孔5が形成されている。
バンドブレーキ6の潤滑構造10においても、潤滑油孔5における潤滑作用は図5と同様であり、ブレーキドラム60の係合面61とバンド65の間に、必要性に応じて十分な潤滑油量が供給される。この結果、バンドブレーキ6を係止する作動力の方向とブレーキドラム60の回転方向が同じセルフエナージと呼ばれる状態の場合には、潤滑油の不足により、バンド65がブレーキドラム60に急激に巻き込まれることで発生する変速ショックを低減することができる。また、バンドブレーキ6を係止する作動力の方向とブレーキドラム60の回転方向が逆であるディエナージと呼ばれる状態の場合には、潤滑油の不足により、スティックスリップと呼ばれるバンド65とブレーキドラム60との間に発生する引っ掛かりを防止することができる。
なお、実施形態においてブレーキハブ4およびブレーキドラム60は正逆双方向に回転するが、本発明は、単一方向のみに回転するドラム状回転部材にも適用できる。つまり、ドラム状回転部材の回転速度に依存してスプライン溝内に貯留される潤滑油の位置が偏るので、これを考慮してスプライン溝の底部に形成する潤滑油孔の位置を適宜設計することにより、回転速度に依存して潤滑油量を可変にできる。
さらに、本発明は、摩擦ブレーキだけでなく、多板摩擦クラッチにも適用できる。例えば、図3において、5枚のプレート44を保持するハウジング99を、回転可能な連結部材に置き換えた構造とすることにより、多板摩擦クラッチの潤滑構造を実現できる。
1:ブレーキ(摩擦係合装置)の潤滑構造
10:バンドブレーキ(摩擦係合装置)の潤滑構造
2:クラッチドラム
3:中間ドラム
4:ブレーキハブ(ドラム状回転部材)
41:円筒部 42:スプライン溝 43:摩擦板(摩擦係合要素)
44:プレート 45:ピストン
5:潤滑油孔
6:バンドブレーキ
60:ブレーキドラム 61:係合面 65:バンド
9:自動変速機
91:入力軸 92:トルクコンバータ 93:自動変速機構
932:ダブルピニオン型プラネタリギヤ
933:ラビニヨ型プラネタリギヤ
94:出力軸 99:ハウジング
C−1〜C−4:クラッチ
B−1、B−2:ブレーキ
F−1:ワンウェイクラッチ
CON:連結部材
CL:溝幅の中心線 P1:遅角側位置 P2:進角側位置

Claims (5)

  1. ハウジングに回転可能に支承されたドラム状回転部材と、該ドラム状回転部材に係脱される摩擦係合要素とを備え、前記ドラム状回転部材の内周側から外周側へ径方向に貫通して前記摩擦係合要素に潤滑油を供給する潤滑油孔を有する摩擦係合装置の潤滑構造であって、
    前記ドラム状回転部材の筒状部には、スプラインを形成するために内径側から外径側に向かって複数の溝が軸線方向に形成され、前記潤滑油孔は、前記溝の底部に溝幅の中心から周方向にずれた位置で前記筒状部を半径方向に貫通して形成されていることを特徴とする摩擦係合装置の潤滑構造。
  2. 請求項1において、前記摩擦係合装置は自動変速機の摩擦ブレーキであり、前記ドラム状回転部材は前記摩擦係合要素である摩擦板とスプライン係合するブレーキハブまたは内周側で連結部材とスプライン係合し外周面で前記摩擦係合要素である摩擦バンドと係脱するブレーキドラムであることを特徴とする摩擦係合装置の潤滑構造。
  3. 請求項1において、前記摩擦係合装置は自動変速機の多板摩擦クラッチであり、前記ドラム状回転部材は前記摩擦係合要素である摩擦板とスプライン係合するクラッチハブであることを特徴とする摩擦係合装置の潤滑構造。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、前記ドラム状回転部材は正逆双方向に回転可能であり、前記潤滑油孔は、より多くの前記潤滑油が前記摩擦係合要素に必要とされる回転方向を基準として前記溝幅の中心から遅角側位置に形成されていることを特徴とする摩擦係合装置の潤滑構造。
  5. 請求項2において、前記ブレーキハブは第1速で逆転し、第2速で前記摩擦板により係止され、第3速で正転し、前記潤滑油孔は前記第1速の逆転方向を基準として前記溝幅の中心から後方側にずれた遅角側位置に形成されていることを特徴とする摩擦係合装置の潤滑構造。
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