JP2019060415A - スラスト転がり軸受用保持器、スラスト転がり軸受構造、およびスラスト転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】ころ案内を安定させるのに好適なスラスト転がり軸受用保持器を提供する。【解決手段】スラスト転がり軸受用保持器14は、環状の第1板部16と、第2板部21と、第3板部22と、これら板部を打ち抜くことで形成されるポケット15とを備える。第1〜第3板部はそれぞれ、ポケットを区画するポケット壁面17w,21w,22wとして、ポケット剪断面sとポケット破断面bとを有する。第1板部16のポケット剪断面sに対して第2板部21及び第3板部22のうち少なくとも一方のポケット剪断面sが軸線O方向に隣り合う。あるいは第1板部16のポケット破断面bに対して第2板部21及び第3板部22のうち少なくとも一方のポケット破断面bが軸線O方向に隣り合う。【選択図】図4
Description
本発明は、スラスト転がり軸受用保持器、スラスト転がり軸受構造、およびスラスト転がり軸受に関する。
スラスト転がり軸受に使用され、薄板を曲げて重ねて形成されるスラスト転がり軸受用保持器として、従来例えば特開2010―270782号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。特許文献1記載の製造方法は、第1工程で絞り加工等により薄板を曲げ重ね、第2工程で抜き金型によりポケットを打ち抜き、第3工程でカシメ金型を保持器の両面に押し付けてころ止めを形成する。特許文献1の記載によれば、厚板を用いずに保持器の強度を確保できるというものである。
上記従来のような保持器にあっては、さらに改善すべき点があることを本発明者は見いだした。つまり薄板を曲げ重ねた後に、保持器の軸線方向一方から他方へ抜き金型を動かしてポケットを打ち抜き形成するため、ポケット壁面の軸線方向一方側が剪断面となり、ポケット壁面の軸線方向他方側が破断面となる。ポケット壁面は、ころと当接して該ころを案内するため、ころと当接する破断面の比率が高くなると、軸受使用中のころ案内が不安定になる懸念があり、また油膜ができにくくなってピーリング等の懸念がある。
本発明は、上述の実情に鑑み、軸受使用中のころ案内を安定にするために好適なスラスト転がり軸受用保持器を提供することを目的とする。
この目的のため本発明によるスラスト転がり軸受用保持器は、環状の第1板部と、第1板部の外径側部分と重なる環状の第2板部と、第1板部の内径側部分と重なる環状の第3板部と、これら第1板部、第2板部及び第3板部をそれぞれプレス加工によって打ち抜くことで形成されたポケット要素で構成されて転動体を保持するポケットと、を備え、第1板部、第2板部及び第3板部はそれぞれ、ポケットを区画するポケット壁面として、ポケット剪断面とポケット破断面とを有し、第1板部のポケット剪断面に対して第2板部及び第3板部のうち少なくとも一方のポケット剪断面が軸線方向に隣り合う第1条件と、第1板部のポケット破断面に対して第2板部及び第3板部のうち少なくとも一方のポケット破断面が軸線方向に隣り合う第2条件とのうち、いずれか一方の条件を満足する。
かかる本発明によれば、第1板部の外径側部分と環状の第2板部が重ねられ、これらにそれぞれ形成される第1板部のポケット剪断面と第2板部のポケット剪断面が軸線方向に隣り合ったり、あるいは第1板部のポケット破断面と第2板部のポケット破断面が軸線方向に隣り合ったりすることから、これらポケット剪断面をポケット壁面の軸線方向中央部に集約させたり、あるいは逆にこれらポケット破断面をポケット壁面の軸線方向中央部に集約させたり等、断面比率の調整が可能になる。
また、本発明によれば、第1板部の内径側部分および環状の第3板部が重ねられ、これらにそれぞれ形成される第1板部のポケット剪断面と第3板部のポケット剪断面が軸線方向に隣り合ったり、あるいは第1板部のポケット破断面と第3板部のポケット破断面が軸線方向に隣り合ったりすることから、これらポケット剪断面をポケット壁面の軸線方向中央部に集約させたり、あるいは逆にこれらポケット破断面をポケット壁面の軸線方向中央部に集約させたり等、断面比率の調整が可能になる。
本発明によれば、ポケット壁面の軸線方向中央部に剪断面を集約させて転動体と当接するポケット剪断面を大きくすることができる。換言すると転動体と当接するポケット破断面を小さくすることができる。あるいは逆に転動体と当接するポケット剪断面を小さくかつポケット破断面を大きくすることができる。したがってポケット破断面よりも円滑なポケット剪断面でころを案内し得て、軸受使用時にポケット壁面に案内される転動体を安定して案内することができ、またポケット壁面に油膜を形成してピーリングを防止することができる。なお保持器の軸線方向は、板厚方向に等しい。
一例として、第1板部〜第3板部のそれぞれは、1枚の円板素材の各部である。この例では円板素材の各部が折り曲げられて本発明の保持器が形成される。本発明の1つの局面として、第2板部および第3板部は、第1板部の軸線方向同じ側に配置される。
本発明の好ましい局面として、第2板部および第3板部は、第1板部と重なった状態で径方向に互いに離隔する。かかる局面によれば、第2板部と第3板部の間の隙間が周方向に延びて各ポケットと連通することから、スラスト転がり軸受の運転時に潤滑油がこの隙間を流れ、各ポケットに潤滑油を供給することができる。他の局面として、第2板部および第3板部は折り曲げられた状態で互いに重なる。
本発明のさらに好ましい局面として、第1板部のポケット剪断面と第2板部のポケット剪断面が隣り合うとともに第1板部のポケット破断面と第2板部のポケット破断面が互いに離隔され、第1板部のポケット剪断面と第3板部のポケット剪断面が隣り合うとともに第1板部のポケット破断面と第3板部のポケット破断面が互いに離隔される。これにより、ポケットの軸線方向中央部にポケット剪断面を集約して、ころ案内面における剪断面の比率を大きくされる。
本発明の他の局面として、第2板部は第1板部の軸線方向一方側に配置され、第3板部は第1板部の軸線方向他方側に配置される。
本発明の1つの局面として、第2板部はポケットに向かって突出してポケットに保持される転動体が抜け出すことを防止する突起を有し、第3板部はポケットに向かって突出してポケットに保持される転動体が抜け出すことを防止する突起を有し、第1板部はポケットに向かって突出してポケットに保持される転動体が抜け出すことを防止する突起を有する。ポケット壁面に突起を設けることにより、転動体がポケットから脱落することを防止できる。他の局面として、ポケット壁面に突起を設けなくてもよい。
本発明のスラスト転がり軸受に保持される転動体は特に限定されない。スラスト転がり軸受の転動体は、ころ径と対比してころ長が長いほど、保持器によって保持されやすい。本発明のスラスト転がり軸受構造は、上述したスラスト転がり軸受用保持器と、ポケットに配置される転動体としてのころとを備え、ころのころ長がころ直径の1.0倍以上2.0倍以下の範囲に含まれる。かかる構造によれば、ころ長がころ径の1.0倍以上2.0倍以下の範囲に含まれる短小ころに関し、1枚の板材からなる保持器では保持することができなかった短小ころを、2枚の板材の重ね合わせによってポケット内に保持することができる。本発明の他の局面として、転動体は針状ころであってもよい。針状ころは、JIS B 1506(2005年)に規定される。具体的にはころの呼び直径が6[mm]以下であり、ころの呼び長さがころの呼び直径の3倍以上10倍以下の範囲に含まれる。
本発明のスラスト転がり軸受は、上述したスラスト転がり軸受構造と、スラスト転がり軸受用保持器からみて軸線方向一方に配置されてころが転走する第1軌道盤と、スラスト転がり軸受用保持器からみて軸線方向他方に配置されてころが転走する第2軌道盤とを具備する。第1軌道盤には、軸線方向他方に突出してスラスト転がり軸受用保持器を外径側から包囲する外径側鍔部と、外径側鍔部の突出縁から内径側へ突出してスラスト転がり軸受用保持器の外周縁を抱える係合突起が設けられる。第2軌道盤には、軸線方向一方に突出してスラスト転がり軸受用保持器を内径側から包囲する内径側鍔部と、内径側鍔部の突出縁から外径側へ突出してスラスト転がり軸受用保持器の内周縁を抱える係合突起が設けられる。スラスト転がり軸受は、軸線方向一方側かつ内径側で第2軌道盤の係合突起を受け入れる環状段差と、軸線方向他方側かつ外径側で第1軌道盤の係合突起を受け入れる環状段差とを有する。かかる軸受によれば、軌道盤および保持器を分離しないように組み立てることができる。複数のころは軌道盤上で保持器に保持される。
本発明のスラスト転がり軸受によれば、軸受使用中にころを安定して案内することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明のスラスト転がり軸受を内蔵する自動車のトルクコンバータを示す模式的な断面図である。エンジンと自動変速機との間に組む込まれるトルクコンバータ80は、インペラ81、ステータ82と、タービン83とを有している。
具体的には、エンジンの出力軸(クランクシャフト)に連結されるインペラ81と、自動変速機の入力軸に連結されるタービン83とが互いに軸方向(紙面左右方向)に対向するように配置されている。インペラ81は、コンバータカバー86と溶接してあり、両者が一体となることで、ハウジング87が形成されている。ハウジング87の内部には、作動油(ここでは、ATF:Automatic Transmission Fluid)が封入されている。作動油は、トルクコンバータ80に隣接したオイルポンプから供給される。また、ステータ82は、インペラ81とタービン83との間に配置され、一方向クラッチ84を介して非回転のステータシャフト85に支持されている。
エンジンの出力軸からトルクコンバータ80のハウジング87にトルクが入力されると、インペラ81が回転する。インペラ81が回転すると、作動油が、矢印に示すように、インペラ81、タービン83、ステータ82、インペラ81の順に還流して流れるようになる。そして、タービン83の回転が自動変速機の入力軸にトルクが増大された状態で伝達される。ステータ82は、インペラ81とタービン83との間で還流する作動油を、タービン83側からインペラ81側に指向させる機能を有する。これにより、作動油の流れ方向を変えてインペラ81に順方向の回転力を付与し、トルクを増大させる。
上記のトルクコンバータ80では、トルクコンバータ80の中心部、具体的にはインペラ81とステータ82との間、および、ステータ82とタービン83との間に本発明の一実施形態に係るスラスト転がり軸受10が配置され、ステータ82に加わるアキシアル荷重を支持しつつ、回転自在となっている。
図2は、本発明のスラスト転がり軸受が使用される遊星歯車機構を示す模式的な正面図である。自動変速機に内蔵される遊星歯車機構91は、内歯を有し外周を取り囲むリングギア92と、外歯を有しリングギア92の中心に配置されるサンギア93と、外歯を有しリングギア92とサンギア93の間に配置される複数のピニオンギア94(プラネタリギアともいう)とを有する。ピニオンギア94は、リングギア92およびサンギア93と噛合する。ピニオンギア94の中心には係合穴95が形成される。ピニオンギア94は、係合穴95に設置されるピニオンシャフト(図示せず)によって回転可能に支持される。そして、各々のピニオンシャフトはキャリア(図示せず)に連結される。
上記サンギア93、キャリア、リングギア92のうち、一つを固定し、残る二つの一方から回転を遊星歯車機構91に入力し、他方から回転を出力することにより、減速または増速を行うことができる。具体的には、サンギア93を固定し、リングギア92から入力を行なうと、キャリアから低回転高トルクの動力が出力され、逆に、キャリアから動力を入力すると、リングギア92から高回転低トルクの動力が出力される。サンギア93の軸方向端面には、本発明のスラスト転がり軸受(図示せず)が配置され、軸方向に対向する相手部材から伝達されるアキシアル荷重を支持しつつ、回転自在となっている。
図3は、本発明の一実施形態になるスラスト転がり軸受を拡大して示す断面図である。スラスト転がり軸受10は、1対の軌道盤11,12と、これら軌道盤11,12間に介在する複数のころ13と、軌道盤11,12間で転動体であるころ13を保持する保持器14とを備える。本実施形態のスラスト転がり軸受10は、スラストころ軸受である。スラスト転がり軸受10は、図1に示すように軸線O方向のアキシアル荷重を伝達しながら相対回転する2部材間に介在する。なお、以下の説明では、スラスト転がり軸受10において、スラスト転がり軸受10の中心軸(軸線O)に沿った方向を「軸線O方向」、中心軸(軸線O)に直交する方向を「径方向」、中心軸(軸線O)を中心とする円弧に沿った方向を「周方向」と呼ぶ。
軌道盤11,12は、スラスト転がり軸受10の軸線O方向に互いに向き合う平坦な軌道面11b,12bをそれぞれ有する。また軌道盤11,12は、環状に形成される。
複数のころ13は、軸線O回りに間隔を空けて配置される。各ころ13は、保持器14のポケット15に保持される。ころ13は、針状ころよりも短い、いわゆる短小ころである。ころ13の長さ寸法は、ころ13の外径寸法の1.0倍以上2.0倍以下の範囲である。言い換えると、ころ12のころ直径φcところ長lcは以下の関係を満足する。
[式1]φc≦lc≦2φc
図4は、軸線Oを含む平面で保持器14を切断し、この切断面を示す断面図であり、参考のためころ13とともに示す。図5は、保持器14を軸線Oからみた状態を示す正面図であり、軸線O方向一方からみた状態を表す。図6は、図5中、A―Aで切断し、この断面を矢の方向からみた状態を示す断面図である。
保持器14は略平坦な環状の鋼板から形成される。図5に示すように保持器14の板厚方向(軸線O方向)にみて、保持器14は軸線Oを取り囲むように環状である。円板からなる保持器14は、ころ13を収容するポケット15を備える。保持器14は、第1板部16と、第2板部21と、第3板部22とを含む。これら第1〜第3板部はそれぞれ、環状の円板である。環状の第2板部21は、環状の第1板部16の全周に亘って、第1板部16の外周縁から連続する。環状の第3板部22は、環状の第1板部16の全周に亘って、第1板部16の内周縁から連続する。
保持器14は、第1板部16を鋼板1枚分とし、第2板部21および第3板部22を鋼板1枚分として、鋼板2枚分の重なり部分を有する。つまり保持器14は鋼板を2枚分重ねた2層構造である。ポケット15は、第1板部16と、第2板部21と、第3板部22を打ち抜くことで形成された後述するポケット要素15l〜15nで構成されていて、保持器14の周方向に間隔を空けて複数配置される。各ポケット15は、4隅を丸く形成した四角孔であり、互いに向き合う2辺が平行にされる。
第1板部16は、柱部17と、外径側リング部18と、内径側リング部19を含む平坦な板部である。柱部17は、保持器14の周方向に隣り合うポケット15,15間で、保持器14の径方向に延びる。ポケット15よりも外径側には外径側リング部18、ポケット15よりも内径側には内径側リング部19がそれぞれ設けれ、柱部17で一体に結合される。柱部17は、ポケット15を区画するポケット壁面(以下、単に壁面17wという)を有する。
図3及び図4に示すように、保持器14の第2板部21は、第1板部16の外径側部分に重ねて配置される。保持器14の第3板部22は、第1板部16の内径側部分に重ねて配置される。そして第2板部21と第3板部22は、径方向に離隔している。第2板部21と第3板部22の間の隙間は、保持器14の周方向に延び、ポケット15と連通する。かかる隙間にはスラスト転がり軸受10の運転中に潤滑油が流れ、各ポケット15に潤滑油を供給する。また第2板部21および第3板部22は共に、第1板部16からみて軸線O方向一方側に配置される。
第2板部21は、第1板部16(の外周縁)から外径側へ連続する円環部分を折り曲げることで形成される。具体的には第2板部21は、第1板部16からみて180°曲げ返されて内径側へ指向し、第1板部16に重なる。より具体的には、柱部17の外径側端部および外径側リング部18と重なる。第1実施形態では、軸線O方向一方(図4中、紙面上方)に曲げられた第2板部21が、第1板部16の軸線O方向一方端面に接触する。
第3板部22は、第1板部16(の内周縁)から内径側へ連続する円環部分を折り曲げることで形成される。具体的には第3板部22は、第1板部16からみて180°曲げ返されて外径側へ指向し、第1板部16に重なる。より具体的には、柱部17の内径側端部および内径側リング部19と重なる。第1実施形態では、軸線O方向一方(図4中、紙面上方)に曲げられた第3板部22が、第1板部16の軸線O方向一方端面に接触する。
第2板部/第3板部21,22と第1板部16が重なるとは、保持器14の軸線O方向から視て重複することをいい、軸線Oを中心とする第2板部/第3板部21,22の径方向位置が、第1板部16の径方向位置に含まれることをいう。
柱部17にはポケット15を区画するポケット壁面17wが形成される。第2板部21にはポケット15を区画するポケット壁面(以下、単に壁面21wという)が形成される。第3板部22にはポケット15を区画するポケット壁面(以下、単に壁面22wという)が形成される。図6に示すように隣り合う壁面17w,22wは面一であり、周方向に対面する。隣り合う壁面17w,21wも同様である。本実施形態では、壁面17w,21w,22wの3壁面がころ13を案内する。これら3壁面のうち軸線O方向一方に位置する壁面は壁面21w,22wであり、これら3壁面のうち軸線O方向他方に位置する壁面は壁面17wである。
ポケット15は、保持器14の元になる円板素材を軸線O方向に打ち抜いて形成される。このため各壁面17w,21w,22wは、図4に示すように剪断面sおよび破断面bを含む。剪断面sは、打ち抜き時にダイスが材料を切断して生じる面であり、破断面bは材料が引きちぎれて生じる不規則な凹凸面である。破断面bは剪断面sと連なり、剪断面sより粗い。言い換えると、破断面bに形成される凹凸は、剪断面sに形成される凹凸よりも大きい。壁面17wの剪断面sと壁面21wの剪断面sは、各壁面17w,21wのうちポケット15の軸線O方向中央部に集約され、軸線O方向に隣り合う。壁面17wの剪断面sと壁面22wの剪断面sもポケット15の軸線O方向中央部に集約され、軸線O方向に隣り合う。これらの剪断面sはころ13に当接し、ころ13を案内する。
壁面21wの破断面bおよび壁面22wの破断面bは、各壁面21w,22wのうちポケット15の軸線O方向一方側に配置される。壁面17wの破断面bは、ポケット15の軸線O方向他方側に配置される。このように壁面17wの破断面bは、壁面21wの破断面bおよび壁面22wの破断面bから離隔される。これらの破断面bはころ13を案内せず、通常、ころ13と当接しない。
図3及び図6に示すように各ポケット15内には、ころ13の抜け出しを防止する一対の第1ころ止め突起23および一対の第2ころ止め突起24が設けられる。一対の第1ころ止め突起23はポケット15の軸線O方向一方側に配置され、保持器14の周方向に間隔をあけて設けられている。一対の第2ころ止め突起24はポケット15の軸線O方向他方側に配置され、保持器14の周方向に間隔をあけて設けられている。
図3に示すように第1実施形態では、保持器14の内径側に第1ころ止め突起23および第2ころ止め突起24が設けられ、保持器14の外径側にも第1ころ止め突起23および第2ころ止め突起24が設けられる。第1ころ止め突起23は外径側の壁面21wおよび内径側の壁面22wにそれぞれ形成される。第2ころ止め突起24は内/外径側のいずれも壁面17wに間隔をあけて形成される。
図6に示すように第1ころ止め突起23は、壁面21w,22wから保持器14の周方向に突出し、各ポケット15における第1ころ止め突起23の先端同士の間隔はころ13の直径よりも小さい。これにより一対の第1ころ止め突起23,23は、ポケット15内のころ13が軸線O方向一方へ抜け出すことを規制する。
第2ころ止め突起24は、壁面17wから保持器14の周方向に突出し、互いに対向する第2ころ止め突起24,24は、ポケット15内のころ13が軸線O方向他方へ抜け出すことを規制する。図6に示す内径側の第2ころ止め突起24の他、外径側の第2ころ止め突起24(図3)も同様である。
以下、第1実施形態の保持器14の製造方法につき説明する。
[素材準備工程]
まず平坦な1枚の円板素材114を準備する。この円板素材114は、軸線O方向に関し板厚一定の鋼板である。この円板素材114は、径方向に関し、第2板部21と、第3板部22と、これら第2板部21/第3板部22の間に位置する第1板部16を含む。この準備素材工程と次のポケット形成工程において、第1板部16は円板素材114の径方向中央領域である。また、第2板部21は、第1板部16から連続して外径側へ延設する外径側領域であり、第3板部22は第1板部16から連続して内径側へ延設する内径側領域である。
まず平坦な1枚の円板素材114を準備する。この円板素材114は、軸線O方向に関し板厚一定の鋼板である。この円板素材114は、径方向に関し、第2板部21と、第3板部22と、これら第2板部21/第3板部22の間に位置する第1板部16を含む。この準備素材工程と次のポケット形成工程において、第1板部16は円板素材114の径方向中央領域である。また、第2板部21は、第1板部16から連続して外径側へ延設する外径側領域であり、第3板部22は第1板部16から連続して内径側へ延設する内径側領域である。
[ポケット形成工程]
図7は円板素材114を示す縦断面図である。円板素材114は、軸線O方向一方に配置されるポンチ201,202,203と向き合い、軸線O方向他方からダイス204,205で支持される。ポンチ201と、ダイス204と、ポンチ202と、ダイス205と、ポンチ203は、この順序で外径側から内径側へ径方向に配列される。ポンチ201,202,203はダイス204,205と隣り合うまで軸線O方向一方から他方に動いて、円板素材114を打ち抜き、円板素材114にポケットを形成する。具体的にはポンチ201が円板素材114の外周縁を打ち抜いて切り欠き形状のポケット要素15lを形成し、ポンチ202が円板素材114の第1板部を打ち抜いて貫通孔状のポケット要素15mを形成し、ポンチ203が円板素材114の内周縁を打ち抜いて切り欠き形状のポケット要素15nを形成する。図7に示す打ち抜き工程では、全てのポンチ201,202,203が同じ方向に円板素材114を打ち抜く。ポケット要素15l〜15nは、ポケット15を構成する。
図7は円板素材114を示す縦断面図である。円板素材114は、軸線O方向一方に配置されるポンチ201,202,203と向き合い、軸線O方向他方からダイス204,205で支持される。ポンチ201と、ダイス204と、ポンチ202と、ダイス205と、ポンチ203は、この順序で外径側から内径側へ径方向に配列される。ポンチ201,202,203はダイス204,205と隣り合うまで軸線O方向一方から他方に動いて、円板素材114を打ち抜き、円板素材114にポケットを形成する。具体的にはポンチ201が円板素材114の外周縁を打ち抜いて切り欠き形状のポケット要素15lを形成し、ポンチ202が円板素材114の第1板部を打ち抜いて貫通孔状のポケット要素15mを形成し、ポンチ203が円板素材114の内周縁を打ち抜いて切り欠き形状のポケット要素15nを形成する。図7に示す打ち抜き工程では、全てのポンチ201,202,203が同じ方向に円板素材114を打ち抜く。ポケット要素15l〜15nは、ポケット15を構成する。
ポケット要素15lのポケット壁面、ポケット要素15mのポケット壁面、およびポケット要素15nのポケット壁面はいずれも、軸線O方向一方側で、ポンチ201〜203の先端刃によって切り裂かれ、相対的に滑らかな剪断面sとされる。また、これらのポケット壁面はいずれも、ポンチ201〜203の先端刃が当たらない軸線O方向他方側で円板素材114の材料が引きちぎられることにより、相対的に粗な破断面bとされる。
ポンチ201,202,203の打ち抜き方向に関し、剪断面sの寸法(面積)は破断面bの寸法(面積)よりも大きくされる。剪断面sと破断面bの割合は、円板素材114の材質およびポンチ201〜203が円板素材114を打ち抜く際の移動速度等にも因るが例えば、剪断面sがポケット壁面の70〜90%を占め、破断面が残りの30〜10%を占める。剪断面sには破断面bよりも油膜が形成されやすい。
[第1折り曲げ工程]
1枚の鋼製の円板素材114は、第2板部21および第3板部22を軸線O方向に略90°折り曲げられる。つまり第2板部21および第3板部22は、この第1折り曲げ工程によって、第1板部16から軸線O方向に立ち上がる。この第1折り曲げ工程では、第2板部21および第3板部22の板厚が不均一にならないよう、絞り加工あるいは拡径加工等によって徐々に折り曲げられる。
1枚の鋼製の円板素材114は、第2板部21および第3板部22を軸線O方向に略90°折り曲げられる。つまり第2板部21および第3板部22は、この第1折り曲げ工程によって、第1板部16から軸線O方向に立ち上がる。この第1折り曲げ工程では、第2板部21および第3板部22の板厚が不均一にならないよう、絞り加工あるいは拡径加工等によって徐々に折り曲げられる。
[第2折り曲げ工程]
上述した第1折り曲げ工程に続く第2折り曲げ工程では、第2板部21を内径側へ倒すようにさらに折り曲げ、第2板部21の先端縁を内径方向に指向させる。かくして第2板部21は180°曲げ返され、第1板部16と重なる。ポケット要素15lはポケット要素15mと軸方向に重なり、ポケット15(図4)を構成する。また第2折り曲げ工程では、第3板部22を外径側へ倒すようにさらに折り曲げ、第3板部22の先端縁を外径方向に指向させる。かくして第3板部22は180°曲げ返され、第1板部16と重なる。ポケット要素15nはポケット要素15mと軸方向に重なり、ポケット15(図4)を構成する。この第2折り曲げ工程において、本実施形態では、第2板部21,第3板部22は第1板部16と接触するように折り曲げられる。なお、第2板部21,第3板部22を第1板部16と軸方向に隙間を介在させるように、折り曲げてもよい。
上述した第1折り曲げ工程に続く第2折り曲げ工程では、第2板部21を内径側へ倒すようにさらに折り曲げ、第2板部21の先端縁を内径方向に指向させる。かくして第2板部21は180°曲げ返され、第1板部16と重なる。ポケット要素15lはポケット要素15mと軸方向に重なり、ポケット15(図4)を構成する。また第2折り曲げ工程では、第3板部22を外径側へ倒すようにさらに折り曲げ、第3板部22の先端縁を外径方向に指向させる。かくして第3板部22は180°曲げ返され、第1板部16と重なる。ポケット要素15nはポケット要素15mと軸方向に重なり、ポケット15(図4)を構成する。この第2折り曲げ工程において、本実施形態では、第2板部21,第3板部22は第1板部16と接触するように折り曲げられる。なお、第2板部21,第3板部22を第1板部16と軸方向に隙間を介在させるように、折り曲げてもよい。
この第2折り曲げ工程では、第2板部21および第3板部22の板厚が不均一にならないよう、絞り加工あるいは拡径加工等によって徐々に折り曲げられる。このため第2折り曲げ工程は、90°から所定角度αまで折り曲げるサブ工程と、所定角度αから180°まで折り曲げるサブ工程というように、2回あるいは3回以上の複数回に分けて実行されてもよい(90°<α<180°)。
[ころ止め突起形成工程]
上述した第2折り曲げ工程の次に、第1/第2ころ止め突起23,24を形成する。ころ止め突起形成工程は例えばカシメ加工による。具体的には保持器14の軸線O方向一方面に図示しないカシメ具を打ち込み、壁面21w,22wの軸線O方向一方部分をポケット15側に倒すよう塑性変形させて、第1ころ止め突起23,23をそれぞれ形成する。さらに、ころ止め突起形成工程では、軸線O方向他方面に図示しないカシメ具を打ち込み、壁面17wの軸線O方向他方部分をポケット15側に倒すよう塑性変形させて、第2ころ止め突起24,24をそれぞれ形成する。あるいは、ころ止め突起形成工程は、保持器の壁面17w,21w,22wにバニシ加工を施すものであってもよい。
上述した第2折り曲げ工程の次に、第1/第2ころ止め突起23,24を形成する。ころ止め突起形成工程は例えばカシメ加工による。具体的には保持器14の軸線O方向一方面に図示しないカシメ具を打ち込み、壁面21w,22wの軸線O方向一方部分をポケット15側に倒すよう塑性変形させて、第1ころ止め突起23,23をそれぞれ形成する。さらに、ころ止め突起形成工程では、軸線O方向他方面に図示しないカシメ具を打ち込み、壁面17wの軸線O方向他方部分をポケット15側に倒すよう塑性変形させて、第2ころ止め突起24,24をそれぞれ形成する。あるいは、ころ止め突起形成工程は、保持器の壁面17w,21w,22wにバニシ加工を施すものであってもよい。
上述した工程を順次経て、保持器14が作製される。
第1実施形態によれば、ポケット15の軸線O方向中央部に剪断面sを集約することから、ころ13を案内するころ案内面の断面比率を、剪断面sが多くなるよう調整することができる。したがって、ころ13を安定して案内することができる。また、ポケットの軸線方向中央部に剪断面sが集約されるため、ころ案内面に油膜を形成し易くすることができる。したがってピーリングを防止することができる。
近年では、自動車の燃費向上のために、変速機が軽量化する傾向にある。軽量化を目的とした変速機の小型化が進むと、スラスト転がり軸受の径方向スペースの要求が厳しくなる。このように、自動車に用いられるスラスト転がり軸受では、径方向に小型化した低断面仕様の軸受が求められている。本実施形態では、スラスト転がり軸受10は、短小ころ13を備えているので、上記径方向の低断面仕様の要求に応えることができる。
また第1実施形態によれば、図4に示すように、第2板部21および第3板部22が第1板部16の軸線O方向同じ側に折り曲げられる。第2板部21および第3板部22は、第1板部16と重なった状態で径方向に互いに離隔する。これにより、第2板部21と第3板部22の間の隙間が周方向に延びてポケット15と連通することから、スラスト転がり軸受10の運転時に潤滑油がこの隙間を流れ、各ポケット15に潤滑油を供給することができる。
第1実施形態の第2板部21は、ポケット要素15lに向かって突出してポケット要素15lに保持されるころ13が抜け出すことを防止するころ止め突起23を有する。第3板部22は、ポケット要素15nに向かって突出してポケット要素15nに保持されるころ13が抜け出すことを防止するころ止め突起23を有する。第1板部16は、ポケット15に向かって突出してポケット要素15mに保持されるころ13が抜け出すことを防止するころ止め突起24,24を有する。これによりスラスト転がり軸受10の組立中、ころ13が保持器14から脱落することを防止できる。
次に第1実施形態の変形例を説明する。図8はこの変形例を示す縦断面図である。図9はこの変形例の製造工程を模式的に示す断面図である。この変形例につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。図8の変形例では、保持器20の第2板部21および第3板部22の折り曲げ方向が、図4の実施形態とは軸線O方向反対側とされる。これにより第1板部16の破断面bと第2板部21のポケット破断面bが隣り合うとともに第1板部16の剪断面sと第2板部21の剪断面sが互いに離隔される。また第1板部16の破断面bと第3板部22のポケット破断面bが隣り合うとともに第1板部16の剪断面sと第3板部22の剪断面sが互いに離隔される。
図8の変形例によれば、ポケット15の軸線O方向中央部に破断面bを集約することから、ころ13を案内するころ案内面の断面比率のうち破断面bが多くなるが、ころ止め突起23,24の成形精度が向上して、ころ13を安定して保持することができる。
次に本発明の第2実施形態を説明する。図10は本発明の第2実施形態になるスラスト転がり軸受用保持器を示す縦断面図である。図11は、第2実施形態を示す正面図である。図12は、第2実施形態の製造工程を模式的に示す断面図である。第2実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第2実施形態の保持器30では図10に示すように、第2板部21は第1板部16の軸線O方向一方側(紙面下方)に折り曲げられ、第3板部22は第1板部16の軸線O方向他方側(紙面上方)に折り曲げられる。
図4の第1実施形態と異なる点として、図10の第2実施形態では、第2板部21および第3板部22が互い違いに配置される。保持器30は、第2板部21と第1板部16と第3板部22の3層を有することから、鋼板を3枚重ねた構造になる。
第2実施形態の保持器30の製造工程のうちポケット打ち抜き工程では図12に示すように、ポンチ201は円板素材114の軸線O方向一方側(紙面下方)に配置され、ポンチ202は円板素材114の軸線O方向他方側(紙面上方)に配置される。また円板素材114はポンチの打ち抜き方向とは反対側から図示しないダイスに支持される。これらのポンチ201〜203の軸線O方向移動によってポケット要素15l、ポケット要素15m、ポケット要素15nが打ち抜き形成されると、ポンチ201〜203の位置する側に剪断面sが形成され、反対側に破断面bが形成される。具体的には、ポケット要素15lを区画する壁面21wが軸線O方向一方側(紙面下方)に剪断面sを含み、軸線O方向他方側(紙面上方)に破断面bを含む。またポケット要素15mを区画する壁面17wの軸線O方向一方側(紙面下方)に破断面bが形成され、軸線O方向他方側(紙面上方)に剪断面sが形成される。またポケット要素15nを区画する壁面22wの軸線O方向一方側(紙面下方)に破断面bが形成され、軸線O方向他方側(紙面上方)に剪断面sが形成される。
図12に示す打ち抜き工程では、ポンチ202,203が同じ方向に円板素材114を打ち抜く。これに対しポンチ201は、逆方向に円板素材114を打ち抜く。ポンチ201は、軸線O方向他方に第2板部21を打ち抜き、第2板部21は軸線O方向一方(つまり打ち抜き方向と反対方向)に折り曲げられる。
次の折り曲げ工程で、図12に矢で示すように第2板部21が軸線O方向一方側(紙面下方)に折り返されると、図10に示すように第1板部16の破断面bと第2板部21の剪断面sが隣り合うとともに第1板部16の剪断面sと第2板部21の破断面bが互いに離隔される。
また折り曲げ工程で、図12に矢で示すように第3板部22が軸線O方向他方側(紙面上方)に折り返されると、図10に示すように第1板部16の剪断面sと第3板部22の剪断面sが隣り合うとともに第1板部16の破断面bと第3板部22の破断面bが互いに離隔される。
第2実施形態の保持器30によれば、ポケット15の3箇所の壁面17w,21w,22wにそれぞれ形成される破断面bを、軸線O方向一方と、軸線O方向中央部と、軸線O方向他方に分散させることができる。これにより、ころ13を案内するころ案内面に関し、剪断面sおよび破断面bの断面比率を調整することができる。これにより軸受使用時にはポケット壁面に案内される転動体を安定して案内することができ、またポケット壁面に油膜を形成してピーリングを防止することができる。
次に第2実施形態の変形例を説明する。図13は第2実施形態の変形例を示す断面図である。図14は、第2実施形態の変形例の製造工程を模式的に示す断面図である。この変形例につき、前述した第2実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。この変形例では第2板部21が第1板部16の軸線O方向一方側に折り曲げられ、第3板部22が第1板部16の軸線O方向他方側に折り曲げられる点で、図10に示す第2実施形態と同じである。
ただし図13に示すように、第1板部16の破断面bと第2板部21の破断面bが隣り合うとともに第1板部16の剪断面sと第2板部21の剪断面sが互いに離隔される。
また第1板部16の剪断面sと第3板部22の破断面bが隣り合うとともに第1板部16の破断面bと第3板部22の剪断面sが互いに離隔される。図14に示す打ち抜き工程では、ポンチ201,202が同じ方向に円板素材114を打ち抜く。これに対しポンチ203は、逆方向に円板素材114を打ち抜く。ポンチ201は、軸線O方向一方に第2板部21を打ち抜き、第2板部21は軸線O方向一方(つまり打ち抜き方向と同じ方向)に折り曲げられる。
第2実施形態の変形例の保持器40によれば、ポケット15の3箇所の壁面17w,21w,22wにそれぞれ形成される破断面bを、軸線O方向一方と、軸線O方向中央部と、軸線O方向他方に分散させることができる。これにより、ころ13を案内するころ案内面に関し、剪断面sおよび破断面bの断面比率を調整することができる。
次に本発明の第3実施形態を説明する。図15は本発明の第3実施形態になるスラスト転がり軸受を示す縦断面図であり、図16は、第3実施形態を示す正面図である。第3実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第2実施形態のスラスト転がり軸受50は、一対の軌道盤51,52と、転動体としてのころ13と、保持器54とを備える。
軌道盤51,52は、スラスト転がり軸受50の軸線O方向に互いに向き合う平坦な軌道面51b,52bと、各軌道面から立ち上がる鍔部51c,52cをそれぞれ有する。また軌道盤51,52は、環状に形成される。
軌道盤51は、保持器14の第2板部21と対向する。鍔部51cは、軌道盤51の外周縁に設けられ、保持器14を外径側から包囲する。軌道盤52は、保持器14の第3板部22と対向する。鍔部52cは、軌道盤52の内周縁に設けられ、保持器14を内径側から包囲する。
ころ13は一対の軌道盤51,52に挟まれて、軌道面51b,52b上を周方向に転走する。
スラスト転がり軸受50の外周縁に設けられる鍔部51cは、軌道盤52よりも大きな径寸法を有する。このため軌道盤52と鍔部51cの間には周方向に開いた環状隙間が形成される。かかる環状隙間は、スラスト転がり軸受50の外部にある潤滑油をスラスト転がり軸受50の内部に導くことができる。
軌道面51bから突出する鍔部51cの軸線O方向高さは、ころ13の直径よりも小さい。このため、鍔部51cの軸線O方向高さを低くできる。軌道面51bから係合突起51dまでの軸線O方向高さは、ころ13の直径よりも大きいが、軌道盤52を超えない。
スラスト転がり軸受50の内周縁に設けられる鍔部52cの軸線O方向高さはころ13の直径よりも小さい。このため鍔部52cと軌道盤51の間には軸線O方向に開いた環状隙間が形成される。かかる環状隙間は、スラスト転がり軸受50の外部にある潤滑油をスラスト転がり軸受50の内部に導くことができる。
保持器54は、前述した保持器30あるいは保持器40と略等しい。厳密にいえば、図10、図13に示す保持器30,40は、第2板部21と第3板部22が径方向に離れているのに対し、保持器54は、軸線O方向にみて、第2板部21と第3板部22が径方向に離れることなく、あるいは重なることもなく、第2板部21の内周縁と第3板部22の外周縁が径方向において丁度一致する。また第2板部21の内周縁および第3板部22の外周縁は、保持器54の径方向に関し、ポケット15の径方向中央部に位置する。あるいは保持器54は、前述した保持器30,40と同一であってもよい。
第3板部22は、第1板部16の軸線O方向一方端面と重なるため、この端面よりも軸線O方向一方側に突出することになる。そして第1板部16の外径側部分と第3板部22の間には環状段差D1が形成される。保持器54の環状段差D1は、軌道盤52と鍔部51cの環状隙間から進入する潤滑油を各ポケット15に供給する。
第2板部21は、第1板部16の軸線O方向他方端面と重なるため、この端面よりも軸線O方向他方側に突出することになる。そして第1板部16の内径側部分と第2板部21の間には環状段差D2が形成される。保持器54の環状段差D2は、鍔部52cと軌道盤51の環状隙間から侵入する潤滑油を各ポケット15に供給する。
周方向に連なる鍔部51cの先端縁には、係合突起51dが形成される。係合突起51dは、周方向に間隔をあけて複数設けられ、鍔部51cよりも内径側へ突出する。各係合突起51dは環状段差D1に進入している。複数の係合突起51dを通過する円の直径は、保持器54の外径よりも小さい。このため係合突起51dは保持器54に係合し、保持器54は軌道盤51から分離し難くされる。
周方向に連なる鍔部52cの先端縁には、係合突起52dが形成される。係合突起52dは、周方向に間隔をあけて複数設けられ、鍔部52cよりも外径側へ突出する。各係合突起52dは環状段差D2に進入している。複数の係合突起52dを通過する円の直径は、保持器54の内径よりも大きい。このため係合突起52dは保持器54に係合し、保持器54は軌道盤52から分離し難くされる。
このようにスラスト転がり軸受50では、軌道盤51,52および保持器54が分離しないように組み立てられている。このため保持器54の各ポケット15に配置されるころ13も、スラスト転がり軸受50から不用意に脱落することがない。
次に本発明の第4実施形態を説明する。図17は本発明の第4実施形態になるスラスト転がり軸受を示す断面図である。図18は第4実施形態を示す正面図である。図19は第3実施形態からスラスト転がり軸受用保持器を取り出して示す断面図である。図面の理解を容易にするため図17および図19にはころを表す。図20は第4実施形態のスラスト転がり軸受用保持器を示す背面図であり、軸線方向からみた状態を表す。第4実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
第4実施形態の保持器64は、第2板部21と、径方向外側部分65と、径方向中央部分66と、径方向内側部分67と、第3板部22とを有し、これらの各部がこの順序で径方向に連続する。一連の径方向外側部分65と、径方向中央部分66と、径方向内側部分67は、前述した第1板部16に相当し、ポケット要素15mを有する。しかし径方向外側部分65と、径方向中央部分66と、径方向内側部分67は平坦な板部を構成するのではなく、径方向外側部分65と径方向内側部分67の軸線O方向位置が異なる。第4実施形態では、径方向内側部分67が保持器64の軸線O方向一方側(図19紙面下方)に位置し、径方向外側部分65が保持器の軸線方向他方側(図19紙面上方)に位置する。径方向中央部分66は軸線Oを中心としてテーパ状に傾斜し、径方向外側部分65と径方向内側部分67の間で段差を構成する。
保持器64の第1板部のうちの径方向中央部分66は、ポケット要素15mの径方向中央部分を区画する壁面17wを有する。壁面17wは、軸線O方向一方(図19紙面下方)に破断面bを、軸線O方向他方(図19紙面上方)に剪断面sを含む。
保持器64の第1板部のうち外径側の部分になる径方向外側部分65は、ポケット要素15mの径方向外側部分を区画する壁面17wを有する。壁面17wは、軸線O方向一方(図19紙面下方)に破断面bを、軸線O方向他方(図19紙面上方)に剪断面sを含む。
第2板部21は、内径側に折り曲げられて径方向外側部分65の軸線O方向一方端面(図19紙面下方)と重なる。第2板部21のポケット要素15lはポケット要素15mの外径側の部位と接続する。第2板部21の壁面21wは、ポケット要素15lを区画し、軸線O方向一方(図19紙面下方)に破断面bを、軸線O方向他方(図19紙面上方)に剪断面sを含む。第1板部の壁面17wの破断面bと第2板部の壁面21wの剪断面sが隣り合うとともに壁面17wの剪断面sと壁面21wの破断面bが互いに離隔される。
保持器64の第1板部のうち内径側の部分になる径方向内側部分67は、ポケット要素15mの径方向内側部分を区画する壁面17wを有する。壁面17wは、軸線O方向一方(図19紙面下方)に破断面bを、軸線O方向他方(図19紙面上方)に剪断面sを含む。
第3板部22は、外径側に折り曲げられて径方向内側部分67の軸線O方向他方端面(図19紙面上方)と重なる。第3板部22のポケット要素15nはポケット要素15mの内径側の部位と接続する。第3板部22の壁面22wは、ポケット要素15nを区画し、軸線O方向一方(図19紙面下方)に剪断面sを、軸線O方向他方(図19紙面上方)に破断面bを含む。第1板部の壁面17wの剪断面sと第3板部の壁面22wの剪断面sが隣り合うとともに壁面17wの破断面bと壁面22wの破断面bが互いに離隔される。
第4実施形態によれば、ポケット15の3箇所の壁面17w,21w,22wにそれぞれ形成される破断面bを、軸線O方向一方(図19紙面下方)寄りに配置することができる。これにより、ころ13を案内するころ案内面に関し、剪断面sおよび破断面bの断面比率を調整することができる。
保持器64の外径側に位置する第2板部21は、保持器64の径方向中央部分66から離隔する。このため第2板部21と径方向中央部分66の間には、周方向に延びる隙間が形成される。かかる隙間は各ポケット15と接続する。スラスト転がり軸受60の運転中は、潤滑油がかかる隙間を流れて各ポケットに供給される。第3板部22と径方向中央部分66の間にも同様の隙間が形成される。
第2板部21の軸線O方向位置と、第3板部22の軸線O方向位置は、互いに重なる。つまり径方向内側部分67が第2板部21よりも軸線O方向一方(図19紙面下方)に位置し、径方向内側部分67よりも外径側の径方向中央部分66と第2板部21の軸線O方向一方面(図19紙面下方)が環状の環状段差D1を構成する。また径方向外側部分65が第3板部22よりも軸線O方向他方(図19紙面上方)に位置し、径方向外側部分65よりも内径側の径方向中央部分66と第3板部22の軸線O方向他方面(図19紙面上方)が環状の環状段差D2を構成する。
図17に示すように軌道盤51の各係合突起51dは環状段差D1に進入している。複数の係合突起51dを通過する円の直径は、保持器64の外径よりも小さい。このため係合突起51dは保持器64に係合し、保持器64は軌道盤51から分離し難くされる。
軌道盤52の係合突起52dは、周方向に間隔をあけて複数設けられ、鍔部52cよりも外径側へ突出する。各係合突起52dは環状段差D2に進入している。複数の係合突起52dを通過する円の直径は、保持器54の内径よりも大きい。このため係合突起52dは保持器54に係合し、保持器54は軌道盤52から分離し難くされる。
このようにスラスト転がり軸受60では、軌道盤51,52および保持器64が分離しないように組み立てられている。このため保持器64の各ポケット15に配置されるころ13も、スラスト転がり軸受60から不用意に脱落することがない。
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。例えば、上述の実施形態に係るスラスト転がり軸受が使用される用途は、自動車のトルクコンバータ、遊星歯車機構に限らず、カーエアコン用コンプレッサの回転部分を支持してもよい。また、自動車用部品に限らず、工作機械、各種機械装置の回転部分を支持してもよい。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
10,50,60 スラスト転がり軸受、 11,12 軌道盤、
11b,12b 軌道面、 14 保持器、 15 ポケット、
15l ポケット要素、 15m ポケット要素、
15n ポケット要素、 16 第1板部、
17 柱部、 17w ポケット壁面、 21 第2板部、
21w ポケット壁面、 22 第3板部、
22w ポケット壁面、 18 外径側リング部、
19 内径側リング部、 b 破断面、 s 剪断面、
23,24 ころ止め突起、 O 軸線。
11b,12b 軌道面、 14 保持器、 15 ポケット、
15l ポケット要素、 15m ポケット要素、
15n ポケット要素、 16 第1板部、
17 柱部、 17w ポケット壁面、 21 第2板部、
21w ポケット壁面、 22 第3板部、
22w ポケット壁面、 18 外径側リング部、
19 内径側リング部、 b 破断面、 s 剪断面、
23,24 ころ止め突起、 O 軸線。
Claims (7)
- 環状の第1板部と、
前記第1板部の外径側部分と重なる環状の第2板部と、
前記第1板部の内径側部分と重なる環状の第3板部と、
前記第1板部、前記第2板部及び前記第3板部をそれぞれプレス加工によって打ち抜くことで形成されたポケット要素で構成されて、転動体を保持するポケットと、を備え、
前記第1板部、前記第2板部及び前記第3板部はそれぞれ、前記ポケットを区画するポケット壁面として、ポケット剪断面とポケット破断面とを有し、
前記第1板部のポケット剪断面に対して前記第2板部及び前記第3板部のうち少なくとも一方のポケット剪断面が軸線方向に隣り合う第1条件と、
前記第1板部のポケット破断面に対して前記第2板部及び前記第3板部のうち少なくとも一方のポケット破断面が軸線方向に隣り合う第2条件とのうち、いずれか一方の条件を満足する、スラスト転がり軸受用保持器。 - 前記第2板部および前記第3板部は、前記第1板部の軸線方向同じ側に配置される、請求項1に記載のスラスト転がり軸受用保持器。
- 前記第2板部および前記第3板部は、前記第1板部と重なった状態で径方向に互いに離隔する、請求項1又は2に記載のスラスト転がり軸受用保持器。
- 前記第1板部のポケット剪断面と前記第2板部のポケット剪断面が隣り合うとともに前記第1板部のポケット破断面と前記第2板部のポケット破断面が互いに離隔され、
前記第1板部のポケット剪断面と前記第3板部のポケット剪断面が隣り合うとともに前記第1板部のポケット破断面と前記第3板部のポケット破断面が互いに離隔される、請求項2又は3に記載のスラスト転がり軸受用保持器。 - 前記第2板部及び前記第3板部のうちいずれか一方の板部は前記第1板部に対して軸線方向一方側に配置され、他方の板部は前記第1板部に対して軸線方向他方側に配置される、請求項1に記載のスラスト転がり軸受用保持器。
- 請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のスラスト転がり軸受用保持器と、
前記ポケットに保持される前記転動体と、を備え、
前記転動体は、ころであり、
前記ころのころ長がころ直径の1.0倍以上2.0倍以下の範囲に含まれる、スラスト転がり軸受構造。 - 請求項6に記載のスラスト転がり軸受構造と、
前記スラスト転がり軸受用保持器からみて軸線方向一方に配置されて前記ころが転動する第1軌道盤と、
前記スラスト転がり軸受用保持器からみて軸線方向他方に配置されて前記ころが転動する第2軌道盤とを具備し、
前記第1軌道盤には、軸線方向他方に突出して前記スラスト転がり軸受用保持器を外径側から包囲する外径側鍔部と、前記外径側鍔部の突出縁から内径側へ突出して前記スラスト転がり軸受用保持器の外周縁を抱える係合突起が設けられ、
前記第2軌道盤には、軸線方向一方に突出して前記スラスト転がり軸受用保持器を内径側から包囲する内径側鍔部と、前記内径側鍔部の突出縁から外径側へ突出して前記スラスト転がり軸受用保持器の内周縁を抱える係合突起が設けられ、
前記スラスト転がり軸受は、軸線方向一方側かつ内径側で前記第2軌道盤の前記係合突起を受け入れる環状段差と、軸線方向他方側かつ外径側で前記第1軌道盤の前記係合突起を受け入れる環状段差とを有する、スラスト転がり軸受。
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