以下、本発明の電気泳動表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を含むものとする。
<電子機器>
まず、本発明の電気泳動表示装置および電気泳動表示装置の製造方法を説明するのに先立って、本発明の電気泳動表示装置を備える電子機器について説明する。
図1は、本発明の電気泳動表示装置が搭載された電子機器の実施形態を示す平面図である。なお、使用する図面(図1および以下で示す図を含む)は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
図1に示すように、電子機器100は、電気泳動表示装置10と、電子機器100を操作するためのインターフェイスとを備えている。このインターフェイスは、具体的には、本実施形態では、スイッチで構成される操作部110である。
電気泳動表示装置10は、本発明の電気泳動表示装置で構成され、表示領域Eを有するディスプレイモジュールである。表示領域Eは複数の画素から成り、これらの画素が電気的に制御されることで表示領域Eに画像が表示される。そのため、かかる電気泳動表示装置10(本発明の電気泳動表示装置)を備える電子機器100は、優れた信頼性を備えるものとなる。
なお、電気泳動表示装置10を備えた電子機器100として、図1に示す、ウォッチの他、電子ペーパー(EPD:Electronic Paper Display)、ウエアラブル機器、カメラ、スマートフォン、タブレット端末、テレビ、ビューファインダー型またはモニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサー、パーソナルコンピューター、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルサイネージ等が挙げられる。
<電気泳動表示装置>
<<第1実施形態>>
次に、かかる電子機器100が備える電気泳動表示装置10(本発明の電気泳動表示装置)について説明する。
図2は、本発明の電気泳動表示装置の電気的な構成の実施形態を示す等価回路図、図3は、本発明の電気泳動表示装置の表示領域の構造の実施形態を示す模式平面図、図4は、図3に示す電気泳動表示装置のA−A’線断面図、図5は、本発明の電気泳動表示装置の構造の実施形態を示す模式平面図、図6は、図5に示す電気泳動表示装置のB−B’線断面図、図7は、図5に示す電気泳動表示装置のC部の構成の第1実施形態を拡大して示す拡大平面図、図8は、図6に示す電気泳動表示装置のF部を拡大して示す拡大断面図である。なお、図5〜図8においては、絶縁層や配線、電極等の図示は省略する。
図2に示すように、電気泳動表示装置10は、複数のデータ線12と、複数の走査線13とを有し、データ線12と走査線13とが交差する部分に画素11が配置される。具体的には、電気泳動表示装置10は、データ線12と走査線13とに沿ってマトリクス状に配置された複数の画素11を有している。各画素11は、画素電極21と共通電極22との間に配置された分散媒15と電気泳動粒子34とを含む電気泳動分散液37を有する。
画素電極21は、トランジスター16(TFT16)を介してデータ線12に接続されている。また、TFT16のゲート電極は、走査線13に接続されている。なお、図2は、例示であり、必要に応じて保持容量等の他の素子が組み込まれてもよい。
また、図3および図4に示すように、本実施形態では、電気泳動表示装置10は、素子基板51と、素子基板51に対向する対向基板52と、素子基板51の対向基板52に対向する側に設けられ、対向基板52との間の空間を複数のセル36に平面視で格子状に区切り、隣り合う画素間に設けられる隔壁35と、複数のセル36内に配置(充填)され、電気泳動粒子34と分散媒15とを含有する電気泳動分散液37で構成される電気泳動層33と、対向基板52の素子基板51と対向する側に設けられ、セル36を封止する封止層42(接合層)とを有する。
なお、本実施形態では、本発明における第1基板として対向基板52が適用され、本発明における第2基板として素子基板51が適用される。
素子基板51が備える、例えば、透光性を有するガラス基板からなる第1基材31上には、各画素11に対応して画素電極21が配置されている。
詳述すると、図3および図4に示すように、画素11(画素電極21)は、例えば、平面視でマトリクス状に形成されている。画素電極21の材料としては、例えば、ITO(錫を添加した酸化インジウム:Indium Tin Oxide)等の光透過性材料が用いられる。
第1基材31と画素電極21との間には、図示しない回路部が設けられており、回路部の中にTFT16等が形成されている。TFT16は、図示しないコンタクト部を介して、各画素電極21と電気的に接続されている。なお、図示しないが、回路部の中には、TFT16の他、各種配線(例えば、データ線12や走査線13等)や素子(例えば、容量素子)等が配置されている。画素電極21上を含む第1基材31上の全面には、第1絶縁層32が形成されている。なお、第1絶縁層32を設けない構成でもよい。
対向基板52は、素子基板51と対向して配置されるものであり、この対向基板52が備える、例えば、透光性を有するガラス基板からなる第2基材41上(図4における分散媒15側)には、複数の画素11に対応して共通に設けられた共通電極22が形成されている。共通電極22としては、例えば、ITO等の光透過性材料が用いられる。
また、対向基板52が備える共通電極22上(図4における分散媒15側)には、本実施形態では、第1封止層42aが形成されている。さらに、第1封止層42aの上には、第2封止層42bが形成されている。なお、第1封止層42aと第2封止層42bとを合せて封止層42と称する。また、この封止層42については、後に詳述する。
第1絶縁層32と封止層42との間には、電気泳動層33が設けられている。
電気泳動層33は、少なくとも1以上の電気泳動粒子34と、電気泳動粒子34が分散された分散媒15とを含む電気泳動分散液37で構成され、この電気泳動分散液37(分散媒15および電気泳動粒子34)が、第1絶縁層32と、第2封止層42bと、第1基材31上に設けられた隔壁35(リブ)と、により仕切られた(分割された)空間(領域)であるセル36内に充填されることで形成される。
隔壁35は、素子基板51から立設することで素子基板51と対向基板52との間に配置(介挿)され、図3に示すように、本実施形態では、隔壁35により仕切られる1つのセル36の平面視形状が矩形状(正方形状)となるように、平面視で直線状をなす凸条が碁盤目状(格子状)に行列をなして複数形成されている。
この隔壁35は、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等の透光性材料であることが好ましい。このような透光性材料で構成することにより、表示領域Eに表示された画像に隔壁35が映り込むのを的確に抑制または防止することができる。さらに、これらの透光性材料は、吸湿性または吸着性の低い材料であることから、隔壁35に吸着された水分がセル36内において、電気泳動分散液37中に移行するのを的確に抑制または防止することができる。
また、隔壁35の高さ(平均高さ)は、この隔壁35により区画される電気泳動層33の平均厚さとほぼ等しく設定され、例えば、10μm以上150μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましく、特に好ましくは30μm程度に設定される。これにより、電気泳動粒子34の移動による白色表示と黒色表示とを優れたコントラストで表示することが可能となる。その結果、電気泳動表示装置10は、優れた表示品位を発揮するものとなる。
さらに、隔壁35の幅は、好ましくは3μm以上10μm以下、より好ましくは5μm程度に設定される。また、隔壁35の高さと幅とのアスペクト比は、好ましくは5以上50以下、より好ましくは20以上50以下のように高いアスペクト比に設定される。隔壁35の幅および前記アスペクト比を、前記範囲内に設定することで、表示領域Eにおける電気泳動粒子34が駆動(泳動)する駆動面積が広く確保されていると言うことができ、電気泳動表示装置10を優れた表示品位を発揮するものとし得る。
なお、本実施形態では、図4に示す通り、各画素11に画素電極21が配置され、各画素電極21に前記隔壁35(リブ)が配置されている構成としたが、これに限定されず、複数の画素毎(例えば2〜20画素毎)に、隔壁35(リブ)が形成されても良い。
また、素子基板51と対向基板52とを貼り合せた際、隔壁35の頂部35’(隔壁先端)が対向基板52(具体的には、封止層42)に入り込むことにより、セル36内が封止されるが、隔壁35の高さ(実際には、図6に示す額縁隔壁61)および隔壁35の頂部35’の食い込み量を規定することで、素子基板51と対向基板52との間のセルギャップを決めることができる。
なお、以下では、隔壁35によって囲まれて区切られた領域をセル36と言う。一つのセル36は、隔壁35と、画素電極21と、共通電極22(封止層42)と、電気泳動層33とを含み、本実施形態では、前述の通り、平面視形状が矩形状(正方形状)をなしている。
また、本実施形態では、図4に示すように、電気泳動粒子34として、白色粒子と黒色粒子とを示している。
例えば、画素電極21と共通電極22との間に電圧を印加すると、これらの間に生じる電界にしたがって、電気泳動粒子34は、いずれかの電極(画素電極21、共通電極22)に向かって電気泳動する。例えば、白色粒子が正荷電を有する場合、画素電極21を負電位とすると、白色粒子は、画素電極21側(下側)に移動して集まり、黒色表示となる。逆に、画素電極21を正電位とすると、白色粒子は、共通電極22側(上側)に移動して集まり、白色表示となる。このように、表示側の電極に集合する白色粒子の有無や数等に応じて、所望の情報(画像)が表示される。なお、ここでは、電気泳動粒子34として白色粒子や黒色粒子を用いたが、他の有色粒子を用いてもよい。
また、電気泳動粒子34としては、無機顔料系の粒子、有機顔料系の粒子または高分子微粒子等を用いることができ、各種粒子を2種以上混合して用いてもよい。また、電気泳動粒子34の平均粒子径は、例えば、100nm以上400nm以下程度のものが用いられ、好ましくは、150nm以上300nm以下程度のものが用いられる。なお、本明細書中では、電気泳動粒子34の粒子径は、母粒子の表面に、ポリマー等で構成される被覆層が形成されている構成をなす場合には、母粒子の粒子径のことを言うこととする。
また、白色粒子の含有量は、分散媒15、白色粒子および黒色粒子の全重量、すなわち電気泳動分散液37に対して30%以内であり、黒色粒子の含有量は、分散媒15、白色粒子、黒色粒子の全重量、すなわち電気泳動分散液37に対して10%以内である。このように配分することにより、反射率が40%以上、および黒色反射率が2%以下になり、表示性能を高くすることができる。
また、本実施形態では、電気泳動粒子34を分散させた電気泳動分散液37とするための分散媒15として、沸点が100℃以上であり、比較的高い絶縁性を有するものが好ましく用いられる。
かかる分散媒15としては、例えば、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸ブチル、高級脂肪酸エステル等のエステル類、ジブチルケトン等のケトン類、ペンタン等の脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン等の芳香族複素環類、アセトニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類のような有機溶媒またはシリコーンオイル等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
中でも、分散媒15としては、シリコーンオイルを主成分とするものが好ましい。シリコーンオイルを主成分とする分散媒15は、電気泳動粒子34の凝集抑制効果が高いことから、図3に示す電気泳動表示装置10の表示性能が経時的に劣化するのを抑制することができる。また、シリコーンオイルは、不飽和結合を有しないため耐候性に優れ、さらに安全性も高いという利点を有している。
なお、分散媒15に分散される電気泳動粒子34は、上記の通り、いずれかの電極に向かって電気泳動し得るように、正または負の荷電を有するが、その帯電量は、通常、電気泳動粒子34が取り込む、分散媒15中に含まれる水分の取り込み量によって規定される。そのため、分散媒15中に含まれる水分量は、好ましくは300ppm以上1000ppm以下程度、より好ましくは400ppm以上700ppm以下程度に設定される。
また、分散媒15中には、必要に応じて、例えば、電解質、界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、潤滑剤、安定化剤、各種染料等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。
また、前述の通り、対向基板52には、素子基板51と対向する側に、封止層42が設けられ、これにより、封止層42(接合層)は、隔壁35の頂部35’(隔壁先端)と対向基板52との間に配置されている(図4、図6、図8参照)。
これにより、封止層42と、第1絶縁層32と、隔壁35(リブ)とにより区画された空間(閉空間)がセル36に形成され、この空間に分散媒15と電気泳動粒子34とを含む電気泳動分散液37が充填されることで、分散媒15および電気泳動粒子34を含む電気泳動分散液37が隣接するセル36同士の間で、行き来できないようになっている。すなわち、電気泳動表示装置10において、封止層42によりセル36が封止され、そのため、セル36同士の間で、セル36内に充填された電気泳動分散液37が行き来できないようになっている。
この際、図4、図6、図8に示すように、本実施形態では、封止層42と電気泳動層33との接触面のうち、隔壁35と平面視で重なる部分は、隔壁35と平面視で重ならない部分よりも断面視において第2基材41(対向基板52)側に位置している。これにより、封止層42(接合層)は、隔壁35の対向基板52側の頂部35’(隔壁先端)と対向する位置において、頂部35’が封止層42に食い込む(埋入する)することとなる。このように、頂部35’を封止層42に食い込ませることで、封止層42と、隔壁35とにより区画された閉空間すなわちセル36内に充填された電気泳動分散液37が、隣接するセル36同士の間で、行き来するのを的確に抑制または防止することができる。
この封止層42は、本実施形態では、第1封止層42a(第1接合層)と第2封止層42b(第2接合層)とが、対向基板52(第1基板)側からこの順に積層された積層体で構成されている。すなわち、封止層42は、素子基板51側において、第1封止層42aの表面が第2封止層42bで被覆された積層体からなる構成をなしている。そして、このような積層体において、第1封止層42aは、第2封止層42bよりも柔軟であり、その弾性率が第2封止層42bの弾性率よりも小さくなっている。
このような封止層42(積層体)に対して、隔壁35の頂部35’(隔壁先端)を食い込ませることにより、凸条をなす頂部35’と封止層42とにより、セル36内が封止され、隣接するセル36同士間において、封止された電気泳動分散液37が行き来するのを的確に抑制または防止することができる。
この際、隔壁35の頂部35’(隔壁先端)の封止層42への食い込み量t、すなわち第2封止層42bの電気泳動層33側の面のうち、頂部35’が食い込んでいない部分と頂部35’との間の距離は、例えば、好ましくは2μm以上10μm以下、より好ましくは5μm程度に設定される。これにより、頂部35’の縁部と封止層42とによりセル36内をより確実に封止することができるため、封止層42と、隔壁35とにより区画された閉空間すなわちセル36内に充填された電気泳動分散液37が、隣接するセル36同士の間で、行き来するのを的確に抑制または防止することができる。
さらに、前述のような、第1封止層42aと第2封止層42bとの積層体からなる封止層42において、第1封止層42aの弾性率は、1MPa以上10MPa以下であることが好ましい。また、第2封止層42bの弾性率は、0.5GPa以上5GPa以下であることが好ましい。第1封止層42aと、第2封止層42bとを、上記のような弾性率を有するものとすることにより、積層体、すなわち、封止層42全体としての弾性率を、好ましくは5MPa以上29MPa以下、より好ましくは8MPa以上15MPa以下の範囲内に容易に設定することができる。そして、かかる弾性率の関係を満足する封止層42(第1封止層42aおよび第2封止層42b)に対して、隔壁35の頂部35’をより確実に食い込ませることができる。
なお、第1封止層42a、第2封止層42bおよび封止層42の弾性率は、それぞれ、25℃において、圧子先端直径10μmの上部圧盤(圧子)を備える微小圧縮試験機(島津製作所社製、「MCT−510」)を用いて測定される。
さらに、第1封止層42aの平均厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm程度であることがより好ましい。また、第2封止層42bの平均厚さは、200nm以上600nm以下であることが好ましく、400nm程度であることがより好ましい。これにより、第1封止層42aと、第2封止層42bとの積層体、すなわち、封止層42全体としての弾性率を、1MPa以上30MPa以下の範囲内に比較的容易に設定することができる。そのため、封止層42に対して、隔壁35の頂部35’をより確実に食い込ませることができる。
また、第1封止層42aの体積抵抗率は、1×107Ω・cm以上5×1010Ω・cm以下であることが好ましく、第2封止層42bの体積抵抗率は1×107Ω・cm以上2×1011Ω・cm以下であることが好ましい。第1封止層42aと、第2封止層42bとを、上記のような体積抵抗率を有するものとすることにより、積層体、すなわち、封止層42全体としての体積抵抗率を、1×107Ω・cm以上1×1012Ω・cm以下の範囲内に容易に設定することができることから、画素電極21と共通電極22との間に封止層42が介在することに起因して、電気泳動粒子34の移動度が低下するのを的確に抑制または防止することができる。
以上のような封止層42(積層体)において、第1封止層42aは、第2封止層42bよりも柔軟であり隔壁35の頂部35’が、より食い込みやすい材料が好ましく用いられ、具体的には、第1封止層42aの構成材料としては、例えば、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、ウレタンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ヒドリンゴム、ニトリルゴム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、NBRまたはヒドリンゴムであることが好ましい。NBRおよびヒドリンゴムによれば、その加硫条件の変更、および、第1封止層42aへのフィラーの添加により、第1封止層42aの弾性率を前述した範囲内に容易に調整することができる。
なお、第1封止層42aに添加するフィラーとしては、例えば、シリカ、マイカ、アルミナ、酸化チタン、窒化珪素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、第2封止層42bは、例えば、第1封止層42aが分散媒15に溶出しないようにするための封止層としての機能、さらには、その弾性率が前述した範囲内に設定し得るように第2封止層42bの構成材料が選択される。具体的には、第2封止層42bの構成材料としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)の他、ポリエチレン、ポリプロピレンのような非極性ポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、PVAであることが好ましい。これらの材料(特に、PVA)は、分散媒15に溶出するおそれが少ないことから、電気泳動表示装置10の不具合を好適に軽減することができる。また、PVAは、接着性が低い材料であるため、第2封止層42bに電気泳動粒子34が固着することを防止することができる。
なお、第2封止層42bには、第2封止層42bの材料を柔らかくするための添加剤が含まれていてもよい。この添加剤としては、例えば、グリセリンが挙げられる。添加剤は、PVAの固形分に対して5wt%以上50wt%以下程度添加されることが好ましい。これにより、第2封止層42bの弾性率を前述した数値範囲内に比較的容易に設定することができる。
また、添加剤は、グリセリンに限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、尿素、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコールから選択される1種または2種以上を混合したものを用いてもよい。
なお、封止層42の光線透過率は、PVAが99%であり、NBRも99%である。
なお、封止層42は、第1封止層42aと、第2封止層42bとの積層体として設ける場合の他、第2封止層42bの構成材料によっては、第1封止層42aを省略して、第2封止層42bの単層で構成されるものであってもよいし、さらには、3層以上の積層体で構成されていてもよい。
ただし、封止層42を形成する材料として接着剤を用いた場合、接着剤に含まれる例えば、完全に硬化しない反応性モノマー等の不純物が分散液の中に溶出することにより、この接着剤が電気泳動分散液37に含まれる電気泳動粒子34に付着して、電気泳動粒子34の泳動性に影響を与えるおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、封止層42を、第1封止層42aと第2封止層42bとを有するものとし、電気泳動粒子34と接触する部分に第2封止層42bを配置している。そのため、このような不具合も軽減することができる。
また、図5および図6に示すように、電気泳動表示装置10は、表示領域Eと、この表示領域Eを囲む額縁領域E1(外周領域)とを有する。
この額縁領域E1は、電気泳動層33のうち表示に寄与しない領域であるダミー画素領域D(非表示領域)と、ダミー画素領域Dの外側に配置された額縁隔壁61(外周隔壁)と、額縁隔壁61の上側および外側に配置されたシール部14とを含む。
なお、額縁領域E1の幅は、例えば、1.0mm以上10.0mm以下程度に設定される。また、ダミー画素領域Dの幅は、例えば、0.5mm以上7.0mm以下程度に設定される。
ダミー画素領域Dの表示領域E側には、表示領域Eに配置された隔壁35に連続して形成された隔壁35aが設けられている。この隔壁35aにより形成されるセル36a内にもセル36と同様に電気泳動分散液37が充填されている。なお、素子基板51のダミー画素領域Dに対応する位置には画素電極21の形成が省略されており、これにより、セル36a内に充填された電気泳動分散液37に含まれる電気泳動粒子34は、画素電極21と共通電極22との間に電圧が印加されることによる電気泳動に関与しない。すなわち、セル36a内に充填された電気泳動分散液37に含まれる電気泳動粒子34は、表示領域Eにおいて、画素電極21と共通電極22との間に電圧が印加されたとしても、電気泳動することはない。
また、ダミー画素領域Dの額縁隔壁61側には、隔壁35aの形成が省略された空隙38が設けられている。この空隙38には、セル36、セル36aに充填されなかった余分となった電気泳動分散液37が充填されている。すなわち、空隙38は、余分な電気泳動分散液37を充填するための逃げ部として機能する。
隔壁35aは、前述の通り、ダミー画素領域Dの表示領域E側において、表示領域Eに配置された隔壁35に連続(連結)して設けられており、本実施形態では、隔壁35と同じ形状で形成されている。すなわち、隔壁35aは、隔壁35aにより仕切られる1つのセル36の平面視形状が矩形状(正方形状)となるように、平面視で直線状をなす凸条が碁盤目状(格子状)に行列をなして複数形成されている。
このように、平面視で直線状をなす凸条として形成された隔壁35aが、本実施形態では、隔壁が有する直線部を構成している。
ここで、表示領域Eは、平面視で、図1、図5に示すように円形状をなし、これにより、表示領域Eを取り囲むダミー画素領域D(非表示領域)は、その平面視形状が円環状をなしている。そのため、ダミー画素領域Dの表示領域E側に形成される隔壁35aの最外周形状も、その全体形状が円形状をなし、湾曲したものとなる。したがって、表示領域Eからダミー画素領域Dに亘って碁盤目状に連続して配列されたセル36、セル36aを、その平面視形状が矩形状(正方形状)をなすものとすると、セル36aを区画する隔壁35aは、その最外周において、巨視的には、角を有する角部39を不可避的に備えるものとなる。
このような角部39を備える隔壁35aに、例えば、電気泳動表示装置10の製造時において、隔壁35a、35が設けられた素子基板51のセル36内に電気泳動分散液37を充填させた後に、対向基板52を接合する際に、応力が作用すると、角部39を構成する隔壁35aに対して、局所的に応力が集中する傾向を示す(なお、以下では、角部39を構成する「隔壁35a」を「隔壁35b」と言うこともある。)。特に、本実施形態のように、隔壁35、隔壁35aの高さと幅とのアスペクト比を前記範囲内のように高くした場合に、隔壁35bに対して応力が集中する傾向がより高くなる。そのため、角部39を構成する隔壁35bを起点として、隔壁35bと素子基板51との接合部における浮き・剥がれが生じるおそれがあるが、本発明では、角部39を構成する隔壁35bの幅を、角部39を除く領域に位置する直線部における隔壁35aの幅よりも広く設定している。すなわち、角部39を構成する隔壁35bにより区切られたセル36aの放射方向の少なくとも1方向(例えば、セル36aの行方向、列方向または対角線方向)において、角部39を構成する隔壁35bの幅が広くなっていることで、隔壁35bと素子基板51との接合部における接合面積を大きくしている。その結果、隔壁35bの浮き・剥がれの起点が無くなり、隔壁35bと素子基板51との接合部における浮き・剥がれの発生が的確に抑制または防止される。また、表示領域Eを囲むダミー画素領域D(外周領域)に位置する角部39を構成する隔壁35bの幅を広くするだけであり、表示領域Eに対して何ら影響を及ぼさないことから、電気泳動表示装置10は、優れた表示品位を発揮する。
この隔壁35bは、本実施形態では、隣接する角部39の頂点同士を結ぶ直線とセル36aとにより形成される領域を埋めるように形成されており、その平面視形状が三角形状をなしており、これにより、その幅が広くなっている。このように隔壁35bを、三角形状をなすものとすることで、隔壁35bと素子基板51との接合部における接合面積を大きくすることができる。
隔壁35bの幅をX[μm]とし、隔壁35aの幅をY[μm]としたとき、隔壁同士の幅の比であるX/Yは、好ましくは1.5以上50以下程度より好ましくは2.0以上30以下程度に設定される。これにより、隔壁35bと素子基板51との接合部における浮き・剥がれの発生をより的確に抑制または防止することができる。
なお、本明細書中において、直線部を構成する隔壁35aの幅と、角部39を構成する隔壁35bの幅とは、同一の前記放射方向において測定することとし、具体的には、例えば、セル36aの対角線方向に沿って隔壁35aの幅を測定した場合には、隔壁35bの幅についても同様に、対角線方向に沿って測定することとする。
かかる構成の隔壁35bの最大幅は、4.5μm以上5.0mm以下程度であるのが好ましく、50μm以上3.0mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、隔壁35bと素子基板51との接合部における浮き・剥がれの発生をより的確に抑制または防止することができる。
ダミー画素領域Dの外側には、額縁隔壁61が設けられている。額縁隔壁61は、分散媒15が電気泳動表示装置10の外側に流れ出ないように堰き止めることができると共に、セル36のギャップすなわち電気泳動層33の厚さを調整するために用いられており、ダミー画素領域Dを囲むように配置されている。なお、額縁隔壁61は、通常、表示領域Eの隔壁35と同じ材料で構成されている。
額縁隔壁61の幅W1は、好ましくは100μm以上300μm以下程度に設定される。また、額縁隔壁61の高さは、通常、隔壁35の高さと、ほぼ等しく設定される。
シール部14は、本実施形態では、図6に示すように、第1シール材14aと、第2シール材14bとを有する。第1シール材14aは、素子基板51と対向基板52とを貼り合わせる際に接着するために用いられ、額縁隔壁61の上面(頂部)を覆うように配置されている。
また、第1シール材14aの粘度は、例えば、3000Pa・s以上10000Pa・s以下であり、好ましくは、4000Pa・s程度である。このような粘度の第1シール材14aを用い、素子基板51と対向基板52との間に介在することで、これら同士をより良好に接合することができる。
また、第2シール材14bは、素子基板51と対向基板52との間を封止するために用いられ、額縁隔壁61を囲むように設けられている。
第2シール材14bの幅W2は、好ましくは150μm以上600μm以下程度に設定される。また、第2シール材14bの粘度は、例えば、0.2Pa・s以上1.0Pa・s以下であり、好ましくは、0.8Pa・s程度である。このような粘度の第2シール材14bを用いることにより、額縁隔壁61と第1シール材14aとの積層体の周囲の素子基板51と対向基板52との間に、第2シール材14bを入り込ませることが可能となる。そのため、第2シール材14bの接着強度を向上させることができる。また、外部から第2シール材14bおよび第1シール材14aを介して内部に水分が侵入することを抑えることが可能となり、信頼性の高いシール構造を得ることができる。
以上のようなシール部14において、第1シール材14aは、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂のような各種硬化型樹脂で構成されることが好ましい。これにより、素子基板51と対向基板52とを確実かつ強固に接合することができる。
また、第2シール材14bの構成材料としては、アクリル樹脂やエポキシ樹脂のうちの少なくとも1種が好ましく用いられる。かかる樹脂材料で構成される第2シール材14bは、吸湿性または吸着性の低い材料であることから、電気泳動表示装置10の外側から、第2シール材14bを介して、電気泳動分散液37側に、水分が移行するのを的確に抑制または防止することができる。
<<第2実施形態>>
次に、本発明の電気泳動表示装置の第2実施形態について説明する。
図9は、図5に示す電気泳動表示装置のC部の構成の第2実施形態を拡大して示す拡大平面図である。
以下、第2実施形態の電気泳動表示装置10について、前記第1実施形態の電気泳動表示装置10との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図9に示す第2実施形態の電気泳動表示装置10は、角部39を構成する隔壁35bの平面視での形状が異なること以外は、第1実施形態の電気泳動表示装置10と同様である。
この隔壁35bは、本実施形態では、角部39の頂点を中心として、セル36aを取り囲む領域を埋めるように、平面視形状が円形状に形成されることで、その幅が広くなっている。このように隔壁35bを、円形状をなすものとすることによっても、隔壁35bと素子基板51との接合部における接合面積を大きくすることができる。
また、このような第2実施形態の電気泳動表示装置10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
<<第3実施形態>>
次に、本発明の電気泳動表示装置の第3実施形態について説明する。
図10は、図5に示す電気泳動表示装置のC部の構成の第3実施形態を拡大して示す拡大平面図である。
以下、第3実施形態の電気泳動表示装置10について、前記第1実施形態の電気泳動表示装置10との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図10に示す第3実施形態の電気泳動表示装置10は、角部39を構成する隔壁35bの平面視での形状が異なること以外は、第1実施形態の電気泳動表示装置10と同様である。
この隔壁35bは、本実施形態では、角部39の頂点を中心として、セル36aを取り囲む領域を埋めるように、平面視形状が四角形状に形成されることで、その幅が広くなっている。このように隔壁35bを、四角形状をなすものとすることによっても、隔壁35bと素子基板51との接合部における接合面積を大きくすることができる。
また、このような第3実施形態の電気泳動表示装置10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
<<第4実施形態>>
次に、本発明の電気泳動表示装置の第4実施形態について説明する。
図11は、図5に示す電気泳動表示装置のC部の構成の第4実施形態を拡大して示す拡大平面図である。
以下、第4実施形態の電気泳動表示装置10について、前記第1実施形態の電気泳動表示装置10との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図11に示す第4実施形態の電気泳動表示装置10は、角部39を構成する隔壁35bの平面視での形状が異なること以外は、第1実施形態の電気泳動表示装置10と同様である。
この隔壁35bは、本実施形態では、角部39に対応するセル36aを含む最外周に位置するセル36aを取り囲むように、平面視形状が半円状をなすものが複数配列された構成をなすことで、その幅が広くなっている。このように隔壁35bを、半円状をなすものを複数組み合わせたものとすることによっても、隔壁35bと素子基板51との接合部における接合面積を大きくすることができる。
また、このような第4実施形態の電気泳動表示装置10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
<<第5実施形態>>
次に、本発明の電気泳動表示装置の第5実施形態について説明する。
図12は、図5に示す電気泳動表示装置のC部の構成の第5実施形態を拡大して示す拡大平面図である。
以下、第5実施形態の電気泳動表示装置10について、前記第1実施形態の電気泳動表示装置10との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図12に示す第5実施形態の電気泳動表示装置10は、角部39を構成する隔壁35bの平面視での形状が異なること以外は、第1実施形態の電気泳動表示装置10と同様である。
この隔壁35bは、本実施形態では、角部39に対応するセル36aを含む最外周に位置するセル36aを取り囲むように、平面視形状が半円状および三角形状をなすものが交互に複数配列された構成をなすことで、その幅が広くなっている。このように隔壁35bを、半円状および三角形状をなすものを複数組み合わせたものとすることによっても、隔壁35bと素子基板51との接合部における接合面積を大きくすることができる。
また、このような第5実施形態の電気泳動表示装置10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
<<第6実施形態>>
次に、本発明の電気泳動表示装置の第6実施形態について説明する。
図13は、図5に示す電気泳動表示装置のC部の構成の第6実施形態を拡大して示す拡大平面図である。
以下、第6実施形態の電気泳動表示装置10について、前記第1実施形態の電気泳動表示装置10との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図13に示す第6実施形態の電気泳動表示装置10は、逃げ部としての空隙38の形成が省略され、さらに、隔壁35a、隔壁35bが形成される領域が異なること以外は、第1実施形態の電気泳動表示装置10と同様である。
すなわち、本実施形態では、逃げ部としての空隙38の形成を省略して、この空隙38が形成されていた領域に対して隔壁35bが形成されている。そして、この隔壁35bが形成された領域を除くダミー画素領域Dの全域に、表示領域Eに配置された隔壁35に連続して隔壁35aが形成されている。本実施形態では、前記第1〜第5実施形態と比較して、より広い領域に対して、隔壁35aおよび隔壁35aにより区画されるセル36aが形成され、このセル36aが、余分な電気泳動分散液37を充填するための逃げ部としても機能する。したがって、本実施形態では、隔壁35bよりも表示領域E側に、逃げ部が形成される。
また、このような第6実施形態の電気泳動表示装置10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
<<第7実施形態>>
次に、本発明の電気泳動表示装置の第7実施形態について説明する。
図14は、図5に示す電気泳動表示装置のC部の構成の第7実施形態を拡大して示す拡大平面図である。
以下、第7実施形態の電気泳動表示装置10について、前記第1実施形態の電気泳動表示装置10との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図14に示す第7実施形態の電気泳動表示装置10は、逃げ部としての空隙38の形成が省略され、さらに、形成される隔壁35の構成が異なること以外は、第1実施形態の電気泳動表示装置10と同様である。
すなわち、本実施形態では、逃げ部としての空隙38の形成を省略して、この空隙38が形成されていた領域に対して隔壁35bが形成されている。そして、この領域に形成された隔壁35bと、ダミー画素領域Dの表示領域E側に形成された隔壁35aのうち角部39に対応する位置の隔壁35aとを結ぶ領域に、直線状をなす凸条からなる隔壁35cが形成される。さらに、この隔壁35cによりセル36cが区画され、このセル36cが、余分な電気泳動分散液37を充填するための逃げ部として機能する。したがって、本実施形態では、隔壁35bよりも表示領域E側に、逃げ部が形成される。
また、このような第7実施形態の電気泳動表示装置10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
以上、本発明の電気泳動表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明の電気泳動表示装置は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に他の任意の構成物が付加されていてもよい。
また、前述した実施形態では、隔壁35が平面視で格子状をなしていたが、隔壁35の平面視形状としては、特に限定されず、例えば、ハニカム状、多角形状、丸形状、三角形状等に構成されていてもよい。
また、素子基板51側に隔壁35や額縁隔壁61を配置することに限定されず、対向基板52側に隔壁35や額縁隔壁61を配置するようにしてもよい。この構成とした場合には、本発明における第1基板として素子基板51が適用され、本発明における第2基板として対向基板52が適用される。
また、第1基材31および第2基材41は、表示側に光透過性を有する材料を用いればよく、ガラス基板の他、プラスチック基板を用いるようにしてもよい。
さらに、額縁隔壁61をスペーサーとして利用することに限定されない。素子基板51と対向基板52との間のセルギャップを規定するために、例えば別の部材をスペーサーとして設ける場合は、額縁隔壁61の高さは隔壁35の高さと等しくてもよい。