JP2019056414A - 車両用ブリーザ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブリーザ室の配置の自由度を向上させた車両用ブリーザ装置を提供する。【解決手段】動力伝達装置16、20を収容するケース90内の空気を大気に開放する車両用ブリーザ装置100は、回転駆動される第1円筒軸14と、第1円筒軸14の回転駆動力が伝動ベルトであるチェーン84を介して伝達されて回転駆動され、内部にブリーザ室72を有し、動力伝達に寄与しない第2円筒軸52と、がケース90内に収容され、ケース90は、ブリーザ室72とケース90外とを接続させる連通孔94を有する。このように、ブリーザ室72が設けられた第2円筒軸52は、チェーン84を介して第1円筒軸14と連結されているため、第2円筒軸52内にあるブリーザ室72は、第1円筒軸14から見た回転方向および径方向に関して配置の自由度が向上させられる。【選択図】図1

Description

本発明は、車両用ブリーザ装置に関し、特にブリーザ室の配置に関する。
ケース(トランスアクスルケース)内には、トルクコンバータや変速機などの動力伝達装置と共に、これら動力伝達装置の構成部品に作動油や潤滑油を送る潤滑装置も収容されている。そして、ケース内の潤滑油の温度変化による体積変動に起因するケース内外の圧力差を無くすためにケース内の空気を大気に開放する経路の途中に空気中の油粒子を分離するためのブリーザ装置が設けられることが知られている。例えば、特許文献1に記載の車両用ブリーザ装置がそれである。特許文献1に記載の車両用ブリーザ装置では、エンジンから駆動輪までの動力伝達経路に設けられたカウンタシャフト内にブリーザ室が設けられており、カウンタシャフトの回転に伴って発生する遠心力による気液分離作用によってブリーザ室の外周側へ潤滑油を分離することで、ケース内の潤滑油の油面レベルの上昇にかかわらずブリーザ室からケース外に開口する連通孔(通気路)を通る空気への潤滑油の混入を抑制している。
特開2013−057371号公報
上記車両用ブリーザ装置では、カウンタシャフト内にブリーザ室が設けられているが、エンジンにより回転駆動されるメインシャフトとカウンタシャフトとは駆動力伝達のために適したギヤ比で構成されたギヤで噛み合わされている必要がある。そのため、メインシャフトに対するカウンタシャフトの配置、すなわちブリーザ室の配置は、上記事情のためにメインシャフトから見た回転方向および径方向に関して一定の制限を受けることとなる。
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、ブリーザ室の配置の自由度を向上させた車両用ブリーザ装置を提供することにある。
第1発明の要旨とするところは、動力伝達装置を収容するケース内の空気を大気に開放する車両用ブリーザ装置であって、回転駆動される第一軸と、前記第一軸の回転駆動力が伝動ベルトを介して伝達されて回転駆動され、内部にブリーザ室を有し、動力伝達に寄与しない第二軸と、が前記ケース内に収容され、前記ケースは、前記ブリーザ室と前記ケース外とを接続させる連通孔を有することにある。
第2発明の要旨とするところは、前記第一軸は、原動機により回転駆動されることにある。
第3発明の要旨とするところは、前記第一軸は、前記原動機により回転駆動されるトルクコンバータのポンプシェルから前記原動機とは反対方向へ突き出した円筒軸であることにある。
第4発明の要旨とするところは、前記円筒軸は、前記トルクコンバータの出力で回転させられる変速機の入力軸が挿通されており、前記第一軸から前記伝動ベルトへ前記回転駆動力を伝達する第1伝達部は、前記第一軸の回転中心線方向において前記トルクコンバータと前記変速機との間に配置されていることにある。
第5発明の要旨とするところは、前記第二軸は、前記ケース内に配置されたオイルポンプの回転軸であることにある。
第6発明の要旨とするところは、前記第二軸は、前記ケース内に配置されたオイルポンプの回転軸であり、前記伝動ベルトから前記オイルポンプの回転軸へ前記回転駆動力を伝達する第2伝達部は、前記オイルポンプの回転軸の回転中心線方向において前記トルクコンバータと前記オイルポンプの本体部分との間に配置されていることにある。
第7発明の要旨とするところは、前記原動機の回転制御を実行する電子制御装置を備え、前記ケース内の潤滑油温度が所定の判定温度以上であること、および車速が所定の判定速度以上で一定時間継続したこと、の少なくとも一方が満たされたとき、前記電子制御装置は、前記原動機のアイドリング回転速度を高める原動機回転速度の上昇制御を行い、前記第一軸を介して、内部に前記ブリーザ室を有する前記第二軸の回転速度を制御することにある。
第8発明の要旨とするところは、前記伝動ベルトは、チェーンまたはベルトであることにある。
第1発明の車両用ブリーザ装置によれば、回転駆動される第一軸と、前記第一軸の回転駆動力が伝動ベルトを介して伝達されて回転駆動され、内部にブリーザ室を有し、動力伝達に寄与しない第二軸と、が前記ケース内に収容され、前記ケースは、前記ブリーザ室と前記ケース外とを接続させる連通孔を有する。このように、ブリーザ室が設けられた第二軸は、伝動ベルトを介して第一軸と連結されているため、第二軸内にあるブリーザ室は、第一軸から見た回転方向および径方向に関して配置の自由度が向上させられる。
第2発明の車両用ブリーザ装置によれば、前記第一軸は、原動機により回転駆動される。このように、第一軸は原動機で回転駆動されるため、原動機の回転速度が制御されることで第二軸の回転速度が制御されるため、これによりブリーザ室からの潤滑油の排出能力が制御可能となる。
第3発明の車両用ブリーザ装置によれば、前記第一軸は、前記原動機により回転駆動されるトルクコンバータのポンプシェルから前記原動機とは反対方向へ突き出した円筒軸である。このように、原動機により回転駆動されるトルクコンバータのポンプシェルのような既存の機構を介して第一軸に回転駆動力が伝達されるため、原動機から第一軸への動力伝達機構はそれほど大きなスペースを必要としない。
第4発明の車両用ブリーザ装置によれば、前記円筒軸は、前記トルクコンバータの出力で回転させられる変速機の入力軸が挿通されており、前記第一軸から前記伝動ベルトへ前記回転駆動力を伝達する第1伝達部は、前記第一軸の回転中心線方向において前記トルクコンバータと前記変速機との間に配置されている。このため、トルクコンバータと変速機との間には、第一軸の回転中心線方向において幅の狭い第1伝達部が設けられればよく、トルクコンバータと変速機とは、ケース内でのスペースを有効に活用した配置がなされうる。
第5発明の車両用ブリーザ装置によれば、前記第二軸は、前記ケース内に配置されたオイルポンプの回転軸である。このように、内部にブリーザ室を有する第二軸がオイルポンプの回転軸とされるため、オイルポンプのスペースがブリーザ室の配置のために有効活用される。また、第一軸近傍にオイルポンプが設けられる必要がなくなるため、第一軸の回転中心線方向におけるトルクコンバータや変速機等の配置の短尺化が可能となる。
第6発明の車両用ブリーザ装置によれば、前記第二軸は、前記ケース内に配置されたオイルポンプの回転軸であり、前記伝動ベルトから前記オイルポンプの回転軸へ前記回転駆動力を伝達する第2伝達部は、前記オイルポンプの回転軸の回転中心線方向において前記トルクコンバータと前記オイルポンプの本体部分との間に配置されている。このため、オイルポンプは、トルクコンバータの配置を阻害することなく配置され得るため、トルクコンバータとオイルポンプとは、ケース内でのスペースを有効に活用した配置がなされうる。
第7発明の車両用ブリーザ装置によれば、前記原動機の回転制御を実行する電子制御装置を備え、前記ケース内の潤滑油温度が所定の判定温度以上であること、および車速が所定の判定速度以上で一定時間継続したこと、の少なくとも一方が満たされたとき、前記電子制御装置は、前記原動機のアイドリング回転速度を高める原動機回転速度の上昇制御を行い、前記第一軸を介して、内部に前記ブリーザ室を有する前記第二軸の回転速度を制御する。これにより、ブリーザ室からの潤滑油の排出能力が適切に制御される。
第8発明の車両用ブリーザ装置によれば、前記伝動ベルトは、チェーンまたはベルトである。このように、伝動ベルトはチェーン、ベルトのいずれでも良く、自由に選択可能とされる。
本発明の一実施例に係る車両用ブリーザ装置を適用した車両の概略構成図である。 図1の変速機の骨子図の一例である。 図2の変速機において複数のギヤ段(変速段)をそれぞれ成立させる際の油圧式摩擦係合装置の係合作動表である。 図1のオイルポンプを示す断面図である。 図4のオイルポンプの要部を拡大して示す断面図である。 図1の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 図1の電子制御装置の制御作動の要部、すなわちエンジン回転速度の上昇制御の制御作動の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明の一実施例である車両用ブリーザ装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る車両用ブリーザ装置100を適用した車両10の概略構成図である。車両10は、例えばトルクコンバータ16および変速機20から構成された自動変速機を有するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車である。図1では、エンジン12(原動機)、変速機20、および油圧制御装置86はブロック図で示され、トルクコンバータ16、および変速機20から駆動輪42までの間にある動力伝達経路は骨子図で示されている。
トルクコンバータ16は、エンジン12と変速機20の入力軸22との間に介挿され、作動油を媒介として駆動力を伝達する流体式動力伝達装置である。トルクコンバータ16は、フロントシェルおよびフロントシェルに溶接されたリヤシェルから成ってその内部にポンプ翼車を有するポンプシェル16pと、ポンプシェル16p内に設けられてポンプ翼車の回転が作動油を介して伝達されるタービン翼車をその内部に有するタービンシェル16tと、ポンプ翼車とタービン翼車との間に介挿されているステータと、を備えている。エンジン12の回転駆動力は、トルクコンバータ16のポンプシェル16pおよびタービンシェル16tを介して、変速機20の入力軸22に伝達される。
ポンプシェル16pからエンジン12とは反対方向へは、第1円筒軸14が突き出ている。第1円筒軸14は、その中空部において入力軸22が挿通されており、第1円筒軸14と入力軸22とは同じ回転中心線CL1で回転可能となっている。なお、第1円筒軸14は本発明の第一軸に相当する。
変速機20は、後述するように、入力軸22から伝達された駆動力を多段階に変換して出力する多段変速機である。変速機20の出力は、第1円筒軸14および入力軸22と同じ回転中心線CL1で回転可能な出力軸24を介してカウンタドライブギヤ30に伝達される。カウンタドライブギヤ30は、カウンタドリブンギヤ32を介して回転中心線CL3で回転可能に設けられたカウンタシャフト34を回転させる。カウンタシャフト34は、デフドライブピニオン36を介して差動歯車装置40のデフリングギヤ38を回転させ、差動歯車装置40を介して駆動輪42に駆動力が伝達される。
ところで、変速機20のギヤや動力伝達経路の耐久性の関係で、変速機20で変速された出力軸24の回転駆動力は駆動輪42の回転速度よりも高めに設定され、デフリングギヤ38(ファイナルギヤ)で駆動輪42の回転速度に最終的に減速される。一般的に、変速機20の出力軸24の回転速度は、デフリングギヤ38(ファイナルギヤ)で1/4〜1/6に減速されるので、これに適したようにカウンタドライブギヤ30、カウンタドリブンギヤ32、デフドライブピニオン36、およびデフリングギヤ38の各ギヤのギヤ比が決められる。つまり、変速機20の出力軸24とカウンタシャフト34とは、駆動力伝達のために適したギヤ比で構成されたギヤで噛み合わされている必要がある。このため、カウンタシャフト34の配置は、上述のようにギヤ比の制約のため、入力軸22および出力軸24の回転中心線CL1の径方向に関して一定の制限を受けることとなる。また、カウンタシャフト34は、デフドライブピニオン36を介して差動歯車装置40のデフリングギヤ38を回転させることから、差動歯車装置40の近傍に配置されることとなる。このため、カウンタシャフト34の配置は、上述のように差動歯車装置40の近傍に配置されるという制約のため、入力軸22および出力軸24の回転中心線CL1の回転方向に関して一定の制限を受けることとなる。なお、差動歯車装置40では、デフリングギヤ38によって潤滑油が攪拌されやすいため、差動歯車装置40の近傍にブリーザ室72を配置すると、ブリーザ室72にそのような攪拌された潤滑油が流入しやすいという課題がある。
第1円筒軸14には、チェーン用の歯車である第1スプロケット50(第1伝達部)が設けられている。第1スプロケット50は、第1円筒軸14の回転中心線CL1方向においてトルクコンバータ16と変速機20との間に配置されている。第1スプロケット50は、伝動ベルトであるチェーン84を介して第2円筒軸52に設けられたチェーン用の歯車である第2スプロケット54(第2伝達部)を回転させる。第2円筒軸52は、回転中心線CL2で回転可能とされている。第2円筒軸52はオイルポンプ56の回転軸であり、オイルポンプ56で油圧が高められた作動油が油圧制御装置86に送られる。なお、第1円筒軸14と第2円筒軸52との間には、上述したカウンタシャフト34のような駆動力伝達のための制約がない。そのため、チェーン84の長さを変更し、第2円筒軸52の第1円筒軸14に対する相対位置を調整することで、ブリーザ室72を内部に有する第2円筒軸52の配置は自由に決められる。すなわち、第1円筒軸14の回転中心線CL1の径方向および回転方向に関して、第2円筒軸52の配置の自由度が向上させられる。例えば、ブリーザ室72を内部に有する第2円筒軸52が、潤滑油を攪拌しやすい差動歯車装置40から離れたところに配置されるようにすることが可能である。なお、第2円筒軸52は本発明の第二軸に相当する。
トルクコンバータ16、変速機20、変速機20から差動歯車装置40に至るまでの動力伝達経路、オイルポンプ56、および油圧制御装置86は、非回転部材であるケース90(トランスアクスルケース)に油密に収容されている。後述するようにケース90は複数の部材で構成され、またケース90は、図1では図示していないがケース90内外を連通した連通孔94を有する。
油圧制御装置86は、オイルポンプ56から送られた作動油を用いて、トルクコンバータ16や変速機20に送る作動油を制御したり、ケース90内のギヤや軸受などの構成部品に潤滑油を供給したりする。
電子制御装置(Electronic control unit)98は、例えば、所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、予め記憶されたプログラムに従って入力信号の処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、後述のように電子制御装置98は、温度センサ200から入力されたケース90内の潤滑油温度Toil(℃)や車速センサ202から入力された車速V(km/h)に基づく走行履歴に応じて、エンジン12のアイドリング回転速度を制御する。アイドリング回転速度とは、原動機であるエンジン12の回転駆動力がトルクコンバータ16などの動力伝達装置によって駆動輪42から切り離された状態におけるエンジン12の回転速度を意味している。
図2は、図1の変速機20の骨子図の一例である。変速機20は、サンギヤS1、ピニオンギヤP1、キャリヤCA2から構成されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置26、サンギヤS2、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2とP1、キャリヤCA2、リングギヤR2から構成されたダブルピニオン型の第2遊星歯車装置27、サンギヤS3、ピニオンギヤP3、キャリヤCA3、リングギヤR3から構成されたシングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびサンギヤS4、ピニオンギヤP4、キャリヤCA4、リングギヤR4から構成されたシングルピニオン型の第4遊星歯車装置29を備え、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。なお、第1遊星歯車装置26および第2遊星歯車装置27は、一部が互いに連結され、所謂ラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
図3は、図2の変速機20において複数のギヤ段(変速段)を成立させる際の油圧式摩擦係合装置の係合作動表である。図3において、「○」は係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。変速機20では、図3に示す係合作動表に従って、クラッチC1、C2、C3、C4、非回転部材であるケース90に連結されたブレーキB1、B2がそれぞれ係合または解放させられることにより、10段の前進用ギヤ段(1st〜10th)および1段の後進用ギヤ段(Rev)のうちのいずれか1が成立させられるようになっている。
図4は、図1のオイルポンプ56を示す断面図であり、第2円筒軸52の回転中心線CL2を含む平面における断面図である。また、図5は、図4のオイルポンプ56の要部を拡大して示す断面図である。
オイルポンプ56は、内歯ギヤ64、外歯ギヤ66、回転軸である第2円筒軸52、およびこれらを収容するポンプボデー58とポンプカバー60を備える内接式ギヤポンプである。ポンプボデー58とポンプカバー60とは、ボルト62により固定されて内部空間を有している。また、ポンプボデー58は、図示していないが非回転部材であるケース90に固定されており、ポンプボデー58およびポンプカバー60は非回転とされている。ポンプカバー60は第1ニードルころ軸受68を介して第2円筒軸52の一方の端部52a側を回転可能に支持するとともに、ポンプボデー58は第2ニードルころ軸受70を介して第2円筒軸52の他方の端部52b側を回転可能に支持している。内歯ギヤ64、外歯ギヤ66、およびそれらを収容するポンプボデー58、ポンプカバー60が、オイルポンプ56の本体部分を構成する。
第2円筒軸52は、回転中心線CL2で回転可能な円筒軸である。ポンプボデー58とポンプカバー60とで形成された内部空間において、第2円筒軸52はその外周に設けられた内歯ギヤ64を回転させ、内歯ギヤ64はそれに内接した外歯ギヤ66を回転させる。これにより、オイルパン90dに貯留された作動油が図示しない吸入口から吸入されて、その圧力が高められて吐出口から油圧制御装置86に吐出される。
第1円筒軸14に設けられた第1スプロケット50の回転は、チェーン84を介して第2円筒軸52の一方の端部52a側にスプライン嵌合された第2スプロケット54に伝えられる。オイルポンプ56の本体部分は、第2円筒軸52の回転中心線CL2方向において、第2スプロケット54から見るとトルクコンバータ16とは反対方向に配置されている。すなわち、第2スプロケット54は、第2円筒軸52の回転中心線CL2方向においてトルクコンバータ16とオイルポンプ56の本体部分との間に配置されている。チェーン84とトルクコンバータ16のポンプシェル16pとの間で、ケース90の収容空間が内壁96により分割されている。
円筒軸である第2円筒軸52の内部は、ケース90内の温度変化による作動油の体積変動に起因したケース90内外の圧力差を無くすためにケース90内の空気を大気に開放する経路の途中に空気中の油粒子を分離するためのブリーザ室72として利用される。第2円筒軸52の一方の端部52aには、後述するようにケース90の連通孔94を貫通するように筒状のブリーザ74の内側端部74aが差し込まれている。ブリーザ74は、例えば開口した内側端部74aから延びた筒が、途中から折れ曲がって開口した外側端部74bに至る形状を有する。第2円筒軸52の他方の端部52bは開口しており、ブリーザ室72はケース90の内部空間と連通している。
ブリーザ74の内側端部74aは、第2円筒軸52の一方の端部52aの内径よりも小径に形成されており、第2円筒軸52と同軸に延在するように一方の端部52aに差し込まれている。ブリーザ74の内側端部74a側の外周面には、周方向に溝74cが形成され、溝74cにOリング80が嵌め込まれている。Oリング80は、溝74cから少しはみ出している。溝74cに嵌め込まれたOリング80と第2円筒軸52の一方の端部52a側の内周面との間には、樹脂等からなるプラグ76が差し込まれている。プラグ76は、Oリング80の周方向全体を覆い、且つ端部52a側の内周面全体を覆って、第2円筒軸52の一方の端部52a側におけるブリーザ室72とケース90内との油密を保っている。なお、プラグ76は、回転部材である第2円筒軸52とともに回転可能とされ、プラグ76と非回転部材であるブリーザ74とは、Oリング80が摺動することで油密が保たれる。
ケース90は、第1ケース90a、第2ケース90b、第3ケース90c、およびオイルパン90dの複数の部材で構成されている。図示していないが、第1ケース90a、第2ケース90b、第3ケース90c、およびオイルパン90dのそれぞれは、シール材等を介してボルト等で互いに固定されている。ケース90には、ケース90内外を連通した連通孔94が、第1ケース90aと第2ケース90bとの境界部分に設けられている。
ブリーザ74の外側端部74bは、一端が大気開放されるホース82の他端に接続されている。これにより、ブリーザ室72は、ブリーザ74およびホース82を介してケース90の外部すなわち大気と連通すると共に、第2円筒軸52の他方の端部52bの開口部によってケース90の内部空間と連通する。
ブリーザ74は、例えばゴムからなる油密保持部材78によりケース90の連通孔94に固定されている。具体的には、油密保持部材78は、第1ケース90aと第2ケース90bとの境界部分に設けられた連通孔94に固定されている。このように、連通孔94におけるブリーザ74とケース90とのすき間は、油密保持部材78によってケース90内外の油密が保たれている。
エンジン12が回転している場合には、第1円筒軸14、第1スプロケット50、チェーン84、第2スプロケット54を介して第2円筒軸52が回転させられる。このとき、第2円筒軸52内に設けられたブリーザ室72では、第2円筒軸52の回転に伴って発生する遠心力による気液分離作用によってブリーザ室72の外周側、すなわち第2円筒軸52の内周面側へと潤滑油は分離させられる。そして、第2円筒軸52の内周面側へ分離させられた潤滑油は、第2円筒軸52に設けられた貫通孔52cを通じてブリーザ室72の外へ排出される。よって、ブリーザ室72の第2円筒軸52の回転中心線CL2付近は、潤滑油が分離された後の空気が主として存在することとなるため、ブリーザ室72からケース90外に開口する連通孔94内に設けられた通気路を通る空気への潤滑油の混入が抑制されている。
本実施例の車両用ブリーザ装置100によれば、回転駆動される第1円筒軸14と、第1円筒軸14の回転駆動力がチェーン84を介して伝達されて回転駆動され、内部にブリーザ室72を有し、動力伝達に寄与しない第2円筒軸52と、がケース90内に収容され、ケース90は、ブリーザ室72とケース90外とを接続させる連通孔94を有する。このように、ブリーザ室72が設けられた第2円筒軸52は、チェーン84を介して第1円筒軸14と連結されているため、第2円筒軸52内にあるブリーザ室72は、第1円筒軸14から見た回転方向および径方向に関して配置の自由度が向上させられる。
また、本実施例の車両用ブリーザ装置100によれば、第1円筒軸14は、エンジン12により回転駆動される。このように、第1円筒軸14はエンジン12で回転駆動されるため、エンジン12の回転速度が制御されることで第2円筒軸52の回転速度が制御されるため、これによりブリーザ室72からの潤滑油の排出能力が制御可能となる。例えば、高速走行により潤滑油温度Toilが急上昇し潤滑油が激しく撹拌されると、潤滑油が周囲に飛び散ることでブリーザ室72への潤滑油の流入が多くなる。このような状況下で車両10が停車させられた場合には、エンジン12はアイドリング状態となって回転速度が下がり、そして第1円筒軸14を介した第2円筒軸52の回転速度も低下するため、遠心力を利用した潤滑油のブリーザ室72外への排出能力が低下してしまい、ブリーザ室72の潤滑油の流入と排出とのバランスが崩れるおそれがある。このような場合であっても、電子制御装置98は、温度センサ200から入力されたケース90内の潤滑油温度Toil(℃)が所定の判定温度Tp(℃)以上となり、車速センサ202から入力された車速V(km/h)が所定の判定速度Vp(km/h)以上で一定時間Time1(sec)継続したとき、エンジン12のアイドリング回転速度を適切に高めるエンジン回転速度の上昇制御を行う。これにより、ブリーザ室72からの潤滑油の排出能力が適正に制御される。
図6は、図1の電子制御装置98の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。電子制御装置98は、車速判定部98a、停止判定部98b、温度判定部98c、回転速度設定部98d、およびエンジン制御部98eを備え、上述のエンジン回転速度の上昇制御を行う。
車速判定部98aは、車速センサ202から入力された車速Vに基づいて、車速Vが所定の判定速度Vp以上であるか否かを判定する。また、車速判定部98aは、車速Vが所定の判定速度Vp以上である場合には、その状態が一定時間Time1継続しているか否かを判定する。車速Vが所定の判定速度Vp以上の状態で一定時間Time1継続したと判定された場合、車速判定部98aは、車両10が停止状態か否かの判定を指令する停止判定指令信号を停止判定部98bへ送る。
停止判定部98bは、車速判定部98aから停止判定指令信号が入力されると、車速センサ202から入力された車速Vに基づいて、車速Vが所定の判定速度Vp未満であるか否かを判定する。停止判定部98bは、車速Vが所定の判定速度Vp未満となった場合には、タイマーのカウントを開始して時間を計測する。そして、停止判定部98bは、タイマーのカウントの開始から所定の停止時間Time2(sec)以内に、車両10が停止したか否かを判定する。所定の停止時間Time2以内に車両10が停止したと判定された場合、停止判定部98bは、車両10の潤滑油温度Toilの判定を指令する温度判定指令信号を温度判定部98cへ送る。なお、所定の停止時間Time2を経過した後に車両10が停止した場合には、車両10の車速Vは所定の停止時間Time2継続して所定の判定速度Vp未満であったので、ブリーザ室72への潤滑油の流入も低下しているため、後述のようにエンジン回転速度の上昇制御を行わない。
温度判定部98cは、停止判定部98bから温度判定指令信号が入力されると、温度センサ200から入力されたケース90内の潤滑油温度Toilに基づいて、潤滑油温度Toilが所定の判定温度Tp以上であるか否かを判定する。潤滑油温度Toilが所定の判定温度Tp以上であると判定された場合、温度判定部98cは、車両10のアイドリング回転速度を高めるよう指令する変更指令信号を回転速度設定部98dへ送る。
回転速度設定部98dは、温度判定部98cから変更指令信号が入力されると、車両10のアイドリング回転速度を通常よりも高く設定する。そして、回転速度設定部98dは、通常よりも高く設定されたアイドリング回転速度に従ってエンジン12の制御を行うように指令する制御指令信号をエンジン制御部98eへ送る。
エンジン制御部98eは、回転速度設定部98dから制御指令信号が入力されると、アイドリング回転速度を高くした状態でエンジン12の回転制御を行うべく、エンジン12に対して燃料噴射量や燃料噴射時期などを制御する。
なお、上述の所定の判定温度Tp、所定の判定速度Vp、一定時間Time1、および所定の停止時間Time2は、実験あるいはシミュレーションによりブリーザ室72への潤滑油の流入が多くなる条件として予め求められる。
図7は、図1の電子制御装置98の制御作動の要部、すなわちエンジン回転速度の上昇制御の制御作動の一例を示すフローチャートである。
図7のフローチャートは、例えば、電子制御装置98において所定の時間(例えば、数ms)毎にスタートを繰り返して実行される。
まず、車速判定部98aに対応するステップS10において、車両10の車速Vが所定の判定速度Vp以上で一定時間Time1継続しているか否かが判定される。ステップS10の判定が肯定される場合はステップS20が実行される。ステップS10の判定が否定される場合は、リターンが実行される。
停止判定部98bに対応するステップS20において、車両10の車速Vが所定の判定速度Vp未満であるか否かが判定される。ステップS20の判定が肯定される場合はステップS30が実行される。ステップS20の判定が否定される場合は、再度ステップS20が実行される。
停止判定部98bに対応するステップS30において、タイマーのカウントが開始される。そしてステップS40が実行される。
停止判定部98bに対応するステップS40において、タイマーのカウントの開始から所定の停止時間Time2以内に車両10が停止したか否かが判定される。ステップS40の判定が肯定される場合はステップS50が実行される。ステップS40の判定が否定される場合は、リターンが実行される。
温度判定部98cに対応するステップS50において、潤滑油温度Toilが所定の判定温度Tp以上であるか否かが判定される。ステップS50の判定が肯定される場合は、ステップS60が実行される。ステップS50の判定が否定される場合は、リターンが実行される。
回転速度設定部98dに対応するステップS60において、車両10のアイドリング回転速度が通常よりも高く設定される。この場合、エンジン12は、エンジン制御部98eによってアイドリング回転速度が通常よりも高い状態で回転制御される。
また、本実施例の車両用ブリーザ装置100によれば、第1円筒軸14は、エンジン12により回転駆動されるトルクコンバータ16のポンプシェル16pからエンジン12とは反対方向へ突き出した円筒軸である。このように、エンジン12により回転駆動されるトルクコンバータ16のポンプシェル16pのような既存の機構を介して第1円筒軸14に回転駆動力が伝達されるため、エンジン12から第1円筒軸14への動力伝達機構はそれほど大きなスペースを必要としない。
また、本実施例の車両用ブリーザ装置100によれば、第1円筒軸14は、その中空部においてトルクコンバータ16の出力で回転させられる変速機20の入力軸22が挿通されており、第1円筒軸14からチェーン84へ回転駆動力を伝達する第1スプロケット50は、第1円筒軸14の回転中心線CL1方向においてトルクコンバータ16と変速機20との間に配置されている。このため、トルクコンバータ16と変速機20との間には、第1円筒軸14の回転中心線CL1方向において幅の狭い第1スプロケット50が設けられればよく、トルクコンバータ16と変速機20とは、ケース90内でのスペースを有効に活用した配置がなされうる。
また、本実施例の車両用ブリーザ装置100によれば、第2円筒軸52は、ケース90内に配置されたオイルポンプ56の回転軸である。このように、内部にブリーザ室72を有する第2円筒軸52がオイルポンプ56の回転軸とされるため、オイルポンプ56のスペースがブリーザ室72の配置のために有効活用される。また、第1円筒軸14近傍にオイルポンプ56が設けられる必要がなくなるため、第1円筒軸14の回転中心線CL1方向におけるトルクコンバータ16や変速機20等の配置の短尺化が可能となる。また、チェーン84を介して連結された第1スプロケット50と第2スプロケット54とのギヤ比が適宜調整されることで、第1円筒軸14に対する第2円筒軸52の回転速度が適宜調整されることが可能であり、この調整された第2円筒軸52の回転速度に適切な吐出能力を有するオイルポンプ56が配置されることが可能である。
また、本実施例の車両用ブリーザ装置100によれば、チェーン84からオイルポンプ56の回転軸である第2円筒軸52に回転駆動力を伝達する第2スプロケット54は、第2円筒軸52の回転中心線CL2方向においてトルクコンバータ16とオイルポンプ56の本体部分との間に配置されている。このため、オイルポンプ56は、トルクコンバータ16の配置を阻害することなく配置され得るため、トルクコンバータ16とオイルポンプ56とは、ケース90内でのスペースを有効に活用した配置がなされうる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例では、原動機は、内燃機関であるエンジン12であったが、これに限らない。例えば、原動機は、電気エネルギーで回転力を得る電動機でも良く、また、内燃機関であるエンジンと電動機との両方を備えたハイブリッドシステムでも良い。
前述の実施例では、車両10はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車であったが、これに限らない。例えば、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車など他の形式の車両にも本発明は適用可能である。
前述の実施例では、ブリーザ室72が内部に設けられた第2円筒軸52が、オイルポンプ56の回転軸とされていたが、これに限らない。例えば、ブリーザ室72が内部に設けられた回転軸とオイルポンプ56の回転軸とが別の回転軸であっても良い。この場合でも、ブリーザ室72の配置の自由度は向上させられる。
前述の実施例では、電子制御装置98は、車速センサ202から入力された車速Vに基づいて車速Vが所定の判定速度Vp以上で一定時間Time1継続したとき、エンジン12のアイドリング回転速度を制御したが、これに限らない。例えば、変速機20から駆動輪42に至るまでの動力伝達経路に配置された回転機構である、変速機20の出力軸24やカウンタシャフト34などに設けられた回転速度センサであっても車速Vを検出することは可能であり、これらに基づいて原動機であるエンジン12のアイドリング回転速度を制御しても良い。
前述の実施例では、電子制御装置98は、ケース90内の潤滑油温度Toilが所定の判定温度Tp以上であること、および車速Vが所定の判定速度Vp以上で一定時間Time1継続したこと、の両方が満たされたときに、エンジン12のアイドリング回転速度を適切に高めるエンジン回転速度の上昇制御を行ったが、これに限らない。例えば、ケース90内の潤滑油温度Toilが所定の判定温度Tp以上であること、および車速Vが所定の判定速度Vp以上で一定時間Time1継続したこと、の少なくとも一方が満たされたとき、ブリーザ室72への潤滑油の流入が多くなりやすい状態になっているとして、原動機であるエンジン12のアイドリング回転速度を適切に高めるエンジン回転速度の上昇制御を行っても良い。例えば、図7のフローチャートにおいて、ステップS40の判定が肯定される場合に、ステップS50が実行されずにステップS60が実行されれば、車速Vが所定の判定速度Vp以上で一定時間Time1継続したことが満たされたとして、エンジン回転速度の上昇制御が行われる。また、図7のフローチャートにおいて、ステップS10からステップS30が実行されず、ステップS40において車両10が停止されたことのみが判定されれば、潤滑油温度Toilが所定の判定温度Tp以上であることが満たされたとして、エンジン回転速度の上昇制御が行われる。潤滑油温度Toilが所定の判定温度Tp以上であること、および車速Vが所定の判定速度Vp以上で一定時間Time1継続したこと、の一方が満たされたときの上述のフローチャートに対応した機能ブロック線図は、図6の機能ブロック線図において対応する上述のフローチャートで実行しないステップに関係する機能を適宜省略すればよい。なお、原動機が電動機である場合には、エンジン回転速度の上昇制御は電動機回転速度の上昇制御に代わる。エンジン回転速度の上昇制御および電動機回転速度の上昇制御は、本発明の原動機回転速度の上昇制御に相当する。
前述の実施例では、伝動ベルトはチェーン84であったが、これに限らない。例えば、伝動ベルトはベルトであっても良い。この場合、第1伝達部および第2伝達部としてのチェーン用の歯車である第1スプロケット50、第2スプロケット54の代わりに、プーリーなどが利用される。
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
12:エンジン(原動機)
14:第1円筒軸(第一軸)
16:トルクコンバータ
20:変速機
22:入力軸
50:第1スプロケット(第1伝達部)
52:第2円筒軸(第二軸)
54:第2スプロケット(第2伝達部)
56:オイルポンプ
72:ブリーザ室
84:チェーン(伝動ベルト)
90:ケース
90a:第1ケース
90b:第2ケース
90c:第3ケース
90d:オイルパン
94:連通孔
98:電子制御装置
100:車両用ブリーザ装置
第7発明の要旨とするところは、前記原動機の回転制御を実行する電子制御装置を備え、車両が停止したときの前記ケース内の潤滑油温度が所定の判定温度以上であること、および車速が所定の判定速度以上で一定時間継続した後に所定の時間以内に前記車両が停止したこと、の少なくとも一方の条件が満たされたとき、前記電子制御装置は、前記原動機のアイドリング回転速度を高める原動機回転速度の上昇制御を行い、前記第一軸を介して、内部に前記ブリーザ室を有する前記第二軸の回転速度を制御することにある。
第7発明の車両用ブリーザ装置によれば、前記原動機の回転制御を実行する電子制御装置を備え、車両が停止したときの前記ケース内の潤滑油温度が所定の判定温度以上であること、および車速が所定の判定速度以上で一定時間継続した後に所定の時間以内に前記車両が停止したこと、の少なくとも一方の条件が満たされたとき、前記電子制御装置は、前記原動機のアイドリング回転速度を高める原動機回転速度の上昇制御を行い、前記第一軸を介して、内部に前記ブリーザ室を有する前記第二軸の回転速度を制御する。これにより、ブリーザ室からの潤滑油の排出能力が適切に制御される。
ところで、変速機20のギヤや動力伝達経路の耐久性の関係で、変速機20で変速された出力軸24の回転速度は駆動輪42の回転速度よりも高めに設定され、デフリングギヤ38(ファイナルギヤ)で駆動輪42の回転速度に最終的に減速される。一般的に、変速機20の出力軸24の回転速度は、デフリングギヤ38(ファイナルギヤ)で1/4〜1/6に減速されるので、これに適したようにカウンタドライブギヤ30、カウンタドリブンギヤ32、デフドライブピニオン36、およびデフリングギヤ38の各ギヤのギヤ比が決められる。つまり、変速機20の出力軸24とカウンタシャフト34とは、駆動力伝達のために適したギヤ比で構成されたギヤで噛み合わされている必要がある。このため、カウンタシャフト34の配置は、上述のようにギヤ比の制約のため、入力軸22および出力軸24の回転中心線CL1の径方向に関して一定の制限を受けることとなる。また、カウンタシャフト34は、デフドライブピニオン36を介して差動歯車装置40のデフリングギヤ38を回転させることから、差動歯車装置40の近傍に配置されることとなる。このため、カウンタシャフト34の配置は、上述のように差動歯車装置40の近傍に配置されるという制約のため、入力軸22および出力軸24の回転中心線CL1の回転方向に関して一定の制限を受けることとなる。なお、差動歯車装置40では、デフリングギヤ38によって潤滑油が攪拌されやすいため、差動歯車装置40の近傍にブリーザ室を配置すると、ブリーザ室にそのような攪拌された潤滑油が流入しやすいという課題がある。
第1円筒軸14には、チェーン用の歯車である第1スプロケット50(第1伝達部)が設けられている。第1スプロケット50は、第1円筒軸14の回転中心線CL1方向においてトルクコンバータ16と変速機20との間に配置されている。第1スプロケット50は、伝動ベルトであるチェーン84を介して第2円筒軸52に設けられたチェーン用の歯車である第2スプロケット54(第2伝達部)を回転させる。第2円筒軸52は、回転中心線CL2で回転可能とされている。第2円筒軸52はオイルポンプ56の回転軸であり、オイルポンプ56で油圧が高められた作動油が油圧制御装置86に送られる。なお、第1円筒軸14と第2円筒軸52との間には、上述したカウンタシャフト34のような駆動力伝達のための制約がない。そのため、チェーン84の長さを変更し、第2円筒軸52の第1円筒軸14に対する相対位置を調整することで、ブリーザ室72(図4参照)を内部に有する第2円筒軸52の配置は自由に決められる。すなわち、第1円筒軸14の回転中心線CL1の径方向および回転方向に関して、第2円筒軸52の配置の自由度が向上させられる。例えば、後述するようにブリーザ室72を内部に有する第2円筒軸52が、潤滑油を攪拌しやすい差動歯車装置40から離れたところに配置されるようにすることが可能である。なお、第2円筒軸52は本発明の第二軸に相当する。
図1に示すように、第1円筒軸14に設けられた第1スプロケット50の回転は、チェーン84を介して第2円筒軸52の一方の端部52a側にスプライン嵌合された第2スプロケット54に伝えられる。オイルポンプ56の本体部分は、第2円筒軸52の回転中心線CL2方向において、第2スプロケット54から見るとトルクコンバータ16とは反対方向に配置されている。すなわち、第2スプロケット54は、第2円筒軸52の回転中心線CL2方向においてトルクコンバータ16とオイルポンプ56の本体部分との間に配置されている。
図4に示すように、チェーン84とトルクコンバータ16のポンプシェル16pとの間で、ケース90の収容空間が内壁96により分割されている。円筒軸である第2円筒軸52の内部は、ケース90内の温度変化による作動油の体積変動に起因したケース90内外の圧力差を無くすためにケース90内の空気を大気に開放する経路の途中に空気中の油粒子を分離するためのブリーザ室72として利用される。第2円筒軸52の一方の端部52aには、後述するようにケース90の連通孔94を貫通するように筒状のブリーザ74の内側端部74aが差し込まれている。ブリーザ74は、例えば開口した内側端部74aから延びた筒が、途中から折れ曲がって開口した外側端部74bに至る形状を有する。第2円筒軸52の他方の端部52bは開口しており、ブリーザ室72はケース90の内部空間と連通している。
図4および図5に示すように、ブリーザ74の内側端部74aは、第2円筒軸52の一方の端部52aの内径よりも小径に形成されており、第2円筒軸52と同軸に延在するように一方の端部52aに差し込まれている。ブリーザ74の内側端部74a側の外周面には、周方向に溝74cが形成され、溝74cにOリング80が嵌め込まれている。Oリング80は、溝74cから少しはみ出している。溝74cに嵌め込まれたOリング80と第2円筒軸52の一方の端部52a側の内周面との間には、樹脂等からなるプラグ76が差し込まれている。プラグ76は、Oリング80の周方向全体を覆い、且つ端部52a側の内周面全体を覆って、第2円筒軸52の一方の端部52a側におけるブリーザ室72とケース90内との油密を保っている。なお、プラグ76は、回転部材である第2円筒軸52とともに回転可能とされ、プラグ76と非回転部材であるブリーザ74とは、Oリング80が摺動することで油密が保たれる。

Claims (8)

  1. 動力伝達装置を収容するケース内の空気を大気に開放する車両用ブリーザ装置であって、
    回転駆動される第一軸と、前記第一軸の回転駆動力が伝動ベルトを介して伝達されて回転駆動され、内部にブリーザ室を有し、動力伝達に寄与しない第二軸と、が前記ケース内に収容され、
    前記ケースは、前記ブリーザ室と前記ケース外とを接続させる連通孔を有する
    ことを特徴とする車両用ブリーザ装置。
  2. 前記第一軸は、原動機により回転駆動される
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ブリーザ装置。
  3. 前記第一軸は、前記原動機により回転駆動されるトルクコンバータのポンプシェルから前記原動機とは反対方向へ突き出した円筒軸である
    ことを特徴とする請求項2に記載の車両用ブリーザ装置。
  4. 前記円筒軸は、前記トルクコンバータの出力で回転させられる変速機の入力軸が挿通されており、
    前記第一軸から前記伝動ベルトへ前記回転駆動力を伝達する第1伝達部は、前記第一軸の回転中心線方向において前記トルクコンバータと前記変速機との間に配置されている
    ことを特徴とする請求項3に記載の車両用ブリーザ装置。
  5. 前記第二軸は、前記ケース内に配置されたオイルポンプの回転軸である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の車両用ブリーザ装置。
  6. 前記第二軸は、前記ケース内に配置されたオイルポンプの回転軸であり、
    前記伝動ベルトから前記オイルポンプの回転軸へ前記回転駆動力を伝達する第2伝達部は、前記オイルポンプの回転軸の回転中心線方向において前記トルクコンバータと前記オイルポンプの本体部分との間に配置されている
    ことを特徴とする請求項3または4に記載の車両用ブリーザ装置。
  7. 前記原動機の回転制御を実行する電子制御装置を備え、
    前記ケース内の潤滑油温度が所定の判定温度以上であること、および車速が所定の判定速度以上で一定時間継続したこと、の少なくとも一方が満たされたとき、前記電子制御装置は、前記原動機のアイドリング回転速度を高める原動機回転速度の上昇制御を行い、前記第一軸を介して、内部に前記ブリーザ室を有する前記第二軸の回転速度を制御する
    ことを特徴とする請求項2、3、4、6のいずれか1に記載の車両用ブリーザ装置。
  8. 前記伝動ベルトは、チェーンまたはベルトである
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の車両用ブリーザ装置。
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