JP2019055989A - カバジタキセルの結晶性無水和物形態、その調製方法ならびにその医薬組成物 - Google Patents

カバジタキセルの結晶性無水和物形態、その調製方法ならびにその医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】ホルモン不応性前立腺癌に有効な、カバジタキセル(I)の、安定な無水和物結晶形態形態H、及びその調製方法の提供。【解決手段】デカノイルトリグリセリドとオクタノイルトリグリセリドの混合物、又は、グリセロールトリオコタノノアートから、カバジタキセルを再結晶して形態Hの結晶を調製する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、カバジタキセルの新規な結晶性無水和物形態、その調製方法ならびにその医
薬組成物に関する。
カバジタキセルは、天然のタキソイド類 10-デアセチルバッカチン IIIの半合成誘導
体であり、アセトン溶媒和物として、市販されている。それは、最終的には、増殖性細胞
の有糸分裂停止を誘導する微小管を安定化する。それは、ドセタキセルに基づく治療に引
き続く、ホルモン不応性前立腺癌の第二選択療法の用途で、アメリカ合衆国において、承
認されている。
カバジタキセルは、下記の式(I)の構造を有している:
Figure 2019055989
その化学名は、(2R,3S)−3−tert−ブトキシカルボニルアミノ−2−ヒド
ロキシ−3−フェニルプロパン酸 4α−アセトキシ−2α−ベンゾイルオキシ−5β,
20−エポキシ−1β−ヒドロキシ−7β,10β−ジメトキシ−9−オキソ−11−タ
キセン−13α−イルである。
カバジタキセルならびにその調製方法は、WO96/30355、ならびに、WO99
/25704中に記載されている。
WO2005/028462は、時に、形態Aと称される、カバジタキセルのアセトン
溶媒和物を記載している。アセトン溶媒和物の結晶化は、不純物を除去するための非常に
効率的な手段である事実はあるものの、より優れた薬理的形態は、なんらの結晶化溶媒を
含んでいない、純粋なカバジタキセルでありえる。
形態I(トルエン溶媒和物)、形態II(メチル tert−ブチル エーテル溶媒和物
)、形態III(2−プロパノール溶媒和物)、形態IV(1−ブタノール溶媒和物)、形態
V(1−プロパノール溶媒和物)と称される、カバジタキセルのさらなる結晶性溶媒和物
型形態、ならびに、粉末状の、カバジタキセルの非晶質形態、非泡末状形態が、WO20
12/142117(Teva)中に記載されている。溶媒は揮発性であり、従って、結
晶中に溶媒を維持することを困難にするため、医薬においては、溶媒和物は、めったに使
用されない。仮に、API(有効成分)が、保管条件その他によって、脱溶媒和すると、
異なる物理的性質を有する、複数種の結晶多形の形成を引き起こす可能性がある。加えて
、非晶質形態は、準安定であり、そして、時間とともに、異なる物理的性質を有する、別の結晶多形の形成を引き起こす可能性がある。
WO2009/115655(Sanofi)は、形態B、C、D、EおよびFと称さ
れる、該化合物の五種の無水和物形状;エタノール溶媒和物形態B、D、Eと称される、
三種のエタノール溶媒和物;エタノール/水の複合溶媒和物形態F;ならびに、その他の
溶媒を含まない一水和物形態Cとその他の溶媒を含まない二水和物形態Cを、開示してい
る。(該出願に記載されるように、)もし、該API(有効成分)が、例えば、アセトン
溶媒和物を経由するなど、他の手段により予め精製されている場合には、これらの形態を
用いて、高い純度を達成することも可能で。しかし、より長い製造時間ならびにより低い
収率による非効率が、更なる精製手段の導入が、該製造プロセスの障害となる。
WO2013/134534は、後述する溶媒を使用する、結晶性のカバジタキセル溶
媒和物を開示している:
- 酢酸アルキル類、酢酸エチル(形態VII)、酢酸イソプロピル(形態VIII)、酢酸メ
チル(形態XVII)、酢酸ブチル(形態XVIII)、ならびに酢酸イソブチル(形態XXI)を使
用する溶媒和物等;
- ケトン類、メチル エチル ケトン(形態IX)、ならびに、メチル イソブチル ケ
トン(形態X)を使用する溶媒和物等;
- アルコール類、2−ブタノール(形態XI)、イソブタノール(形態XII)、ならびに
アミル アルコール(形態XIII)を使用する溶媒和物等。
WO2013/134534は、また、ジオキソラン(形態XIV)、1,4−ジオキサ
ン(形態XV)、1,2−プロパンジオール(形態XIX)、グルセロール(形態XX)、なら
びに1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(形態XXII)を使用する溶媒和物も記載し
ている。無水和物である可能性がある、形態XVIと名付けられた、結晶性のカバジタキセ
ルの形態も、開示されている。
カバジタキセルの結晶性の酢酸エチル溶媒和物は、WO2013/088335中にも開
示されている。
WO2009/115655は、特には、一水和物および二水和物の、該化合物に二種
の水和物形態を開示しており、該水和物形態はいずれも、水分に曝すことで、無水和物形
態Cから得られている。上述する通り、無水和物形態Cは、アセトン溶媒和物を経由する
ことでのみ、高い純度で得られている。
アセトン/水から得られた、カバジタキセルの結晶性形態が、CN102675257
A中に記載されている。
無水和物形態を含む、形態C1、C2、C3、C4,C5、C6、C7、C8、C8b
、C9ならびにC9pと名付けられた、カバジタキセルの結晶性形態が、WO2913/
034979に記載されている。
最後に、形態−1、形態−2、形態−3、形態−4、形態−5、形態−6、形態−7、
形態−8、形態−8、形態−10、形態−11、形態−12、ならびに、形態−13と称
される、13種の結晶性形態が、WO2013/0109870に記載されている。
上述する課題を解決することが可能な、新規な結晶形態の探索がなお望まれている。
本発明の対象は、形態Hと称される、カバジタキセルの新規な無水和物型の結晶形態で
ある。本発明のさらなる対象は、前記の結晶形態を調製する方法ならびにその医薬組成物
である。
本発明において、「無水和物型」の用語は、カール・フィッシャー分析により決定した
際、1%に満たない吸着水分を含む、カバジタキセルの結晶形態をさす。
形態Hは、ミグリオール(R) 812の商標で知られている、デカノイル トリグリ
セリドとオクタノイル トリグリセリドの混合物(CAS番号 52622−27−2)
、または、グリセロール トリオコタノノアートから、カバジタキセルを結晶化すること
で得られた、カバジタキセルの無水和物型の結晶形態である。
カバジタキセルの結晶形態HのX−RPDパターンを示す。 4000〜500cm−1のスペクトル範囲内の、カバジタキセルの無水和物型結晶形態HのFTIRスペクトルを示す。 カバジタキセルの無水和物型結晶形態HのTG特性ならびにDTA特性を示す。 カバジタキセルの無水和物型結晶形態HのDSC特性を示す。
本発明にかかる、形態Hのカバジタキセルは、本質的に、図1中に示される、それぞれ
1.54056Åならびに1.54439ÅのCuKαの波長λと波長λを使用して
得られた粉末X線回折(X−RPD)パターンによって、特徴付けられる。該X−RPD
パターンは、結晶性構造を示しており、そして、2θの値(°)として表記される、5.
8、6.5、8.1、9.5、10.9、11.5、12.2、13.0、14.1、1
4.8、16.8、17.2、19.0、19.4、20.1、21.9ならびに24.
0±0.2の特有な反射を含んでいる。
図1中に示される、該X−RPDパターンは、TOPASによって、斜方晶の単位格子
および可能性のある空間群P2で指数付けされる。Pawley refin
ementは、下記の格子パラメータにおいて、Rwp=7.065%まで収斂する:
a=18.693(4)Å、b=27.461(5)Å、c=8.587(1)Å、
α=β=γ=90°、 V=4408(1)Å、および
単位格子中、4分子の存在と整合する、空間群 P2
形態Hは、さらに、本質的に、図2中に示される、ATRモードにおける、4000〜
550cm−1のスペクトル範囲のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルによっ
ても、特徴付けることができる。該形態HのFTIRスペクトルは、3615、3449
、3060、2982、2939、2893、2836、1742、1711、1489
、1450、1390、1368、1315、1273、1263、1247、1172
、1098、1071,1027、989、947、919、883、832、802、
781、718、704、675ならびに637±4cm−1の特徴的な吸収波数を含ん
でいる。
形態Hは、さらに、図3中に示される、熱重量分析(TG)および示差熱分析(DTA
)特性によっても、特徴付けることができる。該DTA特性は、分解に因る、強い発熱性
ピークが続く、約184℃の立ち上がり、192.9℃の極大を有する溶融ピークによっ
て、特徴付けられる。
TG特性では、溶融するまで、質量損失は無いことは、残留溶媒を含まない、無水の生
成物であることと整合している。
形態Hは、さらに、図4中に示される、DSC特性によっても、特徴付けることができ
る。該DSC特性は、前記DTAシグナルと整合しており、そして、200℃を超えると
起こる分解が続く、187.4℃の立ち上がり、193.5℃の極大、ならびに、ΔH=
−41.03 J/gを示す溶融ピークによって、特徴付けられる、熱特性を示す。
本発明にかかる、カバジタキセルの結晶形態は、ここで、例えば、前記X−RPDディ
フラクトグラム、TG/DTA、DSC特性、FTIRスペクトル等の、本質的に図に示
されるグラフ表記データによって特徴付けられるものを指す際、当業者は、データのグラ
フ表示は、装置応答に影響を及ぼす実験的な変動、および/または、試料の濃度ならびに
純度が誘因となる、小さなバラツキにより影響を受けることがあることを理解できる。こ
れらのバラツキは、当業者にはよく知られており、そして、当業者が、ここに示される図
中のグラフ表記データを、未知の結晶形態において生成されたグラフ表記データと比較す
る際、ならびに、二組のグラフ表記データが、同一の結晶形態、あるいは二つの異なる結
晶形態を特徴付けているかを見極める際、これらのバラツキは、妨げとならない。
本発明にかかる、カバジタキセルの無水和物型の結晶形態Hは、例1あるいは例2中に
記載される通り、デカノイル トリグリセリドとオクタノイル トリグリセリドの混合物
、または、グリセロール トリオコタノアート中のカバジタキセルの溶液から出発して、
調製することができる。無水和物型形態Hの結晶の析出は、自然に起こり、そして、ヘプ
タン等の逆溶媒を添加することで、完結させることができる。得られた結晶は、その後、
濾過により回収し、新しい逆溶媒を用いて洗浄し、そして、乾燥する。
従って、本発明の更なる対象は、下記の工程を含む、カバジタキセルの無水和物型形態
Hを調製する方法である:
a)20〜25℃において、デカノイル トリグリセリドとオクタノイル トリグリセ
リドの混合物、または、グリセロール トリオコタノアート中に、カバジタキセルを溶解
する;
b)工程a)で得られた溶液を攪拌する、その際、生成物は結晶化を開始する;
c)工程b)で得られた縣濁液にヘプタンを添加する;
d)工程c)で得られた沈殿を濾別し、そして、乾燥することで、カバジタキセルの結
晶形態Hが与えられる。
例1、例2中に記載される通りに得られた際には、本発明の結晶性無水和物型の形態H
は、99%を超える純度で得られる。
例えば、付加的な結晶化を必要とせずに得られる高い純度、その他の結晶多形への変換
に対する安定性、より良好な取扱い性、ならびに、向上した加工性の観点で、既に開示さ
れているカバジタキセルの形態と比較した際、本発明の無水和物型の結晶形態には、幾つ
かの有利な性質が付与されている。
上述の利点の観点から、本発明のカバジタキセルの無水和物型の結晶形態Hは、カバジ
タキセル、カバジタキセルの塩、ならびに、それらの結晶多形の調製において、有用であ
る。
加えて、本発明の無水和物型の結晶形態Hは、とりわけ、腫瘍、特には、例えば、ホリ
モン抵抗性の前立腺癌等の前立腺癌の治療における、医薬として、特に有用である。
カバジタキセルの無水和物型の結晶形態Hの前記用途は、本発明の更なる対象を示して
いる。
治療用途では、本発明の無水和物型の結晶形態Hは、該医薬用途に適合する少なくとも
一つの賦形剤を含む従来型の医薬組成物中に組み込むことができ、それは、本発明の更な
る対象を示している。
粗製カバジタキセルを出発原料として使用している、以下の例によって、発明をさらに
説明する。
例1
粗製カバジタキセルのミグリオール (R) 812再結晶による、カバジタキセルの無
水和物型結晶形態Hの調製
粗製カバジタキセル(1g)を、室温で、ミグリオール(R) 812(28g)中に
溶解した。該溶液を、結晶化するまで放置し、その後、ヘプタン(112mL)を加えた
。沈殿物を濾別し、ヘプタンで洗浄し、そして、約60℃で、16時間、真空下で乾燥し
た、99%を超える純度を有するカバジタキセルが得られた。収率85%。
例2
粗製カバジタキセルのグリセロール トリオコタノアート再結晶による、カバジタキセ
ルの無水和物型結晶形態Hの調製
粗製カバジタキセル(1g)を、室温で、グリセロール トリオコタノアート(28g
)中に溶解した。該溶液を、結晶化するまで放置し、その後、ヘプタン(112mL)を
加えた。沈殿物を濾別し、ヘプタンで洗浄し、そして、約60℃で、16時間、真空下で
乾燥した。99%を超える純度を有するカバジタキセルが得られた。収率84%。
例3
下に述べる手法を用いて、例1〜2に基づいて得られた化合物の特性を調べた。
粉末X線回折(X−RPD)(図1)
Bruker D2−Phaser 回折装置により、X−RPD回折パターンを採取
した。X線発生器は、30kV、10mAで作動させ、CuKα線を照射源として使用し
た。試料を、適合するスリット上に挿入し、そして、照射距離は、10mmとした。2θ
2°〜50°の間、2θのステップ・サイズ 0.02°、各ステップ当たりの計数時
間 3秒間で、データを採った。
フーリエ変換赤外分光(FTIR)(図2)
Specac Golden Gate ATR付属品を付設した、フーリエ変換分光
計 Perkin Elmer Spectrum Oneを使用して、減衰全反射(A
TR)モードで、赤外スペクトルを記録した。該スペクトルは、4000〜550cm
のスペクトル範囲内で、4cm−1の分解能で採取された、16の同時に収録したスキ
ャンを、取り込みと変換を加えることで得られた結果である。
熱重量分析(TG)および示差熱分析(DTA)(図3)
開放アルミニウム皿(40μL 容)を使用する、Seiko TG/DTA7200
同時測定システムを採用して、分析を行った。200ml/分の窒素気流中で、線形な
温度上昇率(10℃/分)で、30℃〜300℃まで、TG/DT信号を記録した。測定
には、約10mgの粉末を、測定に使用した。
示差走査熱量測定(DSC)(図4)
Mettler DSC1 システムを利用して、分析を実施した。50ml/分の窒
素気流中で、線形な温度上昇率(10℃/分)で、30℃〜300℃まで、熱流を記録し
た。ピンホールを具えた、密閉アルミニウム・るつぼ(40μL 容)中、約5mgの粉
末を、測定に使用した。

Claims (4)

  1. 形態Hと称される、式(I)のカバジタキセルの無水和物型の結晶形態であって、
    Figure 2019055989
    該無水和物型の結晶形態は、下記の特徴の一つまたはそれ以上を具える:
    - 2θの値(°)として表記される、5.8、6.5、8.1、9.5、10.9、1
    1.5、12.2、13.0、14.1、14.8、16.8、17.2、19.0、1
    9.4、20.1、21.9ならびに24.0±0.2の特有な反射を含む、それぞれ、
    1.54056Åならびに1.54439ÅのCuKαの波長λと波長λを使用して
    得られたX−RPDパターン;
    - 本質的に、図1中に示される、それぞれ、1.54056Åならびに1.54439
    ÅのCuKαの波長λと波長λを使用して得られたX−RPDパターン;
    - 本質的に、図3中に示される、10℃/分の線形の加熱速度において得られたTG特
    性ならびにDTA特性;
    - 本質的に、図4中に示される、10℃/分の線形の加熱速度において得られたDSC
    特性;
    ことを特徴とする、カバジタキセルの結晶形。
  2. カバジタキセル、カバジタキセルの塩、ならびに、その結晶多形の調製において使用さ
    れる、
    ことを特徴とする、請求項1に記載のカバジタキセルの結晶形。
  3. その薬理学的用途に適合する少なくとも一つの賦形剤と混合された、請求項1に記載の
    無水和物型結晶形態Hを含む、医薬組成物。
  4. 請求項1に記載の無水和物型結晶形態Hを調製する方法であって、
    デカノイル トリグリセリドとオクタノイル トリグリセリドの混合物、または、グリ
    セロール トリオコタノアートからの、カバジタキセルの再結晶を含む
    ことを特徴とする、方法。
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