JP2019049658A - 光ファイバケーブル - Google Patents
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Abstract
【課題】短距離伝送において高品位の信号伝送を可能とする光ファイバケーブルを提供する。【解決手段】発光素子からの光ビームを受光素子に伝送することによる光通信に使用する光ファイバケーブルであって、発光素子側の端部である近位端と、受光素子側の端部である遠位端とを有し、遠位端側から発光素子側へ戻る光ビームのM2値が1.7以上であり、長さが100m以下である、光ファイバケーブル。【選択図】図2
Description
本発明は、光ファイバケーブルに関する。特に、本発明は、短距離伝送において高品位の信号伝送を可能とする光ファイバケーブルに関する。
従来、光ファイバは、中距離、長距離幹線系において、高速通信の長距離化を目的として開発、使用されてきた。
一方、主に家庭内等において100m以下の映像機器間の短距離通信を行うことを目的とする場合には、HDMIをはじめとする電気ケーブルが用いられてきた。
近年、実用放送が予定されている4K、8K映像などの大容量データ伝送では、電気ケーブルの伝送容量の不足、消費電力の増加、電磁ノイズの増大が大きな問題となってきている。そこで、大容量の通信信号を伝送可能な光ファイバを家庭内におけるコンシューマ用光通信をはじめとする短距離伝送に用いることが検討されてきている。
しかしながら、このような家庭内等の短距離の伝送に従来の光ファイバを用いると、長距離通信の場合にはほとんど考慮されていなかったノイズに関連する全く新たな課題が生じ、高品位の高速信号伝送が、このノイズの影響により困難になることが明らかとなった。
光通信システムに使用される半導体レーザモジュールには、光ファイバからの反射戻り光を減衰させて、反射戻り光によるノイズが発生しにくいようにするために、光アイソレータを採用しているものもある。
特開2003−014992号公報には、光アイソレータを採用する半導体レーザモジュールにおいて、出射される光の偏波面と一致するように偏光子を設置して、偏光子と光アイソレータの両方によって反射戻り光を減衰させる技術が開示されている。
しかしながら、従来の技術は、光アイソレータや偏光子などのデバイスを追加することによって光ファイバからの戻り光の影響を低減させようとするものであり、光ファイバケーブルそのものの特性によって戻り光に起因する問題を解決しようとする試みは、なされていなかった。
本発明は、短距離伝送において高品位の信号伝送を可能とする光ファイバケーブルを提供するものである。
本発明者等は、短距離通信用の光リンクにおいて、遠方からの戻り光が発光素子を不安定化させることによる信号伝送に及ぼす影響に着目した。
図1に、本発明の光ファイバケーブルが使用される短距離通信用光リンクの模式的概念図を示す。遠方からの戻り光とは、VCSEL(垂直共振器面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting laser)などの発光素子から出射され、発光素子側の光ファイバの端部である近位端(端部A)から入射して光ファイバ内を伝搬した光のうち、受光素子側の光ファイバの端部である遠位端(端部B)側(端部B、受光素子(PD)、あるいはコネクタ等)で反射されて、再び発光素子側に戻る光のことである。発光素子側に戻る光としては、発光素子近傍(端部A等)からの戻り光も考えられるが、このような近傍からの戻り光は、発光素子を不安定化させる原因になるものではないと考えられる。
本発明者等は、鋭意研究した末に、遠方からの戻り光が引き起こす、発光素子の緩和周波数よりも低周波の揺らぎが、特に短距離伝送における伝送品質の劣化の主たる原因であるとの知見を得た。
本発明者等はまた、遠方からの戻り光を低減させることのできる光ファイバケーブルの特性を表す因子として、光ビームの品質を表すパラメータとして従来使用されているM2値に着目した。
M2値とは、ガウシアンビーム(TEM00モード)を基準として、波長λと、2次モーメントを用いて定義されるビーム半径W(D4σ)と、ビームの広がり角θ(半角)とを用いて、次式(1)のように表される、光ビームの集光度に関する品質を示すパラメータである:
ここで、ビーム半径W(D4σ)は、出射されるレーザ光の近視野像(Near Field Pattern (NFP))から求めることができ、広がり角θ(半角)は、レーザ光の遠視野像(Far Field Pattern (FFP))から求めることができる。理想的なガウシアンビームでは、M2値は1になる。
光ファイバから出射されるレーザ光の場合、そのM2値は伝搬モードに依存する。シングルモード光ファイバでは、伝搬可能な導波モードは一つ(HE11モード)であるため、光散乱等により長さによってM2値が変化することはない。一方、伝搬モードが複数存在するマルチモード光ファイバでは、出射光のM2値は異なるM2値のモードの重ね合わせとなり、光散乱に起因するモード結合により高次モード成分が多くなる(集光性が悪くなる)ほどM2値が大きくなり、ビーム品質が悪くなる。その結果、放射損失が大きくなることに加えて、光ファイバからの出射光のすべてを受光できなくなることから、光信号の伝送品質が低下することになる。このため、マルチモード光ファイバから出射されるレーザ光のM2値を小さくしておくことが、光信号の伝送品質の維持に重要であると考えられていた。
本発明者等は、従来レーザビームの品質を表すパラメータとして用いられてきたM2値を、マルチモード光ファイバの設計値として使用することについて鋭意研究した結果、特に短距離通信の場合には、M2値が特定の値に制御されるような光ファイバケーブルを使用することで、遠方からの戻り光の影響を低減することができるとの知見を得た。
いかなる理論にも拘束されるものではないが、光ファイバが数100オングストローム程度の相関長のミクロな不均一構造を有している場合、前方性散乱によるモード結合を大きくすることが可能となり、伝搬損失を制御しながら光ファイバから出射される光のM2値を効果的に制御することが可能であると考えられる。M2値が特定の値に制御されるような光ファイバケーブルを使用することにより、モード結合による高次モードの増加に伴って生じる伝送損失よりも、遠方からの反射戻り光の影響が減少することによるノイズの低減の方が優勢となり、伝送品質が向上するものと考えられる。
すなわち、本発明は、発光素子からの光ビームを受光素子に伝送することによる光通信に使用する光ファイバケーブルであって、発光素子側の端部である近位端と、受光素子側の端部である遠位端とを有し、遠位端側から発光素子側へ戻る光ビームのM2値が1.7以上であり、長さが100m以下であることを特徴とする、光ファイバケーブルである。
本発明の光ファイバケーブルにおいて、光ビームのM2値は5.0以下であるのが好ましい。
本発明の光ファイバケーブルは、屈折率分布(GI)型であってよい。
本発明の光ファイバケーブルはまた、プラスチック光ファイバ(POF)であってよい。
この場合、プラスチック光ファイバ(POF)のコア材料は、全フッ素系、部分フッ素系、又は部分塩素系、部分重水素化系の材料であるのが好ましい。
また、この場合、コア材料がドーパントを含むものとすることができる。
本発明によれば、特に短距離伝送において、高品位の信号伝送が可能となる。
プラスチック光ファイバ(POF)は、コアとクラッドがいずれもプラスチックを材料とする光ファイバで、石英系光ファイバに対し、フレキシブルで曲げに強く、大口径で簡易接続が可能ということを最大の特徴としている。また、コアの屈折率が均一なSI型とコアに屈折率分布を有するGI型とに分類されるが、SI型では光の経路(モード)によって伝搬時間が異なるため信号パルスが広がり高速通信には不向きであるのに対して、GI型は屈折率分布によって伝搬時間差が大幅に低減されるためギガビットをはるかに超える高速通信が可能である。
本発明の光ファイバケーブルは、遠方からの戻り光のM2値が1.7以上となるものである。
図2は、直線偏光の近似的なガウシアンビームによる中心励振において、本発明の一実施形態であるマルチモード光ファイバと、従来のマルチモード光ファイバとのM2値を評価した値を対比して示したものである。入射光源は偏波保持シングルモード光ファイバ(SMF)ピグテール出力の直線偏波単一周波数レーザ(Thorlabs製,DBR852P)である。このファイバピグテールからの出射光をレンズによりコリメート、集光し、図2に示すように、評価ファイバ中心に入射した。当実験系により、入射時に励振されるガウシアンビームに近似可能な最低次モードから、光散乱を介したモード結合によるM2値の変化の推移を測定することが可能となり、本発明の雑音低減効果を表す指標とすることが可能となる。また、ピグテールの出射端面がAPCであるのはレーザを不安定化させないためであり、安定したM2値の測定が可能となる。横軸は光ファイバの長さ、縦軸はM2値を示す。
従来の光ファイバでは、光ファイバの長さによらず、M2値はM2=1.3−1.5付近でほぼ一定の値を示している。一方、本発明の光ファイバの場合、M2=1.7以上であって、光ファイバの長さが大きくなるにしたがって、M2値も大きくなっていることがわかる。
従来は、主にレーザ加工の分野において長さに依存せず安定で高品質な出射光ビームを得る等の観点から、M2値が小さく、しかも光ファイバの長さが大きくなってもM2値は大きくならない光ファイバが望ましいと考えられていた。マルチモード光ファイバを用いた光通信用においても、当然、M2値が大きくなると伝送損失が大きくなるため、同様の特性が求められる。本発明者等は、驚くべきことに、マルチモード光ファイバを用いた短距離伝送の場合、むしろM2値が比較的大きい場合に、伝送損失よりも遠方からの反射戻り光の影響が減少することにより、伝送品質が向上することを見出したものである。
M2値の大きさは、光ファイバのコアを構成する材料の種類、コア屈折率分布及び光ファイバの製造条件により、制御することができる。また、使用するレーザのレーザ径や入射条件にも依存するが、上記実験系および評価条件に従って測定されたファイバ出射光のM2値を基準とすることにより、ミクロ不均一構造によるM2値の評価および制御を再現性良く行うことが可能となる。M2値の変動要因になるうるものは、基本的には光学系にはなく、レーザ径が変化すると発散角が狭くなり、その積は保存されるので、M2値には影響を与えない。そのため、M2値の変動要因になり得るものは波長のみと考えられる。
本発明の光ファイバケーブルは、光ファイバを実用的に使用できる長さの下限長において、遠方からの戻り光のM2値が1.7以上となるものである。M2値が1.7よりも小さいと、反射戻り光による影響により伝送品質が低下するため好ましくない。
本発明の光ファイバケーブルはまた、その長さが100m以下であるところ、光ファイバを使用する長さの上限長において、遠方からの戻り光のM2値が5.0以下であることが好ましい。M2値が5.0よりも大きいと、高次モードの増加によって生じる伝送損失が大きくなるため好ましくない。
本発明の光ファイバケーブルの長さは、100m以下である。長さが100mを超えると、前方散乱による散乱損失の影響が戻り光の低減効果よりも大きくなってしまい、かえって伝送品質が低下する。
上記のとおり、本発明の光ファイバケーブルのM2値は、コア材料の種類や光ファイバの製造条件により得ることができる。
M2値を大きくするには、例えば、光ファイバのコア内に数100オングストローム程度の相関長のミクロな不均一構造を有するようなものとすることが考えられる。これにより、石英系ガラス系の光ファイバで観測されるいわゆるレイリー散乱とは異なる前方性散乱を大きくすることが可能となる。その結果、伝搬損失を制御しながら、有効なモード結合を誘起してノイズを低減することができる。
例えば、アクリル系ポリマーは、分子内に存在するエステル基により分子内および分子間での相互作用が存在する。これに対して、ジオキソレン等の全フッ素化ポリマーは、そのようなエステル基が存在しない。このため、分子内、分子間相互作用は、アクリル系ポリマーに比べて小さい。この違いにより、高分子鎖自身のコンフォメーションが変化し、不均一構造の大きさならびに屈折率揺らぎを制御することができる。いずれにしても、ポリマーは一般に数百オングストロームの大きさの慣性半径を持つ分子コイルの集合体であるが、そのような分子を持たない石英ガラスには、ミクロな不均一構造は存在しない。
本発明の光ファイバケーブルのコア材料として含フッ素重合体(全フッ素、部分フッ素材料を含む)を使用する場合、次のような方法により合成することができる。
[合成例A] 全フッ素系材料の合成方法
全フッ素材料としては、一般的に製品名TEFRON-AF(DuPont社)やHyflonAD(Solvay社)や、CYTOP(旭硝子株式会社)を用いる事ができる。またこれらの主環構造にテトラフルオロエチレン等で共重合した全フッ素重合体を用いてもよい。またジオキソレン骨格を有する全フッ素重合体も用いる事ができる。次にジオキソレン骨格を有する全フッ素材料の合成方法について述べる。
[合成例A] 全フッ素系材料の合成方法
全フッ素材料としては、一般的に製品名TEFRON-AF(DuPont社)やHyflonAD(Solvay社)や、CYTOP(旭硝子株式会社)を用いる事ができる。またこれらの主環構造にテトラフルオロエチレン等で共重合した全フッ素重合体を用いてもよい。またジオキソレン骨格を有する全フッ素重合体も用いる事ができる。次にジオキソレン骨格を有する全フッ素材料の合成方法について述べる。
本発明の光ファイバのコア部及びクラッド部を構成する重合体は、当該分野で公知の方法によって製造することができる。例えば、重合体を構成するモノマーの混合物を、溶液重合、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合等に付す方法などが挙げられる。なかでも、異物、不純物の混入を防ぐという観点から、塊状重合法が好ましい。
この際の重合温度は、特に限定されず、例えば、80〜150℃程度が適している。反応時間は、モノマーの量、種類、後述する重合開始剤、連鎖移動剤等の量、反応温度等に応じて適宜調整することができ、20〜60時間程度が適している。これらの重合体は、後述するコア部及び/又はクラッド部を成形する際に、同時に又は連続して製造してもよい。
コア部を構成する重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系化合物として、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル等;スチレン系化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等;ビニルエステル類として、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等;マレイミド類として、N―n−ブチルマレイミド、N―tert−ブチルマレイミド、N―イソプロピルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド等、これらモノマーのC-H結合の水素原子の一部が塩素置換、フッ素置換、重水素置換された物質が例示される。
重合体を製造する際、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤を使用することが好ましい。重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤が挙げられる。例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n−ブチル4,4,ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレートなどのパーオキサイド系化合物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'―アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2'−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3'−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3'−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−t−ブチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤は、全モノマーに対して0.01〜2重量%程度で用いることが適している。連鎖移動剤としては、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる。例えば、アルキルメルカプタン類(n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)等が挙げられる。なかでも、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが好適に用いられる。また、C−H結合の水素原子が重水素原子又はフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いてもよい。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
連鎖移動剤は、通常、成形上及び物性上、適当な分子量に調整するために用いられる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUP及びE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)「高分子合成の実験法」(大津隆行、木下雅悦共著、化学同人、昭和47年刊)等を参考にして、実験によって求めることができる。よって、連鎖移動定数を考慮して、モノマーの種類等に応じて、適宜、その種類及び添加量を調整することが好ましい。例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.1〜4重量部程度が挙げられる。
コア部及び/又はクラッド部を構成する重合体は、重量平均分子量が、5〜30万程度の範囲のものが適しており、10〜25万程度のものが好ましい。適当な可撓性、透明性等を確保するためである。コア部とクラッド部とにおいては、例えば、粘度調整等のために、分子量が異なっていてもよい。重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定されたポリスチレン換算の値を指す。
本発明の光ファイバを構成する重合体には、光ファイバとしての透明性、耐熱性等の性能を損なわない範囲で、必要に応じて、配合剤、例えば、熱安定化助剤、加工助剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤等を配合してもよい。これらは、それぞれ、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、これらの配合物とモノマー又は重合体とを混合する方法は、例えば、ホットブレンド法、コールドブレンド法、溶液混合法等が挙げられる。
<パーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランの合成>
2−クロロ−1−プロパノールと1−クロロ−2−プロパノールとトリフルオロピルビン酸メチルを脱水縮合反応により2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソランの精製物を得た。次にパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランのフッ素化を行う。溶媒として1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンを用い、窒素ガス及び、フッ素ガスを各々一定の流速で流し、窒素/フッ素の雰囲気下において、先に準備した2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソランを反応槽にゆっくり加えることによりフッ素化処理を行いパーフルオロ−2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−カルボン酸を得た。上記蒸留物を水酸化カリウム水溶液で中和し、パーフルオロ−2,4−ジメチル−2−カルボン酸カリウム−1,3−ジオキソランを得た。このカリウム塩を真空乾燥し、更にアルゴン雰囲気下で、塩を分解することで、パーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランを得た。上記にて得られたパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランとパーフルオロベンゾイルパーオキサイドをガラスチューブにいれ、これを冷凍/解凍真空機で脱気した後、アルゴンを再充填し、数時間加熱した。内容物は固体となり、透明なポリマーが得られた。このポリマーを用いて光ファイバを作製した。
2−クロロ−1−プロパノールと1−クロロ−2−プロパノールとトリフルオロピルビン酸メチルを脱水縮合反応により2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソランの精製物を得た。次にパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランのフッ素化を行う。溶媒として1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンを用い、窒素ガス及び、フッ素ガスを各々一定の流速で流し、窒素/フッ素の雰囲気下において、先に準備した2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソランを反応槽にゆっくり加えることによりフッ素化処理を行いパーフルオロ−2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−カルボン酸を得た。上記蒸留物を水酸化カリウム水溶液で中和し、パーフルオロ−2,4−ジメチル−2−カルボン酸カリウム−1,3−ジオキソランを得た。このカリウム塩を真空乾燥し、更にアルゴン雰囲気下で、塩を分解することで、パーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランを得た。上記にて得られたパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランとパーフルオロベンゾイルパーオキサイドをガラスチューブにいれ、これを冷凍/解凍真空機で脱気した後、アルゴンを再充填し、数時間加熱した。内容物は固体となり、透明なポリマーが得られた。このポリマーを用いて光ファイバを作製した。
含フッ素重合体(全フッ素、部分フッ素材料を含む)の溶融状態における粘度は、溶融温度200℃〜300℃において103〜105ポイズが好ましい。溶融粘度が高過ぎると溶融紡糸が困難なばかりでなく、屈折率分布の形成に必要な、ドーバントの拡散が起こりにくくなり屈折率分布の形成が困難になる。また、溶融粘度が低過ぎると実用上問題が生じる。すなわち、電子機器や自動車等での光伝送体として用いられる場合に高温にさらされ軟化し、光の伝送性能が低下する。
含フッ素重合体の数平均分子量は、10,000〜5000,000が好ましく、より好ましくは50,000〜1000,000である。分子量が小さ過ぎると耐熱性を阻害することがあり、大き過ぎると屈折率分布を有する光伝送体の形成が困難になるため好ましくない。
本発明の光ファイバケーブルのコア材料として部分塩素系材料を使用する場合、上述した、一般的作成方法である全フッ素材料の合成方法と同様の方法により合成することができる。
[合成例B] 部分塩素材料の合成(特許第5419815号参照)
次に部分塩素系材料の作成方法について、簡単に述べる。予め蒸留精製したトリクロロエチルメタクリレートと昇華精製したシクロヘキシルマレイミドと屈折率付与剤のドーパントとしてジフェニルスルフィドを各々精秤し、ガラス容器に入れた。更に、全重量中の濃度に対し所定量の重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド及び連鎖移動剤としてノルマル-ラウリルメルカブタンを添加した。この溶液を十分混合後、細孔径のメンブレンフィルタを通すことによりガラス製重合容器に入れ濾過を行った。次にこの溶液の入ったガラス製重合管にアルゴンガスを導入しながら、凍結脱気法により溶存空気を除去した。このガラス重合管をオーブンに入れアルゴンガスを導入しながら重合容器の温度を上げ、モノマーを重合し、更に温度をあげることで重合反応を完了させた。このガラス管を開封し、固化した透明な重合ロッドを得た。
次に部分塩素系材料の作成方法について、簡単に述べる。予め蒸留精製したトリクロロエチルメタクリレートと昇華精製したシクロヘキシルマレイミドと屈折率付与剤のドーパントとしてジフェニルスルフィドを各々精秤し、ガラス容器に入れた。更に、全重量中の濃度に対し所定量の重合開始剤としてジターシャリーブチルパーオキサイド及び連鎖移動剤としてノルマル-ラウリルメルカブタンを添加した。この溶液を十分混合後、細孔径のメンブレンフィルタを通すことによりガラス製重合容器に入れ濾過を行った。次にこの溶液の入ったガラス製重合管にアルゴンガスを導入しながら、凍結脱気法により溶存空気を除去した。このガラス重合管をオーブンに入れアルゴンガスを導入しながら重合容器の温度を上げ、モノマーを重合し、更に温度をあげることで重合反応を完了させた。このガラス管を開封し、固化した透明な重合ロッドを得た。
ドーパントの溶解性パラメータがポリマーの溶解性パラメータと等しく相溶性が良い場合には、ドーパントはポリマーマトリクス内に均一に存在する。一方、ドーパントとポリマーの溶解性パラメータの差が大きくなるにつれ、ドーパント同士が凝集しあう傾向が増加し、ドーパントの濃度分布による屈折率不均一構造が形成される。一般的な溶解性パラメータの知見にとどまらず、ドーパントとポリマーとの局所的相互作用(例えば、特定の官能基間に相当するセカンダリーな電子分極等)を加えることによってもドーパントのミクロな濃度分布を形成することが可能となる。全フッ素系のコア材料向けのドーパントとしては通常は全フッ素重合体よりも高屈折率の物質を用いる。すなわち、物質ドーパントは、全フッ素重合と同様な理由から実質的にC−H結合を有しない物質であり、全フッ素重合体より屈折率が0.05以上大きいことがより好ましい。より屈折率が大きいと所望の屈折率分布を形成するために必要なドーパントの含有量がより少なくて良いため、ガラス転移温度の低下が少なくてすみ、その結果、光ファイバの耐熱性が高まるので、0.1以上大きいことが特に好ましい。
ドーパントとしては、ベンゼン環等の芳香族環、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、エーテル結合等の結合基を含む、低分子化合物、オリゴマ、ポリマーが好ましいが、ポリマーの場合、分子量が大きくなると全フッ素重合体との相溶性が低下し、その結果光散乱損失が大きくなるため、あまり分子量が大きいものは好ましくない。また、逆に分子量の小さな化合物の場合、含フッ素重合体との混合物におけるガラス転移温度が低くなり光ファイバの耐熱温度が低下する原因となるため、小さすぎても好ましくない。ゆえに、ドーパントの数平均分子量は3×102〜2×103が好ましく、3×102〜1×103がより好ましい。
ドーパントの具体的な化合物としては、特開平8−5848号公報に記載されるようなクロロトリフルオロエチレンの5〜8量体であるオリゴマ、ジクロロジフルオロエチレンの5〜8量体であるオリゴマ、または前記全フッ素重合体を形成する単量体の内高い屈折率のオリゴマを与える単量体(例えば塩素原子を有する単量体)を重合することによって得られる2〜5量体オリゴマがある。
上記オリゴマのような含ハロゲン脂肪族化合物以外に、炭素原子に結合した水素原子を含まないハロゲン化芳香族炭化水素や含ハロゲン多環式化合物なども使用できる。特に、ハロゲン原子としてフッ素原子のみを含む(またはフッ素原子と相対的に少数の塩素原子を含む)フッ化芳香族炭化水素や含フッ素多環式化合物が、含フッ素重合体との相溶性の面で好ましい。また、これらのハロゲン化芳香族炭化水素や含ハロゲン多環式化合物は、カルボニル基、シアノ基などの極性のある官能基を有していないことがより好ましい。
このようなハロゲン化芳香族炭化水素としては、例えば式Φr−Zb[Φrは水素原子のすべてがフッ素原子に置換されたb価のフッ素化芳香環残基、Zはフッ素以外のハロゲン原子、−Rf、−CO−Rf、−O−Rf、あるいは−CN。ただし、Rfはペルフルオロアルキル基、ポリフルオロペルハロアルキル基、または1価のΦr。bは0または1以上の整数。]で表される化合物がある。芳香環としてはベンゼン環やナフタレン環がある。Rfであるペルフルオロアルキル基やポリフルオロペルハロアルキル基の炭素数は5以下が好ましい。フッ素以外のハロゲン原子としては、塩素原子や臭素原子が好ましい。具体的な化合物としては例えば、1,3−ジブロモテトラフルオロベンゼン、1,4−ジブロモテトラフルオロベンゼン、2−ブロモテトラフルオロベンゾトリフルオライド、クロペンタフルオロベンゼン、ブロモペンタフルオロベンゼン、ヨードペンタフルオロベンゼン、デカフルオロベンゾフェノン、ペルフルオロアセトフェノン、ペルフルオロビフェニル、クロロヘプタフルオロナフタレン、ブロモヘプタフルオロナフタレンなどがある。含フッ素多環式化合物の例として特に好ましいドーパントは、全フッ素重合体、特に主鎖に環構造を有する含フッ素重合体との相溶性が良好であり、かつ耐熱性が良好であること等から、クロロトリフルオロエチレンオリゴマ、ペルフルオロ(トリフェニルトリアジン)、ペルフルオロターフェニル、ペルフルオロクアトロフェニル、ペルフルオロ(トリフェニルベンゼン)、ペルフルオロアントラセンである。相溶性が良好であることにより、含フッ素重合体、特に主鎖に環構造を有する含フッ素重合体と混合すべき物質とを200〜300℃で加熱溶融により容易に混合させることができる。また、含フッ素溶媒に溶解させて混合した後、溶媒を除去することにより両者を均一に混合させることができる。
部分塩素系、又は部分フッ素系のコア材料に用いるドーパントとしては、(低分子化合物又はこれら化合物中に存在する水素原子を重水素原子に置換した化合物等が挙げられる。高い屈折率をもつ低分子化合物としては、ジフェニルスルホン(DPSO)及びジフェニルスルホン誘導体(例えば、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、3,3',4,4'−テトラクロロジフェニルスルホン等の塩化ジフェニルスルホン)、ジフェニルスルフィド(DPS)、ジフェニルスルホキシド、ジベンゾチオフェン、ジチアン誘導体等の硫黄化合物;トリフェニルホスフェート(TPP)、リン酸トリクレジル等のリン酸化合物;安息香酸ベンジル;フタル酸ベンジルn−ブチル;フタル酸ジフェニル;ビフェニル;ジフェニルメタン等が挙げられる。低い屈折率をもつ低分子化合物としては、トリス−2−エチルヘキシルホスフェート(TOP)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。)
光ファイバケーブルのM2値が好ましい値となるように、ミクロな不均一構造を作りやすくするために、光ファイバを紡糸する際の温度や引き出し速度を制御しても良い。含フッ素重合体を用いた光ファイバの一般的な作成方法としてはプリフォーム法及び溶融押出法が良く知られている。プリフォーム法は予めコアとクラッドのロッドと呼ばれる棒状のプラスチック成型体を作成する。このコアロッドを中心に配置し、クラッドロッドは中空部を有し、コアの外周部に覆われるように一体化しプリフォームと呼ばれる棒状物を作成する。このプリフォームを一般的な紡糸装置にセットし、プリフォーム外周部を筒状のヒータ-等で均一に加熱溶融させ、先端部分を一定速度で引取延伸しファイバ状にし、冷却巻き取ることで光ファイバを得る方法である。
一方溶融押出法は、ドーパントが予め所定量混合されたポリマーをコア用ポリマーとし、ドーパントを含まないポリマーをクラッドポリマーとして一般的な溶融押出装置に充填し、二つの押出機により溶融ポリマーを合流させ共押出することで、ノズルから両ポリマーを吐出させて光ファイバ-を得る方法である。一般的にはスクリュウーを有する押出機を使用してもよいが、窒素ガス等の圧力で溶融押出してもよい。また、必要に応じて被覆層を設けることもできる。
溶融コアポリマーと溶融クラッドポリマーを共押出しした後の熱処理工程により、ミクロ不均一構造を形成することも可能となる。例えば、共押出の後急冷を行うと、ポリマーのエンタルピー緩和が生じる前にポリマーは大きな体積を持ったままガラス状態化される。一方、十分な熱処理工程をガラス転移温度近辺で行うと、エンタルピー緩和により体積はわずかに減少する。そのエンタルピー緩和がミクロ領域で形成された場合、いわゆるミクロ不均一構造を形成し、M2値を増大させる。また、共押出の後さらに延伸工程を加えると、溶融押出されたファイバの分子は配向を受けその配向度により配向複屈折が生じる。その配向複屈折は、ファイバ軸方向のみならず、結果的に半径方向ならびに特異な方向においても複屈折を生じることになる。この複屈折構造もモード結合を促進し、結果的にM2値を増大させる。
本発明の光ファイバを製造する方法としては、当該分野で公知の方法を利用することができる。例えば、1層又は2層以上のコア部の外周に1層又は2層以上のクラッド部を形成するために、界面ゲル重合法、回転重合、溶融押出ドーパント拡散法、複合溶融紡糸及びロッドインチューブ法等を利用することができる。また、予めプリフォームを形成し、延伸、線引き等を行ってもよい。
具体的には、中空状のクラッド部を作製し、このクラッド部の中空部にコア部を作製する方法が挙げられる。この場合、コア部を構成するモノマーをクラッド部の中空部に導入し、クラッド部を回転させながら重合体を重合して、クラッド部より高い屈折率を有するコア部を形成する。この操作を1回のみ行って、1層のコア部を形成してもよいし、この操作を繰り返すことにより、複数層からなるコア部を形成してもよい。
用いる重合容器は、ガラス、プラスチック又は金属性の円筒管形状の容器(チューブ)で、回転による遠心力などの外力に耐え得る機械的強度及び加熱重合時の耐熱性を有するものが利用できる。重合時の重合容器の回転速度は、500〜3000rpm程度が例示される。通常、モノマーをフィルターにより濾過して、モノマー中に含まれる塵埃を除去してから、重合容器内に導入することが好ましい。
さらに、2台以上の溶融押出機と2層以上の多層ダイ及び多層用紡糸ノズルを用いて、コア部及びクラッド部を形成する方法であってもよい。つまり、コア部及びクラッド部を構成する重合体等を、それぞれ加熱溶融させ、個々の流路から多層ダイ及び多層用紡糸ノズルへ注入する。このダイ及びノズルでコア部を押出成形すると同時に、その外周に1層又は2層以上の同心円状のクラッド部を押出し、溶着一体化させることでファイバ又はプリフォームを形成することができる。
なお、光ファイバにおいてGI型の屈折率分布をつけるには、例えば、WO93/08488号に記載されたように、モノマー組成比を一定にして、ドーパントを加えて、重合体の界面でモノマーを塊状重合させ、その反応によってドーパントの濃度分布を付与する界面ゲル重合又はその界面ゲル重合の反応機構を回転重合法で行う回転ゲル重合法及び屈折率の異なるモノマー仕込み組成比率を漸進的に変化させ、つまり、前層の重合率を制御(重合率を低く)し、より高屈折率になる次層を重合し、クラッド部との界面から中心部まで、屈折率分布が漸進的に増加するように、回転重合を行うなどの方法が例示される。
また、2台以上の溶融押出機と2層以上の多層ダイ及び多層用紡糸ノズルを用いて、コア部及びクラッド部を形成した後、引続いて設けられた熱処理ゾーンでドーパントを周辺部又は中心部に向かって拡散させ、ドーパントの濃度分布を付与する溶融押出ドーパント拡散法、2台以上の溶融押出機にそれぞれドーパント量を変えた重合体等を導入して、多層構造でコア部及び/又はクラッド部を押出成形する方法などが例示される。
SI型の屈折率分布をつける場合には、モノマー組成比及び/又はドーパントの添加量を最初から最後まで一定にして回転重合等を行うことが適している。マルチステップ型の屈折率分布を付与する場合には、回転重合等において、前層の重合率を制御(重合率を高く)し、より高屈折率になる次層を重合することが好ましい。
[作製例]
上記合成した重合ロッドを用いてGI−POFの作製(装置は特許第5514802号参照)を行った。本作成は、溶融押出ドーパント拡散法により光ファイバを得る方法である。上記合成例で作成した重合ロッドを溶融押出装置の中心のコアの場所に充填した。また予め被覆層には乾燥したPMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)をクラッドの押出機のホッパーに充填した。同様に最外層となる被覆層には乾燥したPC樹脂(ポリカーボネート樹脂)をオーバークラッドの押出機のホッパーに充填した。この押出装置のコア部、クラッド部、オーバークラッド部に充填されたポリマーを加熱した。コア部上端面に窒素ガス圧をかけ、また、クラッド及びオーバークラッドに充填させた樹脂はスクリュー押出機により3種のポリマーを共押出しすることによりノズルから吐出させた。こうして3層構造になるように溶融押出紡糸処理を行いGI-POFを得た。
上記合成した重合ロッドを用いてGI−POFの作製(装置は特許第5514802号参照)を行った。本作成は、溶融押出ドーパント拡散法により光ファイバを得る方法である。上記合成例で作成した重合ロッドを溶融押出装置の中心のコアの場所に充填した。また予め被覆層には乾燥したPMMA樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)をクラッドの押出機のホッパーに充填した。同様に最外層となる被覆層には乾燥したPC樹脂(ポリカーボネート樹脂)をオーバークラッドの押出機のホッパーに充填した。この押出装置のコア部、クラッド部、オーバークラッド部に充填されたポリマーを加熱した。コア部上端面に窒素ガス圧をかけ、また、クラッド及びオーバークラッドに充填させた樹脂はスクリュー押出機により3種のポリマーを共押出しすることによりノズルから吐出させた。こうして3層構造になるように溶融押出紡糸処理を行いGI-POFを得た。
本発明の光ファイバのクラッド材料にはコアと同じ材料を用いることが好ましいが、異なる材料を用いても良い。
本発明の光ファイバにおいては、外層(クラッド層)のさらに外側に保護被覆層を設けてもよい。この保護被覆層の材料としては、合成樹脂であれば特に限定されず、含フッ素重合体以外の材料である熱可塑性樹脂や硬化性樹脂の硬化物などを用いることができる。そのうちでも従来から光ファイバの保護被覆層として使用されているまたは使用が提案されているような合成樹脂が好ましい。保護被覆層の役割として機械的強度を高めることが要求される場合にはある程度以上の厚みの層が必要であり、また、引張強度や弾性率が高い合成樹脂を用いることが好ましい。保護被覆層の材料としては熱可塑性樹脂が好ましく、そのうちでも特にアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂が好ましい。また、この保護被覆層は2層以上の多層でもよく、このうち1層は塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂などの比較的軟質な熱可塑性樹脂であってもよい。
発光素子としては、ギガビットオーダーの伝送が可能である、VCSELや端面発光レーザ等が用いられる。このようなレーザでは常に反射戻り光の問題が存在する。
レーザの波長や伝送速度に対応させて、主にGaAs PIN PD等が用いられる。一般的にARコートがPD上に塗布されるが、PDによる反射を完全に0とすることはできず、これがレーザを不安定化させる一因となる。
ビット誤り率(BER)はデジタル通信システムにおける、伝送信号の総ビット数に対するビット誤り数であり、一般的に伝送システムの品質を表す指標として用いられている。信号レベルの低下あるいは雑音レベルの増加により、伝送品質が劣化し、BERは大きくなる。雑音が存在している場合でも、BERの値が低ければ、問題なく伝送ができるということを示しており、実施例では、本発明の光ファイバケーブルの品質をBERにより評価することが重要である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[合成例1] 部分フッ素系材料を用いたPOF材料の合成方法
コアロッドと中空構造のクラッドロッドを別々に作製し、次にコアロッドの外周部に中空クラッドロッドを挿入しプリフォームを作成した。
[合成例1] 部分フッ素系材料を用いたPOF材料の合成方法
コアロッドと中空構造のクラッドロッドを別々に作製し、次にコアロッドの外周部に中空クラッドロッドを挿入しプリフォームを作成した。
コアロッドの作製は、まずモノマー材料として、メチルメタクリレートの部分フッ素誘導体であるα-フルオロアクリル酸ヘキサフルオロイソプロピルを用いた。この材料は常温で液体でありこれを内径5cm長さ7cmのバイアル管内に約10g充填した。さらにドーパントと重合開始剤及び連鎖移動剤をそれぞれ所要量添加した。添加量としては順に、8.0mol%,0.1mol%,0.1mol%とした。ドーパントとして用いたのは、デカフルオロビフェニルである。重合開始剤としては、ターシャリーブチル‐パーオキシ‐2‐エチルヘキサノネート、連鎖移動剤としては、ブチルメルカプタンを用いた。こうして用意された溶液を十分撹拌し、内径1cm、長さ30cmのアンプル管に移した。そして、このアンプル管ごと凍結脱気処理装置にかけ、溶存酸素を取り除いた。次いで、このアンプル管の上端部を減圧状態のまま封管した。これを60℃のオイルバスで24hr浴し、次に80℃で24hr、最終的には120℃で24hrの重合反応を行った。次にアンプル管を開封し固化したサンプルを取り出した。これをコア用ロッドとした。
次にクラッド用中空管を作製した。すなわち、市販のアクリル樹脂(MAA樹脂)を用いて周知の方法により、外径2.2cm、内径1.1cm、長さ60cmのPMMA製中空管を作製した。
先に作製したコア用ロッドとこの中空管を同じ長さ(ここでは約20cm)に切りそろえた。そして、コア用ロッドを中空管内に挿入させて、両端にフッ素樹脂の蓋を被せた。さらに全体を熱収縮チューブで覆い、これを160℃のオーブンで二日間加熱した。加熱終了後熱収縮チューブを取り除きプリフォームとした。
[合成例2] 全フッ素系材料の合成方法
2−クロロ−1−プロパノールと1−クロロ−2−プロパノールとトリフルオロピルビン酸メチルの混合物139gをフラスコに入れ、その中にトリフルオロピルビン酸メチルを入れ脱水縮合反応により2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソランの精製物230gを得た。次にパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランのフッ素化を行った。溶媒として1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンを用い、窒素ガスを1340cc/min、フッ素ガスを580 cc/minの一定の流速で流し、窒素/フッ素の雰囲気下において、先に準備した2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン230gを反応槽にゆっくり加えることによりフッ素化処理を行いパーフルオロ−2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−カルボン酸を約150g得た。この工程による、フッ素化収率は約85%であった。これを水酸化カリウム水溶液で中和することで、パーフルオロ−2,4−ジメチル−2−カルボン酸カリウム−1,3−ジオキソランを得た。このカリウム塩を真空乾燥し、更にアルゴン雰囲気下で、塩を分解することで、パーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランを得た。上記にて得られたパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランとパーフルオロベンゾイルパーオキサイドをガラスチューブにいれ、これを冷凍/解凍真空機で脱気した後、アルゴンを再充填し、数時間加熱した。内容物は固体となり、透明なポリマーが約120g得られた。このポリマーを用いて光ファイバを作成した。
[合成例2] 全フッ素系材料の合成方法
2−クロロ−1−プロパノールと1−クロロ−2−プロパノールとトリフルオロピルビン酸メチルの混合物139gをフラスコに入れ、その中にトリフルオロピルビン酸メチルを入れ脱水縮合反応により2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソランの精製物230gを得た。次にパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランのフッ素化を行った。溶媒として1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンを用い、窒素ガスを1340cc/min、フッ素ガスを580 cc/minの一定の流速で流し、窒素/フッ素の雰囲気下において、先に準備した2−カルボメチル−2−トリフルオロメチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン230gを反応槽にゆっくり加えることによりフッ素化処理を行いパーフルオロ−2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−カルボン酸を約150g得た。この工程による、フッ素化収率は約85%であった。これを水酸化カリウム水溶液で中和することで、パーフルオロ−2,4−ジメチル−2−カルボン酸カリウム−1,3−ジオキソランを得た。このカリウム塩を真空乾燥し、更にアルゴン雰囲気下で、塩を分解することで、パーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランを得た。上記にて得られたパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランとパーフルオロベンゾイルパーオキサイドをガラスチューブにいれ、これを冷凍/解凍真空機で脱気した後、アルゴンを再充填し、数時間加熱した。内容物は固体となり、透明なポリマーが約120g得られた。このポリマーを用いて光ファイバを作成した。
[作製例1] 部分フッ素系材料を用いたGI-POFの作製方法
合成例1で得たプリフォームを先に述べたプリフォーム法により光ファイバを作製した。即ちプリフォームを一般の紡糸装置にセットし、210℃で溶融延伸し、長さ200m、外径約500μm、コア径約80μmのGI-POFを得た。
合成例1で得たプリフォームを先に述べたプリフォーム法により光ファイバを作製した。即ちプリフォームを一般の紡糸装置にセットし、210℃で溶融延伸し、長さ200m、外径約500μm、コア径約80μmのGI-POFを得た。
この長尺ファイバを1m(実施例1)、10m(実施例2)、30m(実施例3)の長さに切り出し、評価を行った。また、長さを60mとしたことを除き実施例1と同様の光ファイバケーブルについて、同様の評価を行った(実施例4)。
[作製例2] 全フッ素系材料を用いたPOF材料及びGI-POFの作製方法
溶融押出ドーパント拡散法を利用して、光ファイバを作製した。
溶融押出ドーパント拡散法を利用して、光ファイバを作製した。
合成例2で合成したパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランと、ドーパントとして(1、1、3、5、6−ペンタクロロパーフルオロヘキサン)を5重量%を容器内に入れ混合した。これを約200℃に加熱し、内容物を十分に撹拌し、均一に溶融させた。次にこれを冷却固化した後、容器から取出しコア部材を得た。
合成例2で合成したパーフルオロ−4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソランを容器内で約200℃にて加熱溶融し、これを冷却固化した後取出しクラッド部材を得た。
得られたコア部材とクラッド部材、更にオーバークラッド部材を用いて、3層構造のファイバが得られる溶融押出ドーパント拡散装置を用いてGI-POFを作成した。オーバークラッド層には、XYLEX X7300CL[製品名、SABIC Innovative Plastics社製、ポリエステル変性ポリカーボネート]樹脂を乾燥後使用した。コア部材と、クラッド部材、オーバークラッド部材を各々所定の押出装置のホッパーに入れた。コア部、クラッド部、オーバークラッド部の流路を加熱することで各々の樹脂を溶融合流させ3層構造としノズルから吐出させることで光ファイバを得た。長さ200m、外径約500μm、コア径約50μmのGI-POFを得た。
この長尺ファイバを1m(実施例5)、2m(実施例6)、5m(実施例7)、10m(実施例8)、20m(実施例9)、30m(実施例10)の長さに切り出し、評価を行った。
[評価方法1] NFP及びFFPの測定方法
NFP及びFFPの測定系を図3に示す。
[評価方法1] NFP及びFFPの測定方法
NFP及びFFPの測定系を図3に示す。
中心波長850nMの単一周波数DBRレーザ(1)の偏波保持シングルモード光ファイバ(2)ピグテール(APC研磨)からの出射光(3)(モードフィールド径5.3μM)をレンズ(4)を用いて光ファイバ(5)に入射した。この際CCDカメラ(6)による顕微観察を用いて光ファイバのコア中心に光がレンズ(4)を介して入射するようにし、中心励振条件での評価を行うこととする。そして光ファイバの入射端面とは反対側の端面から出射された光(7)のNFPをNFP測定装置(浜松フォトニクス製A6501)(8)を、FFPをFFP測定装置(浜松フォトニクス製A3267-12を用いて測定し、2次モーメントを用いた定義のビーム径W(Dσ4)及び広がり角θ(半角)を特定した。
[評価方法2] BERの測定方法
BERの測定系を図4に示す。
[評価方法2] BERの測定方法
BERの測定系を図4に示す。
発振波長850nM、14Gb/sのPhilips製面発光レーザ(VCSEL)(9)を、ビット誤り率テスター(BERT(アンリツ製MP2010A))の内蔵パルスパターンジェネレータにより発生したパターン長が231−1である10Gb/sのNRZ疑似ランダムパターンにより、バイアスTを介して直接変調した。変調信号電圧は0.1V(peak-to-peak値)、VCSELのバイアス電流は5MAとした。レーザ出射光を非球面レンズペア(10)を用いてフレネル反射損失以外の入力結合損失がないように光ファイバ(5)のコア中心に入射し、中心励振による評価を行った。そして光ファイバの入射端面とは反対側の端面から出射された光(11)を14Gb/sのPhilips製フォトダイオード(12)で非球面レンズペアレンズによりフレネル反射損失以外の結合損失がないように受光し、同軸ケーブルによりBERTに接続し、内蔵エラーディテクタによりBER(Bit Error Rate)を測定した。
[比較例]
石英系ガラスとして、コーニング製OM4_TIA/EIA 492−AAADを用意し、長さ1m(比較例1)、2m(比較例2)、5m(比較例3)、10m(比較例4)、20m(比較例5)、30m(比較例6)の場合について、実施例と同様の評価を行った。M2値の結果を表1に示す。
石英系ガラスとして、コーニング製OM4_TIA/EIA 492−AAADを用意し、長さ1m(比較例1)、2m(比較例2)、5m(比較例3)、10m(比較例4)、20m(比較例5)、30m(比較例6)の場合について、実施例と同様の評価を行った。M2値の結果を表1に示す。
図5は、直線偏光の近似的なガウシアンビームによる中心励振において、本発明の一実施形態であるマルチモード光ファイバと、従来のマルチモード光ファイバとのBERの対数値を対比した図である。図5に示すグラフの縦軸はBERの対数の値を示し、横軸は光ファイバの長さを示す。「low-noise GI POF」の各点は、光ファイバの長さが1m、2m、5m、10m、20m及び30mである場合のBERの対数の値との関係を示しており、表1の実施例5から10に対応する。同様に「silica GI MMF」の各点は、光ファイバの長さが1m、2m、5m、10m、20m及び30mである場合のBERの対数の値との関係を示しており、表1の比較例1から6に対応する。
図5から明らかなように、M2値が1.7以上となり得る実施例5から10のBERの対数の値は、M2値が1.7未満となり得る比較例1から6のBERの対数の値よりも小さくなる。このように、本発明に係る実施例5から10で使用した光ファイバケーブルは、M2値が1.7以上と特定の値に制御することで、モード結合による高次モードの増加に伴って生じる伝送損失よりも、遠方からの反射戻り光の影響が減少することができ、その結果、ノイズの低減の方が優勢となり、伝送品質が向上することができた。
本発明の光ファイバは、短距離伝送において高品位の信号伝送が要求される技術分野において利用可能である。
Claims (6)
- 発光素子からの光ビームを受光素子に伝送することによる光通信に使用する光ファイバケーブルであって、
発光素子側の端部である近位端と、受光素子側の端部である遠位端とを有し、
前記遠位端側から前記発光素子側へ戻る光ビームのM2値が1.7以上であり、
長さが100m以下である、
ことを特徴とする、前記光ファイバケーブル。 - 前記光ビームのM2値が5.0以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
- 前記光ファイバケーブルが屈折率分布(GI)型であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光ファイバケーブル。
- 前記光ファイバケーブルがプラスチック光ファイバ(POF)であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
- 前記プラスチック光ファイバ(POF)のコア材料が、全フッ素系、部分フッ素系、又は部分塩素系、部分重水素化系の材料であることを特徴とする、請求項4に記載の光ファイバケーブル。
- 前記コア材料がドーパントを含むことを特徴とする、請求項5に記載の光ファイバケーブル。
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