一般に、建造物の天井等の壁面に固定された複数の配線・配管材保持具で1本の配線・配管材を保持することによって配線・配管材が壁面に沿って配設される。配線・配管材は隣接する配線・配管材保持具の間に架け渡って配置されるが、一度の作業で、ぴんと張った状態で長尺の配線・配管材を設置することは難しいことから、配線・配管材保持具の間で配線・配管材が弛んでしまうことが頻繁に起こり得る。よって、配設作業において、配線・配管材の弛みを直す工程が必要となる。そして、特許文献1のような従来の保持具では、突条片が配線・配管材を両側から挟み込むように係止していることから、配線・配管材を引っ張ってその弛みを直すために、1又は複数の保持具で、配線・配管材を配置空間から完全に離脱させることが求められる。このような配線・配管材を保持具から一旦取り外して再度保持具に取り付ける作業は、配線・配管材の配設作業の効率を大きく低下させる要因となり得る。したがって、配線・配管材の弛みを直す工程の作業性を改善することを課題とした。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、配線・配管材の弛みを簡単且つ迅速に直すことを可能とする配線・配管材保持具、及び、該配線・配管材保持具を備えた配線・配管材の配設構造を提供することにある。
請求項1に記載の配線・配管材保持具は、構造物に固定するための固定部、及び、配線・配管材を保持する保持部を備える配線・配管材保持具であって、
前記保持部は、前記配線・配管材を配置する配置空間と、前記配線・配管材を前記配置空間に導入するための開口と、前記配置空間に前記配線・配管材を保持する弾性変形可能な保持片と、前記保持片の内面から前記配置空間に突出し、前記配線・配管材に係合して前記配線・配管材の長尺方向の移動を規制するための係合片と、を備え、
前記保持片は、前記係合片及び前記配線・配管材の係合を維持しつつ前記配線・配管材を保持するように構成され、
前記保持片は、前記配線・配管材を前記係合片側に付勢した状態を維持しつつ、前記配線・配管材が前記配置空間内で前記係合片から離脱するまで移動することを許容するように弾性変形可能であることを特徴とする。
請求項2に記載の配線・配管材保持具は、請求項1に記載の配線・配管材保持具において、前記係合片は、前記開口に対向する位置に形成されてなることを特徴とする。
請求項3に記載の配線・配管材保持具は、請求項2に記載の配線・配管材保持具において、前記保持片の内面は、前記配線・配管材の外周に沿って湾曲し、前記係合片は、前記配線・配管材の周方向に沿って延在し、前記係合片の突出量は、前記配線・配管材を前記係合片から離脱させるための移動量を減少させるように周方向において異なることを特徴とする。
請求項4に記載の配線・配管材保持具は、請求項1から3のいずれか一項に記載の配線・配管材保持具において、前記係合片は、前記配線・配管材の周方向に沿って延在し、前記係合片の周方向の長さは、前記配線・配管材の外周長の半分以下であることを特徴とする。
請求項5に記載の配線・配管材保持具は、請求項1から4のいずれか一項に記載の配線・配管材保持具において、前記固定部は、前記開口に対向する位置に形成されてなることを特徴とする。
請求項6に記載の配線・配管材保持具は、請求項1から5のいずれかに記載の配線・配管材保持具において、前記開口を閉塞するための蓋部をさらに備え、前記蓋部で前記開口を閉塞した状態で前記保持片の弾性変形が規制されることを特徴とする。
請求項7に記載の配線・配管材保持具は、請求項1から6のいずれかに記載の配線・配管材保持具において、複数の配線・配管材を保持可能に複数の保持部が連設されてなり、前記複数の保持部の各々の前記配置空間が前記開口を介して連通していることを特徴とする。
請求項8に記載の配線・配管材保持具の配設構造は、請求項1から7のいずれか一項に記載の複数の配線・配管材保持具が構造物に固定され、前記複数の配線・配管材保持具によって配線・配管材が保持されていることを特徴とする。
請求項1に記載の配線・配管材保持具によれば、保持片は、係合片及び配線・配管材の係合を維持しつつ配線・配管材を保持するように構成されている。つまり、配線・配管材を保持部でその場に保持するときに、保持片は、配線・配管材の長尺方向の移動を規制する第1の姿勢をとる。この第1の姿勢では、配線・配管材を長尺方向に移動させることなく安定的に保持することができる。他方、保持片は、配線・配管材が配置空間内で係合片から離脱するまで係合方向と反対側に移動することを許容するように弾性変形可能である。つまり、保持片は、配線・配管材の長尺方向の移動を規制する第1の姿勢から弾性変形することで、配線・配管材の長尺方向の移動を許容する第2の姿勢に変位する。この第2の姿勢では、配線・配管材を配置空間から離脱させることなく、配線・配管材が係合片側に継続的に付勢された状態の下で、係合片及び配線・配管材の係合を解除することができる。すなわち、作業者は、配線・配管材の弛みを直す工程において、配線・配管材を係合片から離脱する方向に力を加えることにより、保持片を弾性変形させると同時に係合片及び配線・配管材の係合を解除することができる。その結果、作業者は、配線・配管材を保持部から取り外すことなく、保持部の保持力を受けたまま配線・配管材を長尺方向に移動させて、その撓みを簡単且つ迅速に解消することが可能である。
請求項2に記載の配線・配管材保持具によれば、請求項1の発明の効果に加えて、係合片が開口に対向する位置に形成されていることにより、配線・配管材を開口側に移動させることで係合片及び配線・配管材の係合を解除することが可能である。
請求項3に記載の配線・配管材保持具によれば、請求項1又は2の発明の効果に加えて、係合片の突出量は、配線・配管材を係合片から離脱させるための移動量を減少させるように周方向の位置に応じて異なる。すなわち、配線・配管材の外周形状や係合位置に合わせて係合片による係合の度合いを深くして係合片と配線・配管材の係合の強さを確保しつつ、係合を解除させるのに必要な配線・配管材を移動させる量を減少させることができる。
請求項4に記載の配線・配管材保持具によれば、請求項1から3のいずれかの発明の効果に加えて、係合片の周方向の長さは、配線・配管材の外周長の半分以下であることにより、配置空間の中心を隔てて係合片が対向することを避けることができる。すなわち、配線・配管材の一方向の移動によって、配線・配管材が係合片から離脱することが容易となる。
請求項5に記載の配線・配管材保持具によれば、請求項1から4のいずれかの発明の効果に加えて、固定部が開口に対向する位置に形成されていることから、固定部が開口から配線・配管材保持具の外部に臨んでいる。これにより、作業者は、開口を介して固定部を構造物に容易に固定することができる。
請求項6に記載の配線・配管材保持具によれば、請求項1から5のいずれかの発明の効果に加えて、蓋部が開口を閉塞することにより、配線・配管材を配管空間に安定的に保持することができる。さらに、蓋部が開口を閉塞すると保持片の弾性変形が規制されることにより、配線・配管材と係合部との係合が不意に解除されることを防止することができる。
請求項7に記載の配線・配管材保持具によれば、請求項1から6のいずれかの発明の効果に加えて、複数の保持部によって複数の配線・配管材を同時に保持することが可能である。
請求項8に記載の配線・配管材保持具の配設構造は、請求項1から7のいずれかの発明の効果を配設構造として発揮することができる。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
本実施形態の一実施形態の配線・配管材保持具100は、構造物に固定され、構造物に対して配線・配管材を配設する用途に用いられる。本実施形態では、配線・配管材保持具100が固定される構造物は天井面Tであり、配線・配管材は波付可撓管Pである。波付可撓管Pは、長軸及び短軸を有する断面視長円形状(小判型)を有し、山部(大径部)と谷部(小径部)とが長尺方向に交互に連続するように形成されている(図6,7参照)。しかしながら、本実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲から逸脱しない限り、その用途、構成を限定するものではないことは言うまでもない。以下、図面に沿って、本発明の配線・配管材保持具100の構成を説明する。
図1(a),(b)は、本発明の一実施形態の配線・配管材保持具100の斜視図である。図2(a)〜(d)は、該配線・配管材保持具100の平面図、正面図、底面図及び側面図である。図3は、該配線・配管材保持具100のA−A断面図である。図4は、図3の配線・配管材保持具100において蓋部130で開口122を閉塞した状態の断面図である。図5及び図6は、図3の配線・配管材保持具100の側壁102を弾性変形させた状態の断面図である。
配線・配管材保持具100は、構造物(天井面T)に固定するための固定部103、配線・配管材(波付可撓管P)を保持する保持部110,120、及び、該保持部120の開口122を閉塞する蓋部130を備えてなる。また、配線・配管材保持具100は、長手方向(正面視左右方向)に延在する底壁101と、該底壁101の長手方向の両端から立設した一対の側壁102とで正面視コ字状に構成されている。底壁101の長手方向の略中央には、固定部103が設けられている。該固定部103は、一対の側壁102の中間で(長手方向に直交する)幅方向に延びる凹設部103aと、該凹設部103aの中央で穿設された固定孔103bとを備える。当該固定孔103aにビスなどの固定部材が挿入されることにより、配線・配管材保持具100が構造物に固定される(図8参照)。さらに、両側壁102の外面には、それぞれ連結凸部102a及び連結凹部102bが形成されている。一の配線・配管材保持具100の連結凸部102aと、他の配線・配管材保持具100の連結凹部102bを嵌合させることにより、複数の配線・配管材保持具100同士を連結することが可能となる。
また、固定部103に隣接する底壁101の一部から側壁102にかけて、保持部110,120が設けられている。本実施形態の配線・配管材保持具100には、2本の波付可撓管Pを配設可能であるように、2つの保持部110,120が連続的に設けられている。ここで、底壁101側の保持部を第1保持部110と定め、底壁101から離れた側の保持部を第2保持部120と定めた。
第1保持部110は、配線・配管材としての波付可撓管Pを配置する第1配置空間111と、波付可撓管Pを該第1配置空間111に導入するための第1開口112と、第1配置空間111に波付可撓管Pを保持する弾性変形可能な第1保持片113と、該第1保持片113の内面から第1配置空間111に突出し、波付可撓管Pに係合して配線・配管材の長手方向の移動を規制するための第1係合片114と、を備える。
第1配置空間111は、図3の断面視において波付可撓管Pの山部の外周形状に対応する空間として第1保持片113及び第1開口112の内側に形成されている。第1保持片113は、図3に示すように、固定部103の両側に延在しており、固定部103を除く底壁101から一対の側壁の101の一部に亘って形成されている。該第1保持片113は、内外に弾性変形可能である。また、第1保持片113の内面は、波付可撓管Pの外周形状に沿って円弧状に湾曲し、波付可撓管Pの長軸両端の側面ほぼ全体と上面とを覆うように延在している。つまり、第1保持片113の高さは、波付可撓管Pの高さとほぼ等しい。そして、第1保持片113の先端で開口し、第1開口112を形成している。第1開口112の開口幅は、波付可撓管Pの長軸よりも小さく、且つ、第1保持片113の弾性変形で波付可撓管Pを導入可能な大きさに定められている(図6参照)。これにより、一旦、第1配置空間111に波付可撓管Pが配置されると、波付可撓管Pが弾性変形しない限り、波付可撓管Pは第1配置空間111内部に保持される。すなわち、第1保持片113は、第1配置空間111に波付可撓管Pを保持するように構成されている。
さらに、第1係合片114が第1保持片113の内面から第1配置空間111に向けて突出形成されている。第1係合片114は、波付可撓管Pの谷部に嵌入可能な幅で周方向に沿って延在する突条である。換言すると、波付可撓管Pの谷部は、係合片114(124)が係合するための被係合部である。第1係合片114は、第1保持片113内面の幅方向(周方向に直交する方向)略中央に形成されている。また、第1係合片114は、湾曲した第1保持片113内面において、第1開口112に対向する位置のみに形成されてなる。ここで「開口に対向する位置」とは、開口に平行な面に限らず、湾曲面のうちで少なくとも曲面の法線が開口側を向く方向成分を有する領域をいう。本実施形態では、第1保持片113内面間の間隔が最大となる箇所(換言すれば、長円状の第1配置空間111の長軸と第1保持片113内面との交点)よりも底壁101に近い部位が第1開口112に対向している。そして、第1係合片114の周方向の長さは、波付可撓管P(第1配置空間111)の外周長の半分以下である。これは、第1係合片114が第1配置空間111(長円)の中心を隔てて対向することがないことを示している。さらに、第1係合片114の突出量は、波付可撓管Pを第1係合片114から離脱させるための移動量を軽減させるようにその周方向の位置に応じて異なっている。具体的には、本実施形態では、波付可撓管Pが断面視長円形状であることから、長円状の第1配置空間111の中心から第1係合片113内面までの距離が小さくなるにつれて、第1係合片114の突出量が徐々に小さくなり、第1配置空間111の長軸と第1保持片113内面との交点で突出量が0となる。あるいは、第1開口112(又は、第1係合片114全体に対向する仮想の平面)に近づくにつれて、第1係合片114の突出量が徐々に小さくなり、曲面の法線の開口側を向く方向成分がなくなった位置で突出量が0となる。
第2保持部120は、底壁101から離隔する側において第1保持部110に並設されている。第2保持部120は、第2保持部120は、波付可撓管Pを配置する第2配置空間121と、波付可撓管Pを該第2配置空間121に導入するための第2開口122と、第2配置空間121に波付可撓管Pを保持する弾性変形可能な第2保持片123と、該第2保持片123の内面から第2配置空間121に突出し、波付可撓管Pに係合して配線・配管材の長尺方向の移動を規制するための第2係合片124と、を備える。なお、第2保持部120は、固定部103から第1保持部110を隔てて離れていることから、構造物(天井面T)から波付可撓管Pを離隔させて配設することを可能とする。
第2配置空間121は、図3の断面視において波付可撓管Pの山部の外周形状に対応する空間として第2保持片123及び第2開口122の内側に形成されている。そして、第2配置空間121は、第1開口112を介して第1配置空間111に連通している。第2保持片123は、図3に示すように、一対の側壁の101の一部に対向するように形成されている。該第2保持片123は、内外に弾性変形可能である。また、第2保持片123の内面は、波付可撓管Pの外周形状に沿って円弧状に湾曲し、波付可撓管Pの長軸両端の側面ほぼ全体を覆うように延在している。つまり、第2保持片123の高さは、波付可撓管Pの高さとほぼ等しい。そして、第2保持片123の先端で開口し、第2開口122を形成している。第2開口122の開口幅は、波付可撓管Pの長軸よりも小さく、且つ、第2保持片123の弾性変形で波付可撓管Pを導入可能な大きさに定められている(図5参照)。これにより、一旦、第2配置空間121に波付可撓管Pが配置されると、波付可撓管Pが弾性変形しない限り、波付可撓管Pは第2配置空間121内に保持される。すなわち、第2保持片123は、第2配置空間121に波付可撓管Pを保持するように構成されている。
さらに、第2係合片124が第2保持片123の内面から第2配置空間121に突出形成されている。第2係合片124は、波付可撓管Pの谷部に嵌入可能な幅で周方向に沿って延在する突条である。第2係合片124は、第2保持片123内面の幅方向(周方向に直交する方向)略中央に形成されている。また、第2係合片124は、湾曲した第2保持片123内面において、第1係合片114と同様に第2開口112に対向する位置のみに形成されてなる。本実施形態では、第2保持片123内面間の間隔が最大となる箇所(換言すれば、長円状の第2配置空間121の長軸と第2保持片123内面との交点)よりも底壁101に近い部位が第2開口122に対向している。そして、第2係合片124の周方向の長さは、波付可撓管P(第2配置空間121)の外周長の半分以下である。これは、第2係合片124が第2配置空間121(長円)の中心を隔てて対向することがないことを示している。さらに、第2係合片124の突出量は、波付可撓管Pを第2係合片124から離脱させるための移動量を軽減させるようにその周方向の位置に応じて異なっている。具体的には、本実施形態では、波付可撓管Pが断面視長円形状であることから、長円状の第2配置空間121の中心から第2係合片123内面までの距離が小さくなるにつれて、第2係合片124の突出量が徐々に小さくなり、第2配置空間121の長軸と第2保持片123内面との交点で突出量が0となる。あるいは、第2開口122(又は、第2係合片124全体に対向する仮想の平面)に近づくにつれて、第2係合片124の突出量が徐々に小さくなり、曲面の法線の開口側を向く方向成分がなくなった位置で突出量が0となる。
蓋部130は、第2保持部120の第2開口122を閉塞可能に一方の側壁102の先端に設けられている。蓋部130の基端は、薄肉のヒンジ131によって側壁102の先端に回動可能に連結されている。また、蓋部130の略中央の内面には、波付可撓管Pに係合するための蓋側係合片134が形成されている。蓋側係合片134は、波付可撓管Pの谷部に嵌入可能な幅で周方向に沿って延在する突条である。蓋側係合片134は、蓋部130内面の幅方向(周方向に直交する方向)略中央に形成されている。さらに、蓋部130の先端には、他方の側壁102側に延びる係止爪132、及び、該係止爪132を傾動操作するための操作片133が設けられている。外面側で操作片133に隣接して係止突起135が形成されている。そして、他方の側壁102には、蓋部130先端の係止爪132を収容して係止するための被係止部104が設けられている。被係止部104は、側壁102の先端面で開口し、側壁102内部に係止爪132の収容部104aを形成する。また、被係止部104の内側の内面には、係止爪132と掛合する突起104bが突出形成されている。他方、被係止部104の外側の内面には、係止突起135と掛合する突起104cが突出形成されている。
図4は、蓋部130で第2開口122を閉塞した状態の配線・配管材保持具100を示している。図4に示すとおり、ヒンジ131を介して蓋部130が第2開口122側に回動するように弾性変形し、係止爪132が被係止部104の収容部104aに進入している。そして、係止爪132の爪部分が突起104bに係止されるとともに、係止突起135が突起104cに係止されることにより、閉塞状態が安定的に維持される。図4の閉塞状態において、蓋部130によって、側壁102,102(保持片113,123)の弾性変形が規制されている。蓋部130を開放するには、操作片104を内側に回動させるように押すことにより、係止爪132及び係止突起135の係止がともに解除され、係止爪132を被係止部104から離脱させることが可能となる。
次に、図5及び図6を参照して、波付可撓管Pを配線・配管材保持具100の保持部110,120に保持する方法について説明する。図5に示すように、まず、第2保持部120で波付可撓管Pを保持すべく、波付可撓管Pの長軸を第2開口122に略平行に把持しつつ、第2開口112を介して第2配置空間121に押し込むと、第2開口122が拡開するように第2保持片123が外側に弾性変形する。そして、波付可撓管Pが第2保持部120の第2配置空間121に配置されると、第2保持片123が弾性復帰し、波付可撓管Pが第2保持片123によって側面から狭まれて保持される。このとき、第2係合片124が波付可撓管Pの谷部に配置される。
続いて、第1保持部110で波付可撓管Pを保持すべく、第2配置空間121に位置する波付可撓管Pを第1開口112を介して第1配置空間111に押し込むと、図6に示すように、第1開口112が拡開するように第1保持片113が外側に弾性変形する。そして、波付可撓管Pが第1保持部110の第1配置空間111に配置されると、第1保持片113が弾性復帰し、波付可撓管Pが第1保持片113によって側面から狭まれて保持される。このとき、第1係合片114が波付可撓管Pの谷部に配置される。さらに、2本目の波付可撓管Pを第2保持部120に保持させる場合、1本目の波付可撓管Pを第1保持部110で保持しつつ、同様に、2本目の波付可撓管Pを第2開口112を介して第2配置空間121に押し込むことにより、第2保持片123で波付可撓管Pを第2配置空間121に保持することができる。
続いて、図7及び図8を参照して、天井面Tに固定された配線・配管材保持具100で2本の波付可撓管Pが保持された配設構造10について説明する。図7及び図8は、配設構造10の側面図及びB−B断面図である。配線・配管材保持具100は、図8に示すように、固定部103に固定部材(ビス)が打ち込まれることにより、配線・配管材保持具100の底壁101の底面(上面)が天井面Tに当接するように固定されている。そして、配設構造10では、図7及び図8に示すように、2本の波付可撓管Pが配線・配管材保持具100の第1保持部110及び第2保持部120に保持されている。第1係合片114及び第2係合片124は、波付可撓管Pを保持するための第1の姿勢をとっている。具体的には、蓋部130が第2開口122を閉塞し、一対の側壁102の弾性傾動が規制された状態で、下側の波付可撓管Pが第2配置空間121に配置され、上側の波付可撓管Pが第1配置空間111に配置されている。第1保持片113及び第2保持片123の内面が各波付可撓管Pの外面に当接又は圧接している。そして、図8に示すように、第1係合片114及び第2係合片124は、各波付可撓管Pの谷部に嵌入し、波付可撓管Pの長尺方向の移動を規制している。このとき、第1保持片113及び第2保持片123が、第1係合片114及び第2係合片124の波付可撓管Pへの係合を維持するように、第1係合片114及び第2係合片124を波付可撓管Pに弾性的に押し付けるように作用している。換言すると、弾性の保持片113,123が係合片114,124を波付可撓管Pの被係合部に維持する(留める)ように機能する。さらに、蓋部130の蓋側係合片134が第2配置空間121の波付可撓管Pの谷部に嵌入している。その結果、配設構造10において、波付可撓管Pが配線・配管材保持具100に強固に保持されている。なお、本発明の配設構造において、固定される天井面Tから突出する機器などの障害物を避けるべく、第1保持部110に波付可撓管Pを配置せずに、第2保持部120のみに波付可撓管Pを配置してもよい。
図9は、配線・配管材保持具100を天井面Tに沿って配設する際に起こる、波付可撓管Pが弛んだ状態の配設構造10’を示している。以下、波付可撓管Pの弛みを解消する方法を説明する。図9に示すように、1つの配線・配管材保持具100の蓋部130を開放し、側壁102を弾性変形可能な状態とする。そして、下方又は斜め下方向の力を波付可撓管Pに加えて波付可撓管Pを押し下げる。このとき、波付可撓管Pを第1配置空間111から離脱しないように力を加減する。すると、図10に示すように、波付可撓管Pが第1配置空間111に配置されたまま下方にスライドするとともに、第1保持片113が、波付可撓管Pを保持する第1の姿勢から、第1開口112が僅かに拡開する第2の姿勢に弾性変位する。この図10の第2の姿勢では、波付可撓管Pは第1保持部110の保持力を受けている。そして、第1係合片114が波付可撓管Pの谷部から離脱し、波付可撓管Pが第1係合片114側に継続的に付勢された状態の下で、波付可撓管Pの長尺方向の移動が許容される。つまり、波付可撓管Pは第1保持部110の保持力を受けたままで、長尺方向への移動が可能となる。そして、図11に示すように、波付可撓管Pを長尺方向に引っ張ることで、波付可撓管Pが第1保持部110に保持されつつ長尺方向に移動し、波付可撓管Pの弛みを簡単に解消することができる。
2本の波付可撓管Pを各保持部110,120に保持する場合、先に第1保持部110で1本目の波付可撓管Pを弛みを解消した上で、上記と同様に2本目の波付可撓管Pを操作することにより、第2保持部120で2本目の波付可撓管Pの弛みを解消して保持することが可能である。なお、第1保持部と第2保持部とを十分に離隔させ、その間にスライド代を確保することにより、第2保持部から先に配線・配管材の撓みを解消できるようにしてもよい。
以下、本発明に係る一実施形態の配線・配管材保持具100における作用効果について説明する。
本実施形態の配線・配管材保持具100によれば、各保持片113,123は、各係合片114,124及び波付可撓管Pの係合を維持しつつ波付可撓管Pを保持するように構成されている。つまり、波付可撓管Pを保持部110,120でその場に保持するときに、保持片114,124は、波付可撓管Pの長尺方向の移動を規制する第1の姿勢をとる。この第1の姿勢では、波付可撓管Pを長尺方向に移動させることなく安定的に保持することができる。他方、各保持片113,123は、波付可撓管Pが配置空間111,121内で係合片114,124から離脱するまで係合方向と反対側に移動することを許容するように弾性変形可能である。つまり、各保持片113,123は、波付可撓管Pの長尺方向の移動を規制する第1の姿勢から弾性変形することで、波付可撓管Pの長尺方向の移動を許容する第2の姿勢に変位する。この第2の姿勢では、波付可撓管Pを配置空間111,121から離脱させることなく、係合片114,124及び波付可撓管Pの係合を解除することができる。すなわち、作業者は、波付可撓管Pの弛みを直す工程において、波付可撓管Pを係合片114,124から離脱する方向に力を加えることにより、保持片113,123を弾性変形させると同時に係合片114,124及び波付可撓管Pの係合を解除することができる。その結果、作業者は、波付可撓管Pを保持部110,120から取り外すことなく、保持部110,120の保持力を受けたまま波付可撓管Pを長尺方向に移動させて、その撓みを簡単且つ迅速に解消することが可能である。
[変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。なお、各変形例において、三桁で示される構成要素において下二桁が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
(1)本発明の配線・配管材保持具は、上記実施形態の配線・配管材保持具100の構成に限定されない。例えば、図12は、別実施例として配線・配管材保持具200を示している。配線・配管材保持具200は、構造物に固定するための固定部203、配線・配管材を保持する1つの保持部210、及び、該保持部210の開口212を閉塞する蓋部230を備えてなる。また、配線・配管材保持具200は、長手方向に延在する底壁201と、該底壁201の長手方向の両端から立設した一対の側壁202とで正面視コ字状に構成されている。保持部210は、配線・配管材としての波付可撓管Pを配置する配置空間211と、波付可撓管Pを該配置空間211に導入するための開口212と、配置空間211に波付可撓管Pを保持する弾性変形可能な保持片213と、該保持片213の内面から配置空間211に突出し、波付可撓管Pに係合して配線・配管材の長手方向の移動を規制するための係合片214と、を備える。保持片213は、係合片214及び波付可撓管Pの係合を維持しつつ波付可撓管Pを保持するように構成されている。、また、保持片213は、波付可撓管Pを係合片214側に付勢した状態を維持しつつ、波付可撓管Pが配置空間211内で係合片214から離脱するまで移動することを許容するように弾性変形可能である。すなわち、変形例の配線・配管材保持具200は、1本の波付可撓管Pに対して、上記配線・配管材保持具100と同様の作用効果を発揮することが可能である。
(2)本発明の配線・配管材保持具は、上記実施形態の配線・配管材保持具100の構成に限定されない。すなわち、保持部の数は、3以上であってもよい。また、蓋部が省略されてもよい。例えば、図13は、別実施例として配線・配管材保持具300を示している。配線・配管材保持具300は、構造物に固定するための固定部303、及び、配線・配管材を保持する3つの保持部310,320,340を備えてなる。各保持部310,320,340は、配線・配管材としての波付可撓管Pを配置する配置空間311,321,341と、波付可撓管Pを該配置空間311,321,341に導入するための開口312,322,342と、配置空間311,321,341に波付可撓管Pを保持する弾性変形可能な保持片313,323,343と、該保持片313,323,343の内面から配置空間311,321,341に突出し、波付可撓管Pに係合して配線・配管材の長手方向の移動を規制するための係合片314,324,344と、を備える。保持片313,323,343は、係合片314,324,344及び波付可撓管Pの係合を維持しつつ波付可撓管Pを保持するように構成されている。、また、保持片313,323,343は、波付可撓管Pが配置空間311,321,341内で係合片314,324,344から離脱するまで移動することを許容するように弾性変形可能である。すなわち、変形例の配線・配管材保持具300は、3本の波付可撓管Pに対して、撓みを解消容易であるという点において、上記配線・配管材保持具100と同様の作用効果を発揮することが可能である。なお、異なる大きさや形状の配線・配管材保持具に対応すべく、複数の保持部が異なる形状であってもよい。
(3)上記実施形態の配線・配管材保持具は、天井面に固定されて使用されたが、当該用途に限定されない。例えば、配線・配管材保持具は垂直に立設する壁や床面や柱体などの任意の構造物に固定されて使用されてもよい。また、固定部の形態は、固定される対象に応じて任意に変更され得る。そして、固定部は、底壁ではなく側壁に形成されてもよい(図14参照)。この場合、固定部で固定されていない側の側壁が弾性変形することにより、配線・配管材が係合片から離脱するように移動可能であればよい。
(4)上記実施形態の配線・配管材保持具では、係合片が開口に対向する位置に形成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図14は、別実施例として配線・配管材保持具400,配設構造40を示している。配線・配管材は、断面形状円形の波付可撓管P’である。また、配線・配管材保持具400では、固定部403が底壁401でなく、一方の側壁402に設けられている。そして、固定部403を介して垂直壁の壁面T’に配線・配管材保持具400が固定されている。保持部410は、配線・配管材としての波付可撓管P’を配置する配置空間411と、波付可撓管P’を該配置空間411に導入するための開口412と、配置空間411に波付可撓管P’を保持する弾性変形可能な保持片413と、該保持片413の内面から配置空間411に突出し、波付可撓管P’に係合して配線・配管材の長手方向の移動を規制するための係合片414と、を備える。保持片413は、係合片414及び波付可撓管P’の係合を維持しつつ波付可撓管P’を保持するように構成されている。保持片413は、波付可撓管P’が配置空間411内で係合片414から離脱するまで移動することを許容するように弾性変形可能である。特には、係合片414は、開口412に対向する位置でなく、固定部403が形成された一方の側壁402に形成されている。係合片414の突出量は、波付可撓管P’を係合片414から離脱させるための移動量を軽減させるようにその位置に応じて異なっている。具体的には、係合片414全体に対向する仮想平面に近づくにつれて、係合片414の突出量が徐々に小さくなる。そして、図14に示すように、係合片414から離隔する方向に波付可撓管P’に力を加えると、他方の側壁402の係合片414が一方の側壁402から離隔するように弾性変形するとともに波付可撓管Pが係合片414から離脱するように移動する。すなわち、このように係合を解除した状態で波付可撓管Pを長尺方向に移動させることで、保持部410の保持力を受けたまま、その撓みを簡単且つ迅速に解消することが可能である。
(5)本発明において、配線・配管材の断面形状及び配置空間の正面視形状は、長円形状でなくてもよく、楕円状や円形状や角形状などであってもよい。また、本発明の配線・配管材は、係合片が係合可能な被係合部を有する長尺体であれば、波付可撓管Pに限定されない。
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。すなわち、本発明の技術的範囲の下で、本実施形態の一部の構成が省略又は修正されてもよく、あるいは、他の構成が追加されてもよい。