以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子を有する磁気センサの入出力特性の一例を示す。図1は、横軸が磁気センサに入力する入力磁場の大きさBを示し、縦軸が磁気センサの検出信号の大きさV_xMR0を示す。磁気センサは、例えば、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto−Resistance)素子およびトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto−Resistance)素子等を有し、予め定められた一軸方向の磁場の大きさを検出する。
このような磁気センサは、入力磁場Bに対する検出信号V_xMR0の傾きである磁気感度が高く、10pT程度の微小な磁場を検出することができる。その一方で、磁気センサは、例えば、入力磁場Bの絶対値が1μT程度で検出信号V_xMR0が飽和してしまい、入出力特性の直線性が良好な範囲が狭い。そこで、このような磁気センサにフィードバック磁場を発生させる閉ループを加えると、磁気センサの直線性を改善することができる。このような磁気センサについて次に説明する。
図2は、本実施形態に係るセンサ部10の構成例を示す。センサ部10は、磁気センサ20と、第1磁場生成部30と、出力部40とを有する。
磁気センサ20は、図1で説明した磁気センサと同様に、GMR素子およびTMR素子等の磁気抵抗効果素子を有する。磁気センサ20は、感磁軸の正の方向を+X方向とした場合に、+X方向の磁場が入力すると抵抗値が増加し、−X方向の磁場が入力すると抵抗値が減少するように形成されてよい。即ち、磁気センサ20の抵抗値の変化を観測することにより、当該磁気センサ20に入力する磁場Bの大きさを検出することができる。例えば、磁気センサ20の磁気感度をSとすると、磁気センサ20の入力磁場Bに対する検出結果は、S×Bと算出できる。なお、磁気センサ20は、一例として、電源等が接続され、抵抗値の変化に応じた電圧降下を、入力磁場の検出結果として出力する。
第1磁場生成部30は、磁気センサ20が検出した入力磁場を低減させるフィードバック磁場を磁気センサ20に与える。第1磁場生成部30は、例えば、磁気センサ20に入力する磁場Bとは逆向きで、絶対値が当該入力磁場と略同一のフィードバック磁場B_FBを発生させ、入力磁場を打ち消すように動作する。第1磁場生成部30は、増幅回路32と、コイル34とを含む。
増幅回路32は、磁気センサ20の入力磁場の検出結果に応じた電流をフィードバック電流I_FBとして出力する。増幅回路32は、例えば、トランスコンダクタンスアンプを含み、磁気センサ20の出力電圧に応じたフィードバック電流I_FBを出力する。例えば、増幅回路32の電圧・電流変換係数をGとすると、フィードバック電流I_FBは、G×S×Bと算出できる。
コイル34は、フィードバック電流I_FBに応じたフィードバック磁場B_FBを発生させる。コイル34は、磁気センサ20の全体にわたって均一のフィードバック磁場B_FBを発生させることが望ましい。例えば、コイル34のコイル係数をβとすると、フィードバック磁場B_FBは、β×I_FBと算出できる。ここで、フィードバック磁場B_FBは、入力磁場Bを打ち消す向きに発生するので、磁気センサ20に入力する磁場は、B−B_FBに低減されることになる。したがって、フィードバック電流I_FBは、次式のように示される。
(数1)式をフィードバック電流I_FBについて解き、磁気センサ20の磁気感度Sおよび増幅回路32の電圧・電流変換係数Gが十分に大きいとして、次式が算出される。
出力部40は、第1磁場生成部30がフィードバック磁場B_FBを発生するために流すフィードバック電流I_FBに応じた出力信号V_xMRを出力する。出力部40は、例えば、抵抗値Rの抵抗性素子を有し、当該抵抗性素子にフィードバック電流I_FBが流れることによって生じる電圧降下を出力信号V_xMRとして出力する。この場合、出力信号V_xMRは、(数2)式より次式のように算出される。
以上のように、センサ部10は、外部から入力する磁場を低減させるフィードバック磁場を発生するので、磁気センサ20に実質的に入力する磁場を低減させる。これにより、センサ部10は、例えば、磁気センサ20として図1の特性を有する磁気抵抗効果素子を用い、入力磁場Bの絶対値が1μTを超えても、検出信号V_xMRが飽和することを防止できる。このようなセンサ部10の入出力特性を次に説明する。
図3は、本実施形態に係るセンサ部10の入出力特性の一例を示す。図3は、横軸がセンサ部10に入力する入力磁場の大きさBを示し、縦軸がセンサ部10の検出信号の大きさV_xMRを示す。センサ部10は、磁気感度が高く、10pT程度の微小な磁場を検出することができる。また、センサ部10は、例えば、入力磁場Bの絶対値が100μTを超えても、検出信号V_xMRの良好な直線性を保つことができる。
即ち、本実施形態に係るセンサ部10は、例えば、入力磁場Bの絶対値が数百μT以下といった、予め定められた入力磁場Bの範囲において、当該入力磁場Bに対する検出結果が線形性を有するように構成される。このようなセンサ部10を用いることにより、例えば、心磁信号といった微弱な磁気的信号を簡便に検出することができる。そこで、まず、心磁信号について次に説明する。
図4は、本実施形態に係る被測定信号の一例である心磁信号の概略波形を示す。図4は、横軸が時間を示し、縦軸がセンサ部10等によって検出される磁場の強度の例を示す。図4は、心磁信号をB_sigとして示す。心磁信号B_sigは、心臓において、電流の発生とみなすことができる電気的な分極に起因して発生する磁気的な信号である。
なお、心臓の活動を電気的に測定する心電図が知られている。心電図は、測定対象である心臓の近傍に取り付けた電極から電位信号を取得するものであり、体組織の電気伝導度の不均一性等による影響を受けやすい。これに対して、心磁信号は、磁気的な信号を直接検出するので、心電図と比較してより詳細な診断情報が取得できるものとして知られている。このような心磁信号は、「R波」と呼ばれる10pT程度のピーク信号レベルを有する波形となるので、図2および図3で説明したセンサ部10を用いることで、検出できる。
しかしながら、センサ部10が単に心臓に近い位置で磁場を検出しても、心磁信号B_sigに、環境磁場信号B_Envが重畳した信号を検出することになる。環境磁場信号B_Envは、比較的周波数が低い地磁気成分B_Env_LFと、比較的周波数が高いランダム成分B_Env_HFとを含む。
図5は、本実施形態に係る被測定信号の一例である心磁信号の周波数特性の一例を示す。図5は、横軸が周波数を示し、縦軸がセンサ部10等によって検出される磁場の強度の例を示す。図5は、心磁信号をB_sigとして示し、環境磁場信号をB_Envとして示す。環境磁場信号B_Envは、心磁信号B_sigよりも低い周波数の地磁気成分B_Env_LFと、地磁気成分B_Env_LFよりも比較的周波数が高いランダム成分B_Env_HFとを含む。したがって、センサ部10が単に心臓近辺の磁場を検出すると、心磁信号B_sigに、地磁気成分B_Env_LFおよびランダム成分B_Env_HFが重畳した信号を検出することになる。
環境磁場信号B_Envは、心磁信号B_sigのピーク信号レベルよりも大きい信号レベルなので、センサ部10の検出結果から心磁信号B_sigを取得することは困難である。そこで、本実施形態における測定装置は、複数のセンサ部10を備え、環境磁場信号B_Envを打ち消して心磁信号B_sigを取得する。このような測定装置のセンサ部について説明する。
図6は、本実施形態に係る測定用センサ部100および参照用センサ部200の構成例を示す。なお、本実施形態において、測定対象50が動物の心臓である例を示す。測定用センサ部100および参照用センサ部200は、測定すべき軸の数に対応して、それぞれ複数設けられてよい。図6は、測定用センサ部100および参照用センサ部200が、XYZ軸の3軸の磁場を検出する目的で、それぞれ3つ設けられた例を示す。
複数の測定用センサ部100は、測定対象50を測定する測定位置に設けられ、入力磁場Bを互いに異なる検出軸方向で検出する。測定用センサ部100は、図2および図3で説明したセンサ部10と略同一の構成を有してよい。図6は、X軸方向の入力磁場Bxを検出する測定用センサ部100をセンサ部S0X、Y軸方向の入力磁場Byを検出する測定用センサ部100をセンサ部S0Y、Z軸方向の入力磁場Bzを検出する測定用センサ部100をセンサ部S0Zとし、3つのセンサ部を座標(0,0,0)に配置した例を示す。座標(0,0,0)は、各検出軸方向における心磁信号B_sigのピーク信号レベルが略10pTで検出できる程度に、測定対象50に近接した測定位置P0とする。
複数の参照用センサ部200は、測定位置から離間した参照位置に設けられ、入力磁場Bを互いに異なる検出軸方向で検出する。参照用センサ部200は、図2および図3で説明したセンサ部10と略同一の構成を有してよい。図6は、X軸方向の入力磁場Bxを検出する参照用センサ部200をセンサ部S1X、Y軸方向の入力磁場Byを検出する参照用センサ部200をセンサ部S1Y、Z軸方向の入力磁場Bzを検出する参照用センサ部200をセンサ部S1Zとし、3つのセンサ部を座標(L,L,L)に配置した例を示す。
座標(L,L,L)は、例えば、各検出軸方向における心磁信号B_sigのピーク信号レベルが十分に小さくなる(例えば、1/10以下または1/100以下)程度に、測定対象50の測定位置から離間した参照位置P1とする。ここで、距離Lは、一例として略5cmである。このように、複数の参照用センサ部200は、心磁信号B_sigが十分に小さくなる参照位置における磁場を検出するので、各検出軸方向における環境磁場信号B_Envを検出することになる。以上の測定用センサ部100および参照用センサ部200を用いた測定装置について次に説明する。
図7は、本実施形態に係る測定装置1000の構成例を示す。測定装置1000は、測定用センサ部100および参照用センサ部200を用いて、測定対象50である動物の心臓の心磁信号B_sigを測定する。また、測定装置1000は、測定用センサ部100および参照用センサ部200のそれぞれが有する他軸感度を補正しつつ、心磁信号B_sigを測定する。測定装置1000は、複数の測定用センサ部100、複数の参照用センサ部200、第1AD変換部102、第2AD変換部104、クロック発生器106、第1変換部110、第2変換部120、記憶部130、差分算出部140、インターフェイス部150、および信号処理部160を備える。
複数の測定用センサ部100のそれぞれおよび複数の参照用センサ部200それぞれは、既に図2および図6で説明したように、予め定められた入力磁場の範囲において、当該入力磁場に対する検出結果が線形性を有する。図7は、測定装置1000が3つの測定用センサ部100を備え、3軸磁気センサとして動作させる例を示す。同様に、図7は、測定装置1000が3つの参照用センサ部200を備え、3軸磁気センサとして動作させる例を示す。
第1AD変換部102は、複数の測定用センサ部100の出力をそれぞれデジタル信号に変換する。第1AD変換部102は、測定用センサ部100の数に応じた数のAD変換器を有してよい。第1AD変換部102が複数のAD変換器を有する場合、当該複数のAD変換器は、同期動作することが望ましい。第1AD変換部102は、例えば、センサ部S0X、センサ部S0Y、およびセンサ部S0Zの検出結果をそれぞれAD変換して、デジタル信号V0x、V0y、およびV0zを出力する。第1AD変換部102は、変換したデジタル信号を第1変換部110に供給する。
第2AD変換部104は、複数の参照用センサ部200の出力をそれぞれデジタル信号に変換する。第2AD変換部104は、参照用センサ部200の数に応じた数のAD変換器を有してよい。第2AD変換部104が複数のAD変換器を有する場合、当該複数のAD変換器は、同期動作することが望ましい。また、第1AD変換部102および第2AD変換部104が有する全てのAD変換器は、同期動作することがより望ましい。第2AD変換部104は、例えば、センサ部S1X、センサ部S1Y、およびセンサ部S1Zの検出結果をそれぞれAD変換して、デジタル信号V1x、V1y、およびV1zを出力する。第2AD変換部104は、変換したデジタル信号を第2変換部120に供給する。
クロック発生器106は、サンプリングクロックを発生させ、共通のサンプリングクロックを、第1AD変換部102および第2AD変換部104が有する全てのAD変換部へ供給する。そして、第1AD変換部102および第2AD変換部104は、クロック発生器106から供給された共通のサンプリングクロックに応じてAD変換を行う。したがって、測定位置P0に設けられた3軸磁気センサの出力をそれぞれAD変換する第1AD変換部、および、測定位置P1に設けられた3軸磁気センサの出力をそれぞれAD変換する第2AD変換部の全てが同期動作をする。これにより、第1AD変換部102および第2AD変換部104は、異なる空間に設けられた3軸磁気センサの検出結果を同時にサンプリングすることができる。
第1変換部110は、複数の測定用センサ部100の出力を、各座標軸方向の磁場成分を示す複数の測定用磁場信号に変換する。第1変換部110は、予め定められた係数を用いて対応するセンサ部の検出信号を測定用磁場信号に変換する。
ここで、例えば、測定位置P0における入力磁場をB0(B0x,B0y,B0z)とし、センサ部S0X、センサ部S0Y、およびセンサ部S0Zによる3軸磁気センサの検出結果をV0(V0x,V0y,V0z)とする。この場合、3軸磁気センサの磁気センサ特性を行列S0とすると、次式のように示すことができる。
ここで、S0,xx、S0,yy、S0,zzは、それぞれセンサ部S0X、S0Y、S0Zの主軸方向の感度を表し、S0,xy、S0,xz、S0,yx、S0,yz、S0,zx、S0,zyは他軸方向の感度を表している。
測定用センサ部100のそれぞれが、検出すべき入力磁場の範囲において、当該入力磁場に対する検出結果が線形性を有するので、行列S0の各要素は、入力磁場B0の大きさとは無関係な略一定の係数となる。また、測定用センサ部100が他軸感度を有していても、当該測定用センサ部100の検出結果が線形性を有していれば、行列S0の各要素は、入力磁場B0の大きさとは無関係な略一定の係数となる。
したがって、第1変換部110は、行列S0の逆行列を用いることで、次式のように、検出信号V0(V0x,V0y,V0z)を磁場信号B0(B0x,B0y,B0z)に変換することができる。第1変換部110は、算出した磁場信号B0を、測定用磁場信号として差分算出部140に供給する。ここで、行列S0の逆行列に等しい行列R0を、測定用センサ部100の補正行列とする。
同様に、第2変換部120は、複数の参照用センサ部200の出力を、各座標軸方向の磁場成分を示す複数の参照用磁場信号に変換する。第2変換部120は、予め定められた係数を用いて対応するセンサ部の検出信号を参照用磁場信号に変換する。
ここで、例えば、参照位置P1における入力磁場をB1(B1x,B1y,B1z)とし、センサ部S1X、センサ部S1Y、およびセンサ部S1Zによる3軸磁気センサの検出結果をV1(V1x,V1y,V1z)とする。この場合、3軸磁気センサの磁気センサ特性を行列S1とすると、次式のように示すことができる。
参照用センサ部200のそれぞれが、検出すべき入力磁場の範囲において、当該入力磁場に対する検出結果が線形性を有するので、行列S1の各要素は、入力磁場B1の大きさとは無関係な略一定の係数となる。また、参照用センサ部200が他軸感度を有していても、当該参照用センサ部200の検出結果が線形性を有していれば、行列S1の各要素は、入力磁場B1の大きさとは無関係な略一定の係数となる。
したがって、第2変換部120は、行列S1の逆行列を用いることで、次式のように、検出信号V1(V1x,V1y,V1z)を磁場信号B1(B1x,B1y,B1z)に変換することができる。第2変換部120は、算出した磁場信号B1を、参照用磁場信号として差分算出部140に供給する。ここで、行列S1の逆行列に等しい行列R1を、参照用センサ部200の補正行列とする。
以上のように、測定用センサ部100および参照用センサ部200のそれぞれが線形性を有するので、第1変換部110および第2変換部120は、略一定の係数を用いて磁場信号にそれぞれ変換することができる。即ち、第1変換部110および第2変換部120が用いる略一定の係数は、予め定めることができる。また、予め定められた係数は、対応する磁気センサのそれぞれの他軸感度を補正する係数を含めることもできる。
記憶部130は、第1変換部110および第2変換部120が用いる予め定められた係数を記憶する。これにより、第1変換部110および第2変換部120は、記憶部130から用いるべき係数を読み出して、入力磁場に応じた磁場信号をそれぞれ変換できる。
差分算出部140は、複数の測定用磁場信号および複数の参照用磁場信号の各座標軸方向の差分を示す複数の差分信号を算出する。差分算出部140は、例えば、複数の測定用磁場信号B0(B0x,B0y,B0z)および複数の参照用磁場信号B1(B1x,B1y,B1z)の各座標軸方向の差分を次式のように算出する。
差分算出部140は、算出結果を差分信号Bgrad(Bgradx,Bgrady,Bgradz)として出力する。ここで、参照用磁場信号B1(B1x,B1y,B1z)は、図4から図6で説明したように、環境磁場信号B_Envに相当する。また、測定用磁場信号B0(B0x,B0y,B0z)は、心磁信号B_sigに環境磁場信号B_Envが重畳した信号に相当する。したがって、差分信号Bgradの各要素は、各軸方向の心磁信号B_sigに対応する信号成分となる。
インターフェイス部150は、差分信号Bgradを信号処理部160に供給する。以上の測定装置1000は、入力磁場の測定を時系列に順次実行してよい。この場合、測定装置1000は、略一定の時間間隔で測定を実行してよい。インターフェイス部150は、時系列に測定した差分信号Bgradを順次信号処理部160に供給してよい。
信号処理部160は、差分算出部140が算出する差分信号Bgradに基づき、動物の心臓の心磁信号を算出する。信号処理部160は、時系列に測定した差分信号Bgradに基づき、心磁信号の時間波形を算出してよい。信号処理部160は、例えば、差分信号Bgradの大きさ(各要素の二乗和の平方根)を心磁信号の大きさとする。
また、信号処理部160は、数値処理を施してから心磁信号を算出してよい。信号処理部160は、例えば、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタ、および各フィルタの組み合わせ等のフィルタリング処理を実行して、雑音成分を低減させてから心磁信号を算出してよい。また、信号処理部160は、周波数変換を実行して、予め定められた帯域の信号を取得してから、心磁信号を算出してもよい。
以上のように、本実施形態に係る測定装置1000は、磁気抵抗効果素子を用いて微弱な磁場を検出するので、SQUIDセンサ等のように装置が大規模になることなく、簡易な構成で測定装置を実現できる。また、測定装置1000は、磁気センサに閉ループの構成を加えることで、入力磁場の範囲で線形な特性を保つので、磁場変換および他軸感度補正を予め定められた係数を用いて簡便に実行することができる。
なお、磁気抵抗効果素子等は、磁力線を局所的に曲げる磁気収束板等を用いることがあるが、このような磁気収束板によって他軸感度も増加する傾向にある。しかしながら、磁気抵抗効果素子および磁気収束板の配置が固定していれば、入出力特性は線形な特性を保つので、磁気収束板等を用いた場合であっても、磁場変換および他軸感度補正を予め定められた係数を用いて簡便に実行することができる。したがって、測定装置1000は、低コストで簡易な構成で、微弱な磁場を精度よく検出することができる。
また、測定装置1000の少なくとも一部は、一の素子に集積化することができる。この場合、インターフェイス部150は、当該素子のインターフェイスとして機能してもよい。そして、信号処理部160は、当該素子の外部に設けられ、他の処理機能等を有してもよい。これに代えて、信号処理部160も一の素子に集積化される場合、インターフェイス部150はなくてもよい。
このような測定装置1000は、磁場変換および他軸感度補正に用いる予め定められた係数を、磁場の大きさによらず略一定の値にすることができるので、当該係数の決定および校正等も容易に実行することができる。例えば、測定装置1000は、予め定められた方向および大きさの磁場が印加されることにより、予め定められた係数を決定する。
図8は、本実施形態に係る測定用センサ部100および参照用センサ部200に予め定められた磁場を印加する例を示す。図8に示す測定用センサ部100および参照用センサ部200は、図6で説明した測定用センサ部100および参照用センサ部200の配置と略同一に配置された例を示す。
測定用センサ部100および参照用センサ部200は、図8に示すように、X軸方向のテスト入力磁場Btx(1,0,0)、Y軸方向のテスト入力磁場Bty(0,1,0)、およびZ軸方向のテスト入力磁場Btz(0,0,1)がそれぞれ入力する。そして、測定装置1000は、各テスト入力磁場の検出信号に応じて、予め定められた係数を決定する。
例えば、テスト入力磁場Btx(1,0,0)の入力に応じて、測定用センサ部100からの検出信号がV0(V0x,V0y,V0z)となった場合、当該検出信号V0は、測定用センサ部100の磁気センサ特性S0を用いて次式のように示すことができる。
即ち、検出信号V0は、磁気センサ特性S0の第1列の各要素と略一致する。なお、ここで、Y軸方向およびZ軸方向の検出結果であるV0yおよびV0zの値が、当該磁気センサの他軸感度に対応する値を示す。
同様に、テスト入力磁場Bty(0,1,0)の入力に応じて検出される検出信号V0(V0x,V0y,V0z)は、磁気センサ特性S0の第2列の各要素と略一致する。また、テスト入力磁場Btz(0,0,1)の入力に応じて検出される検出信号V0(V0x,V0y,V0z)は、磁気センサ特性S0の第3列の各要素と略一致する。このように、測定装置1000は、異なる3方向の入力磁場に応じて、測定用センサ部100および参照用センサ部200の磁気センサ特性S0および磁気センサ特性S1を取得することができる。したがって、取得した磁気センサ特性S0および磁気センサ特性S1の逆行列を算出することにより、予め定められた係数、即ち、補正行列R0およびR1を決定することができる。
以上のように、予め定められた複数の方向の磁場を測定用センサ部100および参照用センサ部200に入力することで、予め定められた係数を決定することができる。この場合、予め定められた複数の方向の磁場として、XY平面と略平行に回転する回転磁場、XZ平面と略平行に回転する回転磁場、およびYZ平面と略平行に回転する回転磁場等を用いてもよい。また、測定装置1000は、このようなテスト入力磁場の入力に応じて、自動で予め定められた係数を決定および更新してもよい。このような測定装置1000について、次に説明する。
図9は、本実施形態に係る測定装置1000の変形例を示す。本変形例の測定装置1000において、図7に示された本実施形態に係る測定装置1000の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。本変形例の測定装置1000は、調節部170と、更新部180とを更に備える。
調節部170および更新部180は、複数の測定用センサ部100および複数の参照用センサ部200が測定対象50から離間して、予め定められた一様な磁場中に配置された場合に動作してよい。ここで、予め定められた一様な磁場は、環境磁場でよく、また、これに代えて、環境磁場よりも大きい一定強度の磁場でもよい。例えば、図8で説明したような、テスト入力磁場でよい。
調節部170は、差分算出部140が算出する差分信号が予め定められた信号範囲となるように、予め定められた係数を調節してよい。ここで、測定用センサ部100および参照用センサ部200には一様な磁場が入力するので、差分算出部140が算出する差分信号は略0となることが望ましい。しかしながら、測定用センサ部100および参照用センサ部200は、強磁性体材料等を含むので、製品出荷後に、外部から強磁場が印加された場合、磁気特性が変化することがある。即ち、測定装置1000の出荷段階において、差分信号を略0と校正しても、出荷後に、差分信号の値にずれが生じてしまうことがある。
そこで、調節部170は、測定用センサ部100および参照用センサ部200に一様な磁場が入力した場合に、差分算出部140が算出する差分信号が略0となるように予め定められた係数を調節する。即ち、調節部170は、(数8)式で示されるベクトルがゼロベクトルとなるように、係数を調節してよい。調節部170は、例えば、次式に示す2乗誤差ε2を最小にする、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムを実行する。ここで、R1,xx、R1,xy、R1,xz、R1,yx、R1,yy、R1,yz、R1,zx、R1,zy、およびR1,zzは、参照用センサ部200の補正行列R1の行列要素である。
この場合、調節部170は、一例として、εx2、εy2、およびεz2のそれぞれを最小にする。εx2、εy2、およびεz2のそれぞれは、デジタル信号V1x、V1y、およびV1zの線形代数となっているので、補正行列R1の行列要素を、漸化式を用いて更新することができる。一例として、εx2を最小にする目的で、補正行列R1の第1列目の係数R1,xx、R1,xy、およびR1,xzを更新する漸化式を次に示す。
補正行列R1の第2列目および第3列目の係数をそれぞれ更新する漸化式も、同様に導出することができ、調節部170は、このようなアルゴリズムを用いてよい。なお、(数11)式で示すようなアルゴリズムは、最急降下法として既知のアルゴリズムである。ここで、μは、アルゴリズムの時定数を決めるパラメータである。
調節部170は、一様な磁場が印加されている測定用センサ部100および参照用センサ部200から、検出信号V0(V0x,V0y,V0z)および検出信号V1(V1x,V1y,V1z)が出力される毎に、補正行列R1の係数をそれぞれ更新してよい。調節部170は、差分算出部140が算出する差分信号が予め定められた閾値未満となるまで、補正行列R1の係数をそれぞれ更新してよい。
更新部180は、調節部170による調整が終了すると、記憶部130に記憶された予め定められた係数を、調節部170の調節結果に更新する。測定装置1000は、更新部180が更新した係数を記憶部130から読み出して用いることにより、製品出荷後に磁気特性が変化したセンサ部を用いても、測定精度の劣化を防止することができる。
以上の本実施形態に係る測定用センサ部100および参照用センサ部200は、それぞれ閉ループの構成を有する第1磁場生成部30が、フィードバック磁場を発生させることを説明した。これに加えて、測定用センサ部100および参照用センサ部200のそれぞれは、略一定のオフセット磁場を更に発生させてもよい。このようなセンサ部10について次に説明する。
図10は、本実施形態に係るセンサ部10の変形例を示す。本変形例のセンサ部10において、図2に示された本実施形態に係るセンサ部10の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。本変形例のセンサ部10は、第2磁場生成部60を更に有する。
第2磁場生成部60は、環境磁場B_Envを減衰させるためのオフセット磁場を磁気センサ20に与える。図4および図5で説明したように、環境磁場B_Envは、測定装置1000が測定すべき心磁信号B_sigよりも1桁以上大きい強度を有する。即ち、センサ部10は、線形動作範囲のほとんどを略一定の強度の環境磁場B_Envが占め、残りの一部の範囲で心磁信号B_sigを測定することになる。したがって、センサ部10は、ダイナミックレンジのほとんどを一定磁場の検出に用い、例えば、ダイナミックレンジの1/10以下の領域で心磁信号B_sigを測定することになり、分解能等を悪化させてしまうことがある。
そこで、本変形例のセンサ部10は、環境磁場B_Envを低減させるように第2磁場生成部60がオフセット磁場を発生させることで、心磁信号B_sigの大きさとダイナミックレンジとのバランスを適正に調節することができる。これにより、センサ部10は、分解能等を悪化させずに、心磁信号B_sigを精度よく測定することができる。
第2磁場生成部60は、コイルを有してよく、当該コイルに電流I_Compが流れることによって環境磁場B_Envとは反対方向の磁場を発生させる。当該コイルは、磁気センサ20の全体にわたって均一のフィードバック磁場を発生させることが望ましい。第2磁場生成部60のコイルに流すキャンセル電流I_Compは、予め定められた電流値を流す電源等から供給されてよい。また、キャンセル電流I_Compは、参照用センサ部200が検出する環境磁場B_Envに応じた電流を生成する回路等によって供給されてもよい。測定装置1000は、測定用センサ部100および参照用センサ部200としてこのようなセンサ部10を採用することによって、より精度よく心磁信号B_sigを測定することができる。
図11は、本実施形態に係る磁気センサ20の具体例を示す。本具体例において、磁気センサ20は、磁気抵抗効果素子1110と、磁気抵抗効果素子1110の両端に配置された磁気収束板1120および1130とを有する。磁気収束板1120および1130は、磁気抵抗効果素子1110を間に挟むように、磁気抵抗効果素子1110の両端に配置されている。本図において、磁気収束板1120は、感磁軸に沿って磁気抵抗効果素子1110の負側に設けられ、磁気収束板1130は、感磁軸に沿って磁気抵抗効果素子1110の正側に設けられている。なお、ここで、感磁軸は、磁気抵抗効果素子1110を形成する磁化固定層で固定された磁化の方向に沿っていてよい。また、感磁軸の負側から正側に向かって磁場が入力されると、磁気抵抗効果素子1110の抵抗は増加または減少してよい。磁気収束板1120および1130は、例えばパーマロイ等の透磁率の高い材料により形成される。そして、磁気センサ20が本具体例に示すように構成される場合、コイル34は、磁気抵抗効果素子1110と、磁気抵抗効果素子1110の両端に配置された磁気収束板1120および1130との断面を取り囲むように巻かれている。また、磁気センサ20は、1つの磁気センサ20内に複数の磁気抵抗効果素子1110を有する場合、磁気抵抗効果素子およびその両端に配置された磁気収束板を含む組を複数有してもよい。その場合、磁気抵抗効果素子およびその両端に配置された磁気収束板を含む組を1つのコイルで取り囲むようにコイル34が巻かれてもよい。
このような磁気センサ20において、感磁軸の負側から正側に磁場が入力されると、透磁率の高い材料で形成された磁気収束板1120および1130が磁化されることにより、本図において破線で示すような磁束の分布が発生する。すると、磁気収束板1120および1130が磁化されることにより発生する磁束は、二つの磁気収束板1120および1130の間に挟まれた磁気抵抗効果素子1110の位置を通過することとなる。このため、磁気抵抗効果素子1110の位置における磁束密度は、磁気収束板1120および1130を配置することによって大幅に増加させることができる。また、本具体例のように、磁気収束板1120および1130に挟まれた狭い位置に配置された磁気抵抗効果素子1110を用いて磁場の空間分布をサンプリングすることにより、空間におけるサンプリング点を明確にすることができる。
図12は、本具体例に係る磁気センサ20にフィードバック磁場を発生させた時の磁束分布を示す。図12においては、図11と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。本具体例に係る磁気センサ20おいて、コイル34にフィードバック電流が供給されると、コイル34がフィードバック磁場を発生させることにより、本図において一点鎖線で示すような磁束の分布が発生する。このフィードバック磁場により発生する磁束は、磁気抵抗効果素子1110に入力され磁気収束板1120および1130によって磁気増幅された磁場の空間分布をキャンセルするように空間分布する。このため、磁気センサ20は、本具体例に示すように磁気抵抗効果素子1110の両端に磁気収束板1120および1130が配置されている場合には、磁気抵抗効果素子1110の位置における磁場分布をフィードバック磁場によって正確にキャンセルすることができるため、入力磁場と出力電圧との間の線形性が高いセンサを実現することができる。
図13は、本具体例に係る磁気センサ20の構成の一例を示す。図13においては、図11と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。本図において、磁気抵抗効果素子1110は、磁化自由層1310および磁化固定層1320を有する。一般に、磁気抵抗効果素子1110は、絶縁体の薄膜層を二つの強磁性体層で挟み込んだ構造である。磁化自由層1310は、二つの強磁性体層のうち、磁化方向が外部磁界に応じて変化する層である。また、磁化固定層1320は、二つの強磁性体層のうち、磁化方向が外部磁界に対して変化しない層である。
本具体例において、磁気抵抗効果素子1110は、磁化自由層1310が下部に配置され、磁化自由層1310の上部に絶縁体の薄膜層(図示せず)を介して磁化固定層1320が配置される、いわゆるボトムフリー構造の磁気抵抗効果素子である。ボトムフリー構造の磁気抵抗効果素子は、磁化自由層1310を比較的広い面積で形成することができるため、高い磁気感度を得ることができる。
また、本具体例において、磁気センサ20は、磁気抵抗効果素子1110の上部に絶縁層(図示せず)を介して磁気収束板1120および1130が、磁気抵抗効果素子1110を中央に挟むようにその両端に配置されている。これにより、磁気抵抗効果素子1110は、磁気収束板1120および1130に挟まれた狭い空間に配置される。
ここで、本図において、磁化自由層1310における感磁軸方向に沿った長さを磁化自由層長さL_Freeと定義する。また、磁化自由層1310における上面視で感磁軸方向に垂直な軸に沿った長さを磁化自由層幅W_Freeと定義する。また、磁化固定層1320における感磁軸方向に沿った長さを磁化固定層長さL_Pinと定義する。また、磁化固定層1320における上面視で感磁軸方向に垂直な軸に沿った長さを磁化固定層幅W_Pinと定義する。また、磁気収束板の外側の一端から磁化自由層の外側の一端までの感磁軸方向に沿った長さ(本図において、磁気収束板1120の左端から右端までの感磁軸方向に沿った長さ、および、磁気収束板1130の右端から左端までの感磁軸方向に沿った長さ)を磁気収束板長さL_FCと定義する。また、磁気収束板における上面視で感磁軸方向に垂直な軸に沿った長さを磁気収束板幅W_FCと定義する。また、磁気収束板における側面視で感磁軸方向に垂直な軸に沿った長さを磁気収束板厚さT_FCと定義する。また、二つの磁気収束板1120および1130の感磁軸方向に沿った間隔(本図において、磁気収束板1120の右端から磁気収束板1130の左端までの感磁軸方向に沿った長さ)を磁気収束板間隔G_FCと定義する。また、磁化自由層1310の厚み方向の中心から磁気収束板の底面までの、側面視で感磁軸方向に垂直な軸に沿った間隔を磁気収束板高さH_FCと定義する。
図14は、本具体例に係る磁気センサ20において、磁気収束板間隔G_FCを変えた場合の磁気増幅率のシミュレーション結果を示す。本図において、横軸は磁気収束板間隔G_FCをμm単位で示し、縦軸は磁気増幅率を示す。ここで、本シミュレーションにおいて、磁化自由層長さL_Freeは100μm、磁化自由層幅W_Freeは140μm、磁化固定層長さL_Pinは40μm、磁化固定層幅W_Pinは20μm、磁気収束板幅W_FCは300μm、磁気収束板高さH_FCは0.6μmとした。これらのパラメータについては以下に示すシミュレーションにおいても全て共通の値とした。本シミュレーションにおいては、さらに、磁気収束板長さL_FCは10mmとし、磁気収束板厚さT_FCは10μm、30μm、50μm、および100μmとしてシミュレーションを行った。
本図に示されるように、磁気センサ20は、磁気収束板間隔G_FCを狭めるほど磁気増幅率が高くなっている。ここで、磁化自由層長さL_Freeが100μmであるので、磁気収束板間隔G_FCが100μmである場合、側面視において、磁気収束板の側面と磁化自由層1310の側面が揃う(すなわち、図13において、磁気収束板1120の右端と磁化自由層1310の左端、および、磁気収束板1130の左端と磁化自由層1310の右端が側面視で揃う)こととなる。本シミュレーション結果によれば、磁気センサ20は、磁気収束板間隔G_FCが100μmよりも小さい場合に、磁気増幅率がさらに高くなっている。したがって、磁気センサ20は、磁気抵抗効果素子1110の両端に配置される磁気収束板1120および1130の感磁軸方向の間隔(磁気収束板間隔G_FC)が、磁気抵抗効果素子1110の磁化自由層1310の感磁軸方向の長さ(磁化自由層長さL_Free)よりも小さいと、より高い磁気増幅率を得られるので好ましい。また、磁気センサ20は、磁気収束板間隔G_FCを磁化固定層長さL_Pin(40μm)よりも小さくしてもよい。すなわち、磁気センサ20は、磁気収束板が上面視で磁化固定層の一部と重複するように磁気収束板を配置してもよい。
図15は、本具体例に係る磁気センサ20において、磁気収束板長さL_FCを変えた場合の磁気増幅率のシミュレーション結果を示す。本図において、横軸は磁気収束板長さL_FCをmm単位で示し、縦軸は磁気増幅率を示す。本シミュレーションにおいては、磁気収束板厚さT_FCは10μm、磁気収束板間隔G_FCは20μmとしてシミュレーションを行った。
本図に示されるように、磁気センサ20は、磁気収束板長さL_FCを長くするほど磁気増幅率が高くなっている。これは、透磁率の高い材料で形成された磁気収束板を長くするほど、発生する磁束が増えるためであるといえる。したがって、磁気センサ20は、磁気抵抗効果素子1110の両端に磁気収束板を設けるにあたって、設計上可能な限り磁気収束板の感磁軸方向の長さ(磁気収束板長さL_FC)を大きくすると、より高い磁気増幅率を得られるので好ましい。具体的に、磁気収束板の感磁軸方向の長さ(磁気収束板長さL_FC)は1mm以上であると、高い磁気増幅効果が得られるので好ましい。特に、本図に示されるように、磁気センサ20は、磁気収束板長さL_FCが10mmより小さい範囲では磁気増幅率の増加効果が高い。また、磁気収束板長さL_FCが10mm以上であれば、100倍以上の磁気増幅率が得られる。したがって、例えば心磁計などの生体磁場計測において、より微弱な磁場をより正確に検出するために、磁気収束板の感磁軸方向の長さ(磁気収束板長さL_FC)は10mm以上であるとより好ましい。
図16は、本具体例に係る磁気センサ20において、磁気収束板厚さT_FCを変えた場合の磁気増幅率のシミュレーション結果を示す。本図において、横軸は磁気収束板厚さT_FCをμm単位で示し、縦軸は磁気増幅率を示す。本シミュレーションにおいては、磁気収束板長さL_FCは10mm、磁気収束板厚さT_FCは10μm、磁気収束板間隔G_FCは20μmとしてシミュレーションを行った。
本図に示されるように、磁気センサ20は、磁気収束板厚さT_FCを厚くしていくと、ある点まで磁気増幅率は増加していき、その後、磁気増幅率が減少していく傾向にある。これは、ある点までは透磁率の高い材料で形成された磁気収束板を厚くするほど、発生する磁束が増えるため磁気増幅率が増加し、ある点を過ぎると、その磁気増幅効果よりも磁気収束板の厚み方向の中心が磁気抵抗効果素子1110から遠ざかり、磁気収束板により収束させた磁束が磁気抵抗効果素子1110を通過しにくくなる影響が強くなるためといえる。したがって、磁気収束板の厚さ(磁気収束板厚さT_FC)は、概ね100μm以内であると、より高い磁気増幅効果が得られるので好ましい。
図17は、本具体例に係る磁気センサ20において、磁気収束板間隔G_FCを一定として、磁気収束板長さL_FC/磁気収束板間隔G_FCを変えた場合の、磁気増幅率のシミュレーション結果を示す。本図において、横軸は磁気収束板長さL_FCを磁気収束板間隔G_FCで割った値を示し、縦軸は磁気増幅率を示す。本シミュレーションにおいては、磁気収束板厚さT_FCは10μm、磁気収束板間隔G_FCは20μmとしてシミュレーションを行った。
図17に示されるように、磁気センサ20は、磁気収束板長さL_FC/磁気収束板間隔G_FCが大きくなるほど磁気増幅率が高くなっている。これは、図14において磁気収束間隔G_FCが小さくなるほど磁気増幅率が高くなること、および、図15において磁気収束板長さL_FCが長くなるほど磁気増幅率が高くなることを反映しているといえる。本図に示されるように、磁気センサ20は、磁気収束板の感磁軸方向の長さ(磁気収束板長さL_FC)が、磁気抵抗効果素子1110の両端に配置される磁気収束板1120および1130の感磁軸方向の間隔(磁気収束板間隔G_FC)の10倍より大きいと、高い磁気増幅効果が得られるので好ましい。特に、磁気センサ20は、磁気抵抗効果素子1110の両端に配置される磁気収束板1120および1130の感磁軸方向の間隔(磁気収束板間隔G_FC)が、磁気抵抗効果素子1110の磁化自由層1310の感磁軸方向の長さ(磁化自由層長さL_Free)よりも小さく、磁気収束板の感磁軸方向の長さ(磁気収束板長さL_FC)が、磁気抵抗効果素子1110の磁化自由層1310の感磁軸方向の長さの10倍より大きいと、より高い磁気増幅効果が得られるのでより好ましい。さらに、磁気センサ20は、図14のシミュレーション結果から磁化自由層長さが100μmである場合、磁気収束板間隔G_FCが100μmより小さいことがより好ましく、図15のシミュレーション結果から10mm以上であることがより好ましいことが示されており、これらを踏まえて、磁気収束板の感磁軸方向の長さ(磁気収束板長さL_FC)が、磁気抵抗効果素子1110の両端に配置される磁気収束板1120および1130の感磁軸方向の間隔(磁気収束板間隔G_FC)の100倍以上であると、より高い磁気増幅率を得られるのでより好ましい。このように、磁気センサ20は、磁気収束板長さL_FCと磁気収束板間隔G_FCとを適切に設計することにより、高い磁気増幅率を実現することができる。
図18は、本具体例に係る磁気センサ20において、磁気収束板長さL_FCを一定として、磁気収束板長さL_FC/磁気収束板間隔G_FCを変えた場合の、磁気増幅率のシミュレーション結果を示す。本図において、横軸は磁気収束板長さL_FCを磁気収束板間隔G_FCで割った値を示し、縦軸は磁気増幅率を示す。本シミュレーションにおいては、磁気収束板長さL_FCは10mmとし、磁気収束板厚さT_FCは10μm、30μm、50μm、および100μmとしてシミュレーションを行った。
図19は、本具体例に係る磁気センサ20を測定用センサ部100および参照用センサ部200に適用した例を示す。図19においては、図6と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。本図において、測定用センサ部100は、3つのセンサ部S0X、S0Y、およびS0Zにおける磁気センサ20として図11に示す具体例に係る磁気センサ20を用いる。また、参照用センサ部200は、3つのセンサ部S1X、S1Y、およびS1Zにおける磁気センサ20として図11に示す具体例に係る磁気センサ20を用いる。測定用センサ部100および参照用センサ部200は、それぞれのセンサ部に磁気抵抗効果素子1110の両端に磁気収束板1120および1130が配置された磁気センサ20を用いることにより、上述したような磁気増幅効果を得るとともに、空間におけるサンプリング点を明確にすることができる。
また、測定装置1000は、測定用センサ部100および参照用センサ部200のそれぞれのセンサ部における磁気センサ20として、磁気収束板長さL_FCと磁気収束板間隔G_FCとが最適化された磁気センサ20を用いることにより、例えば100倍を超える磁気増幅率を実現することができ、心磁計等の生体磁場計測において、より微弱な磁場をより正確に検出することが可能となる。
さらに、本図に示すように、測定用センサ部100における3軸の磁気センサであるセンサ部S0X、S0Y、およびS0Zは、X軸、Y軸、およびZ軸の三次元方向それぞれから見て、互いに重ならず、かつ、3軸の磁気センサの間に設けるギャップに一端が設けられ、他端が当該ギャップから離れるように3軸方向の各軸方向に延伸して配置されている。一例として、本図において、測定用センサ部100の正面視左下の角部に空隙(ギャップ)が設けられ、センサ部S0X、S0Y、およびS0Zは、一端が当該空隙に接するように設けられ、他端が当該空隙から離れるように、X軸、Y軸、およびZ軸方向の各軸方向に延伸して配置されている例を示す。また、センサ部S0X、S0Y、およびS0Zが有するコイルまたは磁性体が、互いに重ならないように配置されていることが好ましい。これにより、サンプリング点をさらに明確にでき、磁場の各成分の把握がさらに容易となる。また、センサ部S0X、S0Y、およびS0Zが有する他軸感度を互いに等価なものとみなすことができ、線形代数の較正演算が容易となる。なお、この他軸感度は、センサ部S0X、S0Y、およびS0Zが有するコイル、または磁性体による相互干渉によって発生するものである。参照用センサ部200についても測定用センサ部100と同様の較正を有する。測定用センサ部100および参照用センサ部200のそれぞれのセンサ部をこのような較正とすることにより、測定装置1000は、例えば心磁計等の生体磁場計測において、より微弱な磁場をより正確に検出することが可能となる。
図20は、本具体例に係る磁気センサ20を適用した測定用センサ部100と3つの参照用センサ部200a〜cとを配置した例を示す。本図において、測定用センサ部100と、3つの参照用センサ部200a〜cとが配置されている。測定用センサ部100は座標(0,0,0)に、参照用センサ部200aは座標(L,0,0)に、参照用センサ部200bは座標(0,L,0)に、参照用センサ部200cは座標(0,0,L)に、それぞれ配置されている。測定用センサ部100および3つの参照用センサ部200a〜cは、互いに最近接させる形で配置されている。例えば、心磁計においては、心磁場の空間分布を計測することによって心臓における電気活動を検出するため、隣接するセンサ部は、互いに近接して配置されていることが望ましく、例えば、虚血性心不全の診断などで用いられる場合には、必要な空間分解能を得るために、感磁軸方向に隣接するセンサ部の間隔(本図におけるL)を3cm以下とすることが望ましい。
このような限られた間隔の中でも高い磁気感度を得るために、測定用センサ部100および3つの参照用センサ部200a〜cは、磁気収束板の感磁軸方向の長さL_FCをできるだけ大きくすることが望ましい。より詳細には、二つの磁気収束板の感磁軸方向の長さと、二つの磁気収束板の感磁軸方向の間隔の和が、感磁軸方向に隣接するセンサ部の間隔の半分より大きくなるように(すなわち、2×磁気収束板長さL_FC+磁気収束板間隔G_FC>0.5×Lを満たすように)、各センサ部における磁気センサ20を設計すると、限られた間隔の中でも高い磁気感度を得ることができるため、好ましい。
一般に、このように各センサ部を接近して配置すると、各3軸センサの間での相互の磁気干渉が無視できなくなるが、本実施形態に係る測定装置1000によれば、上述したように(数6)および(数7)の数式に従って、各3軸センサ自身の磁気感度誤差(X、Y、およびZ軸での主軸感度のミスマッチ、および、多軸感度)だけでなく、隣接するセンサ部からの磁気干渉無含めて補正することが可能である。
また、本図に示すように測定用センサ部100および3つの参照用センサ部200a〜cを配置することで、測定装置1000は、X軸、Y軸、Z軸方向のそれぞれの磁場の勾配を取得することができる。
すなわち、測定装置1000は、測定用センサ部100および参照用センサ部200aによって計測されたそれぞれの磁場を用いて、次式により、X軸方向の磁場勾配を得る。ここで、Baxは参照用センサ部200aにおいて計測されたX軸方向の磁場を示し、Bayは参照用センサ部200aにおいて計測されたY軸方向の磁場を示し、Bazは参照用センサ部200aにおいて計測されたZ軸方向の磁場を示す。そして、測定装置1000は、測定用センサ部100において計測されたX軸方向の磁場B0xから磁場Bayを減算することで、X軸方向の磁場に対するX軸方向の磁場勾配としてBgrad01xを得る。また、測定装置1000は、測定用センサ部100において計測されたY軸方向の磁場B0yから磁場Bayを減算することで、Y軸方向の磁場に対するX軸方向の磁場勾配としてBgrad01yを得る。また、測定装置1000は、測定用センサ部100において計測されたZ軸方向の磁場B0zから磁場Bazを減算することで、Z軸方向の磁場に対するX軸方向の磁場勾配としてBgrad01zを得る。
また、測定装置1000は、測定用センサ部100および参照用センサ部200bによて計測されたそれぞれの磁場を用いて、次式により、Y軸方向の磁場勾配を得る。ここで、Bbxは参照用センサ部200bにおいて計測されたX軸方向の磁場を示し、Bbyは参照用センサ部200bにおいて計測されたY軸方向の磁場を示し、Bbzは参照用センサ部200bにおいて計測されたZ軸方向の磁場を示す。そして、測定装置1000は、X軸方向の磁場勾配と同様の手法により、X軸方向の磁場、Y軸方向の磁場、およびZ軸方向の磁場のそれぞれに対するY軸方向の磁場勾配を得る。
さらに、測定装置1000は、測定用センサ部100および参照用センサ部200cによって計測されたそれぞれの磁場を用いて、次式により、Z軸方向の勾配磁場を得る。ここで、Bcxは参照用センサ部200cにおいて計測されたX軸方向の磁場を示し、Bcyは参照用センサ部200cにおいて計測されたY軸方向の磁場を示し、Bczは参照用センサ部200cにおいて計測されたZ軸方向の磁場を示す。そして、測定装置1000は、X軸方向の磁場勾配と同様の手法により、X軸方向の磁場、Y軸方向の磁場、およびZ軸方向の磁場のそれぞれに対するZ軸方向の磁場勾配を得る。
このように、測定装置1000は、測定用センサ部100および参照用センサ部200を配置することによって、3軸方向の磁場それぞれに対する3軸方向の磁場勾配を取得することができ、より詳細な磁場の空間分布を取得することができる。
図21は、本具体例に係る磁気センサ20を適用した複数のセンサ部をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向のそれぞれに配列したセンサアレイ2100を示す。本図においては、一例として、X軸方向に四つ、Y軸方向に四つ、およびZ軸方向に二つのセンサ部がアレイ状に配置されている。そして、測定装置1000は、センサアレイ2100を用いて、各座標に配置された一つのセンサ部を測定用センサ部100とし、そのセンサ部に各軸方向に隣接する3つのセンサ部を参照用センサ部200a〜cとすることで、各座標における3軸方向の磁場それぞれに対する3軸方向の磁場勾配を取得することができる。
以上の本実施形態に係る測定装置1000は、測定用磁場信号および参照用磁場信号の差分信号を算出することにより、心磁信号B_sigを測定することを説明した。これに加えて、測定装置1000は、予め雑音成分等を除去する処理を実行してから測定用磁場信号および参照用磁場信号の差分信号を算出してもよい。例えば、測定装置1000は、磁気センサ20の検出信号の高周波成分を通過させるフィルタを更に備えてよい。フィルタは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで構成されてよい。また、フィルタは、ハイパスフィルタでよい。
フィルタは、測定用センサ部100および第1AD変換部102の間と、参照用センサ部200および第2AD変換部104の間に設けられてよい。これに代えて、またはこれに加えて、フィルタは、第1AD変換部102の後段と、第2AD変換部104の後段に設けられてよい。なお、ハイパスフィルタは雑音成分を除去するフィルタの一例であり、測定装置1000は、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタ、および各フィルタの組み合わせ等を用いてもよい。
以上の本実施形態に係る測定装置1000は、図6に示すように、予め定められた距離だけ離間した測定用センサ部100による3軸センサおよび参照用センサ部200による3軸センサを用いる例を説明したが、これに限定されることはない。測定装置1000は、更に多くの測定用センサ部100および参照用センサ部200を備えてもよい。
例えば、複数の測定用センサ部100は、測定対象50の複数の測定位置のそれぞれに設けられてよい。この場合、複数の測定用センサ部100は、心磁信号を検出可能な異なる複数の測定位置に、それぞれ多軸センサとして動作するように複数ずつ設けられてよい。複数の測定用センサ部100は、測定位置毎に、3軸センサとして構成されるように、複数ずつ設けられることが望ましい。一例として、複数の測定用センサ部100は、心臓近辺の体表面において格子状または同心円状に、3つずつ配置される。
この場合、第1AD変換部102および第1変換部110は、測定対象50の測定位置毎に、複数の測定用センサ部100の出力を複数の測定用磁場信号に変換してよい。なお、第1変換部110は、複数設けられてもよい。
同様に、複数の参照用センサ部200は、複数の測定位置に対応して、複数の測定位置から離間した複数の参照位置のそれぞれに設けられてよい。この場合、複数の参照用センサ部200は、心磁信号が十分低減して環境磁場だけを検出可能な異なる複数の参照位置に、それぞれ多軸センサとして動作するように複数ずつ設けられてよい。複数の参照用センサ部200は、参照位置毎に、3軸センサとして構成されるように、複数ずつ設けられることが望ましい。一例として、複数の参照用センサ部200は、心臓近辺の体表面から離間した面において格子状または同心円状に、3つずつ配置される。
この場合、第2AD変換部104および第2変換部120は、参照位置毎に、複数の参照用センサ部200の出力を複数の参照用磁場信号に変換してよい。なお、第2変換部120は、複数設けられてもよい。
そして、差分算出部140は、測定対象50の測定位置毎に、対応する複数の測定用磁場信号および複数の参照用磁場信号の各座標軸方向の差分を示す複数の差分信号を算出してよい。なお、差分算出部140は、複数設けられてもよい。以上の測定装置1000によれば、複数の測定位置における心磁信号をそれぞれ測定することができ、より詳細な情報を取得することができる。
なお、測定装置1000が、複数の測定用センサ部100による複数の3軸センサと、複数の参照用センサ部200による複数の3軸センサとを備える例を説明したが、これに限定されることはない。例えば、参照用センサ部200による3軸センサの数は、測定用センサ部100による3軸センサの数よりも少なくてよい。この場合、差分算出部140は、測定用センサ部100による複数の3軸センサの測定用磁場信号から、参照用センサ部200による一の3軸センサの参照用磁場信号をそれぞれ差し引いて、差分信号を算出してよい。
例えば、複数の参照用センサ部200は、複数の測定位置から離間した一の参照位置に設けられる。複数の参照用センサ部200は、一の3軸センサとして動作してよい。そして、第2AD変換部104および第2変換部120は、一の参照位置における複数の参照用センサ部200の出力を複数の参照用磁場信号に変換してよい。これにより、差分算出部140は、複数の測定位置に対応する複数の測定用磁場信号と、一の参照位置における複数の参照用磁場信号との各座標軸方向の差分を示す複数の差分信号を算出する。したがって、測定装置1000は、より少ない数の参照用センサ部200で、詳細な情報を取得することができる。
以上の本実施形態における測定装置1000は、測定対象50の例を動物の心臓として、心磁信号を測定する例を説明したが、これに限定されることはない。測定対象50は、磁気信号を出力するものであればよく、動物の他の臓器であってよい。例えば、測定対象50は脳でよく、この場合、測定装置1000は脳波を測定する。また、測定対象50は、コンクリート内部の鉄骨等でよく、この場合、測定装置1000は、当該鉄骨等の強磁性材料の表面近傍の傷や腐食の発生を測定する。また、測定対象50は、生体試料および環境試料等でよく、測定装置1000は、磁気ビーズの分布やカウンタなどの測定装置であってもよい。
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
図22は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD−ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD−ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
プログラムが、DVD−ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROMドライブ2226(DVD−ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。