JP2019044512A - 道路防護柵用可撓性支柱 - Google Patents
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Abstract
Description
道路防護柵は、主として、走行車両が対向車線や歩道などに逸脱するのを防ぐために車道に沿って設置するための柵状の施設であり、車道に沿ってビームや索体が支柱によって支持されている構造を基本態様とした施設である。
これに関し、ケーブル式の道路防護柵に関する従来技術が特許文献1に、道路防護柵に用いられる支柱に関する従来技術が特許文献2によって開示されている。
このような破壊や変形を前提とするものの場合、例えば折れ曲がった支柱が車道側に突出してしまうと、これが走行車両等に対して攻撃性を有し、二次災害を生じさせるおそれも否定できない。このような問題は、特に、車線を往復の方向別に区分する箇所に設けられる道路防護柵において顕著となる傾向がある。また、供用済みの橋梁部において車線を往復の方向別に区分する箇所に道路防護柵を設置するためには橋梁床版を改築しなければならず、多大な費用と工期を必要した。
道路防護柵に用いられる支柱であって、ビーム若しくは索体を保持する保持部を有する支柱本体部と、道路の車両進行方向に沿った弱軸方向を有することにより、支柱が倒れる方向を誘導する倒れ方向誘導部材と、を備えることを特徴とする道路防護柵用可撓性支柱。
前記倒れ方向誘導部材の弱軸方向が、道路の車両進行方向に対して所定角度回転していることを特徴とする構成1に記載の道路防護柵用可撓性支柱。
前記回転の方向が、道路の車両進行方向に対して時計回り、または、反時計回りであることを特徴とする構成2に記載の道路防護柵用可撓性支柱。
前記回転の角度が、6°以下であることを特徴とする構成2又は3に記載の道路防護柵用可撓性支柱。
前記倒れ方向誘導部材の、弱軸方向への荷重に対する曲げ強さが、前記支柱本体部の曲げ強さと同等であることを特徴とする構成1から4の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱。
前記倒れ方向誘導部材の、弱軸方向への荷重に対する曲げ強さが、前記支柱本体部の曲げ強さより小さいことを特徴とする構成1から4の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱。
前記倒れ方向誘導部材の曲げ強さが最小値となる箇所が、所定長さ以上形成されていることを特徴とする構成1から6の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱。
前記倒れ方向誘導部材がくびれ部を有する板状部材によって形成され、前記くびれ部によって前記倒れ方向誘導部材の曲げ強さが最小値となる箇所が形成されていることを特徴とする構成1から7の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱。
支柱固定用のベースプレート部材を備え、前記倒れ方向誘導部材が、前記支柱本体部と前記ベースプレート部材との間に配されていることを特徴とする構成1から8の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱。
構成1から9の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱を備えることを特徴とする道路防護柵。
構成10に記載の道路防護柵が、車線を往復の方向別に区分する箇所に設置されていることを特徴とする交通安全施設。
本実施形態の道路防護柵用可撓性支柱1は、ワイヤロープ式の道路防護柵に用いられる支柱である。ワイヤロープ式防護柵は、数百mを1スパンとして、複数のワイヤロープを一定長延展し、両端末を端末支柱に繋止して張力を与えると共に、端末支柱間に所定の間隔で中間支柱を設置し、ワイヤロープの中間部を支持する構造になっている。本実施形態の道路防護柵用可撓性支柱1は、このようなワイヤロープ式道路防護柵に用いられる中間支柱である。ワイヤロープ式道路防護柵における中間支柱以外の具体的な構成(端末支柱等の具体的な構成)は従来と同様であるため、ここでの説明を省略する。
支柱本体部11のスリット11SにワイヤロープRとスペーサー14が順番に設置され(本実施形態ではワイヤロープRが5本)、最上部にキャップ15が嵌められることで、各ワイヤロープRが保持される。即ち、スリット11S、スペーサー14及びキャップ15によって、ワイヤロープRを保持する保持部が構成される。なお、当該構造(ワイヤロープを保持する構造)の概念は、特許文献1と同様であり、これによる作用効果やその構造のバリエーション等についても特許文献1と同様であるため、ここでのこれ以上の説明を省略する。
支柱本体部11の下端側には、リブプレート12を取り付けるためのスリットが形成される。当該スリットは、リブプレート12を受け入れるだけの幅を有し、ここにはめ込まれたリブプレート12と支柱本体部11は、溶接によって固着される。スリットの長さは、必要な溶接継手の強度が得られる深さで形成される。
本実施形態においては、倒れ方向誘導部材として、くびれ部を有する板状部材であるリブプレート12を用いている。板状の部材であることにより、弱軸を有するものであり、図1(d)からも理解されるように、リブプレート12の板厚方向が道路の車両進行方向となるように設置されることで、道路の車両進行方向に弱軸方向を有する。
図2は、リブプレート12を示す図であり、図2(a):正面図、図2(b):側面図である。
リブプレート12は、上端部121において支柱本体部11と接合(溶接)され、下端部123においてベースプレート13と接合(溶接)される。上端部121と下端部123は、それぞれの溶接において、必要な溶接継手の強度が得られるだけの形状(寸法)を有して形成されている。
リブプレート12は、上端部121と下端部123の間となる部分において、くびれ部122を形成することで断面積を減少させ、リブプレート12の弱軸方向への荷重に対する曲げ強さを支柱本体部11の曲げ強さと同等にしている。支柱本体部11は、前述のごとく、その上端側からスリット11Sが形成されており、従って、当該スリット11Sが形成されている箇所において、断面係数が最小となっている。当該支柱本体部11における断面係数の最小値と同等となるように、リブプレート12のくびれ部122が形成され、これによって、支柱本体部11とリブプレート12の曲げ強さを同等にしているものである。このようにすることで、車両衝突時等においてリブプレート12のくびれ部122において支柱が曲がるようにしつつ、支柱全体としての曲げ強度は下がらないようにしているものである。
くびれ部122(即ち、曲げ強さが最小値となる箇所)は、所定長さ以上形成され、本実施形態では、70mmの長さで形成されている。
ここで用いられるアンカーボルトは、ラバーポール用のアンカーであり、本実施形態の道路防護柵用可撓性支柱1(及びこれを用いた道路防護柵)は、車線を往復の方向別に区分する箇所に設置されているラバーポールとの置換が容易に行えるものである。
次に、本実施形態の道路防護柵用可撓性支柱1や、これに対する比較例となる支柱に対する衝突実験について説明する。図4に、当該支柱衝突実験の実験条件を示した。
衝突実験は、図4(a)に示される各支柱に対して行った。
図4(a)の右端に示した“割込みリブ2式”が本実施形態の道路防護柵用可撓性支柱1である。
図4(a)の中央に示した“割込みリブ1式”は、本実施形態の道路防護柵用可撓性支柱1と同様に、弱軸を有するリブプレート(倒れ方向誘導部材)を備える支柱であるが、そのくびれ部における断面係数が最小となる箇所(即ち、曲げ強さが最小値となる箇所)が点として形成されている(長さがない)ものである。
図4(a)の左端に示した“ベースポスト式”は、本発明に係る“弱軸を有する倒れ方向誘導部材”を備えておらず、ベースプレートに支柱本体より径の大きなパイプ(ベースポスト)が溶接固定されていて、このベースポストに支柱本体が入れ込まれて立てられ、ボルトで固定されているものである。
なお、ベースプレートは図4(b)に示したものを共通に使用し、アンカーとしてラバーポール用のアンカーボルトを使用した。
重錘は200cm×100cm×50cmの直方体の鉄筋コンクリートで、重量が2665Kgのものを用いた。当該重錘をクレーンで吊り下げたものをバックホウで後方に引っ張り上げた状態から解放し、これによって振り子状に運動する重錘を支柱に衝突させた。
衝突実験は、図4(c)に示されるように、各支柱に対して横断方向と延長方向の直交する2方向に衝突させて行った。横断方向とは、道路に設置された状態における道路横断方向であり、延長方向は、道路防護柵が延長される方向、即ち、道路の車両進行方向である。従って、本実施形態の道路防護柵用可撓性支柱1のリブプレート12は、横断方向において強軸方向を有し、延長方向において弱軸方向を有することになる。
重錘の吊り下げ高さ(即ち、支柱への衝突位置)は図4(c)に示した通りであり、バックホウによる後方への引き上げは、2.95m(延長方向荷重の場合)〜3.05m(横断方向荷重の場合)とした。
なお、“弱軸を有するリブプレート(倒れ方向誘導部材)”を備える割込みリブ1式と割込みリブ2式については、延長方向に対して45°で衝突させる実験も行った。なお、45°で衝突させる実験は、実験現場の都合上、ベースプレートが図4(b)に示したものではなく、アンカーボルトを12本使用する略長方形のベースプレートを使用して行った。
なお、表中の測定1(支柱高さ)〜測定4(ベースの浮き上がり)は、図5に示した箇所をそれぞれ測定したものである。
また、衝突後の支柱の状態を撮影した写真を図6〜8に示した。図6が“ベースポスト式”の結果写真であり、図6(a):横断方向の結果写真、図6(b):延長方向の結果写真を示す。図7,8が、それぞれ“割込みリブ1式”と“割込みリブ2式”の結果写真であり、図7(a):割込みリブ1式の横断方向の結果写真、図7(b)割込みリブ1式の延長方向の結果写真、図7(c):割込みリブ1式の45°方向の結果写真、図8(a):割込みリブ2式の横断方向の結果写真、図8(b)割込みリブ2式の延長方向の結果写真、図8(c):割込みリブ2式の45°方向の結果写真である。
横断方向への衝突実験については、“割込みリブ1式”の場合、支柱の飛散は無かったものの、リブプレートに破断が見られた。“割込みリブ1式”では、リブプレートのくびれ部における曲げ強さが最小となる箇所が点として形成されている(長さがない)ため、ここに応力が集中し、破断されたものと考えられる。従って、曲げ強さが最小となる箇所を所定長さ以上に形成した方が良いと考えられる。
曲げ強さが最小となる箇所を所定長さ以上に形成している“割込みリブ2式”では、横断方向への衝突実験においてもリブプレートに破断は見られず、良好な結果であった。横断方向(強軸方向であり、弱軸方向に対して90°)という厳しい条件下においても、リブプレートが弱軸を有することにより、支柱が倒れる方向が弱軸方向へと誘導され、「測定3左右のズレ」が500mmという結果となっている。
45°の衝突角度とした場合においては、図7(c)、図8(c)に示されるように、“割込みリブ1式”と“割込みリブ2式”の何れについても、支柱が延長方向(弱軸方向)に概ね沿って倒れており、より有効に、支柱が倒れる方向を誘導できており、非常に良好な結果が得られた。実際の道路においては、道路用防護柵に対して直角(横断方向)に衝突することは稀であり、ある程度の角度で衝突することが想定されるため、「支柱の倒れ方向の誘導」という機能としては、“割込みリブ1式”と“割込みリブ2式”の何れについても十分に有効な結果であった。
特に、本発明に係る道路防護柵用可撓性支柱(及びこれを備えた道路防護柵)を、車線を往復の方向別に区分する箇所(例えば中央帯)に用いると有用である。
また、本実施形態の道路防護柵用可撓性支柱1(及びこれを備えた道路防護柵)によれば、アンカーとしてラバーポール用のアンカーボルト(比較的短いアンカー)を使用しても、舗装がはがれてアンカーごと抜けてしまうことがなく、事故後の復旧作業を迅速に行うことが可能であり、コスト低減にもなる。ラバーポール用のアンカーボルトを使用可能(ラバーポール用のアンカーボルトによって所定の強度を得られる)ということは、供用済みの橋梁部において道路防護柵を設置する場合においても、橋梁床版を改築する必要がなく、多大な費用と工期を削減することが可能である。本実施形態の道路防護柵用可撓性支柱(及びこれを備えた道路防護柵)を、橋梁等における道路防護柵に使用することにより、アスファルト舗装の破壊を抑止し、かつ、車両の突出量を減らすことが可能となる。
また、本実施形態では、倒れ方向誘導部材(リブプレート)が、支柱本体部とベースプレート部材との間に配されるものを例としたが、これに限るものではなく、例えば、支柱本体部の中間となる位置に、倒れ方向誘導部材を設けるようにしても構わない。
また、本実施形態では、ワイヤロープ式の防護柵用の支柱を例としているが、これに限るものではなく、ビームを支持する支柱(いわゆる“ガードレール”に使用する支柱)として使用するもの等であってもよい。
図9は、倒れ方向誘導部材(リブプレート12)の弱軸方向を、道路の車両進行方向に対して所定角度(ここでは5°)回転させた道路防護柵用可撓性支柱の一例を示した。
図9に示した道路防護柵用可撓性支柱1´を構成する各部材は、上記説明した実施形態の道路防護柵用可撓性支柱1と基本的に同様のものであるが、支柱本体部11の上部に設けられるスリット11Sと、支柱本体部11の下部のリブプレート12を取り付けるためのスリットの相対角度が異なっている。実施形態の道路防護柵用可撓性支柱1では両者の相対角度が略90°であったが、図9の道路防護柵用可撓性支柱1´では、これに対して5°回転している。これにより、図9(b)からも理解されるように、リブプレート12の弱軸方向が、道路の車両進行方向に対して5°回転して配されている。
横断方向への応力が加わると、図7(a)(割込みリブ1式の横断方向の衝突実験結果写真)のごとく、リブプレートが破断してしまうことが懸念される(強軸方向に力が加わると、衝撃が吸収され難く、破断につながってしまう)。
これに対し、図9で示したように、横断方向に対して強軸の方向を少しずらしておく(ここでは5°回転させている)ことにより、ワイヤロープRから受ける応力の方向と強軸の方向にズレを生じさせることができる。これにより、リブプレート部分が捻じれるように曲がることで、衝撃を吸収し、破断が生じることが抑止される。
なお、倒れ方向誘導部材の弱軸方向を、道路の車両進行方向に対して回転させる方向は、道路の車両進行方向に対して時計回りとした方が好適である。車線(左側通行)を往復の方向別に区分する箇所に設けられる防護柵において、このようにすることで、倒れ方向誘導部材の弱軸方向を車両の進行方向(衝突方向)により沿った方向とすることができる(防護柵を路側帯に設ける場合(若しくは右側通行の場合)には、反時計回りとすればよい)。
また、倒れ方向誘導部材の弱軸方向を、道路の車両進行方向に対して回転させる角度は、6°以下であると好ましい。
これより、車両唐突時等において、道路防護柵用可撓性支柱が、倒れ方向誘導部材部分においてより曲がり易くなり、道路防護柵用可撓性支柱の折れ曲がり方向を車両進行方向へと誘導する効果をより高くすることができる。
11...支柱本体部
11S...スリット(保持部)
12...リブプレート(倒れ方向誘導部材)
122...くびれ部
13...ベースプレート
14...スペーサー(保持部)
15...キャップ(保持部)
R...ワイヤロープ(索体)
Claims (11)
- 道路防護柵に用いられる支柱であって、
ビーム若しくは索体を保持する保持部を有する支柱本体部と、
道路の車両進行方向に沿った弱軸方向を有することにより、支柱が倒れる方向を誘導する倒れ方向誘導部材と、
を備えることを特徴とする道路防護柵用可撓性支柱。 - 前記倒れ方向誘導部材の弱軸方向が、道路の車両進行方向に対して所定角度回転していることを特徴とする請求項1に記載の道路防護柵用可撓性支柱。
- 前記回転の方向が、道路の車両進行方向に対して時計回りであることを特徴とする請求項2に記載の道路防護柵用可撓性支柱。
- 前記回転の角度が、6°以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の道路防護柵用可撓性支柱。
- 前記倒れ方向誘導部材の、弱軸方向への荷重に対する曲げ強さが、前記支柱本体部の曲げ強さと同等であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱。
- 前記倒れ方向誘導部材の、弱軸方向への荷重に対する曲げ強さが、前記支柱本体部の曲げ強さより小さいことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱。
- 前記倒れ方向誘導部材の曲げ強さが最小値となる箇所が、所定長さ以上形成されていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱。
- 前記倒れ方向誘導部材がくびれ部を有する板状部材によって形成され、前記くびれ部によって前記倒れ方向誘導部材の曲げ強さが最小値となる箇所が形成されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱。
- 支柱固定用のベースプレート部材を備え、
前記倒れ方向誘導部材が、前記支柱本体部と前記ベースプレート部材との間に配されていることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱。 - 請求項1から9の何れかに記載の道路防護柵用可撓性支柱を備えることを特徴とする道路防護柵。
- 請求項10に記載の道路防護可撓性柵が、車線を往復の方向別に区分する箇所に設置されていることを特徴とする交通安全施設。
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