JP2019044038A - 化学重合開始剤、接着性組成物、歯科用セメントおよび歯科用接着剤 - Google Patents

化学重合開始剤、接着性組成物、歯科用セメントおよび歯科用接着剤 Download PDF

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Abstract

【課題】酸および水の存在下で高い重合活性を有すると共に、保存安定性に優れること。【解決手段】(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物を含み、且つ、過酸化物を含まないことを特徴とする化学重合開始剤、ならびに、これを用いた接着性組成物、歯科用セメントおよび歯科用接着剤。【選択図】なし

Description

本発明は、化学重合開始剤、接着性組成物、歯科用セメントおよび歯科用接着剤に関するものである。
酸および水の存在下で重合活性を発揮する化学重合開始剤は、たとえば、歯質に対する優れた接着性が求められる歯科用の接着性組成物などにおいて利用されている。このような化学重合開始剤としては様々なものが提案されている。
たとえば、特許文献1には、アリールボレート化合物、酸性化合物および有機過酸化物からなり、触媒成分として実質的にアミン化合物を含まない化学重合開始剤が提案されており、特許文献2には、アリールボレート化合物、酸性化合物、無機過酸化物および2価の銅化合物を含む化学重合開始剤が提案されている。
特開2002−187907号公報 特開2011−121869号公報
特許文献1、2等に例示されるように、高い重合活性が容易に得られやすいことから化学重合開始剤には、酸化剤として、過酸化物が多用されている。過酸化物は強力な酸化剤として機能するため、重合活性の向上には有利であるが、その一方で、通常、極めて不安定であり、特に熱により容易に分解し易い。このため、過酸化物を用いた化学重合開始剤では、たとえ、過酸化物とこれと反応しやすい化学重合開始剤中の他の成分と分離して保管したとしても、保存安定性の点では不利になり易い。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、酸および水の存在下で高い重合活性を有すると共に、保存安定性に優れた化学重合開始剤、ならびに、これを用いた接着性組成物、歯科用セメントおよび歯科用接着剤を提供することを課題とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
本発明の化学重合開始剤は、(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物を含み、且つ、過酸化物を含まないことを特徴とする。
本発明の化学重合開始剤の一実施形態は、(a)有機スルフィン酸塩が、ベンゼンスルフィン酸塩、および、トルエンスルフィン酸塩からなる群より選択される少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。
本発明の化学重合開始剤の他の実施形態は、(b)アリールボレート化合物が、下記一般式(1)で示される化合物を含むことが好ましい。
Figure 2019044038
〔一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基、または、アルケニル基であり;R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、または、フェニル基であり;Lは、金属陽イオン、4級アンモニウムイオン、4級ピリジニウムイオン、4級キノリニウムイオン、または、ホスホニウムイオンである。〕
本発明の化学重合開始剤の他の実施形態は、(c)第四周期遷移金属化合物が、IV価のバナジウム化合物、および、V価のバナジウム化合物からなる群より選択されるいずれかのバナジウム化合物を含むことが好ましい。
本発明の化学重合開始剤の他の実施形態は、(c)第四周期遷移金属化合物が、酸化バナジウム(V)、バナジン酸ナトリウム(V)、オキシ三塩化バナジウム(V)、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、および、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、からなる群より選択されるいずれか1種以上バナジウム化合物を含むことが好ましい。
本発明の化学重合開始剤の他の実施形態は、(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物の合計量Tに対する(a)有機スルフィン酸塩の配合割合Xが15質量%〜45質量%であり、合計量Tに対する(b)アリールボレート化合物の配合割合Yが55質量%〜85質量%であり、合計量Tに対する(c)第四周期遷移金属化合物の配合割合Zが0.05質量%〜20質量%であることが好ましい。
本発明の化学重合開始剤の他の実施形態は、互いに分包された第1剤および第2剤を有し、第1剤には、(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物からなる3成分のうち、(a)有機スルフィン酸塩、および、(b)アリールボレート化合物のみが含まれ、第2剤には、3成分のうち、(c)第四周期遷移金属化合物のみが含まれることが好ましい。
本発明の接着性組成物は、本発明の化学重合開始剤と、(d)酸性基含有重合性単量体と、を含むことを特徴とする。
本発明の接着性組成物の一実施形態は(e)酸性基非含有重合性単量体をさらに含むことが好ましい。
本発明の歯科用セメントは、本発明の化学重合開始剤と、(d)酸性基含有重合性単量体と、(f)充填材と、を含むことを特徴とする。
本発明の歯科用接着剤は、本発明の化学重合開始剤と、(d)酸性基含有重合性単量体と、(g)溶媒と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、酸および水の存在下で高い重合活性を有すると共に、保存安定性に優れた化学重合開始剤、ならびに、これを用いた接着性組成物、歯科用セメントおよび歯科用接着剤を提供することができる。
本実施形態の化学重合開始剤は、(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物を含み、且つ、過酸化物を含まないことを特徴とする。
本実施形態の化学重合開始剤では、過酸化物を含まないため、本実施形態の化学重合開始剤およびこれを用いた組成物の保存安定性に優れる。また、(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物を組み合わせて用いることで、酸および水の存在下において高い重合活性を得ることができる。なお、過酸化物は、原則として、化学重合開始剤に含まれない成分であるが、不可避的に混入する不純物等の形態で微量の過酸化物が含まれることは許容される。
次に、本実施形態の化学重合開始剤に用いられる(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、(c)第四周期遷移金属化合物、および、必要に応じてさらに添加可能なその他の成分について以下に詳細を説明する。
(a)有機スルフィン酸塩
有機スルフィン酸塩としては、公知の有機スルフィン酸塩であればいずれも用いることができる。具体例としては、ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,6−ジイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸あるいはナフタリンスルフィン酸等の塩類を挙げることができる。ここで、これらの有機スルフィン酸塩を構成する塩成分としては、たとえば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等のアルカリ金属塩;、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩等のアルカリ土類金属塩;、鉄塩;、銅塩;、亜鉛塩;、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩メチルジエタノールアンモニウム塩;、あるいは、トリエタノールアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩等を挙げることができる。
これらスルフィン酸塩の中でも、反応性の高さ、重合性単量体への溶解性の高さから、ベンゼンスルフィン酸塩、および、トルエンスルフィン酸塩が好ましい。
また、有機スルフィン酸塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)アリールボレート化合物
アリールボレート化合物は、分子中に少なくとも1個のホウ素−アリール結合を有する化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できる。しかしながら、アリールボレート化合物としては、下記一般式(1)に示す化合物を用いることが好適である。
Figure 2019044038
ここで、一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基、または、アルケニル基であり;R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、または、フェニル基であり;Lは、金属陽イオン、4級アンモニウムイオン、4級ピリジニウムイオン、4級キノリニウムイオン、または、ホスホニウムイオンである。
一般式(1)において、基R〜Rは、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルケニル基であり、これらの基は、置換基を有していてもよい。
これらの基のうち、アルキル基としては、直鎖状アルキル基あるいは分岐状アルキル基のいずれでもよく、特に制限されるものではないが、好ましくは炭素数3〜30のアルキル基、より好ましくは炭素数4〜20の直鎖状アルキル基、例えば、n−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基等である。また、当該アルキル基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、あるいはフェニル基、ニトロフェニル基、クロロフェニル基等の炭素数6〜10のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基、アセチル基等の炭素数2〜5のアシル基等が例示される。また当該置換基の数及び位置も特に限定されない。
アリール基も特に限定されるものではなく、また、置換基を有していてもよいが、好ましくは、単環、または、2もしくは3つの環が縮合した炭素数6〜14(但し、当該炭素数からは、置換基を構成する炭素原子を除く)のアリール基である。このアリール基が有していてもよい置換基としては、上記アルキル基の置換基として例示された基、ならびにメチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜5のアルキル基が例示される。このようなアリール基の具体例としては、フェニル基、1−又は2−ナフチル基、1−、2−又は9−アンスリル基、1−、2−、3−、4−又は9−フェナンスリル基、p−フルオロフェニル基、p−クロロフェニル基、(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル)フェニル基、p−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ブチルフェニル基、m−ブチルフェニル基、p−ブチルオキシフェニル基、m−ブチルオキシフェニル基、p−オクチルオキシフェニル基、m−オクチルオキシフェニル基等が例示される。
また、アラルキル基としては特に限定されず、さらに置換基を有していてもよいが、一般的には、炭素数が7〜20のもの(但し、当該炭素数からは、置換基を構成する炭素を除く)、例えばベンジル基、フェネチル基、トリル基を例示することができる。また、置換基としては、上記アリール基で例示した置換基を挙げることができる。
アルケニル基も特に限定されるものではなく、置換基を有していてもよく、炭素数4〜20のアルケニル基(但し、当該炭素数からは、置換基を構成する炭素を除く)、例えば、3−ヘキセニル基、7−オクチニル基等が好適である。またその置換基としては前記アルキル基の置換基として例示されたものが挙げられる。
また、上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、または、フェニル基である。
このようなR及びRにおいて、アルキル基は、特に限定されるものではなく、直鎖状でも分枝状でも良く、さらに置換基を有していてもよいが、好ましくは炭素数1〜10のもの(但し、当該炭素数からは、置換基を構成する炭素を除く)である。さらに、この置換基としては、前記の基R〜Rで示されるアルキル基の置換基として例示したものが挙げられる。このようなアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−又はi−プロピル基、n−,i−又はt−ブチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ−2−プロピル基等が例示される。
またR及びRにおけるフェニル基も置換基を有していてよく、この置換基としては、前記の基R〜Rのアリール基の置換基として例示したものが挙げられる。
また、上記一般式(1)中、Lは、金属陽イオン、第4級アンモニウムイオン、第4級ピリジニウムイオン、第4級キノリニウムイオン、または、第4級ホスホニウムイオンである。
上記の金属陽イオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属陽イオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属陽イオン等が好ましく、第4級アンモニウムイオンとしては、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン等を挙げることができる。また、第4級ピリジニウムイオンとしては、メチルキノリニウムイオン、エチルキノリニウムイオン、ブチルキノリウムイオン等が代表的であり、さらに、第4級ホスホニウムイオンとしては、テトラブチルホスホニウムイオン、メチルトリフェニルホスホニウムイオン等を例示することができる。
一般式(1)で示されるアリールボレート化合物の好適例としては、1分子中に1個のアリール基を有するもの、1分子中に2個のアリール基を有するもの、1分子中に3個のアリール基を有するもの、及び1分子中に4個のアリール基を有するものを挙げることができる。
1分子中に1個のアリール基を有するアリールボレート化合物の具体例としては、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−フルオロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、トリアルキル[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ2−プロピル)フェニル]ホウ素、トリアルキル(p−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びトリアルキル(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)の塩を挙げることができる。また、その塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
1分子中に2個のアリール基を有するボレート化合物としては、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p−クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−フルオロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びジアルキルジ(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)の塩を挙げることができる。その塩には、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等がある。
1分子中に3個のアリール基を有するボレート化合物としては、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリス(p−クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−フルオロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ2−プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素、及びモノアルキルトリス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)の塩を挙げることができる。その塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
1分子中に4個のアリール基を有するボレート化合物としては、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p−クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシ2−プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m−ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p−オクチルオキシフェニル)ホウ素及びテトラキス(m−オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)の塩を挙げることができる。その塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩等を挙げることができる。
アリールボレート化合物としては、保存安定性の観点から、1分子中に3個または4個のアリール基を有するアリールボレート化合物を用いることが好ましく、さらには取り扱いの容易さや入手のし易さから、4個のアリール基を有するアリールボレート化合物が最も好ましい。上述したアリールボレート化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(c)第四周期遷移金属化合物
第四周期遷移金属化合物は、周期表第四周期の3〜12族の金属化合物であり、具体的には、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の金属化合物である。
なお、第四周期遷移金属化合物における遷移金属元素としては、各々が複数の価数を取りうるが、安定に存在できる価数であればよく、例えば、Sc(III)、Ti(IV)、V(III〜V)、Cr(II、III、VI)、Mn(II〜VII)、Fe(II、III)、Co(II、III)、Ni(II)、Cu(I、II)、Zn(II)が適用可能とされる。
このような化合物の具体例としては、+III価のスカンジウム化合物としてヨウ化スカンジウム(III)等を挙げることができ、+VI価のチタニウム化合物として塩化チタン(IV)、チタニウム(IV)テトライソプロポキシド等を挙げることができ、+IV価のバナジウム化合物として、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、および、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)等を挙げることができ、+V価のバナジウム化合物として、酸化バナジウム(V)、バナジン酸ナトリウム(V)、オキシ三塩化バナジウム(V)等を挙げることができる。
また、+II価のクロム化合物として塩化クロム(II)等を挙げることができ、+III価のクロム化合物として塩化クロム(III)等を挙げることができ、+VI価のクロム化合物としてクロム酸、クロム酸塩等を挙げることができ、+II価のマンガン化合物として酢酸マンガン(II)、ナフテン酸マンガン(II)等を挙げることができ、+II価の鉄化合物として酢酸鉄(II)、塩化鉄(II)等を挙げることができ、+III価の鉄化合物として酢酸鉄(III)、塩化鉄(III)等を挙げることができ、+II価のコバルト化合物として酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト(II)等を挙げることができ、+II価のニッケル化合物として塩化ニッケル(II)等を挙げることができ、+I価の銅化合物として塩化銅(I)、臭化銅(I)等を挙げることができ、+II価の銅化合物として塩化銅(II)、酢酸銅(II)等を挙げることができ、+II価の亜鉛化合物として塩化亜鉛(II)、酢酸亜鉛(II)等を挙げることができる。
これらの中でも、V(IV、V)、Mn(II)、Fe(II、III)、Co(II)の金属化合物が好ましく、より高い重合活性が得られることから、+IV及び/又は+V価のバナジウム化合物が好ましい。
本実施形態の化学重合開始剤では、上述した(a)〜(c)に示す3成分以外にも、必要に応じてその他の成分(但し、過酸化物を除く)を更に組み合わせて用いてもよい。
化学重合開始剤を構成する各成分の配合割合は特に限定されるものではない。しかしながら、(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物の合計量Tに対する(a)有機スルフィン酸塩の配合割合X〔a/(a+b+c)〕が、15質量%〜45質量%であり、合計量Tに対する(b)アリールボレート化合物の配合割合Y〔b/(a+b+c)〕が55質量%〜85質量%であり、合計量Tに対する(c)第四周期遷移金属化合物の配合割合Z〔c/(a+b+c)〕が0.05質量%〜20質量%であることが好ましい、また、(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物の合計量Tに対する(a)有機スルフィン酸塩の配合割合Xが、20質量%〜40質量%であり、合計量Tに対する(b)アリールボレート化合物の配合割合Yが60質量%〜80質量%であり、合計量Tに対する(c)第四周期遷移金属化合物の配合割合Zが0.1質量%〜15質量%であることがより好ましい。ここで、配合割合X、Y、Zは、X+Y+Z=100質量%を満たすことを前提として、上述した範囲内で適宜選択される。
有機スルフィン酸の配合割合Xを15質量%以上とすることにより、より一層高い重合活性を得ることができる。この場合、たとえば、本実施形態の化学重合開始剤を接着性組成物に添加して用いれば、優れた接着性を容易に得ることができる。一方、有機スルフィン酸の配合割合Xが大きすぎる場合、アリールボレート化合物および/または第四周期遷移金属化合物の配合量が大幅に制限されるため、重合活性以外のその他の特性との両立が困難となりやすい。しかしながら有機スルフィン酸の配合割合Xを45質量%以下とすることにより、上記問題を回避することが極めて容易となる。なお、有機スルフィン酸の配合割合Xは、20質量%〜40質量%の範囲であることがより好ましく、25質量%〜30質量%の範囲内が特に好ましい。
また、アリールボレート化合物の配合割合Yを55質量%以上とすることにより、本実施形態の化学重合開始剤およびこれを用いた組成物の保存安定性をより一層向上させることができる。一方、アリールボレート化合物の配合割合Yが大きすぎる場合、化学重合開始剤を構成する他の成分の配合量が制限されるため、保存安定性以外のその他の特性との両立が困難となりやすい。しかしながらアリールボレート化合物の配合割合Yを85質量%以下とすることにより、上記問題を回避することが極めて容易となる。なお、アリールボレート化合物の配合割合Yは、60質量%〜80質量%の範囲であることがより好ましく、65質量%〜75質量%の範囲内が特に好ましい。
さらに、第四周期遷移金属化合物の配合割合Zを0.05質量%以上とすることにより、より一層高い重合活性を得ることができる。この場合、たとえば、本実施形態の化学重合開始剤を接着性組成物に添加して用いれば、優れた接着性を容易に得ることができる。一方、第四周期遷移金属化合物の配合割合が大きすぎる場合、本実施形態の化学重合開始剤を用いた組成物の硬化体の着色が生じ易くなる。また、審美性が求められる用途など、硬化体の着色の有無あるいは着色の度合いが問題視される用途(たとえば、歯科用途など)で硬化体が利用される場合、着色は望ましく無い現象である。しかしながら第四周期遷移金属化合物の配合割合を20質量%以下とすることにより、このような問題を回避することが極めて容易となる。なお、第四周期遷移金属化合物の配合割合Zは、0.1質量%〜15質量%の範囲であることがより好ましく、0.1質量%〜5質量%の範囲内が特に好ましい。
また、本実施形態の化学重合開始剤は、化学重合開始剤を構成する全成分が1つの容器(たとえば、シリンジ、袋、瓶など)内において互いに混合あるいは接触した状態で保管されていてもよいが、化学重合開始剤を構成する各成分を、第1剤と第2剤とに分包した状態で保管してもよい。ここで、分包の形態は、第1剤を構成する組成物と、第2剤を構成する組成物とが、保管時において互いに接触および混合しない限りは特に制限されないが、通常は、シリンジ、袋、瓶などの各種の容器内に、第1剤と第2剤とがそれぞれ別々に保管される。そして、本実施形態の化学重合開始剤が、互いに分包された第1剤および第2剤を有する場合、本実施形態の化学重合開始剤(およびこれを含む組成物)の使用時に、第1剤と第2剤とを混合する。
化学重合開始剤を構成する各成分を、第1剤および第2剤のいずれに配合するかは適宜選択することができる。しかしながら、第1剤には、(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物からなる3成分のうち、(a)有機スルフィン酸塩、および、(b)アリールボレート化合物のみが含まれ、第2剤には、上記(a)〜(c)に示す3成分のうち、(c)第四周期遷移金属化合物のみが含まれることが好ましい。このような分包形態を採用した場合、保存安定性をより一層向上させることができる。なお、上記分包形態において、第1剤には、上記(a)〜(c)に示す3成分のうち、(c)に示す成分は原則として含まれないが、(c)に示す成分が不純物等の形態で不可避的に極微量含有されることは許容される。同様に、第2剤には、上記(a)〜(c)に示す5成分のうち、(a)および(b)に示す成分は原則として含まれないが、(a)および(b)に示す成分が不純物等の形態で不可避的に極微量含有されることは許容される。
また、化学重合開始剤として、(a)〜(c)に示す以外のその他の成分を更に用いる場合、その他の成分は、第1剤および第2剤のいずれか一方または双方に配合することができる。また、本実施形態の化学重合開始剤を用いた組成物(たとえば、接着性組成物など)においては、組成物中の化学重合開始剤以外の各成分についても第1剤および第2剤のいずれか一方または双方に配合することができる。
使用時における第1剤と第2剤との混合比率(第1剤/第2剤)については、重合活性および操作性が大幅に損なわれない範囲で適宜選択できるが、取扱い性や製品パッケージ化の容易さなどの実用上の観点からは、混合比率(第1剤/第2剤)が、体積比で1/5〜5/1の範囲内が好ましく、1/3〜3/1の範囲内がより好ましく、あるいは、質量比で1/5〜5/1の範囲内が好ましく、1/3〜3/1の範囲内がより好ましい。また、通常、本実施形態の化学重合開始剤およびこれを用いた組成物の利用者は、本実施形態の化学重合開始剤およびこれを用いた組成物の開発者、製造者あるいは販売者が定めた混合比率(以下、「指定混合比率」と称す)に従って、第1剤と第2剤とを混合する。なお、使用時の実際の混合比率は、重合活性および操作性が大幅に損なわれない範囲であれば指定混合比率からずれることは許容され、たとえば、指定混合比率を基準(100%)とした場合の使用時の実際の混合比率は33%〜300%の範囲であってもよく、50%〜200%の範囲が好ましい。
なお、本実施形態の化学重合開始剤およびこれを用いた組成物が、第1剤と第2剤とに分包されている場合、本願明細書中における化学重合開始剤の配合量あるいは配合比率の説明は、指定混合比率で混合されることを前提として決定される値を意味する。
指定混合比率は、混合比率情報表示媒体に表示することができる。この混合比率情報表示媒体としては、たとえば、i)紙箱等からなる製品パッケージ、ii)紙媒体および/または電子データとして提供される製品の使用説明書、iii)第1剤および第2剤を各々密封状態で保管する容器(ボトル、シリンジ、包装袋等)、iv)紙媒体および/または電子データとして提供される製品カタログ、v)製品とは別に電子メールや郵便物等により製品利用者に送付される通信文などが利用できる。また、指定混合比率は、上記i)〜v)に示す以外の態様により製品利用者が認知しうる態様で、製品利用者に提供されてもよい。
本実施形態の化学重合開始剤では、上述した(a)〜(c)に示す3成分以外にも、必要に応じてその他の成分(但し、過酸化物を除く)を更に組み合わせて用いてもよい。その他の成分としては、アミン化合物、バルビツール酸誘導体、チオ尿素化合物などの有機還元性化合物などが挙げられる。
本実施形態の化学重合開始剤は、通常、各種の目的で利用される組成物に配合して利用される。この場合、当該組成物中の化学重合開始剤以外の成分(非化学重合開始剤成分)については、組成物の用途に応じて適宜選択される。但し、非化学重合開始剤成分は、過酸化物を除いた成分から選択される。また、本実施形態の化学重合開始剤の使用条件は特に限定されないが、高い重合活性が発揮できることから、酸および水の存在下で使用されることが特に好ましい。この場合、酸成分および水から選択されるいずれか一方または双方が、本実施形態の化学重合開始剤が配合された組成物中に含有されていてもよいし、酸成分および水の双方が組成物中に含有されていなくてもよい。但し、組成物中に酸成分および水から選択されるいずれか一方または双方が含有されていない場合、化学重合が行われる反応系中に、組成物中に含有されていない成分(酸成分および/または水)が存在していることが必要である。反応系中において、組成物以外の部分に、組成物中に含有されていない成分(酸成分および/または水)が存在する場合としては、たとえば、組成物が付与される固体の表面近傍に、組成物中に含有されていない成分(酸成分および/または水)が存在する場合が挙げられる。また、酸成分は、酸無水物などの形態で反応系中に存在していてもよく、水は、水和物や水酸基などの形態で反応系中に存在していてもよい。
本実施形態の化学重合開始剤を配合した組成物としては、接着性組成物が好ましい。また、本実施形態の接着性組成物は、歯科用接着性組成物(特に、歯科用セメントおよび歯科用接着剤)として用いられることが好ましい。以下にこれら組成物の詳細について説明する。
本実施形態の接着性組成物は、本実施形態の化学重合開始剤を含むものであれば特に限定されないが、本実施形態の化学重合開始剤と、(d)酸性基含有重合性単量体と、を含むものであることが特に好ましい。また、本実施形態の接着性組成物には、さらに必要に応じて、(e)酸性基非含有重合性単量体、(f)充填材、(g)溶媒などが適宜含まれていてもよい。なお、以下の説明において、(d)酸性基含有重合性単量体および(e)酸性基非含有重合性単量体のいずれか一方、または、双方を指し示す場合は、単に、「重合性単量体」と称す。また、本実施形態の接着性組成物に配合される各成分の配合量は、接着性組成物の用途に応じて適宜選択することができる。
本実施形態の接着性組成物を歯科用セメントとして用いる場合、この歯科用セメントには、本実施形態の化学重合開始剤と、(d)酸性基含有重合性単量体と、(f)充填材と、が含まれることが好ましく、本実施形態の接着性組成物を歯科用接着剤として用いる場合、この歯科用接着剤には、本実施形態の化学重合開始剤と、(d)酸性基含有重合性単量体と、(g)溶媒と、が含まれることが好ましい。また、これら歯科用セメントおよび歯科用接着剤には、(e)酸性基非含有重合性単量体などのその他の成分がさらに含まれてもよい。
本実施形態の歯科用セメントにおいて、歯科用セメント100質量部に対する重合性単量体の配合量は、硬化体の機械的強度を確保すると共に歯質に対する浸透性を確保するなどの観点から10質量部〜50質量部が好ましく、20質量部〜40質量部が好ましい。また、歯科用セメントに用いられる重合性単量体は、酸性基含有重合性単量体のみから構成されていてもよいが、酸性基含有重合性単量体と、酸性基非含有重合性単量体とから構成されていることが好ましい。この場合、重合性単量体100質量部に対する酸性基含有重合性単量体の配合量は、歯質に対する接着性をより強固なものとする観点から5質量部以上が好ましく、7質量部以上が好ましい。重合性単量体100質量部に対する酸性基含有重合性単量体の配合量は、歯質および各種材料からなる補綴物に対する接着耐久性をより一層向上させる観点からは50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
また、歯科用セメントに用いられる化学重合開始剤の配合量は、重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部〜25質量部が好ましく、0.3質量部〜20質量部が好ましい。これにより、歯科用セメントの硬化性を確保すると共に接着強度や硬化体の機械的強度を確保することがより容易となる。
本実施形態の歯科用接着剤において、歯科用接着剤100質量部に対する重合性単量体の配合量は、硬化体の機械的強度すると共に歯質に対する浸透性を確保するなどの観点から10質量部〜95質量部が好ましく、20質量部〜80質量部が好ましい。また、歯科用接着剤に用いられる重合性単量体は、酸性基含有重合性単量体のみから構成されていてもよいが、酸性基含有重合性単量体と、酸性基非含有重合性単量体とから構成されていることが好ましい。この場合、重合性単量体100質量部に対する酸性基含有重合性単量体の配合量は、歯質に対する接着性をより強固なものとする観点から5質量部以上が好ましく、7質量部以上が好ましい。重合性単量体100質量部に対する酸性基含有重合性単量体の配合量は、歯質に対する接着耐久性をより一層向上させる観点からは50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
また、歯科用接着剤に用いられる化学重合開始剤の配合量は、重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部〜15質量部が好ましく、0.3質量部〜10質量部が好ましい。これにより、歯科用接着剤の硬化性を確保すると共に接着強度や硬化体の機械的強度を確保することがより容易となる。
歯科用接着剤に用いられる溶媒の配合量は、特に制限されない。しかし、溶媒として水および/または水溶性有機溶媒を用い、かつ、重合性単量体に酸性基含有重合性単量体が含まれる場合には、溶媒の配合量は、重合性単量体100質量部に対して、10量部〜500質量部が好ましく、50質量部〜200質量部が好ましい。これにより、歯科用接着剤を歯牙の表面に塗布した際に、歯牙の表面を十分に脱灰できると共に、適度な粘性や乾燥性を得ることがより容易になる。
なお、本実施形態の歯科用セメントおよび歯科用接着剤には、酸成分である(d)酸性基含有重合性単量体が必須成分として含まれる。また、歯科用セメントおよび歯科用接着剤は、その使用に際して、少なくとも歯質の表面に付与される。この歯質の表面上には唾液に起因する水分が付着している場合があり、また、歯質には、水酸基を含むヒドロキシアパタイト等の無機質を主成分として含むと共に、その他の成分として若干の水および有機質がさらに含まれる。このため、歯科用セメントおよび歯科用接着剤を使用する場合、必ず酸成分および水の存在下にて重合反応が行われることになる。
(d)酸性基含有重合性単量体
本実施形態の化学重合開始剤を配合した各種の組成物に用いることができる酸性基含有重合性単量体としては、少なくとも1つの酸性基と少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基とを有する公知の重合性単量体であれば、いずれも利用できる。なお、重合性の観点では、(メタ)アクリル酸エステル系の酸性基含有重合性単量体が好適に使用される。また、(メタ)アクリル酸エステル系の酸性基含有重合性単量体は、生体への安全性の観点で、歯科用接着性組成物に配合して用いる場合にも好適である。酸性基含有重合性単量体は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで酸性基とは、この基を有するラジカル重合性単量体の水溶液または水懸濁液が酸性を呈するものであり、代表的には、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)}等のヒドロキシル基を有するものが例示される。また、このようなヒドロキシル基含有酸性基以外にも、2つのヒドロキシル含有酸性基が脱水縮合した構造の酸無水物基、ヒドロキシル基含有酸性基のヒドロキシル基がハロゲンに置換された酸ハロゲン化物基等を挙げることができる。また、ラジカル重合性不飽和基も特に限定されず、公知のものであってよい。たとえば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイルチオ基等の(メタ)アクリロイル系基、ビニル基、アリル基、スチリル基等が例示される。
酸性基含有重合性単量体としては、たとえば、以下の(i)〜(v)に例示するものが挙げられる。
(i)分子内に1つのカルボキシル基を有すラジカル重合性単量体
(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレートおよび上記ラジカル重合性単量体の酸無水物或いは酸ハロゲン化物等。
(ii)分子内に複数のカルボキシル基あるいはその酸無水物基を有するラジカル重合性単量体
11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸および上記ラジカル重合性単量体の酸無水物或いは酸ハロゲン化物等。
(iii)分子内にホスフィニコオキシ基又はホスホノオキシ基を有すラジカル重合性単量体(ラジカル重合性酸性リン酸エステルと呼ぶことがある)
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2−ブロモエチルハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリルアミドエチルジハイドロジェンフォスフェート、ビス(6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル)ハイドロジェンフォスフェート、ビス(10−(メタ)アクリロイルオキシデシル)ハイドロジェンフォスフェート、ビス{2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル}ハイドロジェンフォスフェート等、および、上記ラジカル重合性酸性リン酸エステルの酸無水物、酸ハロゲン化物等。
(iv)ビニルホスホン酸、p−ビニルベンゼンホスホン酸等の分子内にホスホノ基を有すラジカル重合性単量体。
(v)2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸等の分子内にスルホ基を有すラジカル重合性単量体。
さらに、上述した(i)〜(v)に示す酸性基含有重合性単量体以外にも、特開昭54−11149号公報、特開昭58−140046号公報、特開昭59−15468号公報、特開昭58−173175号公報、特開昭61−293951号公報、特開平7−179401号公報、特開平8−208760号公報、特開平8−319209号公報、特開平10−236912号公報、特開平10−245525号公報等に開示されている歯科用接着性組成物中の成分として記載されている酸性基含有のラジカル重合性単量体も、酸性基含有重合性単量体として好適に使用できる。
(e)酸性基非含有重合性単量体
本実施形態の化学重合開始剤を配合した各種の組成物に用いることができる酸性基非含有重合性単量体としては、少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基を有する公知の重合性単量体(但し、分子内に酸性基をさらに含むものを除く)であれば、いずれも利用できる。なお、重合性の観点では、(メタ)アクリル酸エステル系の酸性基非含有重合性単量体が好適に使用される。また、(メタ)アクリル酸エステル系の酸性基非含有重合性単量体は、生体への安全性の観点で、歯科用接着性組成物に配合して用いる場合にも好適である。酸性基非含有重合性単量体1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。酸性基含有重合性単量体としては、たとえば、以下に例示するものが挙げられる。
<単官能性ラジカル重合性単量体>
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3,4−トリヒドロキシブチルメタクリレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ペンタエチレングリコールモノメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート。
<二官能性ラジカル重合性単量体>
(i)芳香族化合物系の二官能性ラジカル重合性単量体;
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシジトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;
ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を有するメタクリレート類、アミノ基を有するメタクリレート類、または、これらのメタクリレート類に対応するアクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
なお、上述したヒドロキシル基含有メタクリレート類としては、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ペンタエチレングリコールモノメタクリレート等がある。また、アミノ基含有メタクリレート類には、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、2−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノブチルメタクリレート、5−アミノペンチルメタクリレート、3−アミノペンチルメタクリレート等が挙げられる。
(ii)脂肪族化合物系の二官能性ラジカル重合性単量体;
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;
ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を有するメタクリレート類、アミノ基を有するメタクリレート類、または、これらのメタクリレート類に対応するアクリレートとの付加から得られるジアダクト等。なお、ヒドロキシル基含有メタクリレート類、および、アミノ基含有メタクリレート類は、前記で例示した通りである。
<三官能性ラジカル重合性単量体>
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート、および、これらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
<四官能性ラジカル重合性単量体>
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、および、ジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加から得られるジアダクト等。
なお、上記のジイソシアネート化合物には、ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
なお、本実施形態の化学重合開始剤を配合した組成物が歯科用接着性組成物などとして使用される場合のように、組成物の硬化体に、優れた機械的強度が要求されることがある。この場合、酸性基非含有重合性単量体としては、複数のラジカル重合性基を有する二、三または四官能性ラジカル重合性単量体を用いることが好ましい。
(f)充填剤
本実施形態の化学重合開始剤を配合した各種の組成物に用いることができる充填剤としては、有機充填剤および無機充填剤が利用できる。有機充填剤としては、たとえばポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは単独でまたは二種以上の混合物として用いることができる。無機充填剤としては、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。これらもまた、単独でまたは二種以上を混合して用いられる。
充填剤は、用途に応じて適宜選択すればよいが、たとえば、硬化体の機械的強度等の観点などからは、無機充填剤を用いることが好適である。また、歯科用接着性組成物に無機充填剤を添加する場合、無機充填剤の中でも、フッ素徐放性を付与する目的で、フルオロアルミノシリケートガラスを用いることがより好ましい。このようなフルオロアルミノシリケートガラスとしては、アルミニウムおよび珪素の酸フッ化物ガラスのフィラーであれば特に限定されず、歯科用セメント等において酸反応性フィラー、イオン溶出性フィラーとして一般に使われているものが使用できる。フルオロアルミノシリケートガラスの好適な組成としては、イオン質量%で、珪素10〜33質量%;アルミニウム4〜30質量%;アルカリ土類金属5〜36質量%;アルカリ金属0〜10質量%;リン0.2〜16質量%;フッ素2〜40質量%;残量が酸素である。なお、上記アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムが好ましい。また、上記アルカリ金属としてはナトリウム、リチウム、カリウムが好適であり、中でもナトリウムが特に好適である。更に必要に応じて、上記アルミニウムの一部をチタン、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ランタン等で置き換えたものも使用可能である。
このようなフルオロアルミノシリケートガラスは、たとえば、シリカ、アルミナ、フルオライト、クリオライト、フッ化アルミニウム等の金属化合物を混合し、1100〜1300℃で焼結し、次いで粉砕する方法、或いはゾルゲル法などにより製造できる。無機充填剤は、シランカップリング剤等の表面処理剤を用いて公知の方法で表面処理して使用に供することもできる。シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。また、無機充填剤としてフルオロアルミノシリケートガラスを用いる場合には、他の成分との練和性を向上させる目的で、該フルアオロアルミノシリケートガラスを高分子化合物等でコーティングしてもよい。
充填剤の形状は特に限定されず、通常の粉砕により得られる様な不定形の粒子形状を有するものであってもよいし、球状粒子であってもよい。また、充填剤の平均粒径は特に限定されるものではないが、0.01μm〜100μm程度が好ましく、0.1μm〜50μm程度がより好ましい。
(g)溶媒
本実施形態の化学重合開始剤を配合した各種の組成物に用いることができる溶媒としては、水および有機溶媒を用いることができる。溶媒は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、有機溶媒としては、水溶性有機溶媒が好ましい。ここで言う水溶性とは、20℃での水への溶解度が20g/100ml以上であることを言う。水溶性有機溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。なお、歯科用接着性組成物に水溶性有機溶媒を配合する場合、生体に対する為害性を考慮すると、水溶性有機溶媒としてはエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール又はアセトンが好ましい。
以下に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものでは無い。
1.物質の略称
以下に、各実施例および各比較例の化学重合開始剤およびこれを含む組成物において使用した物質の略称について説明する。
<有機スルフィン酸塩>
PTSNa・・・パラトルエンスルフィン酸ナトリウム
PTSLi・・・パラトルエンスルフィン酸リチウム
BSNa・・・ベンゼンスルフィン酸ナトリウム
<アリールボレート化合物>
PhBNa・・・テトラフェニルホウ素のナトリウム塩
PhBTEOA・・・テトラフェニルホウ素のトリエタノールアンモニウム塩
<第四周期遷移金属化合物>
・・・四酸化二バナジウム(IV)
VOAA・・・酸化バナジウムアセチルアセトナート(V)
BMOV・・・ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)
CuAA・・・銅アセチルアセトナート(II)
FeCl・・・塩化鉄(III)
<過酸化物>
CHP・・・クメンハイドロパーオキサイド
BPO・・・過酸化ベンゾイル
BPOL・・・t−ブチルペルオキシラウレート
<酸性基含有重合性単量体>
MDP・・・10−メタクリルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
<酸性基非含有重合性単量体>
BisGMA・・・ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート
3G・・・トリエチレングリコールジメタクリレート
2.接着性組成物の調製
化学重合開始剤を配合した組成物として、第1剤および第2剤からなる2液型の接着性組成物、あるいは、1液型の接着性組成物を調製した。
2.1 2液型接着性組成物の調製
以下の手順にて第1剤および第2剤からなる2液型の接着性組成物を調製した。まず、第1剤および第2剤には、以下に示す組成の重合性単量体を100質量部ずつ配合した。
<第1剤に含まれる重合性単量体組成>
・BisGMA:60質量部
・3G:40質量部
<第2剤に含まれる重合性単量体組成>
・MDP:40質量部
・BisGMA:36質量部
・3G:24質量部
また、第1剤に含まれる重合性単量体100質量部に対して、表1に示す組成で化学重合開始剤を構成する各成分を配合し、第2剤に含まれる重合性単量体100質量部に対して、表2に示す組成で化学重合開始剤を構成する各成分を配合した。
なお、第1剤および第2剤からなる接着性組成物を用いた各種評価を行う場合、第1剤と第2剤との混合比率は、第1剤に含まれる重合性単量体の総質量と第2剤に含まれる重合性単量体の総質量とが1:1となるように混合した。したがって、表3中に示す「化学重合開始剤中の各成分の比率」は、上記の混合比率を前提に計算した値を示している。
2.2 1液型接着性組成物の調製
以下の手順で第1剤のみからなる1液型の接着性組成物を調製した。まず、以下に示す組成の重合性単量体を200質量部配合した。
<第1剤に含まれる重合性単量体組成>
・MDP:40質量部
・BisGMA:96質量部
・3G:64質量部
また、第1剤に含まれる重合性単量体200質量部に対して、表1に示す組成で化学重合開始剤を構成する各成分を配合した。
3.各種評価
(1)接着強さ
屠殺後24時間以内に抜去した牛前歯を、注水下、耐水研磨紙P600で研磨し、唇面に平行かつ平坦になるように、エナメル質平面を削り出した被着体および象牙質平面を削り出した被着体を準備した。
次に、これら2種類の被着体のそれぞれの研磨面に、直径3mmの穴を開けた両面テープを貼り付けた。続いて、研磨面のうち両面テープの穴から露出している接着面に、表1および表2に示す各実施例および各比較例の接着性組成物を塗布し、5秒間エアブローして乾燥させた。ここで、第1剤と第2剤とから構成される2液型の接着性組成物については、第1剤と第2剤を混和皿上で混合液とし、接着面に塗布した。
また、接着面に塗布する接着性組成物としては、接着性組成物を調製した直後のサンプル(調製直後サンプル)、および、接着性組成物を調製した後に容器内に密封しさらに50℃の恒温槽中で1週間保管した後のサンプル(50℃1週間後サンプル)の2種類を使用した。
直径8mmの穴が設けられた厚み0.5mmのパラフィンワックスを、パラフィンワックスの穴と、両面テープの穴とが同心円となるように接着性組成物が塗布された接着面に貼り付けて模擬窩洞を作製した。この模擬窩洞に歯科用コンポジットレジン(エステライトΣクイック、トクヤマデンタル社製)を充填してポリエステルフィルムで軽く圧接した後、可視光線照射器(トクソーパワーライト、株式会社トクヤマ製)を用い、光照射10秒による光硬化を行った。その後、あらかじめ研磨したSUS304製丸棒(直径8mm、高さ18mm)をレジンセメント(ビスタイトII、株式会社トクヤマデンタル社製)で接着した。最後に、37℃の水中にて24時間浸漬することで接着強度測定用のサンプルを得た。
これらサンプルについて、島津製作所製オートグラフ(クロスヘッドスピード2mm/分)を用いて引張接着強度を測定した。各実施例および比較例について、4個のサンプルの測定値を平均し、測定結果とした。また、測定は、接着強度測定用のサンプルを水中から引き上げて約1日以内に実施した。
調製直後サンプルを用いた場合のエナメル質および象牙質に対する接着強度、ならびに、50℃1週間後サンプルを用いた場合のエナメル質および象牙質に対する接着強度の評価結果を表4に示す。
(2)表面硬度
直径5mm、厚さ1mmの円形の孔を有するポリアセタール製の型に、各実施例および比較例の接着性組成物を填入し、37℃湿潤条件下恒温槽中で15分間放置し硬化させた。なお、2液型の接着性組成物については、第1剤と第2剤とを混合した後、直ぐに、型に填入して硬化させた。得られた硬化体を37℃の水中にて24時間浸漬することで測定サンプルを得た。次に、微小硬度計(MHT−1型、松沢精機製)を用いて、100gf30秒の荷重条件でできたくぼみの対角線長さ(d)を測定し、表面硬度を求めた。硬度は下式(1)を用いて求めた。結果を表4に示す。
・式(1) Hv=1854.37×100g/d
(3)着色性
直径5mm、厚さ1mmの円形の孔を有するポリアセタール製の型に、各実施例および比較例の接着性組成物を填入し、37℃湿潤条件下恒温槽中で15分間放置し硬化させた。なお、2液型の接着性組成物については、第1剤と第2剤とを混合した後、直ぐに、型に填入して硬化させた。次に、得られた硬化体を型から外し、色差計(東京電色製、「TC−1800MKII」)を用いて、背景色白で測定を行い、Lab色空間のL、a、b値を得た。得られた値を用いて、下式(2)に従ってΔEを算出し、着色性の判定を行った。なお、基準となる接着性組成物は、判定対象となる各実施例および比較例の接着性組成物において(c)成分を用いずに重合性単量体を硬化させたものを用いた。
・式(2) ΔE=((L−L+(a−a+(b−b1/2
なお、式(2)中の右辺に示す各パラメータは以下の通りである。
:基準となる接着性組成物のL値
:判定対象の接着性組成物のL値
:基準となる接着性組成物のa値
:判定対象の接着性組成物のa値
:基準となる接着性組成物のb値
:判定対象の接着性組成物のb値
なお、表4中に示す「着色性」の判定基準は以下の通りである。
A:ΔEが2以下
B:ΔEが2を超え7以下
C:ΔEが7を超え10以下
D:ΔEが10を超える
Figure 2019044038
Figure 2019044038
Figure 2019044038
Figure 2019044038

Claims (11)

  1. (a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物を含み、且つ、過酸化物を含まないことを特徴とする化学重合開始剤。
  2. (a)有機スルフィン酸塩が、ベンゼンスルフィン酸塩、および、トルエンスルフィン酸塩からなる群より選択される少なくともいずれか1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の化学重合開始剤。
  3. (b)アリールボレート化合物が、下記一般式(1)で示される化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の化学重合開始剤。
    Figure 2019044038

    〔前記一般式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基、または、アルケニル基であり;R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、または、フェニル基であり;Lは、金属陽イオン、4級アンモニウムイオン、4級ピリジニウムイオン、4級キノリニウムイオン、または、ホスホニウムイオンである。〕
  4. (c)第四周期遷移金属化合物が、IV価のバナジウム化合物、および、V価のバナジウム化合物からなる群より選択されるいずれかのバナジウム化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の化学重合開始剤。
  5. (c)第四周期遷移金属化合物が、酸化バナジウム(V)、バナジン酸ナトリウム(V)、オキシ三塩化バナジウム(V)、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、および、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、からなる群より選択されるいずれか1種以上バナジウム化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の化学重合開始剤。
  6. (a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物の合計量Tに対する(a)有機スルフィン酸塩の配合割合Xが15質量%〜45質量%であり、
    前記合計量Tに対する(b)アリールボレート化合物の配合割合Yが55質量%〜85質量%であり、
    前記合計量Tに対する(c)第四周期遷移金属化合物の配合割合Zが0.05質量%〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の化学重合開始剤。
  7. 互いに分包された第1剤および第2剤を有し、
    前記第1剤には、(a)有機スルフィン酸塩、(b)アリールボレート化合物、および、(c)第四周期遷移金属化合物からなる3成分のうち、(a)有機スルフィン酸塩、および、(b)アリールボレート化合物のみが含まれ、
    前記第2剤には、前記3成分のうち、(c)第四周期遷移金属化合物のみが含まれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の化学重合開始剤。
  8. 請求項1〜7のいずれか1つに記載の化学重合開始剤と、(d)酸性基含有重合性単量体と、を含むことを特徴とする接着性組成物。
  9. (e)酸性基非含有重合性単量体をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の接着性組成物。
  10. 請求項1〜7のいずれか1つに記載の化学重合開始剤と、(d)酸性基含有重合性単量体と、(f)充填材と、を含むことを特徴とする歯科用セメント。
  11. 請求項1〜7のいずれか1つに記載の化学重合開始剤と、(d)酸性基含有重合性単量体と、(g)溶媒と、を含むことを特徴とする歯科用接着剤。
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